ガスシール複合体及び該ガスシール複合体を備えた装置
【課題】セラミックやガラスのような金属部材より割れ易い相手部材を破損しないような締付力で締め付けても、高いシール性を実現できるガスシール複合体及び該ガスシール複合体を備えた装置を提供すること。
【解決手段】ガスシール複合体7は、環状の一対のガスケット(先端側ガスケット43、基端側ガスケット45)とその両ガスケット43、45の間に挟まれた環状の金属箔部材47とから構成されている。両ガスケット43、45は、膨張黒鉛からなる耐熱性のガスケットである。両ガスケット43、45は、前記空間41内にて、押圧金具9の押圧によって圧縮された状態、従って周囲を押圧した状態に保持されているので、この空間41における原料ガスの漏出を防止している。
【解決手段】ガスシール複合体7は、環状の一対のガスケット(先端側ガスケット43、基端側ガスケット45)とその両ガスケット43、45の間に挟まれた環状の金属箔部材47とから構成されている。両ガスケット43、45は、膨張黒鉛からなる耐熱性のガスケットである。両ガスケット43、45は、前記空間41内にて、押圧金具9の押圧によって圧縮された状態、従って周囲を押圧した状態に保持されているので、この空間41における原料ガスの漏出を防止している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスシール複合体及び該ガスシール複合体を備えた装置に関し、特に、原料ガスから所望のガスを選択して分離することにより純度の高い所望のガスを分離することができるガス分離装置等に使用されるガスシール複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、部材間におけるガスシールを行うために、各種のシール部材(例えば単一の部材からなるガスケットや複数の構成部品からなるガスシール複合体など)が広く使用されている。
【0003】
例えば燃料電池に供給する水素を製造する装置として、下記特許文献1に記載の様に、表面に水素透過膜を備えた水素分離筒を収納容器内に配置した水素分離装置が知られており、この水素分離装置にもシール部材が使用されている。
【0004】
前記水素分離装置では、水素透過膜の支持体として、多孔質のセラミックからなる改質触媒兼支持体を用いた試験管形状の水素分離筒が用いられており、水素分離筒はその開口側の端部を取付金具等に固定されている。
【0005】
この水素分離装置では、水素分離筒と取付金具との間のガスシールを行うためにシール部材が配置されており、水素分離筒は、シール部材を介して固定金具等で締め付けられることにより取付金具に固定されていた。つまり、水素分離装置では、セラミック製の水素分離筒と取付金具との間のガスシールを行うために、シール部材が用いられていた。
【0006】
前記シール部材としては、例えば膨張黒鉛製のガスケット(パッキン)が知られており、この膨張黒鉛は、耐熱性に優れ、変質し難く、変形性に富むことから、流体用のシール部材として広く使用されている。なお、その他のシール部材としては、マイカ等の無機系ガスケット等も使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−184883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した従来技術では、シール部材のガスシール性に関しては、必ずしも十分ではないという問題があった。
つまり、膨張黒鉛製ガスケット、マイカ等の無機系ガスケットは、ガスケット内の僅かな間隙を通ってガスが漏れるという問題があった。
【0009】
特に金属部材とその相手部材との間のガスシールを行う場合に、相手部材がセラミックやガラスのときには、金属部材と相手部材との間にシール部材を配置して両側から締め付けてガスシールを行うと(即ちコンプレッションシールの場合には)、あまり締付力を大きくすると相手部材が破損する恐れがある。そのため、締付力を大きくできず、よって、シール性を高めることができないという問題があった。
【0010】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的は、コンプレッションシールの場合に、例えばセラミックやガラスのような金属部材より割れ易い相手部材を破損しないような締付力で締め付けても、高いシール性を実現できるガスシール複合体及び該ガスシール複合体を備えた装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本発明は、請求項1に記載の様に、金属部材と、前記金属部材に対向して配置される相手部材との間に配置されて、前記金属部材と前記相手部材との間隙をガスシールするガスシール複合体において、前記金属部材と前記相手部材との間に配置されて該金属部材と該相手部材との間隙をそれぞれガスシールする一対のガスケットと、前記金属部材と前記相手部材との間隙を閉塞するように、前記一対のガスケットの間に挟まれるとともに該一対のガスケットに密着して配置された金属箔と、を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明は、コンプレッションシールに関するものであり、本発明のガスシール複合体は、金属部材と相手部材との間に配置されて金属部材と相手部材との間隙をそれぞれガスシールする一対のガスケットを備え、且つ、金属部材と相手部材との間隙を閉塞するように、一対のガスケットの間に挟まれるとともに一対のガスケットに密着して配置された金属箔を備えている。
【0013】
つまり、本発明では、一対のガスケットの間に(ピンホール等の欠陥が無い)金属箔が配置されているので、ガスケットが、例えば膨張黒鉛の様に、(例えば大きなガス圧力が加わっている場合に)内部の微小な隙間からガスのリークが発生する可能性があるものであっても、確実にガスのリークを防止することができる。従って、ガスのリークを防止するために、過大な締付力で締め付ける必要がないので、相手部材が例えばセラミックやガラスのような(金属部材に比べて)割れやすい部材であっても、割れの発生を抑制しながらシール性を高めることができるという顕著な効果を奏する。
【0014】
(2)本発明では、請求項2に記載の様に、一対のガスケット及び金属箔は筒状であり、金属箔は、一方のガスケットの軸方向における一方の端面を覆うとともに、その端面に隣接する内周面の端部及び外周面の端部を覆うように、軸方向に沿って折り曲げて構成できる。
【0015】
図7に例示する様に、この構成により、金属箔が一方のガスケットの端面からずれにくくなるので、金属箔によってガスケットの端面及びその周囲を確実に覆うことができる。しかも、金属箔及びガスケットを一体に扱うことができるので、金属箔及びガスケットをガス分離装置に組み込む際の作業も容易になる。
【0016】
(3)本発明では、請求項3に記載の様に、一対のガスケット及び金属箔は筒状であり、金属箔は、一方のガスケットの軸方向における端面を覆うとともに、その端面に隣接する内周面の端部とその端面に向かい合う他方のガスケットの端面に隣接する外周面の端部とを覆うように、軸方向に沿って折り曲げて構成できる。
【0017】
図3に例示する様に、この構成により、金属箔がガスケットの端面からずれにくくなるので、金属箔によってガスケットの端面及びその周囲を確実に覆うことができる。
(4)本発明では、請求項4に記載の様に、金属箔の厚みとして、10〜100μmを採用できる。
【0018】
この厚みであれば、扱いも容易で、しかも、締付力を高めても、破損しにくく好適である。
(5)本発明は、請求項5に記載の様に、前記金属部材と前記金属部材に対向して配置される相手部材との間に、前記金属部材と前記相手部材との間隙をガスシールする前記請求項1〜4のいずれか1項に記載のガスシール複合体を備えた装置である。
【0019】
この装置としては、例えばガス分離装置(例えば水素分離装置、酸素分離装置)や、固体酸化物形燃料電池などが挙げられる。
以下、本発明の各構成について説明する。
【0020】
・前記金属箔の材料としては、Ag、Ni、Al、Pd、Cu、Fe等の金属、又はこれらの少なくとも一つを含む合金等を採用できる。
・前記相手部材の材料としては、金属部材の材料とは異なり、同じ条件(押圧力等)下においては金属部材よりも割れやすい例えばセラミック又はガラスを含む材料を採用できる。ここで、セラミックとしては、ジルコニア、安定化ジルコニア、アルミナ、マグネシア、窒化珪素、窒化アルミ、酸化チタン等を採用でき、ガラスとしては、シリカガラス、ホウ珪酸ガラス等を採用できる。
【0021】
また、相手部材としては、セラミックを主体とした例えば試験管形状の水素分離筒や平板形状の水素分離板が挙げられる。この水素分離筒や水素分離板としては、(改質触媒兼支持体である)多孔質支持管(又は多孔質支持板)の表面に水素透過膜が形成された筒状体(又は板材)や、多孔質支持管(又は多孔質支持板)の表面に、金属の拡散を防止するバリア層が形成され、更にバリア層の表面に水素透過膜が形成された筒状体(又は板材)が挙げられる。
【0022】
このうち、多孔質支持管(又は多孔質支持板)を構成する材料としては、例えばニッケルとイットリア安定化ジルコニア(YSZ)の混合物の焼結体、ニッケルとイットリア安定化ジルコニアの混合物を主体とする焼結体(Ni−YSZサーメット等)、その他、支持体としての機能と改質触媒としての機能の両機能を合わせ有する多孔質セラミック、多孔質サーメットなどが挙げられる。
【0023】
水素透過膜としては、例えばPd膜やPd合金膜などの金属膜が挙げられる。
バリア層の構成材料としては、例えばジルコニア、安定化ジルコニア、部分安定化ジルコニア、アルミナ、マグネシア、セリア等、もしくはそれらの材料の混合物もしくは化合物を用いることができる。
【0024】
・前記金属部材としては、前記水素分離筒や水素分離板を取り付ける取付部材が挙げられ、この取付部材としては、耐熱性及び耐酸化性を有する例えばSUS405、SUS316、SUS316L、SUS304、SUS430等のステンレスや、コバール、インコネル、パーマロイなど、金属製の取付金具などが挙げられる。
【0025】
・前記ガスケットの材料としては、膨張黒鉛を採用でき、この膨張黒鉛としては、下記の物性値を有することが好ましい。
密度(嵩密度)が0.6〜1.9g/cm3、圧縮率(JIS−R3453に準拠)が
10〜90%、復元率(JIS−R3453に準拠)が3〜70%、酸化開始温度(空気中での加熱によって重量が1%減少したときの温度)が400℃以上。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第1実施形態のガスシール複合体を適用した水素分離装置を軸方向に沿って破断して模式的に示す断面図である。
【図2】第1実施形態の水素分離装置を軸方向に沿って破断して詳細に示す断面図である。
【図3】(a)は第1実施形態のガスシール複合体を分解して示す斜視図、(b)はガスシール複合体の正面図、(c)はガスシール複合体を軸方向に沿って破断した状態を示す断面図である。
【図4】第1実施形態の水素分離装置のガスリークを調べる装置を示す説明図である。
【図5】比較例の水素分離装置を軸方向に沿って破断して示す断面図である。
【図6】第2実施形態の水素分離装置を軸方向に沿って破断して示す断面図である。
【図7】(a)は第2実施形態のガスシール複合体を分解して示す斜視図、(b)はガスシール複合体の正面図、(c)はガスシール複合体を軸方向に沿って破断した状態を示す断面図である。
【図8】第3実施形態の水素分離装置を軸方向に沿って破断して示す断面図である。
【図9】第4実施形態のガスシール複合体を分解して示す斜視図である。
【図10】第4実施形態の水素分離装置を縦方向に沿って破断して示す断面図である。
