説明

ガスタービン停止

【課題】ガスタービン停止方法に関し、ロータの速度を制御し、停止のばらつきを最小化する。
【解決手段】ガスタービン100は、ロータ110と、目標の燃料対空気比プロファイル134に基づいてガスタービン100の停止を制御し、且つ/又は指定継続時間の停止を実現するために目標の速度スケジュール136に従ってロータ110速度を制御するための制御装置102とを含む。制御装置102は、始動装置114を係合させてロータ110を回転させることによってロータ110速度を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概してガスタービンエンジン技術に関する。より詳細には、本発明は燃料対空気比及び/又はロータ速度制御を用いたガスタービン停止に関する。
【背景技術】
【0002】
現在のガスタービン停止方法は、時間に応じて燃料流量を減少させる。この方法は、タービンの最高速度での燃料流量を測定してから、時間と共に燃料流量(F)を減少させる(dF/dt)ことによって実現できる。特定のタービンに関して燃料流量及び/又はロータ速度が十分に低い(例えば、最高速度の20%)と、燃料流は停止し、タービンは最低速度まで減速して、タービンの停止が完了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6,253,537B1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の方法によってもたらされる1つの課題は、停止反応の大きなばらつきを招き、容易に制御できないことである。より詳細には、時間に応じて燃料流量を減少させることによってガスタービンを停止することは、燃料流量とタービンの動作速度の間の直接的関係を保証するものではない。むしろ、様々な減量、異なるタービン状態等の差によって、ロータ速度対時間の著しい変化が生じる。吸気はロータ速度に応じたものであり、燃料流量は速度に直接関係していないので、ロータ速度の変化は燃料対空気比の有意差を生じさせる。従って、燃料流量を減少させても、必ずしもタービンの操作方法を制御できるわけではない。特に、制御されずに変動する燃料対空気比は、焼成温度、排気温度及び排出速度の変動を招く。更に、この方法によって、例えば、最高速度から「ターニングギヤ速度」、即ちロータの曲がりを防止するためにロータが外部電源によって絶えず回転しなければならない速度まで減速するのにかかる時間等の、多くの特性が予測不可能になる。実際の動作において部品がさらされる時間及び温度は変動するので、部品寿命を正確に予測することも困難にする。更に、停止反応のばらつきはタービン隙間に影響を及ぼすことになり、必要な隙間の更なる保守的傾向が生まれ、結果としてガスタービン性能の損失が生じる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1態様は、ロータと、空気流量、ロータ速度又は燃料流量の少なくとも1つを制御することによってガスタービンの停止を制御して、停止のばらつきを最小化するための制御装置とを備えるガスタービンを提供する。
【0006】
本発明の第2態様は、ロータと、ロータに連結されてロータの回転を駆動する始動装置を含む発電機と、目標の速度スケジュールに従ってロータ速度を制御して、ガスタービンの指定継続時間の停止を実現するための制御装置であって、始動装置を係合させてロータを回転させることによってロータ速度を制御する制御装置とを備える。
【0007】
本発明の第3態様は、目標の燃料対空気比プロファイルを実現するための空気流量、目標の燃料対空気比プロファイルを実現するための燃料流量、又は指定継続時間の停止を実現するために構成された目標の速度スケジュールに従ったロータ速度の少なくとも1つを制御することによって、ガスタービンの停止を制御するステップを含む方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態による動力装置の要部の概略図を示す。
【図2】負荷整流インバータ(LCI)公称速度対電流スケジュールを示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1では、実施形態による制御装置102を含む動力装置90を図示する。動力装置90は、ガスタービン100を含む。ガスタービン100は、現在知られている又は将来開発される任意のガスタービンである。ガスタービン100は、天然ガス等の燃料を燃焼させることによってロータ110を回転させる。ロータ110は、ロータ110の回転から電力を発生させる発電機112に連結される。発電機112は、モータ、負荷整流インバータ(LCI)又は外部トルクをロータ110に印加するための同様の構造等の始動装置114を含む、現在知られている又は将来開発される任意の発電機である。明らかなように、始動装置114はロータ110に連結され、ロータ110の回転を駆動する発電機112の動作を逆転させるように構成される。LCIが用いられる場合、分かり易い言葉では、発電機112をモータ回転させる。
