説明

ガスバリア性塗料及び該塗料を用いてなるガスバリア性積層体

【課題】 本発明の課題は、構造中に塩素を含有せず、高温高湿度下に長期間保存時してもガスバリア性の低下しない優れたガスバリア性塗料を得ることである。
【解決手段】ポリアルコール系ポリマー(A)、ポリカルボン酸系ポリマー(B)、多価金属と揮発性塩基とを構成要素とする化合物(C)及びアルカリ金属化合物(D)を含有することを特徴とするガスバリア性塗料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温高湿度下に長時間保存されても優れたガスバリア性を有するガスバリア性塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミドフィルム、ポリエステルフィルム等の熱可塑性樹脂フィルムは、強度、透明性、成形性に優れていることから、包装材料として幅広い用途に使用されている。しかし、これらの熱可塑性樹脂フィルムは酸素等のガス透過性が大きいので、一般食品、レトルト処理食品、化粧品、医療用品、農薬等の包装に使用した場合、長期間保存する内にフィルムを透過した酸素等のガスにより内容物の変質が生じることがある。
【0003】
そこで、熱可塑性樹脂の表面にポリ塩化ビニリデン(以下PVDCと略記する)のエマルジョン等をコーティングし、ガスバリア性の高いPVDC層を形成せしめた積層フィルムが食品包装等に幅広く使用されてきた。しかし、PVDCは焼却時に酸性ガス等の有機物質を発生するため、近年環境への関心が高まるとともに他材料への移行が強く望まれている。
【0004】
PVDCに代わる材料としてポリビニルアルコール(以下PVAと略記する)は有毒ガスの発生もなく、低湿度雰囲気下でのガスバリア性も高いが、湿度が高くなるにつれて急激にガスバリア性が低下するので、水分を含む食品等の包装には用いることが出来ない場合が多い。
【0005】
PVAの高湿度下でのガスバリア性の低下を改善したポリマーとして、ビニルアルコールとエチレンの共重合体(EVOH)が知られている。しかし、高湿度でのガスバリア性を実用レベルに維持するためにはエチレンの共重合比をある程度高くする必要があり、このようなポリマーは水に難溶となる。
そこで、エチレンの共重合比の高いEVOHを用いてコーティング剤を得るには、有機溶媒または水と有機溶媒の混合溶媒を用いる必要があり、環境問題の観点からも望ましくなく、また有機溶媒の回収工程などを必要とするため、コスト高になるという問題がある。
【0006】
水溶性のポリマーからなる液状組成物をフィルムにコートし、高湿度下でも高いガスバリア性を発現させる方法として、PVAとポリアクリル酸またはポリメタクリル酸の部分中和物とからなる水溶液をフィルムにコートし熱処理することにより、両ポリマーをエステル結合により架橋する方法が提案されている(特許文献1:特開平06−220221号公報、特許文献2:同07−102083号公報、特許文献3:同07−205379号公報、特許文献4:同07−266441号公報、特許文献5:同08−041218号公報、特許文献6:同10−237180号公報等参照)。
しかし、上記公報に提案される方法では、高度なガスバリア性を発現させるためには高温での加熱処理もしくは長時間の加熱処理が必要であり、製造時に多量のエネルギーを要するため環境への負荷が少なくない。
また、高温で熱処理すると、ガスバリア層を構成するPVA等の変色や分解の恐れが生じる他、ガスバリア層を積層しているプラスチックフィルム等の基材に皺が生じるなどの変形が生じ、包装用材料として使用できなくなる。プラスチック基材の劣化を防ぐためには、高温加熱に十分耐え得るような特殊な耐熱性フィルムを基材とする必要があり、汎用性、経済性の点で難がある。
一方、熱処理温度が低いと、非常に長時間処理する必要があり、生産性が低下するという問題点が生じる。
【0007】
また、PVAに架橋構造を導入することで、上記PVAフィルムの問題点を解決するための検討がなされている。しかし、一般的に架橋密度の増加と共にPVAフィルムの酸素ガスバリア性の湿度依存性は小さくなるが、その反面PVAフィルムが本来有している乾燥条件下での酸素ガスバリア性が低下してしまい、結果として高湿度下での良好な酸素ガスバリア性を得ることは非常に困難である。
尚、一般にポリマー分子を架橋することにより耐水性は向上するが、ガスバリア性は酸素等の比較的小さな分子の侵入や拡散を防ぐ性質であり、単にポリマーを架橋してもガスバリア性が得られるとは限らず、たとえば、エポキシ樹脂やフェノール樹脂などの三次元架橋性ポリマーはガスバリア性を有していない。
【0008】
PVAのような水溶性のポリマーを用いながらも高湿度下でも高いガスバリア性を有するガスバリア性積層体を、従来よりも低温もしくは短時間の加熱処理で提る方法が提案されている(特許文献7:特開2001−323204号公報、特許文献8:同2002−020677号公報、特許文献9:同2002−241671号公報参照)。
【0009】
特許文献7〜9に記載されるコート剤は、水溶性のポリマーを用いながらも特許文献1〜6に記載されるコート剤よりも低温もしくは短時間の加熱で高湿度下で従来よりも高いガスバリア性を有するガスバリア性積層体を形成し得る。
しかし、特許文献1〜9に記載される、加熱によって、PVA中の水酸基とポリアクリル酸中もしくはエチレン−マレイン酸共重合体中のCOOHとをエステル化反応させるという方法だけでは、ガスバリア層を形成したフィルムを高温高湿度下に長時間保存すると加水分解によりエステル結合が分解し、ガスバリア性が著しく劣化する。
