説明

ガスセンサ

【課題】ブリッジ回路を用いて被検知ガスの濃度を検出するガスセンサの回路構成を簡素化するとともに被検知ガスを広範囲に亘り精度良く検出することを目的とする。
【解決手段】開閉可能な蓋29を有するケース30の内部に配置され、被検知ガスの酸化反応により素子の温度を上昇させ、その温度の変化に応じてその特性値が変化する接触燃焼型センサ素子23と、被検知ガス雰囲気の温度の変化に応じてその特性値が変化する熱伝導型センサ素子24と、固定抵抗25,26と、をブリッジ接続してガスセンサを構成する。被検知ガスの濃度が所定基準値よりも高いときは、被検知ガスを接触燃焼型センサ素子23に接触させず、所定基準値以下のときは被検知ガスを接触燃焼型センサ素子23に接触させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブリッジ回路を用いて被検知ガスの濃度を検出するガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば水素ガスの濃度を検出する水素ガスセンサにおいては、水素ガスの濃度に応じて接触燃焼型センサと熱伝導型センサとを切替えて使用するという技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図4は、従来の水素ガスセンサの概略構成を示す図面である。水素ガスセンサは、接触燃焼型センサ10と、熱伝導型センサ11と、を有し、接触燃焼型センサ10及び熱伝導型センサ11は、それぞれ別々にブリッジ回路が構成されている。後述するように、水素ガスの濃度が所定基準値以下のときは、接触燃焼型センサ10を構成するブリッジ回路の出力に基づいてガス濃度を検出し、水素ガスの濃度が所定基準値より高いときは、熱伝導型センサ11を構成するブリッジ回路の出力に基づいてガス濃度を検出する。そのようにして、水素ガスの濃度に応じて接触燃焼型センサ10と熱伝導型センサ11とを切替えて使用することにより、水素ガスの濃度を全範囲に亘って検出できる。
【0004】
図5は、接触燃焼型センサ10の概略構成を示す図面である。接触燃焼型センサ10は、水素ガスと接触すると水素ガスの酸化反応を引き起こし、その反応熱によって生じる素子の温度上昇に応じて例えば抵抗値などの電気特性値が変化する、センサ素子12と、補償素子13と、固定抵抗14,15をブリッジ接続して構成される。水素ガスが存在しない状況下においては、ブリッジ回路は平衡状態になっていて、センサ素子12と補償素子13との接続点S1と、固定抵抗14,15の接続点S2と、の間に電位差は生じない。
【0005】
水素ガスがセンサ素子12に接触して水素ガスの酸化反応が起こると、その酸化反応で発生した熱によってセンサ素子12の温度が上昇する。これにより、センサ素子12の特性値が変化してブリッジ回路の平衡が崩れ、S1とS2との間に電位差が生じる。水素ガスの濃度が高くなるにつれて、水素ガスの酸化反応によって生じる熱は大きくなってセンサ素子12の温度は上昇する。そうすると、センサ素子12の特性値の変化も大きくなってS1とS2との間の電位差も大きくなる。水素ガスの濃度がある程度になるまでは、水素ガス濃度に応じてブリッジ回路の出力も大きくなるという関係が成立する。その関係を利用して、ある時点におけるブリッジ回路の出力に対応した水素濃度を求めることができる。
【0006】
水素ガスの濃度がさらに高くなると、酸化反応に必要な酸素が不足する。そうすると、水素ガスがセンサ素子12に接触しても、水素ガスの酸化反応は起こりにくくなる。水素ガスの酸化反応の量が減少すると、センサ素子10の温度も上昇せず、水素ガスの濃度に応じてブリッジ回路の出力が大きくなるという関係は成り立たなくなる。そうすると、水素ガスの濃度がある程度よりも高いときにおいては、接触燃焼型センサ10を用いて水素ガス濃度を検出するのは困難となる。
【0007】
そのような場合は、使用するセンサを接触燃焼型センサ10から熱伝導型センサ11に切り替えて水素ガスの濃度を検出している。図6は、熱伝導型センサ11の概略構成を示す図面である。熱伝導型センサ11は、水素ガス雰囲気の温度の変化に応じて例えば抵抗値などの電気特性値が変化するセンサ素子16と、水素ガスに接触しないように容器で覆われた補償素子17と、固定抵抗18,19をブリッジ接続して構成される。水素ガスが存在しない状況下においては、ブリッジ回路は平衡状態になっていて、センサ素子16と補償素子17との接続点S3と、固定抵抗18,19の接続点S4と、の間に電位差は生じない。
