ガスタービン負荷制御装置
【課題】比例・積分制御の時定数を長めに設定しても、要求負荷設定値の変化に対する発電機出力の追従を速くすることができるガスタービン負荷制御装置を提供する。
【解決手段】負荷設定手段、第1のバイアス設定手段と、第2のバイアス設定手段と、目標出力設定手段などを備え、目標出力設定手段では、要求負荷設定手段から入力する要求負荷設定値の増加に応じて負荷設定手段にて負荷設定値を徐々に増加させているときには、LDSETにプラス側バイアス値を加算することにより目標出力を設定し、要求負荷設定値の減少に応じて負荷設定手段にて負荷設定値を徐々に減少させているときには、LDSETからマイナス側バイアス値を減算することにより目標出力を設定する構成とする。
【解決手段】負荷設定手段、第1のバイアス設定手段と、第2のバイアス設定手段と、目標出力設定手段などを備え、目標出力設定手段では、要求負荷設定手段から入力する要求負荷設定値の増加に応じて負荷設定手段にて負荷設定値を徐々に増加させているときには、LDSETにプラス側バイアス値を加算することにより目標出力を設定し、要求負荷設定値の減少に応じて負荷設定手段にて負荷設定値を徐々に減少させているときには、LDSETからマイナス側バイアス値を減算することにより目標出力を設定する構成とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガスタービンへの供給燃料量を制御してガスタービン出力(発電機出力)が目標出力となるように制御するガスタービン負荷制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービン発電設備において発電機が併入運転中のとき、即ち発電機を電力系統(電力ネットワーク)へ接続して発電機の発電電力を電力系統へ送電しているときには、ガスタービン発電設備に備えたガスタービン負荷制御装置により、発電機出力(有効電力)が電力系統の要求負荷設定値の変化に追従するようにガスタービンへの供給燃料量を制御する必要がある。要求負荷設定値は、通常、中央給電センターから要求負荷設定指令としてガスタービン負荷制御装置へ送られてくる。
【0003】
図11は従来のガスタービン負荷制御装置の構成を示すブロック図、図12は前記ガスタービン負荷制御装置を適用した場合の要求負荷設定値の増加に対するLDSET(目標出力)及び発電機出力(実出力)の変化を示す説明図である。
【0004】
図11に示すように、ガスタービン発電設備ではガスタービン1の回転軸2に発電機3の回転軸4を接続した構成となっている。詳細な図示は省略するが、ガスタービン1はガスタービン本体と圧縮機と燃焼器とを有している。ガスタービン1が起動すると、発電機3がガスタービン1によって回転駆動されることにより発電する。この発電電力は発電機3から図示しない遮断器や変圧器などを介して電力系統へと送電されるが、このときの発電電力(有効電力)の値が有効電力計であるMW変換器5によって計測される。そして、このMW変換器5の計測値(実出力)が、ガスタービン負荷制御装置10へとフィードバックされるようになっている。
【0005】
また、ガスタービン1の燃焼器には燃料制御弁6が接続されており、図示しない燃料タンクなどの燃料供給設備から送られてくる気体又は液体などのガスタービン燃料が、燃料制御弁6で流量制御されて燃焼器へ供給されるようになっている。そして、この燃料制御弁6の開閉制御(供給燃料量の制御)が、ガスタービン負荷制御装置10によって行われる。ガスタービン負荷制御装置10は偏差演算器(減算器)11,15、ハイ/ロウモニタ(比較器)12,13、アナログメモリ15及びPI制御器16を有してなるものである。
【0006】
偏差演算器11では図示しない中央給電センター(上位コンピュータ)から送られてくる要求負荷設定値(指令)と、アナログメモリ14の出力であるLDSET(負荷設定値)との偏差(負荷設定偏差=要求負荷設定値−LDSET)を演算する。
【0007】
ハイ/ロウモニタ12では前記負荷設定偏差が0.1MW以上(負荷設定偏差≧0.1MW)であるか否かを判定し、0.1MW以上であると判定した場合にはアナログメモリ14に対してLDSET増指令を出力する。即ち、LDSET増指令は前記負荷設定偏差が0.1MW以上となったときにONとなり、前記負荷設定偏差が0.1MWよりも小さくなったときにOFFとなる。
【0008】
ハイ/ロウモニタ13では前記負荷設定偏差が−0.1MW以下(負荷設定偏差≦−0.1MW)であるか否かを判定し、−0.1MW以下であると判定した場合にはアナログメモリ14に対してLDSET減指令を出力する。即ち、LDSET減指令は前記負荷設定偏差が−0.1MW以下となったときにONとなり、前記負荷設定偏差が−0.1MWよりも大きくなったときにOFFとなる。
【0009】
アナログメモリ14ではハイ/ロウモニタ12からLDSET増指令を入力すると(LDSET増指令がONになると)LDSETの増加を開始し、LDSET増指令を入力し続けている間(LDSET増指令がONの間)はLDSETを所定の増加率(例えば10MW/分)で徐々に増加させ、ハイ/ロウモニタ12からLDSET増指令を入力しなくなると(LDSET増指令がOFFになると)LDSETの増加を停止する。また、アナログメモリ14ではハイ/ロウモニタ13からLDSET減指令を入力すると(LDSET減指令がONになると)LDSETの減少を開始し、LDSET減指令を入力し続けている間(LDSET減指令がONの間)はLDSETを所定の減少率(例えば−10MW/分)で徐々に減少させ、ハイ/ロウモニタ13からLDSET減指令を入力しなくなると(LDSET減指令がOFFになると)LDSETの減少を停止する。そして、このLDSETが目標出力として、アナログメモリ14から偏差演算器(減算器)15へ出力される。
【0010】
偏差演算器15ではアナログメモリ14で設定される目標出力(LDSET)と、MW変換器5で計測される発電機出力(有効電力)との偏差(出力偏差=目標出力−発電機出力)を演算する。
【0011】
そして、PI制御器16では、偏差演算器15で演算される出力偏差に基づいて比例・積分演算を行うことにより、燃料制御弁6の開度制御を行う。即ち、目標出力が発電機出力よりも大きければ、燃料制御弁6の開度を大きくしてガスタービン1(燃焼器)への供給燃料量を増やすことにより、ガスタービン1の出力を増加させて発電機3の出力を増加させる(発電機出力を目標出力に一致させる)。また、目標出力が発電機出力よりも小さければ、燃料制御弁6の開度を小さくしてガスタービン1(燃焼器)への供給燃料量を減らすことにより、ガスタービン出力を減少させて発電機出力を減少させる(発電機出力を目標出力に一致させる)。なお、偏差演算器16におけるKは比例ゲイン、sはラプラス演算子、Tは比例・積分制御の時定数(積分時定数)、1/Tは積分ゲインである。
【0012】
例えば図12に例示するように時刻T1までは要求負荷設定値と目標出力(LDSET)と発電機出力(実出力)とが一致しており、時刻T1において中央給電センターからの指令により要求負荷設定値がステップ状に増加(図示例では100MWから200MWに増加)した場合、偏差演算器11で演算される要求負荷設定値とLDSETとの偏差が0.1MW以上となるため、ハイ/ロウモニタ12からアナログメモリ14へLDSET増指令が出力される(LDSET増指令がONになる)。その結果、アナログメモリ14によりLDSETが、時刻T1から、時刻T2において要求負荷設定値(200MW)に達するまで(負荷設定偏差が0.1MWよりも小さくなってLDSET増指令がOFFになるまで)、所定の増加率で徐々に増加する。即ち、目標出力が所定の増加率で徐々に増加する。
【0013】
そして、このときの目標出力と発電機出力(有効電力)との出力偏差が偏差演算器15で演算され、この出力偏差に基づいてPI制御器16で比例・積分演算が行われ、この比例・積分演算の結果に基づいて燃料制御弁6が作動する(燃料制御弁6の弁開度が増加する)。その結果、ガスタービン1への供給燃料量が増加してガスタービン出力が増加することより発電機出力(有効電力)が増加し、最終的には発電機出力(有効電力)を目標出力(要求負荷設定値)に一致させることができる。
【0014】
なお、アナログメモリ14を用いてLDSET(目標出力)を徐々に増加又は減少させるのは、急激に要求負荷設定値が変化しても、ガスタービン1の許容可能な変化率でLDSET(目標出力)を変化させるためである。要求負荷設定値の急激な変化に応じてLDSET(目標出力)も急激に変化させてしまうと、ガスタービン1の出力が急激に変化してガスタービン1の損傷などを招くおそれがある。
【0015】
本願に関する先行技術文献としては下記の特許文献1がある。特許文献1には多軸コンバインドサイクルプラントの負荷制御方法及びその装置が開示されている。
【0016】
【特許文献1】特開平10−196315号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
最近では送電側(電力系統側)からガスタービン発電設備側に対して、要求負荷設定値の変化に対する発電機出力の追従を速くすることが要求されるようになってきている。例えば、発電会社と送電会社が異なる国においては送電会社から発電会社に対して、要求負荷設定値の変化に対する発電機出力の追従を速くすることが要求されている。
【0018】
これに対し、従来のガスタービン負荷制御装置10では比例・積分制御の時定数Tを短くすれば(即ち積分ゲイン1/Tを大きくすれば)要求負荷設定値の変化に対する発電機出力の追従を速くすることができるが、比例・積分制御の時定数Tを短くすると、電力系統の力率の変動に伴う発電機出力(有効電力)の変動に対して、ガスタービン負荷制御装置10が、発電機出力(有効電力)を一定に保とうとして、より頻繁にガスタービン1への供給燃料量の増減を繰り返すことになる。このことはガスタービン1にとって好ましくない。
【0019】
このため、比例・積分制御の時定数Tはガスタービン1への供給燃料量が安定するように長め設定する必要があり、比例・積分制御の時定数Tを長めに設定すると、要求負荷設定値の変化したときの発電機出力の追従が遅くなるため、電力系統側(送電会社側)からの追従性向上の要求を満たすことができない。
【0020】
従って本発明は上記の事情に鑑み、比例・積分制御の時定数を長めに設定しても、要求負荷設定値の変化に対する発電機出力(有効電力)の追従を速くすることができるガスタービン負荷制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記課題を解決する第1発明のガスタービン負荷制御装置は、要求負荷設定値が増加したしたときには負荷設定値を前記要求負荷設定値に達するまで所定の増加率で徐々に増加させ、前記要求負荷設定値が減少したときには前記負荷設定値を前記要求負荷設定値に達するまで所定の減少率で徐々に減少させる負荷設定手段と、
前記負荷設定値に対するバイアス値として、プラス側バイアス値を設定する第1のバイアス設定手段と、
前記負荷設定値に対するバイアス値として、マイナス側バイアス値とを設定する第2のバイアス設定手段と、
