説明

カーボンナノチューブ含有組成物、これからなる塗膜を有する複合体およびその製造方法

【課題】カーボンナノチューブおよび導電性粒状物質自体の特性を損なうことなく、カーボンナノチューブおよび導電性粒状物質を溶媒に分散化または可溶化でき、長期保存においてカーボンナノチューブおよび導電性粒状物質が分離、凝集せず、導電性、成膜性、成形性に優れ、簡便な方法で基材に塗工でき、しかもその塗膜が導電性、透明性等に優れるカーボンナノチューブ含有組成物、これからなる塗膜を有する複合体、およびその製造方法を提供する。
【解決手段】導電性ポリマー(a)、カーボンナノチューブ(b)、導電性粒状物質(c)および溶媒(d)を含有するカーボンナノチューブ含有組成物を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブ含有組成物、これからなる塗膜を有する複合体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブが1991年に飯島等によってはじめて発見されて以来(非特許文献1)、その物性評価、機能解明が行われており、その応用に関する研究開発も盛んに実施されている。しかしながら、カーボンナノチューブは、絡まった状態で製造されるため、取り扱いが非常に煩雑になるという問題がある。樹脂や溶液に混合した場合は、カーボンナノチューブはさらに凝集し、カーボンナノチューブ本来の特性が発揮できないという問題もある。
【0003】
このため、カーボンナノチューブを物理的に処理したり、化学的に修飾したりして、溶媒や樹脂に均一に分散または溶解する試みがなされている。
例えば、単層カーボンナノチューブを強酸中で超音波処理することにより単層カーボンナノチューブを短く切断して分散する方法が提案されている(非特許文献2)。しかしながら、強酸中で処理を実施するため、操作が煩雑となり、工業的には適した方法ではなく、その分散化の効果も十分とはいえない。
【0004】
そこで、上記提案のように切断された単層カーボンナノチューブは、その両末端が開いており、カルボキシル基等の含酸素官能基で終端されていることに着目し、カルボキシル基を酸塩化物にした後、アミン化合物と反応させ長鎖アルキル基を導入し、溶媒に可溶化することが提案されている(非特許文献3)。しかしながら、該方法では単層カーボンナノチューブに共有結合によって長鎖アルキル基を導入しているため、カーボンナノチューブのグラフェンシート構造の損傷やカーボンナノチューブ自体の特性に影響を与えるなどの問題点が残されている。
【0005】
他の試みとしては、ピレン分子が強い相互作用によってカーボンナノチューブ表面上に吸着することを利用して、ピレン分子にアンモニウムイオンを有する置換基を導入し、これを単層カーボンナノチューブとともに水中で超音波処理し、単層カーボンナノチューブに非共有結合的に吸着させることにより水溶性の単層カーボンナノチューブを製造する方法が報告されている(非特許文献4)。該方法によれば、非共有結合型の化学修飾のためグラフェンシートの損傷等は抑制されるが、非導電性のピレン分子が存在するため、カーボンナノチューブの導電性能を低下させるという課題がある。
【0006】
汎用の界面活性剤やポリマー系分散剤を用いて、カーボンナノチューブ自体の特性を損なうことなく、カーボンナノチューブを水、有機溶媒等の各種溶媒に分散化または可溶化して分散液を得る方法が提案されている(特許文献1、特許文献2)。該分散液においては、カーボンナノチューブが安定に分散しているものの、該分散液から形成される塗膜や複合体中でのカーボンナノチューブの分散状態やその導電性は、いまだ不十分である。
【0007】
また、カーボンナノチューブ、導電性ポリマー、溶媒からなる組成物、およびそれから製造される複合体が提案されている(特許文献3)。該組成物および複合体は、導電性ポリマーを共存させることでカーボンナノチューブ自体の特性を損なうことなく、カーボンナノチューブを水、有機溶媒、含水有機溶媒等の溶媒に分散化または可溶化し、長期保存安定性に優れる。導電性ポリマーが共存したカーボンナノチューブ含有組成物は、導電性、成膜性、成形性に優れ、簡便な方法で基材に塗工でき、基材を被覆できるが、カーボンナノチューブに比べて導電性ポリマーの導電性が低いため、カーボンナノチューブ間の接触抵抗が高くなり、カーボンナノチューブ本来の導電性が十分に発現しているとは言い難い。
【0008】
一方、熱可塑性樹脂中に導電性粒子およびカーボンナノチューブを分散してなる導電性樹脂組成物が提案されている(特許文献4)。熱可塑性樹脂中においてカーボンナノチューブが導電性粒子間の導通を取る役目をすることにより、少量の導電性粒子で高い導電性を発現する。しかしながら、該組成物は、単にミルにて溶融混練して得られたものであるため、カーボンナノチューブの分散が不十分であり、導電性の向上は十分とは言えない。また、導電性の発現は導電性粒子に依存するものであり、カーボンナノチューブ自体はそれら粒子の導通に使われているのみであり、カーボンナノチューブの導電性が十分に発現しているとは言えない。
【0009】
さらに、導電性酸化物微粒子と導電性ポリマーとを含む導電性組成物が提案されている(特許文献5、6)。導電性ポリマーが、導電性酸化物微粒子間を導通する役目をはたし、少量の導電性酸化物微粒子によって高い導電性を発現する。しかしながら、導電性酸化物微粒子に比べて導電性ポリマーの導電性が低いため、導電性酸化物微粒子の導電性が十分に発現されているとは言い難い。
【特許文献1】国際公開第2002/016257号パンフレット
【特許文献2】特開2005−35810号公報
【特許文献3】国際公開第2004/039893号パンフレット
【特許文献4】特開2003−34751号公報
【特許文献5】特開2004−269702号公報
【特許文献6】特開2005−325303号公報
【非特許文献1】S.Iijima、Nature、1991年、第354巻、p.56
【非特許文献2】R.E.Smalley等、Science、1998年、第280巻、p.1253
【非特許文献3】J.Chen等、Science、1998年、第282巻、p.95
【非特許文献4】Nakajima等、Chem.Lett.、2002年、p.638
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、カーボンナノチューブおよび導電性粒状物質自体の特性を損なうことなく、カーボンナノチューブおよび導電性粒状物質を溶媒に分散化または可溶化でき、長期保存においてカーボンナノチューブおよび導電性粒状物質が分離、凝集せず、導電性、成膜性、成形性に優れ、簡便な方法で基材に塗工でき、しかもその塗膜が導電性、透明性等に優れるカーボンナノチューブ含有組成物、これからなる塗膜を有する複合体、およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、これらの課題を解決するため鋭意研究をした結果、導電性ポリマーを共存させることにより、カーボンナノチューブおよび導電性粒状物質を溶媒に分散化または可溶化でき、導電性、成膜性、成形性、透明性に優れる塗膜を形成できることを見出だし、本発明に到達した。
【0012】
すなわち、本発明の第1は、導電性ポリマー(a)、カーボンナノチューブ(b)、導電性粒状物質(c)および溶媒(d)を含有するカーボンナノチューブ含有組成物である。
本発明のカーボンナノチューブ含有組成物は、さらに塩基性化合物(e)および/または高分子化合物(f)を含有することで、その性能の向上をはかることができる。
【0013】
本発明の第2は、基材の少なくとも一つの面上に、本発明のカーボンナノチューブ含有組成物からなる塗膜を有する複合体である。
前記塗膜において、カーボンナノチューブ(b)と導電性粒状物質(c)とが相分離構造を形成していることにより、その性能の向上をはかることができる。
【0014】
本発明の第3は、基材の少なくとも一つの面上に、本発明のカーボンナノチューブ含有組成物を塗工し、活性エネルギー線を照射するおよび/または常温で放置するもしくは加熱処理することによって塗膜を形成する複合体の製造方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明のカーボンナノチューブ含有組成物は、カーボンナノチューブおよび導電性粒状物質自体の特性を損なうことなく、カーボンナノチューブおよび導電性粒状物質を溶媒に分散化または可溶化でき、長期保存においてカーボンナノチューブおよび導電性粒状物質が分離、凝集しない。また、本発明のカーボンナノチューブ含有組成物によれば、該組成物を基材に塗工することで、導電性ポリマー、導電性粒状物質およびカーボンナノチューブ自体の特性を発揮させて、湿度依存性がなく導電性、成膜性に優れた塗膜を形成できる。しかも、該塗膜は、導電性、透明性等に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
<導電性ポリマー(a)>
本発明のカーボンナノチューブ含有組成物が導電性ポリマー(a)を含有することにより、カーボンナノチューブ(b)の溶解性、分散性が向上し、組成物が安定化し、その結果、塗膜の強度、硬度等の物性や導電性等がさらに向上する。
【0017】
導電性ポリマー(a)は、フェニレンビニレン、ビニレン、チエニレン、ピロリレン、フェニレン、イミノフェニレン、イソチアナフテン、フリレン、カルバゾリレン等を繰り返し単位として有するπ共役系高分子である。導電性ポリマー(a)としては、チエニレン、ピロリレン、イミノフェニレン、フェニレンビニレン、カルバゾリレン、イソチアナフテンを有するπ共役系高分子の骨格を有する導電性ポリマーが特に好ましい。
【0018】
導電性ポリマー(a)のうち、溶解性、導電性、成膜性等の観点から、スルホン酸基および/またはカルボキシル基を有する水溶性導電性ポリマー、またはスルホン酸基の塩および/またはカルボキシル基の塩を有する導電性ポリマーが好ましく、スルホン酸基のアンモニウム塩(−SO)および/またはカルボキシル基のアンモニウム塩(−COO)を有する導電性ポリマーが特に好ましい。
【0019】
ここで、スルホン酸基(のアンモニウム塩)および/またはカルボキシル基(のアンモニウム塩)を有する導電性ポリマーとは、π共役系高分子の骨格または該高分子中の窒素原子上に、スルホン酸基(のアンモニウム塩)および/またはカルボキシル基(のアンモニウム塩)を有する導電性ポリマー;またはπ共役系高分子の骨格または該高分子中の窒素原子上に、スルホン酸基(のアンモニウム塩)および/またはカルボキシル基(のアンモニウム塩)で置換されたアルキル基もしくはエーテル結合を含むアルキル基を有する導電性ポリマーである。
アンモニウム塩のアンモニウムイオン(M)は、下記式(1)で示される。
【0020】
【化1】