【0008】
水素ガスがセンサ素子16に接触すると、センサ素子16が有する熱量は水素ガスに奪われて、水素ガス中に放熱される。この熱の移動によって、センサ素子16の温度は低下し、水素ガスの温度は上昇する。これにより、センサ素子16の特性値も変化してブリッジ回路の平衡が崩れ、S3とS4との間に電位差が生じる。水素ガスの濃度が高くなるにつれて、センサ素子16の放熱量は大きくなってセンサ素子16の温度はより低下する。そうすると、センサ素子16の特性値の変化も大きくなってS3とS4との間の電位差も大きくなる。すなわち、水素ガスの濃度に応じてブリッジ回路の出力も大きくなるという関係が成立する。その関係を利用して、ある時点におけるブリッジ回路の出力に対応した水素ガスの濃度を求めることができる。
【0009】
【特許文献1】特開2004−61214号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
水素ガスの検出可能な濃度範囲を広くするためには、上記のように水素ガスと接触すると水素ガスの酸化反応を引き起こし、その反応熱によって生じる素子の温度上昇に応じて電気特性値が変化するセンサ素子を含むブリッジ回路と、水素ガス雰囲気の温度の変化に応じて電気特性値が変化するセンサ素子を含むブリッジ回路と、を水素ガスの濃度に応じて切り替えて用いていた。このような構成では、それぞれのブリッジ回路を構成するために必要な素子数が多くなり、製造コストが増大するという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、第1の回路素子と第2の回路素子との直列接続部と、第3の回路素子と第4の回路素子との直列接続部と、が互いに並列に接続されてブリッジ回路が構成され、前記第1から第4の回路素子のうちの何れかの特性値が変化したときに、前記第1の回路素子と前記第2の回路素子との接続点と、前記第3の回路素子と前記第4の回路素子との接続点と、の間に生じる電気的信号に基づいて被検知ガスの濃度を検出するガスセンサにおいて、前記被検知ガスの酸化反応により素子の温度を上昇させ、その温度の変化に応じてその特性値が変化するセンサ素子であって、前記ブリッジ回路の前記第1の回路素子として構成される第1のセンサ素子と、前記被検知ガス雰囲気の温度の変化に応じてその特性値が変化するセンサ素子であって、前記第2から第4の回路素子のうちの何れか1つの回路素子として構成される第2のセンサ素子と、前記被検知ガスの濃度が所定基準値よりも高いときは、前記被検知ガスを前記第1のセンサ素子に接触させず、所定基準値以下のときは前記被検知ガスを前記第1のセンサ素子に接触させる、被検知ガス接触手段と、を備えることを特徴とする。
【0012】
かかる構成によれば、従来のように別々にブリッジ回路を構成しなくて済むため、回路を簡素化することができると共に、第1のセンサ素子と第2のセンサ素子が組み込まれた1つのブリッジ回路は、被検知ガスの濃度が所定基準値よりも高いときは熱伝導型センサとして機能し、所定基準値以下のときは接触燃焼型センサとして機能することができる。これにより、ガスセンサの回路構成を簡素化することと被検知ガスの濃度を広範囲に亘って精度良く検出することとの両立を達成できる。また、本発明のガスセンサであって、被検知ガス接触手段には、開閉可能な蓋を有し、第1のセンサ素子を格納するケースが含まれることが好適である。
【0013】
本発明のガスセンサであって、センサ使用開始時は、被検知ガスを前記第1のセンサ素子に接触させないことが好適である。かかる構成によれば、センサの検出精度をより向上させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ブリッジ回路を用いて被検知ガスの濃度を検出するガスセンサの回路構成を簡素化することと被検知ガスの濃度を広範囲に亘って精度良く検出することとの両立を達成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
[構成]
