説明

ガスセンサ及びガス検出方法

【課題】極めて微量の濃度のガス検出を可能とするガスセンサを提供する。
【解決手段】誘電体中では、分極・電界・応力・ドメイン境界が相互にバランスをとっており、自由エネルギーの総和を最小にしている。ドメイン領域D1とD2は分極方向が180°異なり、ドメイン領域D3とD4及びドメイン領域D5とD6は分極方向が90°異なっているため、ドメイン境界DBは、ドメイン領域D1とD2の間,D3とD4の間,D5とD6の間に位置する。ここで酸素が吸着するとエネルギー・バランスが崩れ、ナノドメイン構造が変化する。このときに測定電圧を印加するとドメイン境界DBが図1(B)に示すように移動する。すると、荷電されたドメイン境界DBから電子がデトラップされて大きな過渡電流を生ずる。この現象を利用することで、ガス濃度を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造,食品生産・製造・流通,医療などの各種の分野においてガス濃度を検知するガスセンサ及びガス検出方法に関し、更に具体的には、極めて微量のガス濃度の検出に好適なガスセンサ及びガス検出方法の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
LSI(大規模集積回路)に代表される半導体デバイス製造の分野では、数百ppb(parts per billion,10億分の1)の意図的不純物添加により半導体特性が制御されている。このため、使用される高純度ガス中の残留酸素は、数百ppbより2桁低い数ppb,すなわち1〜10ppbレベルであることが必要とされる。しかし、現状では、数ppbレベルに対応できるガスセンサは存在しない。このような理由から、高価な分析装置を使用している。
【0003】
一方、食品関連の分野では、食品腐敗臭を人間の嗅覚と同等の10〜50ppbで検出できれば、食品の鮮度管理を自動化できると期待されている。
【0004】
更に、医療関連の分野では、糖尿病患者が発散するアセトン,歯周病患者が発散するメチルメルカプタン,肝疾患患者が発散する揮発性硫黄化合物・トリエチルアミンやアンモニア,ぜんそく患者が発散する一酸化炭素,過コレステロール患者が発散するイソプレンなど、疾病者の代謝生成物を検出できれば、早期の医療診断に寄与し得ると期待されている。他に、デオドラント(制汗剤)製品においては、体臭のセルフチェックなどへの応用が考えられている。これらの分野に対応するためには、1〜50ppbレベルの検出感度が必要とされる。
【0005】
以上のように、数ppbレベルの濃度感度をもつガスセンサを実現できれば、多様な分野での応用が期待できる。従来のガスセンサとしては、半導体型ガスセンサや表面弾性波型ガスセンサなどがある。例えば、下記特許文献1には、金電極上に、In、SnO又はSbを混入したWOからなる薄膜を形成し、トリメチルアミンが薄膜に接触したときの電極間の電気的特性を測定するようにしたガスセンサが開示されている。酸化タングステンは、生物腐敗臭の原因物質であるトリメチルアミンに対する感度が高く、部分的にペロブスカイト類似の結晶構造を有しており、誘電特性も示す。下記特許文献2には、金属酸化物半導体を酸化スズにより構成し、この半導体に5価遷移金属と3価遷移金属の両方を加えることにより半導体の表面への大気中の酸素の吸着を安定に行うようにしたガスセンサが開示されている。
【特許文献1】特開2000−121588公報
【特許文献2】特開2001−305089公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、半導体型ガスセンサは感度が1ppmレベルと低く、表面弾性波型ガスセンサはガスの濃縮を必要とする,繰り返し仕様に適さないといった不都合がある。前記特許文献1及び2記載のガスセンサも、ppbレベルの検出感度を達成できていない。
【0007】