前記要求負荷設定値の増加に応じて前記負荷設定手段にて前記負荷設定値を徐々に増加させているときには、前記負荷設定値に前記プラス側バイアス値を加算することにより発電機の目標出力を設定し、前記要求負荷設定値の減少に応じて前記負荷設定手段にて前記負荷設定値を徐々に減少させているときには、前記負荷設定値から前記マイナス側バイアス値を減算することにより前記目標出力を設定する目標出力設定手段と、
前記目標出力と、発電機出力計測手段で計測される発電機出力との出力偏差を演算する出力偏差演算手段と、
前記出力偏差に基づいて比例・積分演算を行うことにより、前記発電機を回転駆動するガスタービンの燃料の流量制御手段の制御を行う比例・積分制御手段とを有することを特徴とする。
【0022】
また、第2発明のガスタービン負荷制御装置は、第1発明のガスタービン負荷制御装置において、
前記第1のバイアス設定手段では、前記プラス側バイアス値を前記負荷設定値の関数とし、
前記第2のバイアス設定手段では、前記マイナス側バイアス値を前記負荷設定値の関数とすることを特徴とする。
【0023】
また、第3発明のガスタービン負荷制御装置は、第1又は第2発明のガスタービン負荷制御装置において、
前記第1のバイアス設定手段では、前記プラス側バイアス値を、前記負荷設定手段にて前記負荷設定値の増加を開始するときに所定の増加率で徐々に零から所定値になるまで増加させ、且つ、前記負荷設定手段にて前記負荷設定値の増加を終了するときに所定の減少率で前記所定値から徐々に零になるまで減少させること、
前記第2のバイアス設定手段では、前記プラス側バイアス値を、前記負荷設定手段にて前記負荷設定値の減少を開始するときに所定の増加率で徐々に零から所定値になるまで増加させ、且つ、前記負荷設定手段にて前記負荷設定値の減少を終了するときに所定の減少率で前記所定値から徐々に零になるまで減少させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
第1発明のガスタービン負荷制御装置によれば、目標出力設定手段では、負荷設定値をそのまま発電機の目標出力とするのではなく、要求負荷設定値の増加に応じて負荷設定手段にて負荷設定値を徐々に増加させているときには、負荷設定値にプラス側バイアス値を加算することにより発電機の目標出力を設定し、要求負荷設定値の減少に応じて負荷設定手段にて負荷設定値を徐々に減少させているときには、負荷設定値からマイナス側バイアス値を減算することにより発電機の目標出力を設定するため、例えば電力系統の力率変動に対してガスタービンを安定に運転することが可能なように比例・積分制御の時定数を長めに設定しても、要求負荷設定値の増加や減少に対して、発電機出力の追従を速くすることができる。
【0025】
第2発明のガスタービン負荷制御装置によれば、第1のバイアス設定手段では、プラス側バイアス値を負荷設定値の関数とし、第2のバイアス設定手段では、マイナス側バイアス値を負荷設定値の関数とするため、プラス側バイアス値とマイナス側バイアス値とを、ガスタービン負荷帯(発電機出力)に応じたより適切な値とすることができる。
【0026】
第3発明のガスタービン負荷制御装置によれば、第1のバイアス設定手段ではプラス側バイアス値を、負荷設定手段にて負荷設定値の増加を開始するときに所定の増加率で徐々に零から所定値になるまで増加させ、且つ、負荷設定手段にて負荷設定値の増加を終了するときに所定の減少率で所定値から徐々に零になるまで減少させること、また、第2のバイアス設定手段ではプラス側バイアス値を、負荷設定手段にて負荷設定値の減少を開始するときに所定の増加率で徐々に零から所定値になるまで増加させ、且つ、負荷設定手段にて負荷設定値の減少を終了するときに所定の減少率で所定値から徐々に零になるまで減少させることを特徴とするため、プラス側バイアス値やマイナス側バイアス値をステップ状に変化させる場合に比べて、より安定した負荷制御が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0028】
図1は本発明の実施の形態例に係るガスタービン負荷制御装置の構成を示すブロック図、図2は前記ガスタービン負荷制御装置に備えたアナログメモリの機能説明図、図3及び図4は前記ガスタービン負荷制御装置に備えた関数発生器の機能説明図、図5及び図6は前記ガスタービン負荷制御装置に備えたレート付き切替器の機能説明図である。
【0029】
また、図7は前記ガスタービン負荷制御装置を適用した場合の要求負荷設定値の増加に対するLDSET、目標出力及び発電機出力(実出力)などの変化を個別に示す説明図、図8は前記ガスタービン負荷制御装置を適用した場合の要求負荷設定値の増加に対するLDSET、目標出力及び発電機出力(実出力)の変化をまとめて示す説明図、図9は前記ガスタービン負荷制御装置を適用した場合の要求負荷設定値の減少に対するLDSET、目標出力及び発電機出力(実出力)などの変化を個別に示す説明図、図10は前記ガスタービン負荷制御装置を適用した場合の要求負荷設定値の減少に対するLDSET、目標出力及び発電機出力(実出力)の変化をまとめて示す説明図である。
【0030】
図1に示すように、ガスタービン発電設備ではガスタービン21の回転軸22に発電機23の回転軸14を接続した構成となっている。詳細な図示は省略するが、ガスタービン21はガスタービン本体と圧縮機と燃焼器とを有している。ガスタービン21が起動すると、発電機23がガスタービン21によって回転駆動されることにより発電する。この発電電力は発電機23から図示しない遮断器や変圧器などを介して電力系統へと送電されるが、このときの発電電力(有効電力)の値が有効電力計であるMW変換器25によって計測される。そして、このMW変換器25の計測値(実出力)が、ガスタービン負荷制御装置30へとフィードバックされるようになっている。
【0031】
また、ガスタービン21の燃焼器にはガスタービン燃料の流量制御手段として、燃料制御弁26が接続されており、図示しない燃料タンクなどの燃料供給設備から送られてくる気体又は液体などのガスタービン燃料が、燃料制御弁26で流量制御されて燃焼器へ供給されるようになっている。そして、この燃料制御弁26の開閉制御(供給燃料量の制御)が、ガスタービン負荷制御装置30によって行われる。
【0032】
ガスタービン負荷制御装置30は偏差演算器(減算器)31,44、ハイ/ロウモニタ(比較器)32,33、アナログメモリ34、関数発生器35,36、レート付き切替器37,38、シグナルジェネレータ39,40、加算器41、減算器42、PI制御器44を有してなるものである。偏差演算器31、ハイ/ロウモニタ32,33及びアナログメモリ34は負荷設定手段として機能し、関数発生器35、シグナルジェネレータ39及びレート付き切替器37は第1のバイアス設定手段として機能し、関数発生器36、シグナルジェネレータ40及びレート付き切替器38は第2のバイアス設定手段として機能し、加算器41及び減算器42は目標出力設定手段として機能し、偏差演算器43は出力偏差演算手段として機能し、PI制御器44は比例・積分制御手段として機能する。なお、これらのガスタービン負荷制御装置30の各機能はソフトウエアで構成してコンピュータで実行するが、これに限定するものではなく、ハードウエアで構成してもよい。
【0033】
偏差演算器31は要求負荷設定手段としての図示しない中央給電センター(上位コンピュータ)から送られてくる要求負荷設定値(指令)と、アナログメモリ34の出力であるLDSET(負荷設定値)との偏差(負荷設定偏差=要求負荷設定値−LDSET)を演算する。なお、要求負荷設定手段は、必ずしも中央給電センター(上位コンピュータ)に限定するものではなく、その他のものであってもよい。例えばガスタービン発電設備に設けた負荷設定器などであってもよい。
【0034】
ハイ/ロウモニタ32では要求負荷設定値の増加した際、LDSETが増加して当該要求負荷設定値に達したか否かを判定する。具体的には、ハイ/ロウモニタ32では前記負荷設定偏差が0.1MW以上(負荷設定偏差≧0.1MW)であるか否かを判定し、0.1MW以上であると判定した場合には、アナログメモリ34に対してLDSET増指令を出力し、且つ、レート付き切替器37に対してプラス側バイアス切替指令SW1(ON)を出力する。即ち、LDSET増指令は前記負荷設定偏差が0.1MW以上となったときにONとなり、前記負荷設定偏差が0.1MWよりも小さくなったときにOFFとなる。また、プラス側バイアス切替指令SW1は前記負荷設定偏差が0.1MW以上となったときにONとなり、前記負荷設定偏差が0.1MWよりも小さくなったときにOFFとなる。なお、ここでは判定値を0.1MWとしているが、これに限定するものではなく、0.1MWよりも小さい値や大きい値などを適宜設定することができる。
【0035】
ハイ/ロウモニタ33では要求負荷設定値の減少した際、LDSETが減少して当該要求負荷設定値に達したか否かを判定する。具体的には、ハイ/ロウモニタ33では前記負荷設定偏差が−0.1MW以下(負荷設定偏差≦−0.1MW)であるか否かを判定し、−0.1MW以下であると判定した場合には、アナログメモリ34に対してLDSET減指令を出力し、レート付き切替器37に対してマイナス側バイアス切替指令SW2(ON)を出力する。即ち、LDSET減指令は前記負荷設定偏差が−0.1MW以下となったときにONとなり、前記負荷設定偏差が−0.1MWよりも大きくなったときにOFFとなる。また、マイナス側バイアス切替指令SW2は前記負荷設定偏差が−0.1MW以下となったときにONとなり、前記負荷設定偏差が−0.1MWよりも大きくなったときにOFFとなる。なお、ここでは判定値を−0.1MWとしているが、これに限定するものではなく、−0.1MWよりも小さい値や大きい値などを適宜設定することができる。
【0036】
アナログメモリ34では、図2に例示するようにハイ/ロウモニタ32からLDSET増指令を入力すると(LDSET増指令がONになると)LDSETの増加を開始し、LDSET増指令を入力し続けている間(LDSET増指令がONの間)はLDSETを所定の増加率(例えば10MW/分)で徐々に増加させ、ハイ/ロウモニタ12からLDSET増指令を入力しなくなると(LDSET増指令がOFFになると)LDSETの増加を停止する。また、アナログメモリ34では、図2に例示するようにハイ/ロウモニタ33からLDSET減指令を入力すると(LDSET減指令がONになると)LDSETの減少を開始し、LDSET減指令を入力し続けている間(LDSET減指令がONの間)はLDSETを所定の減少率で徐々に減少させ、ハイ/ロウモニタ33からLDSET減指令を入力しなくなると(LDSET減指令がOFFになると)LDSETの減少を停止する。
【0037】
このようにアナログメモリ34を用いてLDSETを徐々に増加又は減少させるのは、従来と同様、急激に要求負荷設定値が変化しても、ガスタービン21の許容可能な変化率でLDSETを変化させるためである。要求負荷設定値の急激な変化に応じてLDSETも急激に変化させると、ガスタービン21の出力が急激に変化してガスタービン21の損傷などを招くおそれがある。なお、アナログメモリ34におけるLDSETの増加率と減少率は、同じでも異なっていてもよく、ガスタービン発電設備ごとにそれぞれ最適な値を適宜設定すればよい。