図1は、本実施形態に係る水素ガスセンサの概略構成を示す図面である。水素ガスセンサは、ガス検知部20と、制御部21と、蓋開閉装置22と、を備える。ガス検知部20は、接触燃焼型センサ素子23と、熱伝導型センサ素子24と、固定抵抗25,26がブリッジ接続されて構成される。そのブリッジ回路は電源27に接続されている。水素ガスが存在しない状況下においては、ブリッジ回路は平衡状態になっていて、接触燃焼型センサ素子23と熱伝導型センサ素子24との接続点S5と、固定抵抗25,26の接続点S6と、の間に電位差は生じない。S5とS6との間の電位差は、制御部21で測定される。制御部21は、ブリッジ回路からの出力に基づいて水素ガス濃度を検出する。その水素ガス濃度検出方法については後述する。
【0016】
接触燃焼型センサ素子23は、例えばPtなどの金属材料で構成されている。接触燃焼型センサ素子23は、水素ガスの酸化反応を促す酸化触媒28で覆われ、その反応熱によって素子23の温度が変化するとその抵抗値も変化する。本実施形態においては、センサ素子23は、金属材料で構成されているが、これに限らず、センサ素子23は、その温度の変化に応じて例えば抵抗値などの特性が変化する材料で構成することができる。接触燃焼型センサ素子23は、開閉可能な蓋29を有するケース30の内部に配置されている。蓋29は、蓋開閉装置22に接続され、蓋開閉装置22は制御部21に接続されている。蓋開閉装置22は、制御部21からの制御信号に基づいて蓋29を移動させ、ケース30の開口部を蓋29で覆ってケース30の内部を密閉したり、開放したりできる。
【0017】
熱伝導型センサ素子24は、例えばPtなどの金属材料で構成されている。熱伝導型センサ素子24は、水素ガスの酸化反応を引き起こさない不活性触媒31で覆われ、水素ガス雰囲気の温度が変化して素子24の温度が変化するとその抵抗値も変化する。本実施形態においては、センサ素子24は、金属材料で構成されているが、これに限らず、センサ素子24は、その温度の変化に応じて例えば抵抗値などの特性が変化する材料で構成することができる。また、本実施形態においては、センサ素子24は不活性触媒31で覆われているが、不活性触媒31を設けない態様とすることもできる。
【0018】
水素ガスが存在しない環境下においては、ブリッジ回路を平衡状態にするために、センサ素子23,24の温度抵抗係数などの特性は同一にしておくことが好ましい。センサ素子23,24の特性が異なっていても、水素ガスが存在しない環境下において、ブリッジ回路が平衡状態にされていればよく、例えば、固定抵抗25,26のうちの何れかを可変抵抗とし、水素ガスが存在しない環境下ではブリッジ回路が平衡状態になるようにその抵抗値を調整することとしてもよい。
【0019】
[接触燃焼型モード]
水素ガスの濃度が所定基準値α以下のときは、制御部21は、ケース30の蓋29を開状態にする。この状態で、制御部21がブリッジ回路の出力に基づいて水素ガスの濃度を検出することを「接触燃焼型モード」と呼ぶ。
【0020】
接触燃焼型モードのときは、水素ガスはケース30の内部に流入して接触燃焼型センサ素子23と接触する。そうすると、水素ガスの酸化反応が起こり、その酸化反応で発生した熱によって接触燃焼型センサ素子23の温度が上昇し、その抵抗値も上昇する。水素ガスは熱伝導型センサ素子24に接触しても酸化反応は起こらず、接触燃焼型センサ素子23の抵抗値変化に応じてブリッジ回路のS5とS6との間に電位差が生じる。水素ガスの濃度が高くなるにつれて、水素ガスの酸化反応によって生じる熱は大きくなり、接触燃焼型センサ素子23の温度は上昇する。そうすると、接触燃焼型センサ素子23の抵抗値も大きくなってS5とS6との間の電位差も大きくなる。水素ガス濃度がある程度になるまでは、水素ガスに応じてブリッジ回路の出力も大きくなるという関係が成立する。
【0021】
図2は、接触燃焼型モードにおける、水素ガス濃度とブリッジ出力との関係を示すグラフである。図2に示される、水素ガス濃度とブリッジ出力との関係は予め実験等によって求めておき、そのデータは制御部21に記憶される。なお、データの記憶先は制御部21に限らず、他の装置が記憶していてもよい。
【0022】
水素ガス濃度がある程度になるまでは、水素ガスの濃度に応じてブリッジ回路の出力も大きくなるという関係が成立しているが、水素ガスの濃度が図2に示すグラフの頂点である濃度xを越えて更に高くなると、水素ガスの酸化反応に必要な酸素が次第に不足する。そうすると、水素ガスが接触燃焼型センサ素子23に接触しても、水素ガスの酸化反応は起こりにくくなる。