【図11】第4実施形態のガスシール複合体の配置を示す説明図である。
【図12】第4実施形態の水素分離装置のガスリークを調べる装置を示す説明図である。
【図13】第5実施形態の水素分離装置を示す斜視図である。
【図14】第5実施形態の水素分離装置を分解して示す斜視図である。
【図15】第6実施形態のガスシール複合体をSOFCに適用した状態を示す説明図である。
【図16】(a)は他のガスシール複合体を分解して示す斜視図、(b)は更に他のガスシール複合体を分解して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について説明する。
[第1実施形態]
ここでは、ガスシール複合体が使用されたガス分離装置を例として説明する。例えば燃料電池に燃料ガス(水素ガス)を供給する水素分離装置(ガス製造装置)について説明する。
【0028】
a)まず、本実施形態において、水素分離装置の要部である水素分離筒について説明する。
図1に模式的に示す様に、本実施形態の水素分離装置1は、一端が閉塞された試験管状の水素分離筒3と、水素分離筒3の開放端側が挿入された筒状の取付金具5と、水素分離筒3の外周面と取付金具5の内周面との間に配置された円筒形のガスシール複合体7と、ガスシール複合体7の先端側(同図上側)を押圧する円筒形の押圧金具9と、押圧金具9に外嵌されて取付金具5に螺合する筒状の固定金具11とを備えている。
【0029】
以下に、図2に基づいて、水素分離装置1の構成をより詳細に説明する。
図2に詳細に示すように、前記水素分離筒3は、その軸中心の中心孔13に導入された原料ガス(例えばメタンなどの炭化水素ガスと水蒸気の混合ガス及びその反応によって得られた少なくとも水素ガスを含む混合ガス)から、水素を選択的に分離して、水素分離筒3の外周側に供給する部材である。
【0030】
この水素分離筒3は、一端が閉塞された試験管状の(改質触媒兼支持体である)多孔質支持管15と、多孔質支持管15の外側表面を覆うバリア層19と、バリア層19の外側表面を覆う水素透過膜21とから構成されている。
【0031】
このうち、多孔質支持管15は、例えばNi-YSZ多孔体からなり、改質触媒としての役割と水素透過膜21等を支持する役割とを有する通気性を有する試験管状の支持体であり、この多孔質支持管15では、原料ガスを水蒸気改質して改質ガス(例えば水素、二酸化炭素、一酸化炭素)を生成する。
【0032】
水素透過膜21は、例えばPdAg合金からなり、多孔質支持管15内で改質された改質ガスから水素を選択的に透過して精製する薄膜である。
バリア層19は、例えばYSZ多孔体からなり、多孔質支持管15の金属成分(例えばNi)と水素透過膜21の成分(例えばPd)とが互いに交じり合う(拡散する)ことにより、水素透過膜21の水素透過性能が劣化することを防止するための多孔質層(相互拡散防止層)である。
【0033】
また、前記取付金具5は、水素分離装置1の基部を構成する例えばSUS430からなる筒状金具であり、その先端側より、外周にねじ部23を有する先端側筒状部25と、外周側に環状に張り出す鍔部27と、(原料ガスを供給する配管等が接続される)基端側筒状部29とを備えている。
【0034】
この取付金具5の軸中心には、原料ガスの流路となる貫通孔(中空部)31が形成され、中空部31には、水素分離筒3の基端側(同図右側)の端部が収容されている。詳しくは、中空部31の内径は、先端側筒状部25内側より鍔部27内側が小さく設定されており、鍔部27内側の先端側に凹部33が形成され、この凹部33に水素分離筒3の端部が内嵌している。
【0035】
前記固定金具11は、軸方向に沿った断面がL字状の例えばSUS430からなる筒状金具であり、径方向に伸びて押圧金具9を基端側に押圧する環状の押圧板35と、押圧板35の外周端から軸方向に沿って基端側に伸び、内周面にねじ部37を有する筒状部39とを備えている。従って、この固定金具11のねじ部37と取付金具5のねじ部23を螺合させて締め付けることにより、押圧金具9を介してガスシール複合体7を、基端側に押圧することができる。
【0036】
前記押圧金具9は、円筒形状の例えばSUS430からなる筒状金具であり、取付金具5の先端側筒状部25の内周面と水素分離筒3の外周面との間に形成された筒状の空間41内にて、ガスシール複合体7と隣接して配置されている。この押圧金具9の先端側は固定金具11の押圧板35に当接し、その後端側はガスシール複合体7に当接している。
【0037】
なお、前記水素分離装置1の内部(詳しくは水素分離筒3の中心孔13)には、内挿管50が配置されている。この内挿管50は、原料ガスを、水素分離装置1の基端側から水素分離筒3の先端側に供給する部材であり、反応後のオフガス(CO、CO2、H2、メタン、水蒸気)は、内挿管50の外周に沿って水素分離装置1の基端側から排出される。
【0038】
特に、本実施形態では、図3(a)に拡大して示す様に、前記ガスシール複合体7は、環状の一対のガスケット(先端側ガスケット43、基端側ガスケット45)とその両ガスケット43、45の間に挟まれた環状の金属箔部材47とから構成されている。
【0039】
このうち、両ガスケット43、45は、膨張黒鉛からなる内径φ10mm、外径φ13mm、(軸方向の長さ)幅4mmの耐熱性のガスケットである。
前記両ガスケット43、45は、前記空間41内にて、押圧金具9の押圧によって圧縮された状態、従って周囲を押圧した状態に保持されているので、この空間41における原料ガスの漏出を防止している。
【0040】
また、金属箔部材47は、例えば銀からなり、その厚みが10〜100μmの範囲(例えば20μm)で、ピンホール等のガスが漏れる様な欠陥が無いガスシール用の部材(箔)である。この金属箔部材47は、内径φ10mm、外径φ13mmの環状中央部49と、環状中央部49の外周に沿うとともに、先端側ガスケット43の外周に沿って(約0.2mm)先端側に伸びる環状先端部51と、環状中央部49の内周に沿うとともに、基端側ガスケット45の内周に沿って(約0.2mm)基端側に伸びる環状基端部53とから構成されている。
【0041】
つまり、金属箔部材47は、図3(b)、(c)に示す様に、その環状中央部49の上面が、先端側ガスケット43の下面(基端側の端面)に密着するとともに、環状中央部49の下面が、基端側ガスケット45の上面(先端側の端面)に密着し、更に、環状先端部51の内周面が、先端側ガスケット43の外周面に密着するとともに、環状基端部53の外周面が、基端側ガスケット45の内周面に密着している。これにより、先端側ガスケット43と基端側ガスケット45との間のガスのリークを完全に防止している。
【0042】
b)次に、本実施形態の水素分離装置1の製造方法について説明する。
<水素分離筒3の製造方法>
例えば酸化ニッケル60質量部と、イットリア8モル%を固溶させたジルコニア40質量部(8YSZ)とを混合する。更に造孔剤として黒鉛粉(又はコンスターチ)を混合して混合材を作製する。
【0043】
そして、この混合材を用い、押出成形によって、有底円筒管を成形する。
次に、有底円筒管を乾燥した後に、脱脂処理を行い、1400℃で1時間焼成して、NiO−YSZで形成された多孔質支持管15を作製する。
【0044】
これとは別に、8YSZとバインダとエタノールを添加して、スラリーを調製する。
次に、このスラリーを、ディップコート法(又はスプレー吹き付け法、印刷法等)により、多孔質支持管15の表面上に塗布してコート層を形成する。
【0045】
次に、このコート層を1300℃で加熱処理して焼き付けし、バリア層19を形成する。
このバリア層19により被覆された多孔質支持管15を、エタノールで30分間超音波洗浄し、120℃で乾燥させる。
【0046】
次に、バリア層19を覆う様に、無電解メッキ法(又は真空蒸着法、スパッタリング法等)により、Pd等による水素透過膜21を形成する。
次に、水素雰囲気下にて、600℃で3時間還元処理を施し、これにより、水素分離筒3を完成する。
<ガスシール複合体7の製造方法>
・両ガスケット43、45を製造する場合には、例えば膨張黒鉛製のシートを(図示しない心棒等に)巻き付けることにより、筒状の積層体を形成する(心棒等は後に除去する)。
【0047】
次に、この積層体を、濃硫酸、硝酸などの酸化剤により酸化処理することによって、膨張黒鉛内の層間距離を例えば100〜300倍程度膨張させる。
その後、この膨張黒鉛を、例えば0.6〜1.9g/cm3の密度範囲となるように、プレス成形により負荷・圧縮する。
【0048】
・金属箔部材47を製造する場合には、銀からなる厚み20μmの金属箔を、プレス加工によって、中央に円形の開口部48(図3参照)を有する円盤状に加工する。具体的には、両ガスケット43、45の外径より大きく且つ内径より小さくなるように、外径13.05mm×内径0.95mmの円環状に加工する。
<水素分離装置1の組付方法>
まず、基端側ガスケット45と先端側ガスケット43との間に、金属箔部材47を同軸に配置し、密着させて一体とする。
【0049】
このとき、金属箔部材47の外径は両ガスケット43、45の外径より大きいので、金属箔部材47の外周縁部は、両ガスケット43、45の外周面より外側に環状に張り出している。同様に、金属箔部材47の内径は両ガスケット43、45の内径より小さいので、金属箔部材47の内周縁部は、両ガスケット43、45の内周面より内側に環状に張り出している(これが図示しないがガスシール複合体7の取付前形状である)。
【0050】
次に、前記図2に示す様に、取付前形状のガスシール複合体7を、取付金具5の先端側の空間41に収容する。このとき、両ガスケット43、45の外周面から張り出す金属箔部材47の外周縁部は、先端側筒状部25の内周面に当たって、先端側(図2上方)に折れ曲がり、先端側ガスケット43の外周面及び先端側筒状部25の内周面に密着する。
【0051】
次に、前記空間41内において、ガスシール複合体7の上に、押圧金具9を収容する。
次に、水素分離筒3の開放端側を、押圧金具9、先端側ガスケット43、金属箔部材47、基端側ガスケット45の各貫通孔を通す様に挿入し、水素分離筒3の端部を取付金具5の凹部33に嵌める。このとき、両ガスケット43、45の内周面から張り出す金属箔部材47の内周縁部は、水素分離筒3の外周面に当たって、基端側(図2下方)に折れ曲がり、基端側ガスケット45の内周面及び水素分離筒3の外周面に密着する。
【0052】
次に、水素分離筒3の先端側より固定金具11を外嵌し、固定金具11のねじ部37と取付金具5のねじ部23を螺合し、固定金具11により押圧金具9を基端側に締め付けて、水素分離装置1を完成する。
【0053】
なお、この締め付けにより、ガスシール複合体7も締め付けられて、コンプレッションシールとして機能するようになる。
c)この様に、本実施形態では、取付金具5の内周面と水素分離筒3の外周面との間に、ガスシール複合体7、即ち一対の膨張黒鉛製のガスケット43、45の間に(両ガスケット43、45に密着する様に)金属箔部材47を配置したガスシール複合体7を備えている。
【0054】
従って、膨張黒鉛を構成するシートの隙間からガスがリークする場合でも、金属箔部材47によってガスのリークを確実に防止することができる。
また、本実施形態では、両ガスケット43、45の間に金属箔部材47を備えていることにより、ガスのリークを防止するために、過大な締付力で締め付ける必要がないので、セラミックを含む水素分離筒3の割れを防止できる。
【0055】
従って、本実施形態では、水素分離筒3の割れの発生を抑制しながらシール性を高めることができるという顕著な効果を奏する。
d)次に、本実施形態の水素分離装置1の効果を確認するために行ったガスリークの実験例について説明する。
【0056】