【0021】
(式(1)中、R48〜R51は各々独立に、H、炭素数1〜24のアルキル基、アリール基、アラルキル基、フェニル基、ベンジル基、−R35OH、−CONHまたは−NHであり、R48〜R51のうち少なくとも1つが炭素数5以上の基であり、R35は炭素数1〜24のアルキレン基、アリーレン基またはアラルキレン基である。)
【0022】
スルホン酸および/またはカルボキシル基を有する水溶性導電性ポリマーとしては、例えば、特開昭61−197633号公報、特開昭63−39916号公報、特開平01−301714号公報、特開平05−504153号公報、特開平05−503953号公報、特開平04−32848号公報、特開平04−328181号公報、特開平06−145386号公報、特開平06−56987号公報、特開平05−226238号公報、特開平05−178989号公報、特開平06−293828号公報、特開平07−118524号公報、特開平06−32845号公報、特開平06−87949号公報、特開平06−256516号公報、特開平07−41756号公報、特開平07−48436号公報、特開平04−268331号公報、特開平09−59376号公報、特開2000−172384号公報、特開平06−49183号公報、特開平10−60108号公報に示された水溶性導電性ポリマーが好ましい。
【0023】
スルホン酸基のアンモニウム塩および/またはカルボキシル基のアンモニウム塩を有する導電性ポリマーは、スルホン酸および/またはカルボキシル基を有する水溶性導電性ポリマーと、アンモニウム塩類および/またはアミン類とを反応させることにより得られる。
【0024】
スルホン酸および/またはカルボキシル基を有する水溶性導電性ポリマー、またはスルホン酸基のアンモニウム塩および/またはカルボキシル基のアンモニウム塩を有する導電性ポリマーとしては、下記式(2)〜(10)から選ばれた少なくとも1種以上の繰り返し単位を、ポリマー全体の繰り返し単位の総数中に20〜100%有する導電性ポリマーが好ましい。
【0025】
【化2】

【0026】
(式(2)中、R、Rは各々独立に、H、−SO、−SO、−SOH、−R35SO、−R35SO、−R35SOH、−OCH、−CH、−C、−F、−Cl、−Br、−I、−N(R35、−NHCOR35、−OH、−O、−SR35、−OR35、−OCOR35、−NO、−COO、−COOH、−R35COOH、−R35COO、−COOR35、−COR35、−CHOおよび−CNからなる群より選ばれ、ここで、Mはアンモニウムイオンであり、R35は炭素数1〜24のアルキル基、アリール基もしくはアラルキル基、またはアルキレン基、アリーレン基もしくはアラルキレン基であり、かつR、Rのうち少なくとも1つが−SO、−SOH、−R35SO、−R35SOH、−COOH、−R35COOH、−SO、−R35SO、−COO、−R35COOからなる群より選ばれた基である。)
【0027】
【化3】

【0028】
(式(3)中、R、Rは各々独立に、H、−SO、−SO、−SOH、−R35SO、−R35SO、−R35SOH、−OCH、−CH、−C、−F、−Cl、−Br、−I、−N(R35、−NHCOR35、−OH、−O、−SR35、−OR35、−OCOR35、−NO、−COO、−COOH、−R35COOH、−R35COO、−COOR35、−COR35、−CHOおよび−CNからなる群より選ばれ、ここで、Mはアンモニウムイオンであり、R35は炭素数1〜24のアルキル基、アリール基もしくはアラルキル基、またはアルキレン基、アリーレン基もしくはアラルキレン基であり、かつR、Rのうち少なくとも1つが−SO、−SOH、−R35SO、−R35SOH、−COOH、−R35COOH、−SO、−R35SO、−COO、−R35COOからなる群より選ばれた基である。)
【0029】
【化4】

【0030】
(式(4)中、R〜Rは各々独立に、H、−SO、−SO、−SOH、−R35SO、−R35SO、−R35SOH、−OCH、−CH、−C、−F、−Cl、−Br、−I、−N(R35、−NHCOR35、−OH、−O、−SR35、−OR35、−OCOR35、−NO、−COO、−COOH、−R35COOH、−R35COO、−COOR35、−COR35、−CHOおよび−CNからなる群より選ばれ、ここで、Mはアンモニウムイオンであり、R35は炭素数1〜24のアルキル基、アリール基もしくはアラルキル基、またはアルキレン基、アリーレン基もしくはアラルキレン基であり、かつR〜Rのうち少なくとも1つが−SO、−SOH、−R35SO、−R35SOH、−COOH、−R35COOH、−SO、−R35SO、−COO、−R35COOからなる群より選ばれた基である。)
【0031】
【化5】

【0032】
(式(5)中、R〜R13は各々独立に、H、−SO、−SO、−SOH、−R35SO、−R35SO、−R35SOH、−OCH、−CH、−C、−F、−Cl、−Br、−I、−N(R35、−NHCOR35、−OH、−O、−SR35、−OR35、−OCOR35、−NO、−COO、−COOH、−R35COOH、−R35COO、−COOR35、−COR35、−CHOおよび−CNからなる群より選ばれ、ここで、Mはアンモニウムイオンであり、R35は炭素数1〜24のアルキル基、アリール基もしくはアラルキル基、またはアルキレン基、アリーレン基もしくはアラルキレン基であり、かつR〜R13のうち少なくとも1つが−SO、−SOH、−R35SO、−R35SOH、−COOH、−R35COOH、−SO、−R35SO、−COO、−R35COOからなる群より選ばれた基である。)
【0033】
【化6】

【0034】
(式(6)中、R14は、−SO、−SOH、−R83SO、−R83SOH、−COOH、−R83COOH、−SO、−R83SO、−COOおよび−R83COOからなる群より選ばれ、ここで、Mはアンモニウムイオンであり、R83は炭素数1〜24のアルキレン基、アリーレン基またはアラルキレン基である。)
【0035】
【化7】

【0036】
(式(7)中、R52〜R57は各々独立に、H、−SO、−SO、−SOH、−R35SO、−R35SO、−R35SOH、−OCH、−CH、−C、−F、−Cl、−Br、−I、−N(R35、−NHCOR35、−OH、−O、−SR35、−OR35、−OCOR35、−NO、−COO、−COOH、−R35COOH、−R35COO、−COOR35、−COR35、−CHOおよび−CNからなる群より選ばれ、ここで、Mはアンモニウムイオンであり、R35は炭素数1〜24のアルキル基、アリール基もしくはアラルキル基、またはアルキレン基、アリーレン基もしくはアラルキレン基であり、かつR52〜R57のうち少なくとも1つが−SO、−SOH、−R35SO、−R35SOH、−COOH、−R35COOH、−SO、−R35SO、−COO、−R35COOからなる群より選ばれた基であり、Htは、NR82、S、O、SeおよびTeよりなる群から選ばれたヘテロ原子基であり、R82はH、炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐のアルキル基、または置換もしくは非置換のアリール基であり、R52〜R57の炭化水素鎖は互いに任意の位置で結合して、かかる基により置換を受けている炭素原子とともに少なくとも1つ以上の3〜7員環の飽和または不飽和炭化水素の環状構造を形成する二価鎖を形成してもよく、このように形成される環状結合鎖にはカルボニル、エーテル、エステル、アミド、スルフィド、スルフィニル、スルホニル、イミノの結合を任意の位置に含んでもよく、nはヘテロ環と置換基R53〜R56を有するベンゼン環に挟まれた縮合環の数であり、0〜3の整数である。)
【0037】
【化8】

【0038】
(式(8)中、R58〜R66は各々独立に、H、−SO、−SO、−SOH、−R35SO、−R35SO、−R35SOH、−OCH、−CH、−C、−F、−Cl、−Br、−I、−N(R35、−NHCOR35、−OH、−O、−SR35、−OR35、−OCOR35、−NO、−COO、−COOH、−R35COOH、−R35COO、−COOR35、−COR35、−CHOおよび−CNからなる群より選ばれ、ここで、Mはアンモニウムイオンであり、R35は炭素数1〜24のアルキル基、アリール基もしくはアラルキル基、またはアルキレン基、アリーレン基もしくはアラルキレン基であり、かつR58〜R66のうち少なくとも1つが−SO、−SOH、−R35SO、−R35SOH、−COOH、−R35COOH、−SO、−R35SO、−COO、−R35COOからなる群より選ばれた基であり、nは置換基R58およびR59を有するベンゼン環と置換基R61〜R64を有するベンゼン環に挟まれた縮合環の数であり、0〜3の整数である。)
【0039】
【化9】

【0040】
(式(9)中、R67〜R76は各々独立に、H、−SO、−SO、−SOH、−R35SO、−R35SO、−R35SOH、−OCH、−CH、−C、−F、−Cl、−Br、−I、−N(R35、−NHCOR35、−OH、−O、−SR35、−OR35、−OCOR35、−NO、−COO、−COOH、−R35COOH、−R35COO、−COOR35、−COR35、−CHOおよび−CNからなる群より選ばれ、ここで、Mはアンモニウムイオンであり、R35は炭素数1〜24のアルキル基、アリール基もしくはアラルキル基、またはアルキレン基、アリーレン基もしくはアラルキレン基であり、かつR67〜R76のうち少なくとも1つが−SO、−SOH、−R35SO、−R35SOH、−COOH、−R35COOH、−SO、−R35SO、−COO、−R35COOからなる群より選ばれた基であり、nは置換基R67〜R69を有するベンゼン環とベンゾキノン環に挟まれた縮合環の数であり、0〜3の整数である。)
【0041】
【化10】

