ガイドレールの据付精度測定装置及び測定方法
【課題】ガイドレールの据付精度を簡単且つ短時間に計測することにある。
【解決手段】昇降路内を昇降する昇降体を案内するガイドレール31の据付精度を測定する装置において、昇降体とガイドレール31との相対距離を検出する変位検出センサ34と、前記昇降体に取付けられ該昇降体の絶対変位を検出する振動系35及びこの振動系に取付けられた変位検出センサ36と、前記変位検出センサ34及び変位検出センサ36により検出された相対距離データ及び絶対変位検出データをもとにガイドレールの据付精度を演算する。
【解決手段】昇降路内を昇降する昇降体を案内するガイドレール31の据付精度を測定する装置において、昇降体とガイドレール31との相対距離を検出する変位検出センサ34と、前記昇降体に取付けられ該昇降体の絶対変位を検出する振動系35及びこの振動系に取付けられた変位検出センサ36と、前記変位検出センサ34及び変位検出センサ36により検出された相対距離データ及び絶対変位検出データをもとにガイドレールの据付精度を演算する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータの昇降路内を昇降する昇降体を案内するガイドレールの据付精度を測定する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータの乗り心地に影響を及ぼす主要因の一つにガイドレールの据付精度がある。
【0003】
昇降路に据付けられたガイドレールには、製作時の加工精度(曲がりや厚さ)やガイドレールを固定するレールブラケットの据付精度などの影響を受け、継ぎ目部の段差や曲がりが存在する。ガイドレールの据付精度(段差やレールの曲り)が悪いと、これがエレベータの案内装置を介してかごに強制変位として伝わり、かご振動を発生させることになり、乗り心地が悪化する。
【0004】
これを改善するため、ガイドレールの据付精度を測定し、精度の悪い部分についてはレール継ぎ目部などで位置調整を行っている。
【0005】
このガイドレールの据付精度を測定する方法としては、昇降路内の基準線としてレール近傍にピアノ線を張り、この基準線との距離を測定する方法(例えば特許文献1)や、かごとレールとの相対距離とかご加速度を2回積分して得られるかご変位とから算出する方法(例えば特許文献2)などがある。
【0006】
ここで、従来のガイドレールの据付精度測定装置について、図11〜図14を参照して説明する。
【0007】
図11及び図12において、1a,1bは昇降路1に立設された一対のガイドレールであり、かご2はこれらのガイドレール1a,1bによって案内され昇降路を走行する。
【0008】
これらのガイドレールの据付精度を測定するには、かご2に取付けられた位置検出器5(かご2の前後左右に取付けられた位置検出器5a,5bとその中間位置に取付けられた位置検出器5c)によってかご2とガイドレール1a,1bとの相対距離を測定する。また、昇降路1にはピアノ線6が全長にわたって張られ、このピアノ線6とかご2との相対距離を基準位置検出器7(かご2の後部左右に取付けられた基準位置検出器7a,7b)によって計測する。
【0009】
そして、これら位置検出器5によって計測されたかごとガイドレールとの相対距離と基準位置検出器7によって計測されたピアノ線とかごとの相対距離を演算装置10により加え合わせることで、ガイドレールの据付精度を測定している。なお、図中11は演算装置10の演算結果を出力するプリンタである。
【0010】
一方、図13及び図14において、1a,1bは昇降路1に立設された一対のガイドレールであり、かご2はこれらのガイドレール1a,1bによって案内され昇降路を走行する。
【0011】
これらのガイドレールの据付精度を測定するには、かご2に取付けられた位置検出器5(かご2の前後左右に取付けられた位置検出器5a,5bとその中間位置に取付けられた位置検出器5c)によってかご2とガイドレール1a,1bとの相対距離を測定する。また、かご2には加速度検出手段17(かご2の左右2箇所)が配設されており、この加速度検出手段17によって検出されたかご2の加速度を演算装置10によって2回数値積分してかご変位を算出している。
【0012】
そして、これら位置検出器5によって計測されたかごとガイドレールとの相対距離とかご変位とを演算装置10により加え合わせることで、ガイドレールの据付精度を測定している。なお、図中11は演算装置10の演算結果を出力するプリンタである。
【特許文献1】特開平3−124683号公報
【特許文献1】特開平3−288780号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述した図11に示されるガイドレールの据付精度測定装置では、昇降路内の基準線として上端を昇降路内の所定の位置に固定されたピアノ線6が用いられている。しかし、昇降路の全長にわたってピアノ線6を張ることは、極めて大掛かりな作業となる。また、据付精度の測定時にピアノ線6を振動しない状態に保つことは非常に難しい。特に、かご2が昇降することにより生じる気流によるピアノ線6の振動は避けられず、ガイドレール1a,1bの据付精度を高精度に測定することはできない。
【0014】
一方、上述した図13に示されるガイドレールの据付精度測定装置では、かご2に取付けられた加速度検出器17によって検出された加速度を2回数値積分することによって、かごの絶対変位を算出し、これにかご2とガイドレール1a,1bとの相対距離を加えてガイドレールの据付精度を求めている。しかし、加速度検出器17で計測された加速度信号には必ず計測誤差が含まれており、これを数値積分する際に誤差が積算されるため、かご2の絶対変位を精度良く算出することは困難である。
【0015】
本発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、ガイドレールの据付精度を簡単且つ短時間に計測することが可能なガイドレールの据付精度測定装置及び測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、上記の目的を達成するため、次のような手段及び方法によりガイドレールの据付精度を測定するものである。
【0017】
(1)本発明は、昇降路内を昇降する昇降体を案内するガイドレールの据付精度を測定する装置において、前記昇降体とガイドレールとの相対距離を検出する手段と、前記昇降体に取付けられ該昇降体の絶対変位を検出する手段と、前記相対距離検出手段及び絶対変位検出手段の検出結果をもとにガイドレールの据付精度を演算する演算手段とを備える。
【0018】