本発明は、以上の点に着目したもので、ppbレベルのガス濃度検出を可能として、各種の分野における要望に十分応えることができるガスセンサ及びガス検出方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明のガスセンサは、分極方向が異なるドメイン間にドメイン境界が形成されている誘電体を利用し、ガス分子を吸着したときの前記ドメイン境界の移動によって生ずる過渡電流から、前記吸着したガス分子を検出することを特徴とする。主要な形態の一つによれば、前記誘電体としてSrTiOを主成分とする薄膜を使用したことを特徴とする。更に他の形態によれば、前記誘電体を加熱するための加熱手段を設けたことを特徴とする。
【0009】
他の発明のガスセンサは、絶縁性基板と、電圧を印加したときに面上領域で熱を発することが可能であり、前記絶縁性基板上に形成された加熱手段と、前記絶縁性基板上の前記加熱手段が形成された真上に、絶縁性膜を介して形成された誘電体薄膜と、該誘電体薄膜上面において所定間隔で対向しており、測定時に電圧を印加し、かつガス濃度に応じた過渡電流を測定するための電極手段と、を備えたことを特徴とする。主要な形態の一つは、前記誘電体薄膜が、SrTiOを主成分とする多結晶体であることを特徴とする。他の形態は、前記加熱手段は、ガス濃度を検出する前に所定時間発熱させることによって、前記誘電体薄膜に吸着したガス分子を放出させて清浄化させるものであることを特徴とする。更に他の形態は、前記電極手段は、前記誘電体薄膜の上面に位置する範囲が対向する櫛歯状部であり、それぞれの櫛歯状部が引き出し部に接続された形状であることを特徴とする。
【0010】
本発明の検出方法は、結晶体における分極の方向が異なるドメイン間にドメイン境界が形成されている誘電体薄膜に測定のための電圧を印加し、その後、該誘電体薄膜が吸着したガス分子の濃度に応じて前記ドメイン境界が移動することによって生ずる過渡電流を測定し、該過渡電流から前記ガス分子の濃度を検出することを特徴とする。主要な形態の一つは、前記誘電体薄膜が、SrTiOを主成分とする多結晶体であることを特徴とする。
【0011】
他の発明の検出方法は、請求項3記載のガスセンサによってガスを検出するガス検出方法であって、前記誘電体に吸着したガス分子を放出させて清浄化するリフレッシュモードと、これによって清浄化された誘電体にガス分子が吸着することによって生ずる過渡電流を検出する測定モードと、を含むことを特徴とする。主要な形態の一つは、前記リフレッシュモードが、前記加熱手段によって前記誘電体を加熱する加熱モードと、この加熱モードによる加熱後の誘電体に、前記ガス分子が吸着したときに誘電体内部に生ずる電界と逆向きの電界を印加するバックゲートモードと、を含むことを特徴とする。本発明の前記及び他の目的,特徴,利点は、以下の詳細な説明及び添付図面から明瞭になろう。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、比較的高い感度でガス濃度を検出するガスセンサを提供することができる。また、誘電体薄膜に測定用の電圧を印加することによりドメイン境界を移動させ、その際にガスの吸着量に依存して生ずる過渡電流を測定することによって、ガス濃度の検出が行われるガス検出方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、実施例に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0014】
最初に、図1及び図2を参照しながら、基本的な原理を説明する。本発明では、誘電体薄膜中のナノドメイン構造がガス吸着により変化することを利用する。例えば、多結晶体の誘電体薄膜中では、分極・電界・応力・ドメイン境界が相互にバランスをとっており、自由エネルギーの総和を最小にしている。図1(A)には、多結晶体の粒界に分極が存在するナノドメイン構造の部分的な一例が示されており、ドメイン領域D1とD2とでは分極方向が180°異なる方向であり、ドメイン領域D3とD4とでは分極方向が90°異なり、ドメイン領域D5とD6とでは分極方向が90°異なる方向である。このため、ドメイン境界(ドメインウォール)DBは、分極が異なる方向にあるドメイン領域間に存在し、例えば、ドメイン領域D1とD2の間、ドメイン領域D3とD4の間、あるいは、ドメイン領域D5とD6の間に位置する。なお、前記図1(A)には一部の粒界におけるドメイン領域しか図示せず、他は省略してあるが、多結晶体の場合は、それぞれの粒界ごとに同様のドメイン領域が存在している。例えば、結晶体が単結晶体の場合は、格子欠陥が存在するところに分極の異なるドメイン領域が存在し、多結晶体の場合と同様に作用する。
