説明

ガスタービンNOxの乾式三元触媒還元法

【課題】三元触媒を使用することによって排出ガス中のNOxを除去することができる発電システムを提供する。
【解決手段】本発電システムは、システムに供給される周囲空気の圧力を増大させるガス圧縮機と、燃料(12)及び加圧空気の混合気を酸化させて膨脹高温排出ガスを発生させることができる燃焼器(6)と、高温ガスの力を使用するガスタービンエンジンと、燃焼器(6)に戻す排出ガス再循環(EGR)(16)流と、排出ガス流(37)を処理してNOx成分のほぼ全てを除去する、ガスタービンエンジン出口の下流の三元触媒反応器(40)と、排熱回収ボイラ(HRSG)(9)と、EGR圧縮機(1)と、発電機(8)とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電プラントからのガス排出量、特にガス作動流体に依存して発電を行うプラントの排出ガス流中に存在する窒素酸化物の低減及び/又は削減に関する。具体的には、本発明は、ガス作動流体を用いて加圧、燃焼及び膨脹させてガスタービンエンジンを駆動し、ガスタービンからの排出ガスの少なくとも一部を排出ガス再循環(「EGR」)流として燃焼器に再循環するコンバインドサイクルガスタービン発電システムに関する。本発明は、排出ガスを三元触媒を用いて処理する方法であって、所定の汚染物質(特にNOx)を効果的に除去しながら、排出ガス流中の二酸化炭素、一酸化炭素その他の成分(これらも分離し、処理することができる)の量に悪影響を与えない方法に関する。本発明は、米国エネルギー省による契約第DE−FC26−05NT42643号に基づく政府の支援の下になされた。米国政府は本発明に対して所定の権利を有する。
【背景技術】
【0002】
正常運転中に、コンバインドサイクルガスタービン発電プラントは、燃焼プロセスの一部としてかなりの量の窒素酸化物(NOx)及びCO2を発生する。近年、排出量削減、特にNOxの削減は、公衆及び米国環境保護庁(EPA)のような行政当局の多大な関心を集めている。そのため、こうした不要排出物を低減及び/又は除去するため多大な資源が投入されている。炭化水素燃料、特に液体炭化水素燃料の燃焼では、燃焼器に供給される空気、さらには燃料自体に存在する窒素化合物(ピリジンなど)に起因する窒素酸化物は、大気中に放出する前に低減又は除去しなければならない汚染物質をなす。
【0003】
ガスタービンエンジンは典型的にはいわゆる「開放ブレイトンサイクル」で作動し、空気を圧縮機に導入してガス圧力を高め、次いで炭化水素燃料(通例、天然ガス)と共に燃焼させて高温作動流体を発生させるが、その主な燃焼生成物は、二酸化炭素、水(蒸気)、分子状酸素及び窒素であり、一酸化炭素、窒素酸化物及び未燃炭化水素のような不要生成物を伴う。燃焼は通常、比較的「リーン」条件下、つまり燃焼温度を所定の実用限界値未満に維持するため(この値が高すぎると構造材料の費用及び耐久性に悪影響を与える)炭化水素燃料成分の完全燃焼に必要な酸素の化学量論量よりも過剰な酸素条件下で行われる。
【0004】
燃焼器からの高温高圧作動流体はガスタービンに供給され、そこで膨脹してガス温度が下がる。大半の用途において、ガスタービンは圧縮機並びに電力発生用の発電機を駆動する。単純開放ブレイトンサイクルでは、作動流体はタービンから比較的高温で排出されるので、下流での排出或いは選択触媒還元(「SCR」)によるNOx低減のような処理の前に、排熱回収ボイラ(「HRSG」)で蒸気を発生させるために使用することができる。排熱回収ボイラで発生させた蒸気は、大半の閉ランキンサイクル蒸気発電プラントでみられるような蒸気タービンを駆動してプラント全体の発電効率を高めるため、コンバインドサイクルプラントの一部として使用することができる。
【0005】
