説明

ガスセンサ

【課題】端子支持用の絶縁体をホルダに確実に固定できるとともに、絶縁体での過大の応力の発生を防止することができるガスセンサを得る。
【解決手段】ホルダ4の一端部に固定されるケーシング8の内面と端子6を支持する絶縁体7の外面との間に中空状の弾性部材14を圧縮状態で介設し、この弾性部材14が復元力によって絶縁体7を支持部4cに押し付けて、支持部4cとによって絶縁体7を挟持している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車用内燃機関の排気装置等に設置して排気ガスに含まれる特定ガス成分を検出するガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より種々のガスセンサが提案されている。特許文献1は、その一例としてのガスセンサを開示する。
【0003】
特許文献1に開示されるガスセンサは、被測定ガスに含まれる特定ガス成分を検出する検出素子と、この検出素子が挿通固定されるホルダと、このホルダの基端部に固定され、検出素子からの出力を取り出す端子を支持する絶縁体と、ホルダの基端部に固定され、絶縁体の外面を覆うケーシングとを備えるとともに、ホルダの基端部に、絶縁体を係止するかしめ部を形成したものである。
【0004】
このガスセンサでは、当該ガスセンサの組立て時に、検出素子の基端部側に、端子を支持する絶縁体を設けるとともに、ホルダの基端部の一部をかしめて絶縁体を係止した後、ホルダの基端部にケーシングを装着することにより、絶縁体の外面を覆うようにしている。
【0005】
また、他の従来例として、中実の皿ばねを用いて絶縁体をホルダの基端部に押し付けて固定する技術も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2005−207907号公報
【特許文献2】特開2001−349863号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来技術では、ホルダの基端部側に絶縁体を固定するため、ホルダの基端部の一部をかしめて絶縁体を係止させる際に、かしめ荷重により過大な応力が絶縁体に発生し絶縁体が固定不良となるおそれがある。かかる過大な応力の発生を防止するため、ホルダ、絶縁体およびかしめ部を高い寸法精度で形成する場合には、ガスセンサの生産性が劣り歩留まりが低いという問題がある。また、一方、絶縁体での過大な応力の発生を防止するために、かしめ荷重を少なくして絶縁体を固定した場合、ガスセンサに掛る振動により絶縁体の振れが発生し、ガスセンサの耐振性が低下するとともに、絶縁体に内設される端子と検出素子との接触圧が確保できずガスセンサにおける特定ガスの検出精度が低下してしまうという問題があった。
【0007】
また、中実の皿ばねを用いて絶縁体をホルダの基端部に押し付けて固定する構造においても、皿ばねに作用する荷重に対する皿ばねの変形量がわずかであるため、各部の寸法ばらつきや片当たりなどによって絶縁体の固定不良が発生するおそれがあった。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、端子支持用の絶縁体をホルダに確実に固定できるとともに、絶縁体での過大な応力の発生を防止することができるガスセンサを得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のガスセンサは、被測定ガスに含まれる特定ガス成分を検出し検出結果を接点部から電気信号で出力する検出素子と、前記検出素子が挿通されている筒状のホルダと、前記ホルダの一端部側に配置され前記接点部に接続されている端子と、前記ホルダの一端部側に配置され、前記端子を支持している絶縁体と、前記ホルダに固定され、前記絶縁体を覆っているケーシングと、前記ホルダの一端部に設けられた支持部と、前記ケーシングの内面と前記絶縁体の外面との間に圧縮状態で介在し、前記絶縁体を復元力によって前記支持部に押し付けて、前記支持部とによって前記絶縁体を挟持している中空状の弾性部材と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ケーシングの内面と絶縁体の外面との間に介在している弾性部材が、支持部とによって絶縁体を挟持しているので、ガスセンサの組立て時にホルダの一端部をかしめる必要がなくて済み、かしめ荷重による絶縁体での過大な応力の発生を防止することができるとともに、絶縁体での過大の応力の発生を防止するためにホルダ、および絶縁体などを高い寸法精度で形成する必要もないので、ガスセンサの生産性の向上を図ることができる。また、ガスセンサが外力により振動した場合、弾性部材が弾性変形することで絶縁体の振れが吸収されるので、ガスセンサの耐振性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を具現化した実施形態について図面を参照して説明する。以下の実施形態では、内燃機関を搭載した自動車や2輪車等の車両の排気管に装着された空燃比検出用の酸素センサを例示する。
【0012】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態について図1ないし図8を参照して説明する。図1は、本実施形態にかかる酸素センサの断面図(軸方向に沿った断面図)、図2は、本実施形態にかかる酸素センサの要部断面図(軸方向に沿った断面図)、図3は、本実施形態にかかる酸素センサの弾性部材を示す図で、(a)は平面図、(b)は周方向に垂直な断面図、図4は、本実施形態にかかる開口部が180度開口した弾性部材の周方向に垂直な断面図、図5は、本実施形態にかかる開口部が120度開口した弾性部材の周方向に垂直な断面図、図6は、本実施形態にかかる開口部が60度開口した弾性部材の周方向に垂直な断面図、図7は、本実施形態にかかる酸素センサの弾性部材およびその周囲を示す分解断面図、図8は、本実施形態にかかる酸素センサの弾性部材の変形特性を示す特性図である。なお、以下では、図1の紙面上下方向を酸素センサの上下方向として説明する。
【0013】
図1に示すように、本実施形態における酸素センサ1は、外面に段付きの外形略円柱状をなしている。酸素センサ1は、検出素子2と、検出素子2が挿通されている筒状のホルダ4と、このホルダ4と検出素子2との間をシールし、且つ、検出素子2をホルダ4内に位置決めする素子位置決め部5と、検出素子2からの出力を取り出す複数の端子6と、ホルダ4の軸方向の一端部(上端部)側に配置され、端子6を支持している絶縁体である碍子7と、ホルダ4の軸方向の一端部側に配置され、碍子7の外面を覆っているケーシング8と、ホルダ4の他端部(下端部)に固定され、ホルダ4より突出した検出素子2の外面を覆うプロテクタ9と、を備えている。
【0014】