【0015】
このような状態で、電子吸引性のガス,例えば酸素が吸着するとエネルギー・バランスが崩れる。このときに、図1(A)に示すスイッチSWをONにし、前記誘電体薄膜上面において所定間隔で対向する電極E1及びE2を介して電源EHから測定電圧を印加すると、例えば同図(B)に示すようにナノドメイン構造が変化する。すなわち、図示の例では、ドメイン領域D1とD2間,ドメイン領域D3とD4間,ドメイン領域D5とD6間のドメイン境界DBが図1(A)に示す状態から、図1(B)に示す状態に移動する。すると、荷電されたドメイン境界DBから電子がデトラップされて大きな過渡電流(パルス電流)を生ずる。
【0016】
図1(C)には、ガス吸着量と発生電流の一例が示されている。同図に示すように、もともと半導体として流れる電流に加えて、ガス吸着の開始時点では誘電体薄膜中にトラップされている電子の数が多いので、比較的大きなトリガー電流が過渡的に発生する。しかし、ガス吸着量が増えるに従い、誘電体薄膜中にトラップされていた電子は徐々に減少していくので、電流も徐々に低下していく。
【0017】
なお、ガス吸着に要する時間t[s]は、次のような計算式で表される。
【数1】

ここで、P[Pa]は圧力,Mはガスの分子量,T[K]は温度である。例えば、酸素の場合、PO2=1[ppb],MO2=32,T=300[K]とすると、吸着時間は3.7[s]となる。
【0018】
一方、従来の半導体型ガスセンサの場合、図2(A),(B)に示すように、ガス分子GMが半導体SCの表面に吸着すると、半導体SC中の電子eがガス分子GMに取り込まれる。同図(A)はガス分子GMの吸着量が少なく、半導体SC中に電子が多く、抵抗値は低い。しかし、ガス分子GMの吸着量が多くなると、同図(B)のようになり、半導体SC中の電子が減少して抵抗値が高くなる。このような半導体型ガスセンサの場合の発生電流は、同図(C)に示すように、ガス吸着が進むに従って少しずつ減少していく。
【0019】
ガスが高濃度の場合、センサの検出部がガス粒子で覆われる時間は短い。従って、半導体SCの抵抗値が定常値になるのも早く、時間も短い。一方、ガスが低濃度の場合、センサの検出部がガス粒子で覆われる時間は長い。従って、半導体SCの抵抗値が定常値になるのは遅くなり、時間も長くなる。ただし、半導体型ガスセンサでは過渡的な抵抗値の変化が小さく、過渡応答を補足するのは困難である。これに対し、本願発明では、半導体的な応答に加えて、ドメイン境界の深いエネルギー準位にトラップされていた電子が掃き出されることで過渡的に大きな電流が生ずるので、過渡応答の捕捉が容易となり、ppbレベルでのガス検出が可能となる。
【0020】
本発明に好適な誘電体材料としては、まず、荷電したドメイン境界が多いことが要求される。具体的には、分極方向が非180度のドメインが存在することが重要である。ドナーやアクセプタを導入してガス吸着のトラップを多くするようにすることも有効である。次に、ガスの吸着によってドメイン境界が移動する必要がある。具体的には、誘電体の膜厚を電子空乏層と同程度にすること,ガスとの結合の強いサイトがあること,適度な密度のAサイト欠陥があることである。更に、測定電界を印加し終わったときには分極が再配置されており、荷電したドメイン境界から電子が掃きだされていることが必要であり、高配向膜であれば、そのような条件を満たすようになる。
【0021】