【0042】
(式(10)中、R77〜R81は各々独立に、H、−SO、−SO、−SOH、−R35SO、−R35SO、−R35SOH、−OCH、−CH、−C、−F、−Cl、−Br、−I、−N(R35、−NHCOR35、−OH、−O、−SR35、−OR35、−OCOR35、−NO、−COO、−COOH、−R35COOH、−R35COO、−COOR35、−COR35、−CHOおよび−CNからなる群より選ばれ、ここで、Mはアンモニウムイオンであり、R35は炭素数1〜24のアルキル基、アリール基もしくはアラルキル基、またはアルキレン基、アリーレン基もしくはアラルキレン基であり、かつR77〜R81のうち少なくとも1つが−SO、−SOH、−R35SO、−R35SOH、−COOH、−R35COOH、−SO、−R35SO、−COO、−R35COOからなる群より選ばれた基であり、Xa−は、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、フッ素イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、硫酸水素イオン、リン酸イオン、ほうフッ化イオン、過塩素酸イオン、チオシアン酸イオン、酢酸イオン、プロピオン酸イオン、メタンスルホン酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、およびトリフルオロメタンスルホン酸イオンよりなる1〜3価の陰イオン群より選ばれた少なくとも1種の陰イオンであり、aはXのイオン価数であり、1〜3の整数であり、pはドープ率であり、0.001〜1である。)
【0043】
スルホン酸および/またはカルボキシル基を有する水溶性導電性ポリマーとしては、ポリエチレンジオキシチオフェンポリスチレンスルフェートも好ましい。該水溶性導電性ポリマーは、導電性ポリマーの骨格にスルホン酸基は導入されていないが、ドーパントとしてポリスチレンスルホン酸が付与している構造を有している。
スルホン酸基のアンモニウム塩および/またはカルボキシル基のアンモニウム塩を有する導電性ポリマーとしては、ポリエチレンジオキシチオフェンポリスチレンスルホン酸アンモニウムまたは置換アンモニウム塩も好ましい。該導電性ポリマーは、導電性ポリマーの骨格にスルホン酸アンモニウム塩基は導入されていないが、ドーパントとしてポリスチレンスルホン酸アンモニウム塩が付加している構造を有している。
【0044】
これらのポリマーは、3,4−エチレンジオキシチオフェン(バイエル社製、Baytron M)をトルエンスルホン酸鉄(バイエル社製、Baytron C)等の酸化剤で重合することにより製造されるポリエチレンジオキシチオフェンにポリスチレンスルホン酸を付加させる、または該付加体をアミン類もしくはアンモニアと反応させることにより製造できる。また、該ポリマーは、バイエル社製のBaytron PまたはBaytron Pとアミン類および/またはアンモニウム類とを反応させることにより製造できる。
【0045】
以上のスルホン酸基のアンモニウム塩および/またはカルボキシル基のアンモニウム塩を有する導電性ポリマーのうち、下記式(11)で表される繰り返し単位を、ポリマー全体の繰り返し単位の総数中に20〜100%含む導電性ポリマーがさらに好ましい。
【0046】
【化11】

【0047】
(式(11)中、yは0<y<1の任意の数であり、R15〜R32は各々独立に、H、−SO、−SO、−SOH、−R35SO、−R35SO、−R35SOH、−OCH、−CH、−C、−F、−Cl、−Br、−I、−N(R35、−NHCOR35、−OH、−O、−SR35、−OR35、−OCOR35、−NO、−COO、−COOH、−R35COOH、−R35COO、−COOR35、−COR35、−CHOおよび−CNからなる群より選ばれ、ここで、Mはアンモニウムイオンであり、R35は炭素数1〜24のアルキル基、アリール基もしくはアラルキル基、またはアルキレン基、アリーレン基もしくはアラルキレン基であり、R15〜R32のうち少なくとも1つが−SO、−SOH、−R35SO、−R35SOH、−COOH、−R35COOH、−SO、−R35SO、−COO、−R35COOからなる群より選ばれた基である。)
【0048】
ここで、ポリマーの繰り返し単位の総数に対するスルホン酸基および/またはカルボキシル基、またはスルホン酸基のアンモニウム塩および/またはカルボキシル基のアンモニウム塩を有する繰り返し単位の含有量が50%以上の導電性ポリマーは、有機溶媒、含水有機溶媒等の溶媒への溶解性が非常に良好なため、好ましく用いられる。スルホン酸基および/またはカルボキシル基、またはスルホン酸基のアンモニウム塩および/またはカルボキシル基のアンモニウム塩を有する繰り返し単位の含有量は、70%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましく、100%が特に好ましい。
【0049】
また、芳香環に付加する置換基は、導電性および溶解性の観点から、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基等が好ましく、アルコキシ基が特に好ましい。
これらの組み合わせのうち、最も好ましい水溶性導電性ポリマーは、下記式(12)のポリマーである。
【0050】
【化12】

【0051】
(式(12)中、R33は、スルホン酸基、カルボキシル基、これらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩および置換アンモニウム塩からなる群より選ばれた1つの基であり、これらのうち少なくとも1つがスルホン酸基、カルボキシル基、スルホン酸基のアンモニウム塩、カルボキシル基のアンモニウム塩からなる群より選ばれた基であり、R34はメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ドデシル基、テトラコシル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ヘプトキシ基、ヘクソオキシ基、オクトキシ基、ドデコキシ基、テトラコソキシ基、フルオロ基、クロロ基およびブロモ基からなる群より選ばれた1つの基であり、Xは0<X<1の任意の数であり、nは重合度であり、3以上である。)
【0052】
導電性ポリマー(a)は、化学重合、電解重合等の各種合成法によって製造できる。例えば、本発明者らが提案した特開平7−196791号公報、特開平7−324132号公報に記載の合成方法が適用される。すなわち、下記式(13)で表される酸性基置換アニリン、そのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、置換アンモニウム塩からなる群より選ばれた1つの化合物を、塩基性化合物を含む溶液中で酸化剤により重合させることにより製造できる。
【0053】
【化13】

【0054】
(式(13)中、R36〜R41は各々独立に、H、−SO、−SO、−SOH、−R35SO、−R35SO、−R35SOH、−OCH、−CH、−C、−F、−Cl、−Br、−I、−N(R35、−NHCOR35、−OH、−O、−SR35、−OR35、−OCOR35、−COO、−COOH、−R35COOH、−R35COO、−COOR35、−COR35、−CHOおよび−CNからなる群より選ばれ、ここで、Mはアンモニウムイオンであり、R35は炭素数1〜24のアルキル基、アリール基もしくはアラルキル基、またはアルキレン基、アリーレン基もしくはアラルキレン基であり、R36〜R41のうち少なくとも1つが−SO、−SOH、−R35SO、−R35SOH、−COOH、−R35COOH、−SO、−R35SO、−COO、−R35COOからなる群より選ばれた基である。)
【0055】
導電性ポリマー(a)の製造方法としては、アルコキシ基置換アミノベンゼンスルホン酸、そのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、置換アンモニウム塩を、塩基性化合物を含む溶液中で酸化剤により重合させる方法が特に好ましい。
【0056】
また、スルホン酸基および/またはカルボキシル基を有する水溶性導電性ポリマーから、スルホン酸基のアンモニウム塩および/またはカルボキシル基のアンモニウム塩を有する導電性ポリマーを製造する方法としては、下記式(14)で示されるアンモニウム塩類および/または下記式(15)で示されるアミン類と、スルホン酸基および/またはカルボキシル基を有する水溶性導電性ポリマーとを、溶液中で反応させる方法が挙げられる。
【0057】
【化14】

【0058】
(式(14)中、R148〜R151は各々独立に、H、−R35OH、炭素数1〜24のアルキル基、アリール基もしくはアラルキル基、フェニル基、ベンジル基、−CONHまたは−NHであり、かつR148〜R151のうち少なくとも1つが炭素数5以上の基であり、R35は炭素数1〜24のアルキレン基、アリーレン基またはアラルキレン基であり、XZ−は水酸化物イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、フッ素イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、硫酸水素イオン、アミド硫酸イオン、亜硫酸イオン、ホスフィン酸イオン、リン酸イオン、ピロリン酸イオン、トリポリリン酸イオン、ほうフッ化イオン、過塩素酸イオン、チオシアン酸イオン、酢酸イオン、プロピオン酸イオン、メタンスルホン酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン、吉草酸イオン、ドデシルベンゼンスルホン酸イオン、カンファスルホン酸イオン、酪酸イオン、蟻酸イオン、トリメチル酢酸イオン、ブロモ酢酸イオン、乳酸イオン、クエン酸イオン、コハク酸イオン、シュウ酸イオン、酒石酸イオン、フマル酸イオン、マレイン酸イオン、マロン酸イオン、アスコルビン酸イオン、アニス酸イオン、アントラニル酸イオン、安息香酸イオン、ケイ皮酸イオン、フェニル酢酸イオン、フタル酸イオン、アニリンスルホン酸イオン、チオカルボン酸イオン、メチルスルフィン酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、およびトリフルオロメタンスルホン酸イオンよりなる1〜3価の陰イオン群より選ばれた少なくとも1種の陰イオンであり、ZはXのイオン価数であり、1〜3の整数であり、jは1〜3の整数である。)
【0059】
【化15】