(2)上記(1)記載のガイドレールの据付精度測定装置において、前記昇降体の絶対変位検出手段は、可動体及びこの可動体を弾性的に支持するばねからなる振動系と、この振動系の前記可動体と昇降体との相対距離を検出する相対距離検出器とから構成され、前記振動系の固有振動数が昇降体の固有振動数の1/2以下としたものである。
【0019】
(3)上記(1)記載のガイドレールの据付精度測定装置において、前記昇降体の絶対変位検出手段は、ロッドの一端が回動自在に支持され他端に可動体が取付けられたロッド及びこのロッドの支持側を吊るす吊り部材からなる振動系と、この振動系の可動体と前記昇降体の相対距離を検出する相対距離検出器とから構成され、前記振動系の固有振動数が昇降体の固有振動数の1/2以下としたものである。
【0020】
(4)上記(2)又は(3)記載のガイドレールの据付精度測定装置において、前記可動体の水平方向加速度を検出する加速度検出装置と、この加速度検出装置により検出された水平方向加速度をもとに前記昇降体の絶対変位検出手段により検出された絶対変位を補正する手段とを設ける。
【0021】
(5)上記(1)乃至(4)のいずれに記載のガイドレールの据付精度測定装置において、前記演算手段で求められるガイドレールの据付精度をデジタルデータとして記録する手段を設ける。
【0022】
(6)上記(1)乃至(5)のいずれに記載のガイドレールの据付精度測定装置において、昇降路の高さ方向の位置を検出する手段を設け、この高さ方向の位置情報と前記ガイドレールの据付精度とを関係が分かるようにしたものである。
【0023】
(7)本発明は、昇降路内を昇降する昇降体を案内するガイドレールの据付精度を測定する装置において、前記昇降体に取付けられ、可動部を有する振動系と、この振動系の可動部分に取付けられた変位センサとを有し、この変位センサにより検出された前記振動系の可動部と前記ガイドレールとの距離を前記ガイドレールの据付精度として検出する。
【0024】
(8)上記(7)記載のガイドレールの据付精度測定装置において、前記振動系の可動部分に加速度センサを取付け、この加速度センサにより検出された加速度をもとに前記演算手段により求められる前記ガイドレールとの距離を補正する。
【0025】
(9)本発明は、昇降路内を昇降する昇降体を案内するガイドレールの据付精度を測定する方法において、前記昇降体とガイドレールとの相対距離を検出するとともに、前記昇降体の絶対変位を検出し、これら昇降体とガイドレールとの相対距離及び昇降体の絶対変位をもとにガイドレールの据付精度を求める。
【0026】
(10)上記(9)記載のガイドレール据付精度測定方法において、前記振動系の可動部の水平方向加速度を検出し、この検出結果をもとに前記昇降体の絶対変位を補正する。
【0027】
(11)本発明は、昇降路内を昇降する昇降体を案内するガイドレールの据付精度を測定する方法において、前記昇降体に振動系を配設し、この振動系の可動部分に取付けた変位センサにより、前記振動系の可動部とガイドレールとの相対距離を求め、これをガイドレールの据付精度とする。
【0028】
(12)上記(9)乃至(11)のいずれかに記載のガイドレール据付精度測定方法において、前記ガイドレールの据付精度を昇降路の高さ方向の位置と同時にデジタルデータとして記録する。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、従来のようにピアノ線を張る必要もなく、また加速度を数値積分するよりも精度が良くなり、ガイドレールの据付精度を簡単且つ短時間に計測することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0031】
図1は本発明によるガイドレールの据付精度測定装置の第1の実施形態を示す構成図である。
【0032】
図1において、31は昇降路に立設された一対のガイドレール(図では一方のガイドレールを示す)、32aはかご枠32bに組込まれたかごで、これらは昇降体を構成している。このかご32aは、かご枠32b上に取付られた案内装置33によりガイドレール31に沿って昇降路内を昇降移動する。
【0033】
本実施形態では、ガイドレール31の据付精度を測定するため、かご枠32b上にガイドレール31に対応させて例えばレーザ変位計からなる変位検出センサ34、振動系35及びこの振動系35に取付けられた例えばレーザ変位計からなる変位検出センサ36を適宜の取付部材を介してそれぞれ固定し、これら変位検出センサ34,36の検出信号を演算する演算手段、この演算手段の演算結果を記録して出力する記録手段を備えた記録装置37に与える構成とするものである。
【0034】
ここで、上記変位検出センサ34は、かご枠32bとガイドレール31との相対距離を検出するものである。
【0035】
また、振動系35は、図2に示すようにケース35d内にローラ35cを有する可動体(以下マスと呼ぶ)35aを水平移動可能に配置し、このマス35aの両端をばね35bによりケース内面に弾性的に支持させた構成のものであり、またケース35dの一方のばね支持側面には孔が設けられ、この孔部に対応するケース35dの外面に上記変位検出センサ36が取付けられる。
【0036】
この振動系35の水平方向の固有振動数は、かごの水平方向の固有振動数の1/2以下となるようにばね35bの弾性係数が選定されている。
【0037】
次にこのように構成されたガイドレールの据付精度測定装置の作用を述べる。
【0038】
まず、かご32a及びかご枠32bからなる昇降体をガイドレール31に案内されながら走行させ、そのときかご枠32bに固定された変位検出センサ34によりかご枠32bとガイドレール31との相対距離を検出する。
【0039】
同時に、振動系35の可動体であるマス35aとかご枠32bとの相対距離を変位検出センサ36により検出する。つまり、かご枠32bとガイドレール31との間隔が変化する方向に振れると振動系35のケース35dも同方向に変位し、このときばね35bにより弾性支持されたマス35aはほぼ静止した(測定上無視できる程度の揺れを伴う)状態にあるので、変位検出センサ36によりマス35aとかご枠32bとの相対距離が検出される。
【0040】
ここで、振動系35の固有振動数を図4に示すようにかごの固有振動数の1/2以下とすることで、据付精度計測中のかご揺れに起因する振動系のマス35aの揺れを小さく抑えられることが分かる。
【0041】
なお、振動系35の固有振動数をかご32aの固有振動数の1/2以下にしても、A部に示すように若干の振動は残るが、かごの固有振動数よりも低い周波数領域の振動であるため、かごの走行振動に及ぼす影響は小さい。
【0042】
従って、変位検出センサ36により検出した振動系35のマス35aとかご枠35bとの相対距離をかご枠の絶対変位と見なすことができる。
【0043】
