説明

ガスタービンプラントおよびガスタービンプラントの制御方法

【課題】燃空比を適切に保つことのできるガスタービンプラントを提供することを目的とする。
【解決手段】ガスタービンと、燃料及び空気が供給され、前記ガスタービンに燃焼ガスを供給する燃焼器と、該燃焼器への燃料供給量を調節する燃料弁と、該燃料弁を制御するコントローラとを備え、前記燃焼器は供給された燃料及び空気が導入されるメイン燃焼器と、該メイン燃焼器から燃焼ガスが供給され、該燃焼ガスを前記タービンに導入する尾筒と、前記コントローラにより制御され、供給された前記空気の一部を前記尾筒に導入するバイパス弁15とを備えたガスタービンプラントにおいて、前記コントローラは、前記バイパス弁15を、前記タービンの出力変動に応じた開閉速度で開閉することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電設備等に用いられるガスタービンおよびガスタービンプラントの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図9に示したものは、従来の一軸型コンバインドプラント(ガスタービンプラント)の概略構成図である。
図示の一軸型コンバインドプラントにおいて、1は大気を吸入して圧縮する圧縮機、2は燃料油が供給されると共に圧縮機1から圧縮された空気が燃焼用空気として供給される燃焼器、3は燃焼器2にて発生した燃焼ガスが導入されることにより回転するガスタービン、4はガスタービン3と連結した蒸気タービン、および5は発電機である。
以上のガスタービン3,圧縮機1,蒸気タービン4,発電機5が互いに連結軸6で連結されている。
【0003】
蒸気タービン4の駆動源は、排熱回収ボイラ8である。排熱回収ボイラ8は、ガスタービン3から排出される高温の排気ガスから熱を回収して蒸気を生成し、生成された蒸気を蒸気タービン4に導入する装置である。符号7は復水器であり、蒸気タービン4から排出された蒸気が導入され、該蒸気を凝縮させて排熱回収ボイラ8に戻す装置である。
符号9は燃料弁であり、燃焼器2への燃料供給量を調節する装置である。この燃料弁9は、コントローラ10によって制御される。
【0004】
燃焼器2は、図10に示す構成となっている。図10において、12はメイン燃焼器であり、13は燃焼器尾筒である。メイン燃焼器12には、燃料弁9を介して燃料が供給されるとともに、圧縮機1から空気14が供給されることで、燃料の燃焼が行われるようになっている。また、符号15はバイパス弁である。バイパス弁15はコントローラ10により制御されており、バイパス弁15の開度に応じて、圧縮機1からメイン燃焼器12と燃焼器尾筒13とに分配される空気の割合が決定されることになる。
【0005】
さて、上記の構成を有するコンバインドプラントにおいては、負荷が変動して電力系統周波数が変化したときに、発電出力を調節して周波数を安定させる必要がある。上記コントローラ10は、周波数を回復させる方向に燃料弁9を調節し、ガスタービン3の出力を制御している。
この制御を具体的に示す。図11において、符号S1はガバナCSO(Control Signal Output)信号であり、コントローラ10が燃料弁9に出力することにより、ガスタービン3の出力を制御する信号である。
通常時においては、符号aで示すように、周波数を一定に保つべく、コントローラ10がガバナCSO信号S1(すなわち、ガスタービン3の出力)を適宜変動させている。
【0006】
負荷が急激に減少した場合、回転数が急上昇して周波数が上昇する。このとき、符号b1に示すように、コントローラ10がガバナCSO信号S1を減少させて回転数の急上昇を防ぐ。
一方、負荷が急激に増大した場合、回転数が急減して周波数が低下する。このとき、符号c1に示すように、コントローラ10がガバナCSO信号S1を増大させて回転数の急減を防ぐ。
【0007】
