説明

カーボンナノチューブを使用して調製されたナノ粒子およびその調製方法

本発明は、カーボンナノチューブを使用してナノ粒子を調製する方法およびかかる方法により調製されたナノ粒子に関する。特に、物理的に強固で、化学的に強力な結合を有するカーボンナノチューブを、金属、ポリマーまたはセラミックの粉末粒子をナノサイズの粒子に砕くために使用する。さらに、かかる方法により調製されたナノ粒子は、小さなサイズであり、カーボンナノチューブを含むことから、それらのナノ粒子を良好な酸化性を有する金属について採用するという条件で、可燃性を必要とする、例えば固形燃料、火薬などの適用に利用することができる。また、優れた機械的特性および伝導性により、カーボンナノチューブを関連製品に適用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブを使用して粉末粒子をナノサイズに粉砕する、ナノ粒子を調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノ粒子は、紫外光または可視光の波長より極めて小さな粒径を有する。また、その質量の割には、比較的大きな粒界を形成し、接触面において、バルク(bulk)材料よりかなり多数の原子または分子が配置される。このように、ミクロ/ナノハイブリッド構造を形成することも可能だが、また粒子のサイズおよび形態に応じて、物理的、化学的、および光学的特性を変化させることも可能である。
【0003】
ナノ粒子の適用の観点において、触媒、光電子、先端材料、非線形光学、医学を含むバイオテクノロジーなどの種々の分野における研究が積極的に行われてきた。
【0004】
ナノ粒子は、有機材料(例えば、ポリマー)、無機材料(例えば、金属)、セラミック材料、または同類のものであり得る。ナノ粒子の調製において、有機ナノ粒子は、例えば、懸濁重合、乳化重合、分散重合、自己集合または同類のものなどにより調製されてもよく、無機ナノ粒子は、有機金属前駆体の熱分解、真空蒸着、コロイド法、電解または無電解還元あるいは同類のものにより調製されてもよい。
【0005】
溶液法による例として、韓国出願番号10−2006−0101844は、銀を含む化合物を極性溶媒に溶解し、還元剤を使用して、銀ナノ粒子を調製する方法を開示している。前記方法により調製された銀ナノ粒子は、均一性を有するが、複雑な調製プロセスを必要とする。このように、生産高に関し、限界がある。
【0006】
ナノ粒子調製方法の別の例として、韓国出願番号10−2007−7004335は、蒸気凝縮法を開示している。前記方法において、高温および高真空により金属を気化させ、次いで、迅速に凝縮させる。気相中の気化した金属原子が迅速に凍結したところで、凝縮をまた迅速に行う。したがって、大量の結晶核が発生し、結晶および粒子がより小さくなる。かかる原理により、ナノ粒子が発生する。この方法において、高温および高真空が必要であり、ナノ粒子の調製のためには、金属が完全に気化されなければならない。このように、生産高に関し、限界がある。
【0007】
かかる従来のナノ粒子調製方法においては、原子またはイオン中でクラスターを成長させるナノ構造調製方法である、いわゆるボトムアップ手法が用いられる。この理由により、この方法は、初期段階で原子またはイオンを発生させる方法を必要とし、ナノサイズでの結晶制御を行わなければならないことにおいて、不利点を有する。溶液法においては密度を制御しなければならず、気化技法においては気体原子を発生させなければならない。このように、生産性に関し、限界がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、カーボンナノチューブを使用してナノ粒子を調製する方法を提供することである。カーボンナノチューブは、機械的特性に関し、構造的に安定で優れている。したがって、カーボンナノチューブは、材料と衝突させることによりかかる材料を粉砕することができる。
【0009】
また、カーボンナノチューブはナノサイズを有しているため、材料をナノサイズに粉砕することが可能である。本発明において、従来法とは異なった、かかる新規の方法を使用してバルク材料をナノ粒子に調製する方法を提供する。
本発明の別の目的は、前記方法により調製されたナノ粒子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一側面に従い、ナノ粒子を調製する方法を提供し、本発明の方法は、以下の工程:(a)粉末粒子およびカーボンナノチューブの混合物を調整すること;および(b)混合物をボールミル粉砕すること、を含む。
【0011】