このように昇降体を案内装置33によりガイドレール31に沿って走行させ、そのとき変位検出センサ34により検出されるかご枠32bとガイドレール31との相対距離データと振動系35に取付けた変位検出センサ36により検出されるマス35aとかご枠32bとの相対距離データは記録装置37に入力される。
【0044】
この記録装置37では、演算手段により図3に示すように前述した変位検出センサ34により検出されたかご枠32bとガイドレール31との相対距離データと、変位検出センサ36により検出した振動系35のマス35aとかご枠35bとの相対距離データとを加え合わせることで、ガイドレール31の据付精度を求めることができる。
【0045】
その演算結果は、記録装置37のハードデスクまたはメモリカードなどに記録され、時刻歴波形として紙に出力される。
【0046】
このように第1の実施形態によれば、従来のようにピアノ線を張る必要もなく、また加速度検出手段によって検出された加速度を数値積分してかごの絶対変位を算出するよりも測定精度を向上させることができる。
【0047】
また、従来のピアノ線を用いる方法では、ピアノ線が揺れないようにかごを低速で走行させて計測しなければならないが、本実施形態では定格速度にてかごを走行させながら測定することができるので、ガイドレールの据付精度を簡単且つ短時間に計測することができる。
【0048】
上記実施形態では振動系として、ケース35d内に可動部であるマス35aを水平移動可能に配設し、その移動方向両端をばね35bにより支持させた構成のものを用いたが、図5に示すようにロッド40bの一端を支点40dで水平方向に回動自在に支持し、このロッド40bの他端にマス40aを取付けると共に、ロッド40bの根本部分(支点40d側)を図示しないケース内の上面に吊り部材40cにより吊るようにした構成の振動系40を用い、このマス40aに対応する図示しないケースに取付けた変位検出センサ36によりマス40aとかご枠との相対距離を検出するようにしても良い。
【0049】
このような振動系40としても、かご枠32bとガイドレール31との間隔が変化する方向に振れると振動系40のケースも同方向に変位し、このときばね支点40dにより支持されたロッド40bの他端に取付けられたマス40aはほぼ静止した(測定上無視できる程度の揺れを伴う)状態にあるので、ケースに取付けられた変位検出センサ36によりマス40aとかご枠32bとの相対距離を検出することができる。
【0050】
この場合、上記振動系40の固有振動数fは、次式で表される。
【数1】
【0051】
ここで、gは重力加速度である。例えば、L=100mm、a=5mm、h=75mmとすると、
【数2】
【0052】
となり、かごの固有振動数(1−2Hz)よりも低い固有振動数を持つ振動系を十分小さなサイズで実現することができる。
【0053】
また、振動系は、上記構成のものに限定されることなく、かごの固有振動数よりも振動系の固有振動数を十分小さく設定すれば他の構成でも良い。
【0054】
さらに、本実施形態では、かごの片側に配設されたガイドレールの一方向の据付精度について説明したが、この装置を複数配置することで、かご両側のガイドレールそれぞれについて前後方向、左右方向の据付精度を同時に計測することができる。
【0055】
また、記録装置37にガイドレールを昇降路に固定しているレールブラケット(図示せず)通過時の信号から昇降路の高さ方向の位置を検出する手段を設け、この検出手段により検出された昇降路の高さ方向の位置を記録手段に記録することで、昇降路の高さ方向の情報とガイドレールの据付精度との関係が一目で分かるようになり、補修箇所を簡単に見つけることができる。
【0056】
図6は本発明の第2の実施形態における振動系の構成図を示すもので、図2と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分について述べる。なお、
ガイドレールの据付精度測定装置全体の構成は図1と同じであり、ここではその説明を省略する。
【0057】
第2の実施形態では、図6に示すように振動系35の可動体であるマス35aに加速度センサ41を取付けるようにしたものである。そして、図7に示すように変位検出センサ34により検出されたかご枠32bとガイドレール31との相対距離データ、変位検出センサ36により検出した振動系35のマス35aとかご枠35bとの相対距離データ及び上記加速度センサ41で検出された加速度データを記録装置37にそれぞれ入力するようにしたものである。
【0058】
このような構成のガイドレールの据付精度測定装置においては、振動特性の分かっている振動系35の加速度データをもとに、振動系の絶対変位を演算することができる。
【0059】
このことによって、第1の実施形態では無視していた振動系35におけるマス35aの低周波数の揺れについて補正することができるため、さらに高精度な測定ができる。
【0060】
このように第2の実施形態によれば、従来のようにピアノ線を張る必要もなく、また精度良く、ガイドレールの据付精度を簡単且つ短時間に計測することができる。
【0061】
図8は本発明の第3の実施形態における振動系の構成図を示すものである。
【0062】
なお、ガイドレールの据付精度測定装置全体の構成は図1と同じであり、ここではその説明を省略する。
【0063】
図8において、45は振動系で、この振動系45はロッド45bの一端を支点45dで水平方向に回動自在に支持し、このロッド45bの他端に可動体であるマス45aを取付けると共に、ロッド45bの根本部分(支点45d側)を図示しないケース内の上面に吊り部材45cにより吊る構成とし、さらにマス45a上に変位検出センサ36を固定するようにしたものである。この場合、吊り部材45c、支点45dは図示しないケース収納されて固定されている。
【0064】
なお、上述した振動系45は第1の実施形態と同様にかご枠に固定されている。また、振動系の固有振動数は、かごの固有振動数の1/2以下としている。
【0065】
このように構成されたガイドレールの据付精度測定装置においては、振動系45の固有振動数をかごの固有振動数の1/2以下にすることで、据付精度計測中のかごの揺れに起因する振動系の揺れを小さく抑えることができ、変位検出センサ36により検出した振動系45のマス45aとガイドレール31との相対距離をガイドレールの据付精度と見なすことができる。
【0066】
また、上記のような振動系45を構成することで、仮にかご案内装置のローラの転動による周期的な加振に起因するかご振動があった場合でも、この周波数はかごの固有振動数よりも高く、すなわち振動系45の固有振動数よりも十分高いため、測定に及ぼす影響を小さくできる。
【0067】