しかしながら、ガバナCSO信号S1を急増させると、ガスタービン3の温度が急上昇するため、ガスタービン3のストレスとなって好ましくない。このため、コントローラ10は、図の符号S2に示すロードリミットCSO信号S2を予め算出している。ロードリミットCSO信号S2は、通常時においてはガバナCSO信号S1より所定のトラッキング幅だけ高い値をとっている。ガバナCSO信号S1の急増・急減時には、規定レートで上昇、下降するようになっている。コントローラ10は、ロードリミットCSO信号S2をガバナCSO信号S1の上限値としてガバナCSO信号S1を制限する。
したがって、ロードリミットCSO信号S2は、ガバナCSO信号S1の急減時には符号b1’で示すようにガバナCSO信号S1より下回ることないが、ガバナCSO信号S1の急増時には、符号c1’で示すようにガバナCSO信号S1よりも下回る。よって、ガバナCSO信号S1は、図の符号d1で示すように規定レート以上で上昇しないように制限される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、負荷の急減に続いて負荷の急増が起こった場合、ガバナCSO信号は急減に続いて急増するよう制御される。この状態を図12に示した。
負荷の急減時、ガバナCSO信号S1は、符号b2で示すように、制限されることなく下降する。ロードリミットCSO信号S2は、規定レートで下降する(符号b2’)。
その後、負荷の急増が発生した場合、ガバナCSO信号S1が急上昇する(符号c2)。ロードリミットCSO信号S2は、ガバナCSO信号S1よりも5%高い値となるまで規定レートで下降を続ける(符号b2’)。その後上昇に転換するが、ガバナCSO信号S1が急増しているので、規定レートで上昇する(符号c2’)。そして、ガバナCSO信号S1はロードリミットCSO信号S2を上限として、符号d2で示すように規定レート以上で上昇しないよう制限される。
【0009】
以上において、図12の場合、ガバナCSO信号S1の上昇に制限が働くまでのt2の間、燃料急増されるのでガスタービン3にストレスを与えてしまうこととなる。
【0010】
また、燃焼器2は、ガバナCSO信号S1に合わせて以下のように動作する。
負荷が減少した場合、回転数を抑えるべく、コントローラ10が燃料弁9を絞り制御して燃焼器12に供給される燃料の量を制限する。このとき、燃空比を保つため、コントローラ10はバイパス弁15を開き、バイパス弁15から燃焼器尾筒13に供給される空気量を増加させる。これによって燃焼器12に供給される空気量が減少するので、燃空比が保たれる。
しかしながら、従来のコンバインドプラントにおいてはバイパス弁15の開閉速度は一定に保たれているため、燃料弁9を急速に絞るのと合わせてバイパス弁15を絞ろうとしても、バイパス弁15の絞りが追従せず、過度の空気がメイン燃焼器12に吸入されてしまい、燃焼が不安定になる等の問題が生じる。
【0011】
本発明は上記事情に鑑みて成されたものであり、ガスタービンの負荷急増すなわち燃料量の急増を制限しガスタービンストレスを抑制することできるガスタービンプラント及びガスタービンプラントの制御方法を提供することを目的とする。また、燃空比を適切に保つことのできるガスタービンプラント及びガスタービンプラントの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載のガスタービンプラントは、ガスタービンと、燃料及び空気が供給され、前記ガスタービンに燃焼ガスを供給する燃焼器と、該燃焼器への燃料供給量を調節する燃料弁と、該燃料弁を制御するコントローラとを備え、前記燃焼器は供給された燃料及び空気が導入されるメイン燃焼器と、該メイン燃焼器から燃焼ガスが供給され、該燃焼ガスを前記タービンに導入する尾筒と、前記コントローラにより制御され、供給された前記空気の一部を前記尾筒に導入するバイパス弁とを備えたガスタービンプラントにおいて、前記コントローラは、前記バイパス弁を、前記タービンの出力変動に応じた開閉速度で開閉することを特徴とする。
【0013】
このガスタービンプラントにおいては、ガスタービンの出力変動が大きい場合、燃料弁を急激に開閉するのに合わせてバイパス弁を迅速に開閉することができる。
【0014】