・この実験例(Heリーク試験)は、図4に示す様に、上述した構造の水素分離装置1をリーク測定装置61に固定して、水素分離筒3との外周面と取付金具5の内周面との間からHeガスが漏出するか否かを調べたものである。
【0057】
具体的には、水素分離装置1の取付金具5の外周面の中央部分より先端側を、密閉容器63内に収容し、取付金具5の(同図下方の)開放端65側に、0.8MPaGのHeガスを供給し、密閉容器63の先端側(同図上方)の開口部67を石鹸膜流量計69に接続する。そして、この状態で、周囲温度を室温〜600℃に変更する熱サイクル(1回の室温〜600℃までの昇温時間:120分)を10回実施し、その際のHeガスのリーク量を石鹸膜流量計69によって測定した。
【0058】
この実験の結果、Heガスのリーク量は0であり、本実施例の水素分離装置1の気密性が高いことが確認できた。
・また、比較例1として、図5に示す様に、前記実施例1と同様に、水素分離筒71、取付金具73、固定金具75、押圧金具77、ガスシール部材79からなる水素分離装置81を製造した。但し、比較例1の水素分離装置81では、ガスシール部材79は、膨張黒鉛からなる内径φ10mm、外径φ13mm、幅8mmのガスケットのみから構成されている。
【0059】
そして、この比較例1の水素分離装置81に対して、前記実験例と同様なリーク測定装置を用い、同様な実験条件により、Heリーク試験を行った。
その結果、約0.5cc/minのリークが発生したので、実施例1に比べて気密性が低いことが分かる。
【0060】
なお、前記図3において、金属箔部材47の向き(図3に示す「上下の向き」)をその逆向きにしてもよい。この場合、図3に示す構造と同様なシール効果が得られる。
[第2実施形態]
次に、第2実施形態のガスシール複合体が使用される水素分離装置について説明するが、前記第1実施形態と同様な内容の説明は省略する。
【0061】
a)まず、本実施形態の水素分離装置の構成について説明する。
図6に示す様に、本実施形態の水素分離装置91は、第1実施形態とほぼ同様に、水素分離筒93、取付金具95、固定金具97、押圧金具99、ガスシール複合体101を備えている。
【0062】
また、水素分離筒93の開放端103側(同図下方)の外周は、外側に環状に突出してフランジ105を構成しており、このフランジ105の下端と取付金具95の下側端部から内周側に突出する段部107との間に、膨張黒鉛からなる環状のシール部材109を備えている。
【0063】
本実施形態では、前記ガスシール複合体101は、第1実施形態と同様に、膨張黒鉛からなる一対のガスケット(先端側ガスケット111、基端側ガスケット113)と、両ガスケット111、113の間に挟まれた金属箔部材115とから構成されている。
【0064】
図7(a)に拡大して示す様に、前記両ガスケット111、113は、膨張黒鉛からなる内径φ10mm、外径φ13mm、幅4mmの耐熱性のガスケットである。
また、金属箔部材115は、例えば銀からなり、その厚みが10〜100μmの範囲(例えば20μm)のガスシール用の部材(箔)である。この金属箔部材115は、内径φ10mm、外径φ13mmの環状中央部117と、環状中央部117の外周に沿って、先端側ガスケット111の外周に沿って(約0.2mm)先端側に伸びる外側環状先端部119と、環状中央部117の内周に沿って、先端側ガスケット111の内周に沿って(約0.2mm)先端側に伸びる内側環状先端部121とから構成されている。
【0065】
つまり、金属箔部材115は、図7(b)、(c)に示す様に、その環状中央部117の上面が、先端側ガスケット111の下面(基端側の端面)に密着するとともに、環状中央部117の下面が、基端側ガスケット113の上面(先端側の端面)に密着し、更に、外側環状先端部119の内周面が、先端側ガスケット111の外周面に密着するとともに、内側環状先端部121の外周面が、先端側ガスケット111の内周面に密着している。これにより、先端側ガスケット111と基端側ガスケット113との間のガスのリークを完全に防止している。
【0066】
b)次に、水素分離装置91の組付方法について説明する。
予め、先端側ガスケット111の軸方向の一方の端面(基端側の端面)に、金属箔部材115を同軸に配置し、密着させて一体とする(即ちガスシール複合体101の取付前形状とする)。
【0067】
このとき、金属箔部材115の外径は先端側ガスケット111の外径より大きいので、金属箔部材115の外周縁部は、先端側ガスケット111の外周面より外側に環状に張り出している。同様に、金属箔部材115の内径は先端側ガスケット111の内径より小さいので、金属箔部材115の内周縁部は、先端側ガスケット111の内周面より内側に環状に張り出している。
【0068】
次に、金属箔部材115の外周側及び内周側において先端側ガスケット111から張り出している部分を、先端側ガスケット111側に折り曲げて、先端側ガスケット111の外周面及び内周面に密着させる。
【0069】
そして、前記図6に示す様に、環状のシール部材109を、取付金具95の先端側の空間121に収容する。
次に、基端側ガスケット113を、水素分離筒93に外嵌し、その水素分離筒93の開放端103側を、取付金具95の空間121に嵌める。
【0070】
次に、先端側ガスケット111を、金属箔部材115側を下にして、水素分離筒93に外嵌し、基端側ガスケット113に密着させる。
次に、先端側ガスケット111の上に、押圧金具99を嵌める。
【0071】
次に、水素分離筒93の先端側より固定金具97を外嵌し、固定金具97を螺合することによって、押圧金具99でガスシール複合体101を圧縮する。これにより、ガスシール複合体101が水素分離筒93を締め付けて、水素分離装置91が完成する。
【0072】
c)本実施形態によっても、前記第1実施形態と同様な効果を奏するとともに、特に本実施形態では、予め先端側ガスケット111の端面を覆うように金属箔部材115を配置するので、ガスシール複合体101を取付金具95に取り付ける際に、金属箔部材115がずれにくいという利点、即ち薄膜の金属箔部材115の位置決めが容易であるという利点がある。
【0073】
なお、前記図7において、金属箔部材115の向き(図7に示す「上下の向き」)をその逆向きにしてもよい。この場合、図7に示す構造と同様なシール効果が得られる。
[第3実施形態]
次に、第3実施形態のガスシール複合体が使用される水素分離装置について説明するが、前記第2実施形態と同様な内容の説明は省略する。
【0074】
a)まず、本実施形態の水素分離装置の構成について説明する。
図8に示す様に、本実施形態の水素分離装置131は、第2実施形態とほぼ同様に、水素分離筒133、取付金具135、固定金具137、押圧金具139、ガスシール複合体141を備えている。
【0075】
本実施形態では、水素分離筒133の基端側のフランジ143の径が大きいので、そのフランジ143の上面にガスシール複合体141を配置している。
詳しくは、押圧部材139の下面とフランジ143の上面とに挟まれるように、円環状の一対のガスケット145、147、即ち、外径12.5mm×内径10mm×厚み2mmの内側ガスケット145と、外径15mm×内径12.5mm×厚み2mmの外側ガスケット147を備え、更に、両ガスケット145、147に挟まれるように、円環状の金属箔部材149が配置されている。
【0076】
つまり、図9に示す様に、金属箔部材149は、内径11mm×外径14mmの平板状の環状中央部151と、環状中央部151の下端の周囲において、外側ガスケット147の下面に沿って(約0.5mm)外側に張り出す環状外側部153と、環状中央部151の上端の周囲において、内側ガスケット145の上面に沿って(約0.5mm)内側に張り出す環状内側部155とから構成されている。
【0077】
すなわち、金属箔部材149は、その環状中央部151の外周面が、外側ガスケット147の内周面に密着するとともに、環状中央部151の内周面が、内側ガスケット145の外周面に密着し、更に、環状外側部153の上面が、外側ガスケット147の下面に密着するとともに、環状内側部155の下面が、内側ガスケット145の上面に密着している。これにより、外側ガスケット147と内側ガスケット145との間のガスのリークを完全に防止している。
【0078】
なお、フランジ143の下面と取付金具135の下端にて内側に環状に突出する凸部157の上面とに挟まれるように、他の環状ガスケット159を備えている。
b)次に、水素分離装置131の組付方法について説明する。
【0079】
前記図8に示す様に、まず、取付金具135の内部に、他の環状ガスケット159を配置する。
次に、取付金具135の内部に、水素分離筒133のフランジ143側を嵌める。
【0080】
次に、取付金具135の内部において、水素分離筒133に外嵌するように、フランジ143の上面に内側ガスケット145を配置する。
次に、内側ガスケット145の上面に、開口部148(図9参照)を有する(曲げられていない状態の)円盤状の金属箔部材149を配置する。
【0081】
次に、金属箔部材149上に、外側ガスケット147を置き、フランジ143側(下方)に押圧する。これによって、外側ガスケット147は内側ガスケット145の外側に嵌り込むとともに、金属箔部材149を断面L字状に折り曲げる。
【0082】
次に、外側ガスケット147及び(内側ガスケット145上の)金属箔部材149の上に、押圧金具139を配置する。
次に、固定金具137を嵌め、この固定金具137によって押圧金具139を(従ってガスシール複合体141を)締め付けて、水素分離装置131を完成する。
【0083】
本実施形態によっても、前記第1実施形態と同様な効果を奏する。
[第4実施形態]
次に、第4実施形態のガスシール複合体が使用される水素分離装置について説明するが、前記第1実施形態と同様な内容の説明は省略する。
【0084】
a)まず、本実施形態の水素分離装置の構造を説明する。
図10に示す様に、本実施形態の水素分離装置161は、平板形の装置である。詳しくは、水素分離装置161は、直方体形状の例えばSUS316からなる容器163の内部に、原料ガスから水素を分離する平板状の水素分離板165を配置したものである。
【0085】
このうち、水素分離板165は、一辺が50mm、厚みが3mmの正方形の板材であり、例えばYSZ多孔体からなるセラミック支持体167の表面に、PdAg合金からなる水素分離膜169を形成したものである。
【0086】
また、容器163の側方の一方には、原料ガスを水素分離板165で区分された原料ガス側の第1空間(同図下方側)171に供給する原料供給管173が設けられ、側方の他方の側には、同第1空間171から外部にオフガスを排出するためのオフガス排出管175が設けられている。
【0087】
更に、容器163の一方の主面側には、水素分離板165によって分離された水素を、水素分離板165で区分された水素側の第2空間(同図上方側)177から外部に供給するための水素排出管179が設けられている。
【0088】
特に本実施形態では、水素分離板165の上面(水素分離膜169側の表面)と容器163の平板状の上板181(同図上側)の下面とは、2mmの間隔を保って平行とされており、この水素分離板165と上板181との間には、四角枠状のガスシール複合体183が配置されている。
【0089】
このガスシール複合体183は、同心状に配置された(前記第3実施形態と同様な材料からなる)一対のガスケット(外側ガスケット185、内側ガスケット187)と、その間に配置された(前記第3実施形態と同様な材料からなる)金属箔部材189とから構成されている。
【0090】