【0010】
PVAを用いずに、ポリカルボン酸と多価金属との金属架橋のみでガスバリア層を得る方法も提案されている(特許文献10:特開2004−51146)。
特許文献10に記載されているガスバリア層は、高温での耐水性は有していないので、湯でボイル処理等するとガスバリア層が溶解してしまう。また、20〜30℃程度の室温付近では高湿度下に曝されてもガスバリア性を維持できるが、40℃以上の高温で高湿度下に曝された場合、ガスバリア性の劣化が激しい。
尚、耐水性を有する樹脂層をオーバーコートすることによって湯でボイル処理等してもガスバリア層が溶解することは防げる。しかし、高温高湿度下にバリア層が曝された場合、バリア性の低下は防げない。
以上の結果、特許文献1〜10に記載されるコート剤では、より厳しい要求には応えられなかった。
【特許文献1】特開平06−220221号公報
【特許文献2】特開平07−102083号公報
【特許文献3】特開平07−205379号公報
【特許文献4】特開平07−266441号公報
【特許文献5】特開平08−041218号公報
【特許文献6】特開平10−237180号公報
【特許文献7】特開2001−323204号公報
【特許文献8】特開2002−020677号公報
【特許文献9】特開2002−241671号公報
【特許文献10】特開2004−51146号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、高温高湿度下に長時間保存してもガスバリア性を維持できるガスバリア性塗料及びガスバリア性積層体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、鋭意研究の結果、特定の多価金属化合物とポリアルコール系ポリマー及びポリカルボン酸系ポリマーを用いることで高温高湿度下に長時間保存してもガスバリア性を維持できることを見出し本発明に到達した。
即ち、本発明は、ポリアルコール系ポリマー(A)、ポリカルボン酸系ポリマー(B)、多価金属と揮発性塩基とを構成要素とする化合物(C)及びアルカリ金属化合物(D)を含有することを特徴とするガスバリア性塗料に関する。
【0013】
また多価金属と揮発性塩基からなる化合物(C)が、NHを構成要素とすることを特徴とする上記記載のガスバリア性塗料に関する。
【0014】
さらにポリアルコール系ポリマー(A)が、ポリビニルアルコール、エチレン―ビニルアルコール共重合体、糖類のいずれか1種又はこれらの混合物であることを特徴とする上記いずれか記載のガスバリア性塗料に関する。
【0015】
さらにポリカルボン酸系ポリマー(B)が、オレフィン―マレイン酸共重合体であることを特徴とする上記いずれか記載のガスバリア性塗料に関し、
さらにまたオレフィン―マレイン酸共重合体が、エチレン―マレイン酸共重合体であることを特徴とする上記記載のガスバリア性塗料に関する。
【0016】
さらに多価金属が、亜鉛であることを特徴とする上記いずれか記載のガスバリア性塗料に関する。
【0017】
さらにアルカリ金属化合物(D)が、アルカリ金属の水酸化物であることを特徴とする上記いずれか記載のガスバリア性塗料に関する。
【0018】
さらに上記いずれか記載のガスバリア性塗料から形成されるガスバリア層が、プラスチック基材上に直に、又はアンダーコート層を介してプラスチック基材上に、積層されていることを特徴とするガスバリア性積層体する。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、構造中に塩素を含有せず、高温高湿度下に長時間保存されてもガスバリア性に優れたガスバリア性塗料を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明について詳細に説明する。
<ポリアルコール系ポリマー(A)>
本発明で使用するポリアルコール系ポリマー(A)は、分子内に2個以上の水酸基を有するポリマーであり、PVA、エチレンービニルアルコール共重合体、糖類や、ポリヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリグリセリン(メタ)アクリレートといった水酸基を有するモノマーを重合して成るポリマー、等が挙げられる。
【0021】
<PVA>
本発明において用いられるPVAは、ビニルエステルの重合体を完全または部分ケン化するなどの公知の方法を用いて得ることができる。
ビニルエステルとしては、ぎ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等が挙げられ、中でも酢酸ビニルが工業的に最も好ましい。
【0022】
本発明の効果を損ねない範囲で、ビニルエステルに対し他のビニル化合物を共重合することも可能である。他のビニル系モノマーとしては、クロトン酸、アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和モノカルボン酸およびそのエステル、塩、無水物、アミド、ニトリル類や、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などの不飽和ジカルボン酸およびその塩、炭素数2〜30のα−オレフィン類、アルキルビニルエーテル類、ビニルピロリドン類などが挙げられる。
【0023】
本発明において、フィルム表面にガスバリア性を付与するために積層されるポリマーは水溶性とすることが生産上好ましく、疎水性の共重合成分を多量に含有させると水溶性が損なわれるので好ましくない。