【0038】
そして、アナログメモリ34で設定されたLDSETは、そのまま発電機23の目標出力とするではなく、これにバイアスを加えたものを発電機23の目標出力とするため、加算器41と関数発生器35と関数発生器36とにそれぞれ出力される。
【0039】
関数発生器35では、図3に例示するようにアナログメモリ34から出力されるLDSETの増加に応じて増加する所定値を、プラス側バイアス値として設定する。図3の例では、関数発生器35は、LDSETが0MWから最大負荷設定値(図示例では240MW)まで増加するのに対応して1MWから2MWまで増加させている。即ち、プラス側バイアス値は一定値ではなく、LDSETの関数となっている。このようにプラス側バイアス値をLDSETの関数とするのは、適切なプラス側バイアス値が、ガスタービン負荷帯(発電機出力)に応じて異なるためである。シグナルジェネレータ39では零(S=0)を設定している。
【0040】
関数発生器36では、図4に例示するようにアナログメモリ34から出力されるLDSETの減少に応じて減少する所定値を、マイナス側バイアス値として設定する。図4の例では、関数発生器36は、LDSETが最大負荷設定値(図示例では240MW)から0MWまで減少するのに対応して2MWから1MWまで減少させている。即ち、マイナス側バイアス値は一定値ではなく、LDSETの関数となっている。このようにマイナス側バイアス値をLDSETの関数とするのは、適切なマイナス側バイアス値が、ガスタービン負荷帯(発電機出力)に応じて異なるためである。シグナルジェネレータ40では零(S=0)を設定している。
【0041】
なお、プラス側バイアス値及びマイナス側バイアス値は、勿論1〜2MWに限定するものではなく、要求負荷設定値の変化に対する発電機出力の追従性向上の程度(どの程度速く追従させるか)や負荷制御の安定性などを考慮して、それぞれのガスタービン発電設備に最適な値を計算や試運転などにより適宜設定すればよい。また、プラス側バイアス値とマイナス側バイアス値は、図3及び図4に示す例では同じ値であり、且つ、LDSETの増減に応じて直線的に増減しているが、これに限定するものではなく、異なる値であってもよく、LDSETの増減に応じた増減のしかたが直線的でなくてもよい。
【0042】
レート付き切替器37では、加算器41への出力として関数発生器35の出力を選択するか、シグナルジェネレータ39の出力を選択するかの切り替えを行う。即ち、レート付き切替器37では、ハイ/ロウモニタ32から入力するプラス側バイアス切替指令SW1がONのときには関数発生器35側に切り替えて、関数発生器35の出力を加算器41へ出力し、前記プラス側バイアス切替指令SW1がOFFのときにはシグナルジェネレータ39側に切り替えて、シグナルジェネレータ39の出力を加算器41へ出力する。
【0043】
また、レート付き切替器37はレート付きであるため、プラス側バイアス値を、アナログメモリ34にてLDSETの増加を開始するときに所定の増加率で徐々に零から所定値になるまで増加させ、且つ、アナログメモリ34にてLDSETの増加を終了するときに所定の減少率で前記所定値から徐々に零になるまで減少させる。
【0044】
具体的には、図5に例示するように、要求負荷設定値が増加してハイ/ロウモニタ32からLDSET増指令が出力される(ONとなる)ことにより、アナログメモリ34にてLDSETの増加を開始するときには、当該LDSET増指令と同時にハイ/ロウモニタ32から出力されるプラス側バイアス切替指令SW1もONになるため、レート付き切替器37では、加算器41への出力をシグナルジェネレータ39の出力(図中のSG(S=0))から関数発生器35の出力(図中のFX)へと切り替えるが、このときにプラス側バイアス値をステップ状に増加させるのではなく、所定の増加率で徐々に零(シグナルジェネレータ39の出力値)から所定値(関数発生器35の出力値)になるまで増加させる。また、LDSETが要求負荷設定値に達してハイ/ロウモニタ32からのLDSET増指令がOFFになることにより、アナログメモリ34にてLDSETの増加を終了するときには、当該LDSET増指令と同時にハイ/ロウモニタ32から出力されるプラス側バイアス切替指令SW1もOFFになるため、レート付き切替器37では、加算器41への出力を関数発生器35の出力(図中のFX)からシグナルジェネレータ39の出力(図中のSG(S=0))へと切り替えるが、このときにプラス側バイアス値をステップ状に減少させるのではなく、所定の減少率で徐々に所定値(関数発生器35の出力値)から零(シグナルジェネレータ39の出力値)になるまで減少させる。なお、このレート付き切替器37の具体的なレート(増加率及び減少率)は、負荷制御の安定性などを考慮してそれぞれのガスタービン発電設備に最適な値を計算や試運転などによって適宜設定すればよい。
【0045】
レート付き切替器38では、減算器42への出力として関数発生器36の出力を選択するか、シグナルジェネレータ40の出力を選択するかの切り替えを行う。即ち、レート付き切替器38では、ハイ/ロウモニタ33から入力するマイナス側バイアス切替指令SW2がONのときには関数発生器36側に切り替えて、関数発生器36の出力を減算器42へ出力し、前記マイナス側バイアス切替指令SW2がOFFのときにはシグナルジェネレータ40側に切り替えて、シグナルジェネレータ40の出力を減算器42へ出力する。
【0046】
また、レート付き切替器38はレート付きであるため、マイナス側バイアス値を、アナログメモリ34にてLDSETの減少を開始するときに所定の増加率で徐々に零から所定値になるまで増加させ、且つ、アナログメモリ34にてLDSETの減少を終了するときに所定の減少率で前記所定値から徐々に零になるまで減少させる。
【0047】
具体的には、図6に例示するように、要求負荷設定値が減少してハイ/ロウモニタ33からLDSET減指令が出力される(ONとなる)ことにより、アナログメモリ34にてLDSETの減少を開始するときには、当該LDSET減指令と同時にハイ/ロウモニタ33から出力されるマイナス側バイアス切替指令SW2もONになるため、レート付き切替器38では、減算器42への出力をシグナルジェネレータ40の出力(図中のSG(S=0))から関数発生器36の出力(図中のFX)へと切り替えるが、このときにマイナス側バイアス値をステップ状に増加させるのではなく、所定の増加率で徐々に零(シグナルジェネレータ40の出力値)から所定値(関数発生器36の出力値)になるまで増加させる。また、LDSETが要求負荷設定値に達してハイ/ロウモニタ33からのLDSET減指令がOFFになることにより、アナログメモリ34にてLDSETの減少を終了するときには、当該LDSET減指令と同時にハイ/ロウモニタ33から出力されるマイナス側バイアス切替指令SW2もOFFになるため、レート付き切替器38では、減算器42への出力を関数発生器36の出力(図中のFX)からシグナルジェネレータ40の出力(図中のSG(S=0))へと切り替えるが、このときにマイナス側バイアス値をステップ状に減少させるのではなく、所定の減少率で徐々に所定値(関数発生器36の出力値)から零(シグナルジェネレータ40の出力値)になるまで減少させる。なお、このレート付き切替器38の具体的なレート(増加率及び減少率)も、負荷制御の安定性などを考慮してそれぞれのガスタービン発電設備に最適な値を計算や試運転などによって適宜設定すればよい。
【0048】
加算器41では、アナログメモリ34から出力されるLDSETにレート付き切替器37から出力されるプラス側バイアス値を加算することによって発電機23の目標出力を設定する。減算器43では、加算器41からの出力値、即ちアナログメモリ34から出力されるLDSETから、レート付き切替器38から出力されるマイナス側バイアス値を減算することによって発電機23の目標出力を設定する。なお、ハイ/ロウモニタ32のプラス側バイアス切替指令SW1と、ハイ/ロウモニタ33のマイナス側バイアス切替指令SW2とが同時にONになることはなく、レート付き切替器37における関数発生器35側への切り替えと、レート付き切替器38における関数発生器36側への切り替えとが同時に行われることはないため、LDSETに対して、加算器41で関数発生器35の出力(プラス側バイアス値)を加算することと、減算器42で関数発生器36の出力(マイナス側バイアス値)を減算することとが同時に行われることはない。
【0049】
偏差演算器43では、加算器41又は減算器42で設定される発電機23の目標出力(LDSETにバイアスを加えたもの)と、MW変換器25で計測される発電機出力(有効電力)との偏差(出力偏差=目標出力−発電機出力)を演算する。
【0050】
そして、PI制御器44では、偏差演算器43で演算される出力偏差に基づいて比例・積分演算を行うことにより、燃料制御弁26の開度制御を行う。即ち、目標出力が発電機出力(実出力)よりも大きければ、燃料制御弁26の開度を大きくしてガスタービン21(燃焼器)への供給燃料量を増やすことにより、ガスタービン出力を増加させて発電機出力(実出力)を増加させる(発電機出力を目標出力に一致させる)。また、目標出力が発電機出力(実出力)よりも小さければ、燃料制御弁26の開度を小さくしてガスタービン1(燃焼器)への供給燃料量を減らすことにより、ガスタービン出力を減少させて発電機出力(実出力)を減少させる(発電機出力を目標出力に一致させる)。なお、偏差演算器44におけるKは比例ゲイン、sはラプラス演算子、Tは比例・積分制御の時定数(積分時定数)、1/Tは積分ゲインである。
【0051】
具体例を示すと、例えば図7及び図8に例示するように時刻T1までは要求負荷設定値とLDSETと目標出力と発電機出力(実出力)とが一致しており、時刻T1において中央給電センターからの指令により要求負荷設定値がステップ状に増加(図示例でが100MWから200MWに増加)した場合、偏差演算器31で演算される要求負荷設定値とLDSETとの偏差が0.1MW以上となるため、ハイ/ロウモニタ32からアナログメモリ34へLDSET増指令が出力される(LDSET増指令がONになる)。その結果、アナログメモリ34によりLDSETが、時刻T1から、時刻T3において要求負荷設定値(200MW)に達するまで(負荷設定偏差が0.1MWよりも小さくなってLDSET増指令がOFFになるまで)、所定の増加率で徐々に増加する。
【0052】
この場合、時刻T1においてハイ/ロウモニタ32から出力されるプラス側バイアス切替指令SW1がONになるため、レート付き切替器37では加算器41への出力をシグナルジェネレータ39の出力から関数発生器35の出力へ切り替える。その結果、レート付き切替器37から出力されるプラス側バイアス値が、零(シグナルジェネレータ39の出力値)から所定値(関数発生器35の出力値)まで所定の増加率で徐々に増加する(時刻T2まで増加する)。その後、時刻T3においてプラス側バイアス切替指令SW1がOFFになると、レート付き切替器37では加算器41への出力を関数発生器35の出力からシグナルジェネレータ39の出力へ切り替える。その結果、レート付き切替器37から出力されるプラス側バイアス値が、所定値(関数発生器35の出力値)から零(シグナルジェネレータ39の出力値)まで所定の減少率で徐々に減少する(時刻T4まで減少する)。
