説明

ガスクラスターイオンビーム加工方法およびガスクラスターイオンビーム加工装置ならびに加工制御プログラム

【課題】被加工物の表面を粗面化することなく、ガスクラスターイオンビームの照射による所望の照射痕を得る。
【解決手段】ソース部1およびフィラメント6で生成されたガスクラスターイオンビーム8を加速電極7で加速して被加工物9に照射するガスクラスターイオンビーム加工装置Mにおいて、加速電極7の出射口と被加工物9との間に荷電粒子レンズ11を配置し、この荷電粒子レンズ11に設けられ、ガスクラスターイオンビーム8が通過する開口部の形状、および荷電粒子レンズ11と被加工物9との距離の少なくとも一方を制御することで、荷電粒子レンズ11の開口部を通過したガスクラスターイオンビーム8を選択的に被加工物9に照射して、被加工物9を粗面化することなく、所望の形状の照射痕を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスクラスターイオンビーム加工技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば、低エネルギー照射効果、高密度照射効果、ラテラルスパッタリング効果など、従来の単原子イオンビームでは実現が困難であった新しい照射効果が得られる加工方法として、クラスターイオンビームの照射による加工技術が注目されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ガスクラスターイオンビームを用いる超精密研磨加工装置が開示されている。すなわち、球面や非球面を有する金型へガスクラスターイオンビームを照射して、表面の超精密研磨を行うものである。
【0004】
ガスクラスターイオンビームは、気体原子または分子が数百〜数千個の塊状になったものであり、これらがイオン化部でイオン化され、さらに加速電極によって加速されて被加工物へ照射されると、ガスクラスターイオンビームは被加工物との衝突で壊れ、その際にクラスター構成原子または分子および被加工物の構成原子または分子とが多体衝突が生じ、被加工物の表面に対して水平方向への運動が顕著になり、表面の凸部が主に削られ原子サイズでの平坦な超精密研磨ができる。
【0005】
特にガスクラスターイオンビームを被加工物の表面に対して垂直(被加工物の表面とガスクラスターイオンビームとがなす角度を照射角度としたとき、それが90°の場合)に照射するとラテラルスパッタ効果によって、凹凸の平坦化が可能で平均表面粗さを1nm以下まで低減することができる。また、一般には照射角度が60°付近になると表面粗さは粗面化していくと言われている。
【0006】
しかし、上述の特許文献1の技術においては傾斜角度が大きな表面形状を有する金型へ照射を行うと、照射角度が60°程度より大きな照射領域では、表面が粗面化してしまうという技術的課題がある。すなわち、粗面化させることなく金型表面全体を研磨するためには、被加工物に対してガスクラスターイオンビームが照射される領域を制御する必要があるが、特許文献1には上述の技術的課題の認識や解決手段の開示は見られない。
【特許文献1】特許第3451140号公報(第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、被加工物の表面を粗面化することなく、ガスクラスターイオンビームの照射による所望の照射痕を得ることが可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の観点は、ガスクラスターイオンビームを被加工物に照射して所望の照射痕を得るガスクラスターイオンビーム加工方法であって、
前記ガスクラスターイオンビームの出射口と前記被加工物との間に荷電粒子レンズを配置する第1工程と、
前記ガスクラスターイオンビームが通過する前記荷電粒子レンズの開口部の形状、および前記荷電粒子レンズと前記被加工物との距離、の少なくとも一方を制御する第2工程と、
を含むガスクラスターイオンビーム加工方法を提供する。
【0009】
本発明の第2の観点は、ガスクラスターイオンビームを被加工物に照射して所望の照射痕を得るガスクラスターイオンビーム加工装置であって、
前記ガスクラスターイオンビームの出射口と前記被加工物との間に配置される荷電粒子レンズと、
前記荷電粒子レンズと前記被加工物との距離、および前記ガスクラスターイオンビームが通過する前記荷電粒子レンズの開口部の形状の少なくとも一方を制御するレンズ制御手段と、
を含むガスクラスターイオンビーム加工装置を提供する。
【0010】
本発明の第3の観点は、ガスクラスターイオンビームを被加工物に照射して所望の照射痕を得るガスクラスターイオンビーム加工装置を制御する加工制御プログラムであって、
前記被加工物に形成されるべき前記照射痕の目的形状を入力するステップと、
前記ガスクラスターイオンビームの出射口と前記被加工物との間に配置される荷電粒子レンズと前記被加工物との前記距離と、前記照射痕の形状との関係、および前記荷電粒子レンズの開口部の形状と、前記照射痕の形状との関係、の少なくとも一方と、前記目的形状とに基づいて、前記距離および前記開口部の形状の少なくとも一方を制御するステップと、
をコンピュータに実行させる加工制御プログラムを提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、被加工物の表面を粗面化することなく、ガスクラスターイオンビームの照射による所望の照射痕を得ることが可能な技術を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本実施の形態の第1態様では、ガスクラスターイオンビーム出射口と被加工物との間に荷電粒子レンズを配置して、荷電粒子レンズと被加工物との距離を任意に変更することで、所望の照射痕を得ることができる技術を開示する。
【0013】
また、第2態様では、第1態様において、荷電粒子レンズと被加工物との距離と照射痕の関係に基づいて、前記距離を選択できる技術を開示する。
また、第3態様では、ガスクラスターイオンビーム出射口と被加工物との間に荷電粒子レンズを配置して、荷電粒子レンズの開口部の形状を任意に変更することで、所望の照射痕を得ることができる技術を開示する。