【0010】
制御装置102は、動力装置90の実質的に全ての部分、例えば、ガスタービン100、発電機112、始動装置114、制御弁、燃料流量、空気流量等を制御する、現在知られている又は将来開発される任意の制御システムである。更に、本発明の実施形態によれば、制御装置102は、空気流量、ロータ速度又は燃料流量の少なくとも1つを制御することによって、ガスタービン100の停止を制御して停止のばらつきを最小化する。これは、時間に応じて燃料流量を単に減少させる従来技術とは対照的であり、即ち、従来技術はその他のシステム要件を満たすために燃料流量を制御するのではない。制御装置102は、サイクル温度、排出速度、部品寿命、隙間、停止継続時間等の多種多様なパラメータを最適化するために停止を制御できる。
【0011】
一実施形態では、制御装置102は、目標の燃料対空気比プロファイルに基づいて停止を制御する。この場合、制御装置102は、最適化された停止を実現するために構成されたモデルに基づく目標の燃料対空気比プロファイルを実現するために、空気流量A又は燃料流量WFを制御できる。空気流量Aは、タービン100内の吸気ベーンを制御することによって部分的に制御でき、燃料流量WFは、例えば燃料ポンプ(図示せず)を制御することによって部分的に制御できる。別の実施形態では、制御装置102は、指定継続時間の停止を実現するための目標の速度スケジュールに従ってロータ速度Nを制御することによって、停止を制御する。この場合、制御装置102は、始動装置114を係合させてロータを回転させることによってロータ速度Nを制御し、即ち、目標の速度スケジュールに適合するようにロータ速度Nを増減させる。
【0012】
上記の実施形態は別々に用いても良く、又は一緒に用いても良い。即ち、制御装置102は、モデル132に基づく目標の燃料対空気比プロファイル134を実現するための空気流量A及び/又は燃料流量WF、及び/又は指定継続時間の停止を実現するために構成された目標の速度スケジュール136に従ったロータ速度Nの少なくとも1つを制御する。
【0013】
構造的に、制御装置102は、ハードウェア、ソフトウェア又はそれらの組み合わせの形態を取るかに関わらず、動力装置90を制御するために従来から用いられる任意の形態のコンピュータ化された制御システムである。この点に関して、制御装置102は、明確に図示されていないが、動力装置90を制御するための多種多様な異なる機能を含むことが分かる。本発明の実施形態によれば、制御装置102は更に、上記の停止技術を提供するように構成される。これらの機能を達成するために、制御装置102は、焼成温度等のパラメータを測定するハードをモデル化するためのアドバンストリアルタイムエンジンシミュレータ(ARES)等のオンボードサイクルモデル簡易相関(OCMSC)システムである、現在知られている又は将来開発される任意のモデリングシステムを含むモデラー130を備える。モデル132は、目標の燃料対空気比プロファイル134及び目標の速度スケジュール136を含む。制御装置102は、燃料流量制御装置140と、誤差決定器152及び始動装置制御器154を含むロータ速度制御装置150と、ニューラルネットワーク160とを更に備える。
【0014】
動作中、モデラー130は、目標の燃料対空気比プロファイル134を定式化するために、特定のガスタービン100の動作をモデル化する。一実施形態では、モデラー130は停止のばらつきを最小化するように動作をモデル化する。目標の燃料対空気比プロファイル134は、一定時間の所望の燃料対空気比のスケジュールを含み、それに従うと、所望のプロファイルを実現することになる。燃料対空気比のモデル化は、制御の精度を向上させるために望ましい。しかしながら、燃料対空気比は、燃料流量WF、圧縮機排気圧力、入口圧力降下、排気温度等のその他のパラメータに基づく既知の方法で推定できる。必要であれば、燃料対空気比は、モデラー130を用いてある範囲の温度にわたって標準化することができる。
【0015】
一実施形態では、目標の燃料対空気比プロファイル134を実現するために、制御装置102の燃料流量制御装置140は、ロータ速度Nに応じて空気流量A及び/又は燃料流量WFを制御する(必要に応じてA及び/又はWFを増減する)。燃料流量制御装置140は、空気流量A及び/又は燃料流量WFを決定する多数の弁、ベーン、ポンプ等のいずれかに命令できる。必要に応じて、その他のパラメータの制御も使用できる。燃料対空気比プロファイルに基づく停止の制御は、燃料流量WFを単に減少させて、さもなければ無制限に流れるガスタービンの操作を可能にする従来技術に比べて、停止をより正確に制御する。従って、サイクル温度、排出速度、部品寿命、隙間等をより良好に制御できる。
【0016】