具体的には、前記図11に示す様に、外側ガスケット185は、正方形の枠状(外側の1辺39mm×幅5mm×高さ4mm)であり、外側ガスケット185の内側に配置された内側ガスケット187は、同様な正方形の枠状(外側の1辺29mm×幅5mm×高さ4mm)である。また、金属箔部材189は、厚み0.1mmの金属箔からなり、外側の1辺の長さが35mmで、幅が5mmの正方形の枠状である。
【0091】
この金属箔部材189は、前記図10に示す様に、外側ガスケット185の内周面と内側ガスケット187の外周面とに挟まれて密着する正方形の枠状の環状中央部191と、外側ガスケット185の下面と水素分離板165の上面とに挟まれて密着する正方形の枠状の環状外側部193と、内側ガスケット187の上面と容器163の上面とに挟まれて密着する正方形の枠状の環状内側部195とから構成されている。
【0092】
そして、前記水素分離板165と上材181とは、間にガスシール複合体183を挟んで、周囲をボルト197及びナット199によって固定されている。なお、水素分離板165の下側とナット199との間には、補強板198が配置されている。
【0093】
b)次に、本実施形態の水素分離装置161の動作を説明する。
前記図10に示す様に、周囲の温度が600℃の高温の状態で、例えば原料供給管173より容器163内の第1空間171に、例えばH2を含む高圧(例えば0.8MPaG)の原料ガスが供給されると、原料ガスは水素分離板165にて水素と他のガスとが分離され、分離された水素は第2空間177から水素排出管179を介して、外部に供給される。
【0094】
一方、原料供給管173より第1空間171に供給された原料ガスのうち、水素に分離された残りのガス(オフガス)は、オフガス排出管175を介して外部に排出される。
本実施形態においても、前記第3実施形態と同様な効果を奏する。
【0095】
c)次に、本実施形態の水素分離装置161の効果を確認するために行ったガスリークの実験例について説明する。
・この実験例(Heリーク試験)では、図12に示す様に、水素分離装置161のオフガス排出管175を封止し、水素排出管179を石鹸膜流量計203に接続した。
【0096】
そして、前記各実験例と同様に、原料供給管173から、0.8MPaGのHeガスを供給し、水素排出管179から排出されるHeガスを石鹸膜流量計203で測定するようにした。そして、この状態で、前記各実験例と同様に、周囲温度を室温〜600℃に変更する熱サイクルを10回実施し、その際のHeガスのリーク量を石鹸膜流量計203によって測定した。
【0097】
この実験の結果、Heガスのリーク量は0であり、本実施形態の水素分離装置161の気密性が高いことが確認できた。
・また、比較例2として、図示しないが、第4実施形態のガスシール複合体に代えて、正方形の枠状(外側の1辺39mm×幅10mm×厚み4mm)の(前記ガスケットと同様な材料からなる)ガスケットのみを用いた水素分離装置を作製した。
【0098】
そして、この比較例2の水素分離装置を用いて、前記と同様な装置及び条件で、Heリーク試験を行った。
その結果、約1cc/minのリークが発生したので、第4実施形態に比べて気密性が低いことが分かる。
[第5実施形態]
次に、第5実施形態のガスシール複合体が使用される水素分離装置について説明するが、前記第1実施形態と同様な内容の説明は省略する。
【0099】
本実施形態の水素分離装置は、前記第4実施形態のような平板状の装置を積層したものである。
図13に示す様に、本実施形態の水素分離装置201は、複数の水素分離板203と直方体形状の金属製(例えばSUS316)の薄型容器205とを交互に積層した積層体207を、金属製(例えばSUS316)の外側容器209内に収容したものである。
【0100】
前記水素分離板203は、Ni−YSZ多孔体からなる第1層231と、その両側に配置された、YSZ多孔体からなる第2層233と、PdAg合金膜からなる水素分離膜235とから構成されている。なお、上下両端の水素分離板203は、内側のみ第2層233と水素分離膜235とが形成されている。
【0101】
前記外側容器209には、原料ガスを供給する原料供給管211と、オフガスを排出するオフガス排出管213とが設けられている。また、各薄型容器205の側方には、水素分離板203にて分離された水素を外部に排出するために水素排出管215が設けられている。
【0102】
なお、前記積層体207が外側容器209に収容される際、原料供給管211側とオフガス排出管213側以外には簡単なガスシールがなされており(図示しない)、原料供給管211側から導入された原料ガスが積層体207の中を透過しないでオフガス排出管213に流れるのを防いでいる。
【0103】
前記積層体207は、図14に示す様に、水素分離板203と薄型容器205とを、前記第4実施形態と同様なガスシール複合体217を介して積層し、その積層したものを、板厚方向の両側から板材219、221で挟んで、ボルト等で固定したものである。
【0104】
このうち、前記ガスシール複合体217は、前記第4実施形態と同様に、四角枠状の外側の膨張黒鉛から外側ガスケット225と、四角枠状の内側の膨張黒鉛からなる内側ガスケット227と、両ガスケット225、227の間に配置された、四角枠状の銀からなる金属箔部材229とから構成されている。
【0105】
また、前記各薄型容器205の厚み方向の両側(同図上下方向)の中央部分には、上下両側の水素分離膜235側にそれぞれ開口する(第4実施形態の水素排出管の排出孔に相当する)開口部(図示せず)が形成されている。
【0106】
本実施形態によっても、前記第4実施形態と同様な効果を奏するとともに、水素分離板203が多数積層されているので、コンパクトな装置で、多くの水素を分離供給できるという利点がある。
[第6実施形態]
次に、第6実施形態について説明するが、前記第4実施形態と同様な内容の説明は省略する。
【0107】
本実施形態は、前記第4実施形態と同様なガスシール複合体を固体酸化物形燃料電池(SOFC)に適用したものである。
具体的には、図15に示す様に、本実施形態は、第4実施形態と同様なガスシール複合体を、直方体形状の(例えばSUS430からなる)金属製の容器301の中に、原料ガスと酸化剤ガス(空気)とを用いて発電を行う板状の発電セル303を配置したSOFC305に適用したものである。
【0108】
このSOFC305では、容器301の上板307と発電セル303との間に、前記第4実施形態と同様に、四角枠状のガスシール複合体309を配置して、ボルト311及びナット313等で締め付けて固定している。
【0109】
また、前記ガスシール複合体309は、前記第4実施形態と同様に、一対の四角枠状のガスケット315、317の間に四角枠状の金属箔部材319を配置したものである。なお、ガスケット315、317は膨張黒鉛ではなく、例えば、マイカ等を使用できる。
【0110】
前記容器301の一方の側方には、原料ガスを(同図下側の)燃料ガス流路321に供給する原料供給管323が取り付けられており、他方の側方には、発電後の排ガスを燃料ガス流路から外部に排出するためのオフガス排出管325が取り付けられている。
【0111】
また、容器301の上板307には、空気を容器301内の(同図上方の)ガスシール複合体309で囲まれた空気流路327に供給するための空気導入管329と、発電後の空気を外部に排出するための空気排出管331が取り付けられている。
【0112】
なお、前記発電セル303は、図示しないが、LSCFからなる空気極と、GDCからなる反応防止層と、YSZからなる固体電解質層と、Ni−YSZ多孔体からなる燃料極とが順次積層されたものである。
【0113】
このSOFC305では、H2、CH4、H2O、COを含む原料ガスを、原料供給管323を介して燃料ガス流路321に供給するとともに、空気を、空気導入管329を介して空気流路327に供給することにより、発電セル303にて発電を行う。
【0114】
上述した構成のSOFC305においても、前記第4実施形態と同様なガスシール複合体309を備えていることにより、上板307と発電セル303との間を確実に気密して、原料ガスと空気とを好適に分離することができる。
【0115】
尚、本発明は前記実施形態になんら限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。
(1)例えば、前記第1実施形態のガスシール複合体に代えて、例えば図16(a)に示す様に、先端側ガスケット401と基端側ガスケット403に挟まれた部分のみに、環状の金属箔部材405を配置したガスシール複合体407を用いてもよい。
【0116】
(2)また、前記第3実施形態のガスシール複合体に代えて、例えば図16(b)に示す様に、外側ガスケット411と内側ガスケット413に挟まれた部分のみに、円筒状の金属箔部材415を配置したガスシール複合体417を用いてもよい。
【符号の説明】
【0117】
1、81、91、131、161、201…水素分離装置(水素製造装置)
3、71、93、133…水素分離筒
5、73、95、135…取付金具
7、101、141、183、217、309、407、417…ガスシール複合体
9、77、99、139…押圧金具
11、75、97、137…固定金具
43、45、79、111、113、145、147、185、187、225、227、315、317、401、403、411、413…ガスケット
47、115、149、189、229、319、405、415…金属箔部材
165、203…水素分離板
181、307…上板
305…固体酸化物形燃料電池(SOFC)
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスシール複合体及び該ガスシール複合体を備えた装置に関し、特に、原料ガスから所望のガスを選択して分離することにより純度の高い所望のガスを分離することができるガス分離装置等に使用されるガスシール複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、部材間におけるガスシールを行うために、各種のシール部材(例えば単一の部材からなるガスケットや複数の構成部品からなるガスシール複合体など)が広く使用されている。
【0003】
例えば燃料電池に供給する水素を製造する装置として、下記特許文献1に記載の様に、表面に水素透過膜を備えた水素分離筒を収納容器内に配置した水素分離装置が知られており、この水素分離装置にもシール部材が使用されている。
【0004】
前記水素分離装置では、水素透過膜の支持体として、多孔質のセラミックからなる改質触媒兼支持体を用いた試験管形状の水素分離筒が用いられており、水素分離筒はその開口側の端部を取付金具等に固定されている。
【0005】
この水素分離装置では、水素分離筒と取付金具との間のガスシールを行うためにシール部材が配置されており、水素分離筒は、シール部材を介して固定金具等で締め付けられることにより取付金具に固定されていた。つまり、水素分離装置では、セラミック製の水素分離筒と取付金具との間のガスシールを行うために、シール部材が用いられていた。
【0006】
前記シール部材としては、例えば膨張黒鉛製のガスケット(パッキン)が知られており、この膨張黒鉛は、耐熱性に優れ、変質し難く、変形性に富むことから、流体用のシール部材として広く使用されている。なお、その他のシール部材としては、マイカ等の無機系ガスケット等も使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−184883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した従来技術では、シール部材のガスシール性に関しては、必ずしも十分ではないという問題があった。