【0014】
また、第4態では、第3態様において、荷電粒子レンズの開口部の形状と照射痕の関係に基づいて、前記形状を選択できる技術を開示する。
また、第5態様では、ガスクラスターイオンビーム出射口と被加工物との間に荷電粒子レンズを配置して、荷電粒子レンズと被加工物との距離、さらに荷電粒子レンズの開口部の形状を任意に変更することで、所望の照射痕を得ることができる技術を開示する。
【0015】
また、第6態様では、第5態様において、荷電粒子レンズと被加工物との距離、さらに荷電粒子レンズの開口部の形状と照射痕の関係に基づいて、前記距離および形状を選択できる技術を開示する。
【0016】
また、第7態様では、荷電粒子レンズと被加工物の相対位置を移動させ、荷電粒子レンズと被加工物との距離と照射痕の関係に基づいて、被加工物に3次元形状を創成できる技術を開示する。
【0017】
また、第8態様では、1つ以上の曲面を有する被加工物に対してガスクラスターイオンビームを照射する際に、荷電粒子レンズと被加工物との距離、および荷電粒子レンズの開口部の形状を選択することで、所望の粗さを得ることができる技術を開示する。
【0018】
また、第9態様では、第8態様におけるガスクラスターイオンビーム加工方法において、ガスクラスターイオンビームに対する、被加工物の相対位置を変化させることで、被加工物における任意の位置において、所望の粗さを得ることができる技術を開示する。
【0019】
また、第10態様では、所望の照射痕を得る工程において、ガスクラスターイオンビーム出射口と被加工物との間に荷電粒子レンズを配置する手段と、荷電粒子レンズと被加工物との距離を任意に変更する手段を有するガスクラスターイオンビーム加工装置を開示する。
【0020】
また、第11態様では、所望の照射痕を得る工程において、ガスクラスターイオンビーム出射口と被加工物との間に荷電粒子レンズを配置する手段と、荷電粒子レンズの開口部の形状を任意に変更する手段を有するガスクラスターイオンビーム加工装置を開示する。
【0021】
また、第12態様では、第9態様におけるガスクラスターイオンビーム加工方法において、ガスクラスターイオンビームに対する、被加工物の相対位置を変化させる手段を有するガスクラスターイオンビーム加工装置を開示する。
【0022】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
(実施の形態1)
〔構成〕
図1は、本発明の一実施の形態であるガスクラスターイオンビーム加工方法を実施するガスクラスターイオンビーム加工装置の構成の一例を示す概念図である。
【0023】
図2は、本実施の形態のガスクラスターイオンビーム加工装置の一部を取り出して例示した斜視図である。
図3および図4は、本発明の一実施の形態であるガスクラスターイオンビーム加工方法および装置の作用の一例を示す線図である。
【0024】
図5は、本発明の一実施の形態であるガスクラスターイオンビーム加工方法および装置の作用の一例を示すフローチャートである。
図1に例示されるように、本実施の形態のガスクラスターイオンビーム加工装置Mは、ソース部1と差動排気部2およびイオン化部3の3つのチャンバーによって構成されている。
【0025】
ソース部1、差動排気部2およびイオン化部3の各々のチャンバー内は、照射前の準備として不純物ガス、水、酸素および窒素等をできるだけ排除するために不図示のポンプによって所望の真空度まで減圧されている。
【0026】
ソース部1に設けられたノズル4には不図示のガスボンベより、0.3〜1.0MPa程度の高圧ガスを供給する。このガスは、例えばアルゴンガス、酸素ガス、窒素ガス、SFガス、ヘリウムガスの他、化合物の炭酸ガスあるいは2種以上のガスを混合することも可能である。
【0027】
このような高圧ガスが超音速でノズル4から噴出する瞬間に断熱膨張によってガスクラスターが生成され、次にスキマー5を通過してビーム径を整えられる。
このソース部1で形成されるガスクラスタービームは中性ビームであるが、差動排気部2を経由してイオン化部3に入り、タングステン製のフィラメント6による熱電子の衝突によってイオン化されることによってガスクラスターイオンビーム8となる。
【0028】
次にガスクラスターイオンビーム8は加速電極7で加速される。このときガスクラスターイオンビーム8の直径は数十mm程度である。
本実施の形態の場合、加速電極7の出射口と被加工物9との間に荷電粒子レンズ11が設けられており、被加工物9に対するガスクラスターイオンビーム8の形状は、この荷電粒子レンズ11にて形成する。
【0029】
この荷電粒子レンズ11は、ガスクラスターイオンビーム8を所望の形状に形成するものであり、被加工物9より上流に、荷電粒子レンズホルダ12によって設置されている。この荷電粒子レンズ11は、例えば、ステンレス鋼を円筒形に加工して開口部17を形成したものである。他にも、板材に穴を開けて開口部17を形成するなどの構造でもよく、開口部17の加工手段おいても、レーザ加工、プレス加工、機械加工などから適宜選択すれば良い。また、開口部17の形状は円形状以外にも、楕円、矩形などでも良い。
【0030】
荷電粒子レンズ11は、荷電粒子レンズホルダ12に保持され、この荷電粒子レンズホルダ12は移動ステージ13に支持されている。
荷電粒子レンズ11の下流側には、荷電粒子レンズ11を通過したガスクラスターイオンビーム8の照射方向と略対向する位置に被加工物9が設置されている。このとき上下方向をY方向、紙面の垂直方向をX方向、そしてガスクラスターイオンビーム8の上流から下流に向かう方向をZ方向とし、それらは互いに直交するものとする。
【0031】
荷電粒子レンズ11が搭載される荷電粒子レンズホルダ12は、荷電粒子レンズ11が高精度に繰り返し位置出しできるように加工精度で保障されている。また、ガスクラスターイオンビーム8および被加工物9との相対位置関係を変更できるよう、荷電粒子レンズホルダ12はX、Y、Zの各方向に移動できる移動ステージ13に搭載されている。
【0032】