本発明の方法は、さらに、工程(a)中にアルゴン(Ar)でパージする工程を含む。
工程(b)において、粉末粒子およびカーボンナノチューブの混合物を粉砕するように、ボールミル粉砕を、0.5〜12時間、100rpm〜5000rpmにおいて行ってもよい。
【0012】
本発明の別の一側面に従い、ナノ粒子を調製する方法を提供し、本発明の方法は、以下の工程:(a)粉末粒子をカーボンナノチューブと混合すること;(b)混合物と衝突させるためにボールを導入すること;(c)容器中に混合物およびボールを密封すること;および(d)混合物およびボールを含む容器を物理的に回転させることにより、混合物をボールミル粉砕すること、を含む。
【0013】
本発明のさらなる一側面に従い、ボールミル粉砕によりカーボンナノチューブにより粉砕された粉末粒子、およびカーボンナノチューブを含むナノ粒子複合材料を提供する。
【0014】
本発明において、ナノ粒子を調製するために使用されるカーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ(SWNT)、二層カーボンナノチューブ(DWNT)、薄い多層カーボンナノチューブ(thin multi-walled carbon nanotube)、多層カーボンナノチューブ(MWNT)からなる群から選択される少なくとも1種であり得る。カーボンナノチューブは、sp混成結合を有する炭素を含み、構造的に安定な形を形成している。この理由により、鋼より強い(100倍またはそれ以上)機械的特性を示す。
【0015】
本発明の方法を行うために、粉末粒子が粉砕されるように、カーボンナノチューブに物理的衝撃を与える必要がある。このため、カーボンナノチューブに物理的な衝撃を与えるためのボールミル粉砕プロセスが必要である。また、一般的なボールミル粉砕における、粉末粒子を粉砕する工程において、粉末粒子のサイズは縮小する。しかしながら、サイズが臨界サイズに縮小する場合、粒径は、粒子間で溶着することにより再び増加する。カーボンナノチューブは粉末粒子の表面上に付着し、これにより、この問題が生じることを防ぐ。
【0016】
本発明の調製方法は、ボールミル粉砕による粉末粒子粉砕プロセスおよびカーボンナノチューブによるナノ粒子発生プロセスに分けられる。ナノ粒子を効率的に発生させるために、ボールミル粉砕の前にカーボンナノチューブの結晶性を向上させるための熱処理工程が含まれ得る。
【0017】
本発明において、ナノ粒子は、金属、ポリマーまたはセラミックナノ粒子を含んでもよいが、さらに、必要に応じて他の種々の材料を含んでもよい。
【0018】
本発明において、これに限られるものではないが、金、銀、銅、アルミニウム、マンガン、鉄、スズ、亜鉛、チタンおよび同類のものからなる群から金属を選択してもよい。
【0019】
また、これに限られるものではないが、ポリホスファゼン、ポリラクチド、ポリラクチド−コ−グリコリド−ポリカプロラクトン、ポリ無水物、ポリマリク酸、ポリアルキルシアノアクリレート、ポリヒドロキシブチラート、ポリカーボネート、ポリオルトエステル、ポリエチレングリコール、ポリ−L−リシン、ポリグリコリド、ポリメチルメタアクリレート、ポリビニル ピロリドンおよび同類のものからなる群からポリマーを選択してもよい。
【0020】
また、これに限られるものではないが、酸化物(例えば、アルミナ、ジルコニアなど)、炭化物(例えば、炭化タングステン(WC)、炭化チタン(TiC)、炭化ケイ素(SiC)など)、窒化物(例えば、立方晶窒化ホウ素(CBN)、窒化チタン(TiN)、窒化シリコン(Si)など)および同類のものからなる群からセラミックを選択してもよい。
【0021】
本願明細書において使用される用語「粉末粒子」は、金属材料、ポリマー材料、またはセラミック材料を含み、1μm〜数十cmの範囲の直径を有する粒子を意味する。
【0022】
本願明細書において使用される用語「ナノ粒子」は、20nm〜900nmの範囲の直径を有する粒子を意味する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、カーボンナノチューブは、金属、ポリマー、セラミック、またはその同類のものでできたナノ粒子を調製するために使用される。したがって、例えば、医学、光学、または材料などの、ナノ粒子を用いる種々の分野に広く適用し得る。また、調製されたナノ粒子は、材料の特性、材料がナノ粒子に変化したことにより生じた特性、およびナノ粒子中に含まれるカーボンナノチューブの特性を示す。
【0024】