このような条件を満たす誘電体材料としては、例えばSrTiO(チタン酸ストロンチウム)がある。SrTiOは、ペロブスカイト化合物の一種であり、電界・磁界・光などの刺激が与えられると、電気双極子・磁気双極子・格子振動などの協同現象により相転移やドメイン境界の移動が誘起され、電気特性が大きく変化する特徴がある。SrTiOは、ペロブスカイト化合物の中でも室温における結晶構造の対称性が最も高く、通常は強誘電性を有せず、従って、ドメイン境界も有しない。しかし、薄膜にすると、基板の結晶格子定数や熱膨張係数との不整合により強誘電性をもつことができ、ドメイン境界が存在するようになる(例えば、O. Tikhomirov et al., Phys. Rev. Lett., 89, 2002, 147601参照)。このドメイン境界は、電界を印加することで移動し得るが、通常その移動にはかなり高い電界を必要とする。しかし、酸素のような電子吸引性のガスがドメイン境界付近に吸着することで自己分極が起こり、結晶面間に大きなずれ応力を生ずるため、ドメイン境界の移動に対するエネルギー障壁が低くなると推測される。
【0022】
検出電流の増幅回路の負担を軽くする目的でSrTiOを低抵抗化するために、Sr2+の一部をより原子価の大きいLa3+やPr3+などの希土類イオン等で置換してもよく、同じ目的で、Ti4+の一部をより原子価の大きいNb5+やTa5+等で置換してもよい。これらの置換物は、SrTiO中の浅いトラップにある電子密度を高くするので、抵抗を下げることができる。ただし、置換率が高すぎると半導体としての機能が強くなり、本来の誘電特性が劣化して検出性能を損なうので、置換率は0.1%以下に抑えることが望ましい。また、過渡応答電流を大きくするために、Sr2+の一部をより原子価の小さいNaやKなどのアルカリイオン等で置換してもよく、同じ目的で、Ti4+の一部をより原子価の小さいCr3+やMn3+等で置換してもよい。これらの置換物はSrTiO中の深いドメイン境界の移動に伴って掃き出される電子の密度を高くするので、過渡電流を大きくすることができる。ただし、置換率が高すぎるとドメイン境界が動き難くなり、本来の誘電特性が劣化して検出性能を損なうので、置換率は0.1%以下に抑えることが望ましい。
【0023】
次に、図3及び図4を参照しながら、本実施例のガスセンサの構成について説明する。図3(A)は平面図であり、同図(B)は主要部の拡大図,同図(C)は同図(A)の#3−#3線に沿って矢印方向に見た断面図である。また、図4(A)は主要部を分解した斜視図であり、同図(B)は櫛状電極部分の拡大図である。これらの図において、Si基板10上に、例えば熱酸化により約1000nmの厚さのSiO層12を形成し、次に、サーマルCVDにより100nmの厚さのSi層14を積層形成する。なお、Si層14は、必要に応じて設ければよい。
【0024】
次に、多結晶Siにより曲折パターンが連続するヒーター16及びその引き出し部18,20を、サーマルCVDにより100nmの厚さに形成する。引き出し部18,20を外部に引き出すための引き出し電極22,24は、例えばスパッタリング及びリフトオフによって、200nmのAu,10nmのTiにより形成する。ヒーター16上には、サーマルCVD及びCMPにより約250nmの厚さのSiO層26を形成する。
【0025】
次に、前記ヒーター16上にSiO層26を挟んで、10nmのTi層と、50nmのSrTiO膜とが、スパッタリング及びドライエッチングにより、誘電体薄膜30として形成される。この誘電体薄膜30上に、櫛状電極(櫛歯状電極)32,34を交互に形成する。櫛状電極32,34は、引き出し電極36,38にそれぞれ接続されて引き出される。これら櫛状電極32,34及び引き出し電極36,38は、例えばスパッタリング及びリフトオフによって、200nmのAu,10nmのTiにより形成する。
【0026】
なお、Si基板10であって、前記ヒーター16の下部には空間11が形成されている。この空間11は、ヒーター16の熱が効果的に誘電体薄膜30に伝わるようにするためのものである。
【0027】
図5(A)には、以上のように構成されたガスセンサ100のパッケージの一例が示されている。上述したガスセンサ100は、ヒーター16の熱が外部に逃げないようにする熱絶縁用のガラス基板110を介してステンレスケース120内に収納されている。ガスセンサ100の引き出し電極22,24は、端子122,124にそれぞれ接続されており、引き出し電極36,38は、端子126,128にそれぞれ接続されている。ステンレスケース120の上面には、ガス導入用の窓ないし開口130が設けられている。窓130には保護用のステンレスメッシュ132が設けられており、このステンレスメッシュ132には、多孔質高分子フィルムからなるガス透過膜134が形成されている。ガス透過膜134は、検出対象のガスは透過するものの、ダストや水の透過を防止する機能を備えている。図5(B)は、前記ガラス基板110を使用せず、ガスセンサ100をワイヤ140,142,144,146によって支持するようにした例である。