【0024】
なお、ケン化方法としては公知のアルカリケン化法や酸ケン化法を用いることができ、中でもメタノール中で水酸化アルカリを使用してアルコール分解する方法が好ましい。ケン化度は100%に近いほどガスバリア性の観点から好ましく、ケン化度が低すぎるとガスバリア性能が低下する。ケン化度は通常約95%以上が好ましく、98%以上であることがより好ましい。平均重合度は50〜4000が好ましく、200〜3000のものがより好ましい。
【0025】
<糖類>
糖類(糖質類ともいう)としては、単糖類、二糖類、オリゴ糖類、及び多糖類が挙げられる。これらの糖類には、糖アルコールや各種置換体・誘導体なども包含される。これらの糖類は、水溶性のものが好ましい。
【0026】
単糖類は、二糖類、オリゴ糖、多糖類の構成成分であって、通常Cm(H2O)nで表される。単糖類としては、例えば、グルコース、ガラクトース、タロース、マンノース、ソルボース、タガトース、フルクトース、プシコース、エリトロース、トレオース、エリトルロース、アラビノース、キシロース、リボース、リキソース、リブロース等が挙げられる。
【0027】
また、二糖類は、2個の単糖がグリコシル結合しているものであり、例えば、麦芽糖、乳糖、ショ糖、セロビオース、トレパース、ゲンチオビオース、イソマルトース等が挙げられる。
【0028】
また、オリゴ糖とは、3個から6個の単糖がグリコシル結合しているものであり、例えば、ラフィノース、ゲンチアノース等が挙げられる。さらに、多糖類とは、7個以上の単糖がポリグリコシル化している高分子化合物であり、例えば、セルロース、でんぷん、プルラン、グリコーゲン、イヌリン、デキストラン、キチン等が挙げられ、プルランが好ましい。
【0029】
さらに、糖アルコールとは、単糖類を還元して得られるポリヒドロキシアルカンであり、ソルビトール、マンニトール、ズルシトール、キシリトール、エリトリトール、グリセロールなどを挙げることができる。
【0030】
さらにまた、糖類の誘導体とは、上記糖類に対して、エステル化、カルボキシメチル化、アセチル化、リン酸化、カルボキシル化、アミノ化、アリルエーテル化、メチルエーテル化、カルボキシメチルエーテル化、グラフト化等の置換や変性を施したものである。
【0031】
上記糖類に対してグラフト重合させる際のモノマーとしては、クロトン酸、アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和モノカルボン酸およびそのエステル、塩、無水物、アミド、ニトリル類や、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などの不飽和ジカルボン酸およびその塩、炭素数2〜30のα−オレフィン類、アルキルビニルエーテル類、ビニルピロリドン類などが挙げられる。
【0032】
上記二糖類、オリゴ糖、多糖類、またはこれらの誘導体は、一種類の単糖類で構成されていても、二種類以上の単糖類から構成されていてもよい。上記の糖類は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0033】
<水酸基を有するモノマーを重合して成るポリマー>
水酸基を有するモノマーを重合して成るポリマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセリン(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート(CHCHOユニットの繰り返しが1〜6のものが好ましい)、水酸基末端ウレタン(メタ)アクリレート等を、それぞれ単独で重合して成るホモポリマー、複数共重合して成るコポリマー、他のモノマーと共重合して成るコポリマーを挙げることができる。前2者、即ちホモポリマー、水酸基及びエチレン性不飽和二重結合を有するモノマー同士のコポリマーが好ましく、本発明のガスバリア形成用塗料は、ホモポリマーを2種以上、又は水酸基及びエチレン性不飽和二重結合を有するモノマー同士のコポリマーを2種以上含有することもできる。さらにホモポリマーとコポリマーとを含有することもできる。
【0034】
水酸基を有するモノマーと共重合し得る他のモノマーとしては、水酸基、カルボキシル基を有しないモノマーであって、水酸基を有するモノマーと共重合し得るモノマーを適宜用いることができる。
例えば、クロトン酸、(メタ)アクリル酸等の不飽和モノカルボン酸エステル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルニトリル、スチレン、スチレンスルホン酸、ビニルトルエン、エチレンなどの炭素数2〜30のα−オレフィン類、アルキルビニルエーテル類、ビニルピロリドン等が挙げられる。
【0035】
上記のポリアルコール系ポリマー(A)は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0036】
<ポリカルボン酸系ポリマー(B)>
本発明で使用するポリカルボン酸系ポリマー(B)は、分子内に2個以上のカルボキシル基もしくは酸無水物基を有するポリマーであり、カルボキシル基もしくは酸無水物基を有するモノマーを重合して成るポリマー、等が挙げられる。