開放ブレイトンサイクル及びコンバインドサイクルガスタービンシステムの大きな短所の一つは、排出ガスが各種の窒素酸化物(NOx)及びかなりの量の二酸化炭素(CO2)と一酸化炭素(CO)を含んでいることであり、これらが環境に及ぼす悪影響の可能性について公衆の懸念が高まっている。そのため、NOxを分離かつ処理しなければならなくなる前に、ガスタービンシステムによるNOxの生成量を低下させる様々な努力が従前なされてきた。例えば、予燃焼器からの排出ガス(酸素及び分子状窒素量が低い)を燃焼に利用できる一次酸素源としてを使用することによって公称NOxレベルを低下させることができる。例えば、米国特許第3792581号及び同第4147141号参照。Stettlerの米国特許第3969892号にも同様に、バーナからの排出ガスの一部分を熱交換器を通して燃焼器へと再循環させ、排出ガス中の窒素酸化物を低減させるガスタービンシステムが開示されている。Lockwoodの米国特許第3949548号には、排出ガスの一部分を冷却し、圧縮機を通して再循環させる排出ガス再循環システムが記載されており、ここでも窒素酸化物の僅かな低減が期待される。
【0006】
こうしたガスタービン排出ガス流中に存在するNOx成分の量を減少させる技術開発にもかかわらず、タービン排出ガス中の窒素酸化物、CO2その他の汚染物質の排出物を処理するための効率的で費用効果のある方法及び装置に対するニーズは、仮に従来の手段で排出レベルを僅かに低減できたとしても、依然として存在する。ガスタービンシステムにおける従前のNOx除去法は、通例、SCR、選択非触媒還元、触媒分解又は吸収のいずれか1以上を含んでいる。
【0007】
SCR法は、アンモニアを用いたNOxの選択還元に依存しており、基本的反応は次のように表される。
【0008】
【化1】

SCRでは、燃焼時に生成した窒素酸化物を許容EPAレベルまで減少させることができる。しかし、かかる方法は、大気中に放出する前に追加の処理を要する他の窒素系化合物が生成する可能性があることを含め、幾つかの公知の短所がある。排出ガス流は、NOxを分子状窒素に転化するプロセス又は排出ガスからNOxを物理的に分離するプロセスを用いて「スクラブ」することができる。しかし、かかる操作は、ガスタービンの全体低効率を低下させる傾向があるだけでなく、初期には排出ガス流から十分な量のNOxを除去できない傾向がある。多くのSCRシステムでは、制御された還元温度を維持するための加熱が必要とされ、硫酸アンモニウムを発生するおそれもある。
【0009】
従来技術の選択非触媒還元法は、以下の通り、触媒を用いずにNOxをアンモニアとの反応によって窒素及び水に転化する。
【0010】
【化2】

残念ながら、非触媒系は、反応温度域が狭く、ガスタービンエンジン負荷の変動に伴ってプロセス温度が変化しかねないことによって制約を受ける傾向がある。さらに、この方法では、大きなモル体積のNH3が必要とされるのに、僅か60〜80%のNOxしか減少しない。
【0011】
触媒分解系は、高価で複雑なことに加えて、触媒の有効性によっては僅か約70%のNOxしか除去されない傾向がある。典型的な分解反応を以下に示す。
【0012】
【化3】

大半の吸収法は、活性炭化合物を用いてSOx及びNOxを除去する。このプロセスは複雑であり、僅か約40〜60%のNOx除去能力しか有しておらず、高温固体の取扱いを要する。
【0013】
このように、ガスタービンエンジンの排出ガス流中のNOxを除去する既存の方法には、コスト面及び有効性の面でよく知られた短所がある。
【0014】
ガスタービン発電プラントの設計及び運転におけるもう一つの主要な関心事は、二酸化炭素及び一酸化炭素の分離と効率的除去である。上述の通り、コンバインドサイクル系では天然ガスと空気との主要燃焼生成物の一つとして大量のCO2が通常発生する。CO2の除去には、最初に作動流体の窒素その他の気体成分からCO2を分離(例えば、化学反応及び/又は物理的吸収によって)しておく必要がある。CO2隔離技術は周知であるが、NOxのような他の成分からCO2を分離するのに多大なエネルギーが用いられるので、かかるCO2分離が必要となる場合には発電システムの効率が低下する。CO2は、排出ガスをモノエタノールアミン(MEA)のような吸収剤に直接接触させることによって捕捉できる。しかし、MEA分離法は、プラントの全体的効率を大きく損ないかねない。最先端のアミン分離系は、排出ガス流中の他の化合物の存在及び煙道ガス中のCO2濃度に応じて、高い運転及び資本費用を要するのが常である。