検出素子2は、円柱棒状に形成され、その軸方向の一端部(上端部)には、接点部2aを有する接続部2cが形成され、その軸方向の他端部(下端部)には酸素測定部2bが形成されている。接点部2aは、検出素子2の外部に対して露出しており、接点部2aと酸素測定部2bとは、相互に電気的に接続されている。検出素子2では、酸素測定部2bが被測定ガスである排ガスに含まれる特定ガス成分として酸素を検出し、その検出結果として酸素濃度を接点部2aから電気信号で出力するようになっている。ここで、酸素測定部2bは、基準電極、測定電極、ヒータ(いずれも図示せず)を備えており、ヒータには、一対の電極が設けられている。これにより、接点部2a、端子6およびハーネス17は、それら4つの電極に対応してそれぞれ4個ずつ設けられている。
【0015】
ホルダ4には、検出素子2が挿入されている素子挿入孔3が形成されている。この素子挿入孔3に挿入された検出素子2の酸素測定部2bは、ホルダ4の軸方向の他方側に露出している一方、検出素子2の接続部2cはホルダ4の軸方向の一方側に露出している。この接続部2cは、碍子7の下端面7aに対して軸方向に空隙部S1をあけて挿入されるようになっている。よって、検出素子2と碍子7との組み付け時、または組み付け後に例えば車両の振動等によって検出素子2が移動した場合においても、碍子7の下端面7aに検出素子2が接触することが防止される。
【0016】
ホルダ4は、その上部に上方から見て六角形状を有する六角部4aを有し、この六角部4aに工具を嵌合してホルダ4に回転トルクを容易に作用させることができるようになっている。ホルダ4の下部の外面には、ネジ部4bが形成されている。ホルダ4の六角部4aとネジ部4bとの間には、ガスケット19が配置されている。ホルダ4の上端には、碍子7の下端面7aが当接する位置決め面4cが設けられており、この位置決め面4cが、碍子7におけるホルダ4側の端部(下端部)を支持している支持部となっている。即ち、本実施形態では、支持部(位置決め面4c)がホルダ4に一体成形されている。
【0017】
素子位置決め部5は、素子挿入孔3の軸方向の一端部に位置する粉充填スペース10と、この粉充填スペース10の近傍に設けられたかしめ部11とを有している。素子位置決め部5は、粉充填スペース10にセラミック粉12とこのセラミック粉12を押圧する押圧部材13とを収容し、かしめ変形したかしめ部11によって押圧部材13を圧縮し、この圧縮力でセラミック粉12を圧縮状態で充填することによって検出素子2とホルダ4との間をシールし、且つ、検出素子2をホルダ4に位置決めしている。セラミック粉12としては、例えば未焼結のタルク、ステアタイト等が使用されている。押圧部材13には、例えば円筒形状のリング部材が使用されている。
【0018】
そして、粉充填スペース10の内部に配置された押圧部材13をかしめ部11によって検出素子2の径方向であって検出素子2の中心へ向う方向へ全周かしめ等の手段を用いて曲げ加工することで、セラミック粉12が加圧状態で充填され、検出素子2をホルダ4に位置決めしている。また、素子位置決め部5は、ホルダ4と検出素子2との間の隙間等を塞ぎ、ホルダ4の内部に外部の水分等が浸入するのを遮断するとともに、排気管30の内部の排気ガス等がケーシング8の内部に浸入するのを遮断する機能を有している。
【0019】
端子6は、板素材を折り曲げ加工等することにより形成されており、その一端部には、略板状の接触部6aが形成されている。端子6の他端部は、ばね性を有する形状に形成されている。具体的には、端子6の他端部には、板ばねである鉤状のばね部6bが形成されている。このばね部6bは、板素材を折返し加工することによって形成される。
【0020】
端子6は、ホルダ4の一端部側に配置されている。そして、ホルダ4の軸方向の一方にホルダ4から露出した検出素子2の接点部2aに対して、ばね部6bがそのばね性を利用して圧接している。
【0021】
端子6の一端部は、結合部21に例えばスポット溶接によって固着され、結合部21を介してハーネス17の後述する芯線17aに接続されている。ここで、結合部21は、金属材料などの導電性を有する材料によって形成されている。よって、検出素子2の酸素測定部2bは、接点部2a、端子6および結合部21を介して、ハーネス17の芯線17aと電気的に接続されている。
【0022】
ハーネス17は、芯線17aとこの芯線17aを被覆している被覆材17bとから構成されている。芯線17aの端部は被覆材17bから露出しており、この芯線17aの露出部分が結合部21に接続されている。
【0023】
ケーシング8は、碍子7を覆う筒状に形成されている。このケーシング8の上部内側には、シーリングラバー16が配置され、このシーリングラバー16を介して複数のハーネス17がケーシング8の内部から外部に導き出されている。シーリングラバー16は、ケーシング8のかしめ部8aによるかしめによって、径方向であってシーリングラバー16の中心部に向かう方向に縮径された状態でケーシング8に固定されている。このかしめによってシーリングラバー16とハーネス17との間、およびシーリングラバー16とケーシング8との間のシール性(気密性)が確保されている。シーリングラバー16は、フッ素ゴム等の耐熱性を有する材質から構成されている。
【0024】
ケーシング8の軸方向の他端部は、ホルダ4に嵌着されるとともに、例えばレーザ溶接等の溶接によってホルダ4に固定されている。この溶接によってケーシング8とホルダ4との間のシール性が確保されている。なお、この溶接部分は、図1中に符号8dで示している。ケーシング8は、碍子7の外形よりも十分に大きな外形に形成され、これによってケーシング8と碍子7との間には、空隙部20が設けられている。
【0025】
図2に示すように、碍子7は、外形略円柱状に形成されてホルダ4の位置決め面4cに起立状態で配置されている。この碍子7は、絶縁材料からなり、その絶縁材料は、例えばセラミックスである。
【0026】
碍子7の下端面(他端面)7aには、軸方向一方側に向けて凹む凹部7dが形成されている。この凹部7dの内周面7eに沿って、複数の端子6のばね部6bが配置され、これら複数の端子6の間に検出素子2の接続部2cが嵌合されるようになっている。すなわち、検出素子2と碍子7とが組み付けられた状態では、端子6のばね部6bが、碍子7の凹部7dの内周面7eと検出素子2の接続部2cの外面との間に形成される空間Sに配置され、当該凹部7dの内周面7eと検出素子2の接続部2cとに挟持されるようになっている。このように挟持された端子6は、当該挟持によってばね部6bに生じる反発力により検出素子2の接点部2aに圧接し、以て、当該接点部2aと電気的に接続する。
【0027】
凹部7dの底部7fには、端子6の固定部6cが挿入される取付孔7gが周方向に等間隔をもって複数形成されている。このように複数の端子6を周方向に等配置することで、これら複数の端子6に挟持される検出素子2を凹部7dの中心に配置しやすくしている。