カルボキシル基もしくは酸無水物基を有するモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、2−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノアクリレート、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、無水フマル酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、イタコン酸、無水イタコン酸が挙げられ、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸が好ましい。
【0037】
ポリカルボン酸系ポリマー(B)としては、これらモノマーをそれぞれ単独で重合して成るホモポリマーや複数共重合してなるコポリマー、他のモノマーと共重合して成るコポリマーを挙げることができる。
【0038】
カルボキシル基もしくは酸無水物基を有するモノマーと共重合し得る他のモノマーとしては、水酸基、カルボキシル基を有しないモノマーであって、カルボキシル基もしくは酸無水物基を有するモノマーと共重合し得るモノマーを適宜用いることができる。
例えば、クロトン酸、(メタ)アクリル酸等の不飽和モノカルボン酸エステル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルニトリル、スチレン、スチレンスルホン酸、ビニルトルエン、エチレンなどの炭素数2〜30のα−オレフィン類、アルキルビニルエーテル類、ビニルピロリドン等が挙げられる。
【0039】
具体的なポリカルボン酸系ポリマー(B)としては、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸、ポリイタコン酸や、アクリル酸−メタクリル酸共重合体、エチレン−無水マレイン酸に代表されるオレフィン−マレイン酸共重合体等が挙げられ、ポリアクリル酸、ポリイタコン酸、オレフィン−マレイン酸共重合体が好ましく、ポリ(メタ)アクリル酸、エチレン−無水マレイン酸共重合体がより好ましい。
【0040】
上記のポリカルボン酸系ポリマー(B)は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0041】
<オレフィン−マレイン酸共重合体>
本発明における、オレフィン−マレイン酸共重合体は、無水マレイン酸またはマレイン酸とオレフィンモノマーを溶液中などにおけるラジカル重合などの公知の方法で共重合することにより得られる。
【0042】
上記無水マレイン酸と共重合可能なオレフィンモノマーとしては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテルなどの炭素数3〜30のアルキルビニルエーテル類、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸エステル類、ギ酸ビニル、酢酸ビニルなどのビニルエステル類、スチレン、p−スチレンスルホン酸、エチレン、プロピレン、イソブチレンなどの炭素数2〜30のオレフィン、PVAの水酸基などと反応する反応性基を有する化合物などが挙げられ、これらの混合物を用いることもできる。
【0043】
このうち、アルキルビニルエーテル類、低級オレフィン類がガスバリア性を向上させることができる点で好ましく、特にメチルビニルエーテル、イソブチレン、エチレンが好ましい。
【0044】
上記オレフィン−マレイン酸共重合体中のマレイン酸単位は、乾燥状態では隣接カルボキシル基が脱水環化した無水マレイン酸構造となりやすく、湿潤時や水溶液中では開環してマレイン酸構造となる。
したがって、本発明においては、特記しない限り、マレイン酸単位と無水マレイン単位とを総称してマレイン酸単位という。
【0045】
本発明におけるオレフィン−マレイン酸共重合体中のマレイン酸単位は、10モル%以上含有することが好ましく、35モル%以上含有することがより好ましく、マレイン酸単位がほぼ等モルのオレフィンと無水マレイン酸との共重合体がより好ましい。マレイン酸単位が10モル%より少ないと、ポリアルコール系ポリマー(A)との反応による架橋構造の形成が不十分となり易く、ガスバリア性が低下する傾向にある。尚、このマレイン酸単位は部分的にエステル化もしくはアミド化されていてもよい。
また、本発明で用いられるオレフィン−マレイン酸共重合体は、重量平均分子量が3000〜1000000であることが好ましく、5000〜900000であることがより好ましく、10000〜800000であることが更に好ましい。
【0046】
<エチレン−マレイン酸共重合体>
本発明において用いられるエチレン−マレイン酸共重合体(以下、EMAという)は、無水マレイン酸とエチレンとを溶液ラジカル重合などの公知の方法で重合することにより得られるものである。また、本発明の目的を損なわない範囲で他のビニル化合物を少量共重合することも可能である。ビニル化合物としては例えば、アクリル酸メチル、メタアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタアクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタアクリル酸ブチル等のアクリル酸エステル類、ギ酸ビニル、酢酸ビニルなどのビニルエステル類、スチレン、p−スチレンスルホン酸、プロピレン、イソブチレンなどの炭素数3〜30のオレフィン類や、PVAの水酸基などと反応する反応性基を有する化合物を挙げることができる。
【0047】