移動ステージ13は、ガスクラスターイオンビーム加工装置Mの外部に設けられた外部制御機構19によって移動動作が制御される。
また、外部制御機構19は、荷電粒子レンズホルダ12に保持された荷電粒子レンズ11における後述の開口部17の変更等の制御も行うことができる。
【0033】
外部制御機構19は、例えばコンピュータ等の情報処理機器で構成され、加工制御プログラム19aを実行することによって、後述の図5のフローチャートに例示されるようなガスクラスターイオンビーム加工装置Mにおける加工制御動作を実現する。
【0034】
被加工物9は支持台10に取り付けられ、Z軸と平方な回転軸を中心として回転可能な回転手段としての回転ステージ14に搭載され、さらに移動ステージ15に搭載されている。移動ステージ15は移動ステージ15a、移動ステージ15b、移動ステージ15cから構成され、それぞれX、Y、Zの各方向に移動可能である。さらにこれらはY軸に平行な回転軸を有する揺動ステージ16に搭載されており、ガスクラスターイオンビーム8に対する被加工物9の位置を様々に変化させることができる。被加工物9の駆動方法は、上述の方法だけに留まらず、所望の位置に制御可能であれば他の機構を用いても構わない。
〔作用〕
まず、荷電粒子レンズ11の開口部17の形状と荷電粒子レンズ11と被加工物9との距離Lの選択(決定)方法の一例を述べる。
【0035】
本実施の形態では、図2に示すような荷電粒子レンズ11が円筒形でその開口部17が円形状(直径d)のものを用いた。一般に、荷電粒子レンズ11の開口部17を通過したガスクラスターイオンビーム8のX−Y面内方向の断面形状は荷電粒子レンズ11と被加工物9との距離Lに応じて収束、発散することが知られている。本実施の形態ではガスクラスターイオンビーム8が発散する場合について述べる。したがって、被加工物9に対して照射痕直径Dや深さh等の所望の形状の照射痕9aを得るためには、ガスクラスターイオンビーム8の発散を考慮して、荷電粒子レンズ11と被加工物9との距離Lを適宜選択する必要がある。また、荷電粒子レンズ11の開口部17の形状も適宜選択する必要がある。
【0036】
被加工物9にガスクラスターイオンビーム8を照射する工程について説明する。照射条件は被加工物9の表面に加工が可能であれば任意な照射条件で良いが、本実施の形態ではアルゴンガスを用いて照射ドーズ量が1×1017(ions/cm)の条件で行った。
【0037】
図3は荷電粒子レンズ11と被加工物9との距離Lを70mmとした場合における、荷電粒子レンズ11の開口部17の直径dと照射痕直径Dの関係f1を示している。図中の破線は、照射痕直径Dが荷電粒子レンズ11の開口部17の直径dに等しい場合を示している。したがって、照射痕直径Dと荷電粒子レンズ11の開口部17の直径dは等しくなく、図3の中に矢印で示すような差異がある。この結果、所望の照射痕直径Dを得るためには、荷電粒子レンズ11の開口部17の形状(直径d等)を適宜選択する必要がある。また、荷電粒子レンズの開口部17の直径dと照射痕直径Dは線形関係(f1)にあることから、この結果を用いることで、直径dが異なる他の荷電粒子レンズ11を用いた場合でも、照射痕直径Dを予測できる。
【0038】
図4は、一例として開口部17が直径d=2mmの荷電粒子レンズ11を用いた場合における、荷電粒子レンズ11と被加工物9との距離Lと照射痕直径Dの関係f2を示している。
【0039】
図4の中の破線は、荷電粒子レンズ11と被加工物9との距離Lがどの場合においても、照射痕直径Dが荷電粒子レンズ11の開口部17の直径dに等しい場合を示している。したがって、荷電粒子レンズ11と被加工物9との距離Lが大きいほど、荷電粒子レンズ11の開口部17の直径dと照射痕直径Dの図中の矢印で示すような差異は大きくなることから、所望の照射痕直径Dを得るためには、荷電粒子レンズ11と被加工物9との距離Lを適宜選択する必要がある。
【0040】
さらに、図3と同様に、荷電粒子レンズ11と被加工物9との距離Lと照射痕直径Dは線形関係(f2)にあることから、この結果(関係f2)を用いることで、荷電粒子レンズ11と被加工物9との距離Lが異なる場合でも、照射痕直径Dを予測できる。
【0041】
図3および図4における被加工物9における照射痕直径Dの測定は、光学顕微鏡を用いて行った。測定手法および装置は、その直径が測定可能であれば何を用いても良い。
図3に例示された荷電粒子レンズの開口部17の直径dと照射痕直径Dの関係f1、および図4に例示された荷電粒子レンズ11と被加工物9との距離Lと照射痕直径Dの関係f2は、例えば、加工データベース19bとして外部制御機構19に格納され、加工制御プログラム19aによって使用される。
【0042】
図5のフローチャートを用いて、本実施の形態のガスクラスターイオンビーム加工装置Mを制御する外部制御機構19における加工制御プログラム19aの動作例を説明する。
所望の照射痕直径をDとした場合の、荷電粒子レンズ11の開口部17の直径dと、荷電粒子レンズ11と被加工物9との距離Lの決定(選択)手順の一例を述べる。
【0043】
まず、加工制御プログラム19a(外部制御機構19)は、ユーザ等によって決定された所望の照射痕直径Dの入力を受け付ける(ステップS1)。
次に、加工制御プログラム19aは、加工データベース19bに格納されている荷電粒子レンズ11の開口部17の形状と照射痕直径の関係f1、および荷電粒子レンズ11と被加工物9との距離Lと照射痕直径の関係f2を用いて、上述の入力された所望の照射痕直径Dとなるように、荷電粒子レンズ11の開口部17の直径dと、荷電粒子レンズ11と被加工物9との距離Lを決定する(ステップS2)。
【0044】
次に、加工制御プログラム19aは、ステップS2で決定した荷電粒子レンズ11の開口部17の直径dと、荷電粒子レンズ11と被加工物9との距離Lとなるように、移動ステージ13および荷電粒子レンズ11を制御して、荷電粒子レンズ11を設定し(ステップS3)、荷電粒子レンズ11の設定を完了する(ステップS4)。
【0045】