【0060】
(式(15)中、R145〜R147は各々独立に、H、炭素数1〜24のアルキル基、アリール基もしくはアラルキル基、フェニル基、ベンジル基、−R35OH、−CONHまたは−NHであり、かつR145〜R147のうち少なくとも1つが炭素数5以上の基であり、R35は炭素数1〜24のアルキレン基、アリーレン基またはアラルキレン基である。)
【0061】
アンモニウム塩類としては、ハロゲン化アルキルジメチルベンジルアンモニウム(塩化ベンザルコニウム、塩化トリメチルベンジルアンモニウム等)、ハロゲン化アルキルジエチルベンジルアンモニウム(塩化アルキルジエチルベンジルアンモニウム、臭化トリエチルベンジルアンモニウム等)、ハロゲン化テトラアルキルアンモニウム(塩化トリオクチルメチルアンモニウム等)、水酸化トリメチルベンジルアンモニウムが好ましい。
【0062】
アミン類としては、ベンジルアミン、トリ−n−オクチルアミン、ジ−n−オクチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピルアミン、アニリン類(アニリン、ジメチルアニリン、ジエチルアニリン、ジ−n−プロピルアニリン、ジ−iso−プロピルアニリン等)が好ましい。
【0063】
導電性ポリマー(a)の質量平均分子量は、導電性、成膜性および膜強度に優れる点から、GPCのポリエチレングリコール換算で、2000〜300万が好ましく、3000〜100万がより好ましく、5000〜50万が特に好ましい。
【0064】
導電性ポリマー(a)はそのまま用いてもよく、公知の方法によって酸によるドーピング処理を施して、外部ドーパントを付与して用いてもよい。例えば、酸性溶液中に導電性ポリマー(a)を浸漬させる方法等によりドーピング処理を施すことができる。酸性溶液としては、無機酸(塩酸、硫酸、硝酸等)、有機酸(p−トルエンスルホン酸、カンファスルホン酸、安息香酸、これらの骨格を有する誘導体等)、高分子酸(ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパン)スルホン酸、ポリビニル硫酸、これらの骨格を有する誘導体等)を含む水溶液もしくは含水有機溶媒の溶液である。これらの無機酸、有機酸、高分子酸は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を任意の割合で混合して用いてもよい。
【0065】
<カーボンナノチューブ(b)>
カーボンナノチューブ(b)としては、通常のカーボンナノチューブ、すなわち、単層カーボンナノチューブ、何層かが同心円状に重なった多層カーボンナノチューブ、これらがコイル状になったもの等が挙げられる。
カーボンナノチューブ(b)についてさらに詳しく説明すると、厚さ数原子層のグラファイト状炭素原子面を丸めた円筒が、単層または複数個入れ子構造になったものであり、nmオーダーの外径の極めて微小な物質である。
【0066】
カーボンナノチューブ(b)としては、カーボンナノチューブの片側が閉じた形をしたカーボンナノホーンやその頭部に穴があいたコップ型のナノカーボン物質等も用いることができる。また、カーボンナノチューブ(b)の類縁体であるフラーレン、金属内包フラーレン、玉葱状フラーレン、カーボンナノファイバー、気相成長カーボン(VGCF)、ピーポッド、カーボンナノ粒子等も用いることができる。
【0067】
カーボンナノチューブ(b)の製造方法としては、二酸化炭素の接触水素還元、アーク放電法、レーザー蒸発法、CVD法、気相成長法、気相流動法、一酸化炭素を高温高圧化で鉄触媒とともに反応させて気相で成長させるHiPco法等が挙げられる。
該製造方法によって得られるカーボンナノチューブ(b)としては、単層カーボンナノチューブまたは多層カーボンナノチューブが好ましい。
【0068】
カーボンナノチューブ(b)としては、各種機能を十分に発現できる点から、種々の精製法(洗浄法、遠心分離法、ろ過法、酸化法、クロマトグラフ法等)によって、より高純度化されたカーボンナノチューブが好ましい。
【0069】
また、カーボンナノチューブ(b)としては、ボール型混練装置(ボールミル、振動ミル、サンドミル、ロールミル等)等を用いて粉砕しているものや、化学的、物理的処理によって短く切断されているものも用いることができる。
【0070】
<導電性粒状物質(c)>
導電性粒状物質(c)は、導電性を有する粒子状の物質である。
導電性粒状物質(c)としては、有機系粒子、無機系粒子、セラミックス系粒子、金属酸化物粒子、金属粒子、染料、顔料等が挙げられる。具体的には、樹脂粒子(アクリル系等)、シリカ、コロイダルシリカ、板状アルミナ、繊維状アルミナ、ジルコニア、スピネル、タルク、ムライト、コージエライト、炭化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化イットリウム、酸化セリウム、酸化サマリウム、酸化ランタン、酸化テルビウム、酸化ユーロピウム、酸化ネオジム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化錫、酸化銅、酸化ホルミニウム、酸化ビスマス、酸化コバルト、フッ化グネシウム、酸化スズ、酸化インジウム、アンチモン含有酸化スズ(ATO)、スズ含有酸化インジウム(ITO)、アンチモ酸亜鉛、五酸化アンチモン、金属粒子(金、銀、銅、ニッケル等)、ヘマタイト、コバルトブルー、コバルトバイオレット、コバルトグリーン、マグネタイト、Mn−Znフェライト、Ni−Znフェライト、チタン酸バリウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。
【0071】
これらのうち、導電性の観点からは、酸化イットリウム、酸化セリウム、酸化サマリウム、酸化ランタン、酸化テルビウム、酸化ユーロピウム、酸化ネオジム、酸化亜鉛、酸化チタン、フッ化マグネシウム、酸化スズ、酸化インジウム、ATO、ITO、アンチモ酸亜鉛、五酸化アンチモン、金属粒子(金、銀、銅、ニッケル等)が好ましい。
また、溶媒(d)に対する分散性の観点からは、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化インジウム、ATO、ITO、アンチモ酸亜鉛、五酸化アンチモン、金属粒子(金、銀、銅、ニッケル等)が好ましい。
【0072】
導電性粒状物質(c)の形態としては、粉体、または溶媒(水、有機溶媒または含水有機溶媒)に分散された分散液が好ましい。有機溶媒としては、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、プロピルアルコール、ブタノール、ペンタノール等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、エチルイソブチルケトン、メチルイソブチルケトン等)、エチレングリコール類(エチレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル等)、プロピレングリコール類(プロピレングリコール、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル等)等が好ましい。
【0073】
導電性粒状物質(c)の粒子径は、1nm〜50μmが好ましく、1nm〜10μmがより好ましく、1nm〜1μmがさらに好ましい。粒子径が大きすぎると透明性が不足し、また導電性粒状物質(c)自体の溶液安定性も低下してしまう。
導電性粒状物質(c)の形状としては、球状、針状、扁平状等が挙げられる。
【0074】
導電性粒状物質(c)を含有するカーボンナノチューブ含有組成物からなる塗膜は、以下のいずれかの理由から導電性が向上する。
(I)塗膜中でカーボンナノチューブ(b)および導電性粒状物質(c)が均一に分散し、導電性粒状物質(c)の間にカーボンナノチューブ(b)が効率よい導通パスを形成できるため、塗膜の導電性が向上する。
(II)塗膜中でカーボンナノチューブ(b)と導電性粒状物質(c)とが相分離構造を形成し、カーボンナノチューブ(b)または導電性粒状物質(c)が微凝集状態の導電性ネットワークを形成できるため、塗膜の導電性が向上する。
ここで、相分離構造とは、導電性粒状物質(c)とカーボンナノチューブ(b)からなる海−島構造である。導電性の観点から、(II)の相分離構造(海−島構造)が形成されていること好ましく、導電性粒状物質(c)からなる海構造中に、カーボンナノチューブ(b)からなる島構造が存在する微凝集状態の導電性ネットワーク構造が形成されていることがさらに好ましい。
【0075】
(I)、(II)いずれの場合も、カーボンナノチューブ(b)間、導電性粒状物質(c)間および/またはカーボンナノチューブ(b)−導電性粒状物質(c)間の接触抵抗を低減でき、塗膜の導電性が向上する。
また、(I)、(II)いずれの場合も、カーボンナノチューブ(b)が存在する部分と導電性粒状物質(c)によりカーボンナノチューブ(b)が存在しない部分がはっきりと分離されるため、カーボンナノチューブ(b)による光の吸収、散乱、反射が抑制され、塗膜の透明性も向上し、機械強度、熱伝導性等のカーボンナノチューブの特性も向上する傾向がある。
【0076】
<溶媒(d)>
本発明のカーボンナノチューブ含有組成物が溶媒(d)を含有することにより、カーボンナノチューブ(b)および導電性粒状物質(c)の分散性がより向上し、塗布性、操作性等も向上する。
【0077】
溶媒(d)としては、カーボンナノチューブ(b)を溶解または分散するものが好ましく、導電性ポリマー(a)、導電性粒状物質(c)、多官能(メタ)アクリレート(g)および重合開始剤(h)を溶解または分散するがさらに好ましい。
【0078】
溶媒(d)としては、水、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、プロピルアルコール、ブタノール等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、エチルイソブチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジアセトンアルコール等)、エステル類(酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸n−アミル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等)、エチレングリコール類(エチレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル等)、プロピレングリコール類(プロピレングリコール、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等)、アミド類(N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等)、ピロリドン類(N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン等)、ヒドロキシエステル類(ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、乳酸メチル、乳酸エチル、β−メトキシイソ酪酸メチル、α−ヒドロキシイソ酪酸メチル等)、アニリン類(アニリン、N−メチルアニリン等)、芳香族炭化水素(ベンゼン、トルエン、キシレン等)、m−クレゾール、アセトニトリル、テトラハイドロフラン、1,4−ジオキサン、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メトキシプロパノールが好ましい。
【0079】
導電性ポリマー(a)としてスルホン酸基のアンモニウム塩および/またはカルボキシル基のアンモニウム塩を有する導電性ポリマーを用いる場合の溶媒(d)としては、導電性ポリマー(a)の溶解性、カーボンナノチューブ(b)の分散性の観点から、有機溶媒または含水有機溶媒が好ましい。
導電性ポリマー(a)としてスルホン酸および/またはカルボキシル基を有する水溶性導電性ポリマーを用いる場合の溶媒(d)としては、導電性ポリマー(a)の溶解性、カーボンナノチューブ(b)の分散性の観点から、水または含水有機溶媒が好ましい。
【0080】
<塩基性化合物(e)>
本発明のカーボンナノチューブ含有組成物が塩基性化合物(e)を含有することにより、導電性ポリマー(a)が脱ドープされ、組成物中への導電性ポリマー(a)の溶解性がより向上する。また、遊離のスルホン酸基およびカルボキシル基と塩を形成することにより、組成物中への導電性ポリマー(a)の溶解が特段に向上するとともに、カーボンナノチューブ(b)の組成物への可溶化あるいは分散化が促進される。
【0081】
塩基性化合物(e)としては、アンモニア、脂式アミン類、環式飽和アミン類、環式不飽和アミン類、アンモニウム塩類、無機塩基等が好ましい。
アミン類は、下記式(16)で示される。
【0082】
【化16】

【0083】
(式(16)中、R245〜R247は各々独立に、H、炭素数1〜4のアルキル基、−CHOH、−CHCHOH、−CONHまたは−NHである。)
【0084】
アンモニウム塩類は、下記式(17)で示される。
【0085】
【化17】