本発明におけるEMA中のマレイン酸単位は、10モル%以上含有することが好ましく、マレイン酸単位がほぼ等モルのエチレンと無水マレイン酸との交互共重合体が好ましい。マレイン酸単位が10モル%より少ないと、ポリアルコール系ポリマー(A)との反応による架橋構造の形成が不十分でありガスバリア性が低下する。
また、本発明で用いられるEMAは重量平均分子量が3000〜1000000であることが好ましく、5000〜900000であることがより好ましく、10000〜800000であることが更に好ましい。
【0048】
なお、本発明で用いられるEMA中のマレイン酸単位は、乾燥状態では隣接カルボキシル基が脱水環化した無水マレイン酸構造となりやすく、一方、湿潤時や水溶液中では開環してマレイン酸構造となる。
【0049】
本発明において用いられるガスバリア性塗料は、ポリアルコール系ポリマー(A)とポリカルボン酸系ポリマー(B)の重量比が、ポリアルコール系ポリマー/ポリカルボン酸系ポリマー=90/10〜10/90であることが好ましく、70/30〜15/85であることがより好ましく、60/40〜20/80であることがさらに好ましく、50/50〜25/75であることが特に好ましい。相対的にポリマーのいずれかが極端に多いと、ガスバリア性向上の効果が小さい。
【0050】
<多価金属と揮発性塩基とを構成要素とする化合物(C)>
本発明で使用する多価金属と揮発性塩基とを構成要素とする化合物(C)とは、多価金属と、アンモニア、アミン等の揮発性塩基との化合物であって、多価金属のアンモニア錯体、アミン錯体、炭酸アンモウム錯体等があげられるが、ガスバリア性塗料の硬化時にガスバリア積層体へ残留する揮発性塩基が少ないアンモニア錯体、炭酸アンモニウム錯体が好ましい。
【0051】
通常、ポリカルボン酸系ポリマー(B)と多価金属の酸化物、塩化物、炭酸化物等の多価金属化合物を混合するとカルボン酸と多価金属の反応によりポリカルボン酸系ポリマーの凝集が起こり易い。しかし、本発明の多価金属と揮発性塩基とを構成要素とする化合物(C)を使用することで、多価金属とカルボン酸が反応せず凝集を起こさない。なお、本発明のガスバリア性塗料を塗布した後、加熱すると、多価金属と揮発性塩基とを構成要素とする化合物(C)は分解し、揮発性塩基は揮発し、多価金属とカルボン酸は反応し、金属架橋構造を形成する。
【0052】
<多価金属>
本発明で使用する多価金属は、ベリリウム、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属、ニッケル、銅、クロム、ジルコニウム、マンガン、鉄等の遷移金属、アルミニウム等があげられ、亜鉛、ジルコニウム等のアンモニアと反応する金属が好ましく、特に亜鉛が好ましい。
【0053】
<揮発性塩基>
本発明で使用する揮発性塩基としては、メタノールアミン、メチルメタノールアミン、ジメチルメタノールアミン、エチルメタノールアミン、ジエチルメタノールアミン、メチルエチルメタノールアミン、エタノールアミン、メチルエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、エチルエタノーエルアミン、ジエチルエタノールアミン、メチルエチルエタノールアミン、ジメタノールアミン、メチルジメタノールアミン、エチルジメタノールアミン、ジエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、エチルジエタノールアミン、トリメタノールアミン、トリエタノールアミン等の金属と錯体構造をなし得るアミン類やアンモニア等があり、特にアンモニアが好ましい。
【0054】
多価金属と揮発性塩基とを構成要素とする化合物(C)は、多価金属及び揮発性塩基以外の構成要素を含有してもよく、例えば炭酸等が挙げられる。
【0055】
多価金属と揮発性塩基とを構成要素とする化合物(C)の具体例としては、アンモニウム亜鉛、アンモニウム銅、炭酸アンモニウム亜鉛、炭酸アンモニウムジルコニウム等があり、アンモニウム亜鉛、炭酸アンモニウム亜鉛が好ましい。
多価金属と揮発性塩基とを構成要素とする化合物(C)は単独で用いてもよいし2種類以上を用いてもよい。
尚、多価金属と揮発性塩基とを構成要素とする化合物(C)は、多価金属と揮発性塩基とを構成要素とする化合物(C)を塗料中に配合することもできるし、あるいは多価金属と揮発性塩基とを構成要素とする化合物(C)を形成し得る多価金属化合物と揮発性塩基とを塗料中に配合することもできる。
【0056】
多価金属と揮発性塩基とを構成要素とする化合物(C)の添加量としては、ポリカルボン酸系ポリマー(B)のカルボン酸に対して0.2〜15化学当量が好ましく0.3〜〜10化学当量が特に好ましい。
0.2化学当量より少ないとバリア性が不十分であり、15化学当量より多いと耐水性が悪くなる傾向にある。ここでいう化学当量とはポリカルボン酸系ポリマー(B)のカルボン酸に対する化学当量である。1化学当量とは酸として作用する1当量のカルボン酸を中和する塩基の量をいう。ここで塩基とは多価金属と揮発性塩基とを構成要素とする化合物(C)を構成する多価金属である。例えば多価金属が亜鉛の場合、亜鉛は2価金属であるためカルボン酸と亜鉛は2:1molの比率で反応し、1molのカルボン酸に対し0.1molの亜鉛を添加したときに0.2化学当量であり、0.5molの亜鉛を添加したときは1化学当量、7.5molの亜鉛を添加したときは15化学当量となる。
【0057】
<アルカリ金属化合物(D)>