【0053】
そして、このときのプラス側バイアス値が、加算器41にてLDSETに加算されることにより発電機23の目標出力が設定される。続いて、この目標出力と発電機出力(有効電力)との出力偏差が偏差演算器43で演算され、この出力偏差に基づいてPI制御器44で比例・積分演算が行われ、この比例・積分演算の結果に基づいて燃料制御弁26が作動する(燃料制御弁26の弁開度が増加する)。その結果、ガスタービン21への供給燃料量が増加してガスタービン出力が増加することより、発電機出力(有効電力)が増加し、最終的には発電機出力(有効電力)を目標出力(要求負荷設定値)に一致させることができる。
【0054】
また、図9及び図10に例示するように時刻T1までは要求負荷設定値とLDSETと目標出力と発電機出力(実出力)とが一致しており、時刻T1において中央給電センターからの指令により要求負荷設定値がステップ状に減少(図示例では200MWから100MWに減少)した場合、偏差演算器31で演算される要求負荷設定値とLDSETとの偏差が−0.1MW以下となるため、ハイ/ロウモニタ33からアナログメモリ34へLDSET減指令が出力される(LDSET減指令がONになる)。その結果、アナログメモリ34によりLDSETが、時刻T1から、時刻T3において要求負荷設定値(200MW)に達するまで(負荷設定偏差が−0.1MWよりも大きくなってLDSET減指令がOFFになるまで)、所定の減少率で徐々に減少する。
【0055】
この場合、時刻T1においてハイ/ロウモニタ33から出力されるマイナス側バイアス切替指令SW2がONになるため、レート付き切替器38では減算器42への出力をシグナルジェネレータ40の出力から関数発生器36の出力へ切り替える。その結果、レート付き切替器38から出力されるマイナス側バイアス値が、零(シグナルジェネレータ40の出力値)から所定値(関数発生器36の出力値)まで所定の増加率で徐々に増加する(時刻T2まで増加する)。その後、時刻T3においてマイナス側バイアス切替指令SW2がOFFになると、レート付き切替器38では減算器42への出力を関数発生器36の出力からシグナルジェネレータ40の出力へ切り替える。その結果、レート付き切替器38から出力されるマイナス側バイアス値が、所定値(関数発生器36の出力値)から零(シグナルジェネレータ40の出力値)まで所定の減少率で徐々に減少する(時刻T4まで減少する)。
【0056】
そして、このときのマイナス側バイアス値が、減算器42にてLDSETから減算されることにより発電機23の目標出力が設定される。続いて、この目標出力と発電機出力(有効電力)との出力偏差が偏差演算器43で演算され、この出力偏差に基づいてPI制御器44で比例・積分演算が行われ、この比例・積分演算の結果に基づいて燃料制御弁26が作動する(燃料制御弁26の弁開度が減少する)。その結果、ガスタービン21への供給燃料量が減少してガスタービン出力が減少することより、発電機出力(有効電力)が減少し、最終的には発電機出力(有効電力)を目標出力(要求負荷設定値)に一致させることができる。
【0057】
以上のように、本実施の形態例のガスタービン負荷制御装置30によれば、目標出力設定手段(加算器41、減算器42)では、LDSETをそのまま発電機23の目標出力とするのではなく、要求負荷設定手段から入力する要求負荷設定値の増加に応じて負荷設定手段(偏差演算器31、ハイ/ロウモニタ32,33、アナログメモリ34)にて負荷設定値を徐々に増加させているときには、LDSETにプラス側バイアス値を加算することにより発電機23の目標出力を設定し、要求負荷設定値の減少に応じて負荷設定手段にて負荷設定値を徐々に減少させているときには、LDSETからマイナス側バイアス値を減算することにより発電機23の目標出力を設定するため、例えば電力系統の力率変動に対してガスタービン21を安定に運転することが可能なように比例・積分制御の時定数Tを長めに設定しても、要求負荷設定値の増加や減少に対して、発電機出力の追従を速くすることができる。
【0058】
例えば図8と図12を比較すると、LDSETをそのまま目標出力とする従来のガスタービン負荷制御装置の場合(図12)に比べて、LDSETにプラス側バイアス値を加算して目標出力を設定する本実施の形態例のガスタービン負荷制御装置30の場合(図8)ほうが、プラス側バイアス値を加えた分、発電機出力が、要求負荷設定値の変化に対して速く追従しているのが分かる。
【0059】
また、本実施の形態例のガスタービン負荷制御装置30によれば、第1のバイアス設定手段(関数発生器35、シグナルジェネレータ39、レート付き切替器37)では、プラス側バイアス値をLDSETの関数とし、第2のバイアス設定手段(関数発生器36、シグナルジェネレータ40、レート付き切替器38)では、マイナス側バイアス値をLDSETの関数とするため、プラス側バイアス値とマイナス側バイアス値とを、ガスタービン負荷帯(発電機出力)に応じたより適切な値とすることができる。
【0060】
また、本実施の形態例のガスタービン負荷制御装置30によれば、第1のバイアス設定手段(関数発生器35、シグナルジェネレータ39、レート付き切替器37)ではプラス側バイアス値を、負荷設定手段(偏差演算器31、ハイ/ロウモニタ32,33、アナログメモリ34)にてLDSETの増加を開始するときに所定の増加率で徐々に零から所定値になるまで増加させ、且つ、負荷設定手段にてLDSETの増加を終了するときに所定の減少率で所定値から徐々に零になるまで減少させること、また、第2のバイアス設定手段(関数発生器36、シグナルジェネレータ40、レート付き切替器38)ではプラス側バイアス値を、負荷設定手段にて負荷設定値の減少を開始するときに所定の増加率で徐々に零から所定値になるまで増加させ、且つ、負荷設定手段にて負荷設定値の減少を終了するときに所定の減少率で所定値から徐々に零になるまで減少させることを特徴とするため、プラス側バイアス値やマイナス側バイアス値をステップ状に変化させる場合に比べて、より安定した負荷制御が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明はガスタービンへの供給燃料量を制御してガスタービン出力(発電機出力)が目標出力となるように制御するガスタービン負荷制御装置に関するものであり、中央給電センターなどの要求負荷設定手段から要求される(入力する)要求負荷設定値の変化に対して発電機出力の追従性(応答性)を向上させる場合に適用して有用なものである。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施の形態例に係るガスタービン負荷制御装置の構成を示すブロック図である。
【図2】前記ガスタービン負荷制御装置に備えたアナログメモリの機能説明図である。
【図3】前記ガスタービン負荷制御装置に備えた関数発生器の機能説明図である。
【図4】前記ガスタービン負荷制御装置に備えた関数発生器の機能説明図である。
【図5】前記ガスタービン負荷制御装置に備えたレート付き切替器の機能説明図である。
【図6】前記ガスタービン負荷制御装置に備えたレート付き切替器の機能説明図である。
【図7】前記ガスタービン負荷制御装置を適用した場合の要求負荷設定値の増加に対するLDSET、目標出力及び発電機出力(実出力)などの変化を個別に示す説明図である。
【図8】前記ガスタービン負荷制御装置を適用した場合の要求負荷設定値の増加に対するLDSET、目標出力及び発電機出力(実出力)の変化をまとめて示す説明図である。
【図9】前記ガスタービン負荷制御装置を適用した場合の要求負荷設定値の減少に対するLDSET、目標出力及び発電機出力(実出力)などの変化を個別に示す説明図である。
【図10】前記ガスタービン負荷制御装置を適用した場合の要求負荷設定値の減少に対するLDSET、目標出力及び発電機出力(実出力)の変化をまとめて示す説明図である。
【図11】従来のガスタービン負荷制御装置の構成を示すブロック図である。
【図12】前記ガスタービン負荷制御装置を適用した場合の要求負荷設定値の増加に対するLDSET(目標出力)及び発電機出力(実出力)の変化を示す説明図である。
【符号の説明】
【0063】
21 ガスタービン
22 回転軸
23 発電機
24 回転軸
25 MW変換器
26 燃料制御弁
30 ガスタービン負荷制御装置
31 偏差演算器(減算器)
32,33 ハイ/ロウモニタ
34 アナログメモリ
35,36 関数発生器
37,38 レート付き切替器
39,40 シグナルジェネレータ
41 加算器
42 減算器
43 偏差演算器(減算器)
44 PI制御器
【技術分野】
【0001】
本発明はガスタービンへの供給燃料量を制御してガスタービン出力(発電機出力)が目標出力となるように制御するガスタービン負荷制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービン発電設備において発電機が併入運転中のとき、即ち発電機を電力系統(電力ネットワーク)へ接続して発電機の発電電力を電力系統へ送電しているときには、ガスタービン発電設備に備えたガスタービン負荷制御装置により、発電機出力(有効電力)が電力系統の要求負荷設定値の変化に追従するようにガスタービンへの供給燃料量を制御する必要がある。要求負荷設定値は、通常、中央給電センターから要求負荷設定指令としてガスタービン負荷制御装置へ送られてくる。
【0003】
図11は従来のガスタービン負荷制御装置の構成を示すブロック図、図12は前記ガスタービン負荷制御装置を適用した場合の要求負荷設定値の増加に対するLDSET(目標出力)及び発電機出力(実出力)の変化を示す説明図である。
【0004】
図11に示すように、ガスタービン発電設備ではガスタービン1の回転軸2に発電機3の回転軸4を接続した構成となっている。詳細な図示は省略するが、ガスタービン1はガスタービン本体と圧縮機と燃焼器とを有している。ガスタービン1が起動すると、発電機3がガスタービン1によって回転駆動されることにより発電する。この発電電力は発電機3から図示しない遮断器や変圧器などを介して電力系統へと送電されるが、このときの発電電力(有効電力)の値が有効電力計であるMW変換器5によって計測される。そして、このMW変換器5の計測値(実出力)が、ガスタービン負荷制御装置10へとフィードバックされるようになっている。
【0005】
また、ガスタービン1の燃焼器には燃料制御弁6が接続されており、図示しない燃料タンクなどの燃料供給設備から送られてくる気体又は液体などのガスタービン燃料が、燃料制御弁6で流量制御されて燃焼器へ供給されるようになっている。そして、この燃料制御弁6の開閉制御(供給燃料量の制御)が、ガスタービン負荷制御装置10によって行われる。ガスタービン負荷制御装置10は偏差演算器(減算器)11,15、ハイ/ロウモニタ(比較器)12,13、アナログメモリ15及びPI制御器16を有してなるものである。