このように第3の実施形態においては、従来のようにピアノ線を張る必要もなく、また精度良く、ガイドレールの据付精度を簡単且つ短時間に測定することができる。また、第1及び第2の実施形態よりもさらに装置を簡略化できるという効果もある。
【0068】
なお、本発明は上記実施形態において、図9に示すように振動系45のマス45aに変位センサ36だけでなく加速度センサ41を取付け、図10に示すようにガイドレール31と振動系45の升5aとの相対距離データと上記加速度センサ41で検出された加速度データを記録装置37にそれぞれ入力し、振動特性の分かっている振動系の加速度データをもとに、振動系の絶対変位を演算して、加速度センサ41により検出された可動体であるマス45aの揺れについて補正することにより、さらに測定精度を向上させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明によるガイドレールの据付精度測定装置の第1の実施形態を示す構成図。
【図2】同実施形態における振動系を示す構成図。
【図3】同実施形態において、記録装置で求められるレール据付精度を説明するためのブロック図。
【図4】同実施形態の作用を説明するためのグラフを示す図。
【図5】同実施形態における振動系の他の例を説明するための構成図。
【図6】本発明の第2の実施形態における振動系を示す構成図。
【図7】同実施形態において、記録装置で求められるレール据付精度の測定方法を説明するためのブロック図。
【図8】本発明の第3の実施形態における振動系を示す構成図。
【図9】同実施形態における振動系の他の例を説明するための構成図。
【図10】同実施形態において、記録装置で求められるレール据付精度の測定方法を説明するためのブロック図。
【図11】従来のガイドレールの据付精度計測装置の一例を示す構成図。
【図12】同据付精度計測装置において、ガイドレールの据付精度の計測方法を説明するためのブロック図。
【図13】従来のガイドレールの据付精度計測装置の異なる例を示す構成図。
【図14】同据付精度計測装置において、ガイドレールの据付精度の計測方法を説明するためのブロック図。
【符号の説明】
【0070】
31…ガイドレール、32a…かご、32b…かご枠、33…案内装置、34…変位検出センサ、35…振動系、35a…可動体(マス)、35b…ばね、35c…ローラ、35し…ケース、36…変位検出センサ、37…記録装置、40,45…振動系、40a,45c…可動部(マス)、40b,45b…ロッド、40c,45c…吊り部材、40d,45d…支点
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータの昇降路内を昇降する昇降体を案内するガイドレールの据付精度を測定する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータの乗り心地に影響を及ぼす主要因の一つにガイドレールの据付精度がある。
【0003】
昇降路に据付けられたガイドレールには、製作時の加工精度(曲がりや厚さ)やガイドレールを固定するレールブラケットの据付精度などの影響を受け、継ぎ目部の段差や曲がりが存在する。ガイドレールの据付精度(段差やレールの曲り)が悪いと、これがエレベータの案内装置を介してかごに強制変位として伝わり、かご振動を発生させることになり、乗り心地が悪化する。
【0004】
これを改善するため、ガイドレールの据付精度を測定し、精度の悪い部分についてはレール継ぎ目部などで位置調整を行っている。
【0005】
このガイドレールの据付精度を測定する方法としては、昇降路内の基準線としてレール近傍にピアノ線を張り、この基準線との距離を測定する方法(例えば特許文献1)や、かごとレールとの相対距離とかご加速度を2回積分して得られるかご変位とから算出する方法(例えば特許文献2)などがある。
【0006】
ここで、従来のガイドレールの据付精度測定装置について、図11〜図14を参照して説明する。
【0007】
図11及び図12において、1a,1bは昇降路1に立設された一対のガイドレールであり、かご2はこれらのガイドレール1a,1bによって案内され昇降路を走行する。
【0008】
これらのガイドレールの据付精度を測定するには、かご2に取付けられた位置検出器5(かご2の前後左右に取付けられた位置検出器5a,5bとその中間位置に取付けられた位置検出器5c)によってかご2とガイドレール1a,1bとの相対距離を測定する。また、昇降路1にはピアノ線6が全長にわたって張られ、このピアノ線6とかご2との相対距離を基準位置検出器7(かご2の後部左右に取付けられた基準位置検出器7a,7b)によって計測する。
【0009】
そして、これら位置検出器5によって計測されたかごとガイドレールとの相対距離と基準位置検出器7によって計測されたピアノ線とかごとの相対距離を演算装置10により加え合わせることで、ガイドレールの据付精度を測定している。なお、図中11は演算装置10の演算結果を出力するプリンタである。
【0010】
一方、図13及び図14において、1a,1bは昇降路1に立設された一対のガイドレールであり、かご2はこれらのガイドレール1a,1bによって案内され昇降路を走行する。
【0011】
これらのガイドレールの据付精度を測定するには、かご2に取付けられた位置検出器5(かご2の前後左右に取付けられた位置検出器5a,5bとその中間位置に取付けられた位置検出器5c)によってかご2とガイドレール1a,1bとの相対距離を測定する。また、かご2には加速度検出手段17(かご2の左右2箇所)が配設されており、この加速度検出手段17によって検出されたかご2の加速度を演算装置10によって2回数値積分してかご変位を算出している。
【0012】
そして、これら位置検出器5によって計測されたかごとガイドレールとの相対距離とかご変位とを演算装置10により加え合わせることで、ガイドレールの据付精度を測定している。なお、図中11は演算装置10の演算結果を出力するプリンタである。
【特許文献1】特開平3−124683号公報
【特許文献1】特開平3−288780号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述した図11に示されるガイドレールの据付精度測定装置では、昇降路内の基準線として上端を昇降路内の所定の位置に固定されたピアノ線6が用いられている。しかし、昇降路の全長にわたってピアノ線6を張ることは、極めて大掛かりな作業となる。また、据付精度の測定時にピアノ線6を振動しない状態に保つことは非常に難しい。特に、かご2が昇降することにより生じる気流によるピアノ線6の振動は避けられず、ガイドレール1a,1bの据付精度を高精度に測定することはできない。
【0014】