請求項2に記載のガスタービンプラントは、請求項1に記載のガスタービンにおいて、前記コントローラは、前記ガスタービン出力に対応した前記バイパス弁の開度設定値を算出するバイパス弁開度算出部と、前記ガスタービン出力の変化幅を算出するとともに、該変化幅に応じて前記バイパス弁の開閉速度を算出する開閉速度算出部と、前記バイパス弁開度算出部において算出された前記バイパス弁の開度設定値の変化レートを前記開閉速度算出部において算出された開閉速度として前記バイパス弁を制御する第1変化率制限器とを備えていることを特徴とする。
【0015】
このガスタービンプラントにおいては、バイパス弁開度算出部において、ガスタービンの出力に対応してバイパス弁をどの程度の開度とすればよいかが算出される。バイパス弁の開度を、現在の状態から、バイパス弁の開度設定値が示す開度に変更する際、開閉スピードを与えるのが開閉速度算出部である。開閉速度算出部は、ガスタービン出力の変化幅が大きいほど、速い速度でバイパス弁が開閉されるように開閉速度を算出する。第1変化率制限器は、与えられた開閉速度に基づいて前記バイパス弁を制御する信号を出力する。
【0016】
請求項3に記載のガスタービンプラントは、請求項2に記載のガスタービンにおいて、前記開閉速度算出部は、前記ガスタービン出力が入力され、該ガスタービン出力の増減変化レートを所定値に変換した基準値を出力する第2変化率制限器と、該変化レート設定器から前記基準値が入力され、該基準値に対する前記ガスタービン出力の偏差量を算出する減算器と、前記偏差量に応じて前記バイパス弁の開閉速度を算出する変化率算出器とを備えていることを特徴とする。
【0017】
このガスタービンプラントにおいては、例えば、図7(a)に示すように、ガスタービン出力値が大きく減少する場合であっても、第2変化率制限器は、同図(b)に示すように、所定の変化率で減少する信号を出力する。減算器は、これらの差として偏差量を算出する。減算器が算出する偏差量は、この場合、図7(c)に示すようになる。変化率算出器は、この偏差量が大きいほど、速い速度でバイパス弁が開閉されるように開閉速度を算出する。
【0018】
請求項4に記載のガスタービンプラントの制御方法は、ガスタービンと、燃料及び燃焼空気が供給され、前記ガスタービンに燃焼ガスを供給する燃焼器と、該燃焼器への燃料供給量を調節する燃料弁とを備え、前記燃焼器は供給された燃料及び空気が導入されるメイン燃焼器と、該メイン燃焼器から燃焼ガスが供給され、該燃焼ガスを前記タービンに導入する尾筒と、供給された前記空気の一部を前記尾筒に導入するバイパス弁とを備えたガスタービンの制御方法において、前記バイパス弁を、前記タービンの出力変動に応じた開閉速度で開閉することを特徴とする。
【0019】
このガスタービンプラントの制御方法においては、ガスタービンの出力変動が大きい場合、燃料弁を急激に開閉するのに合わせてバイパス弁を迅速に開閉することができる。
【0020】
請求項5に記載のガスタービンプラントの制御方法は、請求項4に記載のガスタービンの制御方法において、前記ガスタービン出力の変化幅を算出した後、該変化幅に対応した前記バイパス弁の開閉速度を算出し、該開閉速度によって前記バイパス弁を開閉することを特徴とする。
【0021】
バイパス弁の開度を、現在の状態から、設定開度に変更する際、開閉スピードを与える必要がある。このガスタービンプラントの制御方法においては、ガスタービン出力の変化幅が大きいほど、速い速度でバイパス弁が開閉されるように開閉速度を与えるようにする。
【0022】
請求項6に記載のガスタービンプラントの制御方法は、請求項5に記載のガスタービンの制御方法において、ガスタービン出力の増減変化レートを所定値に変換した基準値を求め、該基準値に対する前記ガスタービン出力の偏差量を算出し、該偏差量を前記変化幅として用いることを特徴とする。
【0023】