【0028】
ここで、碍子7と検出素子2の接続部2cとの間に形成された空間Sは、素子位置決め部5、シーリングラバー16およびケーシング8とホルダ4との溶接部分8dによって略気密性が保持されるが、ハーネス17における芯線17aと被覆材17bとの微小な隙間のみを介して外部と連通しており、かかる連通によって、ケーシング8の内部に酸素濃度検出に用いる基準大気が導入されるようになっている。
【0029】
碍子7におけるホルダ4側とは反対側の端部である上端部7hにおいては、その外周面7iに、周方向が該碍子7の周方向に沿った円環状の嵌合部7bが形成されている。この嵌合部7bには、弾性力を有する弾性部材14が外嵌している。
【0030】
嵌合部7bは、碍子7に形成された第1の大径部7jとこの第1の大径部7jよりも小径に形成された第1の小径部7kとの連設によって形成された段差によって形成されている。第1の小径部7kは、第1の大径部7jの一端(上端)に連設されている。したがって、碍子7は、嵌合部7bにおいて、略円筒状の外周面として第1の小径部7kの外周面7mと、この外周面7mから外方に延出して形成され検出素子2の軸心に対して垂直な平面7nと、を有している。
【0031】
弾性部材14は、例えばSUS304等のオーステナイト系ステンレスや耐熱バネ材料などによって構成されており、中でも耐熱バネ材料で構成されることがより好適である。
【0032】
弾性部材14は、碍子7に外嵌する形状に形成されている。具体的には、弾性部材14は、図3の(a)に示すように、碍子7の嵌合部7bの外面に沿って延びて外形としての軸方向視が略C字状となっており、該弾性部材14の両端間には、比較的わずかな寸法の間隙14aが設けられている。また、弾性部材14は、図3の(b)に示すように、周方向に垂直な断面が略C字状に形成されており、開口部14bを有している。開口部14bは、弾性部材14の外周部に形成されており、弾性部材14の軸心14c側とは反対側の外方に開口している。自由状態での弾性部材14における開口部14bの開口角度14dは、弾性部材14の周方向に沿った断面が略C字状になる角度であれば良く、ここでは、開口角度14dが180°、120°、60°の場合を図4〜図6に例示する。
【0033】
弾性部材14は、図2に示すように、嵌合部7bにおける第1の小径部7kに外嵌した状態で、第1の小径部7kの外周面7mとケーシング8の内周面との間に介在しているとともに、碍子7の平面7nとこの平面7nに対向するケーシング8の対向面8eとの間に介在している。即ち、弾性部材14は、第1の小径部7kの外周面7m、ケーシングの内周面、碍子7の平面7nおよびケーシング8の対向面8eに当接している。
【0034】
弾性部材14の軸心14cと嵌合部7bの軸心7pとは、ホルダ4の軸心4dに沿っており、それら弾性部材14の軸心14cと嵌合部7bの軸心7pとホルダ4の軸心4dとは、一致している。
【0035】
また、弾性部材14は、自由状態での内径14e(図3)が嵌合部7bにおける第1の小径部7kの外径7q(図2)と同一となっており、図7に示すように、弾性部材14を嵌合部7bに嵌合した状態であってケーシング8の組み付け前の状態で、弾性部材14の内周部が嵌合部7bにおける第1の小径部7kの外周面7mに当接し、弾性部材14の軸心14cと嵌合部7bの軸心7pとが一致する。
【0036】
ここで、ケーシング8は、第2の大径部8bとこの第2の大径部8bに連設され第2の大径部8bよりも小径に形成された第2の小径部8fとを有しており、第2の大径部8bと第2の小径部8fとの連設によって形成された段差8gが弾性部材14に当接している。なお、第2の小径部8fは、第2の大径部8bの上端に連設されており、第2の小径部8fの内径8hは、碍子7の第1の小径部7kの外径以下に形成されている(図7)。
【0037】
そして、弾性部材14は、ケーシング8の内面と碍子7の外面との間に圧縮状態で介在し、碍子7を復元力によってホルダ4の位置決め面4cに押し付けて、位置決め面4cとによって碍子7を挟持している。つまり、弾性部材14は、嵌合部7bに外嵌した状態で嵌合部7bを押圧することで碍子7を碍子7の軸方向に沿って押圧し、これにより碍子7をホルダ4の位置決め面4cに向けて押圧している。かかる押圧によって、碍子7の下端面7aがホルダ4の位置決め面4cに当接している。ことき、開口部14bの開口量は、自由状態のときと比べて小さくなっているが、開口部14bは閉じておらず開口した状態となっている。
【0038】
図1に示すように、プロテクタ9は、有底筒状で、且つ、2重構造に形成されている。プロテクタ9とホルダ4との固定は、例えばレーザ溶接等による全周溶接、または部分溶接や全周加締め、部分加締め等によってなされている。図1中には、当該固定が溶接の場合の溶接箇所9bが示されている。
【0039】
プロテクタ9は、内側プロテクタ9cおよび外側プロテクタ9dを有している。これら内側プロテクタ9cおよび外側プロテクタ9dは、例えば金属材料、セラミックス材料等によって形成されている。プロテクタ9の内部には、ホルダ4から下方に突出した検出素子2の酸素測定部2bが挿入されている。かかる構造のプロテクタ9は、検出素子2の酸素測定部2bを覆うことで、酸素測定部2bを排気ガス中の異物等から保護する。
【0040】
プロテクタ9には、ガス流通用の流通孔9aが形成されており、検出ガスは、流通孔9aを経由してプロテクタ9の内部に進入して、酸素測定部2bに至る。
【0041】
この酸素センサ1は、ホルダ4のネジ部4bを排気管30のネジ孔31に螺入することにより排気管30に固定され、プロテクタ9で覆われた箇所が排気管30内に突出された状態で配置される。酸素センサ1と排気管30との間の気密は、ガスケット19によって保持される。
【0042】
このような構成において、排気管30内を流通するガスがプロテクタ9の流通孔9aより内部に流入すると、そのガス内の酸素が検出素子2の酸素測定部2bに入り込む。すると、酸素測定部2bがガスの酸素濃度を検出し、この検出した酸素濃度を電気信号に変換する。この電気信号の情報が端子6およびハーネス17を経て外部に出力される。
【0043】
以上説明した酸素センサ1では、ケーシング8の内面と碍子7の外面との間に介在した弾性部材14が、ホルダ4の位置決め面4cとによって碍子7を挟持しているので、酸素センサ1の組立て時にホルダ4の一端部をかしめる必要がなくて済み、碍子7での過大な応力の発生を防止することができるとともに、碍子7での過大な応力の発生を防止するためにホルダ4、および碍子7などを高い寸法精度で形成する必要もないので、酸素センサ1の生産性の向上を図ることができる。
【0044】