【0023】
酸化反応量が減少すると、センサ素子23の温度も上昇せず、水素ガスの濃度に応じてブリッジ回路の出力が大きくなるという関係は成り立たなくなる。水素ガスの濃度がxより高いときにおいては、接触燃焼型モードで水素ガスの濃度を検出するのは困難となる。
【0024】
本実施形態においては、出力が低下し始める濃度xを、検出モードを切り替えるための所定基準値αとしている。制御部21は、水素ガスが濃度xを越えたと判断したときは、後述の「熱伝導型モード」に切り替える。図2のグラフのハッチングされた領域が、本実施形態に係る接触燃焼型モードによって検出される水素ガスの濃度範囲を示す。制御部21は、ある時点におけるブリッジ回路の出力を、図2に示される、水素ガス濃度とブリッジ出力との関係に代入して、その時点における水素ガスの濃度を求める。
【0025】
[熱伝導型モード]
制御部21は、水素ガスの濃度が所定基準値αを越えたと判断したときは、ケース30の蓋29を閉状態にし、ケース30の内部を密閉空間にする。この状態で、制御部21がブリッジ回路の出力に基づいて水素ガスの濃度を検出することを「熱伝導型モード」と呼ぶ。上述したように、本実施形態においては、所定基準値αは濃度xとされている。
【0026】
かかる熱伝導型モードのときは、ケース30の内部に配置された接触燃焼型センサ素子23は水素ガスと接触しないため、接触燃焼型センサ素子23は水素ガスによって冷却されることはない。一方、熱伝導型センサ素子24には水素ガスが接触する。水素ガスは、空気に比べて熱伝導率が非常に大きく、その冷却効果も大きい。熱伝導型センサ素子24は水素ガスに接触すると、センサ素子24が有する熱は水素ガスに奪われて、水素ガス中に放出される。この熱の移動によって、熱伝導型センサ素子24の温度は低下し、その抵抗値も低下する。そうすると、熱伝導型センサ素子24の抵抗値変化に応じてS5とS6との間に電位差が生じる。水素ガスの濃度が高くなるにつれて、熱伝導型センサ素子24が水素ガスに奪われる熱は大きくなってセンサ素子24の温度はより低下する。そうすると、センサ素子24の抵抗値の低下も大きくなってブリッジ回路の出力も大きくなるという関係が成立する。
【0027】
図3は、熱伝導型モードにおける、水素ガス濃度とブリッジ出力との関係を示すグラフである。図3に示される、水素ガス濃度とブリッジ出力との関係は予め実験等によって求めておき、そのデータは制御部21に記憶される。なお、データの記憶先は制御部21に限らず、他の装置が記憶していてもよい。図3のグラフのハッチングされた領域が、本実施形態に係る熱伝導型モードによって検出される水素ガスの濃度範囲を示す。制御部21は、ある時点におけるブリッジ回路の出力を、図3に示される、水素ガス濃度とブリッジ出力との関係に代入して、その時点における水素ガスの濃度を求める。制御部21は、水素ガス濃度がx以下であると判断したときは、上述の接触燃焼型モードに切り替える。
【0028】
[作用・効果]
本実施形態においては、接触燃焼型センサ素子23と熱伝導型センサ素子24とが1つのブリッジ回路に組み込まれ、水素ガスの濃度に応じて濃度検出モードを切り替えて、水素ガスの濃度を検出している。かかる構成によれば、従来のように別々にブリッジ回路を構成しなくて済むため、回路構成が簡素化される。
【0029】
また、本実施形態においては、水素ガス濃度が所定基準値α以下のときは、接触燃焼型センサ素子23が格納されているケース30の蓋29を開状態にして水素ガスが接触燃焼型センサ素子23に接触するようにしている。一方、水素ガス濃度が所定基準値αを超えるときは、ケース30の蓋29を閉状態にして水素ガスが接触燃焼型センサ素子23に接触しないようにしている。これにより、水素ガス濃度が所定基準値α以下のときは、ガスセンサを接触燃焼型センサとして機能させ、所定基準値αを超えるときは、ガスセンサを熱伝導型センサとして機能させることができる。
【0030】
本実施形態の構成によれば、現時点における水素ガスの濃度が如何なる濃度であっても、また、水素ガスが低濃度から高濃度に変化する場合であっても、反対に高濃度から低濃度に変化する場合であっても、現時点における水素ガスの濃度を精度良く検出できる。そうすると、ガスセンサの回路構成を簡素化することと水素ガスの濃度を広範囲に亘って精度良く検出することとの両立を達成できる。