その後は、上述の設定状態の荷電粒子レンズ11を経由してガスクラスターイオンビーム8を被加工物9に照射することで目的の照射痕直径D等の形状を有する照射痕9aを形成することができる。
【0046】
したがって、荷電粒子レンズ11の開口部17の直径dと照射痕直径Dの関係f1、および荷電粒子レンズ11と被加工物9との距離Lと照射痕直径Dの関係f2を調査して加工データベース19bに格納しておくことで、深さhや照射痕直径Dの所望の形状の照射痕9aを得るための荷電粒子レンズ11の設定条件を容易かつ正確に求めることができる。
【0047】
なお、加工制御プログラム19aは、ステップS1からステップS2までを行い、ステップS3の荷電粒子レンズ11のハードウェア的な設定は、マニュアルでガスクラスターイオンビーム加工装置Mを操作して行ってもよい。
【0048】
その場合、加工制御プログラム19aや加工データベース19bは、ガスクラスターイオンビーム加工装置Mとは別個に設けられた汎用のパーソナルコンピュータ等の情報処理装置に実装してもよい。
【0049】
本実施の形態では荷電粒子レンズ11の形状として、直径dの円形状としたがこれ以外の形状でも構わない。また、複数の荷電粒子レンズ11を荷電粒子レンズホルダ12に配置すること、また、それらの荷電粒子レンズ11に電圧を印加し、電場を構成することで、ガスクラスターイオンビーム8を発散および収束させても構わない。
〔効果〕
本実施の形態によれば、荷電粒子レンズ11と被加工物9との距離Lおよび荷電粒子レンズ11の開口部17の形状の各々と、照射痕9aの形状との関係f1、f2を明らかにすることで、所望の照射痕を得るための荷電粒子レンズ11と被加工物9との距離L、および荷電粒子レンズ11の開口部17の形状を容易かつ正確に決定(選択)することができる。
【0050】
また、荷電粒子レンズ11の開口部17を通過したガスクラスターイオンビーム8のみが被加工物9に選択的に照射されるので、目的の照射痕9a以外の部分がガスクラスターイオンビーム8の照射によって粗面化されることがない。
【0051】
すなわち、被加工物9の表面を粗面化することなく、ガスクラスターイオンビーム8の照射による所望の照射痕9aを得ることができる。
(実施の形態2)
〔構成〕
図6は、本発明の他の実施の形態であるガスクラスターイオンビーム加工装置における荷電粒子レンズの構成例を示す平面図、図7は、その作用を示す斜視図、図8は、その作用を工程順に例示した略断面図、図9は、本実施の形態の荷電粒子レンズの変形例を示す平面図、図10は、その作用を工程順に例示した略断面図である。
【0052】
なお、ガスクラスターイオンビーム加工装置Mの構成については、上述の実施の形態1と同様なので、共通の要素には同一符号を付して重複した説明は割愛する。
本実施の形態2では、図6から図10を参照して、被加工物9に3次元形状18を創成する方法の一例を述べる。
【0053】
図6および図7は、被加工物9に3次元形状18を創成するために、ガスクラスターイオンビーム8の加速電極7の出射口と被加工物9との間に荷電粒子レンズ11を設置した状態を示す。
【0054】
この場合、荷電粒子レンズ11は図6および図7に示すように、各々の直径dがd、d、d(d>d>d)である円形状の複数の開口部17が同円周上になるように円盤形状の荷電粒子レンズ11に配置している。そして、荷電粒子レンズ11を中心P0の周りに回転することで、各々の直径がd、d、dの複数の開口部17の何れかを通過するガスクラスターイオンビーム8の直径を変更することができる。この場合、この荷電粒子レンズ11の回転による開口部17の直径dの選択は、外部制御機構19によって荷電粒子レンズ11の回転角度を制御し、目的の直径の開口部17がガスクラスターイオンビーム8の経路上に位置するように位置決めすることによって実現される。
【0055】
荷電粒子レンズ11は図1に示したように荷電粒子レンズホルダ12を介して、またX、Y、Zの各方向に移動可能な移動ステージ13に、被加工物9はX、Y、Zの各方向に移動可能な移動ステージ15に搭載されており、外部制御機構19は、荷電粒子レンズ11と被加工物9との位置関係を自在に変化させることができる。
〔作用〕
上述の図3および図4に示したように、被加工物9における照射痕9aの形状は荷電粒子レンズ11の開口部17の形状、および荷電粒子レンズ11と被加工物9との距離Lに依存する(関係f1およびf2)。
【0056】
したがって、図8に示すように、荷電粒子レンズ11の開口部17の直径dを変化させたときに、照射痕9aの形状が異なることを利用して、被加工物9に3次元形状18の照射痕9aを創成することができる。
【0057】
被加工物9に対する加工深さhは、例えば図11に示すような、ドーズ量と加工深さの関係f3を用いて制御する。
さらに図9に示すように、荷電粒子レンズ11の直径dが、d、d、dのように互いに異なる複数の開口部17のグループが、荷電粒子レンズ11の径方向に放射状に複数列に配置された構成を用いることで、図10に示すように被加工物9の表面に3次元形状18の照射痕9aを複数個同時に創成することができる。
【0058】
また、これ以外にも、被加工物9における照射痕9aを荷電粒子レンズ11と被加工物9との距離Lによって制御しても良く、荷電粒子レンズ11の開口部17と荷電粒子レンズ11と被加工物9との距離Lを同時に変化させても良い。
【0059】
なお、その場合、荷電粒子レンズ11の開口部17の形状、および荷電粒子レンズ11と被加工物9との距離Lは、図3および図4に示したような関係f1、f2をもとに選択する。また、図10では、一例として3個の3次元形状18が照射痕9aとして創成される場合を例示しているが、4個以上の多数個または無数に創成してもよい。
〔効果〕
本実施の形態によれば、荷電粒子レンズ11と被加工物9との距離Lおよび荷電粒子レンズ11の開口部17の形状を任意に変更することで、被加工物9の表面を粗面化することなく、任意の3次元形状の照射痕9aを創成することができる。
(実施の形態3)
〔構成〕
図12は、本発明の他の実施の形態であるガスクラスターイオンビーム加工方法を実施するガスクラスターイオンビーム加工装置の作用の一例を示す概念図である。