また、本実施形態では、酸素センサ1が外力により振動した場合、弾性部材14が弾性変形することで碍子7の振れが吸収されるので、酸素センサ1の耐振性を向上させることができる。特に、本実施形態では、弾性部材14は、周方向に垂直な断面が略C字状に形成されていることにより、周方向に垂直な断面が環状の場合に比べて、弾性部材14が容易に変形可能であるので、車両の振動によって弾性部材14に振動が加わった場合、その振動を弾性部材14が容易に変形して吸収することができ、酸素センサ1の高い耐振性を確保することができる。
【0045】
このように、本実施形態では、弾性部材14によって碍子7が振動することを抑制することができるので、車両振動によって碍子7が共振することを防止することができる。また、碍子7を弾性部材14によって支持していることにより、碍子7と弾性部材14との系の共振周波数を碍子7単体の共振周波数よりも高くすることができ、車両振動による碍子7と弾性部材14との系の共振を防止することができる。
【0046】
また、本実施形態では、弾性部材14が軸方向視で略C字状に形成されていているので、ケーシング8によって押圧されることにより自由状態に比べて間隙14aが小さくなるように弾性部材14が変形し、弾性部材14の寸法ばらつきを吸収できるとともに、弾性部材14が嵌合部7bに対して自由状態のときと比べてより巻き付いた状態で固定されるので、嵌合部7bに対する弾性部材14の固定力が向上する。
【0047】
また、本実施形態では、弾性部材14は、周方向に垂直な断面が略C字状に形成されていることにより、周方向に垂直な断面が断面円環状に形成されている場合に比べて、ケーシング8の押圧に対して弾性部材14が圧縮変形し易く圧縮変形量が大きいので、碍子7などの寸法ばらつきや片当たりを弾性部材14で容易に吸収できる。したがって、この点でも碍子7での過大の応力の発生を防止することができるとともに、酸素センサ1を効率的に組立てることができる。
【0048】
また、このように周方向に垂直な断面が略C字状に形成されていることにより、弾性部材14が弾性変形し易い、即ち、弾性部材14の柔軟性が大きいので、弾性部材14と碍子7との当接において碍子7が抉られることを防止することができる。ここで、弾性部材14の開口角度14dが大きいほど、弾性部材14が圧縮変形し易く弾性部材14がの大きい圧縮変形量を得ることができるので、弾性部材14と碍子7との当接において碍子7が抉られることの防止効果が高くなる。一方、弾性部材14の開口角度14dが小さいほど、弾性部材14の剛性が高くなるため、ケーシング8による荷重のばらつきを弾性部材14が吸収して弾性部材14が全体的により均一に変形するので、碍子7をより確実に固定することができる。
【0049】
また、本実施形態では、支持部(位置決め面4c)が、ホルダ4に一体成形されているので、例えば支持部をホルダ4とが別部品で設ける場合に比べ、酸素センサ1を簡素な構成とすることができる。
【0050】
また、本実施形態では、ケーシング8の第2の小径部8fの内径が、碍子7の第1の小径部7kの外径以下に形成されていることにより、第2の小径部8fの内径が碍子7の第1の小径部7kの外径より大きい場合に比べて、ケーシング8の小型化を図ることができる。
【0051】
また、本実施形態では、弾性部材14は、自由状態での内径14e(図3)が嵌合部7bにおける第1の小径部7kの外径7q(図2)と同一となっており、弾性部材14を嵌合部7bに嵌合して状態であってケーシング8の組み付け前の状態で、弾性部材14の内周部が嵌合部7bにおける第1の小径部7kの外周面7mに当接し、弾性部材14の軸心14cと嵌合部7bの軸心7pとが一致するので、弾性部材14の位置決めを確実に行なうことができ、ケーシング8を組み付けた状態での弾性部材14と嵌合部7bとの片当たりを防止することができる。
【0052】
また、本実施形態では、碍子7は、ホルダ4側とは反対側の端部である上端部7hに略円筒状の外周面7mを有し、ケーシング8は、碍子7を覆う筒状に形成されており、弾性部材14は、碍子7の外周面7mとケーシング8の内周面との間に介在していることにより、弾性部材14による碍子7に対する径方向の押圧力によって碍子7を強固に固定することができる。
【0053】
また、本実施形態では、検出素子2は、棒状に形成され、碍子7は、ホルダ4側とは反対側の端部である上端部7hに検出素子2の軸心に対して垂直な平面7nを有し、ケーシング8は、平面7nに対向する対向面8eを有し、弾性部材14は、平面7nと対向面8eとの間に介在していることにより、弾性部材14による碍子7に対する軸方向の押圧力によって碍子7を強固に固定することができる。
【0054】
ここで、ホルダ4に対するケーシング8の組み付け時には、弾性部材14は、図8の線L1(L1a,L1b,L1c)に示すように、荷重に応じて圧縮変形する。ここで、図8中には、弾性部材14の開口部14bの開口角度が180°、120°、60°の場合の弾性部材14の変形特性が、それぞれ線L1a,L1b,L1cによって示されている。弾性部材14は、ホルダ4に対するケーシング8の挿入のストロークが第1範囲(ストローク0〜a)にあっては弾性変形し、そのストロークが第2範囲(ストロークa〜b)に至ると弾塑性変形する。本実施形態では、この第2範囲のストロークでホルダ4がケーシング8に固定される。ホルダ4に対するケーシング8の挿入のストロークが第2範囲を超えて第3範囲(ストロークb以上)に到達すると、弾性部材14は、完全に塑性変形して碍子破壊領域に到達し、碍子7が破壊される。これに対して、例えば、図8の直線L2で示すように、中実の皿ばねを用いて碍子を固定する従来例では荷重に対する皿ばねの変形量が少なく、わずかのストロークで荷重が碍子破壊領域に到達してしまう。これに対して、本実施形態では、荷重に対する変形量が多い領域(弾性変形域)と、ストロークに対する荷重の増加感度の低い領域(弾塑性変形域)を得ることができる。これにより、上述したように、碍子7などの寸法ばらつきや片当たりを容易に吸収し、碍子7での過大な応力の発生を防止することができる。
【0055】
なお、本実施形態では、組立完了状態で、弾性部材14が第1の小径部7kの外周面7mに当接している例を説明したが、これに限るものでは無く、組立完了状態で、弾性部材14が第1の小径部7kの外周面7mに対して間隙をもって配置されるように構成しても良い。この場合、弾性部材14が径方向に容易に変形可能であるので、車両の振動によって弾性部材14に振動が加わった場合、その振動を弾性部材14が径方向に容易に変形して吸収することができ、酸素センサ1のより高い耐振性を確保することができる。
【0056】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について図9を参照して説明する。図9は、本実施形態にかかる酸素センサの弾性部材およびその周囲を示す断面図(軸方向に沿った断面図)である。なお、本実施形態にかかる酸素センサ1Aは、第1の実施形態にかかる酸素センサ1と同様の構成要素を備えている。よって、それら同様の構成要素には共通の符号を付すとともに、重複する説明を省略する。