例えば、アルミニウムナノ粒子を、カーボンナノチューブを使用して調製する場合、ナノ粒子は、アルミニウムの軽量で高酸化特性であること、ナノ粒子の高比表面積および小さな結晶サイズ、ならびにカーボンナノチューブの機械的、熱的および電気的特性を含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0025】
添付の図、ここで:
【0026】
【図1】図1は、本発明により、カーボンナノチューブを使用してナノ粒子を調製する方法における各工程におけるメカニズムを例示する概念図であり;
【0027】
【図2】図2は、本発明の好ましい態様により、カーボンナノチューブを使用してアルミニウムナノ粒子を調製するプロセスであり;
【0028】
【図3】図3は、本発明の好ましい態様により、カーボンナノチューブを使用して調製されたアルミニウムナノ粒子の、調製前/後の写真を示し;
【0029】
【図4】図4は、本発明の好ましい態様により、カーボンナノチューブを使用してアルミニウムナノ粒子の調製に使用された、カーボンナノチューブおよびアルミニウムの電子顕微鏡(SEM)写真を示し;
【0030】
【図5】図5は、本発明の好ましい態様により、カーボンナノチューブを使用して調製されたアルミニウムナノ粒子の電子顕微鏡(SEM)写真を示し;
【0031】
【図6】図6は、本発明の好ましい態様により、カーボンナノチューブを使用して調製されたアルミニウムナノ粒子のEDS分析結果を示し;
【0032】
【図7】図7は、本発明の好ましい態様により、カーボンナノチューブを使用して調製されたアルミニウムナノ粒子の、透過型電子顕微鏡(TEM)による分析結果を示し;
【0033】
【図8】図8は、本発明の好ましい態様により、カーボンナノチューブを使用して調製されたアルミニウムナノ粒子の粒径測定(DLS)結果を示し;
【0034】
【図9】図9は、本発明の好ましい態様により、カーボンナノチューブを使用して調製されたアルミニウムナノ粒子のテストサンプルの機械的特性測定の結果を示し;
【0035】
【図10】図10は、本発明の好ましい態様により、カーボンナノチューブを使用して調製されたアルミニウムナノ粒子を適用して、鋳造用(for casting)アルミニウムの電気伝導性測定の結果を示し;
【0036】
【図11】図11は、本発明の好ましい態様により、カーボンナノチューブを使用して調製されたアルミニウムナノ粒子の酸化特性の測定写真を示し;
【0037】
【図12】図12は、本発明の好ましい態様により、カーボンナノチューブを使用して調製されたアルミニウムナノ粒子の酸化特性を測定して得られた、DTAの分析結果を示し;
【0038】
【図13】図13は、本発明の好ましい態様により、カーボンナノチューブを使用して調製されたポリマーナノ粒子の、調製前/後の写真を示し;
【0039】
【図14】図14は、本発明の好ましい態様により、カーボンナノチューブを使用して調製されたポリマーナノ粒子の電子顕微鏡(SEM)写真を示し;
【0040】
【図15】図15は、本発明の好ましい態様により、カーボンナノチューブを使用して調製されたセラミックナノ粒子の、調製前/後の写真を示し;
【0041】
【図16】図16は、本発明の好ましい態様により、カーボンナノチューブを使用して調製されたセラミックナノ粒子の、調製前/後の電子顕微鏡(SEM)写真を示し;
【0042】
【図17】図17は、本発明の好ましい態様により、カーボンナノチューブを使用して調製されたナノ粒子の適用性の概念図を示し;
【0043】
【図18】図18は、本発明の好ましい態様により、カーボンナノチューブを使用して調製された鉄ナノ粒子の、調製前/後の電子顕微鏡(SEM)写真を示し;
【0044】
【図19】図19は、本発明の好ましい態様により、カーボンナノチューブを使用して調製されたチタンナノ粒子の、調製前/後の電子顕微鏡(SEM)写真を示す;を併用すると、本発明の前述および他の目的、特徴および利点は、以下の詳細な説明により、より一層明らかとなる。
【0045】
本発明を実施するための最良の形態
本発明は、カーボンナノチューブを使用してナノ粒子を調製する方法を提供する。カーボンナノチューブは、sp混成結合を有する炭素を含み、構造的に安定な形態で形成される。この理由により、鋼より強い(100倍またはそれ以上)機械的特性を示す。本発明の方法において、かかるカーボンナノチューブは、材料と物理的な力により衝突し、それによって材料を粉砕する。
【0046】
本発明の調製法は、主にボールによる粉砕工程およびカーボンナノチューブによる粉砕工程を含む。図1は、本発明のメカニズムを例示する概念図である。図1に示すように、本発明を実現するために、ボールミル粉砕中のボールによる粉砕工程を先に行う必要がある。ボールによる粉末粒子の粉砕工程が進行してゆくと、粒子は通常さらに粉末化さることなく互いに溶着する。