一方、上述した図13に示されるガイドレールの据付精度測定装置では、かご2に取付けられた加速度検出器17によって検出された加速度を2回数値積分することによって、かごの絶対変位を算出し、これにかご2とガイドレール1a,1bとの相対距離を加えてガイドレールの据付精度を求めている。しかし、加速度検出器17で計測された加速度信号には必ず計測誤差が含まれており、これを数値積分する際に誤差が積算されるため、かご2の絶対変位を精度良く算出することは困難である。
【0015】
本発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、ガイドレールの据付精度を簡単且つ短時間に計測することが可能なガイドレールの据付精度測定装置及び測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、上記の目的を達成するため、次のような手段及び方法によりガイドレールの据付精度を測定するものである。
【0017】
(1)本発明は、昇降路内を昇降する昇降体を案内するガイドレールの据付精度を測定する装置において、前記昇降体とガイドレールとの相対距離を検出する手段と、前記昇降体に取付けられ該昇降体の絶対変位を検出する手段と、前記相対距離検出手段及び絶対変位検出手段の検出結果をもとにガイドレールの据付精度を演算する演算手段とを備える。
【0018】
(2)上記(1)記載のガイドレールの据付精度測定装置において、前記昇降体の絶対変位検出手段は、可動体及びこの可動体を弾性的に支持するばねからなる振動系と、この振動系の前記可動体と昇降体との相対距離を検出する相対距離検出器とから構成され、前記振動系の固有振動数が昇降体の固有振動数の1/2以下としたものである。
【0019】
(3)上記(1)記載のガイドレールの据付精度測定装置において、前記昇降体の絶対変位検出手段は、ロッドの一端が回動自在に支持され他端に可動体が取付けられたロッド及びこのロッドの支持側を吊るす吊り部材からなる振動系と、この振動系の可動体と前記昇降体の相対距離を検出する相対距離検出器とから構成され、前記振動系の固有振動数が昇降体の固有振動数の1/2以下としたものである。
【0020】
(4)上記(2)又は(3)記載のガイドレールの据付精度測定装置において、前記可動体の水平方向加速度を検出する加速度検出装置と、この加速度検出装置により検出された水平方向加速度をもとに前記昇降体の絶対変位検出手段により検出された絶対変位を補正する手段とを設ける。
【0021】
(5)上記(1)乃至(4)のいずれに記載のガイドレールの据付精度測定装置において、前記演算手段で求められるガイドレールの据付精度をデジタルデータとして記録する手段を設ける。
【0022】
(6)上記(1)乃至(5)のいずれに記載のガイドレールの据付精度測定装置において、昇降路の高さ方向の位置を検出する手段を設け、この高さ方向の位置情報と前記ガイドレールの据付精度とを関係が分かるようにしたものである。
【0023】
(7)本発明は、昇降路内を昇降する昇降体を案内するガイドレールの据付精度を測定する装置において、前記昇降体に取付けられ、可動部を有する振動系と、この振動系の可動部分に取付けられた変位センサとを有し、この変位センサにより検出された前記振動系の可動部と前記ガイドレールとの距離を前記ガイドレールの据付精度として検出する。
【0024】
(8)上記(7)記載のガイドレールの据付精度測定装置において、前記振動系の可動部分に加速度センサを取付け、この加速度センサにより検出された加速度をもとに前記演算手段により求められる前記ガイドレールとの距離を補正する。
【0025】
(9)本発明は、昇降路内を昇降する昇降体を案内するガイドレールの据付精度を測定する方法において、前記昇降体とガイドレールとの相対距離を検出するとともに、前記昇降体の絶対変位を検出し、これら昇降体とガイドレールとの相対距離及び昇降体の絶対変位をもとにガイドレールの据付精度を求める。
【0026】
(10)上記(9)記載のガイドレール据付精度測定方法において、前記振動系の可動部の水平方向加速度を検出し、この検出結果をもとに前記昇降体の絶対変位を補正する。
【0027】
(11)本発明は、昇降路内を昇降する昇降体を案内するガイドレールの据付精度を測定する方法において、前記昇降体に振動系を配設し、この振動系の可動部分に取付けた変位センサにより、前記振動系の可動部とガイドレールとの相対距離を求め、これをガイドレールの据付精度とする。
【0028】
(12)上記(9)乃至(11)のいずれかに記載のガイドレール据付精度測定方法において、前記ガイドレールの据付精度を昇降路の高さ方向の位置と同時にデジタルデータとして記録する。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、従来のようにピアノ線を張る必要もなく、また加速度を数値積分するよりも精度が良くなり、ガイドレールの据付精度を簡単且つ短時間に計測することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0031】
図1は本発明によるガイドレールの据付精度測定装置の第1の実施形態を示す構成図である。
【0032】
図1において、31は昇降路に立設された一対のガイドレール(図では一方のガイドレールを示す)、32aはかご枠32bに組込まれたかごで、これらは昇降体を構成している。このかご32aは、かご枠32b上に取付られた案内装置33によりガイドレール31に沿って昇降路内を昇降移動する。
【0033】
本実施形態では、ガイドレール31の据付精度を測定するため、かご枠32b上にガイドレール31に対応させて例えばレーザ変位計からなる変位検出センサ34、振動系35及びこの振動系35に取付けられた例えばレーザ変位計からなる変位検出センサ36を適宜の取付部材を介してそれぞれ固定し、これら変位検出センサ34,36の検出信号を演算する演算手段、この演算手段の演算結果を記録して出力する記録手段を備えた記録装置37に与える構成とするものである。
【0034】
ここで、上記変位検出センサ34は、かご枠32bとガイドレール31との相対距離を検出するものである。
【0035】
また、振動系35は、図2に示すようにケース35d内にローラ35cを有する可動体(以下マスと呼ぶ)35aを水平移動可能に配置し、このマス35aの両端をばね35bによりケース内面に弾性的に支持させた構成のものであり、またケース35dの一方のばね支持側面には孔が設けられ、この孔部に対応するケース35dの外面に上記変位検出センサ36が取付けられる。
【0036】
この振動系35の水平方向の固有振動数は、かごの水平方向の固有振動数の1/2以下となるようにばね35bの弾性係数が選定されている。
【0037】