【0031】
なお、本実施形態においては、接触燃焼型センサ素子23は、開閉可能な蓋29を有するケース30の内部に配置されているが、これに限らず、水素ガス濃度が所定基準値α以下のときは、水素ガスが接触燃焼型センサ素子23に接触するようにし、水素ガス濃度が所定基準値αを超えるときは、水素ガスが接触燃焼型センサ素子23に接触しないようにする、被検知ガス接触手段を有するものであればよい。
【0032】
また、例えば、接触燃焼型センサ素子23と熱伝導型センサ素子24の熱伝導率や温度抵抗係数などの特性値が略同一であるような場合において、ガスセンサ使用開始時にケース30の蓋29を開状態にして「接触燃焼型モード」とすると、そのときの水素ガス濃度を精度良く検出できないおそれがある。その理由を以下に説明する。「接触燃焼型モード」のとき、濃度x以上においては、ブリッジ回路の出力が低下していく。このため、図2に示すように、ブリッジ回路の出力がyのときの水素ガス濃度が、x1なのかx2なのかを判別できない。そのため、実際には高濃度の水素ガスが存在しているにも関わらず、そのときの水素ガス濃度を正確に検出することが困難になる。
【0033】
そこで、ガスセンサ使用開始時には、制御部21は、ケース30の蓋29を閉状態にし、「熱伝導型モード」で水素ガスの検出を行うことが好ましい。かかる構成によれば、例えば、センサ使用開始時の水素ガス濃度が、出力が低下し始める濃度xを超えるような高い濃度であっても、そのときの水素ガス濃度を確実に検出できる。一方、例えば、センサ使用開始時の水素ガス濃度がx以下であるような場合には、そのときのブリッジ回路の出力に基づいて、センサ使用開始時の水素ガス濃度がx以下であると判断できる。本実施形態においては、所定基準値αの値をxとしているため、この場合は、検出モードを「熱伝導型モード」から「接触燃焼型モード」へ切り替える。そして、「接触燃焼型モード」によってそのときの水素ガスの濃度を検出できる。
【0034】
なお、本実施形態においては、水素ガス濃度の検出モードを切り替えるための所定基準値αの値を、出力が低下し始める濃度xとしているが、これに限らず、濃度xより低い濃度を所定基準値αとすることもできる。所定基準値αが濃度xより低い場合は、水素ガスの酸化反応によって生じる反応熱からガスセンサを保護することができる。
【0035】
例えば、水素ガスの濃度がxに達していなくても、熱伝導型モードによって水素ガス濃度を確実に検出できる程度まで達していたときには、そのときの水素ガス濃度を所定基準値αとすることもできる。熱伝導型モードにおいては、水素ガスが低濃度のときは、そのときの水素ガス濃度に対応するブリッジ出力も小さいため、接触燃焼型モードに比べて検出精度が低い。熱伝導型モードにおいては、水素ガス濃度が高くなるにつれてブリッジ出力も大きくなる。ブリッジ出力がある程度まで大きくなれば、水素ガスの濃度を確実に検出することが可能になる。
【0036】
また、接触燃焼型センサ素子23を覆う酸化触媒28を、ヒータなどによって触媒活性温度まで暖めることとしてもよい。これにより、接触燃焼型センサ素子23に接触する水素ガスの酸化反応を一層促すことができ、センサの検出感度を向上させることができる。接触燃焼型センサ素子23は、酸化触媒28を暖めるためのヒータ手段を有していればよく、電源27とは別の外部電源に接続されているヒータを有していてもよいし、センサ素子23自体をヒータコイルとして構成してもよい。また、ヒータなどによって加熱された接触燃焼型センサ素子23の温度が定常状態になっていて、水素ガスが存在しない環境下において、ブリッジ回路は平衡状態であることが好ましい。
【0037】
熱伝導型センサ素子24と雰囲気温度との温度差が殆ど無い場合には、水素ガスが熱伝導型センサ素子24に接触しても、センサ素子24と水素ガスとの間で熱の移動は起こりにくく、センサ素子24の温度変化が起こりにくい。そうすると、そのときの水素ガス濃度を検出することは困難となる。そこで、熱伝導型センサ素子24も、ヒータなどによって暖めて雰囲気温度よりも高温にしてもよい。センサ素子24と雰囲気温度との温度差を大きくすることで、水素ガスがセンサ素子24に接触したときに、センサ素子24と水素ガスとの間で熱の移動が確実に起こるようにすることができる。これにより、センサの検出感度を向上させることができる。熱伝導型センサ素子24は、センサ素子24を雰囲気温度よりも高温にするためのヒータ手段を有していればよく、電源27とは別の外部電源に接続されているヒータを有していてもよいし、熱伝導型センサ素子24自体をヒータコイルとして構成してもよい。また、ヒータなどによって加熱された熱伝導型センサ素子24の温度が定常状態になっていて、水素ガスが存在しない環境下において、ブリッジ回路は平衡状態であることが好ましい。