本発明で使用するアルカリ金属化合物(D)は、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、酸化物、炭酸物等の化合物であるが、水酸化物が好ましく水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが特に好ましい。
【0058】
アルカリ金属化合物(D)の添加量としては、ポリカルボン酸系ポリマー(A)のカルボン酸に対して0.001〜0.6mol%中和量が好ましく、0.002〜0.5mol%中和量が特に好ましい。0.001mol%中和量より少ないとバリア性が不十分であり、0.6mol%中和量より多いと耐水性が悪くなる。
【0059】
ポリカルボン酸系ポリマー(B)のカルボン酸は、バリア性、耐水性等の性能に影響を与えない範囲で他の化合物と反応させてもよい。多価金属と揮発性塩基とを構成要素とする化合物(C)以外の多価金属、例えばマグネシウム、カルシウム、バリウム、亜鉛、アルミニウム、コバルト、すず、鉄、チタン、銅、化ニッケル、マンガン等の2価以上の多価金属の水酸化物、硫化物、酸化物、炭酸化物、酢酸塩、蓚酸化物、リン酸化物、硝酸化物 塩化物等やアンモニア、メチルアミン、エチルアミン、ブチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のアルキルアミン類、ジメチルアミノエタノール、ジエタノールアミン、エタノールアミン、アミノメチルプロパノール等のアルコールアミン類、モルホリン等の環状アミン類、エチレンジアミン等の多価アミン類がある。
【0060】
本発明において用いられるガスバリア層形成用塗料は、さらに無機層状化合物を含有することもできる。無機層状化合物を含有することにより、ガスバリア層やガスバリア性積層体のガスバリア性をさらに向上させることができる。
ガスバリア性という観点からは、無機層状化合物の含有量は多い方が好ましい。しかし、無機層状化合物は、水親和性が強く吸湿しやすい。また無機層状化合物を含有する塗料は、高粘度化しやすいので塗装性を損ないやすい。さらに無機層状化合物の含有量が多いと、形成されるガスバリア層やガスバリア性積層体の透明性が低下する。
そこで、これらの観点から無機層状化合物は、ポリアルコール系ポリマーと、ポリカルボン酸系ポリマーとの合計100重量部に対して、1〜300重量部であることが好ましく、2〜200重量部であることがより好ましく、多くとも100重量部であることがさらに好ましい。
【0061】
ここでいう無機層状化合物とは、単位結晶層が重なって層状構造を形成する無機化合物であり、特に溶媒中で膨潤、劈開するものが好ましい。
無機層状化合物の好ましい例としては、モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、バーミキュライト、フッ素
雲母、白雲母、パラゴナイト、金雲母、黒雲母、レピドライト、マーガライト、クリントナイト、アナンダイト、緑泥石、ドンバサイト、スドーアイト、クッケアイト、クリノクロア、シャモサイト、ニマイト、テトラシリリックマイカ、タルク、パイロフィライト、ナクライト、カオリナイト、ハロイサイト、クリソタイル、ナトリウムテニオライト、ザンソフィライト、アンチゴライト、ディッカイト、ハイドロタルサイトなどがあり、膨潤性フッ素雲母又はモンモリロナイトが特に好ましい。
【0062】
これらの無機層状化合物は、天然に産するものであっても、人工的に合成あるいは変性されたものであってもよく、またそれらをオニウム塩などの有機物で処理したものであってもよい。
【0063】
膨潤性フッ素雲母系鉱物は白色度の点で最も好ましく、次式で示されるものである。
α(MF)・β(aMgF2・bMgO)・γSiO2(式中、Mはナトリウム又はリチウムを表し、α、β、γ、a及びbは各々係数を表し、0.1 ≦α≦2、2≦β≦3.5 、3≦γ≦4、0≦a≦1、0≦b≦1、a+b=1である。)
【0064】
このような膨潤性フッ素雲母系鉱物の製造法としては、例えば、酸化珪素と酸化マグネシウムと各種フッ化物とを混合し、その混合物を電気炉あるいはガス炉中で1400〜1500℃の温度範囲で完全に溶融し、その冷却過程で反応容器内にフッ素雲母系鉱物を結晶成長させる、いわゆる溶融法がある。
【0065】
また、タルクを出発物質として用い、これにアルカリ金属イオンをインターカレーションして膨潤性フッ素雲母系鉱物を得る方法がある(特開平2-149415号公報)。この方法では、タルクに珪フッ化アルカリあるいはフッ化アルカリを混合し、磁性ルツボ内で約 700〜1200℃で短時間加熱処理することによって膨潤性フッ素雲母系鉱物を得ることができる。
【0066】
この際、タルクと混合する珪フッ化アルカリあるいはフッ化アルカリの量は、混合物全体の10〜35重量%の範囲とすることが好ましく、この範囲を外れる場合には膨潤性フッ素雲母系鉱物の生成収率が低下するので好ましくない。
【0067】
珪フッ化アルカリ又はフッ化アルカリのアルカリ金属は、ナトリウムあるいはリチウムとすることが好ましい。これらのアルカリ金属は単独で用いてもよいし併用してもよい。また、アルカリ金属のうち、カリウムの場合には膨潤性フッ素雲母系鉱物が得られないが、ナトリウムあるいはリチウムと併用し、かつ限定された量であれば膨潤性を調節する目的で用いることも可能である。
【0068】
さらに、膨潤性フッ素雲母系鉱物を製造する工程において、アルミナを少量配合し、生成する膨潤性フッ素雲母系鉱物の膨潤性を調整することも可能である。
【0069】
モンモリロナイトは、次式で示されるもので、天然に産出するものを精製することにより得ることができる。