このガスタービンプラントの制御方法においては、例えば、図7(a)に示すように、ガスタービン出力値が大きく減少する場合であっても、同図(b)に示すように、所定の変化率で減少する基準値を予め求める。そして、この基準値とガスタービン出力との差(図7(a)と(b)との差)としての偏差量を算出する。この偏差量が大きいほど、速い速度でバイパス弁が開閉されるように開閉速度を算出する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、負荷が急減して燃料弁を急速に絞った場合、コントローラがバイパス弁の絞り変化レートを高速にするため、バイパス弁が燃料弁の絞りに追従し、燃焼器の燃空比の変動を防ぐ。したがって、燃焼器における燃料の燃焼を安定化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態として示したガスタービンプラントが備えるコントローラのブロック図である。
【図2】同コントローラのロードリミットCSO信号上限値算出部を示すブロック図である。
【図3】同コントローラのロードリミットCSO信号演算回路を示すブロック図である。
【図4】ガバナCSO信号とロードリミットCSO信号との関係を示す図である。
【図5】負荷が急減した後に急増する場合のガバナCSO信号とロードリミットCSO信号との関係を示す図である。
【図6】同コントローラが備えるバイパス弁制御回路のブロック図である。
【図7】同バイパス弁制御回路において、ガスタービン出力が入力されてバイパス弁制御指令が出力されるまでの信号の変化を示す図である。
【図8】同バイパス弁制御回路が記憶している偏差量とバイパス弁開閉変化率との対応関係を示す図である。
【図9】ガスタービンプラントの概略構成図である。
【図10】同ガスタービンプラントに用いられる燃焼器の概略構成図である。
【図11】従来のガスタービンプラントにおける、ガバナCSO信号とロードリミットCSO信号との関係を示す図である。
【図12】従来のガスタービンプラントにおける、負荷が急減した後に急増する場合のガバナCSO信号とロードリミットCSO信号との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
図9に示したものは、本例にかかる一軸型コンバインドプラント(ガスタービンプラント)の概略構成図である。一軸型コンバインドプラントにおいて、1は大気を吸入して圧縮する圧縮機、2は燃料油が供給されると共に圧縮機1から圧縮された空気が燃焼用空気として供給される燃焼器、3は燃焼器2にて発生した燃焼ガスが導入されることにより回転するガスタービン、4はガスタービン3と連結した蒸気タービン、および5は発電機である。
以上のガスタービン3,圧縮機1,蒸気タービン4,発電機5が互いに連結軸6で連結されている。
【0027】
蒸気タービン4の駆動源は、排熱回収ボイラ8である。排熱回収ボイラ8は、ガスタービン3から排出される高温の排気ガスから熱を回収して蒸気を生成し、生成された蒸気を蒸気タービン4に導入する装置である。符号7は復水器であり、蒸気タービン4から排出された蒸気が導入され、該蒸気を凝縮させて排熱回収ボイラ8に戻す装置である。
符号9は燃料弁であり、燃焼器2への燃料供給量を調節する装置である。この燃料弁9は、コントローラ10によって制御される。
【0028】
燃焼器2は、図10に示す構成となっている。図10において、12はメイン燃焼器であり、13は燃焼器尾筒である。メイン燃焼器12には、燃料弁9を介して燃料が供給されるとともに、圧縮機1から空気14が供給されることで、燃料の燃焼が行われるようになっている。また、符号15はバイパス弁である。バイパス弁15はコントローラ10により制御されており、バイパス弁15の開度に応じて、圧縮機1からメイン燃焼器12と燃焼器尾筒13とに分配される空気の割合が決定されることになる。
【0029】
上記の構成を有するコンバインドプラントにおいては、負荷が変動して電力系統周波数が変化したときに、発電出力を調節して周波数を安定させる必要がある。上記コントローラ10は、周波数を回復させる方向に燃料弁9を調節し、ガスタービン3の出力を制御している。
この制御を具体的に示す。図1に示したものは、コントローラ10のブロック図である。