次にこのように構成されたガイドレールの据付精度測定装置の作用を述べる。
【0038】
まず、かご32a及びかご枠32bからなる昇降体をガイドレール31に案内されながら走行させ、そのときかご枠32bに固定された変位検出センサ34によりかご枠32bとガイドレール31との相対距離を検出する。
【0039】
同時に、振動系35の可動体であるマス35aとかご枠32bとの相対距離を変位検出センサ36により検出する。つまり、かご枠32bとガイドレール31との間隔が変化する方向に振れると振動系35のケース35dも同方向に変位し、このときばね35bにより弾性支持されたマス35aはほぼ静止した(測定上無視できる程度の揺れを伴う)状態にあるので、変位検出センサ36によりマス35aとかご枠32bとの相対距離が検出される。
【0040】
ここで、振動系35の固有振動数を図4に示すようにかごの固有振動数の1/2以下とすることで、据付精度計測中のかご揺れに起因する振動系のマス35aの揺れを小さく抑えられることが分かる。
【0041】
なお、振動系35の固有振動数をかご32aの固有振動数の1/2以下にしても、A部に示すように若干の振動は残るが、かごの固有振動数よりも低い周波数領域の振動であるため、かごの走行振動に及ぼす影響は小さい。
【0042】
従って、変位検出センサ36により検出した振動系35のマス35aとかご枠35bとの相対距離をかご枠の絶対変位と見なすことができる。
【0043】
このように昇降体を案内装置33によりガイドレール31に沿って走行させ、そのとき変位検出センサ34により検出されるかご枠32bとガイドレール31との相対距離データと振動系35に取付けた変位検出センサ36により検出されるマス35aとかご枠32bとの相対距離データは記録装置37に入力される。
【0044】
この記録装置37では、演算手段により図3に示すように前述した変位検出センサ34により検出されたかご枠32bとガイドレール31との相対距離データと、変位検出センサ36により検出した振動系35のマス35aとかご枠35bとの相対距離データとを加え合わせることで、ガイドレール31の据付精度を求めることができる。
【0045】
その演算結果は、記録装置37のハードデスクまたはメモリカードなどに記録され、時刻歴波形として紙に出力される。
【0046】
このように第1の実施形態によれば、従来のようにピアノ線を張る必要もなく、また加速度検出手段によって検出された加速度を数値積分してかごの絶対変位を算出するよりも測定精度を向上させることができる。
【0047】
また、従来のピアノ線を用いる方法では、ピアノ線が揺れないようにかごを低速で走行させて計測しなければならないが、本実施形態では定格速度にてかごを走行させながら測定することができるので、ガイドレールの据付精度を簡単且つ短時間に計測することができる。
【0048】
上記実施形態では振動系として、ケース35d内に可動部であるマス35aを水平移動可能に配設し、その移動方向両端をばね35bにより支持させた構成のものを用いたが、図5に示すようにロッド40bの一端を支点40dで水平方向に回動自在に支持し、このロッド40bの他端にマス40aを取付けると共に、ロッド40bの根本部分(支点40d側)を図示しないケース内の上面に吊り部材40cにより吊るようにした構成の振動系40を用い、このマス40aに対応する図示しないケースに取付けた変位検出センサ36によりマス40aとかご枠との相対距離を検出するようにしても良い。
【0049】
このような振動系40としても、かご枠32bとガイドレール31との間隔が変化する方向に振れると振動系40のケースも同方向に変位し、このときばね支点40dにより支持されたロッド40bの他端に取付けられたマス40aはほぼ静止した(測定上無視できる程度の揺れを伴う)状態にあるので、ケースに取付けられた変位検出センサ36によりマス40aとかご枠32bとの相対距離を検出することができる。
【0050】
この場合、上記振動系40の固有振動数fは、次式で表される。
【数1】
【0051】
ここで、gは重力加速度である。例えば、L=100mm、a=5mm、h=75mmとすると、
【数2】
【0052】
となり、かごの固有振動数(1−2Hz)よりも低い固有振動数を持つ振動系を十分小さなサイズで実現することができる。
【0053】
また、振動系は、上記構成のものに限定されることなく、かごの固有振動数よりも振動系の固有振動数を十分小さく設定すれば他の構成でも良い。
【0054】
さらに、本実施形態では、かごの片側に配設されたガイドレールの一方向の据付精度について説明したが、この装置を複数配置することで、かご両側のガイドレールそれぞれについて前後方向、左右方向の据付精度を同時に計測することができる。
【0055】
また、記録装置37にガイドレールを昇降路に固定しているレールブラケット(図示せず)通過時の信号から昇降路の高さ方向の位置を検出する手段を設け、この検出手段により検出された昇降路の高さ方向の位置を記録手段に記録することで、昇降路の高さ方向の情報とガイドレールの据付精度との関係が一目で分かるようになり、補修箇所を簡単に見つけることができる。
【0056】
図6は本発明の第2の実施形態における振動系の構成図を示すもので、図2と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分について述べる。なお、
ガイドレールの据付精度測定装置全体の構成は図1と同じであり、ここではその説明を省略する。
【0057】
第2の実施形態では、図6に示すように振動系35の可動体であるマス35aに加速度センサ41を取付けるようにしたものである。そして、図7に示すように変位検出センサ34により検出されたかご枠32bとガイドレール31との相対距離データ、変位検出センサ36により検出した振動系35のマス35aとかご枠35bとの相対距離データ及び上記加速度センサ41で検出された加速度データを記録装置37にそれぞれ入力するようにしたものである。
【0058】
このような構成のガイドレールの据付精度測定装置においては、振動特性の分かっている振動系35の加速度データをもとに、振動系の絶対変位を演算することができる。
【0059】
このことによって、第1の実施形態では無視していた振動系35におけるマス35aの低周波数の揺れについて補正することができるため、さらに高精度な測定ができる。
【0060】
このように第2の実施形態によれば、従来のようにピアノ線を張る必要もなく、また精度良く、ガイドレールの据付精度を簡単且つ短時間に計測することができる。
【0061】
図8は本発明の第3の実施形態における振動系の構成図を示すものである。
【0062】
なお、ガイドレールの据付精度測定装置全体の構成は図1と同じであり、ここではその説明を省略する。