【0006】
偏差演算器11では図示しない中央給電センター(上位コンピュータ)から送られてくる要求負荷設定値(指令)と、アナログメモリ14の出力であるLDSET(負荷設定値)との偏差(負荷設定偏差=要求負荷設定値−LDSET)を演算する。
【0007】
ハイ/ロウモニタ12では前記負荷設定偏差が0.1MW以上(負荷設定偏差≧0.1MW)であるか否かを判定し、0.1MW以上であると判定した場合にはアナログメモリ14に対してLDSET増指令を出力する。即ち、LDSET増指令は前記負荷設定偏差が0.1MW以上となったときにONとなり、前記負荷設定偏差が0.1MWよりも小さくなったときにOFFとなる。
【0008】
ハイ/ロウモニタ13では前記負荷設定偏差が−0.1MW以下(負荷設定偏差≦−0.1MW)であるか否かを判定し、−0.1MW以下であると判定した場合にはアナログメモリ14に対してLDSET減指令を出力する。即ち、LDSET減指令は前記負荷設定偏差が−0.1MW以下となったときにONとなり、前記負荷設定偏差が−0.1MWよりも大きくなったときにOFFとなる。
【0009】
アナログメモリ14ではハイ/ロウモニタ12からLDSET増指令を入力すると(LDSET増指令がONになると)LDSETの増加を開始し、LDSET増指令を入力し続けている間(LDSET増指令がONの間)はLDSETを所定の増加率(例えば10MW/分)で徐々に増加させ、ハイ/ロウモニタ12からLDSET増指令を入力しなくなると(LDSET増指令がOFFになると)LDSETの増加を停止する。また、アナログメモリ14ではハイ/ロウモニタ13からLDSET減指令を入力すると(LDSET減指令がONになると)LDSETの減少を開始し、LDSET減指令を入力し続けている間(LDSET減指令がONの間)はLDSETを所定の減少率(例えば−10MW/分)で徐々に減少させ、ハイ/ロウモニタ13からLDSET減指令を入力しなくなると(LDSET減指令がOFFになると)LDSETの減少を停止する。そして、このLDSETが目標出力として、アナログメモリ14から偏差演算器(減算器)15へ出力される。
【0010】
偏差演算器15ではアナログメモリ14で設定される目標出力(LDSET)と、MW変換器5で計測される発電機出力(有効電力)との偏差(出力偏差=目標出力−発電機出力)を演算する。
【0011】
そして、PI制御器16では、偏差演算器15で演算される出力偏差に基づいて比例・積分演算を行うことにより、燃料制御弁6の開度制御を行う。即ち、目標出力が発電機出力よりも大きければ、燃料制御弁6の開度を大きくしてガスタービン1(燃焼器)への供給燃料量を増やすことにより、ガスタービン1の出力を増加させて発電機3の出力を増加させる(発電機出力を目標出力に一致させる)。また、目標出力が発電機出力よりも小さければ、燃料制御弁6の開度を小さくしてガスタービン1(燃焼器)への供給燃料量を減らすことにより、ガスタービン出力を減少させて発電機出力を減少させる(発電機出力を目標出力に一致させる)。なお、偏差演算器16におけるKは比例ゲイン、sはラプラス演算子、Tは比例・積分制御の時定数(積分時定数)、1/Tは積分ゲインである。
【0012】
例えば図12に例示するように時刻T1までは要求負荷設定値と目標出力(LDSET)と発電機出力(実出力)とが一致しており、時刻T1において中央給電センターからの指令により要求負荷設定値がステップ状に増加(図示例では100MWから200MWに増加)した場合、偏差演算器11で演算される要求負荷設定値とLDSETとの偏差が0.1MW以上となるため、ハイ/ロウモニタ12からアナログメモリ14へLDSET増指令が出力される(LDSET増指令がONになる)。その結果、アナログメモリ14によりLDSETが、時刻T1から、時刻T2において要求負荷設定値(200MW)に達するまで(負荷設定偏差が0.1MWよりも小さくなってLDSET増指令がOFFになるまで)、所定の増加率で徐々に増加する。即ち、目標出力が所定の増加率で徐々に増加する。
【0013】
そして、このときの目標出力と発電機出力(有効電力)との出力偏差が偏差演算器15で演算され、この出力偏差に基づいてPI制御器16で比例・積分演算が行われ、この比例・積分演算の結果に基づいて燃料制御弁6が作動する(燃料制御弁6の弁開度が増加する)。その結果、ガスタービン1への供給燃料量が増加してガスタービン出力が増加することより発電機出力(有効電力)が増加し、最終的には発電機出力(有効電力)を目標出力(要求負荷設定値)に一致させることができる。
【0014】
なお、アナログメモリ14を用いてLDSET(目標出力)を徐々に増加又は減少させるのは、急激に要求負荷設定値が変化しても、ガスタービン1の許容可能な変化率でLDSET(目標出力)を変化させるためである。要求負荷設定値の急激な変化に応じてLDSET(目標出力)も急激に変化させてしまうと、ガスタービン1の出力が急激に変化してガスタービン1の損傷などを招くおそれがある。
【0015】
本願に関する先行技術文献としては下記の特許文献1がある。特許文献1には多軸コンバインドサイクルプラントの負荷制御方法及びその装置が開示されている。
【0016】
【特許文献1】特開平10−196315号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
最近では送電側(電力系統側)からガスタービン発電設備側に対して、要求負荷設定値の変化に対する発電機出力の追従を速くすることが要求されるようになってきている。例えば、発電会社と送電会社が異なる国においては送電会社から発電会社に対して、要求負荷設定値の変化に対する発電機出力の追従を速くすることが要求されている。
【0018】
これに対し、従来のガスタービン負荷制御装置10では比例・積分制御の時定数Tを短くすれば(即ち積分ゲイン1/Tを大きくすれば)要求負荷設定値の変化に対する発電機出力の追従を速くすることができるが、比例・積分制御の時定数Tを短くすると、電力系統の力率の変動に伴う発電機出力(有効電力)の変動に対して、ガスタービン負荷制御装置10が、発電機出力(有効電力)を一定に保とうとして、より頻繁にガスタービン1への供給燃料量の増減を繰り返すことになる。このことはガスタービン1にとって好ましくない。
【0019】
このため、比例・積分制御の時定数Tはガスタービン1への供給燃料量が安定するように長め設定する必要があり、比例・積分制御の時定数Tを長めに設定すると、要求負荷設定値の変化したときの発電機出力の追従が遅くなるため、電力系統側(送電会社側)からの追従性向上の要求を満たすことができない。
【0020】
従って本発明は上記の事情に鑑み、比例・積分制御の時定数を長めに設定しても、要求負荷設定値の変化に対する発電機出力(有効電力)の追従を速くすることができるガスタービン負荷制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記課題を解決する第1発明のガスタービン負荷制御装置は、要求負荷設定値が増加したしたときには負荷設定値を前記要求負荷設定値に達するまで所定の増加率で徐々に増加させ、前記要求負荷設定値が減少したときには前記負荷設定値を前記要求負荷設定値に達するまで所定の減少率で徐々に減少させる負荷設定手段と、
前記負荷設定値に対するバイアス値として、プラス側バイアス値を設定する第1のバイアス設定手段と、
前記負荷設定値に対するバイアス値として、マイナス側バイアス値とを設定する第2のバイアス設定手段と、
前記要求負荷設定値の増加に応じて前記負荷設定手段にて前記負荷設定値を徐々に増加させているときには、前記負荷設定値に前記プラス側バイアス値を加算することにより発電機の目標出力を設定し、前記要求負荷設定値の減少に応じて前記負荷設定手段にて前記負荷設定値を徐々に減少させているときには、前記負荷設定値から前記マイナス側バイアス値を減算することにより前記目標出力を設定する目標出力設定手段と、
前記目標出力と、発電機出力計測手段で計測される発電機出力との出力偏差を演算する出力偏差演算手段と、
前記出力偏差に基づいて比例・積分演算を行うことにより、前記発電機を回転駆動するガスタービンの燃料の流量制御手段の制御を行う比例・積分制御手段とを有することを特徴とする。
【0022】
また、第2発明のガスタービン負荷制御装置は、第1発明のガスタービン負荷制御装置において、
前記第1のバイアス設定手段では、前記プラス側バイアス値を前記負荷設定値の関数とし、
前記第2のバイアス設定手段では、前記マイナス側バイアス値を前記負荷設定値の関数とすることを特徴とする。
【0023】
また、第3発明のガスタービン負荷制御装置は、第1又は第2発明のガスタービン負荷制御装置において、
前記第1のバイアス設定手段では、前記プラス側バイアス値を、前記負荷設定手段にて前記負荷設定値の増加を開始するときに所定の増加率で徐々に零から所定値になるまで増加させ、且つ、前記負荷設定手段にて前記負荷設定値の増加を終了するときに所定の減少率で前記所定値から徐々に零になるまで減少させること、
前記第2のバイアス設定手段では、前記プラス側バイアス値を、前記負荷設定手段にて前記負荷設定値の減少を開始するときに所定の増加率で徐々に零から所定値になるまで増加させ、且つ、前記負荷設定手段にて前記負荷設定値の減少を終了するときに所定の減少率で前記所定値から徐々に零になるまで減少させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
第1発明のガスタービン負荷制御装置によれば、目標出力設定手段では、負荷設定値をそのまま発電機の目標出力とするのではなく、要求負荷設定値の増加に応じて負荷設定手段にて負荷設定値を徐々に増加させているときには、負荷設定値にプラス側バイアス値を加算することにより発電機の目標出力を設定し、要求負荷設定値の減少に応じて負荷設定手段にて負荷設定値を徐々に減少させているときには、負荷設定値からマイナス側バイアス値を減算することにより発電機の目標出力を設定するため、例えば電力系統の力率変動に対してガスタービンを安定に運転することが可能なように比例・積分制御の時定数を長めに設定しても、要求負荷設定値の増加や減少に対して、発電機出力の追従を速くすることができる。
【0025】
第2発明のガスタービン負荷制御装置によれば、第1のバイアス設定手段では、プラス側バイアス値を負荷設定値の関数とし、第2のバイアス設定手段では、マイナス側バイアス値を負荷設定値の関数とするため、プラス側バイアス値とマイナス側バイアス値とを、ガスタービン負荷帯(発電機出力)に応じたより適切な値とすることができる。
【0026】