つまり、膨張黒鉛製ガスケット、マイカ等の無機系ガスケットは、ガスケット内の僅かな間隙を通ってガスが漏れるという問題があった。
【0009】
特に金属部材とその相手部材との間のガスシールを行う場合に、相手部材がセラミックやガラスのときには、金属部材と相手部材との間にシール部材を配置して両側から締め付けてガスシールを行うと(即ちコンプレッションシールの場合には)、あまり締付力を大きくすると相手部材が破損する恐れがある。そのため、締付力を大きくできず、よって、シール性を高めることができないという問題があった。
【0010】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的は、コンプレッションシールの場合に、例えばセラミックやガラスのような金属部材より割れ易い相手部材を破損しないような締付力で締め付けても、高いシール性を実現できるガスシール複合体及び該ガスシール複合体を備えた装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本発明は、請求項1に記載の様に、金属部材と、前記金属部材に対向して配置される相手部材との間に配置されて、前記金属部材と前記相手部材との間隙をガスシールするガスシール複合体において、前記金属部材と前記相手部材との間に配置されて該金属部材と該相手部材との間隙をそれぞれガスシールする一対のガスケットと、前記金属部材と前記相手部材との間隙を閉塞するように、前記一対のガスケットの間に挟まれるとともに該一対のガスケットに密着して配置された金属箔と、を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明は、コンプレッションシールに関するものであり、本発明のガスシール複合体は、金属部材と相手部材との間に配置されて金属部材と相手部材との間隙をそれぞれガスシールする一対のガスケットを備え、且つ、金属部材と相手部材との間隙を閉塞するように、一対のガスケットの間に挟まれるとともに一対のガスケットに密着して配置された金属箔を備えている。
【0013】
つまり、本発明では、一対のガスケットの間に(ピンホール等の欠陥が無い)金属箔が配置されているので、ガスケットが、例えば膨張黒鉛の様に、(例えば大きなガス圧力が加わっている場合に)内部の微小な隙間からガスのリークが発生する可能性があるものであっても、確実にガスのリークを防止することができる。従って、ガスのリークを防止するために、過大な締付力で締め付ける必要がないので、相手部材が例えばセラミックやガラスのような(金属部材に比べて)割れやすい部材であっても、割れの発生を抑制しながらシール性を高めることができるという顕著な効果を奏する。
【0014】
(2)本発明では、請求項2に記載の様に、一対のガスケット及び金属箔は筒状であり、金属箔は、一方のガスケットの軸方向における一方の端面を覆うとともに、その端面に隣接する内周面の端部及び外周面の端部を覆うように、軸方向に沿って折り曲げて構成できる。
【0015】
図7に例示する様に、この構成により、金属箔が一方のガスケットの端面からずれにくくなるので、金属箔によってガスケットの端面及びその周囲を確実に覆うことができる。しかも、金属箔及びガスケットを一体に扱うことができるので、金属箔及びガスケットをガス分離装置に組み込む際の作業も容易になる。
【0016】
(3)本発明では、請求項3に記載の様に、一対のガスケット及び金属箔は筒状であり、金属箔は、一方のガスケットの軸方向における端面を覆うとともに、その端面に隣接する内周面の端部とその端面に向かい合う他方のガスケットの端面に隣接する外周面の端部とを覆うように、軸方向に沿って折り曲げて構成できる。
【0017】
図3に例示する様に、この構成により、金属箔がガスケットの端面からずれにくくなるので、金属箔によってガスケットの端面及びその周囲を確実に覆うことができる。
(4)本発明では、請求項4に記載の様に、金属箔の厚みとして、10〜100μmを採用できる。
【0018】
この厚みであれば、扱いも容易で、しかも、締付力を高めても、破損しにくく好適である。
(5)本発明は、請求項5に記載の様に、前記金属部材と前記金属部材に対向して配置される相手部材との間に、前記金属部材と前記相手部材との間隙をガスシールする前記請求項1〜4のいずれか1項に記載のガスシール複合体を備えた装置である。
【0019】
この装置としては、例えばガス分離装置(例えば水素分離装置、酸素分離装置)や、固体酸化物形燃料電池などが挙げられる。
以下、本発明の各構成について説明する。
【0020】
・前記金属箔の材料としては、Ag、Ni、Al、Pd、Cu、Fe等の金属、又はこれらの少なくとも一つを含む合金等を採用できる。
・前記相手部材の材料としては、金属部材の材料とは異なり、同じ条件(押圧力等)下においては金属部材よりも割れやすい例えばセラミック又はガラスを含む材料を採用できる。ここで、セラミックとしては、ジルコニア、安定化ジルコニア、アルミナ、マグネシア、窒化珪素、窒化アルミ、酸化チタン等を採用でき、ガラスとしては、シリカガラス、ホウ珪酸ガラス等を採用できる。
【0021】
また、相手部材としては、セラミックを主体とした例えば試験管形状の水素分離筒や平板形状の水素分離板が挙げられる。この水素分離筒や水素分離板としては、(改質触媒兼支持体である)多孔質支持管(又は多孔質支持板)の表面に水素透過膜が形成された筒状体(又は板材)や、多孔質支持管(又は多孔質支持板)の表面に、金属の拡散を防止するバリア層が形成され、更にバリア層の表面に水素透過膜が形成された筒状体(又は板材)が挙げられる。
【0022】
このうち、多孔質支持管(又は多孔質支持板)を構成する材料としては、例えばニッケルとイットリア安定化ジルコニア(YSZ)の混合物の焼結体、ニッケルとイットリア安定化ジルコニアの混合物を主体とする焼結体(Ni−YSZサーメット等)、その他、支持体としての機能と改質触媒としての機能の両機能を合わせ有する多孔質セラミック、多孔質サーメットなどが挙げられる。
【0023】
水素透過膜としては、例えばPd膜やPd合金膜などの金属膜が挙げられる。
バリア層の構成材料としては、例えばジルコニア、安定化ジルコニア、部分安定化ジルコニア、アルミナ、マグネシア、セリア等、もしくはそれらの材料の混合物もしくは化合物を用いることができる。
【0024】
・前記金属部材としては、前記水素分離筒や水素分離板を取り付ける取付部材が挙げられ、この取付部材としては、耐熱性及び耐酸化性を有する例えばSUS405、SUS316、SUS316L、SUS304、SUS430等のステンレスや、コバール、インコネル、パーマロイなど、金属製の取付金具などが挙げられる。
【0025】
・前記ガスケットの材料としては、膨張黒鉛を採用でき、この膨張黒鉛としては、下記の物性値を有することが好ましい。
密度(嵩密度)が0.6〜1.9g/cm3、圧縮率(JIS−R3453に準拠)が
10〜90%、復元率(JIS−R3453に準拠)が3〜70%、酸化開始温度(空気中での加熱によって重量が1%減少したときの温度)が400℃以上。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第1実施形態のガスシール複合体を適用した水素分離装置を軸方向に沿って破断して模式的に示す断面図である。
【図2】第1実施形態の水素分離装置を軸方向に沿って破断して詳細に示す断面図である。
【図3】(a)は第1実施形態のガスシール複合体を分解して示す斜視図、(b)はガスシール複合体の正面図、(c)はガスシール複合体を軸方向に沿って破断した状態を示す断面図である。
【図4】第1実施形態の水素分離装置のガスリークを調べる装置を示す説明図である。
【図5】比較例の水素分離装置を軸方向に沿って破断して示す断面図である。
【図6】第2実施形態の水素分離装置を軸方向に沿って破断して示す断面図である。
【図7】(a)は第2実施形態のガスシール複合体を分解して示す斜視図、(b)はガスシール複合体の正面図、(c)はガスシール複合体を軸方向に沿って破断した状態を示す断面図である。
【図8】第3実施形態の水素分離装置を軸方向に沿って破断して示す断面図である。
【図9】第4実施形態のガスシール複合体を分解して示す斜視図である。
【図10】第4実施形態の水素分離装置を縦方向に沿って破断して示す断面図である。
【図11】第4実施形態のガスシール複合体の配置を示す説明図である。
【図12】第4実施形態の水素分離装置のガスリークを調べる装置を示す説明図である。
【図13】第5実施形態の水素分離装置を示す斜視図である。
【図14】第5実施形態の水素分離装置を分解して示す斜視図である。
【図15】第6実施形態のガスシール複合体をSOFCに適用した状態を示す説明図である。
【図16】(a)は他のガスシール複合体を分解して示す斜視図、(b)は更に他のガスシール複合体を分解して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について説明する。
[第1実施形態]
ここでは、ガスシール複合体が使用されたガス分離装置を例として説明する。例えば燃料電池に燃料ガス(水素ガス)を供給する水素分離装置(ガス製造装置)について説明する。
【0028】
a)まず、本実施形態において、水素分離装置の要部である水素分離筒について説明する。
図1に模式的に示す様に、本実施形態の水素分離装置1は、一端が閉塞された試験管状の水素分離筒3と、水素分離筒3の開放端側が挿入された筒状の取付金具5と、水素分離筒3の外周面と取付金具5の内周面との間に配置された円筒形のガスシール複合体7と、ガスシール複合体7の先端側(同図上側)を押圧する円筒形の押圧金具9と、押圧金具9に外嵌されて取付金具5に螺合する筒状の固定金具11とを備えている。
【0029】
以下に、図2に基づいて、水素分離装置1の構成をより詳細に説明する。
図2に詳細に示すように、前記水素分離筒3は、その軸中心の中心孔13に導入された原料ガス(例えばメタンなどの炭化水素ガスと水蒸気の混合ガス及びその反応によって得られた少なくとも水素ガスを含む混合ガス)から、水素を選択的に分離して、水素分離筒3の外周側に供給する部材である。
【0030】
この水素分離筒3は、一端が閉塞された試験管状の(改質触媒兼支持体である)多孔質支持管15と、多孔質支持管15の外側表面を覆うバリア層19と、バリア層19の外側表面を覆う水素透過膜21とから構成されている。
【0031】
このうち、多孔質支持管15は、例えばNi-YSZ多孔体からなり、改質触媒としての役割と水素透過膜21等を支持する役割とを有する通気性を有する試験管状の支持体であり、この多孔質支持管15では、原料ガスを水蒸気改質して改質ガス(例えば水素、二酸化炭素、一酸化炭素)を生成する。
【0032】
水素透過膜21は、例えばPdAg合金からなり、多孔質支持管15内で改質された改質ガスから水素を選択的に透過して精製する薄膜である。
バリア層19は、例えばYSZ多孔体からなり、多孔質支持管15の金属成分(例えばNi)と水素透過膜21の成分(例えばPd)とが互いに交じり合う(拡散する)ことにより、水素透過膜21の水素透過性能が劣化することを防止するための多孔質層(相互拡散防止層)である。
【0033】
また、前記取付金具5は、水素分離装置1の基部を構成する例えばSUS430からなる筒状金具であり、その先端側より、外周にねじ部23を有する先端側筒状部25と、外周側に環状に張り出す鍔部27と、(原料ガスを供給する配管等が接続される)基端側筒状部29とを備えている。
【0034】
この取付金具5の軸中心には、原料ガスの流路となる貫通孔(中空部)31が形成され、中空部31には、水素分離筒3の基端側(同図右側)の端部が収容されている。詳しくは、中空部31の内径は、先端側筒状部25内側より鍔部27内側が小さく設定されており、鍔部27内側の先端側に凹部33が形成され、この凹部33に水素分離筒3の端部が内嵌している。
