説明

ガスケット

【課題】仮にガスケットの主ビードから液体還元剤が漏れたとしても、その液体還元剤がボルトにかかるのを防止でき、液体還元剤による腐食に起因するボルトの劣化や折損を防止できるガスケットを提供する。
【解決手段】排気ガス用の開口部23と、周縁のボルト挿通用の複数の孔部24とを有すると共に、前記開口部23の周縁部に隆起して形成された環状の主ビード25と、前記孔部24の周縁部に隆起して形成された環状の副ビード26とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスケットに係り、特に管継手のフランジ同士を締め付けるボルトの腐食を防止する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジン、例えばディーゼルエンジンの排気ガス中のNOxを浄化するために排気ガス浄化装置の一つとして、例えば選択還元触媒(SCR)装置が開発されている(例えば、特許文献1,2参照)。このSCR装置は、液体還元剤である例えば尿素水をSCR装置の排気ガス上流に供給し、排気ガスの熱で尿素を加水分解してアンモニアを生成し、このアンモニアによってSCR触媒上でNOxを還元して浄化するものである。
【0003】
尿素水供給装置の供給配管やSCR装置と排気管などの各接続部においては、その接続部のシール性を確保するために図5に示すように管継手を構成するフランジ20,21間にガスケット22Bを介在させてフランジ20,21同士をボルト27とナット28で締め付ける構造が採用されている。なお、29はワッシャである。フランジ20,21には周方向に適宜間隔でボルト挿通用の複数の孔部30が形成されている。
【0004】
前記ガスケット22Bは、排気ガス通過用として中央部に形成された開口部23と、ボルト挿通用として周縁部に形成された複数の孔部24と、実質的なシール用として前記開口部23の周縁近傍に隆起して形成された環状の主ビード(突起)部25とを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−27627号公報
【特許文献2】特開2005−83223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記接続部においては、仮にガスケット22Bの主ビード部25から尿素水が漏れた場合、その尿素水がボルト27にかかるとボルト27が腐食して折損し、接続を維持できなくなり、重大な不具合が発生する虞がある。
【0007】
本発明は、前記事情を考慮してなされたものであり、仮にガスケットの主ビード部から液体還元剤が漏れたとしても、その液体還元剤がボルトにかかるのを防止でき、液体還元剤による腐食に起因するボルトの劣化や折損を防止できるガスケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明は、排気ガス用の開口部と、周縁のボルト挿通用の複数の孔部とを有すると共に、前記開口部の周縁部に隆起して形成された環状の主ビード部と、前記孔部の周縁部に隆起して形成された環状の副ビード部とを有することを特徴とする。
【0009】
前記副ビード部の隆起高さが、前記主ビード部の隆起高さよりも低く形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、仮にガスケットの主ビード部から液体還元剤が漏れたとしても、その液体還元剤がボルトにかかるのを副ビード部によって防止でき、液体還元剤による腐食に起因するボルトの劣化や折損を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係るガスケットが使用される排気ガス浄化装置の一例を概念的に示す図である。
【図2】図1のA部である排気ガス浄化装置接続部の構成を示す拡大断面図である。
【図3】図2の排気ガス浄化装置接続部に用いられているガスケットを示す図で、(a)は平面図、(b)は(a)のB−B線断面図である。
【図4】ガスケット構成片の断面図である。
【図5】従来の排気ガス浄化装置接続部の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明を実施するための形態を添付図面に基いて詳述する。
【0013】
図1において、1は例えばディーゼルエンジン等のエンジンであり、このエンジン1の排気マニフォールド2には排気管3が接続されている。この排気管3の途中には排気ガス浄化装置の一つであるNOx還元用のSCR装置(SCRユニットともいう。)4が接続されていると共に、このSCR装置4の排気ガス上流には液体還元剤である尿素水5をSCR装置4のSCR触媒6に供給するための噴射ノズル7を備えた尿素水供給管部8が接続されている。これらSCR装置4及び尿素水供給管部8を取付けるために、前記排気管3は前部3aと後部3bに分割されている。
【0014】
この尿素水供給管部8の噴射ノズル7には、尿素水供給パイプ9を介して尿素水貯蔵タンク10が接続されている。この尿素水貯蔵タンク10は、尿素水5を尿素水供給パイプ9を介して噴射ノズル7に圧送するように構成されている。