【0015】
近年、排出ガス再循環(EGR)が、ガスタービンエンジンからの排出ガスのCO2濃度を高めて、煙道ガス中に存在するCO2の単離を容易にするための有用な技術となっている。一方、EGRを用いる際には、低酸素環境中での不完全燃焼のために発生しかねない他の環境規制排出物(NOxを含む)の増加を防ぐため、プロセス条件を慎重に調和させる必要がある。燃焼器内に存在する酸素レベルが低いことから、40%をかなり下回るEGRレベルが通例推奨されている。さもないと、リッチ火炎中でのCO2への不完全酸化のため、不都合なCOが生成してしまうおそれがある。同様に、付随する燃焼及びEGR条件に応じて、化学量論的及び「リーン」燃料燃焼のいずれにおいてもCO2からCOへの又はNO2からNOへの少なくとも部分的な解離が起こる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許第3792581号明細書
【特許文献2】米国特許第4147141号明細書
【特許文献3】米国特許第3969892号明細書
【特許文献4】米国特許第3949548号明細書
【特許文献5】米国特許第5353585号明細書
【特許文献6】米国特許第5832712号明細書
【特許文献7】米国特許第6202400号明細書
【特許文献8】米国特許第6598402号明細書
【特許文献9】米国特許第6910335号明細書
【特許文献10】米国特許第6968678号明細書
【特許文献11】欧州特許出願公開第1429000号明細書
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Mitsubishi Heavy Industries Technical Review Vol. 42, No.3 (October 2005), "Latest Technology for Large-Capacity Gas Turbine"
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
現在では、下記するプロセス条件の下でEGRを使用して幾つかの重要な利点を達成することができることが判明した。具体的には、排出ガス中のNOx量の減少は、より高いEGRレベルで達成することができると同時に、CO2濃度を増加させかつ排出ガス流中に残存する酸素量を大幅に減少させる、すなわち4%又はそれ以下のレベルまで低下させることができる。さらにより重要なことには、排出ガス流は、下記するEGR条件の下で、より非常に経済的かつ効率的な方法で、すなわち乾式三元触媒を使用することによって処理してNOxを除去することができることが発見された。
【0019】
General Electric社による最新の研究では、現在では、注意深く制御したプロセス条件下で、高いEGRレベルを使用して最大50%までのNOxの減少が実現可能であることを示している。例えば、望ましくない排出ガス成分(CO及びNOのような)の量を大幅に増加させずに、最大35%までの及び最大40%までのEGRレベルを使用することができる。また、ガスタービン燃焼器は、高いEGR率を使用して、許容可能な(たとえ上昇であっても)CO2レベルを維持しながらかつここでもCO又はNOの形成における如何なる大幅な増加もない状態で、高い燃料効率で作動させかつ依然としてNOx量を減少させることができることが判明した。
【0020】
同様に重要なことには、本明細書に記載した制御プロセス条件下でのEGRの使用は、最少4体積%又はそれ以下まで排出ガス中に残存する分子状酸素量を減少させる。つまり、EGRを使用する例示的な方法により、排出ガス中に残存する異常に低い閾値酸素量(ほぼ0%もの)が得られると同時に、NOx濃度を減少させかつCO2レベルを上昇させる。最初に、再循環中に存在する低い酸素量は、乾式三元触媒を使用してプラントから流出する最終排出ガス流中のNOxを除去することを可能にした。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】EGRプロセスを実行するのに必要な装置の例示的な主要部品を含む、EGRを使用した従来のプラント配置を示すブロック流れ図。