【0057】
本実施形態の酸素センサ1Aは、弾性部材14Aが第1の実施形態に対して異なる。本実施形態の弾性部材14Aは、開口部14bが、弾性部材14の内周部に形成されており、開口部14bは、弾性部材14Aの軸心14c側(内方)に開口している。
【0058】
この弾性部材14Aは、ケーシング8と碍子7とに挟まれて押圧されることにより、自由状態よりも扁平になって外径が拡大し、外方に向けた付勢力が発生する。これにより、弾性部材14Aは、開口部14bが形成されていない外周部でケーシング8の第2の大径部8bの内周面を押圧する。なお、その他の部分は、第1の実施形態と同じである。
【0059】
以上説明した本実施形態の酸素センサ1Aでは、開口部14bが形成されていない外周部で弾性部材14Aがケーシング8の第2の大径部8bの内周面を押圧することにより、ケーシング8の第2の大径部8bの外周面に掛かる外力に対し、ケーシング8に加えて弾性部材14Aもその押圧力によって対抗するので、弾性部材14Aがケーシング8を補強する補強部材として機能する。換言すると、ケーシング8と弾性部材14Aとによる2重構造によって外力に対抗可能となっている。よって、弾性部材14Aによってケーシング8の耐久性の向上を図ることができる。
【0060】
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態について図10を参照して説明する。図10は、本実施形態にかかる酸素センサの弾性部材およびその周囲要部断面図(軸方向に沿った断面図)である。なお、本実施形態にかかる酸素センサ1Bは、第1の実施形態にかかる酸素センサ1と同様の構成要素を備えている。よって、それら同様の構成要素には共通の符号を付すとともに、重複する説明を省略する。
【0061】
本実施形態の酸素センサ1Bは、弾性部材14Bが第1の実施形態に対して異なる。本実施形態の弾性部材14Bは、開口部14bが、弾性部材14の上部に形成されて、ケーシング8の対向面8eに向けて開口している。
【0062】
この弾性部材14Bは、ケーシング8と碍子7とに挟まれて押圧されることにより、自由状態よりも扁平になって外径が拡大し、外方に向けた付勢力が発生する。これにより、弾性部材14Bは、開口部14bが形成されていない外周部でケーシング8の第2の大径部8bの内周面を押圧するとともに、開口部14bが形成されていない内周部で碍子7の第1の小径部7kの外周面7mを押圧する。なお、その他の部分は、第1の実施形態と同じである。
【0063】
以上説明した酸素センサ1Bでは、開口部14bが形成されていない外周部で弾性部材14Bがケーシング8の第2の大径部8bの内周面を押圧することにより、ケーシング8の第2の大径部8bの外周面に掛かる外力に対し、ケーシング8に加えて弾性部材14Bもその押圧力によって対抗するので、弾性部材14Bがケーシング8を補強する補強部材として機能する。換言すると、ケーシング8と弾性部材14Bとによる2重構造によって外力に対抗可能となっている。よって、弾性部材14Bによってケーシング8の耐久性の向上を図ることができる。
【0064】
[第4の実施形態]
次に、本発明の第4の実施形態について図11を参照して説明する。図11は、本実施形態にかかる酸素センサの弾性部材およびその周囲を示す断面図(軸方向に沿った断面図)である。なお、本実施形態にかかる酸素センサ1Cは、第1の実施形態にかかる酸素センサ1と同様の構成要素を備えている。よって、それら同様の構成要素には共通の符号を付すとともに、重複する説明を省略する。
【0065】
本実施形態の酸素センサ1Cは、弾性部材14Cが第1の実施形態に対して異なる。本実施形態の弾性部材14Cは、開口部14bが、弾性部材14の下部に形成されて、碍子7の平面7nに向けて開口している。
【0066】
この弾性部材14Cは、ケーシング8と碍子7とに挟まれて押圧されることにより、自由状態よりも扁平になって外径が拡大し、外方に向けた付勢力が発生する。これにより、弾性部材14Cは、開口部14bが形成されていない外周部でケーシング8の第2の大径部8bの内周面を押圧するとともに、開口部14bが形成されていない内周部で碍子7の第1の小径部7kの外周面7mを押圧。なお、その他の部分は、第1の実施形態と同じである。
【0067】
以上説明した酸素センサ1Cでは、弾性部材14Cが、開口部14bが形成されていない外周部でケーシング8の第2の大径部8bの内周面を押圧することにより、ケーシング8の第2の大径部8bの外周面に掛かる外力に対し、ケーシング8に加えて弾性部材14もその押圧力によって対抗するので、弾性部材14Cがケーシング8を補強する補強部材として機能する。換言すると、ケーシング8と弾性部材14Cとによる2重構造によって外力に対抗可能となっている。よって、弾性部材14Cによってケーシング8の耐久性の向上を図ることができる。
【0068】
[第5の実施形態]
次に、本発明の第5の実施形態について図12および図13を参照して説明する。図12は、本実施形態にかかる酸素センサの弾性部材とホルダとを示す分解断面図(軸方向に沿った断面図)、図13は、本実施形態にかかる酸素センサの弾性部材とホルダとを示す分解平面図である。なお、本実施形態にかかる酸素センサ1Dは、第1の実施形態にかかる酸素センサ1と同様の構成要素を備えている。よって、それら同様の構成要素には共通の符号を付すとともに、重複する説明を省略する。
【0069】
本実施形態は、酸素センサ1Dの弾性部材14Dにおいて、自由状態での内径14eが碍子7の嵌合部7bを構成する第1の小径部7kの外径7qよりも小さい点が第1の実施形態と異なる。なお、その他の部分は、第1の実施形態と同じである。
【0070】
即ち、本実施形態の酸素センサ1Dにおいては、碍子7は、第1の大径部7jとこの第1の大径部7jに連設され第1の大径部7jよりも小径に形成された第1の小径部7kとを有し、嵌合部7bは、第1の大径部7jと第1の小径部7kとの連設によって形成された段差によって形成され、弾性部材14Dは、嵌合部7bを構成する第1の小径部7kに外嵌しており、当該弾性部材14Dは、自由状態での内径14eが第1の小径部7kの外径よりも小さい。なお、図13では、碍子7の取付孔7gは図示省略されている。
【0071】
したがって、本実施形態の酸素センサ1Dによれば、弾性部材14Dが嵌合部7bに固定状態で配置されるため、各部の組み付け時に弾性部材14Dが位置ずれすることを防止でき、酸素センサ1Dの組立容易性の向上を図ることができる。
【0072】
[第6の実施形態]
次に、本発明の第6の実施形態について図14を参照して説明する。図14は、本実施形態にかかる酸素センサの弾性部材とその周囲を示す分解断面図(軸方向に沿った断面図)である。なお、本実施形態にかかる酸素センサ1Eは、第1の実施形態にかかる酸素センサ1と同様の構成要素を備えている。よって、それら同様の構成要素には共通の符号を付すとともに、重複する説明を省略する。