第3発明のガスタービン負荷制御装置によれば、第1のバイアス設定手段ではプラス側バイアス値を、負荷設定手段にて負荷設定値の増加を開始するときに所定の増加率で徐々に零から所定値になるまで増加させ、且つ、負荷設定手段にて負荷設定値の増加を終了するときに所定の減少率で所定値から徐々に零になるまで減少させること、また、第2のバイアス設定手段ではプラス側バイアス値を、負荷設定手段にて負荷設定値の減少を開始するときに所定の増加率で徐々に零から所定値になるまで増加させ、且つ、負荷設定手段にて負荷設定値の減少を終了するときに所定の減少率で所定値から徐々に零になるまで減少させることを特徴とするため、プラス側バイアス値やマイナス側バイアス値をステップ状に変化させる場合に比べて、より安定した負荷制御が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0028】
図1は本発明の実施の形態例に係るガスタービン負荷制御装置の構成を示すブロック図、図2は前記ガスタービン負荷制御装置に備えたアナログメモリの機能説明図、図3及び図4は前記ガスタービン負荷制御装置に備えた関数発生器の機能説明図、図5及び図6は前記ガスタービン負荷制御装置に備えたレート付き切替器の機能説明図である。
【0029】
また、図7は前記ガスタービン負荷制御装置を適用した場合の要求負荷設定値の増加に対するLDSET、目標出力及び発電機出力(実出力)などの変化を個別に示す説明図、図8は前記ガスタービン負荷制御装置を適用した場合の要求負荷設定値の増加に対するLDSET、目標出力及び発電機出力(実出力)の変化をまとめて示す説明図、図9は前記ガスタービン負荷制御装置を適用した場合の要求負荷設定値の減少に対するLDSET、目標出力及び発電機出力(実出力)などの変化を個別に示す説明図、図10は前記ガスタービン負荷制御装置を適用した場合の要求負荷設定値の減少に対するLDSET、目標出力及び発電機出力(実出力)の変化をまとめて示す説明図である。
【0030】
図1に示すように、ガスタービン発電設備ではガスタービン21の回転軸22に発電機23の回転軸14を接続した構成となっている。詳細な図示は省略するが、ガスタービン21はガスタービン本体と圧縮機と燃焼器とを有している。ガスタービン21が起動すると、発電機23がガスタービン21によって回転駆動されることにより発電する。この発電電力は発電機23から図示しない遮断器や変圧器などを介して電力系統へと送電されるが、このときの発電電力(有効電力)の値が有効電力計であるMW変換器25によって計測される。そして、このMW変換器25の計測値(実出力)が、ガスタービン負荷制御装置30へとフィードバックされるようになっている。
【0031】
また、ガスタービン21の燃焼器にはガスタービン燃料の流量制御手段として、燃料制御弁26が接続されており、図示しない燃料タンクなどの燃料供給設備から送られてくる気体又は液体などのガスタービン燃料が、燃料制御弁26で流量制御されて燃焼器へ供給されるようになっている。そして、この燃料制御弁26の開閉制御(供給燃料量の制御)が、ガスタービン負荷制御装置30によって行われる。
【0032】
ガスタービン負荷制御装置30は偏差演算器(減算器)31,44、ハイ/ロウモニタ(比較器)32,33、アナログメモリ34、関数発生器35,36、レート付き切替器37,38、シグナルジェネレータ39,40、加算器41、減算器42、PI制御器44を有してなるものである。偏差演算器31、ハイ/ロウモニタ32,33及びアナログメモリ34は負荷設定手段として機能し、関数発生器35、シグナルジェネレータ39及びレート付き切替器37は第1のバイアス設定手段として機能し、関数発生器36、シグナルジェネレータ40及びレート付き切替器38は第2のバイアス設定手段として機能し、加算器41及び減算器42は目標出力設定手段として機能し、偏差演算器43は出力偏差演算手段として機能し、PI制御器44は比例・積分制御手段として機能する。なお、これらのガスタービン負荷制御装置30の各機能はソフトウエアで構成してコンピュータで実行するが、これに限定するものではなく、ハードウエアで構成してもよい。
【0033】
偏差演算器31は要求負荷設定手段としての図示しない中央給電センター(上位コンピュータ)から送られてくる要求負荷設定値(指令)と、アナログメモリ34の出力であるLDSET(負荷設定値)との偏差(負荷設定偏差=要求負荷設定値−LDSET)を演算する。なお、要求負荷設定手段は、必ずしも中央給電センター(上位コンピュータ)に限定するものではなく、その他のものであってもよい。例えばガスタービン発電設備に設けた負荷設定器などであってもよい。
【0034】
ハイ/ロウモニタ32では要求負荷設定値の増加した際、LDSETが増加して当該要求負荷設定値に達したか否かを判定する。具体的には、ハイ/ロウモニタ32では前記負荷設定偏差が0.1MW以上(負荷設定偏差≧0.1MW)であるか否かを判定し、0.1MW以上であると判定した場合には、アナログメモリ34に対してLDSET増指令を出力し、且つ、レート付き切替器37に対してプラス側バイアス切替指令SW1(ON)を出力する。即ち、LDSET増指令は前記負荷設定偏差が0.1MW以上となったときにONとなり、前記負荷設定偏差が0.1MWよりも小さくなったときにOFFとなる。また、プラス側バイアス切替指令SW1は前記負荷設定偏差が0.1MW以上となったときにONとなり、前記負荷設定偏差が0.1MWよりも小さくなったときにOFFとなる。なお、ここでは判定値を0.1MWとしているが、これに限定するものではなく、0.1MWよりも小さい値や大きい値などを適宜設定することができる。
【0035】
ハイ/ロウモニタ33では要求負荷設定値の減少した際、LDSETが減少して当該要求負荷設定値に達したか否かを判定する。具体的には、ハイ/ロウモニタ33では前記負荷設定偏差が−0.1MW以下(負荷設定偏差≦−0.1MW)であるか否かを判定し、−0.1MW以下であると判定した場合には、アナログメモリ34に対してLDSET減指令を出力し、レート付き切替器37に対してマイナス側バイアス切替指令SW2(ON)を出力する。即ち、LDSET減指令は前記負荷設定偏差が−0.1MW以下となったときにONとなり、前記負荷設定偏差が−0.1MWよりも大きくなったときにOFFとなる。また、マイナス側バイアス切替指令SW2は前記負荷設定偏差が−0.1MW以下となったときにONとなり、前記負荷設定偏差が−0.1MWよりも大きくなったときにOFFとなる。なお、ここでは判定値を−0.1MWとしているが、これに限定するものではなく、−0.1MWよりも小さい値や大きい値などを適宜設定することができる。
【0036】
アナログメモリ34では、図2に例示するようにハイ/ロウモニタ32からLDSET増指令を入力すると(LDSET増指令がONになると)LDSETの増加を開始し、LDSET増指令を入力し続けている間(LDSET増指令がONの間)はLDSETを所定の増加率(例えば10MW/分)で徐々に増加させ、ハイ/ロウモニタ12からLDSET増指令を入力しなくなると(LDSET増指令がOFFになると)LDSETの増加を停止する。また、アナログメモリ34では、図2に例示するようにハイ/ロウモニタ33からLDSET減指令を入力すると(LDSET減指令がONになると)LDSETの減少を開始し、LDSET減指令を入力し続けている間(LDSET減指令がONの間)はLDSETを所定の減少率で徐々に減少させ、ハイ/ロウモニタ33からLDSET減指令を入力しなくなると(LDSET減指令がOFFになると)LDSETの減少を停止する。
【0037】
このようにアナログメモリ34を用いてLDSETを徐々に増加又は減少させるのは、従来と同様、急激に要求負荷設定値が変化しても、ガスタービン21の許容可能な変化率でLDSETを変化させるためである。要求負荷設定値の急激な変化に応じてLDSETも急激に変化させると、ガスタービン21の出力が急激に変化してガスタービン21の損傷などを招くおそれがある。なお、アナログメモリ34におけるLDSETの増加率と減少率は、同じでも異なっていてもよく、ガスタービン発電設備ごとにそれぞれ最適な値を適宜設定すればよい。
【0038】
そして、アナログメモリ34で設定されたLDSETは、そのまま発電機23の目標出力とするではなく、これにバイアスを加えたものを発電機23の目標出力とするため、加算器41と関数発生器35と関数発生器36とにそれぞれ出力される。
【0039】
関数発生器35では、図3に例示するようにアナログメモリ34から出力されるLDSETの増加に応じて増加する所定値を、プラス側バイアス値として設定する。図3の例では、関数発生器35は、LDSETが0MWから最大負荷設定値(図示例では240MW)まで増加するのに対応して1MWから2MWまで増加させている。即ち、プラス側バイアス値は一定値ではなく、LDSETの関数となっている。このようにプラス側バイアス値をLDSETの関数とするのは、適切なプラス側バイアス値が、ガスタービン負荷帯(発電機出力)に応じて異なるためである。シグナルジェネレータ39では零(S=0)を設定している。
【0040】
関数発生器36では、図4に例示するようにアナログメモリ34から出力されるLDSETの減少に応じて減少する所定値を、マイナス側バイアス値として設定する。図4の例では、関数発生器36は、LDSETが最大負荷設定値(図示例では240MW)から0MWまで減少するのに対応して2MWから1MWまで減少させている。即ち、マイナス側バイアス値は一定値ではなく、LDSETの関数となっている。このようにマイナス側バイアス値をLDSETの関数とするのは、適切なマイナス側バイアス値が、ガスタービン負荷帯(発電機出力)に応じて異なるためである。シグナルジェネレータ40では零(S=0)を設定している。
【0041】
なお、プラス側バイアス値及びマイナス側バイアス値は、勿論1〜2MWに限定するものではなく、要求負荷設定値の変化に対する発電機出力の追従性向上の程度(どの程度速く追従させるか)や負荷制御の安定性などを考慮して、それぞれのガスタービン発電設備に最適な値を計算や試運転などにより適宜設定すればよい。また、プラス側バイアス値とマイナス側バイアス値は、図3及び図4に示す例では同じ値であり、且つ、LDSETの増減に応じて直線的に増減しているが、これに限定するものではなく、異なる値であってもよく、LDSETの増減に応じた増減のしかたが直線的でなくてもよい。
【0042】
レート付き切替器37では、加算器41への出力として関数発生器35の出力を選択するか、シグナルジェネレータ39の出力を選択するかの切り替えを行う。即ち、レート付き切替器37では、ハイ/ロウモニタ32から入力するプラス側バイアス切替指令SW1がONのときには関数発生器35側に切り替えて、関数発生器35の出力を加算器41へ出力し、前記プラス側バイアス切替指令SW1がOFFのときにはシグナルジェネレータ39側に切り替えて、シグナルジェネレータ39の出力を加算器41へ出力する。
【0043】
また、レート付き切替器37はレート付きであるため、プラス側バイアス値を、アナログメモリ34にてLDSETの増加を開始するときに所定の増加率で徐々に零から所定値になるまで増加させ、且つ、アナログメモリ34にてLDSETの増加を終了するときに所定の減少率で前記所定値から徐々に零になるまで減少させる。
【0044】