【0047】
この理由により、ボールミル粉砕による粉砕方法による粒子のサイズ 縮小には限界がある。一方で、カーボンナノチューブの使用により、粒子が一体化することを防ぐことができる。さらに、カーボンナノチューブは粒子を粉砕する。図1bに示した概念図は、カーボンナノチューブがマクロサイズの粒子をナノサイズの粒子に粉砕するメカニズムを例示する。
【0048】
カーボンナノチューブによりマクロサイズの粒子を粉砕する、かかるメカニズムにより、種々の材料(金属、ポリマー、セラミックまたは同類のもの)から作られた粒子を粉砕することが可能である。
【0049】
以降において、本発明を、以下の例を参照してより詳細に説明する。しかしながら、以下の例は例示的なもののみであって、本発明の範囲はそれらに制限されない。本発明において引用される文献の内容は、参照によりここに組み込まれる。
【発明を実施するための形態】
【0050】

例1−1:カーボンナノチューブの使用によるアルミニウム粒子の調製
本発明の例は、図2に示すアルミニウムナノ粒子調製プロセスに基づく。カーボンナノチューブとして、10〜20nmの厚みであって、10〜20μmの長さである、多層カーボンナノチューブ(Hanwha Nanotech, CM95)を使用した。サイズが70μmであるアルミニウム粉末をSamchun Chemicalより購入した。
【0051】
アルミニウム粒子およびカーボンナノチューブを、SKD 11製のステンレススチールボールミル粉砕ジャー(Taemyong science)に導入し、次いでアルミニウムの酸化を抑制するために、不活性ガス(アルゴン)によりパージした。カーボンナノチューブを、50重量%で使用した。ボールミル粉砕として、400rpmで、1時間、3時間、6時間および12時間粉砕(milling)を行った。本明細書において、粉砕に使用するボールは、直径5mmのジルコニアボール(Daehan, DH. ML 1032)である。
【0052】
例1−2:調製したアルミニウムナノ粒子の分析
A.写真による分析
図3は、カーボンナノチューブの使用によりアルミニウムナノ粒子を調製した場合の、デジタルカメラ(Nikon, coolpix-3700)により観察されたアルミニウムナノ粒子テストサンプルの写真を示す。図3aは、50重量%のカーボンナノチューブおよび粉砕工程前のアルミニウム粒子を示す。
【0053】
図3bは、粉砕工程後のアルミニウムナノ粒子を示す。アルミニウムナノ粒子の体積は、粉砕工程前のそれと比較して増加した。このように、アルミニウム粒子が微粉末化されたことを見出すことができる。
【0054】
B.電子顕微鏡(SEM)分析
図4は、ナノ粒子調製プロセス前の未加工のサンプルを示す。図4aは、30,000倍で観察された電子顕微鏡(SEM)写真(JEOL, JSM700F)である。カーボンナノチューブは、直径10〜20nmであり、10〜20μmの長さである。
【0055】
図4bは、未加工のアルミニウムを2,000倍に拡大して観察した写真である。観察されたアルミニウム粒子のサイズは、不均一であり、それらのほとんどが10μmまたはそれ以上である。
【0056】
図5は、カーボンナノチューブの使用により調製されたアルミニウム粒子の電子顕微鏡写真を示す。図5aは、1時間のボールミル粉砕後に10,000倍に拡大して観察した電子顕微鏡写真である。1時間の粉砕後、アルミニウム粒子は塊を構成する。しかしながら、その表面に、ナノ粒子が観察された。
【0057】
図5bから5dは、3〜12時間の粉砕後の電子顕微鏡写真である。電子顕微鏡分析により、3時間の粉砕後にはアルミニウム粒子が完全にナノ粒子に変化することが見出された。したがって、アルミニウム粒子をナノ粒子に変化させるプロセスが、1〜3時間の範囲で行われることが見出された。
【0058】
C.成分分析(EDS)
図6は、カーボンナノチューブの使用により調製されたアルミニウムナノ粒子のEDS(エネルギー分散分光法)(Oxford)により得られた成分分析結果を示す。成分分析は、バルクアルミニウム粒子を1時間粉砕した後に行った。
【0059】
図6aは、EDSの成分スペクトルを示す。図6bは、図6aのスペクトルに基づいて得られた定量的成分分析表を示す。分析表において、炭素成分が包まれていることにより、アルミニウムナノ粒子内部にカーボンナノチューブが包含されていると推測できる。
【0060】
D.透過型電子顕微鏡(TEM)分析