【0060】
図13は、被加工物の一例におけるガスクラスターイオンビームの照射後の表面状態を示す説明図である。
図14は、本実施の形態であるガスクラスターイオンビーム加工方法における照射角度の定義を示した概念図である。
【0061】
図15は、本実施の形態であるガスクラスターイオンビーム加工方法を実施するガスクラスターイオンビーム加工装置の作用の一例を示す概念図である。
図16は、本実施の形態であるガスクラスターイオンビーム加工方法を実施するガスクラスターイオンビーム加工装置の作用の一例を示す断面図である。
【0062】
図17は、本実施の形態であるガスクラスターイオンビーム加工方法を実施するガスクラスターイオンビーム加工装置の作用の一例を示す斜視図である。
図18は、本実施の形態であるガスクラスターイオンビーム加工方法を実施するガスクラスターイオンビーム加工装置の作用の一例を示す概念図である。
【0063】
図19は、本実施の形態であるガスクラスターイオンビーム加工方法におけるガスクラスターイオンビームの傾きと照射痕直径の関係を示した線図である。
図20は、本実施の形態であるガスクラスターイオンビーム加工方法を実施するガスクラスターイオンビーム加工装置の作用の一例を示す概念図である。
【0064】
なお、ガスクラスターイオンビーム加工装置Mの構成については、上述の実施の形態1と同様なので、共通の要素には同一符号を付して重複した説明は割愛する。
この実施の形態3では、被加工物9が曲面を有する場合において、所望の粗さを得るためのガスクラスターイオンビーム8を照射する方法を述べる。
【0065】
この場合、所望の粗さを得るとは、ガスクラスターイオンビーム8を照射する前の表面粗さと比較して、表面粗さを大きくする、または小さくすることを示すものとする。
図12はガスクラスターイオンビーム8の加速電極7における出射口と、球面を有する被加工物9との間に、荷電粒子レンズ11を設置した状態を示している。
【0066】
荷電粒子レンズ11は図1に示したように、荷電粒子レンズホルダ12を介して、X、Y、Zの各方向に移動可能な移動ステージ13に搭載され、また、被加工物9はX、Y、Zの各方向に移動可能な移動ステージ15に搭載されており、荷電粒子レンズ11と被加工物9との位置関係を自在に変化させることができる。
【0067】
〔作用〕
被加工物9が曲面を有する場合、ガスクラスターイオンビーム8と被加工物9の表面とがなす角度を照射角度としたとき、一般には照射角度が60°付近になると被加工物9の表面粗さは粗面化していくと言われている。
【0068】
図13は、被加工物9として、鏡面を有する鋼球20に対してガスクラスターイオンビーム8を紙面に対して垂直方向から、照射領域が鋼球20の直径より大きくなるガスクラスターイオンビーム8で照射した加工結果であり、粗面部20aと鏡面部20bが同時に存在している。
【0069】
したがって、被加工物9の曲面全体に対して粗面化を生じさせずにガスクラスターイオンビーム8を照射するためには、粗面化を防止する手段が必要である。そこで、本実施の形態では、荷電粒子レンズ11の開口部17の形状と荷電粒子レンズ11と被加工物9との距離Lの選択することで、この粗面化を防止する方法について述べる。
【0070】
図2に示す荷電粒子レンズ11を用いた場合の開口部17の直径をd、荷電粒子レンズ11と被加工物9の面頂までの距離をL、被加工物9の曲率半径をR、被加工物9における所望の照射痕直径をDとする。
【0071】
また、ガスクラスターイオンビーム8を照射した際に、被加工物9の表面の粗さが悪化しない最大の傾斜角度21をαとする。傾斜角度21とは、図14に示すように、被加工物9の中心線と母線上の任意点Pと被加工物9の曲率中心とを結ぶ線分とのなす角を示すものとする。なおαは、被加工物9における傾斜角度21の最大値をθmaxとしたときθmaxを超えないものとし、さらに90°以下であることを前提とする。
【0072】
ここで、被加工物9における照射痕直径Dの設定(制御)手順を説明する。図13のような球面を有する鋼球20等の被加工物9において、被加工物9の表面を粗面化させることなく照射できる最大の照射痕直径をDmaxとする。照射痕直径がDmaxとなるのは傾斜角度21がαのときであるから、図13における幾何学的な関係から、以下の(1)式のように表現できる。
【0073】
max = 2Rsinα (1)
また、所望の照射痕直径Dであるときの傾斜角度21がβであるとすると以下の(2)式となる。
【0074】
= 2Rsinβ (2)
荷電粒子レンズ11を通過したガスクラスターイオンビーム8が被加工物9の表面を粗面化させないためには、βがα以下でなければならない。したがって照射痕直径Dは、以下の(3)式の関係を満たすように設定する必要がある。
【0075】
D ≦ Dmax (3)
この被加工物9における照射痕直径Dは前述の通り、荷電粒子レンズ11の開口部17の形状、および荷電粒子レンズ11と被加工物9との距離Lに依存する。したがって荷電粒子レンズ11は、被加工物9における照射痕直径Dが所望の値となるように、荷電粒子レンズ11の開口部17の形状、および荷電粒子レンズ11と被加工物9との距離Lを図3および図4で示した関係f1、f2を用いて、図5に例示したフローチャートの手順で選択する。
【0076】
被加工物9が図15に示すような1つの連続した曲面内(3次元形状18)で複数の曲率半径を持つ場合には、各曲面にあわせた荷電粒子レンズ11の開口部17の形状や荷電粒子レンズ11と被加工物9との距離Lを上記(1)式と(2)式および(3)式を満たすようにすればよい。
【0077】
すなわち曲率半径がそれぞれ、RとRの領域における(R<R)最大の照射痕直径D1maxおよびD2maxは、それぞれ(1)式を用いて求められる。したがって、それぞれの領域においてこの(4)式および(5)式を満たすような照射痕直径DおよびDとなるように、荷電粒子レンズ11の開口部17の直径dと荷電粒子レンズ11と被加工物9との距離Lを適宜選択すれば良い。
【0078】
≦D1max = 2Rsinα (4)
≦D2max = 2Rsinα (5)