【0073】
本実施形態は、酸素センサ1Eの碍子7にける第1の小径部7kが、ケーシング8の第2の小径部8fに間隙cをもって挿入可能に形成されている点が第1の実施形態と異なる。詳しくは、碍子7の第1の小径部7kの外径7qが、ケーシング8の第2の小径部8fの内径よりも小さく形成されている。なお、その他の部分は、第1の実施形態と同じである。
【0074】
即ち、本実施形態の酸素センサ1Eでは、碍子7は、第1の大径部7jとこの第1の大径部7jに連設され第1の大径部7jよりも小径に形成された第1の小径部7kとを有し、嵌合部7bは、第1の大径部7jと第1の小径部7kとの連設によって形成された段差によって形成されており、ケーシング8は、筒状に形成されるとともに、第2の大径部8bとこの第2の大径部8bに連設され第2の大径部8bよりも小径に形成された第2の小径部8fとを有し、第2の大径部8bと第2の小径部8fとの連設によって形成された段差8gが弾性部材14に当接しており、第1の小径部7kは、第2の小径部8fに間隙cをもって挿入可能に形成されている。
【0075】
したがって、本実施形態の酸素センサ1Eによれば、ケーシング8の組み付け時に、ケーシング8の第2の小径部8fと碍子7の第1の小径部7kとの接触を間隙cによって防止することができる。よって、ケーシング8と碍子7とが片当たりしてケーシング8による弾性部材14に対する押圧が不良となることを防止することができる。
【0076】
[第7の実施形態]
次に、本発明の第7の実施形態について図15を参照して説明する。図15は、本実施形態にかかる酸素センサの弾性部材とその周囲を示す分解断面図(軸方向に沿った断面図)である。なお、本実施形態にかかる酸素センサ1Fは、第1の実施形態にかかる酸素センサ1と同様の構成要素を備えている。よって、それら同様の構成要素には共通の符号を付すとともに、重複する説明を省略する。
【0077】
本実施形態は、酸素センサ1Fにおいて、弾性部材14Fの外径14fが弾性部材14Fの自由状態においてケーシング8の第2の大径部8bの内径8iよりも大きく設定されており、弾性部材14Fがケーシング8の第2の大径部8bに圧入されている点が第1の実施形態と異なる。この圧入は、弾性部材14Fが碍子7の嵌合部7bに組み付けられる前に行われる。なお、図15では、ケーシング8に圧入された状態の弾性部材14Fを示してある。その他の部分は、第1の実施形態と同じである。
【0078】
以上説明した本実施形態の酸素センサ1Fによれば、弾性部材14Fがケーシング8の第2の大径部8bに圧入された状態で碍子7の嵌合部7bに取り付けられるので、碍子7の嵌合部7bへの弾性部材14Fの取り付けにおいて、弾性部材14Fの取り付け位置がずれることを防止することができるので、弾性部材14Fを碍子7の嵌合部7bに容易に嵌合させることができる。
【0079】
なお、弾性部材は、碍子7の嵌合部7bへの組み付け前に、ケーシング8に溶接や接着などによって固定してもよい。この場合には、弾性部材の外径の大きさにかかわらず、弾性部材を碍子7の嵌合部7bに容易に嵌合させることができ、弾性部材の取り付け位置のずれを防止することができる。また、このように、弾性部材を、碍子7の嵌合部7bへの組み付け前に、ケーシング8に溶接や接着などによって固定する構成にあっては、碍子7における弾性部材の取り付け部は、嵌合部7bでなく、単なる平面等であっても良い。
【0080】
[第8の実施形態]
次に、本発明の第8の実施形態について図16ないし図18を参照して説明する。図16は、本実施形態にかかる酸素センサの弾性部材およびその周囲を示す断面図(軸方向に沿った断面図)、図17は、本実施形態にかかる酸素センサの別例を示す断面図(軸方向に沿った断面図)、図18は、本実施形態にかかる酸素センサの別例を示す断面図(軸方向に沿った断面図)である。なお、本実施形態にかかる酸素センサ1Gは、第2の実施形態にかかる酸素センサ1Aと同様の構成要素を備えている。よって、それら同様の構成要素には共通の符号を付すとともに、重複する説明を省略する。
【0081】
本実施形態は、酸素センサ1Gが弾性部材14Aの下方に受動部材41を備える点が第2の実施形態に対して異なる。その他の部分は、第2の実施形態と同じである。
【0082】
受動部材41は、円環状の板部材であり、碍子7の嵌合部7bに外嵌している。この受動部材41は、弾性部材14Aと碍子7とに当接した状態で弾性部材14Aと碍子7との間に介在し、弾性部材14Aと碍子7との間の荷重伝達をする。受動部材41は、弾性部材14Aとの当接面積よりも碍子7との当接面積の方が広くなっている。受動部材41は、例えば金属製であり、金属としては、例えばステンレスが好適である。
【0083】
以上説明した酸素センサ1Gでは、その組立において、弾性部材14Aが嵌合部7bに嵌合した状態で、ケーシング8を碍子7に外挿してホルダ4(図1参照)に組み付ける時に、ケーシング8の押圧よって弾性部材14Aにかかる荷重が受動部材41を介して碍子7に伝達される。このとき、受動部材41においては弾性部材14Aとの当接面積よりも受動部材41との当接面積の方が広くなっているので、弾性部材14Aから碍子7に伝達される荷重は、受動部材41が設けられていない場合に比べてより広い範囲に分散されて碍子7に伝達される。よって、より均一に碍子7に軸方向に沿った荷重を加えることができる。
【0084】
なお、本実施形態では、受動部材41を第2の実施形態で説明した酸素センサ1Aへ適用した例を示したが、これに限ることなく、受動部材41を、第1の実施形態で説明した酸素センサ1や、第3〜第7の実施形態で説明した酸素センサ1B〜1Fに適用して良い。ここで、図18に、受動部材41を第3の実施形態で説明した酸素センサ1Bに適用した場合の酸素センサ1Hを示し、図19に、受動部材41を第4の実施形態で説明した酸素センサ1Cに適用した場合の酸素センサ1Jを示す。図18に示す酸素センサ1Hにあっては、開口部14bが受動部材41を介して碍子の平面7nに対向した状態となるので、ケーシング8に押圧された弾性部材14Cにおける開口部14bの縁が碍子7の平面7nに当接することが受動部材41によって防止され、開口部14bの縁によって碍子7の平面7nが抉られることを防止することができる。
【0085】
[第9の実施形態]
次に、本発明の第9の実施形態について図19を参照して説明する。図19は、本実施形態にかかる酸素センサの要部断面図(軸方向に沿った断面図)である。なお、本実施形態にかかる酸素センサ1Kは、第1の実施形態にかかる酸素センサ1と同様の構成要素を備えている。よって、それら同様の構成要素には共通の符号を付すとともに、重複する説明を省略する。
【0086】