具体的には、図5に例示するように、要求負荷設定値が増加してハイ/ロウモニタ32からLDSET増指令が出力される(ONとなる)ことにより、アナログメモリ34にてLDSETの増加を開始するときには、当該LDSET増指令と同時にハイ/ロウモニタ32から出力されるプラス側バイアス切替指令SW1もONになるため、レート付き切替器37では、加算器41への出力をシグナルジェネレータ39の出力(図中のSG(S=0))から関数発生器35の出力(図中のFX)へと切り替えるが、このときにプラス側バイアス値をステップ状に増加させるのではなく、所定の増加率で徐々に零(シグナルジェネレータ39の出力値)から所定値(関数発生器35の出力値)になるまで増加させる。また、LDSETが要求負荷設定値に達してハイ/ロウモニタ32からのLDSET増指令がOFFになることにより、アナログメモリ34にてLDSETの増加を終了するときには、当該LDSET増指令と同時にハイ/ロウモニタ32から出力されるプラス側バイアス切替指令SW1もOFFになるため、レート付き切替器37では、加算器41への出力を関数発生器35の出力(図中のFX)からシグナルジェネレータ39の出力(図中のSG(S=0))へと切り替えるが、このときにプラス側バイアス値をステップ状に減少させるのではなく、所定の減少率で徐々に所定値(関数発生器35の出力値)から零(シグナルジェネレータ39の出力値)になるまで減少させる。なお、このレート付き切替器37の具体的なレート(増加率及び減少率)は、負荷制御の安定性などを考慮してそれぞれのガスタービン発電設備に最適な値を計算や試運転などによって適宜設定すればよい。
【0045】
レート付き切替器38では、減算器42への出力として関数発生器36の出力を選択するか、シグナルジェネレータ40の出力を選択するかの切り替えを行う。即ち、レート付き切替器38では、ハイ/ロウモニタ33から入力するマイナス側バイアス切替指令SW2がONのときには関数発生器36側に切り替えて、関数発生器36の出力を減算器42へ出力し、前記マイナス側バイアス切替指令SW2がOFFのときにはシグナルジェネレータ40側に切り替えて、シグナルジェネレータ40の出力を減算器42へ出力する。
【0046】
また、レート付き切替器38はレート付きであるため、マイナス側バイアス値を、アナログメモリ34にてLDSETの減少を開始するときに所定の増加率で徐々に零から所定値になるまで増加させ、且つ、アナログメモリ34にてLDSETの減少を終了するときに所定の減少率で前記所定値から徐々に零になるまで減少させる。
【0047】
具体的には、図6に例示するように、要求負荷設定値が減少してハイ/ロウモニタ33からLDSET減指令が出力される(ONとなる)ことにより、アナログメモリ34にてLDSETの減少を開始するときには、当該LDSET減指令と同時にハイ/ロウモニタ33から出力されるマイナス側バイアス切替指令SW2もONになるため、レート付き切替器38では、減算器42への出力をシグナルジェネレータ40の出力(図中のSG(S=0))から関数発生器36の出力(図中のFX)へと切り替えるが、このときにマイナス側バイアス値をステップ状に増加させるのではなく、所定の増加率で徐々に零(シグナルジェネレータ40の出力値)から所定値(関数発生器36の出力値)になるまで増加させる。また、LDSETが要求負荷設定値に達してハイ/ロウモニタ33からのLDSET減指令がOFFになることにより、アナログメモリ34にてLDSETの減少を終了するときには、当該LDSET減指令と同時にハイ/ロウモニタ33から出力されるマイナス側バイアス切替指令SW2もOFFになるため、レート付き切替器38では、減算器42への出力を関数発生器36の出力(図中のFX)からシグナルジェネレータ40の出力(図中のSG(S=0))へと切り替えるが、このときにマイナス側バイアス値をステップ状に減少させるのではなく、所定の減少率で徐々に所定値(関数発生器36の出力値)から零(シグナルジェネレータ40の出力値)になるまで減少させる。なお、このレート付き切替器38の具体的なレート(増加率及び減少率)も、負荷制御の安定性などを考慮してそれぞれのガスタービン発電設備に最適な値を計算や試運転などによって適宜設定すればよい。
【0048】
加算器41では、アナログメモリ34から出力されるLDSETにレート付き切替器37から出力されるプラス側バイアス値を加算することによって発電機23の目標出力を設定する。減算器43では、加算器41からの出力値、即ちアナログメモリ34から出力されるLDSETから、レート付き切替器38から出力されるマイナス側バイアス値を減算することによって発電機23の目標出力を設定する。なお、ハイ/ロウモニタ32のプラス側バイアス切替指令SW1と、ハイ/ロウモニタ33のマイナス側バイアス切替指令SW2とが同時にONになることはなく、レート付き切替器37における関数発生器35側への切り替えと、レート付き切替器38における関数発生器36側への切り替えとが同時に行われることはないため、LDSETに対して、加算器41で関数発生器35の出力(プラス側バイアス値)を加算することと、減算器42で関数発生器36の出力(マイナス側バイアス値)を減算することとが同時に行われることはない。
【0049】
偏差演算器43では、加算器41又は減算器42で設定される発電機23の目標出力(LDSETにバイアスを加えたもの)と、MW変換器25で計測される発電機出力(有効電力)との偏差(出力偏差=目標出力−発電機出力)を演算する。
【0050】
そして、PI制御器44では、偏差演算器43で演算される出力偏差に基づいて比例・積分演算を行うことにより、燃料制御弁26の開度制御を行う。即ち、目標出力が発電機出力(実出力)よりも大きければ、燃料制御弁26の開度を大きくしてガスタービン21(燃焼器)への供給燃料量を増やすことにより、ガスタービン出力を増加させて発電機出力(実出力)を増加させる(発電機出力を目標出力に一致させる)。また、目標出力が発電機出力(実出力)よりも小さければ、燃料制御弁26の開度を小さくしてガスタービン1(燃焼器)への供給燃料量を減らすことにより、ガスタービン出力を減少させて発電機出力(実出力)を減少させる(発電機出力を目標出力に一致させる)。なお、偏差演算器44におけるKは比例ゲイン、sはラプラス演算子、Tは比例・積分制御の時定数(積分時定数)、1/Tは積分ゲインである。
【0051】
具体例を示すと、例えば図7及び図8に例示するように時刻T1までは要求負荷設定値とLDSETと目標出力と発電機出力(実出力)とが一致しており、時刻T1において中央給電センターからの指令により要求負荷設定値がステップ状に増加(図示例でが100MWから200MWに増加)した場合、偏差演算器31で演算される要求負荷設定値とLDSETとの偏差が0.1MW以上となるため、ハイ/ロウモニタ32からアナログメモリ34へLDSET増指令が出力される(LDSET増指令がONになる)。その結果、アナログメモリ34によりLDSETが、時刻T1から、時刻T3において要求負荷設定値(200MW)に達するまで(負荷設定偏差が0.1MWよりも小さくなってLDSET増指令がOFFになるまで)、所定の増加率で徐々に増加する。
【0052】
この場合、時刻T1においてハイ/ロウモニタ32から出力されるプラス側バイアス切替指令SW1がONになるため、レート付き切替器37では加算器41への出力をシグナルジェネレータ39の出力から関数発生器35の出力へ切り替える。その結果、レート付き切替器37から出力されるプラス側バイアス値が、零(シグナルジェネレータ39の出力値)から所定値(関数発生器35の出力値)まで所定の増加率で徐々に増加する(時刻T2まで増加する)。その後、時刻T3においてプラス側バイアス切替指令SW1がOFFになると、レート付き切替器37では加算器41への出力を関数発生器35の出力からシグナルジェネレータ39の出力へ切り替える。その結果、レート付き切替器37から出力されるプラス側バイアス値が、所定値(関数発生器35の出力値)から零(シグナルジェネレータ39の出力値)まで所定の減少率で徐々に減少する(時刻T4まで減少する)。
【0053】
そして、このときのプラス側バイアス値が、加算器41にてLDSETに加算されることにより発電機23の目標出力が設定される。続いて、この目標出力と発電機出力(有効電力)との出力偏差が偏差演算器43で演算され、この出力偏差に基づいてPI制御器44で比例・積分演算が行われ、この比例・積分演算の結果に基づいて燃料制御弁26が作動する(燃料制御弁26の弁開度が増加する)。その結果、ガスタービン21への供給燃料量が増加してガスタービン出力が増加することより、発電機出力(有効電力)が増加し、最終的には発電機出力(有効電力)を目標出力(要求負荷設定値)に一致させることができる。
【0054】
また、図9及び図10に例示するように時刻T1までは要求負荷設定値とLDSETと目標出力と発電機出力(実出力)とが一致しており、時刻T1において中央給電センターからの指令により要求負荷設定値がステップ状に減少(図示例では200MWから100MWに減少)した場合、偏差演算器31で演算される要求負荷設定値とLDSETとの偏差が−0.1MW以下となるため、ハイ/ロウモニタ33からアナログメモリ34へLDSET減指令が出力される(LDSET減指令がONになる)。その結果、アナログメモリ34によりLDSETが、時刻T1から、時刻T3において要求負荷設定値(200MW)に達するまで(負荷設定偏差が−0.1MWよりも大きくなってLDSET減指令がOFFになるまで)、所定の減少率で徐々に減少する。
【0055】
この場合、時刻T1においてハイ/ロウモニタ33から出力されるマイナス側バイアス切替指令SW2がONになるため、レート付き切替器38では減算器42への出力をシグナルジェネレータ40の出力から関数発生器36の出力へ切り替える。その結果、レート付き切替器38から出力されるマイナス側バイアス値が、零(シグナルジェネレータ40の出力値)から所定値(関数発生器36の出力値)まで所定の増加率で徐々に増加する(時刻T2まで増加する)。その後、時刻T3においてマイナス側バイアス切替指令SW2がOFFになると、レート付き切替器38では減算器42への出力を関数発生器36の出力からシグナルジェネレータ40の出力へ切り替える。その結果、レート付き切替器38から出力されるマイナス側バイアス値が、所定値(関数発生器36の出力値)から零(シグナルジェネレータ40の出力値)まで所定の減少率で徐々に減少する(時刻T4まで減少する)。
【0056】
そして、このときのマイナス側バイアス値が、減算器42にてLDSETから減算されることにより発電機23の目標出力が設定される。続いて、この目標出力と発電機出力(有効電力)との出力偏差が偏差演算器43で演算され、この出力偏差に基づいてPI制御器44で比例・積分演算が行われ、この比例・積分演算の結果に基づいて燃料制御弁26が作動する(燃料制御弁26の弁開度が減少する)。その結果、ガスタービン21への供給燃料量が減少してガスタービン出力が減少することより、発電機出力(有効電力)が減少し、最終的には発電機出力(有効電力)を目標出力(要求負荷設定値)に一致させることができる。
【0057】