コントローラ10は、ガスタービン3の回転数が入力され、該回転数からガスタービン3の負荷を算出するとともに、該負荷に応じて燃料弁9の開度を制御するガバナCSO信号(ガバナ制御信号)S1を算出するガバナCSO信号算出部(ガバナ制御信号算出部)20と、ガバナCSO信号S1が下降状態にあるときは該ガバナCSO信号S1よりも所定のトラッキング幅だけ大きい値にて該ガバナCSO信号S1に追従するとともに、ガバナCSO信号S1が上昇状態にあるときは、所定の上昇レートを上限とした上昇率でガバナCSO信号S1に追従するロードリミットCSO信号S2を算出するロードリミットCSO信号算出部(ロードリミット制御信号算出部)21と、ガバナCSO信号S1の上限をロードリミットCSO信号S2により制限する低値選択回路(制限部)22とを備えている。
【0030】
図2、図3に示したものはロードリミットCSO信号算出部21である。ロードリミットCSO信号算出部21は、ガバナCSO信号S1に対する所定のトラッキング幅を算出する算出器21aと、該トラッキング幅をガバナCSO信号S1に足し合わせる和算器21bと、ガバナCSO信号S1に基づいて所定の上昇レートを算出する上昇レート算出器21cとを備えている。さらに、和算器21bと上昇レート算出器21cの出力が入力される変化率制限器21dを備えている。変化率制限器21dに入力される和算器21bの出力をxとおくと、変化率制限器21dにおいては入力値xの上昇レートは上昇レート算出器21cの値によって制限され、下降レートは制限されずに出力され、図3のロードリミット制御信号演算用PIコントローラの上限値S2’(以下、LRCSO信号と呼ぶ)として入力される。
図3に示したものはロードリミットCSO(LDCSO)信号演算回路である。本回路において、符号22aはロードリミット設定−発電機出力の偏差を算出する減算器であり、符号22bは減算器22aが算出した上記偏差が入力されるPIコントローラである。さらに本例においては、その出力上限値がLRCSO信号S2’により制限される。
【0031】
図4において、符号S1はガバナCSO信号であり、コントローラ10が燃料弁9に出力することにより、ガスタービン3の出力を制御する信号である。
通常時においては、符号aで示すように、周波数を一定に保つべく、コントローラ10のガバナCSO信号算出部20がガバナCSO信号S1(すなわち、ガスタービン3の出力)を適宜変動させている。
【0032】
負荷が急激に減少した場合、回転数が急上昇して周波数が上昇する。このとき、符号b3に示すように、ガバナCSO信号算出部20がガバナCSO信号S1を減少させて系統周波数の安定を図る。
一方、負荷が急激に増大した場合、回転数が急減して周波数が低下する。このとき、符号c3に示すように、ガバナCSO信号算出部20がガバナCSO信号S1を増大させて系統周波数の安定を図る。
【0033】
しかしながら、ガバナCSO信号S1を急増させると、ガスタービン3の温度が急上昇するため、ガスタービン3のストレスとなって好ましくない。このため、コントローラ10のロードリミットCSO信号算出部21は、ロードリミットCSO信号S2を逐次算出している。ロードリミットCSO信号S2は、通常時およびガバナCSO信号S1の急減時においてはトラッキング幅が足し合わされてガバナCSO信号S1より該トラッキング幅だけ高い値をとっている。ガバナCSO信号S1の急増時には、上昇レート算出器21cで算出された規定レートで上昇するようになっている。コントローラ10の低値選択回路22は、ロードリミットCSO信号S2をガバナCSO信号S2の上限値としてガバナCSO信号の上昇を制限するようになっている。
【0034】
したがって、ロードリミットCSO信号S2は、ガバナCSO信号S1の急減時には符号b3’で示すようにガバナCSO信号S1に追従して減少し、ガバナCSO信号S1の急増時には、符号c3’で示すように急増開始から所定時間後にガバナCSO信号S1と大小逆転する。よって、ガバナCSO信号S1は低値選択回路22によって制限され、規定レート以上で上昇しないロードリミットCSO信号S2が選択され燃料弁9に出力される。
【0035】
図5では、負荷が急減した後に急増する場合を示した。負荷の急減時、ガバナCSO信号S1は、符号b4で示すように、制限されることなく下降する。ロードリミット信号S2は、符号b4’で示すように、ガバナCSO信号S1に追従して下降する。