【0086】
(式(17)中、R248〜R251は各々独立に、H、炭素数1〜4のアルキル基、−CHOH、−CHCHOH、−CONHまたは−NHであり、XはOH、1/2・SO2−、NO、1/2・CO2−、HCO、1/2・(COO)2−またはR’COOであり、R’は炭素数1〜3のアルキル基である。)
【0087】
環式飽和アミン類としては、ピペリジン、ピロリジン、モリホリン、ピペラジン、これらの骨格を有する誘導体、これらのアンモニウムヒドロキシド化合物が好ましい。
環式不飽和アミン類としては、ピリジン、α−ピコリン、β−ピコリン、γ−ピコリン、キノリン、イソキノリン、ピロリン、これらの骨格を有する誘導体、これらのアンモニウムヒドロキシド化合物が好ましい。
無機塩基としては、水酸化物塩(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等)が好ましい。
【0088】
塩基性化合物(e)は2種以上を混合して用いてもよい。例えば、アミン類とアンモニウム塩類を混合して用いることにより、導電性がさらに向上する。具体的には、NH/(NHCO、NH/(NH)HCO、NH/CHCOONH、NH/(NHSO、N(CH/CHCOONH、N(CH/(NHSO等が挙げられる。アミン類とアンモニウム塩類との質量比(アミン類/アンモニウム塩類)は、1/10〜10/0が好ましい。
【0089】
<高分子化合物(f)>
本発明のカーボンナノチューブ含有組成物が高分子化合物(f)を含有することにより、塗膜の基材密着性、強度がさらに向上する。
【0090】
高分子化合物(f)としては、本発明のカーボンナノチューブ含有組成物に溶解または分散できるものが好ましく、具体的には、ポリビニルアルコール類(ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール等)、ポリアクリルアミド類(ポリアクリルアミド、ポリ(N−t−ブチルアクリルアミド)、ポリアクリルアミドメチルプロパンスルホン酸等)、ポリビニルピロリドン類、ポリスチレンスルホン酸およびそのソーダ塩類、セルロース、アルキド樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリブタジエン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ビニルエステル樹脂、ユリア樹脂、ポリイミド樹脂、マレイン酸樹脂、ポリカーボネート樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、スチレン樹脂、アクリル/スチレン共重合樹脂、酢酸ビニル/アクリル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン/マレイン酸共重合樹脂、フッ素樹脂、これらの共重合体等が挙げられる。
高分子化合物(f)は、2種以上を混合したものであってもよい。
【0091】
導電性ポリマー(a)としてスルホン酸基のアンモニウム塩および/またはカルボキシル基のアンモニウム塩を有する導電性ポリマーを用いる場合の高分子化合物(f)としては、溶媒への溶解性、組成物の安定性、導電性の観点から、アルキド樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリブタジエン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ビニルエステル樹脂、ユリア樹脂、ポリイミド樹脂、マレイン酸樹脂、ポリカーボネート樹脂、酢酸ビニル樹脂、スチレン樹脂、アクリル/スチレン共重合樹脂、酢酸ビニル/アクリル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン/マレイン酸共重合樹脂が好ましく、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリブタジエン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル/スチレン共重合樹脂、酢酸ビニル/アクリル共重合樹脂、ポリエステル樹脂が特に好ましい。
【0092】
スルホン酸基および/またはカルボキシル基を有する水溶性導電性ポリマーを用いる場合の高分子化合物(f)としては、溶媒への溶解性、組成物の安定性、導電性の観点から、水溶性高分子化合物または水系でエマルジョンを形成する高分子化合物が好ましく、アニオン基を有する高分子化合物がより好ましく、水系アクリル樹脂、水系ポリエステル樹脂、水系ウレタン樹脂および水系塩素化ポリオレフィン樹脂が特に好ましい。
【0093】
<多官能(メタ)アクリレート(g)>
多官能(メタ)アクリレート(g)は、2つ以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物である。
多官能(メタ)アクリレート(g)としては、カーボンナノチューブ(b)を溶解または分散するものが好ましく、導電性ポリマー(a)を溶解または分散するものがさらに好ましい。
多官能(メタ)アクリレート(g)としては、下記の化合物が挙げられる。
【0094】
ジ(メタ)アクリレート類:エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリエトキシレーテッドシクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリプロポキシレーテッドシクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリエトキシレーテッドビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ポリプロポキシレーテッドビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ポリエトキシレーテッド水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ポリプロポキシレーテッド水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノキシフルオレンエタノールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのε−カプロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのγ−ブチロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールのカプロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールのカプロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールのカプロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタンジオールのカプロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのカプロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAのカプロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFのカプロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリレート、ビス(2−アクリロイルオキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート、ビス(2−アクリロイルオキシプロピル)ヒドロキシプロピルイソシアヌレート、ビス(2−アクリロイルオキシブチル)ヒドロキシブチルイソシアヌレート、ビス(2−メタクリロイルオキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート、ビス(2−メタクリロイルオキシプロピル)ヒドロキシプロピルイソシアヌレート、ビス(2−メタクリロイルオキシブチル)ヒドロキシブチルイソシアヌレート等。
【0095】
3官能以上の多官能(メタ)アクリレート類:トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリスエトキシレーテッドトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシレーテッドペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エトキシレーテッドペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、炭素数2〜5の脂肪族炭化水素変性トリメチロールプロパントリアクリレート、炭素数2〜5の脂肪族炭化水素変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、炭素数2〜5の脂肪族炭化水素変性ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2−(メタ)アクリロイルオキシプロピル)イソシアヌレート、トリス(2−(メタ)アクリロイルオキシブチル)イソシアヌレート、ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)−2−ヒドロキシエチルイソシアヌレート、ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシプロピル)−2−ヒドロキシエチルイソシアヌレート、ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシブチル)−2−ヒドロキシエチルイソシアヌレート等。
【0096】
多価アルコール(エチレングリコール、ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等)と(メタ)アクリル酸またはその誘導体との反応で得られるポリエステル(メタ)アクリレート類。
【0097】
ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、テトラブロモビスフェノールA等)とエピクロルヒドリンとの縮合反応で得られるビスフェノール型エポキシ樹脂に、(メタ)アクリル酸またはその誘導体を反応させたエポキシ(メタ)アクリレート類。
【0098】
分子中に少なくとも3個のエポキシ基を有する化合物に(メタ)アクリル酸を反応させたエポキシポリ(メタ)アクリレート類。
【0099】
有機ジイソシアネート化合物の1種単独または2種以上の混合物に、分子中に1個または2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基、および1個のヒドロキシ基を有するヒドロキシ基含有(メタ)アクリル酸エステルの1種単独または2種以上の混合物を反応させたウレタン(メタ)アクリレート類。
【0100】
アルコール類(アルカンジオール、ポリエーテルジオール、ポリブタジエンジオール、ポリエステルジオール、ポリカーボネートジオール、アミドジオール、スピログリコール化合物等の1種または2種以上の混合物)の水酸基に有機ジイソシアネート化合物を付加し、得られたウレタンプレポリマーのイソシアネート基に、分子中に1個の(メタ)アクリロイルオキシ基、および1個のヒドロキシ基を有するヒドロキシ基含有(メタ)アクリル酸エステルを反応させたウレタン(メタ)アクリレート類。
多官能(メタ)アクリレート(g)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0101】
本発明のカーボンナノチューブ含有組成物は、必要に応じて、さらに他のビニルモノマーを含有してもよい。
他のビニルモノマーとしては、単官能(メタ)アクリレート類(メチル(メタ)アクリレート、ブチルメタクリレート等)、ビニルエステルモノマー類(酢酸ビニル、酪酸ビニル、アジピン酸ジビニル等)、ビニルエーテル類(エチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル等。)、アクリルアミド類(アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、N−t−ブチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、ヒドロキシエチルアクリルアミド、メチレンビスアクリルアミド等)、N−ビニルアミド類(N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルカプロラクタム等)、スルホン酸基含有ビニルモノマー類(スチレンスルホン酸、スルホエチル(メタ)アクリレート、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、これらの塩等)が挙げられる。
【0102】
<重合開始剤(h)>
重合開始剤(h)としては、本発明のカーボンナノチューブ含有組成物の構成成分や用途に応じて、光重合開始剤または熱重合開始剤を用いることができる。
【0103】
光重合開始剤は、本発明のカーボンナノチューブ含有組成物に、活性エネルギー線による重合促進効果を付与する成分である。
光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェン、メチルオルトベンゾイルベンゾエイト、4−フェニルベンゾフェノン、t−ブチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2−メチル−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、メチルベンゾイルホルメート、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル}−2−メチルプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−4−モルホリノブチロフェノン、2−(ジメチルアミノ)−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン等が挙げられる。
光重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0104】
本発明のカーボンナノチューブ含有組成物は、必要に応じて、さらに光増感剤を含有してもよい。
光増感剤としては、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸アミル、4−ジメチルアミノアセトフェノン等が挙げられる。
【0105】
熱重合開始剤としては、アゾ化合物、有機過酸化物等が挙げられる。
アゾ化合物としては、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]−プロピオンアミド}等が挙げられる。
有機過酸化物としては、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等が挙げられる。
熱重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0106】
また、重合開始剤(h)は、導電性ポリマー(a)、カーボンナノチューブ(b)、導電性粒状物質(c)、溶媒(d)、塩基性化合物(e)、高分子化合物(f)および多官能(メタ)アクリレート(g)からなるカーボンナノチューブ含有組成物に当初から混合しておくこともできるし、また、使用前に混合することもできる。混合時期は、使用目的、状況に応じて適宜選択できる。
【0107】
<界面活性剤(i)>
本発明のカーボンナノチューブ含有組成物が界面活性剤(i)を含有することにより、カーボンナノチューブ(b)の可溶化または分散化がさらに促進されるとともに、平坦性、塗布性、導電性等が向上する。
界面活性剤(i)としては、下記の化合物が挙げられる。
【0108】
アニオン系界面活性剤:アルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルカルボン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、α−オレフィンスルホン酸、ジアルキルスルホコハク酸、α−スルホン化脂肪酸、N−メチル−N−オレイルタウリン、石油スルホン酸、アルキル硫酸、硫酸化油脂、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸、アルキルリン酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、これらの塩等。
【0109】
カチオン系界面活性剤:第一〜第三脂肪アミン、四級アンモニウム、テトラアルキルアンモニウム、トリアルキルベンジルアンモニウムアルキルピリジニウム、2−アルキル−1−アルキル−1−ヒドロキシエチルイミダゾリニウム、N,N−ジアルキルモルホリニウム、ポリエチレンポリアミン脂肪酸アミド、ポリエチレンポリアミン脂肪酸アミドの尿素縮合物、ポリエチレンポリアミン脂肪酸アミドの尿素縮合物の第四級アンモニウムおよびこれらの塩等。
【0110】
両性界面活性剤:ベタイン類(N,N−ジメチル−N−アルキル−N−カルボキシメチルアンモニウムベタイン、N,N,N−トリアルキル−N−スルホアルキレンアンモニウムベタイン、N,N−ジアルキル−N,N−ビスポリオキシエチレンアンモニウム硫酸エステルベタイン、2−アルキル−1−カルボキシメチル−1−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等)、アミノカルボン酸類(N,N−ジアルキルアミノアルキレンカルボン酸塩等)等。
【0111】
非イオン系界面活性剤:ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、多価アルコール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン化ヒマシ油、脂肪酸ジエタノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸部分エステル、トリアルキルアミンオキサイド等。
【0112】
フッ素系界面活性剤:フルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルベンゼンスルホン酸、パーフルオロアルキルポリオキシエチレンエタノール等。
ここで、アルキル基としては、炭素数1〜24のアルキル基が好ましく、炭素数3〜18のアルキル基がより好ましい。
界面活性剤は、2種以上を併用してもよい。
【0113】
<シランカップリング剤(j)>
本発明のカーボンナノチューブ含有組成物がシランカップリング剤(j)を含有することにより、塗膜の耐水性が著しく向上する。
シランカップリング剤(j)は、下記式(18)で示される。
【0114】
【化18】