【0038】
なお、本実施形態においては、被検知ガスは水素ガスである例を中心に説明したが、これに限らず、接触燃焼型センサ素子23と接触すると発熱し、空気と熱伝導率が異なるガスについては、本実施形態に係るガスセンサによってそのガス濃度を検出できる。また、本実施形態においては、接触燃焼型センサ素子23は、酸化触媒28で覆われているが、これに限らず、接触燃焼型センサ素子23は、被検知ガスの酸化反応を促し、その反応熱がセンサ素子23に伝導されるものであればよい。例えば、センサ素子23を酸化触媒28で覆わずに、センサ素子23自体を被検知ガスの酸化反応を促すような材料で構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本実施形態に係る水素ガスセンサの概略構成図である。
【図2】本実施形態に係る接触燃焼型モードにおける、水素ガス濃度とブリッジ出力 との関係を示す図である。
【図3】本実施形態に係る熱伝導型モードにおける、水素ガス濃度とブリッジ出力と の関係を示す図である。
【図4】従来の水素ガスセンサの概略構成図である。
【図5】接触燃焼型センサの概略構成図である。
【図6】熱伝導型センサの概略構成図である。
【符号の説明】
【0040】
10 接触燃焼型センサ、11 熱伝導型センサ、12 センサ素子、13 補償素子
14,15 固定抵抗、16 センサ素子、17 補償素子、18,19 固定抵抗、
20 ガス検知部、21 制御部、22 蓋開閉装置、23 接触燃焼型センサ素子、
24 熱伝導型センサ素子、25,26 固定抵抗、27 電源、28 酸化触媒、2
9 蓋、30 ケース、31 不活性触媒。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の回路素子と第2の回路素子との直列接続部と、
第3の回路素子と第4の回路素子との直列接続部と、が互いに並列に接続されてブリッジ回路が構成され、
前記第1から第4の回路素子のうちの何れかの特性値が変化したときに、前記第1の回路素子と前記第2の回路素子との接続点と、前記第3の回路素子と前記第4の回路素子との接続点と、の間に生じる電気的信号に基づいて被検知ガスの濃度を検出するガスセンサにおいて、
前記被検知ガスの酸化反応により素子の温度を上昇させ、その温度の変化に応じてその特性値が変化するセンサ素子であって、前記ブリッジ回路の前記第1の回路素子として構成される第1のセンサ素子と、
前記被検知ガス雰囲気の温度の変化に応じてその特性値が変化するセンサ素子であって、前記第2から第4の回路素子のうちの何れか1つの回路素子として構成される第2のセンサ素子と、
前記被検知ガスの濃度が所定基準値よりも高いときは、前記被検知ガスを前記第1のセンサ素子に接触させず、所定基準値以下のときは前記被検知ガスを前記第1のセンサ素子に接触させる、被検知ガス接触手段と、を備えることを特徴とするガスセンサ。
【請求項2】
請求項1に記載のガスセンサであって、
前記被検知ガス接触手段は、開閉可能な蓋を有し、前記第1のセンサ素子を格納するケースを含むことを特徴とするガスセンサ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のガスセンサであって、
センサ使用開始時は、前記被検知ガスを前記第1のセンサ素子に接触させないことを特徴とするガスセンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−304291(P2008−304291A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−151198(P2007−151198)
【出願日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】