【0063】
図8において、45は振動系で、この振動系45はロッド45bの一端を支点45dで水平方向に回動自在に支持し、このロッド45bの他端に可動体であるマス45aを取付けると共に、ロッド45bの根本部分(支点45d側)を図示しないケース内の上面に吊り部材45cにより吊る構成とし、さらにマス45a上に変位検出センサ36を固定するようにしたものである。この場合、吊り部材45c、支点45dは図示しないケース収納されて固定されている。
【0064】
なお、上述した振動系45は第1の実施形態と同様にかご枠に固定されている。また、振動系の固有振動数は、かごの固有振動数の1/2以下としている。
【0065】
このように構成されたガイドレールの据付精度測定装置においては、振動系45の固有振動数をかごの固有振動数の1/2以下にすることで、据付精度計測中のかごの揺れに起因する振動系の揺れを小さく抑えることができ、変位検出センサ36により検出した振動系45のマス45aとガイドレール31との相対距離をガイドレールの据付精度と見なすことができる。
【0066】
また、上記のような振動系45を構成することで、仮にかご案内装置のローラの転動による周期的な加振に起因するかご振動があった場合でも、この周波数はかごの固有振動数よりも高く、すなわち振動系45の固有振動数よりも十分高いため、測定に及ぼす影響を小さくできる。
【0067】
このように第3の実施形態においては、従来のようにピアノ線を張る必要もなく、また精度良く、ガイドレールの据付精度を簡単且つ短時間に測定することができる。また、第1及び第2の実施形態よりもさらに装置を簡略化できるという効果もある。
【0068】
なお、本発明は上記実施形態において、図9に示すように振動系45のマス45aに変位センサ36だけでなく加速度センサ41を取付け、図10に示すようにガイドレール31と振動系45の升5aとの相対距離データと上記加速度センサ41で検出された加速度データを記録装置37にそれぞれ入力し、振動特性の分かっている振動系の加速度データをもとに、振動系の絶対変位を演算して、加速度センサ41により検出された可動体であるマス45aの揺れについて補正することにより、さらに測定精度を向上させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明によるガイドレールの据付精度測定装置の第1の実施形態を示す構成図。
【図2】同実施形態における振動系を示す構成図。
【図3】同実施形態において、記録装置で求められるレール据付精度を説明するためのブロック図。
【図4】同実施形態の作用を説明するためのグラフを示す図。
【図5】同実施形態における振動系の他の例を説明するための構成図。
【図6】本発明の第2の実施形態における振動系を示す構成図。
【図7】同実施形態において、記録装置で求められるレール据付精度の測定方法を説明するためのブロック図。
【図8】本発明の第3の実施形態における振動系を示す構成図。
【図9】同実施形態における振動系の他の例を説明するための構成図。
【図10】同実施形態において、記録装置で求められるレール据付精度の測定方法を説明するためのブロック図。
【図11】従来のガイドレールの据付精度計測装置の一例を示す構成図。
【図12】同据付精度計測装置において、ガイドレールの据付精度の計測方法を説明するためのブロック図。
【図13】従来のガイドレールの据付精度計測装置の異なる例を示す構成図。
【図14】同据付精度計測装置において、ガイドレールの据付精度の計測方法を説明するためのブロック図。
【符号の説明】
【0070】
31…ガイドレール、32a…かご、32b…かご枠、33…案内装置、34…変位検出センサ、35…振動系、35a…可動体(マス)、35b…ばね、35c…ローラ、35し…ケース、36…変位検出センサ、37…記録装置、40,45…振動系、40a,45c…可動部(マス)、40b,45b…ロッド、40c,45c…吊り部材、40d,45d…支点
【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降路内を昇降する昇降体を案内するガイドレールの据付精度を測定する装置において、
前記昇降体と前記ガイドレールとの相対距離を検出する手段と、前記昇降体に取付けられ該昇降体の絶対変位を検出する手段と、前記相対距離検出手段及び絶対変位検出手段の検出結果をもとにガイドレールの据付精度を演算する演算手段とを備えたことを特徴とするガイドレールの据付精度測定装置。
【請求項2】
請求項1記載のガイドレールの据付精度測定装置において、
前記昇降体の絶対変位検出手段は、可動体及びこの可動体を弾性的に支持するばねからなる振動系と、この振動系の前記可動体と昇降体との相対距離を検出する相対距離検出器とから構成され、前記振動系の固有振動数が昇降体の固有振動数の1/2以下としたことを特徴とするガイドレールの据付精度測定装置。
【請求項3】
請求項1記載のガイドレールの据付精度測定装置において、
前記昇降体の絶対変位検出手段は、ロッドの一端が回動自在に支持され他端に可動体が取付けられたロッド及びこのロッドの支持側を吊るす吊り部材からなる振動系と、この振動系の可動体と前記昇降体の相対距離を検出する相対距離検出器とから構成され、前記振動系の固有振動数が昇降体の固有振動数の1/2以下としたことを特徴とするガイドレールの据付精度測定装置。
【請求項4】
請求項2又は請求項3記載のガイドレールの据付精度測定装置において、
前記可動体の水平方向加速度を検出する加速度検出器と、この加速度検出器により検出された水平方向加速度をもとに前記昇降体の絶対変位検出手段により検出された絶対変位を補正する手段とを設けたことを特徴とするガイドレールの据付精度測定装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一つの項に記載されたガイドレールの据付精度測定装置において、
前記演算手段で求められるガイドレールの据付精度をデジタルデータとして記録する手段を設けたことを特徴とするガイドレールの据付精度測定装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一つの項に記載されたガイドレールの据付精度測定装置において、
昇降路の高さ方向の位置を検出する手段を設け、この高さ方向の位置情報と前記ガイドレールの据付精度とを関係が分かるようにしたことを特徴とするガイドレールの据付精度測定装置。
【請求項7】
昇降路内を昇降する昇降体を案内するガイドレールの据付精度を測定する装置において、
前記昇降体に取付けられ、可動体を有する振動系と、この振動系の可動部分に取付けられた変位センサとを有し、この変位センサにより前記振動系の可動部と前記ガイドレールとの距離を検出することを特徴とするガイドレールの据付精度測定装置。