【図2】様々なEGR率レベル(20、40及び50%)においてタービン排出ガス中の酸素量を如何なるEGRもない従来のシステムのタービン排出ガスを表す0%と比較した状態で、燃焼器内の異なる火炎温度におけるタービン排出ガス中の酸素濃度を示す一群の曲線の形態のグラフ図。
【図3】排出ガス中の所望の低酸素レベル及びNOx成分の除去を達成するための例示的なステップを含む、本発明に係るEGR及び三元触媒処理を実行するのに使用される基本的ステップ及び装置を示すプロセス流れ図。
【図4】燃焼器への吸気給送に対する一部の修正を含む、図1に示す本発明の別の実施形態におけるプロセス流れ図。
【図5A】ガス燃焼器を通して再循環される高温燃焼ガスの一部分を含む「高温」EGR排出ガス流を使用して、最終的に処理しようとするCO2、CO及びNOx量に対してのシステムの全体効率を向上させる、本発明の別の実施形態の特徴形状部を示すプロセス概略図。
【図5B】燃焼器通路に沿った燃焼ガスの温度との比較のために示した圧縮機吐出ガス温度「TCD」と共に、燃焼器通路長さに対する燃焼器への入口空気の温度T3.0を示すグラフ図。
【図6】制御プロセス条件下で本発明に係る変動EGR率を使用した結果として排出ガス中に残存する酸素量のグラフ図。
【図7】変動燃焼器火炎温度において異なるEGR率を使用して発生した予測CO2及びNOx相対量を比較するグラフ図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に係る発電システムの例示的な実施形態は、以下の基本構成要素、すなわち、本システムに供給される周囲空気の圧力を増大させるガス圧縮機と、燃料(炭化水素又は合成ガスのような)及び圧縮周囲空気の混合気を燃焼させて高温排出ガス流を発生させることができる燃焼器と、膨脹高温排出ガスの力によって回転可能なタービン動翼を備えた、燃焼器の下流の従来のガスタービンエンジンと、燃焼器に供給される高百分率EGR流と、4体積%未満の酸素を有する排出ガス流と接触しかつ大量のNOx成分(一般には約70%)を除去する、ガスタービンエンジンの下流の三元触媒反応器と、排熱回収ボイラ(HRSG)と、HRSGから流出する排出ガスの一部分の温度を低下させて冷却EGR流を形成する冷却器(熱交換器)と、冷却EGRの圧力を増大させるEGR圧縮機と、ガスタービンエンジンに結合して電力を発生する発電機とを含む。三元触媒は、酸素含有量が約4%以下に維持されかつガス温度が許容可能レベルの触媒効率及び耐久性を保証するような、燃焼器の下流のあらゆる位置に配置することができる。
【0023】
上記の例示的な発電システムでは、通常の燃焼器火炎温度よりも高い温度で高レベルのEGR(35体積%を超える)を使用することにより、プラントから流出する排出ガス流中の公称CO2量が増加することが判明した。同様の方法において、通常の火炎温度よりも高い温度で40%EGRを使用することにより、排出ガス中に10%CO2レベルが得られる。
【0024】
従って、高EGR率を使用することは、幾つかの重要な利点を有する。NOxエミッションは、CO2量を増加させながら(それによって、従来の手段を使用してCO2を隔離しかつ分離する困難さ及び費用が大幅に低減される)低減することができる。加えて、酸素量を4%よりも少なく減少させて、ガスタービン技術において今日まで知られていない方法、すなわちNOxを減少及び/又は除去するために排出ガス流を乾式三元触媒と接触させることで、排出ガス流を処理可能にすることができる。
【0025】
本発明のさらに別の実施形態では、望ましくない可能性があるNO及びCOのような不完全燃焼生成物は、燃焼ガスの一部分を燃焼チャンバ自体内に戻すように再循環させることによってそのボリュームをさらに減少させることができることが判明した。この「高温」EGRの実施形態は、燃焼チャンバから流出する排出ガス中に存在するCO及び未燃炭化水素量を低下させるのに加えて、最終的には三元触媒を使用して処理するガス中の残留酸素量をさらに僅かに減少させる傾向がある。
【0026】