【0015】
前記SCR装置4は、SCR触媒6と、このSCR触媒6を収容した円筒状の容器11とから主に構成されている。前記容器11の前端部と後端部には漏斗状の排気ガス入口部材12と排気ガス出口部材13がそれぞれ第1、第2の管継手14,15を介して着脱自在に接続されており、その排気ガス出口部材13には前記排気管3の後部3bが第3の管継手16を介して接続されている。
【0016】
前記排気ガス入口部材12には前記尿素水供給管部8が第4の管継手17を介して着脱自在に接続されており、この尿素水供給管部8には前記排気管3の前部3aが第5の管継手18を介して着脱自在に接続されている。
【0017】
そして、図1ないし図2に示すように、前記SCR装置4の接続部、例えば、SCR装置4のSCR触媒6よりも上流であって尿素水の噴射ノズル7よりも下流の第4の管継手17における対向するフランジ部20,21間に介在されてボルト締めにより挟持されるガスケットとして、本発明の一実施形態であるガスケット22Aが用いられている。このガスケット22Aは、図2ないし図3示すように、中央の排気ガス用の開口部23と、周縁のボルト挿通用の複数の孔部24とを有すると共に、前記開口部23の周縁部に隆起して形成された環状の主ビード部25と、前記孔部24の周縁部に隆起して形成された環状の副ビード部26とを有している。
【0018】
前記ガスケット22Aは、図4に示すような耐熱性及び耐食性を有する材料例えばステンレス板からなるガスケット構成片22pを2枚背中合わせにしてスポット溶接により一体に接合して形成されている。ガスケット構成片22pの主ビード部25及び副ビード部26は、板金加工の一種であるビーディング加工により裏面側が窪み、表面側が隆起するように形成されている。前記開口部23及び孔部24は、打ち抜き加工により形成されている。なお、図示例のガスケット22Aは平面三角形に形成されているが、複数角形や多角形、円形に形成されていてもよい。
【0019】
本来のシール部である主ビード部25によるシール性を確保するために、前記副ビード部26の隆起高さhaは、前記主ビード部25の隆起高さhbよりも低く形成されていること、換言すれば、前記主ビード部25の隆起高さhbは、前記副ビード26の隆起高さhaよりも高く形成されていることが好ましい。
【0020】
前記ガスケット22Aは、前記第4の管継手17を構成するフランジ20,21間に介在され、フランジ20,21同士をボルト27とナット28で締め付けることによりフランジ20,21間に挟持された状態に取付けられる。なお、29はワッシャである。フランジ20,21には周方向に適宜間隔でボルト挿通用の複数の孔部30が形成されている。
【0021】
このように構成されたガスケット22Aによれば、フランジ20,21間に露出しているボルト27の露出部分が副ビード部26によってシールされるため、仮にガスケット22の主ビード部25から尿素水ないしアンモニアが漏れたとしても、その尿素水ないしアンモニアがボルト27にかかる(接触する)のを防止でき、尿素水ないしアンモニアによる腐食に起因するボルト27の劣化や折損を防止でき、耐久性の向上が図れる。
【0022】
第1の管継手14におけるガスケットにも本実施形態のガスケットが適用されていることが好ましい。なお、全ての管継手に本実施形態のガスケットが適用さていてもよい。
【0023】
以上、本発明の実施の形態を図面により詳述してきたが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲での種々の設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0024】
22A ガスケット
23 開口部
24 孔部
25 主ビード部
26 副ビード部
ha 副ビード部の隆起高さ
hb 主ビード部の隆起高さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガス用の開口部と、周縁のボルト挿通用の複数の孔部とを有すると共に、前記開口部の周縁部に隆起して形成された環状の主ビードと、前記孔部の周縁部に隆起して形成された環状の副ビードとを有することを特徴とするガスケット。
【請求項2】
前記副ビードの隆起高さが、前記主ビードの隆起高さよりも低く形成されていることを特徴とする請求項1記載のガスケット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−117389(P2011−117389A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−276723(P2009−276723)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【出願人】(000005463)日野自動車株式会社 (1,484)
【Fターム(参考)】