別の実施形態では、モデラー130は、目標の速度スケジュール136、即ち一定時間の所望ロータ速度Nのスケジュールを定式化するために、特定のガスタービン100の動作をモデル化する。目標の速度スケジュール136は、指定継続時間の停止を実現するように構成される。制御装置102は、始動装置114を係合させてロータ110を回転させることによって停止中のロータ速度Nを制御する。ほとんどの場合、制御装置102は物理的にロータ110の減速度を低下させるように命令することになるが、減速率の増加又はロータ110の速度の増加もまた最適化されているものによって決まることが望ましい。このような停止の継続時間を制御することにより、最高速度から「ターニングギヤ速度」まで減速するのにかかる時間のより大きな予測性が提供される。このタイプの制御は更に、熱及び機械的負荷への部品の暴露のより良好な制御によって部品寿命を正確に予測するのを容易にする。
【0017】
この技術は、従来の始動装置114(LCI)制御方式に容易に導入できる。特に、ロータ速度制御装置150は、始動装置114の一部である始動装置制御器154を介して、目標の速度スケジュールを実現するために構成された公称始動装置スケジュールに従って、始動装置114のトルク出力を制御する。明らかなように、始動装置114のトルク出力はロータ110の回転を駆動する。例示的な公称始動装置スケジュールは、始動装置114(LCI)への電流入力対速度として図2に示される。ロータ速度制御装置150の誤差決定器152は、目標の速度スケジュール136から、即ち指定時間の停止において、ロータ110の実速度Nと目標速度NTargの間の誤差Nerrを決定する。ロータ速度Nは、例えば、赤外線センサ等の現在知られている又は将来開発される任意の方法を用いて測定される。ロータ速度制御装置150は、ロータ110の回転を駆動して誤差Nerrを補正することによって、始動装置制御器154を介して始動装置114を制御する。ロータ速度制御装置150は、公称始動装置スケジュール(図2)の適切である部分に電流スケーラーを導入することによって補正を実施する。必要に応じて、ロータ速度制御装置150によって実行された始動装置の電流スケーリングは、それによって電流が変化するスケールを調整するための速度制限を含んでも良く、それによって電流を変更することのできる最大量を決定するためのクランプを含んでも良い。
【0018】
上記の動作に加えて、過去の実績に基づいて停止制御を向上させるために、ニューラルネットワーク160を使用する。ニューラルネットワーク160は、現在知られている又は将来開発される任意の人工知能又は数値技術を使用する。一実施形態では、ニューラルネットワーク160は、過去の実績に基づいて目標の燃料対空気比プロファイル134及び/又は目標の速度スケジュール136を含むモデル132を調整するために使用される。更に、いずれのプロファイルも、サイクル温度、排出速度、部品寿命、隙間等の特定の停止特性を最適化するように調整される。
【0019】
本明細書において「第1」、「第2」等の用語は、いかなる順序、数量、又は重要性も意味するものではなく、1つの要素を別のものから区別するために用いられており、本明細書において単数形で記載したものであっても、数量の限定を意味するものではなく、参照されたものが少なくとも1つ存在することを意味するものである。数量に用いられる「約」という修飾語は、記載の数値を含み、文脈ごとに定まる意味を持つ(例えば、特定の数量の測定に付随する誤差の範囲を含む)。本明細書で用いる「(s)」という接尾辞は、それを付した語の単数形と複数形を包含することによって、その用語のものが1つ以上存在することを意味する(例えば、metal(s)は1種以上の金属を包含する)。
【0020】
本明細書では様々な実施形態を説明しているが、当業者は、それらにおける要素の様々な組み合わせ、変形又は改良を行うことができ、またそれらが本発明の範囲内に属することは、本明細書から理解されるであろう。更に、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく、特定の状況又は材料を本発明の教示に適合させるために多くの修正を行うことができる。従って、本発明は、本発明を実施するための最良の形態として開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲に属する全ての実施形態を包含するものとする。
【符号の説明】
【0021】
90 動力装置
102 制御装置
100 ガスタービン
110 ロータ
112 発電機
114 始動装置
134 目標の燃料対空気比プロファイル
132 モデル
136 目標の速度スケジュール
130 モデラー
140 燃料流量制御装置
150 ロータ速度制御装置
152 誤差決定器
154 始動装置制御器
160 ニューラルネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータ(110)と、
空気流量、ロータ(110)速度又は燃料流量の少なくとも1つを制御することによって前記ガスタービン(100)の停止を制御して、停止のばらつきを最小化するための制御装置(102)とを備える、ガスタービン(100)。
【請求項2】
前記制御装置(102)は、目標の燃料対空気比プロファイル(134)に基づいて停止を制御する、請求項1に記載のガスタービン。