図7は、透過型電子顕微鏡(TEM)(JEOL, JEM2100F)により観察されたアルミニウムナノ粒子の写真を示す。透過型電子顕微鏡により、粒子内部のカーボンナノチューブを観察することができる。透過型電子顕微鏡による観察を、テストサンプル上で、アルミニウム粒子を1時間粉砕した後に行った。
【0061】
図7aは、アルミニウムナノ粒子のクラスターの測定結果を示す。図7b〜7dは、7aの測定結果の拡大分析結果を示す。ナノ粒子のクラスターが分析された場合、カーボンナノチューブが、ナノ粒子内に包含され、またナノ粒子とナノ粒子との間に包含されていることが観察できる。分析結果により、カーボンナノチューブがアルミニウム粒子を粉砕する役割を果たすことを見出すことができる。
【0062】
E.DLS(動的光散乱)によるアルミニウムナノ粒子のサイズおよび分布の分析
図8は、DLS(Photal otsuka electronics, ELS-8000)により得られた、アルミニウムの寸法分布の測定結果を示す。この例において、5重量%のカーボンナノチューブを使用して、1時間未満のボールミル粉砕中に粒径分布を測定した。
【0063】
図8において、x軸はボールミル粉砕時間を示し、y軸はパーセントを示す。Dsは、粒径1μm未満の群を測定することにより得られた結果であり、Dlは、粒径1μmを超える群を測定することにより得られた結果である。
【0064】
ボールミル粉砕の開始から30分後、粒径分布において、粒径1μm未満の粒子の比および粒径1μmを超える粒子の比は、互いに同程度(約50%)であった。
【0065】
ボールミル粉砕の開始から45分後、粒径1μm未満の粒子の比は80%であり、大量のナノ粒子が調製された。したがって、アルミニウム粒子がボールミル粉砕時間に従ってナノサイズに変化することを見出すことができる。
【0066】
F.機械的特性分析
この例において、本発明により調製されたアルミニウムナノ粒子のテストサンプルの機械的特性を測定した。このサンプルについて、カーボンナノチューブを使用して調製されたアルミニウムナノ粒子を、プラズマ焼結により焼結させた。焼結することは、バルク粉末を得ることである。
【0067】
粉末の粒径が減少するにつれて、機械的特性が向上することは既知である。図9aは、放電プラズマ焼結により得られたテストサンプルの硬度の測定値を示す。硬度は、カーボンナノチューブの各種濃度に対する値が測定された。カーボンナノチューブを使用せずに得たテストサンプルにおいて、硬度は50Hvであり、一方では30重量%のカーボンナノチューブを使用して調製されたテストサンプルにおいては、硬度は500Hvまたはそれ以上であった。
【0068】
また、上述のとおりの方法により調製されたテストサンプルを、引張テストサンプルに加工し、次いで、引張特性を測定した。未加工のアルミニウムは、93MPaの引張応力を示した。カーボンナノチューブを使用して調製したテストサンプルは、134MPa(カーボンナノチューブ:1重量%)および167MPa(カーボンナノチューブ:5重量%)を示した。言い換えれば、引張応力は約80%向上した。
【0069】
未加工のアルミニウムは372MPaのヤング率を示し、1重量%のカーボンナノチューブは650MPaを示し、5重量%のカーボンナノチューブは839MPaを示した。言い換えれば、ヤング率は、2倍またはそれ以上に向上した。したがって、カーボンナノチューブを使用して調製されたナノ粒子が、向上した機械的特性を示したことを見出すことができる。
【0070】
G.電気的特性分析
この例において、カーボンナノチューブにより調製されたナノ粒子からのテストサンプル上で、電気伝導率を測定した。アルミニウムバルク粒子を、カーボンナノチューブを含むアルミニウムナノ粒子に加えることにより粒子が一体化されるようにし、次いで各種のミリメーターサイズで粒子を調製した。
【0071】
次いで、一体化された粒子を、慣用の合金であるALDC 12.1(Woosin Metal Co. Ltd, KSD2331)に加えて、溶解した。図10は、その中で溶融したテストサンプル(カーボンナノチューブにより調製されたもの)を有する合金の電気伝導率の測定結果を示す。
【0072】
未加工のテストサンプルは、84オーム/平方の抵抗を示し、その一方で、0.5重量%のカーボンナノチューブを含むテストサンプルは、52オーム/平方の抵抗を示し、1重量%のカーボンナノチューブを含むテストサンプルは、50オーム/平方の抵抗を示した。このサンプルの結果により、カーボンナノチューブを使用してナノ粒子が調製された場合、向上した電気伝導率を達成できることが可能であることが見出された。