【0035】
前記固定金具11は、軸方向に沿った断面がL字状の例えばSUS430からなる筒状金具であり、径方向に伸びて押圧金具9を基端側に押圧する環状の押圧板35と、押圧板35の外周端から軸方向に沿って基端側に伸び、内周面にねじ部37を有する筒状部39とを備えている。従って、この固定金具11のねじ部37と取付金具5のねじ部23を螺合させて締め付けることにより、押圧金具9を介してガスシール複合体7を、基端側に押圧することができる。
【0036】
前記押圧金具9は、円筒形状の例えばSUS430からなる筒状金具であり、取付金具5の先端側筒状部25の内周面と水素分離筒3の外周面との間に形成された筒状の空間41内にて、ガスシール複合体7と隣接して配置されている。この押圧金具9の先端側は固定金具11の押圧板35に当接し、その後端側はガスシール複合体7に当接している。
【0037】
なお、前記水素分離装置1の内部(詳しくは水素分離筒3の中心孔13)には、内挿管50が配置されている。この内挿管50は、原料ガスを、水素分離装置1の基端側から水素分離筒3の先端側に供給する部材であり、反応後のオフガス(CO、CO2、H2、メタン、水蒸気)は、内挿管50の外周に沿って水素分離装置1の基端側から排出される。
【0038】
特に、本実施形態では、図3(a)に拡大して示す様に、前記ガスシール複合体7は、環状の一対のガスケット(先端側ガスケット43、基端側ガスケット45)とその両ガスケット43、45の間に挟まれた環状の金属箔部材47とから構成されている。
【0039】
このうち、両ガスケット43、45は、膨張黒鉛からなる内径φ10mm、外径φ13mm、(軸方向の長さ)幅4mmの耐熱性のガスケットである。
前記両ガスケット43、45は、前記空間41内にて、押圧金具9の押圧によって圧縮された状態、従って周囲を押圧した状態に保持されているので、この空間41における原料ガスの漏出を防止している。
【0040】
また、金属箔部材47は、例えば銀からなり、その厚みが10〜100μmの範囲(例えば20μm)で、ピンホール等のガスが漏れる様な欠陥が無いガスシール用の部材(箔)である。この金属箔部材47は、内径φ10mm、外径φ13mmの環状中央部49と、環状中央部49の外周に沿うとともに、先端側ガスケット43の外周に沿って(約0.2mm)先端側に伸びる環状先端部51と、環状中央部49の内周に沿うとともに、基端側ガスケット45の内周に沿って(約0.2mm)基端側に伸びる環状基端部53とから構成されている。
【0041】
つまり、金属箔部材47は、図3(b)、(c)に示す様に、その環状中央部49の上面が、先端側ガスケット43の下面(基端側の端面)に密着するとともに、環状中央部49の下面が、基端側ガスケット45の上面(先端側の端面)に密着し、更に、環状先端部51の内周面が、先端側ガスケット43の外周面に密着するとともに、環状基端部53の外周面が、基端側ガスケット45の内周面に密着している。これにより、先端側ガスケット43と基端側ガスケット45との間のガスのリークを完全に防止している。
【0042】
b)次に、本実施形態の水素分離装置1の製造方法について説明する。
<水素分離筒3の製造方法>
例えば酸化ニッケル60質量部と、イットリア8モル%を固溶させたジルコニア40質量部(8YSZ)とを混合する。更に造孔剤として黒鉛粉(又はコンスターチ)を混合して混合材を作製する。
【0043】
そして、この混合材を用い、押出成形によって、有底円筒管を成形する。
次に、有底円筒管を乾燥した後に、脱脂処理を行い、1400℃で1時間焼成して、NiO−YSZで形成された多孔質支持管15を作製する。
【0044】
これとは別に、8YSZとバインダとエタノールを添加して、スラリーを調製する。
次に、このスラリーを、ディップコート法(又はスプレー吹き付け法、印刷法等)により、多孔質支持管15の表面上に塗布してコート層を形成する。
【0045】
次に、このコート層を1300℃で加熱処理して焼き付けし、バリア層19を形成する。
このバリア層19により被覆された多孔質支持管15を、エタノールで30分間超音波洗浄し、120℃で乾燥させる。
【0046】
次に、バリア層19を覆う様に、無電解メッキ法(又は真空蒸着法、スパッタリング法等)により、Pd等による水素透過膜21を形成する。
次に、水素雰囲気下にて、600℃で3時間還元処理を施し、これにより、水素分離筒3を完成する。
<ガスシール複合体7の製造方法>
・両ガスケット43、45を製造する場合には、例えば膨張黒鉛製のシートを(図示しない心棒等に)巻き付けることにより、筒状の積層体を形成する(心棒等は後に除去する)。
【0047】
次に、この積層体を、濃硫酸、硝酸などの酸化剤により酸化処理することによって、膨張黒鉛内の層間距離を例えば100〜300倍程度膨張させる。
その後、この膨張黒鉛を、例えば0.6〜1.9g/cm3の密度範囲となるように、プレス成形により負荷・圧縮する。
【0048】
・金属箔部材47を製造する場合には、銀からなる厚み20μmの金属箔を、プレス加工によって、中央に円形の開口部48(図3参照)を有する円盤状に加工する。具体的には、両ガスケット43、45の外径より大きく且つ内径より小さくなるように、外径13.05mm×内径0.95mmの円環状に加工する。
<水素分離装置1の組付方法>
まず、基端側ガスケット45と先端側ガスケット43との間に、金属箔部材47を同軸に配置し、密着させて一体とする。
【0049】
このとき、金属箔部材47の外径は両ガスケット43、45の外径より大きいので、金属箔部材47の外周縁部は、両ガスケット43、45の外周面より外側に環状に張り出している。同様に、金属箔部材47の内径は両ガスケット43、45の内径より小さいので、金属箔部材47の内周縁部は、両ガスケット43、45の内周面より内側に環状に張り出している(これが図示しないがガスシール複合体7の取付前形状である)。
【0050】
次に、前記図2に示す様に、取付前形状のガスシール複合体7を、取付金具5の先端側の空間41に収容する。このとき、両ガスケット43、45の外周面から張り出す金属箔部材47の外周縁部は、先端側筒状部25の内周面に当たって、先端側(図2上方)に折れ曲がり、先端側ガスケット43の外周面及び先端側筒状部25の内周面に密着する。
【0051】
次に、前記空間41内において、ガスシール複合体7の上に、押圧金具9を収容する。
次に、水素分離筒3の開放端側を、押圧金具9、先端側ガスケット43、金属箔部材47、基端側ガスケット45の各貫通孔を通す様に挿入し、水素分離筒3の端部を取付金具5の凹部33に嵌める。このとき、両ガスケット43、45の内周面から張り出す金属箔部材47の内周縁部は、水素分離筒3の外周面に当たって、基端側(図2下方)に折れ曲がり、基端側ガスケット45の内周面及び水素分離筒3の外周面に密着する。
【0052】
次に、水素分離筒3の先端側より固定金具11を外嵌し、固定金具11のねじ部37と取付金具5のねじ部23を螺合し、固定金具11により押圧金具9を基端側に締め付けて、水素分離装置1を完成する。
【0053】
なお、この締め付けにより、ガスシール複合体7も締め付けられて、コンプレッションシールとして機能するようになる。
c)この様に、本実施形態では、取付金具5の内周面と水素分離筒3の外周面との間に、ガスシール複合体7、即ち一対の膨張黒鉛製のガスケット43、45の間に(両ガスケット43、45に密着する様に)金属箔部材47を配置したガスシール複合体7を備えている。
【0054】
従って、膨張黒鉛を構成するシートの隙間からガスがリークする場合でも、金属箔部材47によってガスのリークを確実に防止することができる。
また、本実施形態では、両ガスケット43、45の間に金属箔部材47を備えていることにより、ガスのリークを防止するために、過大な締付力で締め付ける必要がないので、セラミックを含む水素分離筒3の割れを防止できる。
【0055】
従って、本実施形態では、水素分離筒3の割れの発生を抑制しながらシール性を高めることができるという顕著な効果を奏する。
d)次に、本実施形態の水素分離装置1の効果を確認するために行ったガスリークの実験例について説明する。
【0056】
・この実験例(Heリーク試験)は、図4に示す様に、上述した構造の水素分離装置1をリーク測定装置61に固定して、水素分離筒3との外周面と取付金具5の内周面との間からHeガスが漏出するか否かを調べたものである。
【0057】
具体的には、水素分離装置1の取付金具5の外周面の中央部分より先端側を、密閉容器63内に収容し、取付金具5の(同図下方の)開放端65側に、0.8MPaGのHeガスを供給し、密閉容器63の先端側(同図上方)の開口部67を石鹸膜流量計69に接続する。そして、この状態で、周囲温度を室温〜600℃に変更する熱サイクル(1回の室温〜600℃までの昇温時間:120分)を10回実施し、その際のHeガスのリーク量を石鹸膜流量計69によって測定した。
【0058】
この実験の結果、Heガスのリーク量は0であり、本実施例の水素分離装置1の気密性が高いことが確認できた。
・また、比較例1として、図5に示す様に、前記実施例1と同様に、水素分離筒71、取付金具73、固定金具75、押圧金具77、ガスシール部材79からなる水素分離装置81を製造した。但し、比較例1の水素分離装置81では、ガスシール部材79は、膨張黒鉛からなる内径φ10mm、外径φ13mm、幅8mmのガスケットのみから構成されている。
【0059】
そして、この比較例1の水素分離装置81に対して、前記実験例と同様なリーク測定装置を用い、同様な実験条件により、Heリーク試験を行った。
その結果、約0.5cc/minのリークが発生したので、実施例1に比べて気密性が低いことが分かる。
【0060】
なお、前記図3において、金属箔部材47の向き(図3に示す「上下の向き」)をその逆向きにしてもよい。この場合、図3に示す構造と同様なシール効果が得られる。
[第2実施形態]
次に、第2実施形態のガスシール複合体が使用される水素分離装置について説明するが、前記第1実施形態と同様な内容の説明は省略する。
【0061】
a)まず、本実施形態の水素分離装置の構成について説明する。
図6に示す様に、本実施形態の水素分離装置91は、第1実施形態とほぼ同様に、水素分離筒93、取付金具95、固定金具97、押圧金具99、ガスシール複合体101を備えている。
【0062】
また、水素分離筒93の開放端103側(同図下方)の外周は、外側に環状に突出してフランジ105を構成しており、このフランジ105の下端と取付金具95の下側端部から内周側に突出する段部107との間に、膨張黒鉛からなる環状のシール部材109を備えている。
【0063】
本実施形態では、前記ガスシール複合体101は、第1実施形態と同様に、膨張黒鉛からなる一対のガスケット(先端側ガスケット111、基端側ガスケット113)と、両ガスケット111、113の間に挟まれた金属箔部材115とから構成されている。
【0064】
図7(a)に拡大して示す様に、前記両ガスケット111、113は、膨張黒鉛からなる内径φ10mm、外径φ13mm、幅4mmの耐熱性のガスケットである。
また、金属箔部材115は、例えば銀からなり、その厚みが10〜100μmの範囲(例えば20μm)のガスシール用の部材(箔)である。この金属箔部材115は、内径φ10mm、外径φ13mmの環状中央部117と、環状中央部117の外周に沿って、先端側ガスケット111の外周に沿って(約0.2mm)先端側に伸びる外側環状先端部119と、環状中央部117の内周に沿って、先端側ガスケット111の内周に沿って(約0.2mm)先端側に伸びる内側環状先端部121とから構成されている。
【0065】