図1は、EGRのプロセスを実行するために通常使用する例示的な装置を含む、EGRを使用した(しかし、三元触媒を備えていない)、一般的なプラント配置を示すブロック流れ図である。図1で示すように、燃料12及び圧縮機5からの加圧空気流11は、燃焼器6内で混合されかつ燃焼して、タービン7を駆動する主作動流体として働く高温排出ガス流を発生する。タービン7から流出する排出ガス(依然として比較的高温の)は、排熱回収ボイラ(HRSG)9及び排出ガス冷却ユニット10を通って流れ、次に未燃炭化水素燃料、CO、CO2、NOx、NO、分子状酸素及び窒素、並びにその他のごく僅かな汚染物質を含有する排出ガス再循環16としてEGR圧縮機1に戻る。
【0027】
EGR圧縮機1は、排出ガス再循環16の圧力を増大させ、次にこの加圧EGRを異なる圧縮機段からの排出ガスとして2つの部分に分離し、すなわちその1つは、圧縮機2に供給された後に燃焼器6に戻される流れ17(約60体積%)である。圧縮機2からの加圧ガス流の第2の部分は、タービン7用の作動流体(管路19参照)の一部として働く。EGR圧縮機1からの加圧流18(約40体積%)は、二酸化炭素分離器3に流入し、分離したCO2は、図示するように符号14で示す追加の処理のためにシステムから流出する。分離器3からの流れ15中の非CO2成分は、タービン4を駆動する付加的作動流体として働き、このタービン4は、圧縮機5及び発電機8に作動結合して電力を発生させる。タービン4からの排出ガス(今や比較的CO2がない)は、管路13を通してシステムから、公称上は煙突(排気筒)又は下流の環境汚染制御システムに排出される。
【0028】
図2は、様々なEGR率レベル(20、40及び50%)においてタービン排出ガス中の酸素量を如何なるEGRもない従来のシステムのタービン排出ガスを表す0%と比較した状態で、燃焼器内の異なる火炎温度(「ガスタービン燃焼温度」として知られている場合もある)におけるタービン排出ガス中の酸素濃度のグラフ図である。図2で示すように、上記の例示的な実施形態におけるEGRの使用は、排出ガス中の分子状酸素レベルを大幅に低下させると同時に、二酸化炭素量を増加させ、またCO或いはNOx量を増加させることがない傾向になる。従って、より高いEGRレベルでの排出ガス中の酸素含有量は、4%又はそれ以下(0%に近いのが好ましい)まで減少させて、乾式三元触媒を使用してNOx成分を除去することを可能にすることができる。
【0029】
従って、図2は、様々なEGR率で排出ガス流中に残存する残留酸素量間での予測差を示している、つまり酸素レベルは、より高いEGR率で大幅に低下することを示している。図2に示すシステムの各々は、より高い燃焼器火炎温度で排出ガス中の酸素が減少する傾向にあるが、本発明に係るEGRの使用により、EGRがない従来のタービン排出ガスと比較してより極めて低い酸素レベルが一貫して達成される。
【0030】
図3は、排出ガス中の所望の低酸素レベルを達成するための装置及びステップを含む、EGR及び三元触媒処理を実行するのに使用される基本プロセスステップ及び装置を示すプロセス流れ図である。三元触媒モジュールは、三元触媒の前方に酸素含有量を所望のレベルまで低下させる酸化触媒と、三元触媒の後方に炭化水素部分酸化生成物を所望の濃度まで低下させる酸化触媒とを含むことができる。図3は、周囲空気が、圧縮機30に流入しかつより大幅に高い圧力(及び僅かに高い温度)で給送管路34を通って燃焼器36に流入することを示している。図1に関して上述したように、燃焼器36は、炭化水素燃料成分を空気と混合させて、タービン38用の主作動流体として働く高温排出ガス流37を発生させる。図示するように、タービン38は次に、EGR圧縮機33及び圧縮機30を駆動する。「低温」EGRは、管路45を介してEGR圧縮機に流入しかつより大幅に高い圧力で加圧再循環流として流出する。一方では、タービン38からの排出ガス(その中に存在する4体積%未満の酸素を有する)は、管路39を介してNOx成分を除去する三元触媒反応器40を通って流れる。
【0031】