その後、負荷が急増した場合、ガバナCSO信号S1も急上昇する(符号c4)。ロードリミットCSO信号S2は、規定レートで上昇する(符号c4’)。上記のように、低値選択回路22はロードリミットCSO信号S2を上限値としてガバナCSO信号S1の上昇を制限するため、急増開始から所定時間後には、ガバナCSO信号S1の上昇が制限されたロードリミット信号S2が選択されて燃料弁9に出力される。
【0036】
以上説明したように、ロードリミットCSO信号S2は、ガバナCSO信号S1が通常時のとき及び急減時には、ガバナCSO信号S1に対して常にトラッキング幅だけ高い値をとる。ガバナCSO信号S1の急増時には、規定レートで上昇される。コントローラ10は、ガバナCSO信号S1の上限値をロードリミットCSO信号S2により制限するので、ガスタービン3の急激な温度上昇が防止される。
しかも、従来例(図12参照)と本例(図5参照)とを比較するとわかるように、ガバナCSO信号S1が急減した後に急増する場合、ガバナCSO信号S1は、より早くロードリミットCSO信号S2に追いつき、速やかにガバナCSO信号S1の上昇が制限される。したがって、ガスタービン3に与えるストレスを従来よりも減少させることができる。
【0037】
次に、コントローラ10が備える他の回路について説明する。
コントローラ10は、図6に示すように、バイパス弁15を制御するバイパス弁制御回路30を備える。図6において、31はバイパス弁開度算出部であり、ガスタービン3の出力値(以下、GT出力値と呼ぶ)S4が入力され、該GT出力値S4に対応してバイパス弁15をどの程度の開度とすればよいかを示す開度設定値S5を出力する回路である。
符号32は変化率制限器(第2変化率制限器)であり、負荷に応じて変化するGT出力値S4が入力され、該GT出力値S4の増減変化率を所定値に設定して出力する。例えば、図7(a)に示すように、GT出力値S4が大きく減少する場合であっても、変化率制御器32は、同図(b)に示すように、所定の変化率で減少する信号を出力する。
符号33は減算器であり、GT出力値S4から、前記変化率制御器32の出力を引いた偏差量を出力するものである。その値の時間変化を図7(c)に示した。
【0038】
符号35は変化率算出器であり、減算器33にて算出された偏差量が入力されると共に、その入力値に応じたバイパス弁15の変化率S6を出力する。その対応関係は、図8に示すようになっている。これによれば、例えば偏差量が大きければ変化率a1(%/min)が出力され、所定より小さければ変化率a2(%/min)が出力される。偏差量が図7(c)であれば、同図(d)のような値をとる。
上記変化率制限器32、減算器33、変化率算出器35により、開閉速度算出部36が構成されている。
【0039】
符号37は変化率制限器(第1変化率制限器)であり、バイパス弁開度算出部31が出力した開度設定値S5を、変化率S6に基づいて制御してバイパス弁開度指令S7としてバイパス弁15に出力する。すなわち、変化率S6が図7(d)に示すように変化する場合、同図(e)に示すように、バイパス弁開度指令S7は図の実線のようになる。
【0040】
このように、本例のバイパス弁制御回路30においては、負荷が急減して燃料弁9を急速に絞った場合、バイパス弁制御回路30がバイパス弁15の絞り変化率を高速にする。具体的には、図7(a)で示すようにGT出力が急減すると、図7(e)の実線で示すように、バイパス弁開度指令S7が急増し、バイパス弁15の開度を迅速に制御する。
図7(e)の破線で示すように、バイパス弁15の変化率がa1に固定されているとバイパス弁15の開閉が燃料弁9の開閉より遅れてしまうが、上記のように変化率がa2に高速化されるので、バイパス弁15の開閉が迅速に行われ、燃焼器12における燃料の燃焼を安定化することができる。
【符号の説明】
【0041】
2 燃焼器
3 ガスタービン
9 燃料弁
10 コントローラ
12 メイン燃焼器
13 尾筒
15 バイパス弁
20 ガバナCSO信号算出部(ガバナ制御信号算出部)
21 ロードリミットCSO信号算出部(ロードリミット制御信号算出部)