Si(Al2−aMg)O10(OH)・nHO(式中、Mはナトリウムのカチオンを表し、aは0.25〜0.60である。また、層間のイオン交換性カチオンと結合している水分子の数は、カチオン種や湿度等の条件に応じて変わりうるので、式中ではnHOで表す。)
またモンモリロナイトには次式群で表される、マグネシアンモンモリロナイト、鉄モンモリロナイト、鉄マグネシアンモンモリロナイトの同型イオン置換体も存在し、これらを用いてもよい。
Si(Al1.67-aMg0.5+a)O10(OH)・nH
Si(Fe(III)2-aMga)O10(OH)・nH
Si(Fe(III)1.67-aMg0.5+a)O10(OH)・nH
(式中、Mはナトリウムのカチオンを表し、aは0.25〜0.60である。)
【0070】
通常、モンモリロナイトはその層間にナトリウムやカルシウム等のイオン交換性カチオンを有するが、その含有比率は産地によって異なる。本発明においては、イオン交換処理等によって層間のイオン交換性カチオンがナトリウムに置換されていることが好ましい。また、水処理により精製したモンモリロナイトを用いることが好ましい。
【0071】
無機層状化合物は、ポリアルコール系ポリマー(A)及びポリカルボン酸系ポリマー(B)に直接混合することもできるが、混合する前に予め液状媒体に膨潤、分散しておくことが好ましい。膨潤、分散用の液状媒体としては、特に限定されないが、例えば天然の膨潤性粘土鉱物の場合、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、等のアルコール類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン等が挙げられ、水やメタノール等のアルコール類がより好ましい。
【0072】
本発明におけるガスバリア性塗料には、その特性を大きく損わない限りにおいて、熱安定剤、酸化防止剤、強化材、顔料、劣化防止剤、耐候剤、難燃剤、可塑剤、離型剤、滑剤などを添加してもよい。
【0073】
熱安定剤、酸化防止剤及び劣化防止剤としては、例えばヒンダードフェノール類、リン化合物、ヒンダードアミン類、イオウ化合物、銅化合物、アルカリ金属のハロゲン化物あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0074】
次に本発明におけるガスバリア性塗料の製造方法について説明する。
たとえば、ポリアルコール系ポリマー(A)とポリカルボン酸系ポリマー(B)を別々に水溶液とし、使用前に混合して用いる方法が好ましい。そして、多価金属と揮発性塩基とを構成要素とする化合物(C)及びアルカリ金属化合物(D)を添加する方法としては、例えば(1)〜(10)に示す方法が挙げられ、(1)〜(4)が好ましい。
(1)多価金属と揮発性塩基とを構成要素とする化合物(C)を、ポリアルコール系ポリマー(A)、またはポリカルボン酸系ポリマー(B)のいずれか一方に混合し、その後アルカリ金属化合物(D)を混合し、さらにポリカルボン酸系ポリマー(B)もしくはポリアルコール系ポリマー(A)を混合する。
あるいは、多価金属と揮発性塩基とを構成要素とする化合物(C)を、ポリアルコール系ポリマー(A)、またはポリカルボン酸系ポリマー(B)のいずれか一方に混合し、その後アルカリ金属化合物(D)とポリカルボン酸系ポリマー(B)、もしくはアルカリ金属化合物(D)とポリアルコール系ポリマー(A)とを混合する。
(2)多価金属と揮発性塩基とを構成要素とする化合物(C)を、ポリアルコール系ポリマー(A)とポリカルボン酸系ポリマー(B)との混合物と混合し、その後アルカリ金属化合物(D)を混合する。
(3)多価金属と揮発性塩基とを構成要素とする化合物(C)を、ポリアルコール系ポリマー(A)とアルカリ金属化合物(D)の混合物、またはポリカルボン酸系ポリマー(B)とアルカリ金属化合物(D)の混合物のいずれかに混合し、さらにポリカルボン酸系ポリマー(B)もしくはポリアルコール系ポリマー(A)を混合する。
(4)多価金属と揮発性塩基とを構成要素とする化合物(C)を、ポリアルコール系ポリマー(A)とポリカルボン酸系ポリマー(B)とアルカリ金属化合物(D)との混合物と混合する。
(5)ポリアルコール系ポリマー(A)とポリカルボン酸系ポリマー(B)との混合物と、揮発性塩基化合物とを混合し、次いで多価金属化合物を混合し、塗料溶液中で多価金属と揮発性塩基とを構成要素とする化合物(C)を得、その後アルカリ金属化合物(D)を混合する。
(6)ポリアルコール系ポリマー(A)と揮発性塩基化合物とを混合後、次いで多価金属化合物を混合し、溶液中で多価金属と揮発性塩基とを構成要素とする化合物(C)を得、その後ポリカルボン酸系ポリマー(B)とアルカリ金属化合物(D)とを混合する。
(7)ポリカルボン酸系ポリマー(B)と揮発性塩基化合物とを混合後、次いで多価金属化合物を混合し、溶液中で多価金属と揮発性塩基とを構成要素とする化合物(C)を得、その後ポリアルコール系ポリマー(A)とアルカリ金属化合物(D)とを混合する。
(8)ポリアルコール系ポリマー(A)とアルカリ金属化合物(D)との混合物を得、次いで揮発性塩基化合物を混合し、更に多価金属化合物を混合し、塗料溶液中で多価金属と揮発性塩基とを構成要素とする化合物(C)とする。ポリカルボン酸系ポリマー(B)は、揮発性塩基化合物を添加する前に加えてもよいし、同時に加えてもよいし、揮発性塩基化合物を添加した後、多価金属化合物を添加する前に加えてもよいし、多価金属化合物と同時に加えてもよいし、多価金属化合物を添加した後に加えてもよい。