【0073】
H.可燃性(ignitability)分析
この例において、アルミニウムナノ粒子の酸化的性質を測定した。一般的に、アルミニウムは、高酸化力を有することが既知である。アルミニウムがナノ粒子に変化する場合、高比表面積により、大量のアルミニウム原子が一挙に酸化され得る。したがって、アルミニウムナノ粒子は、通常のアルミニウム粉末のそれとは異なる可燃性を有する。
【0074】
また、カーボンナノチューブは、高熱伝導性材料であることが既知である。この理由により、アルミニウムナノ粒子中に含まれるカーボンナノチューブはナノ粒子間において熱を伝達し、これにより、より効率的に酸化を行う。図11は、カーボンナノチューブを使用して調製されたアルミニウムナノ粒子の酸化的特性測定の結果を示す。
【0075】
図11aは、焼成前のアルミニウムナノ粒子の写真である。アルミニウムナノ粒子の焼成を、ガスバーナーを使用して行った。図11bは、ガスバーナーによる焼成後の酸化反応中の写真である。酸化反応の間、赤外線放射温度計(OPL-7)を使用して温度を測定した。
【0076】
結果として、温度が1200℃まで上昇したことが見出された。図11cは、酸化反応完了後の写真である。酸化反応させたアルミニウムは、酸化アルミニウムとなり、その色は白色に変化した。図12は、DTA(セイコーインスツル株式会社(日本国), Seiko Exstar6000)により得られた、アルミニウムナノ粒子の酸化により発生した酸化熱の測定結果を示す。
【0077】
DTAは、所定の速度で材料の温度を上昇させたときにおける、相転移により生じた発熱または吸熱を測定するための機械である。この例において、10℃/分の速度で1300℃まで温度が上昇する間、熱変化が観察された。図12aは、商業的に入手可能な、3μmのサイズのアルミニウム粒子(Samchun Chemical)の測定結果である。
【0078】
アルミニウムの焼成を、650℃またはそれ以上で行い、焼成熱は−82.3kJ/mgであった。図12bは、本発明により調製されたアルミニウムナノ粒子の測定結果である。アルミニウムナノ粒子上で測定された焼成熱は、−111.6kJ/mgであり、アルミニウムナノ粒子は、従来調製されていたアルミニウム粒子より高い可燃性を示した。
【0079】
したがって、この例の結果により、アルミニウムナノ粒子をカーボンナノチューブを使用して調製した場合、高酸化特性による、爆発性を有し、宇宙船用燃料または固形燃料などの可燃性材料に適用することができることがわかる。
【0080】
例1−3:カーボンナノチューブを使用した鉄ナノ粒子の調製および電子顕微鏡(SEM)分析
鉄ナノ粒子を、10重量%のカーボンナノチューブを用い、ボールミル粉砕を6時間行ったことを除いて、例1−1に記載したものと同様の方法により調製した。
【0081】
カーボンナノチューブを使用して調製された鉄ナノ粒子を、調製の前/後において、電子顕微鏡(SEM)により分析した(図18参照)。図18aは、100倍に拡大して観察した、未加工の鉄粒子の写真である。図18bは、カーボンナノチューブを用いた粉砕により得られた鉄ナノ粒子の写真である。
【0082】
分析により、鉄粒子のサイズが1μmまたはそれ以下のナノサイズに縮小したことを見出すことができる。したがって、本発明により、鉄ナノ粒子を、カーボンナノチューブを使用して調製することが可能である。
【0083】
例1−4:カーボンナノチューブを使用したチタンナノ粒子の調製および電子顕微鏡(SEM)分析
チタンナノ粒子を、16重量%のカーボンナノチューブを用い、ボールミル粉砕を6時間行ったことを除いて、例1−1に記載したものと同様の方法により調製した。
【0084】
カーボンナノチューブを使用して調製されたチタンナノ粒子を、調製の前/後において、電子顕微鏡(SEM)により分析した(図19参照)。図19aは、100倍に拡大して観察した、未加工のチタン粒子の写真である。図19bは、カーボンナノチューブを用いた粉砕により得られたチタンナノ粒子の写真である。
【0085】
分析により、チタン粒子のサイズが1μmまたはそれ以下のナノサイズに縮小したことを見出すことができる。したがって、本発明により、チタンナノ粒子を、カーボンナノチューブを使用して調製することが可能である。
【0086】
例2−1:カーボンナノチューブを使用したポリマーナノ粒子の調製
この例において、カーボンナノチューブを使用してポリマーナノ粒子を調製した。この例において使用したカーボンナノチューブは、C−150 P(Bayer社により製造されたもの)であった。
【0087】