【請求項3】
過去の実績に基づいて前記目標の燃料対空気比プロファイルを調整するニューラルネットワーク(160)を更に備える、請求項2に記載のガスタービン。
【請求項4】
前記制御装置(102)は、前記ロータ(110)速度に応じて燃料流量を制御する、請求項1に記載のガスタービン。
【請求項5】
前記ロータ(110)に連結されて前記ロータ(110)の回転を駆動する始動装置(114)を含む発電機(112)を更に備え、
前記制御装置(102)は、前記始動装置(114)を係合させて前記ロータ(110)を回転させることによって停止中の前記ロータ(110)速度を制御する、請求項1に記載のガスタービン。
【請求項6】
前記制御装置(102)は、指定継続時間の停止を実現するために目標の速度スケジュール(136)に従って前記ロータ(110)速度を制御する、請求項5に記載のガスタービン。
【請求項7】
過去の実績に基づいて前記目標の速度スケジュール(136)を調整するニューラルネットワーク(160)を更に備える、請求項6に記載のガスタービン。
【請求項8】
前記制御装置(102)は、
前記目標の速度スケジュールを実現するために構成された公称始動装置(114)スケジュールに従って、前記始動装置(114)のトルク出力を制御すること、
前記ロータ(110)の実速度と前記目標の速度スケジュールの間の誤差を決定すること、及び
前記始動装置(114)の前記トルク出力を制御して前記誤差を補正することによって、前記ロータ(110)速度を制御する、請求項6に記載のガスタービン。
【請求項9】
前記始動装置(114)は負荷整流インバータ(LCI)である、請求項5に記載のガスタービン。
【請求項10】
ロータ(110)と、
前記ロータ(110)に連結されて前記ロータ(110)の回転を駆動する始動装置(114)を含む発電機(112)と、
目標の速度スケジュール(136)に従ってロータ(110)速度を制御して、前記ガスタービン(100)の指定継続時間の停止を実現するための制御装置(102)であって、前記始動装置(114)を係合させて前記ロータ(110)を回転させることによって前記ロータ(110)速度を制御する前記制御装置(102)とを備える、ガスタービン(100)。
【請求項11】
前記制御装置(102)は更に、目標の燃料対空気比プロファイル(134)に基づいて停止を制御する、請求項10に記載のガスタービン。
【請求項12】
前記目標の燃料対空気比プロファイル(134)はモデル(132)に基づく、請求項11に記載のガスタービン。
【請求項13】
過去の実績に基づいて前記モデル(132)を調整するニューラルネットワーク(160)を更に備える、請求項12に記載のガスタービン。
【請求項14】
前記制御装置(102)は、
前記ロータ(110)速度に対する所望の減速度プロファイルを実現するために公称始動装置(114)スケジュールを作成すること、
前記ロータ(110)の実速度と前記目標の速度スケジュールの間の誤差を決定すること、及び
前記始動装置(114)のトルク出力を制御して前記誤差を補正することによって、前記ロータ(110)速度を制御する、請求項10に記載のガスタービン。
【請求項15】
過去の実績に基づいて前記目標の速度スケジュール(136)を調整するニューラルネットワーク(160)を更に備える、請求項10に記載のガスタービン。
【請求項16】
目標の燃料対空気比プロファイル(134)を実現するための空気流量、
前記目標の燃料対空気比プロファイル(134)を実現するための燃料流量、又は
指定継続時間の停止を実現するために構成された目標の速度スケジュール(136)に従ったロータ(110)速度の少なくとも1つを制御することによって、ガスタービン(100)の停止を制御するステップを含む方法。
【請求項17】
ニューラルネットワーク(160)を提供して、過去の実績に基づいて前記目標の燃料対空気比プロファイル(134)及び前記目標の速度スケジュール(136)の少なくとも1つを調整するために前記ニューラルネットワーク(160)を使用するステップを更に含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記ロータ(110)速度の制御は、
前記ロータ(110)速度に対する所望の減速度プロファイルを実現するために公称始動装置(114)スケジュールを作成すること、
前記ロータ(110)の実速度と前記目標の速度スケジュールの間の誤差を決定すること、及び
前記始動装置(114)のトルク出力を制御して前記誤差を補正することを含む、請求項16に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−261439(P2010−261439A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−98364(P2010−98364)
【出願日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】