以上のように、本実施の形態例のガスタービン負荷制御装置30によれば、目標出力設定手段(加算器41、減算器42)では、LDSETをそのまま発電機23の目標出力とするのではなく、要求負荷設定手段から入力する要求負荷設定値の増加に応じて負荷設定手段(偏差演算器31、ハイ/ロウモニタ32,33、アナログメモリ34)にて負荷設定値を徐々に増加させているときには、LDSETにプラス側バイアス値を加算することにより発電機23の目標出力を設定し、要求負荷設定値の減少に応じて負荷設定手段にて負荷設定値を徐々に減少させているときには、LDSETからマイナス側バイアス値を減算することにより発電機23の目標出力を設定するため、例えば電力系統の力率変動に対してガスタービン21を安定に運転することが可能なように比例・積分制御の時定数Tを長めに設定しても、要求負荷設定値の増加や減少に対して、発電機出力の追従を速くすることができる。
【0058】
例えば図8と図12を比較すると、LDSETをそのまま目標出力とする従来のガスタービン負荷制御装置の場合(図12)に比べて、LDSETにプラス側バイアス値を加算して目標出力を設定する本実施の形態例のガスタービン負荷制御装置30の場合(図8)ほうが、プラス側バイアス値を加えた分、発電機出力が、要求負荷設定値の変化に対して速く追従しているのが分かる。
【0059】
また、本実施の形態例のガスタービン負荷制御装置30によれば、第1のバイアス設定手段(関数発生器35、シグナルジェネレータ39、レート付き切替器37)では、プラス側バイアス値をLDSETの関数とし、第2のバイアス設定手段(関数発生器36、シグナルジェネレータ40、レート付き切替器38)では、マイナス側バイアス値をLDSETの関数とするため、プラス側バイアス値とマイナス側バイアス値とを、ガスタービン負荷帯(発電機出力)に応じたより適切な値とすることができる。
【0060】
また、本実施の形態例のガスタービン負荷制御装置30によれば、第1のバイアス設定手段(関数発生器35、シグナルジェネレータ39、レート付き切替器37)ではプラス側バイアス値を、負荷設定手段(偏差演算器31、ハイ/ロウモニタ32,33、アナログメモリ34)にてLDSETの増加を開始するときに所定の増加率で徐々に零から所定値になるまで増加させ、且つ、負荷設定手段にてLDSETの増加を終了するときに所定の減少率で所定値から徐々に零になるまで減少させること、また、第2のバイアス設定手段(関数発生器36、シグナルジェネレータ40、レート付き切替器38)ではプラス側バイアス値を、負荷設定手段にて負荷設定値の減少を開始するときに所定の増加率で徐々に零から所定値になるまで増加させ、且つ、負荷設定手段にて負荷設定値の減少を終了するときに所定の減少率で所定値から徐々に零になるまで減少させることを特徴とするため、プラス側バイアス値やマイナス側バイアス値をステップ状に変化させる場合に比べて、より安定した負荷制御が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明はガスタービンへの供給燃料量を制御してガスタービン出力(発電機出力)が目標出力となるように制御するガスタービン負荷制御装置に関するものであり、中央給電センターなどの要求負荷設定手段から要求される(入力する)要求負荷設定値の変化に対して発電機出力の追従性(応答性)を向上させる場合に適用して有用なものである。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施の形態例に係るガスタービン負荷制御装置の構成を示すブロック図である。
【図2】前記ガスタービン負荷制御装置に備えたアナログメモリの機能説明図である。
【図3】前記ガスタービン負荷制御装置に備えた関数発生器の機能説明図である。
【図4】前記ガスタービン負荷制御装置に備えた関数発生器の機能説明図である。
【図5】前記ガスタービン負荷制御装置に備えたレート付き切替器の機能説明図である。
【図6】前記ガスタービン負荷制御装置に備えたレート付き切替器の機能説明図である。
【図7】前記ガスタービン負荷制御装置を適用した場合の要求負荷設定値の増加に対するLDSET、目標出力及び発電機出力(実出力)などの変化を個別に示す説明図である。
【図8】前記ガスタービン負荷制御装置を適用した場合の要求負荷設定値の増加に対するLDSET、目標出力及び発電機出力(実出力)の変化をまとめて示す説明図である。
【図9】前記ガスタービン負荷制御装置を適用した場合の要求負荷設定値の減少に対するLDSET、目標出力及び発電機出力(実出力)などの変化を個別に示す説明図である。
【図10】前記ガスタービン負荷制御装置を適用した場合の要求負荷設定値の減少に対するLDSET、目標出力及び発電機出力(実出力)の変化をまとめて示す説明図である。
【図11】従来のガスタービン負荷制御装置の構成を示すブロック図である。
【図12】前記ガスタービン負荷制御装置を適用した場合の要求負荷設定値の増加に対するLDSET(目標出力)及び発電機出力(実出力)の変化を示す説明図である。
【符号の説明】
【0063】
21 ガスタービン
22 回転軸
23 発電機
24 回転軸
25 MW変換器
26 燃料制御弁
30 ガスタービン負荷制御装置
31 偏差演算器(減算器)
32,33 ハイ/ロウモニタ
34 アナログメモリ
35,36 関数発生器
37,38 レート付き切替器
39,40 シグナルジェネレータ
41 加算器
42 減算器
43 偏差演算器(減算器)
44 PI制御器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
要求負荷設定値が増加したしたときには負荷設定値を前記要求負荷設定値に達するまで所定の増加率で徐々に増加させ、前記要求負荷設定値が減少したときには前記負荷設定値を前記要求負荷設定値に達するまで所定の減少率で徐々に減少させる負荷設定手段と、
前記負荷設定値に対するバイアス値として、プラス側バイアス値を設定する第1のバイアス設定手段と、
前記負荷設定値に対するバイアス値として、マイナス側バイアス値とを設定する第2のバイアス設定手段と、
前記要求負荷設定値の増加に応じて前記負荷設定手段にて前記負荷設定値を徐々に増加させているときには、前記負荷設定値に前記プラス側バイアス値を加算することにより発電機の目標出力を設定し、前記要求負荷設定値の減少に応じて前記負荷設定手段にて前記負荷設定値を徐々に減少させているときには、前記負荷設定値から前記マイナス側バイアス値を減算することにより前記目標出力を設定する目標出力設定手段と、
前記目標出力と、発電機出力計測手段で計測される発電機出力との出力偏差を演算する出力偏差演算手段と、
前記出力偏差に基づいて比例・積分演算を行うことにより、前記発電機を回転駆動するガスタービンの燃料の流量制御手段の制御を行う比例・積分制御手段とを有することを特徴とするガスタービン負荷制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のガスタービン負荷制御装置において、
前記第1のバイアス設定手段では、前記プラス側バイアス値を前記負荷設定値の関数とし、
前記第2のバイアス設定手段では、前記マイナス側バイアス値を前記負荷設定値の関数とすることを特徴とするガスタービン負荷制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のガスタービン負荷制御装置において、
前記第1のバイアス設定手段では、前記プラス側バイアス値を、前記負荷設定手段にて前記負荷設定値の増加を開始するときに所定の増加率で徐々に零から所定値になるまで増加させ、且つ、前記負荷設定手段にて前記負荷設定値の増加を終了するときに所定の減少率で前記所定値から徐々に零になるまで減少させること、
前記第2のバイアス設定手段では、前記プラス側バイアス値を、前記負荷設定手段にて前記負荷設定値の減少を開始するときに所定の増加率で徐々に零から所定値になるまで増加させ、且つ、前記負荷設定手段にて前記負荷設定値の減少を終了するときに所定の減少率で前記所定値から徐々に零になるまで減少させることを特徴とするガスタービン負荷制御装置。
【請求項1】
要求負荷設定値が増加したしたときには負荷設定値を前記要求負荷設定値に達するまで所定の増加率で徐々に増加させ、前記要求負荷設定値が減少したときには前記負荷設定値を前記要求負荷設定値に達するまで所定の減少率で徐々に減少させる負荷設定手段と、
前記負荷設定値に対するバイアス値として、プラス側バイアス値を設定する第1のバイアス設定手段と、
前記負荷設定値に対するバイアス値として、マイナス側バイアス値とを設定する第2のバイアス設定手段と、
前記要求負荷設定値の増加に応じて前記負荷設定手段にて前記負荷設定値を徐々に増加させているときには、前記負荷設定値に前記プラス側バイアス値を加算することにより発電機の目標出力を設定し、前記要求負荷設定値の減少に応じて前記負荷設定手段にて前記負荷設定値を徐々に減少させているときには、前記負荷設定値から前記マイナス側バイアス値を減算することにより前記目標出力を設定する目標出力設定手段と、
前記目標出力と、発電機出力計測手段で計測される発電機出力との出力偏差を演算する出力偏差演算手段と、
前記出力偏差に基づいて比例・積分演算を行うことにより、前記発電機を回転駆動するガスタービンの燃料の流量制御手段の制御を行う比例・積分制御手段とを有することを特徴とするガスタービン負荷制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のガスタービン負荷制御装置において、
前記第1のバイアス設定手段では、前記プラス側バイアス値を前記負荷設定値の関数とし、
前記第2のバイアス設定手段では、前記マイナス側バイアス値を前記負荷設定値の関数とすることを特徴とするガスタービン負荷制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のガスタービン負荷制御装置において、
前記第1のバイアス設定手段では、前記プラス側バイアス値を、前記負荷設定手段にて前記負荷設定値の増加を開始するときに所定の増加率で徐々に零から所定値になるまで増加させ、且つ、前記負荷設定手段にて前記負荷設定値の増加を終了するときに所定の減少率で前記所定値から徐々に零になるまで減少させること、
前記第2のバイアス設定手段では、前記プラス側バイアス値を、前記負荷設定手段にて前記負荷設定値の減少を開始するときに所定の増加率で徐々に零から所定値になるまで増加させ、且つ、前記負荷設定手段にて前記負荷設定値の減少を終了するときに所定の減少率で前記所定値から徐々に零になるまで減少させることを特徴とするガスタービン負荷制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−177626(P2007−177626A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−373847(P2005−373847)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】
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