本実施形態は、酸素センサ1Kにおいて碍子7の下方に受動部材51が設けられている点が第1の実施形態に対して異なる。その他の部分は、第1の実施形態と同じである。
【0087】
受動部材51は、円環状の板部材であり、検出素子2に外挿されている。この受動部材51は、碍子7(詳しくは下端面7a)とホルダ4の位置決め面4cとに当接した状態で碍子7と位置決め面4cとの間に介在し、碍子7と位置決め面4cとの間の荷重伝達をする。受動部材51は、碍子7との当接面積よりも位置決め面4cとの当接面積の方が広くなっている。受動部材51は、例えば金属製であり、金属としては、例えばステンレスが好適である。
【0088】
以上説明した酸素センサ1Kでは、ケーシング8による押圧よって弾性部材14を介して碍子7にかかる荷重が、碍子7から受動部材51を介してホルダ4の位置決め面4cに伝達される。このとき、受動部材51では、碍子7との当接面積よりも位置決め面4cとの当接面積の方が広くなっているので、碍子7から位置決め面4cに伝達される荷重は、受動部材51が設けられていない場合に比べて、より広い範囲に分散されて位置決め面4cに伝達される。よって、より均一に位置決め面4cに軸方向に沿った荷重を加えることができる。
【0089】
また、碍子7と位置決め面4cとの間に受動部材51が介在しているので、セラミックス製の碍子7の下端面7aの平坦度が低い場合であっても、碍子7が位置決め面4cに片当たりすることを受動部材51によって防止することができる。
【0090】
なお、本実施形態では、受動部材51を第1の実施形態の酸素センサ1へ適用した例を示したが、これに限ること無く、受動部材51を、第2ないし第8のいずれの酸素センサ1A〜1Jに適用して良い。
【0091】
[第10の実施形態]
次に、本発明の第10の実施形態について図20を参照して説明する。図20は、本実施形態にかかる酸素センサの要部断面図である。なお、本実施形態にかかる酸素センサ1Lは、第1の実施形態にかかる酸素センサ1と同様の構成要素を備えている。よって、それら同様の構成要素には共通の符号を付すとともに、重複する説明を省略する。
【0092】
本実施形態の酸素センサ1Lでは、碍子7の軸方向の途中部位に、弾性部材14が嵌合した円錐形状の嵌合部7cが形成されている。即ち、嵌合部7cは、第1の実施形態の嵌合部7cよりも、碍子7の軸方向でホルダ4により近い位置に形成されるとともに、車両の排気管30により近い位置に形成されている。そして、ケーシング8の第2の大径部8bと第2の小径部8fとの連設部に、嵌合部7cから所定間隔をおいて離間する円錐部8cが形成されている。これら嵌合部7cおよび円錐部8cは、共にホルダ4側(軸方向の一方側)へ向うにつれて拡径している。
【0093】
そして、これらの嵌合部7cの外面と、円錐部8cの内面との間に弾性部材14が圧縮状態で介在しており、弾性部材14が、碍子7を復元力によってホルダ4の位置決め面4cに押し付けて、位置決め面4cとによって碍子7を挟持している。詳しくは、ケーシング8に押圧された弾性部材14は、碍子7に対して軸方向および径方向に押圧力(反発力)を作用させている。なお、他の部分は、第1の実施形態と同様である。
【0094】
このような構成の酸素センサ1Lでも、第1の実施形態の酸素センサ1と同様の効果が得られる。
【0095】
なお、本実施形態では、上記構成(嵌合部7c、円錐部8c)を第1の実施形態の酸素センサ1に適用した例を説明したが、これに限ること無く、上記構成を第2ないし第9の実施形態のいずれの酸素センサ1A〜1Kに適用しても良い。
【0096】
なお、本発明は、次のような別の実施形態に具現化することができる。
【0097】
(1)上記各実施形態において、弾性部材として、軸方向視が略C字状のものを例に説明したが、弾性部材としては、図21に示すように、軸方向視が円環状の弾性部材14Mであっても良い。この場合には、碍子7に対してその周方向にほぼ均等に軸方向の荷重を加えられるので、碍子7を確実に支持することができる。
【0098】
(2)上記各実施形態において、弾性部材として、周方向に沿った断面が略C字状のものを例に説明したが、これに限るものでは無い。弾性部材としては、中空状で少なくとも軸方向に変形可能な形状であれば良く、例えば、図22に示すように、周方向に沿った断面が円環状の弾性部材14Nや、図23に示すように、周方向に沿った断面が略菱形に形成されるとともに開口部14bを有する弾性部材14Nであって良い。更には、弾性部材としては、図24に示すように、周方向に沿った断面が平坦部14gを有する三角形状の弾性部材14Q、図25に示すように、周方向に沿った断面が平坦部14gと円弧部14hと開口部14bとからなる形状の弾性部材14Rであって良い。これら弾性部材14Q,14Rでは、円弧部14gを碍子7の平面7nに当接させることにより、碍子7に対してその軸方向に弾性部材14Q,14Rの押圧力をより均一に伝達することができる。
【0099】
(3)上記実施形態において、碍子7におけるホルダ4側の端部を支持している支持部として、ホルダ4に形成された位置決め面4cを例に説明したが、支持部としては、前記ホルダの一端部にホルダと別部品として設けられるものであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかる酸素センサの断面図(軸方向に沿った断面図)。
【図2】本発明の第1の実施形態にかかる酸素センサの要部断面図(軸方向に沿った断面図)。
【図3】本発明の第1の実施形態にかかる酸素センサの弾性部材を示す図で、(a)は平面図、(b)は周方向に垂直な断面図。
【図4】本発明の第1の実施形態にかかる開口部が180度開口した弾性部材の周方向に垂直な断面図。
【図5】本発明の第1の実施形態にかかる開口部が120度開口した弾性部材の周方向に垂直な断面図。
【図6】本発明の第1の実施形態にかかる開口部が60度開口した弾性部材の周方向に垂直な断面図。
【図7】本発明の第1の実施形態にかかる酸素センサの弾性部材およびその周囲を示す分解断面図。
【図8】本発明の第1の実施形態にかかる酸素センサの弾性部材の変形特性を示す特性図。
【図9】本発明の第2の実施形態にかかる酸素センサの弾性部材およびその周囲を示す断面図(軸方向に沿った断面図)。
【図10】本発明の第3の実施形態にかかる酸素センサの弾性部材およびその周囲要部断面図(軸方向に沿った断面図)
【図11】本発明の第4の実施形態にかかる酸素センサの弾性部材およびその周囲を示す断面図(軸方向に沿った断面図)。
【図12】本発明の第5の実施形態にかかる酸素センサの弾性部材とホルダとを示す分解断面図(軸方向に沿った断面図)。
【図13】本発明の第5の実施形態にかかる酸素センサの弾性部材とホルダとを示す分解平面図。
【図14】本発明の第6の実施形態にかかる酸素センサの弾性部材とその周囲を示す分解断面図(軸方向に沿った断面図)。