ガスタービンの内部の異なる箇所における温度によって決まる特定の作動条件下では、別個の下流触媒反応器を利用するのではなくて、タービン自体の内部に三元触媒を配置するのが望ましい場合がある。さらに、異なる触媒を用いて、触媒が許容可能なレベルで機能する正確な作動方式に応じて燃焼器(HRSGさえも含む)の下流のその他の位置でNOxを除去することもできる。つまり、本発明に係る三元触媒は、その位置が燃焼器の下流であり、酸素レベルが触媒によりNOx汚染物質を効率的に除去するのが可能になるほど充分に低い状態に保たれ、またまたプロセス条件が触媒性能全体に悪影響を及ぼさない限り、このプロセスにおける様々な位置に配置することができる。
【0032】
図3は、処理済み高温排出ガス流39が排熱回収ボイラ(HRSG)41を通って流れることを示している。上述の通り、符号43で示す再循環の大部分は次に、熱交換器44を使用して冷却され、冷却EGR流45は、EGR圧縮機33に戻される。図3はまた、EGR圧縮機33の異なる段から取出した吐出管路46、47及び48によって示すように、EGR流の特定の部分を使用してタービン38に対して補助流を促進しかつ供給する(それによって、必要な排出ガス酸素含有量を達成する目標と共にプラントの全体効率を高める)のに役立てるようにする利点を有することができることを示している。
【0033】
図4は、燃焼器への吸気給送に対して修正を加えた、図3に示す本発明の別の実施形態(共通要素には同一の参照符号を使用している)についてのプロセス流れ図である。図4は、符号49で示すEGR圧縮機排出ガスが、燃焼器に流入する前にリッチ又はリーン触媒反応器を通って流れることができることを示している。触媒反応器は、特定の再循環成分(NOx以外の)を除去して燃焼混合気を改善しかつCO2リッチ火炎に対して燃焼安定性を与える。「リッチ」触媒反応器は、例えば炭化水素燃料をよりリッチな水素及びCO混合気に転化し、従って燃焼器の作動柔軟性を高めるリフォーマ(改質材)を含む。図4はまた、燃焼器への液体燃料給送は、非酸化環境内で事前気化させて、適切に用いた場合には燃焼を向上させることができることを示している。燃焼器への圧縮周囲空気給送はまた、図示するように、一部分73が燃焼器に供給される前に触媒による予備的処理を行われるように分割することができる。
【0034】
関連した図5A及び図5Bは、ガス燃焼器自体を通して再循環される高温燃焼ガスの一部分を含む「高温」EGR排出ガス流を使用して、最終的に処理及び/又は除去しなければならないCO2、NOxその他の望ましくない排出ガス成分の量に対してシステムの効率全体を高めた本発明の別の実施形態についての特徴形状部を示している。
【0035】
図5Aは、「高温」EGR、すなわち冷却されかつEGR圧縮機に送給される前のEGRの一部分を、燃焼室の内部で加圧空気と混合させ、個別に燃焼させかつガスタービンエンジンに直接送ることができることを示すプロセス概略図である。炭化水素燃料(符号51及び符号52で示す)は、図示するように主圧縮機吐出(CD)空気と混合されかつパイロット53を有することができ、その一部はポート54及び55を通して再循環させ(内側突出ベンチュリ構成により発生させたより低い静圧によってポートを通しての「引き出し」作用で)かつ主圧縮機吐出空気の一部分と混合される。このようにして、「高温」再循環のより多くの部分は、タービンに直接供給される。
【0036】
図5Bは、燃焼器通路長さ、すなわち「端部カバーからの長さ」に対する燃焼器への入口(吸入)空気温度Tinletを示すグラフ図であり、温度Tinletは燃焼器の外側の環状空間内で測定される。圧縮機吐出口での温度「TCD」は、燃焼器通路に沿った燃焼ガス温度との比較のために示している。TCDの値は、燃焼ガスとの混合の後に増大する。特に、燃焼器通路長さを減少させながら燃焼器吸入空気温度を上昇させることは、排出ガス中のNOx及びCOレベルを低下させる傾向になることが判明した。
【0037】