被加工物9が図16に示すような、複数の曲面(3次元形状18)を有する場合には、荷電粒子レンズ11に複数の開口部17を形成し、荷電粒子レンズ11の開口部17の形状と荷電粒子レンズ11と被加工物9の距離を図3および図4で示したような関係f1、f2を用いて、図5の手順で選択する。また、図16では3次元形状18が3個の場合を図示しているが、より多数の曲面を有する場合においても同様に行えば良い。
【0079】
被加工物9の表面全体にガスクラスターイオンビーム8を照射するには、被加工物9とガスクラスターイオンビーム8を相対的に移動させれば良い。すなわち図1に示したガスクラスターイオンビーム加工装置Mの構成における回転ステージ14、移動ステージ15、揺動ステージ16等を利用し、図17に示すように被加工物9の回転軸22の周りに回転させ、さらに揺動軸23を中心に揺動させることで、被加工物9の表面全体にガスクラスターイオンビーム8を照射して照射痕9aを形成することができる。この際、被加工物9の表面に対してガスクラスターイオンビーム8は常時略垂直方向から照射することが望ましい。垂直とは照射角度が90°の場合である。
【0080】
この理由について図18を用いて説明する。図18は球面を有する被加工物9の表面に対してビーム直径Dbのガスクラスターイオンビーム8が(0°≦γ≦90°)Y−Z面内でビーム軸24からγだけ傾いて照射されている場合を示している。被加工物9の表面における照射痕直径をD´とすると図18に示す幾何学的な関係から以下の(6)式のようになる。
【0081】
D´=Db/cosγ (6)
この(6)式を変形し横軸にγ、縦軸にD´/Dbをとると図19のようになる。このグラフからD´/Db≧1であるので、DbとD´には以下の関係がある。
【0082】
Db≦D´ (7)
つまりビーム直径Dbのガスクラスターイオンビーム8が垂直方向から傾くと、被加工物9の表面における照射痕直径D´は必ず大きくなる。ここでガスクラスターイオンビーム8のビーム直径Dbが(1)式に示すような、被加工物9の表面を粗面化させることなく照射できる最大の照射痕直径Dmaxである場合を考える。すると、被加工物9における照射痕直径D´はDmaxよりも必ず大きくなり、表面を粗面化させることとなる。したがって、被加工物9の粗面化を防止する目的においては被加工物9の表面に対してガスクラスターイオンビーム8は常時略垂直方向から照射するのが望ましい。
【0083】
一方、ガスクラスターイオンビーム8のビーム直径DbがDmax以下である場合には、ガスクラスターイオンビーム8の照射方向は必ずしも垂直でなくても良い。すなわち、(3)式に示したように照射痕直径D´がDmaxを超えなければ良いので、その関係を満たすような傾き角度γであれば、意図しない粗面化を生じない。したがって、ガスクラスターイオンビーム8の照射方向は必ずしも垂直でなくても良いのである。
【0084】
以上のように、開口部17を備えた荷電粒子レンズ11を用いることで、被加工物9の表面を粗面化させることなく、被加工物9の全体に対するガスクラスターイオンビーム加工を実現できる。
【0085】
逆にこれらの手法を応用することで、被加工物9の表面全体を意図的に粗面化させることもできる。例えば図20に示すように、曲率半径Rの球面に対するガスクラスターイオンビーム8(ビーム直径Db)の照射領域が粗面化を生じる傾斜角度α以上となるように被加工物9の回転軸22とビーム軸24が傾くように設置し、被加工物9をガスクラスターイオンビーム8に対して回転および揺動させる。これにより被加工物9の表面全体を粗面化させることができる。
【0086】
なお本実施の形態では、荷電粒子レンズ11の開口部17の形状が円形状の場合を例示したが、楕円、矩形、多角形などでも良い。また、被加工物9は球面以外にも、非球面、自由曲面、円柱などの曲面でも良い。また、回転および揺動以外の機構を用いても、被加工物9の全体への照射が可能であれば、2つの揺動機構のように、他の手段を用いても構わない。
(効果)
本実施の形態によれば、被加工物9が曲面等の3次元形状18を有する場合において、被加工物9の形状から導出される所望の照射痕9aの形成条件を求め、これを満たすように荷電粒子レンズ11と被加工物9との距離Lおよび荷電粒子レンズ11の開口部17の形状と照射痕9aの関係から、荷電粒子レンズ11と被加工物9との距離Lおよび荷電粒子レンズ11の開口部17の形状を決定することで、被加工物9の表面において意図的に所望の粗さを得ることができるという効果をもたらす。
【0087】
以上詳細に説明したように、本発明の各実施の形態におけるガスクラスターイオンビーム加工における、荷電粒子レンズの設定方法および装置によれば、荷電粒子レンズの形状および荷電粒子レンズと被加工物との距離を適宜選択することで、所望の照射痕を得ることができる。
【0088】
なお、本発明は、上述の実施の形態に例示した構成に限らず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
ガスクラスターイオンビームの照射による加工方法に限らず、一般の荷電粒子ビームの照射による加工にも適用できる。
【0089】
[付記1]
ガスクラスターイオンビームを被加工物に照射し、所望の照射痕を得る工程において、ガスクラスターイオンビーム出射口と被加工物との間に荷電粒子レンズを配置する工程と、荷電粒子レンズの開口部の形状を任意に変更する工程とからなるガスクラスターイオンビーム加工方法。
【0090】
[付記2]
付記1において、荷電粒子レンズの開口部の形状と照射痕の関係に基づいて、前記形状を選択する工程とからなるガスクラスターイオンビーム加工方法。
【0091】
[付記3]
ガスクラスターイオンビームを被加工物に照射し、所望の照射痕を得る工程において、ガスクラスターイオンビーム出射口と被加工物との間に荷電粒子レンズを配置する工程と、荷電粒子レンズと被加工物との距離を任意に変更する工程とからなるガスクラスターイオンビーム加工方法。
【0092】
[付記4]
付記3において、荷電粒子レンズと被加工物との距離と照射痕の関係に基づいて、前記距離を選択する工程とからなるガスクラスターイオンビーム加工方法。