つまり、金属箔部材115は、図7(b)、(c)に示す様に、その環状中央部117の上面が、先端側ガスケット111の下面(基端側の端面)に密着するとともに、環状中央部117の下面が、基端側ガスケット113の上面(先端側の端面)に密着し、更に、外側環状先端部119の内周面が、先端側ガスケット111の外周面に密着するとともに、内側環状先端部121の外周面が、先端側ガスケット111の内周面に密着している。これにより、先端側ガスケット111と基端側ガスケット113との間のガスのリークを完全に防止している。
【0066】
b)次に、水素分離装置91の組付方法について説明する。
予め、先端側ガスケット111の軸方向の一方の端面(基端側の端面)に、金属箔部材115を同軸に配置し、密着させて一体とする(即ちガスシール複合体101の取付前形状とする)。
【0067】
このとき、金属箔部材115の外径は先端側ガスケット111の外径より大きいので、金属箔部材115の外周縁部は、先端側ガスケット111の外周面より外側に環状に張り出している。同様に、金属箔部材115の内径は先端側ガスケット111の内径より小さいので、金属箔部材115の内周縁部は、先端側ガスケット111の内周面より内側に環状に張り出している。
【0068】
次に、金属箔部材115の外周側及び内周側において先端側ガスケット111から張り出している部分を、先端側ガスケット111側に折り曲げて、先端側ガスケット111の外周面及び内周面に密着させる。
【0069】
そして、前記図6に示す様に、環状のシール部材109を、取付金具95の先端側の空間121に収容する。
次に、基端側ガスケット113を、水素分離筒93に外嵌し、その水素分離筒93の開放端103側を、取付金具95の空間121に嵌める。
【0070】
次に、先端側ガスケット111を、金属箔部材115側を下にして、水素分離筒93に外嵌し、基端側ガスケット113に密着させる。
次に、先端側ガスケット111の上に、押圧金具99を嵌める。
【0071】
次に、水素分離筒93の先端側より固定金具97を外嵌し、固定金具97を螺合することによって、押圧金具99でガスシール複合体101を圧縮する。これにより、ガスシール複合体101が水素分離筒93を締め付けて、水素分離装置91が完成する。
【0072】
c)本実施形態によっても、前記第1実施形態と同様な効果を奏するとともに、特に本実施形態では、予め先端側ガスケット111の端面を覆うように金属箔部材115を配置するので、ガスシール複合体101を取付金具95に取り付ける際に、金属箔部材115がずれにくいという利点、即ち薄膜の金属箔部材115の位置決めが容易であるという利点がある。
【0073】
なお、前記図7において、金属箔部材115の向き(図7に示す「上下の向き」)をその逆向きにしてもよい。この場合、図7に示す構造と同様なシール効果が得られる。
[第3実施形態]
次に、第3実施形態のガスシール複合体が使用される水素分離装置について説明するが、前記第2実施形態と同様な内容の説明は省略する。
【0074】
a)まず、本実施形態の水素分離装置の構成について説明する。
図8に示す様に、本実施形態の水素分離装置131は、第2実施形態とほぼ同様に、水素分離筒133、取付金具135、固定金具137、押圧金具139、ガスシール複合体141を備えている。
【0075】
本実施形態では、水素分離筒133の基端側のフランジ143の径が大きいので、そのフランジ143の上面にガスシール複合体141を配置している。
詳しくは、押圧部材139の下面とフランジ143の上面とに挟まれるように、円環状の一対のガスケット145、147、即ち、外径12.5mm×内径10mm×厚み2mmの内側ガスケット145と、外径15mm×内径12.5mm×厚み2mmの外側ガスケット147を備え、更に、両ガスケット145、147に挟まれるように、円環状の金属箔部材149が配置されている。
【0076】
つまり、図9に示す様に、金属箔部材149は、内径11mm×外径14mmの平板状の環状中央部151と、環状中央部151の下端の周囲において、外側ガスケット147の下面に沿って(約0.5mm)外側に張り出す環状外側部153と、環状中央部151の上端の周囲において、内側ガスケット145の上面に沿って(約0.5mm)内側に張り出す環状内側部155とから構成されている。
【0077】
すなわち、金属箔部材149は、その環状中央部151の外周面が、外側ガスケット147の内周面に密着するとともに、環状中央部151の内周面が、内側ガスケット145の外周面に密着し、更に、環状外側部153の上面が、外側ガスケット147の下面に密着するとともに、環状内側部155の下面が、内側ガスケット145の上面に密着している。これにより、外側ガスケット147と内側ガスケット145との間のガスのリークを完全に防止している。
【0078】
なお、フランジ143の下面と取付金具135の下端にて内側に環状に突出する凸部157の上面とに挟まれるように、他の環状ガスケット159を備えている。
b)次に、水素分離装置131の組付方法について説明する。
【0079】
前記図8に示す様に、まず、取付金具135の内部に、他の環状ガスケット159を配置する。
次に、取付金具135の内部に、水素分離筒133のフランジ143側を嵌める。
【0080】
次に、取付金具135の内部において、水素分離筒133に外嵌するように、フランジ143の上面に内側ガスケット145を配置する。
次に、内側ガスケット145の上面に、開口部148(図9参照)を有する(曲げられていない状態の)円盤状の金属箔部材149を配置する。
【0081】
次に、金属箔部材149上に、外側ガスケット147を置き、フランジ143側(下方)に押圧する。これによって、外側ガスケット147は内側ガスケット145の外側に嵌り込むとともに、金属箔部材149を断面L字状に折り曲げる。
【0082】
次に、外側ガスケット147及び(内側ガスケット145上の)金属箔部材149の上に、押圧金具139を配置する。
次に、固定金具137を嵌め、この固定金具137によって押圧金具139を(従ってガスシール複合体141を)締め付けて、水素分離装置131を完成する。
【0083】
本実施形態によっても、前記第1実施形態と同様な効果を奏する。
[第4実施形態]
次に、第4実施形態のガスシール複合体が使用される水素分離装置について説明するが、前記第1実施形態と同様な内容の説明は省略する。
【0084】
a)まず、本実施形態の水素分離装置の構造を説明する。
図10に示す様に、本実施形態の水素分離装置161は、平板形の装置である。詳しくは、水素分離装置161は、直方体形状の例えばSUS316からなる容器163の内部に、原料ガスから水素を分離する平板状の水素分離板165を配置したものである。
【0085】
このうち、水素分離板165は、一辺が50mm、厚みが3mmの正方形の板材であり、例えばYSZ多孔体からなるセラミック支持体167の表面に、PdAg合金からなる水素分離膜169を形成したものである。
【0086】
また、容器163の側方の一方には、原料ガスを水素分離板165で区分された原料ガス側の第1空間(同図下方側)171に供給する原料供給管173が設けられ、側方の他方の側には、同第1空間171から外部にオフガスを排出するためのオフガス排出管175が設けられている。
【0087】
更に、容器163の一方の主面側には、水素分離板165によって分離された水素を、水素分離板165で区分された水素側の第2空間(同図上方側)177から外部に供給するための水素排出管179が設けられている。
【0088】
特に本実施形態では、水素分離板165の上面(水素分離膜169側の表面)と容器163の平板状の上板181(同図上側)の下面とは、2mmの間隔を保って平行とされており、この水素分離板165と上板181との間には、四角枠状のガスシール複合体183が配置されている。
【0089】
このガスシール複合体183は、同心状に配置された(前記第3実施形態と同様な材料からなる)一対のガスケット(外側ガスケット185、内側ガスケット187)と、その間に配置された(前記第3実施形態と同様な材料からなる)金属箔部材189とから構成されている。
【0090】
具体的には、前記図11に示す様に、外側ガスケット185は、正方形の枠状(外側の1辺39mm×幅5mm×高さ4mm)であり、外側ガスケット185の内側に配置された内側ガスケット187は、同様な正方形の枠状(外側の1辺29mm×幅5mm×高さ4mm)である。また、金属箔部材189は、厚み0.1mmの金属箔からなり、外側の1辺の長さが35mmで、幅が5mmの正方形の枠状である。
【0091】
この金属箔部材189は、前記図10に示す様に、外側ガスケット185の内周面と内側ガスケット187の外周面とに挟まれて密着する正方形の枠状の環状中央部191と、外側ガスケット185の下面と水素分離板165の上面とに挟まれて密着する正方形の枠状の環状外側部193と、内側ガスケット187の上面と容器163の上面とに挟まれて密着する正方形の枠状の環状内側部195とから構成されている。
【0092】
そして、前記水素分離板165と上材181とは、間にガスシール複合体183を挟んで、周囲をボルト197及びナット199によって固定されている。なお、水素分離板165の下側とナット199との間には、補強板198が配置されている。
【0093】
b)次に、本実施形態の水素分離装置161の動作を説明する。
前記図10に示す様に、周囲の温度が600℃の高温の状態で、例えば原料供給管173より容器163内の第1空間171に、例えばH2を含む高圧(例えば0.8MPaG)の原料ガスが供給されると、原料ガスは水素分離板165にて水素と他のガスとが分離され、分離された水素は第2空間177から水素排出管179を介して、外部に供給される。
【0094】
一方、原料供給管173より第1空間171に供給された原料ガスのうち、水素に分離された残りのガス(オフガス)は、オフガス排出管175を介して外部に排出される。
本実施形態においても、前記第3実施形態と同様な効果を奏する。
【0095】
c)次に、本実施形態の水素分離装置161の効果を確認するために行ったガスリークの実験例について説明する。
・この実験例(Heリーク試験)では、図12に示す様に、水素分離装置161のオフガス排出管175を封止し、水素排出管179を石鹸膜流量計203に接続した。
【0096】
そして、前記各実験例と同様に、原料供給管173から、0.8MPaGのHeガスを供給し、水素排出管179から排出されるHeガスを石鹸膜流量計203で測定するようにした。そして、この状態で、前記各実験例と同様に、周囲温度を室温〜600℃に変更する熱サイクルを10回実施し、その際のHeガスのリーク量を石鹸膜流量計203によって測定した。
【0097】
この実験の結果、Heガスのリーク量は0であり、本実施形態の水素分離装置161の気密性が高いことが確認できた。
・また、比較例2として、図示しないが、第4実施形態のガスシール複合体に代えて、正方形の枠状(外側の1辺39mm×幅10mm×厚み4mm)の(前記ガスケットと同様な材料からなる)ガスケットのみを用いた水素分離装置を作製した。
【0098】
そして、この比較例2の水素分離装置を用いて、前記と同様な装置及び条件で、Heリーク試験を行った。
その結果、約1cc/minのリークが発生したので、第4実施形態に比べて気密性が低いことが分かる。
[第5実施形態]
次に、第5実施形態のガスシール複合体が使用される水素分離装置について説明するが、前記第1実施形態と同様な内容の説明は省略する。
【0099】
本実施形態の水素分離装置は、前記第4実施形態のような平板状の装置を積層したものである。
図13に示す様に、本実施形態の水素分離装置201は、複数の水素分離板203と直方体形状の金属製(例えばSUS316)の薄型容器205とを交互に積層した積層体207を、金属製(例えばSUS316)の外側容器209内に収容したものである。