図6は、制御プロセス条件下で本発明に係る変動EGR率を使用した結果として排出ガス中に残存する酸素量のグラフ図である。図6が示すように、約45体積%以上のEGRレベルを使用する場合には、最終的排出ガス中の酸素レベルは、4%以下まで低下し、それによって三元触媒を使用して発生排出ガス流中のNOx成分を除去するのを可能にする。図6はまた、同程度の入口比湿条件下で、EGR率が増大するにつれて約12%の高さから最少約1%まで排出ガスの酸素含有量がどのように大幅に低下するかを示している。
【0038】
図7は、変動燃焼器出口火炎温度において異なるEGR率を使用して発生した予測CO2及びNOx相対量を比較するグラフ図である。従って、この図は、出口火炎温度範囲についての予混合燃焼器NOxエミッションへのEGRの一般的効果を示している。図7は、高いEGR率を使用することは実際に、処理しようとする排出ガス中に存在するCO2の量を増加させて、従来の手段を使用してCO2を分離しかつ除去するのをより容易にしかつより費用効果のあるものにする傾向があることを強調している。図7はまた、NOx量は、燃焼器の火炎温度がより低くなるにつれて、僅かに減少した状態になることを示している。従って、本発明の1つの態様では、より高いプロセス効率は、発生するNOx量を増加させる傾向にない燃焼器火炎温度及びEGRレベルにより得ることができる。従って、図7は、例示的なガスタービン燃焼システムにおける火炎温度及びEGR比へのNOx依存性を示す実施例である。実際のプロセス固有値は、使用する特定のガスタービンサイクル、燃料の種類、及び場合によってはさらに燃焼器設計応じて決まる。
【0039】
本発明を実行する、すなわち排出ガス中の残留NOxを低減及び/又は除去するのに有用な乾式三元転化触媒は、自動車業界では周知であるが、従前は、主として単に触媒だけでは、酸素含有量が約4体積%を超えた場合にNOx成分を除去するのに有効でないという理由で、ガスタービン技術分野では使用されてこなかった(又は、出願人の知識として思いつくことさえなかった)。一般に言えば、三元触媒は、炭化水素及び一酸化炭素(HC及びCO)の酸化反応並びにNOxの還元反応を促進することができる。
【0040】
本発明に有用な公知の三元触媒は一般に、Zr又はCeの酸化物並びにアルカリ土類金属Ba、Ca及びSrの1種以上の酸化物と共に、γ−Al23のような安定酸化物の良好に形成した表面を有するベース(支持体)上に分散させた1種以上の白金族金属を含む。触媒ベースは、セラミックブロック或いは鉄母材上に配置されたFe−Cr−Al又は耐食性金属の螺旋巻き金属フォイルのような担体上に被覆することができ、或いは触媒技術に精通した者に周知のその他の方法で被覆することができる。
【0041】
白金族金属に加えて、d−元素の1種以上の酸化物を含む三元触媒は、サイクル時における変換可能な酸素蓄積による酸素有効性を維持することによって、またH2S及びNH3のような有害ガスの生成を抑制することによって白金族触媒の性能を高める傾向を有する。触媒技術に精通した者には知られているが、従前ガスタービンエンジンからの排出ガスを処理するために使用されていないその他の三元触媒成分(例えば、自動車業界において使用するために開発された多くの最新世代の白金系触媒)は、かかる触媒が最大約4体積%までのNOxを除去することができるという条件で、本明細書に説明したプロセスを使用して発生排出ガスを処理するのに使用することができる。
【0042】
現時点で最も実用的かつ好ましい実施形態であると考えられるものに関して本発明を説明してきたが、本発明は、開示した実施形態に限定されるものではなく、逆に特許請求の範囲の技術思想及び技術的範囲に含まれる様々な改良及び均等な構成を保護しようとするものであることを理解されたい。
【符号の説明】
【0043】
12 燃料
11 加圧空気流
5 圧縮機
6 燃焼器
7 駆動タービン
9 排熱回収ボイラ(HRSG)
10 排出ガス冷却ユニット
1 EGR圧縮機
16 排出ガス再循環
17 流れ
2 圧縮機
18 加圧流
3 二酸化炭素分離器
14 処理
15 流れ
3 分離器
4 駆動タービン
5 圧縮機
8 発電機
13 管路
30 圧縮機
34 給送管路
37 排出ガス流
38 タービン
30 圧縮機
45 管路
40 三元触媒反応器
39 管路
43 リサイクルの大部分
44 熱交換器