【0028】
次に、図6を参照しながら、本実施例のガスセンサによるガス濃度の検出手順について説明する。検出動作は、測定モードと、リフレッシュモードとに分かれる。そして、リフレッシュモードは、更に、加熱モードとバックゲートモードの2段階で行なわれる。以下、順に説明する。
(1)加熱モード:図6(C)に示すように、引き出し電極22,24間に電源EHを接続してヒーター16に通電する。すると、ヒーター16が発熱し、誘電体薄膜30が加熱される。これにより、誘電体薄膜30の自己分極が消失する。
(2)バックゲートモード:次に、図6(D)に示すように、ガスが吸着したときにできる内部電界と逆向きの電界を誘電体薄膜30に印加する。これにより、前回の測定によってガス吸着・放出平衡状態にある誘電体薄膜30の表面から強制的・一時的にガス分子が放出され、表面が清浄化(リフレッシュ)される。
(3)測定モード:次に、図6(A)もしくは(B)に示すように、櫛状電極32と34との間に測定電圧を印加し、誘電体薄膜30の清浄表面にガス分子が徐々に吸着していく段階の過渡応答を、パルス抵抗測定により検出する。なお、1回目のリフレッシュを行った後に1回目の測定を行い、2回目のリフレッシュを行った後に2回目の測定を行うが、2回目の測定時の電圧は1回目とは逆極性とする。例えば、最初図6(A)の状態で測定を行なったときは、同図(C),(D)のリフレッシュモードの動作を行なった後、同図(B)の状態で測定を行なう(矢印FA,FB,FC参照)。逆に、図6(B)の状態で測定を行なったときは、同図(C),(D)のリフレッシュモードの動作を行なった後、同図(A)の状態で測定を行なう(矢印FD,FE,FF参照)。
【0029】
上述したように、本発明が対象とするような低濃度のガスを検出する場合は、誘電体薄膜30の表面がガス分子で覆われるまでの時間が長くなり、抵抗値が定常状態になるのも遅くなる。従って、測定に時間的な余裕が生じ、良好なガス濃度測定を行なうことができる。
【0030】
<他の実施例>
なお、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨に逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることができる。例えば、以下のものも含まれる。
(1)前記実施例では、濃度測定対象として酸素ガスの場合を説明したが、電子吸引性のガスであれば、どのようなものでも測定対象となる。また、複数のガスを検出する場合は、上述したセンサ構造を同一基板上に複数配列したセンサアレイとしてもよい。このとき、上述したパッケージのガス透過膜134を測定対象のガスを透過するように設定する。
(2)前記実施例で示した各部の材料や厚さ,形状などは一例であり、同様の作用を奏するように設計変更してよい。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明によれば、ごく微量のガスを検出することができるので、半導体製造,食品生産・製造・流通,医療などの分野に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明のガスセンサの基本的な検出原理を示す図である。
【図2】従来の半導体型ガスセンサにおける基本的な検出原理を示す図である。
【図3】(A)は本発明の一実施例のガスセンサの平面図,(B)は主要部の拡大図,(C)は(A)の#3−#3線に沿って矢印方向に見た断面図である。
【図4】(A)は前記実施例の分解斜視図,(B)は櫛状電極の拡大図である。
【図5】前記実施例のガスセンサのパッケージの例を示す図である。
【図6】前記実施例のガスセンサの測定手順を示す図である。
【符号の説明】