【図15】本発明の第7の実施形態にかかる酸素センサの弾性部材とその周囲を示す分解断面図(軸方向に沿った断面図)。
【図16】本発明の第8の実施形態にかかる酸素センサの弾性部材およびその周囲を示す断面図(軸方向に沿った断面図)。
【図17】本発明の第8の実施形態にかかる酸素センサの別例を示す断面図(軸方向に沿った断面図)。
【図18】本発明の第8の実施形態にかかる酸素センサの別例を示す断面図(軸方向に沿った断面図)。
【図19】本発明の第9の実施形態にかかる酸素センサの要部断面図(軸方向に沿った断面図)。
【図20】本発明の第10の実施形態にかかる酸素センサの要部断面図(軸方向に沿った断面図)。
【図21】本発明の別の実施形態にかかる弾性部材の平面図。
【図22】本発明の別の実施形態にかかる弾性部材の軸方向に沿った断面図。
【図23】本発明の別の実施形態にかかる弾性部材の軸方向に沿った断面図。
【図24】本発明の別の実施形態にかかる弾性部材の軸方向に沿った断面図。
【図25】本発明の別の実施形態にかかる弾性部材の軸方向に沿った断面図。
【符号の説明】
【0101】
1,1A,1B,1C,1D,1E,1F,1G,1H,1J,1K,1L…酸素センサ(ガスセンサ)
2…検出素子
4…ホルダ
4c…位置決め面(支持部)
6…端子
7…碍子(絶縁体)
7b,7c…嵌合部
7h…上端部(端部)
7j…第1の大径部
7k…第1の小径部
7m…外周面
7n…平面
7p…嵌合部の軸心
7q…第1の小径部の外径
8…ケーシング
8b…第2の大径部
8e…対向面
8f…第2の小径部
8g…段差
14,14A,14B,14C,14D,14F,14M,14N,14Q,14R…弾性部材
14c…弾性部材の軸心
14e…弾性部材の内径
41…受動部材
51…受動部材
c…間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定ガスに含まれる特定ガス成分を検出し検出結果を接点部から電気信号で出力する検出素子と、
前記検出素子が挿通されている筒状のホルダと、
前記ホルダの一端部側に配置され前記接点部に接続されている端子と、
前記ホルダの一端部側に配置され、前記端子を支持している絶縁体と、
前記ホルダに固定され、前記絶縁体を覆っているケーシングと、
前記ホルダの一端部に設けられた支持部と、
前記ケーシングの内面と前記絶縁体の外面との間に圧縮状態で介在し、前記絶縁体を復元力によって前記支持部に押し付けて、前記支持部とによって前記絶縁体を挟持している中空状の弾性部材と、
を備えることを特徴とするガスセンサ。
【請求項2】
前記絶縁体は、前記ホルダ側とは反対側の端部に略円筒状の外周面を有し、
前記ケーシングは、前記絶縁体を覆う筒状に形成されており、
前記弾性部材は、前記絶縁体の前記外周面と前記ケーシングの内周面との間の介在していることを特徴とする請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項3】
前記検出素子は、棒状に形成され、
前記絶縁体は、前記ホルダ側とは反対側の端部に前記検出素子の軸心に対して垂直な平面を有し、
前記ケーシングは、前記平面に対向する対向面を有し、
前記弾性部材は、前記平面と前記対向面との間に介在していることを特徴とする請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項4】
前記絶縁体は、前記ホルダ側とは反対側の端部に、環状の嵌合部を有しており、
前記弾性部材は、前記嵌合部に外嵌する形状に形成されて、前記嵌合部に外嵌した状態で前記嵌合部を押圧することで前記絶縁体を前記支持部に向けて押圧していることを特徴とする請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項5】
前記嵌合部の軸心と前記弾性部材の軸心とが一致していることを特徴とする請求項4に記載のガスセンサ。
【請求項6】
前記絶縁体は、第1の大径部とこの第1の大径部に連設され前記第1の大径部よりも小径に形成された第1の小径部とを有し、
前記嵌合部は、前記第1の大径部と前記第1の小径部との連設によって形成された段差によって形成され、
前記弾性部材は、前記嵌合部を構成する前記第1の小径部に外嵌しており、当該弾性部材は、自由状態での内径が前記第1の小径部の外径よりも小さいことを特徴とする請求項4に記載のガスセンサ。
【請求項7】
前記絶縁体は、第1の大径部とこの第1の大径部に連設され前記第1の大径部よりも小径に形成された第1の小径部とを有し、
前記嵌合部は、前記第1の大径部と前記第1の小径部との連設によって形成された段差によって形成されており、
前記ケーシングは、筒状に形成されるとともに、第2の大径部とこの第2の大径部に連設され前記第2の大径部よりも小径に形成された第2の小径部とを有し、前記第2の大径部と第2の小径部との連設によって形成された段差が前記弾性部材に当接しており、
前記第1の小径部は、前記第2の小径部に間隙をもって挿入可能に形成されていることを特徴とする請求項4に記載のガスセンサ。
【請求項8】
前記弾性部材と前記絶縁体とに当接した状態で前記弾性部材と前記絶縁体との間に介在し、前記弾性部材と前記絶縁体との間の荷重伝達をする受動部材を備え、この受動部材は、前記弾性部材との当接面積よりも前記絶縁体との当接面積の方が広いことを特徴とする請求項4に記載のガスセンサ。
【請求項9】
前記絶縁体と前記支持部とに当接した状態で前記絶縁体と前記支持部との間に介在し、前記絶縁体と前記支持部との間の荷重伝達をする受動部材を備え、この受動部材は、前記絶縁体との当接面積よりも前記支持部との当接面積の方が広いことを特徴とする請求項4又は8に記載のガスセンサ。
【請求項10】
前記弾性部材は、軸方向視で略C字状に形成されていることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか一項に記載のガスセンサ。
【請求項11】
前記弾性部材は、軸方向視で円環状に形成されていることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか一項に記載のガスセンサ。
【請求項12】
前記弾性部材は、周方向に垂直な断面が略C字状に形成されていることを特徴とする請求項10又は11に記載のガスセンサ。
【請求項13】
前記弾性部材は、周方向に垂直な断面が環状に形成されていることを特徴とする請求項10又は11に記載のガスセンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2008−249698(P2008−249698A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−48624(P2008−48624)
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】