ポリマーは、ポリカーボネート(Samsung CHEIL INDUSTRIES, ISO-14000)であった。この例を、例1−1に記載したものと同様の方法で行った。粉砕を6時間行った。図13は、粉砕前/後のポリカーボネートを示す。図13aは、粉砕前のポリカーボネートの写真であり、カーボンナノチューブを20重量%加えた。
【0088】
図13bは、カーボンナノチューブによる6時間の粉砕後のポリカーボネートの写真である。粉砕後、見かけ体積が増加したことが観察された。この結果から、ポリカーボネートナノ粒子が形成されたことが推測される。
【0089】
例2−2:調製されたポリマーナノ粒子の電子顕微鏡(SEM)分析
図14は、電子顕微鏡により得られた、カーボンナノチューブを使用して調製されたポリカーボネートナノ粒子の分析結果である。図14aは、10,000倍に拡大して観察した、未加工のカーボンナノチューブの電子顕微鏡写真であり、カーボンナノチューブは5〜20nmの直径および約10μmの長さを有する。
【0090】
図14bは、100倍に拡大して観察した、ポリカーボネートの電子顕微鏡写真である。ポリカーボネート粒子は、約100μmの直径を有した。図14cは、6時間の粉砕後に得られたポリカーボネートの電子顕微鏡写真(10,000倍に拡大)である。
【0091】
図14dは、図14cを1000倍に拡大した写真である。分析により、ポリカーボネートがカーボンナノチューブによりナノ粒子に粉砕されたことが見出された。したがって、本発明により、ポリマーナノ粒子を、カーボンナノチューブを使用して調製することが可能である。
【0092】
例3−1:カーボンナノチューブを使用したセラミックナノ粒子の調製
この例において、セラミックナノ粒子を、カーボンナノチューブを使用して調製した。セラミックとして、炭化ケイ素(Aldrich, 357391, 400メッシュ)を使用した。カーボンナノチューブとして、C 150−P(Bayer社により製造されたもの)を例2−1と同様に使用した。カーボンナノチューブの濃度は、50重量%であった。
【0093】
この例を、例1−1に記載したものと同様の方法で行った。粉砕を6時間行った。図15は、粉砕前/後のセラミックを示す。図15aは、粉砕前のポリカーボネートの写真であり、15bは、ナノ粒子に粉砕されたセラミックの写真である。粉砕後、見かけ体積が増加したことが観察された。この結果から、炭化ケイ素ナノ粒子が形成されたことが推測される。
【0094】
例3−2:調製されたセラミックナノ粒子の電子顕微鏡(SEM)分析
この例において、カーボンナノチューブを使用して調製された炭化ケイ素ナノ粒子を、電子顕微鏡により観察した。図16は、電子顕微鏡により観察された炭化ケイ素および炭化ケイ素ナノ粒子を示す。
【0095】
図16aは、100倍に拡大して観察した、未加工の炭化ケイ素の写真である。粒子は、10〜30μmの範囲である。図16bは、カーボンナノチューブを用いた粉砕により得られた、炭化ケイ素ナノ粒子の電子顕微鏡写真である。分析により、炭化ケイ素粒子のサイズが1μmまたはそれ以下のナノサイズに縮小したことが見出された。したがって、本発明により、セラミックナノ粒子を、カーボンナノチューブを使用して調製することが可能である。
【0096】
本発明の数種の典型的態様を例示目的のために記載したが、当業者は付属の特許請求の範囲に開示される本発明の範囲および精神から逸脱することなく、均等物の種々の修正、添加、および置換が可能であることを十分に理解するであろう。
【0097】
このように、発明の詳細な記載における特定の記述および有形物(materials)を用いることが可能である。現在ベストモードと見なされる特定の態様を本明細書において詳細に開示したが、これらの例は、本発明の範囲に関して何ら限定することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0098】
アルミニウムの高酸化特性、ナノ粒子の高比表面積およびカーボンナノチューブの高熱伝導性を使用する場合、短時間のうちに酸化反応を生じさせることが可能である。このように、ナノ粒子は、宇宙船用燃料または火薬などの可燃性材料として使用することができる。
【0099】
また、反応時間の調節により、固形燃料として使用することができる。さらに、1200℃またはそれ以上の高温を有することができるため、発煙剤として使用することができる。また、アルミニウムの軽量であることおよびカーボンナノチューブの機械的特性により、ナノ粒子は、軽量で強い高強度ハイブリッド先端材料として使用することができる。図17は、本発明により調製されたナノ粒子の適用性における、概念図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ粒子を調製する方法であって、以下の工程:
(a)粉末粒子およびカーボンナノチューブの混合物を調製すること;および
(b)前記混合物をボールミル粉砕すること、
を含む、前記方法。
【請求項2】
カーボンナノチューブが、単層カーボンナノチューブ(SWNT)、二層カーボンナノチューブ(DWNT)、薄い多層カーボンナノチューブおよび多層カーボンナノチューブ(MWNT)からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
粉末粒子が、金属である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
金属が、金、銀、銅、アルミニウム、マンガン、鉄、スズ、亜鉛およびチタンからなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
金属が、アルミニウムである、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
工程(a)中に、アルゴン(Ar)でパージする工程をさらに含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ボールミル粉砕を、0.5〜12時間、100rpm〜5000rpmにおいて行う、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ボールミル粉砕を、0.5〜12時間、100rpm〜5000rpmにおいて行う、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
ボールミル粉砕により、カーボンナノチューブにより粉砕された粉末粒子およびカーボンナノチューブを含む、ナノ粒子複合材料。
【請求項10】
カーボンナノチューブが、単層カーボンナノチューブ(SWNT)、二層カーボンナノチューブ(DWNT)、薄い多層カーボンナノチューブおよび多層カーボンナノチューブ(MWNT)からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項9に記載のナノ粒子複合材料。
【請求項11】
粉末粒子が、金属である、請求項9または10に記載のナノ粒子複合材料。
【請求項12】
金属が、金、銀、銅、アルミニウム、マンガン、鉄、スズ、亜鉛およびチタンからなる群から選択される、請求項11に記載のナノ粒子複合材料。
【請求項13】
金属が、アルミニウムである、請求項11に記載のナノ粒子複合材料。
【請求項14】
粉末粒子が、1μm以上であり、1cm以下のサイズを有する、粉末請求項9に記載のナノ粒子複合材料。
【請求項15】
ナノ粒子を調製する方法であって、以下の工程:
(a)ポリマー粉末粒子およびカーボンナノチューブの混合物を調製すること;および
(b)前記混合物をボールミル粉砕すること、
を含む、前記方法。
【請求項16】
ボールミル粉砕により、カーボンナノチューブにより粉砕されたポリマー粉末粒子およびカーボンナノチューブを含む、ナノ粒子複合材料。
【請求項17】
ナノ粒子を調製する方法であって、以下の工程:
(a)セラミック粉末粒子およびカーボンナノチューブの混合物を調製すること;および
(b)前記混合物をボールミル粉砕すること、
を含む、前記方法。
【請求項18】
ボールミル粉砕により、カーボンナノチューブにより粉砕されたセラミック粉末粒子およびカーボンナノチューブを含む、ナノ粒子複合材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公表番号】特表2012−516784(P2012−516784A)
【公表日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−549068(P2011−549068)
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【国際出願番号】PCT/KR2010/000729
【国際公開番号】WO2010/090479
【国際公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(511190498)リサーチ アンド ビジネス ファウンデーション オブ ソンギュンガン ユニバーシティ (1)
【出願人】(511190786)デユ スマート アルミニウム カンパニー リミテッド (1)
【Fターム(参考)】