【0033】
10:Si基板
11:空間
12:SiO
14:Si
16:ヒーター
18,20:引き出し部
22,24:引き出し電極
26:SiO
30:誘電体薄膜
32,34:櫛状電極
36,38:引き出し電極
100:ガスセンサ
110:ガラス基板
120:ステンレスケース
122,124:端子
126,128:端子
130:開口ないし窓
132:ステンレスメッシュ
134:ガス透過膜
140,142,144,146:ワイヤ
D1〜D8:ドメイン領域
DB:ドメイン境界
e:電子
EH:電源
E1,E2:電極
GM:ガス分子
SC:半導体
SW:スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶体における分極の方向が異なるドメイン間にドメイン境界が形成されている誘電体薄膜と、
該誘電体薄膜のガス分子の吸着にもとづく電気抵抗変化の測定のために印加する電圧印加手段と、
を備えており、
前記ドメイン境界の移動によって生ずる過渡電流から、前記吸着したガス分子の濃度を検出することを特徴とするガスセンサ。
【請求項2】
前記誘電体薄膜が、SrTiOを主成分とする多結晶体であることを特徴とする請求項1記載のガスセンサ。
【請求項3】
前記誘電体薄膜を加熱するための加熱手段を設けたことを特徴とする請求項1又は2記載のガスセンサ。
【請求項4】
絶縁性基板と、
電圧を印加したときに面上領域で熱を発することが可能であり、前記絶縁性基板上に形成された加熱手段と、
前記絶縁性基板上の前記加熱手段が形成された真上に、絶縁性膜を介して形成された誘電体薄膜と、
該誘電体薄膜上面において所定間隔で対向しており、測定時に電圧を印加し、かつガス濃度に応じた過渡電流を測定するための電極手段と、
を備えたことを特徴とするガスセンサ。
【請求項5】
前記誘電体薄膜が、SrTiOを主成分とする多結晶体であることを特徴とする請求項4記載のガスセンサ。
【請求項6】
前記加熱手段は、ガス濃度を検出する前に所定時間発熱させることによって、前記誘電体薄膜に吸着したガス分子を放出させて清浄化させるものであることを特徴とする請求項4又は5記載のガスセンサ。
【請求項7】
前記電極手段は、前記誘電体薄膜の上面に位置する範囲が対向する櫛歯状部であり、それぞれの櫛歯状部が引き出し部に接続された形状であることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載のガスセンサ。
【請求項8】
結晶体における分極の方向が異なるドメイン間にドメイン境界が形成されている誘電体薄膜に測定のための電圧を印加し、その後、該誘電体薄膜が吸着したガス分子の濃度に応じて前記ドメイン境界が移動することによって生ずる過渡電流を測定し、該過渡電流から前記ガス分子の濃度を検出することを特徴とするガス検出方法。
【請求項9】
前記誘電体薄膜が、SrTiOを主成分とする多結晶体であることを特徴とする請求項8記載のガス検出方法。
【請求項10】
請求項3記載のガスセンサによってガスを検出するガス検出方法であって、
前記誘電体薄膜に吸着したガス分子を放出させて清浄化するリフレッシュモードと、
該リフレッシュモードによって清浄化された誘電体薄膜にガス分子が吸着したとき、電圧を印加することによって生ずる過渡電流を検出する測定モードと、
を含むことを特徴とするガス検出方法。
【請求項11】
前記リフレッシュモードは、
前記加熱手段によって前記誘電体を加熱する加熱モードと、
この加熱モードによる加熱後の誘電体薄膜に、前記ガス分子が吸着したときに誘電体内部に生ずる電界と逆向きの電界を印加するバックゲートモードと、
を含むことを特徴とする請求項10記載のガス検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−98124(P2009−98124A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−192882(P2008−192882)
【出願日】平成20年7月25日(2008.7.25)
【出願人】(000204284)太陽誘電株式会社 (964)
【Fターム(参考)】