【0115】
(式(18)中、R42、R43、R44は各々独立に、H、炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルキル基、炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルコキシ基、アミノ基、アセチル基、フェニル基、ハロゲン基よりなる群から選ばれた基であり、Xは、
【0116】
【化19】

【0117】
であり、lおよびmは0〜6の数であり、Yは、水酸基、チオール基、アミノ基、エポキシ基およびエポキシシクロヘキシル基よりなる群から選ばれた基である。)
【0118】
エポキシ基を有するシランカップリング剤(j)としては、γ−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
アミノ基を有するシランカップリング剤(j)としては、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、β−アミノエチルトリメトキシシラン、γ−アミノプロポキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
チオール基を有するシランカップリング剤(j)としては、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、β−メルカプトエチルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
水酸基を有するシランカップリング剤(j)としてはβ−ヒドロキシエトキシエチルトリエトキシシラン、γ−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
エポキシシクロヘキシル基を有するシランカップリング剤(j)としては、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0119】
<安定剤(k)>
本発明のカーボンナノチューブ含有組成物が安定剤(k)を含有することにより、塗膜の経時的な黄変を抑制できる。
安定剤(k)としては、酸化防止剤、光安定剤等が挙げられる。
安定剤(k)としては、下記の市販品が挙げられる。
【0120】
住友化学社製:スミライザーBHT、スミライザーS、スミライザーBP−76、スミライザーMDP−S、スミライザーGM、スミライザーBBM−S、スミライザーWX−R、スミライザーNW、スミライザーBP−179、スミライザーBP−101、スミライザーGA−80、スミライザーTNP、スミライザーTPP−R、スミライザーP−16等。
旭電化工業社製:アデカスタブAO−20、アデカスタブAO−30、アデカスタブAO−40、アデカスタブAO−50、アデカスタブAO−60AO−70、アデカスタブAO−80、アデカスタブAO−330、アデカスタブPEP−4C、アデカスタブPEP−8、アデカスタブPEP−24G、アデカスタブPEP−36、アデカスタブHP−10、アデカスタブ2112、アデカスタブ260、アデカスタブ522A、アデカスタブ329K、アデカスタブ1500、アデカスタブC、アデカスタブ135A、アデカスタブ3010等。
チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製:チヌビン770、チヌビン765、チヌビン144、チヌビン622、チヌビン111、チヌビン123、チヌビン292等。
【0121】
<カーボンナノチューブ含有組成物>
本発明のカーボンナノチューブ含有組成物は、溶媒(d)を含有することにより、溶解性、分散性、塗布性、操作性等が向上する。溶媒(d)を用いる場合の組成比は、下記の通りである。
【0122】
導電性ポリマー(a)の割合は、溶媒(d)100質量部に対して0.001〜50質量部が好ましく、0.01〜30質量部がより好ましい。導電性ポリマー(a)が0.001質量部未満では、導電性が劣ったり、カーボンナノチューブ(b)の可溶化または分散化の効率が低くなったりする。導電性ポリマー(a)が50質量部を超えると、導電性はピークに達して大きく増加しないし、高粘度化して、カーボンナノチューブ(b)の可溶化または分散化の効率が低くなったりする。
【0123】
カーボンナノチューブ(b)の割合は、溶媒(d)100質量部に対して0.0001〜20質量部が好ましく、0.001〜10質量部がより好ましい。カーボンナノチューブ(b)が0.0001質量部未満では、導電性等のカーボンナノチューブ(b)による性能が低下する。カーボンナノチューブ(b)が20質量部を超えると、カーボンナノチューブ(b)の可溶化または分散化の効率が低下する。
【0124】
導電性粒状物質(c)の割合は、溶媒(d)100質量部に対して0.0001〜50質量部が好ましく、0.001〜30質量部がより好ましい。導電性粒状物質(c)が0.0001質量部未満では、カーボンナノチューブ(b)が塗膜中に分散して効率よい導通パスが形成されないため、導電性、透明性は低下することはないが向上はしない。導電性粒状物質(c)が50質量部を超えると、カーボンナノチューブ(b)および導電性粒状物質(c)の可溶化または分散化の効率が低下する。
【0125】
塩基性化合物(e)の割合は、溶媒(d)100質量部に対して0.00001〜10質量部が好ましく、0.00005〜5質量部がより好ましい。塩基性化合物(e)が該範囲にあるとき、導電性ポリマー(a)の溶解性がよくなり、カーボンナノチューブ(b)の溶媒(d)への可溶化または分散化が促進され、導電性が向上する。
【0126】
高分子化合物(f)割合は、溶媒(d)100質量部に対して0.1〜400質量部が好ましく、0.5〜300質量部がより好ましい。高分子化合物(f)が0.1質量部以上であれば、成膜性、成形性、強度がより向上する。高分子化合物(f)が400質量部以下であれば、導電性ポリマー(a)やカーボンナノチューブ(b)の溶解性の低下が少なく、高い導電性が維持される。
【0127】
多官能(メタ)アクリレート(g)と溶媒(d)との質量比(溶媒(d)/多官能(メタ)アクリレート(g))は、99/1〜1/99が好ましい。
【0128】
重合開始剤(h)の割合は、多官能(メタ)アクリレート(g)の合計100質量部に対して、0.001〜20質量部が好ましく、0.01〜10質量部がより好ましい。0.001質量部以上であれば、硬化性が良好となる。重合開始剤(h)が20質量部以下であれば、耐黄変性が良好となる。
【0129】
界面活性剤(i)の割合は、溶媒(d)100質量部に対して0.0001〜10質量部が好ましく、0.01〜5質量部がより好ましい。界面活性剤(i)が10質量部を超えると、塗布性は向上するが、導電性が劣る等の現象が生じるとともに、カーボンナノチューブ(b)の可溶化または分散化の効率が低下する。
【0130】
シランカップリング剤(j)の割合は、溶媒(d)100質量部に対して0.001〜20質量部が好ましく、0.01〜15質量部がより好ましい。シランカップリング剤(j)が0.001質量部未満では、耐水性および/または耐溶媒性の向上幅が比較的小さい。シランカップリング剤(j)が20質量部を超えると、溶解性、平坦性、透明性および導電性が悪化することがある。
【0131】
安定剤(k)の割合は、導電性ポリマー(a)、カーボンナノチューブ(b)、導電性粒状物質(c)および溶媒(d)の合計100質量部に対して、0.001〜2質量部が好ましく、0.01〜1質量部がより好ましい。
【0132】
本発明のカーボンナノチューブ含有組成物には、必要に応じて、可塑剤、分散剤、塗面調整剤、流動性調整剤、紫外線吸収剤、保存安定剤、接着助剤、増粘剤、導電性ポリマー(a)以外の熱可塑性ポリマー、スリップ剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、帯電防止剤、無機フィラー、有機フィラー、表面有機化処理した無機フィラー等の公知の各種物質を添加してもよい。
【0133】
また、本発明のカーボンナノチューブ含有組成物には、その導電性をさらに向上させるために、導電性物質を添加してもよい。導電性物質としては、炭素繊維、導電性カーボンブラック、黒鉛等の炭素系物質等が挙げられる
【0134】
<カーボンナノチューブ含有組成物の調製方法>
本発明のカーボンナノチューブ含有組成物は、導電性ポリマー(a)、カーボンナノチューブ(b)、導電性粒状物質(c)、溶媒(d)、必要に応じて塩基性化合物(e)、高分子化合物(f)、多官能(メタ)アクリレート(g)、重合開始剤(h)、他の成分を混合することによって調製できる。
【0135】
混合の際には、撹拌装置または混練装置(超音波発振機、ホモジナイザー、スパイラルミキサー、プラネタリーミキサー、ディスパーサー、ハイブリットミキサー等)を用いることが好ましい。
混合の際には、導電性ポリマー(a)、カーボンナノチューブ(b)、導電性粒状物質(c)、溶媒(d)、必要に応じて他の成分を混合した後、これに超音波照射処理を施すことが好ましく、超音波照射処理とホモジナイザー処理とを併用した超音波ホモジナイザー処理を施すことが特に好ましい。
【0136】
超音波照射処理の条件(超音波の強度、処理時間等)は、カーボンナノチューブ(b)および導電性粒状物質(c)を溶媒(d)中に均一に分散または溶解させる条件であればよい。
超音波発振機における定格出力は、超音波発振機の単位底面積当たり0.1〜100ワット/cmが好ましく、0.3〜60ワット/cmがより好ましい。発振周波数は、10〜200kHzが好ましく、20〜100kHzがより好ましい。
【0137】
超音波照射処理時間は、1分〜48時間が好ましく、5分〜48時間がより好ましい。
超音波照射処理を行う際のカーボンナノチューブ含有組成物の温度は、分散性の向上の観点から、60℃以下が好ましく、40℃以下がより好ましい。
超音波照射処理の後、ボール型混練装置(ボールミル、ビーズミル、振動ミル、サンドミル、ロールミル等)を用いて、さらに分散または溶解を徹底化することが好ましい。
【0138】
混合の際には、すべての成分を一括添加してもよく、溶媒(d)の一部を用いて高濃度のカーボンナノチューブ含有組成物を調製した後、残りの溶媒(d)で所定の濃度に希釈してもよい。また、2種以上の溶媒(d)を併用する場合、溶媒(d)の一部の種類を用いて高濃度のカーボンナノチューブ含有組成物を調製した後、残りの種類の溶媒(d)で希釈してもよい。
【0139】
<複合体>
本発明の複合体は、基材の少なくとも一つの面上に、本発明のカーボンナノチューブ含有組成物からなる塗膜を有するものである。
【0140】
基材の材料としては、高分子化合物(プラスチック、エラストマー等)、木材、紙材、セラミックス、繊維(天然繊維、合成繊維、炭素繊維等)、ガラス等が挙げられる。
基材の形状としては、材料が高分子化合物の場合、フィルム、発泡体、多孔質膜等の各種成形体が挙げられる。材料が繊維の場合、織布、不織布、炭素繊維紙等が挙げられる。材料がガラスの場合、板等が挙げられる。
【0141】
高分子化合物としては、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS樹脂、AS樹脂、メタクリル樹脂、ポリブタジエン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリアラミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルニトリル、ポリアミドイミド、ポリエーテルサルホン、ポリサルホン、ポリエーテルイミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリウレタン、これらのエラストマー等が挙げられる。
【0142】
高分子化合物のフィルムは、少なくともその一つの面上に塗膜を形成させるため、該塗膜の密着性を向上させる目的で、その表面にコロナ表面処理またはプラズマ処理を施すことが好ましい。
【0143】
塗膜の膜厚は、0.01〜100μmが好ましく、0.1〜50μmがより好ましい。
【0144】
<複合体の製造方法>
本発明の複合体の製造方法は、下記の工程を経て製造される。
(x)基材の少なくとも一つの面上に、本発明のカーボンナノチューブ含有組成物を塗工する工程。
(y)塗工された組成物に、活性エネルギー線を照射するおよび/または常温で放置するもしくは加熱処理することによって塗膜を形成する工程。
(z)必要に応じて、塗膜に、酸によるドーピング処理を施す工程。
【0145】
工程(x):
本発明のカーボンナノチューブ含有組成物は、通常の塗工法によって基材の表面に塗工される。
塗工法としては、塗布法、噴霧法(スプレーコート法等)、浸漬法(ディップ法)等が挙げられる。
塗布法に用いる塗布手段としては、グラビアコーター、ロールコーター、カーテンフローコーター、スピンコーター、バーコーター、リバースコーター、キスコーター、ファンテンコーター、ロッドコーター、エアドクターコーター、ナイフコーター、ブレードコーター、キャストコーター、スクリーンコーター等が挙げられる。