【請求項8】
請求項7記載のガイドレールの据付精度測定装置において、
前記振動系の可動部分に加速度センサを取付け、この加速度センサにより検出された加速度をもとに前記演算手段により求められる前記ガイドレールとの距離を補正することを特徴とするガイドレールの据付精度測定装置。
【請求項9】
昇降路内を昇降する昇降体を案内するガイドレールの据付精度を測定する方法において、
前記昇降体とガイドレールとの相対距離を検出するとともに、前記昇降体の絶対変位を検出し、これら昇降体とガイドレールとの相対距離及び昇降体の絶対変位をもとにガイドレールの据付精度を求めることを特徴とするガイドレールの据付精度測定方法。
【請求項10】
請求項9記載の発明のガイドレール据付精度測定方法において、
前記振動系の可動部の水平方向加速度を検出し、この検出結果をもとに前記昇降体の絶対変位を補正することを特徴とするガイドレール据付精度測定方法。
【請求項11】
昇降路内を昇降する昇降体を案内するガイドレールの据付精度を測定する方法において、
前記昇降体に振動系を配設し、この振動系の可動部分に取付けた変位センサにより、前記振動系の可動部とガイドレールとの相対距離を求め、これをガイドレールの据付精度とすることを特徴とするガイドレール据付精度測定方法。
【請求項12】
請求項9乃至請求項11のいずれか一つの項に記載されたガイドレール据付精度測定方法において、
前記ガイドレールの据付精度を昇降路の高さ方向の位置と同時にデジタルデータとして記録することを特徴とするガイドレール据付精度測定方法。
【請求項1】
昇降路内を昇降する昇降体を案内するガイドレールの据付精度を測定する装置において、
前記昇降体と前記ガイドレールとの相対距離を検出する手段と、前記昇降体に取付けられ該昇降体の絶対変位を検出する手段と、前記相対距離検出手段及び絶対変位検出手段の検出結果をもとにガイドレールの据付精度を演算する演算手段とを備えたことを特徴とするガイドレールの据付精度測定装置。
【請求項2】
請求項1記載のガイドレールの据付精度測定装置において、
前記昇降体の絶対変位検出手段は、可動体及びこの可動体を弾性的に支持するばねからなる振動系と、この振動系の前記可動体と昇降体との相対距離を検出する相対距離検出器とから構成され、前記振動系の固有振動数が昇降体の固有振動数の1/2以下としたことを特徴とするガイドレールの据付精度測定装置。
【請求項3】
請求項1記載のガイドレールの据付精度測定装置において、
前記昇降体の絶対変位検出手段は、ロッドの一端が回動自在に支持され他端に可動体が取付けられたロッド及びこのロッドの支持側を吊るす吊り部材からなる振動系と、この振動系の可動体と前記昇降体の相対距離を検出する相対距離検出器とから構成され、前記振動系の固有振動数が昇降体の固有振動数の1/2以下としたことを特徴とするガイドレールの据付精度測定装置。
【請求項4】
請求項2又は請求項3記載のガイドレールの据付精度測定装置において、
前記可動体の水平方向加速度を検出する加速度検出器と、この加速度検出器により検出された水平方向加速度をもとに前記昇降体の絶対変位検出手段により検出された絶対変位を補正する手段とを設けたことを特徴とするガイドレールの据付精度測定装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一つの項に記載されたガイドレールの据付精度測定装置において、
前記演算手段で求められるガイドレールの据付精度をデジタルデータとして記録する手段を設けたことを特徴とするガイドレールの据付精度測定装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一つの項に記載されたガイドレールの据付精度測定装置において、
昇降路の高さ方向の位置を検出する手段を設け、この高さ方向の位置情報と前記ガイドレールの据付精度とを関係が分かるようにしたことを特徴とするガイドレールの据付精度測定装置。
【請求項7】
昇降路内を昇降する昇降体を案内するガイドレールの据付精度を測定する装置において、
前記昇降体に取付けられ、可動体を有する振動系と、この振動系の可動部分に取付けられた変位センサとを有し、この変位センサにより前記振動系の可動部と前記ガイドレールとの距離を検出することを特徴とするガイドレールの据付精度測定装置。
【請求項8】
請求項7記載のガイドレールの据付精度測定装置において、
前記振動系の可動部分に加速度センサを取付け、この加速度センサにより検出された加速度をもとに前記演算手段により求められる前記ガイドレールとの距離を補正することを特徴とするガイドレールの据付精度測定装置。
【請求項9】
昇降路内を昇降する昇降体を案内するガイドレールの据付精度を測定する方法において、
前記昇降体とガイドレールとの相対距離を検出するとともに、前記昇降体の絶対変位を検出し、これら昇降体とガイドレールとの相対距離及び昇降体の絶対変位をもとにガイドレールの据付精度を求めることを特徴とするガイドレールの据付精度測定方法。
【請求項10】
請求項9記載の発明のガイドレール据付精度測定方法において、
前記振動系の可動部の水平方向加速度を検出し、この検出結果をもとに前記昇降体の絶対変位を補正することを特徴とするガイドレール据付精度測定方法。
【請求項11】
昇降路内を昇降する昇降体を案内するガイドレールの据付精度を測定する方法において、
前記昇降体に振動系を配設し、この振動系の可動部分に取付けた変位センサにより、前記振動系の可動部とガイドレールとの相対距離を求め、これをガイドレールの据付精度とすることを特徴とするガイドレール据付精度測定方法。
【請求項12】
請求項9乃至請求項11のいずれか一つの項に記載されたガイドレール据付精度測定方法において、
前記ガイドレールの据付精度を昇降路の高さ方向の位置と同時にデジタルデータとして記録することを特徴とするガイドレール据付精度測定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2006−242808(P2006−242808A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−60277(P2005−60277)
【出願日】平成17年3月4日(2005.3.4)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月4日(2005.3.4)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】
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