45 EGR流
33 EGR圧縮機
46、47、48 吐出管路
49 EGR圧縮機排出ガス
73 一部分
51、52 炭化水素燃料
53 パイロット
54、55 ポート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周囲空気用の入口と周囲空気の圧力を増加させる手段と圧縮周囲空気用の出口とを有するガス圧縮機、
上記ガス圧縮機の下流の燃焼器(6)であって、圧縮周囲空気用の入口と燃料(12)用の入口とを有し、燃料(12)と圧縮周囲空気との混合気を燃焼させて燃焼器出口から高温排出ガスを発生させることができる燃焼器(6)、
燃焼器(6)の下流のガスタービンエンジンであって、燃焼器(6)の出口に結合した入口と、膨脹高温排出ガスの力で回転可能なタービン動翼と、部分使用済み排出ガス用の出口とを有するガスタービンエンジン、
ガスタービンエンジンの下流の三元触媒反応器(40)であって、部分使用済み排出ガスを受け取って接触する入口を有しかつ排出ガス中に存在するNOx成分を実質的に全部除去できる三元触媒反応器(40)、及び
ガスタービンエンジンと結合して電力を発生する発電機(8)
の組合せを備える発電システム。
【請求項2】
三元触媒反応器(40)の下流の排熱回収ボイラ(HRSG)(9)をさらに備える、請求項1記載の発電システム。
【請求項3】
排出ガスの温度を低下させて燃焼器(6)に再循環される冷却排出ガス再循環(16)(EGR)流を形成するための冷却手段をさらに含む、請求項1記載の発電システム。
【請求項4】
冷却EGR流(45)用の入口及び燃焼器(6)に結合した出口を有しかつ冷却EGR流(45)の圧力を増大させることができる、HRSG(9)の下流のEGR圧縮機(1)をさらに含む、請求項3記載の発電システム。
【請求項5】
燃焼器(6)にフィードバックする前に、排出ガスの選択部分の温度を低下させて冷却EGR流(45)を形成しかつEGR中に存在する水分(蒸気)の除去を可能にすることができる、HRSGの下流の熱交換器(44)をさらに含む、請求項3記載の発電システム。
【請求項6】
EGRのボリュームが、約35体積%以上に維持される、請求項3記載の発電システム。
【請求項7】
三元触媒反応器(40)内の触媒と接触させる前に排出ガス中に存在する酸素量が、約4体積%又はそれ以下である、請求項1記載の発電システム。
【請求項8】
燃焼器(6)によって燃焼器(6)のチャンバに発生させた高温排出ガスの一部分を再循環させて、ガスの一部分を空気圧縮機からの加圧空気と混合した後における酸化率を増大させる手段をさらに含む、請求項1記載の発電システム。
【請求項9】
三元触媒反応器(40)が、安定酸化物の表面を有するベース支持体上に分散させた1種以上の白金族金属を含む触媒を使用する、請求項1記載の発電システム。
【請求項10】
三元触媒で処理するのに先立って最初に排出ガス中に存在する酸素量を減少させることによって三元触媒を使用してガスタービンエンジンの排出ガス中に存在するNOx成分を処理する方法であって、
ガス圧縮機に供給される周囲空気の圧力を増大させるステップと、
加圧空気及び燃料(12)を燃焼器(6)に供給するステップと、
圧縮周囲空気及び燃料(12)を燃焼させて、約4体積%未満の酸素を有する高温排出ガス流(37)を発生させるステップと、
ガス燃焼器(6)の下流に配置されかつ発電用の発電機(8)に結合したガスタービンエンジンに対して高温排出ガスを供給するステップと、
ガスタービン発電機からの部分使用済み排出ガスを、ガスタービンエンジンの下流に配置されかつ排出ガス中に存在するNOx成分を実質的に全部除去できる三元触媒に接触させるステップと
を含んでなる方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−276053(P2009−276053A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−58865(P2009−58865)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】