【0093】
[付記5]
ガスクラスターイオンビームを被加工物に照射し、所望の照射痕を得る工程において、ガスクラスターイオンビーム出射口と被加工物との間に荷電粒子レンズを配置する工程と、荷電粒子レンズと被加工物との距離、かつ荷電粒子レンズの開口部の形状を任意に変更する工程とからなるガスクラスターイオンビーム加工方法。
【0094】
[付記6]
付記5において、荷電粒子レンズと被加工物との距離と照射痕の関係、かつ荷電粒子レンズの開口部の形状と照射痕の関係に基づいて、前記距離および形状を選択する工程とからなるガスクラスターイオンビーム加工方法。
【0095】
[付記7]
ガスクラスターイオンビーム出射口から被加工物に向かう軸方向に荷電粒子レンズと被加工物の相対位置を移動させる工程と、荷電粒子レンズと被加工物との距離と照射痕の関係に基づいて、被加工物に3次元形状を創成する工程とからなるガスクラスターイオンビーム加工方法。
【0096】
[付記8]
1つ以上の曲面を有する被加工物に対し、ガスクラスターイオンビームを照射する工程において、所望の表面粗さを得る範囲で照射可能となるように、荷電粒子レンズと被加工物との距離、および荷電粒子レンズの開口部の形状を選択する工程とからなるガスクラスターイオンビーム加工方法。
【0097】
[付記9]
付記8におけるガスクラスターイオンビーム加工方法において、ガスクラスターイオンビームに対する、被加工物の相対位置を変化させる工程とからなるガスクラスターイオンビーム加工方法。
【0098】
[付記10]
ガスクラスターイオンビームを被加工物に照射し、所望の照射痕を得る工程において、ガスクラスターイオンビーム出射口と被加工物との間に荷電粒子レンズを配置する手段と、荷電粒子レンズと被加工物との距離を任意に変更する手段とからなるガスクラスターイオンビーム加工装置。
【0099】
[付記11]
ガスクラスターイオンビームを被加工物に照射し、所望の照射痕を得る工程において、ガスクラスターイオンビーム出射口と被加工物との間に荷電粒子レンズを配置する手段と、荷電粒子レンズの開口部の形状を任意に変更する手段とからなるガスクラスターイオンビーム加工装置。
【0100】
[付記12]
ガスクラスターイオンビーム加工方法において、ガスクラスターイオンビームに対する、荷電粒子レンズと被加工物の相対位置を変化させる手段とからなるガスクラスターイオンビーム加工装置。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明の一実施の形態であるガスクラスターイオンビーム加工方法を実施するガスクラスターイオンビーム加工装置の構成の一例を示す概念図である。
【図2】本発明の一実施の形態であるガスクラスターイオンビーム加工装置の一部を取り出して例示した斜視図である。
【図3】本発明の一実施の形態であるガスクラスターイオンビーム加工方法および装置の作用の一例を示す線図である。
【図4】本発明の一実施の形態であるガスクラスターイオンビーム加工方法および装置の作用の一例を示す線図である。
【図5】本発明の一実施の形態であるガスクラスターイオンビーム加工方法および装置の作用の一例を示すフローチャートである。
【図6】本発明の他の実施の形態であるガスクラスターイオンビーム加工装置における荷電粒子レンズの構成例を示す平面図である。
【図7】その作用を示す斜視図である。
【図8】その作用を工程順に例示した略断面図である。
【図9】本発明の一実施の形態である荷電粒子レンズの変形例を示す平面図である。
【図10】その作用を工程順に例示した略断面図である。
【図11】ドーズ量と加工深さの関係を示す線図である。
【図12】本発明の一実施の形態である荷電粒子レンズの作用を説明する概念図である。
【図13】被加工物の一例におけるガスクラスターイオンビームの照射後の表面状態を示す説明図である。
【図14】本発明の実施の形態であるガスクラスターイオンビーム加工方法における照射角度の定義を示した概念図である。
【図15】本発明の他の実施の形態であるガスクラスターイオンビーム加工方法を実施するガスクラスターイオンビーム加工装置の作用の一例を示す概念図である。
【図16】本発明の他の実施の形態であるガスクラスターイオンビーム加工方法を実施するガスクラスターイオンビーム加工装置の作用の一例を示す断面図である。
【図17】本発明の他の実施の形態であるガスクラスターイオンビーム加工方法を実施するガスクラスターイオンビーム加工装置の作用の一例を示す斜視図である。
【図18】本発明の他の実施の形態であるガスクラスターイオンビーム加工方法を実施するガスクラスターイオンビーム加工装置の作用の一例を示す概念図である。
【図19】本発明の他の実施の形態であるガスクラスターイオンビーム加工方法におけるガスクラスターイオンビームの傾きと照射痕直径の関係を示した線図である。
【図20】本発明の他の実施の形態であるガスクラスターイオンビーム加工方法を実施するガスクラスターイオンビーム加工装置の作用の一例を示す概念図である。
【符号の説明】
【0102】
1 ソース部
2 差動排気部
3 イオン化部
4 ノズル
5 スキマー
6 フィラメント
7 加速電極
8 ガスクラスターイオンビーム
9 被加工物
9a 照射痕
10 支持台
11 荷電粒子レンズ
12 荷電粒子レンズホルダ
13 移動ステージ
14 回転ステージ
15 移動ステージ
15a 移動ステージ
15b 移動ステージ
15c 移動ステージ
16 揺動ステージ
17 開口部
18 3次元形状
19 外部制御機構
19a 加工制御プログラム
19b 加工データベース
20 鋼球
20a 粗面部
20b 鏡面部
21 傾斜角度
22 回転軸
23 揺動軸
24 ビーム軸
L 荷電粒子レンズ11と被加工物9との距離
d 荷電粒子レンズ11の開口部17の直径
D 照射痕直径
Db ビーム直径
M ガスクラスターイオンビーム加工装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスクラスターイオンビームを被加工物に照射して所望の照射痕を得るガスクラスターイオンビーム加工方法であって、