スプレーコート法に用いるスプレーとしては、エアスプレー、エアレススプレー等が挙げられる。
【0146】
工程(y):
塗膜形成方法としては、短時間で塗膜を形成できることから、活性エネルギー線を照射する方法が好ましい。
活性エネルギー線を照射する際の雰囲気は、空気でもよく、不活性ガス(窒素、アルゴン等)でもよい。
活性エネルギー線としては、紫外線、α線、β線、γ線等が挙げられ、汎用性に優れる点から、紫外線が好ましい。
【0147】
紫外線の発生源としては、実用性、経済性の観点から、紫外線ランプが好ましい。
紫外線ランプとしては、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプ等が挙げられる。また、無電極UVランプシステムを用いてもよい。
【0148】
塗膜は、塗工された組成物を常温で放置するもしくは加熱処理することでも形成できる。組成物が多官能(メタ)アクリレート(g)に加え、高分子化合物(f)、塩基性化合物(e)、導電性ポリマー(a)を含有する場合、これらとの架橋反応がさらに促進され、耐水性をより短時間で付与でき、また残留する溶媒(d)の量をより減らすことができ、導電性がさらに向上する。
加熱処理温度は、20〜250℃が好ましく、40〜200℃がより好ましい。温度が250℃より高いと、導電性ポリマー(a)自体が分解してしまい、導電性が著しく低下することがある。
【0149】
工程(z):
本発明の複合体は、このままでも優れた導電性を有するものであるが、塗膜を形成した後に、酸によるドーピング処理を施し、次いで常温で放置または加熱処理することにより、さらに導電性を向上させることができる。
【0150】
ドーピング処理の方法としては、酸性溶液中に複合体を浸漬させる方法等が挙げられる。酸性溶液としては、無機酸(塩酸、硫酸、硝酸等)、有機酸(p−トルエンスルホン酸、カンファスルホン酸、安息香酸、これらの骨格を有する誘導体等)、高分子酸(ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパン)スルホン酸、ポリビニル硫酸、これらの骨格を有する誘導体等)を含む水溶液もしくは含水有機溶媒の溶液である。これらの無機酸、有機酸、高分子酸は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を任意の割合で混合して用いてもよい。
【0151】
以上説明した本発明のカーボンナノチューブ含有組成物にあっては、カーボンナノチューブ(b)および導電性粒状物質(c)を導電性ポリマー(a)とともに溶媒(d)に加えているため、カーボンナノチューブ(b)および導電性粒状物質(c)自体の特性を損なうことなく、カーボンナノチューブ(b)および導電性粒状物質(c)を溶媒(d)に分散化または可溶化でき、長期保存においても分離、凝集しない。この理由は、下記のように考えられる。
導電性ポリマー(a)がカーボンナノチューブ(b)および導電性粒状物質(c)に吸着またはらせん状にラッピングすることにより、カーボンナノチューブ(b)および導電性粒状物質(c)が導電性ポリマー(a)とともに分散化あるいは可溶化している。
【0152】
また、本発明のカーボンナノチューブ含有組成物にあっては、導電性ポリマー(a)とカーボンナノチューブ(b)および導電性粒状物質(c)とが分散または溶解しているため、導電性、成膜性、成形性に優れ、しかもその塗膜が導電性、透明性の他に、耐水性、耐候性、機械強度、熱伝導性、耐擦傷性および硬度に優れている。
【実施例】
【0153】
以下、実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、以下の実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
カーボンナノチューブとしては、CNT社製、CVD法により製造された多層カーボンナノチューブ(以下、CNTと記す)を用いた。
スズ含有酸化インジウム粒子としては、富士チタン工業社製、商品名:type B−(H)、粒子径:30nm(以下、ITO粒子1と記す)、または富士チタン工業社製、商品名:type B−(N)、粒径30nm(以下、ITO粒子2と記す)を用いた。
アンチモン酸化物粒子としては、日産化学社製、商品名:水分散アンチモン複酸化物コロイド「セルナックスCX−Z330H−F2」、固形分20質量%、粒径15nmを用いた。
水系アクリル樹脂エマルジョンとしては、三菱レイヨン社製、商品名:ダイヤナールMX−1845、樹脂分40質量%を用いた。
超音波ホモジナイザー処理は、SONIC社製、vibra cellを用い、定格出力:30ワット/cm、発振周波数:20kHzの条件で実施した。
【0154】
<導電性ポリマーの製造>
(製造例1)
水溶性導電性ポリマー(A−1)の合成:
2−アミノアニソール−4−スルホン酸の100mmolを25℃で4mol/Lのトリエチルアミン水溶液に攪拌溶解し、これにペルオキソ二硫酸アンモニウムの100mmolの水溶液を滴下した。滴下終了後、25℃で12時間さらに攪拌した後、反応生成物を濾別洗浄、乾燥し、水溶性導電性ポリマー(A−1)(ポリ(2−スルホ−5−メトキシ−1,4−イミノフェニレン))の粉末15gを得た。水溶性導電性ポリマー(A−1)の体積抵抗値は、9.0Ω・cmであった。
【0155】
(製造例2)
水溶性導電性ポリマー(A−1)と塩化ベンザルコニウムとの反応によって得られる導電性ポリマー(A−2):
水溶性導電性ポリマー(A−1)の5gを水の95gに攪拌溶解し、水溶性導電性ポリマー水溶液を調製した。得られた水溶性導電性ポリマー水溶液に、塩化ベンザルコニウムの10gを水の95に攪拌溶解した塩化ベンザルコニウム水溶液を滴下した。滴下終了後、25℃で1時間さらに攪拌した後、反応生成物を濾別洗浄、乾燥し、スルホン酸アンモニウム塩基を有する導電性ポリマー(A−2)の10gを得た。
【0156】
(製造例3)
導電性ポリマー(A−3)(脱ドープ状態のポリアニリン)の合成:
アニリンの100mmolを25℃で1mol/Lの硫酸水溶液に攪拌溶解し、これにペルオキソ二硫酸アンモニウムの100mmolの水溶液を滴下した。滴下終了後、25℃で12時間さらに攪拌した後、反応生成物を濾別洗浄、乾燥し、重合体粉末8gを得た。得られたドープ状態の重合体を錠剤成型器で加圧成型させて直径10mm、厚さ1mmの形状に切り出して四端子法にて導電率を測定したところ、1.0Ω・cm以下であった。該重合体を25℃で1時間、1mol/Lのアンモニア水中で分散攪拌した後、濾別洗浄、乾燥し、脱ドープ状態の導電性ポリマー(A−3)の粉末5gを得た。
【0157】
<硬化性組成物>
(調製例1)
硬化性組成物1の調製:
ジペンタエリスリトールテトラアクリレート(日本化薬社製、商品名:カヤラッドDPHA)の5質量部、ポリエチレングリコール600ジアクリレート(サートマー社製、商品名:SR−610)の5質量部、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、商品名:イルガキュア184)の0.5質量部を、エタノールの10質量部に室温にて混合し、硬化性組成物1を調製した。
【0158】
<カーボンナノチューブ含有組成物>
(実施例1)
カーボンナノチューブ含有組成物1:
製造例1の水溶性導電性ポリマー(A−1)の1質量部、CNTの0.1質量部、ITO粒子1の5質量部を、水の100質量部に室温にて混合し、超音波ホモジナイザー処理を1時間施し、カーボンナノチューブ含有組成物1を調製した。
【0159】
(実施例2)
カーボンナノチューブ含有組成物2:
製造例1の水溶性導電性ポリマー(A−1)の1質量部、CNTの0.1質量部、ITO粒子1の10質量部を、水の100質量部に室温にて混合し、超音波ホモジナイザー処理を1時間施し、カーボンナノチューブ含有組成物2を調製した。
【0160】
(実施例3)
カーボンナノチューブ含有組成物3:
製造例2の導電性ポリマー(A−2)の1質量部、CNTの0.1質量部、ITO粒子1の10質量部を、N,N−ジメチルアセトアミドの100質量部に室温にて混合し、超音波ホモジナイザー処理を1時間施し、カーボンナノチューブ含有組成物3を調製した。
【0161】
(調製例2)
カーボンナノチューブ含有組成物4:
製造例1の水溶性導電性ポリマー(A−1)の1質量部、CNTの1質量部、ITO粒子1の5質量部を水100質量部に室温にて混合し、超音波ホモジナイザー処理(SONIC社製 vibra cell 20kHz)を1時間施し、カーボンナノチューブ含有組成物4を調製した。
【0162】
(実施例4)
カーボンナノチューブ含有組成物5:
カーボンナノチューブ含有組成物4の5質量部、硬化性組成物1の20.5質量部を混合、撹拌し、カーボンナノチューブ含有組成物5を調製した。
【0163】
(実施例5)
カーボンナノチューブ含有組成物6:
製造例1の水溶性導電性ポリマー(A−1)の1.0質量部、CNTの0.5質量部、ITO粒子2の10質量部、水系アクリル樹脂エマルジョンの22.5質量部を、水−メタノール(1/1質量比)混合液の100質量部に室温にて混合し、超音波ホモジナイザー処理を1時間施し、カーボンナノチューブ含有組成物6を調製した。
【0164】
(実施例6)
カーボンナノチューブ含有組成物13:
製造例1の水溶性導電性ポリマー(A−1)の1質量部、CNTの0.1質量部、アンチモン酸化物粒子の5質量部を、水の100質量部に室温にて混合し、超音波ホモジナイザー処理を1時間実施し、カーボンナノチューブ含有組成物13を調製した。
【0165】
(実施例7)
カーボンナノチューブ含有組成物14:
製造例3の導電性ポリマー(A−3)の0.3質量部、CNTの0.05質量部、ITO粒子1の5質量部を、N−メチルピロリドンの100質量部に室温にて混合し、超音波ホモジナイザー処理を1時間施し、カーボンナノチューブ含有組成物14を調製した。
【0166】
(比較例1)
カーボンナノチューブ含有組成物7:
製造例1の水溶性導電性ポリマー(A−1)の1質量部、CNTの0.1質量部を、水の100質量部に室温にて混合し、超音波ホモジナイザー処理を1時間施し、カーボンナノチューブ含有組成物7を調製した。
【0167】
(比較例2)
カーボンナノチューブ含有組成物8:
製造例2の導電性ポリマー(A−2)の1質量部、CNTの0.1質量部を、N,N−ジメチルアセトアミドの100質量部に室温にて混合し、超音波ホモジナイザー処理を1時間施し、カーボンナノチューブ含有組成物8を調製した。
【0168】
(調製例3)
カーボンナノチューブ含有組成物9:
製造例1の水溶性導電性ポリマー(A−1)の1質量部、CNTの1質量部を水の100質量部に室温にて混合し、超音波ホモジナイザー処理を1時間施し、カーボンナノチューブ含有組成物9を調製した。
【0169】
(比較例3)
カーボンナノチューブ含有組成物10:
カーボンナノチューブ含有組成物9の5質量部、硬化性組成物1の20.5質量部を混合、撹拌し、カーボンナノチューブ含有組成物10を調製した。
【0170】
(比較例4)
カーボンナノチューブ含有組成物11:
製造例1の水溶性導電性ポリマー(A−1)の1.0質量部、CNTの0.5質量部、水系アクリル樹脂エマルジョンの22.5質量部を、水の100質量部に室温にて混合し、超音波ホモジナイザー処理を1時間施し、カーボンナノチューブ含有組成物11を調製した。
【0171】
(比較例5)
カーボンナノチューブ含有組成物12:
CNTの0.5質量部、ITO粒子1の10質量部、水系アクリル樹脂エマルジョンの22.5質量部を、水の100質量部に室温にて混合し、超音波ホモジナイザー処理を1時間施し、カーボンナノチューブ含有組成物12を調製した。
【0172】
<評価方法>
(実施例4および比較例3)
カーボンナノチューブ含有組成物を、ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製、商品名:A−4100)上に適量滴下し、バーコーティング法(バーコーター♯10)にて塗布し、乾燥機で100℃、約1分間乾燥した。次いで高圧水銀灯(オーク製作所社製、紫外線照射装置、ハンディーUV−1200、QRU−2161型)にて紫外線を約30秒間、約1000mJ/cm照射し、塗膜を形成し、外観観察後、表面抵抗値、全光線透過率を測定した。結果を表1に示す。
【0173】
(実施例1〜3、5、6および比較例1〜2、4〜5)
カーボンナノチューブ含有組成物をガラス基板上に適量滴下し、バーコーティング法(バーコーター♯5)にて塗布し、乾燥機で80℃、5分間乾燥させ、塗膜を形成し、外観観察後、表面抵抗値、全光線透過率を測定した。結果を表1に示す。
【0174】
(実施例7)
カーボンナノチューブ含有組成物14をガラス基板に適量滴下し、バーコーティング法(バーコーター♯5)にて塗布し、乾燥機で150℃、5分間乾燥させ、塗膜を形成した後に、1mol/Lの硫酸水溶液中に5分間浸漬後、乾燥機で80℃、5分間乾燥後させ、外観観察後、表面抵抗値、全光線透過率を測定した。結果を表1に示す。
【0175】
【表1】