【0100】
前記水素分離板203は、Ni−YSZ多孔体からなる第1層231と、その両側に配置された、YSZ多孔体からなる第2層233と、PdAg合金膜からなる水素分離膜235とから構成されている。なお、上下両端の水素分離板203は、内側のみ第2層233と水素分離膜235とが形成されている。
【0101】
前記外側容器209には、原料ガスを供給する原料供給管211と、オフガスを排出するオフガス排出管213とが設けられている。また、各薄型容器205の側方には、水素分離板203にて分離された水素を外部に排出するために水素排出管215が設けられている。
【0102】
なお、前記積層体207が外側容器209に収容される際、原料供給管211側とオフガス排出管213側以外には簡単なガスシールがなされており(図示しない)、原料供給管211側から導入された原料ガスが積層体207の中を透過しないでオフガス排出管213に流れるのを防いでいる。
【0103】
前記積層体207は、図14に示す様に、水素分離板203と薄型容器205とを、前記第4実施形態と同様なガスシール複合体217を介して積層し、その積層したものを、板厚方向の両側から板材219、221で挟んで、ボルト等で固定したものである。
【0104】
このうち、前記ガスシール複合体217は、前記第4実施形態と同様に、四角枠状の外側の膨張黒鉛から外側ガスケット225と、四角枠状の内側の膨張黒鉛からなる内側ガスケット227と、両ガスケット225、227の間に配置された、四角枠状の銀からなる金属箔部材229とから構成されている。
【0105】
また、前記各薄型容器205の厚み方向の両側(同図上下方向)の中央部分には、上下両側の水素分離膜235側にそれぞれ開口する(第4実施形態の水素排出管の排出孔に相当する)開口部(図示せず)が形成されている。
【0106】
本実施形態によっても、前記第4実施形態と同様な効果を奏するとともに、水素分離板203が多数積層されているので、コンパクトな装置で、多くの水素を分離供給できるという利点がある。
[第6実施形態]
次に、第6実施形態について説明するが、前記第4実施形態と同様な内容の説明は省略する。
【0107】
本実施形態は、前記第4実施形態と同様なガスシール複合体を固体酸化物形燃料電池(SOFC)に適用したものである。
具体的には、図15に示す様に、本実施形態は、第4実施形態と同様なガスシール複合体を、直方体形状の(例えばSUS430からなる)金属製の容器301の中に、原料ガスと酸化剤ガス(空気)とを用いて発電を行う板状の発電セル303を配置したSOFC305に適用したものである。
【0108】
このSOFC305では、容器301の上板307と発電セル303との間に、前記第4実施形態と同様に、四角枠状のガスシール複合体309を配置して、ボルト311及びナット313等で締め付けて固定している。
【0109】
また、前記ガスシール複合体309は、前記第4実施形態と同様に、一対の四角枠状のガスケット315、317の間に四角枠状の金属箔部材319を配置したものである。なお、ガスケット315、317は膨張黒鉛ではなく、例えば、マイカ等を使用できる。
【0110】
前記容器301の一方の側方には、原料ガスを(同図下側の)燃料ガス流路321に供給する原料供給管323が取り付けられており、他方の側方には、発電後の排ガスを燃料ガス流路から外部に排出するためのオフガス排出管325が取り付けられている。
【0111】
また、容器301の上板307には、空気を容器301内の(同図上方の)ガスシール複合体309で囲まれた空気流路327に供給するための空気導入管329と、発電後の空気を外部に排出するための空気排出管331が取り付けられている。
【0112】
なお、前記発電セル303は、図示しないが、LSCFからなる空気極と、GDCからなる反応防止層と、YSZからなる固体電解質層と、Ni−YSZ多孔体からなる燃料極とが順次積層されたものである。
【0113】
このSOFC305では、H2、CH4、H2O、COを含む原料ガスを、原料供給管323を介して燃料ガス流路321に供給するとともに、空気を、空気導入管329を介して空気流路327に供給することにより、発電セル303にて発電を行う。
【0114】
上述した構成のSOFC305においても、前記第4実施形態と同様なガスシール複合体309を備えていることにより、上板307と発電セル303との間を確実に気密して、原料ガスと空気とを好適に分離することができる。
【0115】
尚、本発明は前記実施形態になんら限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。
(1)例えば、前記第1実施形態のガスシール複合体に代えて、例えば図16(a)に示す様に、先端側ガスケット401と基端側ガスケット403に挟まれた部分のみに、環状の金属箔部材405を配置したガスシール複合体407を用いてもよい。
【0116】
(2)また、前記第3実施形態のガスシール複合体に代えて、例えば図16(b)に示す様に、外側ガスケット411と内側ガスケット413に挟まれた部分のみに、円筒状の金属箔部材415を配置したガスシール複合体417を用いてもよい。
【符号の説明】
【0117】
1、81、91、131、161、201…水素分離装置(水素製造装置)
3、71、93、133…水素分離筒
5、73、95、135…取付金具
7、101、141、183、217、309、407、417…ガスシール複合体
9、77、99、139…押圧金具
11、75、97、137…固定金具
43、45、79、111、113、145、147、185、187、225、227、315、317、401、403、411、413…ガスケット
47、115、149、189、229、319、405、415…金属箔部材
165、203…水素分離板
181、307…上板
305…固体酸化物形燃料電池(SOFC)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属部材と、前記金属部材に対向して配置される相手部材との間に配置されて、前記金属部材と前記相手部材との間隙をガスシールするガスシール複合体において、
前記金属部材と前記相手部材との間に配置されて該金属部材と該相手部材との間隙をそれぞれガスシールする一対のガスケットと、
前記金属部材と前記相手部材との間隙を閉塞するように、前記一対のガスケットの間に挟まれるとともに該一対のガスケットに密着して配置された金属箔と、
を備えることを特徴とするガスシール複合体。
【請求項2】
前記一対のガスケット及び前記金属箔は筒状であり、
前記金属箔は、一方のガスケットの軸方向における一方の端面を覆うとともに、該端面に隣接する内周面の端部及び外周面の端部を覆うように、軸方向に沿って折れ曲がっていることを特徴とする請求項1に記載のガスシール複合体。
【請求項3】
前記一対のガスケット及び前記金属箔は筒状であり、
前記金属箔は、一方のガスケットの軸方向における端面を覆うとともに、該端面に隣接する内周面の端部と該端面に向かい合う他方のガスケットの端面に隣接する外周面の端部とを覆うように、軸方向に沿って折れ曲がっていることを特徴とする請求項1に記載のガスシール複合体。
【請求項4】
前記金属箔の厚みは、10〜100μmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のガスシール複合体。
【請求項5】
前記金属部材と前記金属部材に対向して配置される相手部材との間に、前記金属部材と前記相手部材との間隙をガスシールする前記請求項1〜4のいずれか1項に記載のガスシール複合体を備えたことを特徴とするガスシール複合体を備えた装置。
【請求項1】
金属部材と、前記金属部材に対向して配置される相手部材との間に配置されて、前記金属部材と前記相手部材との間隙をガスシールするガスシール複合体において、
前記金属部材と前記相手部材との間に配置されて該金属部材と該相手部材との間隙をそれぞれガスシールする一対のガスケットと、
前記金属部材と前記相手部材との間隙を閉塞するように、前記一対のガスケットの間に挟まれるとともに該一対のガスケットに密着して配置された金属箔と、
を備えることを特徴とするガスシール複合体。
【請求項2】
前記一対のガスケット及び前記金属箔は筒状であり、
前記金属箔は、一方のガスケットの軸方向における一方の端面を覆うとともに、該端面に隣接する内周面の端部及び外周面の端部を覆うように、軸方向に沿って折れ曲がっていることを特徴とする請求項1に記載のガスシール複合体。
【請求項3】
前記一対のガスケット及び前記金属箔は筒状であり、
前記金属箔は、一方のガスケットの軸方向における端面を覆うとともに、該端面に隣接する内周面の端部と該端面に向かい合う他方のガスケットの端面に隣接する外周面の端部とを覆うように、軸方向に沿って折れ曲がっていることを特徴とする請求項1に記載のガスシール複合体。
【請求項4】
前記金属箔の厚みは、10〜100μmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のガスシール複合体。
【請求項5】
前記金属部材と前記金属部材に対向して配置される相手部材との間に、前記金属部材と前記相手部材との間隙をガスシールする前記請求項1〜4のいずれか1項に記載のガスシール複合体を備えたことを特徴とするガスシール複合体を備えた装置。
【図1】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図15】
【図3】
【図7】
【図11】
【図13】
【図14】
【図16】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図15】
【図3】
【図7】
【図11】
【図13】
【図14】
【図16】
【公開番号】特開2012−31967(P2012−31967A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−173539(P2010−173539)
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)「平成22年度 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 “水素製造・輸送・貯蔵システム等技術開発 水素製造機器要素技術に関する研究開発 水素分離型リフォーマーの高耐久化・低コスト化研究開発” に係る委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願」
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【出願人】(000220262)東京瓦斯株式会社 (1,166)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)「平成22年度 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 “水素製造・輸送・貯蔵システム等技術開発 水素製造機器要素技術に関する研究開発 水素分離型リフォーマーの高耐久化・低コスト化研究開発” に係る委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願」
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【出願人】(000220262)東京瓦斯株式会社 (1,166)
【Fターム(参考)】
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