前記ガスクラスターイオンビームの出射口と前記被加工物との間に荷電粒子レンズを配置する第1工程と、
前記ガスクラスターイオンビームが通過する前記荷電粒子レンズの開口部の形状、および前記荷電粒子レンズと前記被加工物との距離、の少なくとも一方を制御する第2工程と、
を含むことを特徴とするガスクラスターイオンビーム加工方法。
【請求項2】
請求項1記載のガスクラスターイオンビーム加工方法において、
前記第2工程では、前記荷電粒子レンズの前記開口部の形状を変化させることを特徴とするガスクラスターイオンビーム加工方法。
【請求項3】
請求項1記載のガスクラスターイオンビーム加工方法において、
前記第2工程では、前記荷電粒子レンズの前記開口部の形状と前記照射痕の形状との関係に基づいて、前記開口部の前記形状を選択することを特徴とするガスクラスターイオンビーム加工方法。
【請求項4】
請求項1記載のガスクラスターイオンビーム加工方法において、
前記第2工程では、前記荷電粒子レンズと前記被加工物との前記距離を変化させることを特徴とするガスクラスターイオンビーム加工方法。
【請求項5】
請求項4記載のガスクラスターイオンビーム加工方法において、
前記第2工程では、前記荷電粒子レンズと前記被加工物との前記距離と、前記照射痕の形状との関係に基づいて、前記距離を決定することを特徴とするガスクラスターイオンビーム加工方法。
【請求項6】
請求項1記載のガスクラスターイオンビーム加工方法において、
前記第2工程では、前記荷電粒子レンズと前記被加工物との前記距離、および前記荷電粒子レンズの前記開口部の前記形状を変化させることを特徴とするガスクラスターイオンビーム加工方法。
【請求項7】
請求項6記載のガスクラスターイオンビーム加工方法において、
前記第2工程では、前記荷電粒子レンズと前記被加工物との前記距離と前記照射痕の前記形状との関係、および前記荷電粒子レンズの前記開口部の形状と前記照射痕の前記形状との関係に基づいて、前記距離および前記荷電粒子レンズの前記開口部の形状を決定することを特徴とするガスクラスターイオンビーム加工方法。
【請求項8】
請求項1記載のガスクラスターイオンビーム加工方法において、
前記第2工程では、前記荷電粒子レンズと前記被加工物との距離と前記照射痕の前記形状との関係に基づいて、前記ガスクラスターイオンビームの出射口から前記被加工物に向かう方向において前記荷電粒子レンズと前記被加工物の相対位置を変化させることで前記被加工物に3次元形状を創成することを特徴とするガスクラスターイオンビーム加工方法。
【請求項9】
請求項1記載のガスクラスターイオンビーム加工方法において、
前記第2工程では、1つ以上の曲面を有する前記被加工物に対し、前記ガスクラスターイオンビームを照射するとき、前記被加工物において所望の表面粗さが得られる範囲で前記ガスクラスターイオンビームの照射が可能となるように、前記荷電粒子レンズと前記被加工物との前記距離、および前記荷電粒子レンズの前記開口部の形状を決定することを特徴とするガスクラスターイオンビーム加工方法。
【請求項10】
請求項9記載のガスクラスターイオンビーム加工方法において、
前記第2工程では、前記ガスクラスターイオンビームに対する前記被加工物の相対位置を変化させることを特徴とするガスクラスターイオンビーム加工方法。
【請求項11】
ガスクラスターイオンビームを被加工物に照射して所望の照射痕を得るガスクラスターイオンビーム加工装置であって、
前記ガスクラスターイオンビームの出射口と前記被加工物との間に配置される荷電粒子レンズと、
前記荷電粒子レンズと前記被加工物との距離、および前記ガスクラスターイオンビームが通過する前記荷電粒子レンズの開口部の形状の少なくとも一方を制御するレンズ制御手段と、
を含むことを特徴とするガスクラスターイオンビーム加工装置。
【請求項12】
請求項11記載のガスクラスターイオンビーム加工装置において、
さらに、前記ガスクラスターイオンビームおよび前記荷電粒子レンズに対する前記被加工物の相対位置を変化させる姿勢制御手段を含むことを特徴とするガスクラスターイオンビーム加工装置。
【請求項13】
請求項11記載のガスクラスターイオンビーム加工装置において、
前記荷電粒子レンズには、互いに同一または異なる形状を有する複数の前記開口部を備えたことを特徴とするガスクラスターイオンビーム加工装置。
【請求項14】
ガスクラスターイオンビームを被加工物に照射して所望の照射痕を得るガスクラスターイオンビーム加工装置を制御する加工制御プログラムであって、
前記被加工物に形成されるべき前記照射痕の目的形状を入力するステップと、
前記ガスクラスターイオンビームの出射口と前記被加工物との間に配置される荷電粒子レンズと前記被加工物との前記距離と、前記照射痕の形状との関係、および前記荷電粒子レンズの開口部の形状と、前記照射痕の形状との関係、の少なくとも一方と、前記目的形状とに基づいて、前記距離および前記開口部の形状の少なくとも一方を制御するステップと、
をコンピュータに実行させることを特徴とする加工制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図11】
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【図18】
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【図19】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図20】
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【公開番号】特開2009−259592(P2009−259592A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−107077(P2008−107077)
【出願日】平成20年4月16日(2008.4.16)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】