【0176】
(溶液状態の目視観察)
実施例および比較例で得られたカーボンナノチューブ含有組成物の溶液状態を、分散処理直後および1日静置後に目視で観察した。
○:溶液状態で目視上均一な組成物。
×:溶液状態で目視上不均一な組成物。
【0177】
(表面抵抗値)
表面抵抗値の測定は、23±2℃、50±5%RHの条件下で、表面抵抗値が10Ω以上の場合は二探針法(電極間距離:20mm)を用い、表面抵抗値が10Ω以下の場合は四探針法(各電極間距離:5mm)を用いて行った。
【0178】
(塗膜面外観)
目視により塗膜の状態を観察した。
○:均一な塗膜が形成された。
×:カーボンナノチューブが不均一に存在する塗膜が観察された。
【0179】
(全光線透過率)
全光線透過率(%)の測定は、日本電色社製、HAZEMETER NDH2000を用いて行った。
【0180】
(塗膜のレーザー顕微鏡観察)
カーボンナノチューブ含有組成物1(実施例1)からなる塗膜を有する複合体について、塗膜中のCNTの分散状態を観察した。具体的には、100倍油浸レンズ(開口数:1.4、Plan−APOCHROMAT)、屈折率1.518の調整液(カールツァイス社製、Immersol 518F)および画像取得用レーザーとして波長458nmのアルゴンレーザーを用い、共焦点レーザー顕微鏡(カールツァイス社製、LSM5 PASCAL Axioplan2 imaging)によって、塗膜最表層から基材界面まで0.1μmのピッチで、1000倍の画像を取得し、該画像を合成し、拡張フォーカス像を作成して、塗膜中のCNTの分散状態を観察した。
【0181】
図1は、共焦点レーザー顕微鏡で複合体の塗膜を観察した画像である。塗膜中でCNTとITO粒子1とが相分離構造{海(ITO粒子1)−島(CNT)構造}を形成しており、CNTの微凝集によって導電性ネットワーク構造が形成されていることが観察された。
【産業上の利用可能性】
【0182】
本発明のカーボンナノチューブ含有組成物は、コンデンサー、電池、燃料電池の部材(高分子電解質膜、電極層、触媒層、ガス拡散層、ガス拡散電極層、セパレーター等)、EMIシールド、化学センサー、表示素子、非線形材料、防食剤、接着剤、繊維、紡糸用材料、帯電防止塗料、防食塗料、電着塗料、メッキプライマ、静電塗装用導電性プライマー、電気防食、電池の蓄電能力向上、工業用包装材料(半導体用、電器電子部品用等)、電子写真記録材料(オーバーヘッドプロジェクタ用フィルム、スライドフィルム等)等の帯電防止フィルム、磁気記録媒体(オーディオテープ、ビデオテープ、コンピュータ用テープ、フロッピィディスク等)の帯電防止、電子デバイスのLSI配線、フィールド・エミッション・ディスプレイ(FED)の電子銃(源)および電極、水素貯蔵剤、入力および表示デバイス(透明タッチパネル、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、液晶ディスプレイ等)の表面の帯電防止および透明電極、有機エレクトロルミネッセンス素子を形成する材料(発光材料、バッファ材料、電子輸送材料、正孔輸送材料および蛍光材料)、熱転写シート、転写シート、熱転写受像シート、受像シート、近赤外吸収材料、熱線カット材料等に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0183】
【図1】共焦点レーザー顕微鏡で複合体の塗膜を観察した画像である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性ポリマー(a)、カーボンナノチューブ(b)、導電性粒状物質(c)および溶媒(d)を含有するカーボンナノチューブ含有組成物。
【請求項2】
さらに、塩基性化合物(e)を含有する請求項1に記載のカーボンナノチューブ含有組成物。
【請求項3】
さらに、高分子化合物(f)を含有する請求項1または2に記載のカーボンナノチューブ含有組成物。
【請求項4】
さらに、多官能(メタ)アクリレート(g)および重合開始剤(h)を含有する請求項1〜3のいずれかに記載のカーボンナノチューブ含有組成物。
【請求項5】
基材の少なくとも一つの面上に、請求項1〜4のいずれかに記載のカーボンナノチューブ含有組成物からなる塗膜を有する複合体。
【請求項6】
前記塗膜において、カーボンナノチューブ(b)と導電性粒状物質(c)とが相分離構造を形成している請求項5に記載の複合体。
【請求項7】
基材の少なくとも一つの面上に、請求項1〜4のいずれかに記載のカーボンナノチューブ含有組成物を塗工し、活性エネルギー線を照射するおよび/または常温で放置するもしくは加熱処理することによって塗膜を形成する複合体の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−155570(P2009−155570A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−338038(P2007−338038)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】