22 低値選択回路(制限部)
31 バイパス弁開度算出部
32 変化率制限器(第2変化率制限器)
33 減算器
35 変化率算出器
36 開閉速度算出部
37 変化率制限器(第1変化率制限器)
S1 ガバナCSO信号(ガバナ制御信号)
S2 ロードリミットCSO信号(ロードリミット制御信号)
S3 燃料制御信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンと、燃料及び空気が供給され、前記ガスタービンに燃焼ガスを供給する燃焼器と、該燃焼器への燃料供給量を調節する燃料弁と、該燃料弁を制御するコントローラとを備え、前記燃焼器は供給された燃料及び空気が導入されるメイン燃焼器と、該メイン燃焼器から燃焼ガスが供給され、該燃焼ガスを前記タービンに導入する尾筒と、前記コントローラにより制御され、供給された前記空気の一部を前記尾筒に導入するバイパス弁とを備えたガスタービンプラントにおいて、
前記コントローラは、前記バイパス弁を、前記タービンの出力変動に応じた開閉速度で開閉することを特徴とするガスタービンプラント。
【請求項2】
請求項1に記載のガスタービンプラントにおいて、
前記コントローラは、前記ガスタービン出力に対応した前記バイパス弁の開度設定値を算出するバイパス弁開度算出部と、
前記ガスタービン出力の変化幅を算出するとともに、該変化幅に応じて前記バイパス弁の開閉速度を算出する開閉速度算出部と、
前記バイパス弁開度算出部において算出された前記バイパス弁の開度設定値の変化レートを前記開閉速度算出部において算出された開閉速度として前記バイパス弁を制御する第1変化率制限器とを備えていることを特徴とするガスタービンプラント。
【請求項3】
請求項2に記載のガスタービンプラントにおいて、
前記開閉速度算出部は、前記ガスタービン出力が入力され、該ガスタービン出力の増減変化レートを所定値に変換した基準値を出力する第2変化率制限器と、該第2変化率制限器から前記基準値が入力され、該基準値に対する前記ガスタービン出力の偏差量を算出する減算器と、
前記偏差量に応じて前記バイパス弁の開閉速度を算出する変化率算出器とを備えていることを特徴とするガスタービンプラント。
【請求項4】
ガスタービンと、燃料及び燃焼空気が供給され、前記ガスタービンに燃焼ガスを供給する燃焼器と、該燃焼器への燃料供給量を調節する燃料弁とを備え、前記燃焼器は供給された燃料及び空気が導入されるメイン燃焼器と、該メイン燃焼器から燃焼ガスが供給され、該燃焼ガスを前記タービンに導入する尾筒と、供給された前記空気の一部を前記尾筒に導入するバイパス弁とを備えたガスタービンプラントの制御方法において、
前記バイパス弁を、前記タービンの出力変動に応じた開閉速度で開閉することを特徴とするガスタービンプラントの制御方法。
【請求項5】
請求項4に記載のガスタービンプラントの制御方法において、
前記ガスタービン出力の変化幅を算出した後、該変化幅に対応した前記バイパス弁の開閉速度を算出し、該開閉速度によって前記バイパス弁を開閉することを特徴とするガスタービンプラントの制御方法。
【請求項6】
請求項5に記載のガスタービンプラントの制御方法において、
ガスタービン出力の増減変化レートを所定値に変換した基準値を求め、該基準値に対する前記ガスタービン出力の偏差量を算出し、該偏差量を前記変化幅として用いることを特徴とするガスタービンプラントの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−133323(P2009−133323A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−63429(P2009−63429)
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【分割の表示】特願2000−220814(P2000−220814)の分割
【原出願日】平成12年7月21日(2000.7.21)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】