(9)ポリカルボン酸系ポリマー(B)とアルカリ金属化合物(D)の混合物を得、次いで揮発性塩基化合物を混合し、更に多価金属化合物を混合し、塗料溶液中で多価金属と揮発性塩基とを構成要素とする化合物(C)とする。ポリアルコール系ポリマー(A)は、揮発性塩基化合物を添加する前に加えてもよいし、同時に加えてもよいし、揮発性塩基化合物を添加した後、多価金属化合物を添加する前に加えてもよいし、多価金属化合物と同時に加えてもよいし、多価金属化合物を添加した後に加えてもよい。
(10)ポリアルコール系ポリマー(A)とポリカルボン酸系ポリマー(B)とアルカリ金属化合物(D)の混合物を得た後、揮発性塩基化合物を混合し、更に多価金属化合物を混合し、塗料溶液中で多価金属と揮発性塩基とを構成要素とする化合物(C)とする。
【0075】
ガスバリア性塗料の濃度(=固形分)は、塗装装置や乾燥・加熱装置の仕様によって適宜変更され得るものであるが、あまりに希薄な溶液ではガスバリア性を発現するのに充分な厚みの層をコートすることが困難となり、また、その後の乾燥工程において長時間を要するという問題を生じやすい。他方、ガスバリア性塗料の濃度が高すぎると、均一な塗料を得にくく、塗装性に問題を生じ易い。この様な観点から、ガスバリア性塗料の濃度(=固形分)は、5〜50重量%の範囲にすることが好ましい。
【0076】
プラスチック基材 ]
上述のガスバリア性塗料をプラスチック基材上に直に、又はアンダーコート層(以下、UC層ともいう)を介してプラスチック基材上に塗布し、加熱処理することにより、耐湿性に優れるガスバリア性積層体を得ることができる。
ここで用いられるプラスチック基材は、熱成形可能な熱可塑性樹脂から押出成形、射出成形、ブロー成形、延伸ブロー成形或いは絞り成形等の手段で製造された、フィルム状基材の他、ボトル、カップ、トレイ等の各種容器形状を呈する基材であってもよく、フィルム状であることが好ましい。
また、プラスチック基材は、単一の層から構成されるものであってもよいし、あるいは例えば同時溶融押出しや、その他のラミネーションによって複数の層から構成されるものであってもよい。
【0077】
プラスチック基材を構成する熱可塑性樹脂としては、オレフィン系共重合体、ポリエステル、ポリアミド、スチレン系共重合体、塩化ビニル系共重合体、アクリル系共重合体、ポリカーボネート等が挙げられ、オレフィン系共重合体、ポリエステル、ポリアミドが好ましい。
【0078】
オレフィン系共重合体としては、低−、中−或いは高−密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン−共重合体、アイオノマー、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体等が、
ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート、ポリエチレンナフタレート等が、
ポリアミドとしては、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6,10、メタキシリレンアジパミド等のポリアミド;
スチレン系共重合体としては、ポリスチレン、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル共重合体(ABS樹脂)等が、
塩化ビニル系共重合体としては、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等が、
アクリル系共重合体としては、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート・エチルアクリレート共重合体等がそれぞれ挙げられる。
これらの熱可塑性樹脂は、単独で使用してもよいし、2種以上を混合し使用しても良い。
【0079】
前記の溶融成形可能な熱可塑性樹脂には、所望に応じて顔料、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、滑剤などの添加剤の1種或いは2種類以上を樹脂100重量部当りに合計量として0.001部乃至5.0部の範囲内で添加することもできる。
また、本発明のガスバリア性積層体を用いて後述するように包装材を形成する場合、包装材としての強度を確保するために、ガスバリア性積層体を構成するプラスチック基材として、各種補強材入りのものを使用することができる。即ち、ガラス繊維、芳香族ポリアミド繊維、カーボン繊維、パルプ、コットン・リンター等の繊維補強材、或いはカーボンブラック、ホワイトカーボン等の粉末補強材、或いはガラスフレーク、アルミフレーク等のフレーク状補強材の1種類或いは2種類以上を、前記熱可塑性樹脂100重量部当り合計量として2乃至150重量部の量で配合でき、更に増量の目的で、重質乃至軟質の炭酸カルシウム、雲母、滑石、カオリン、石膏、クレイ、硫酸バリウム、アルミナ粉、シリカ粉、炭酸マグネシウム等の1種類或いは2種類以上を前記熱可塑性樹脂100重量部当り合計量として5乃至100重量部の量でそれ自体公知の処方に従って配合しても何ら差支えない。
さらに、ガスバリア性の向上を目指して、鱗片状の無機微粉末、例えば水膨潤性雲母、クレイ等を前記熱可塑性樹脂100重量部当り合計量として5乃至100重量部の量でそれ自体公知の処方に従って配合しても何ら差支えない。
【0080】
[ アンダーコート層 ]
本発明のガスバリア性塗料はプラスチック基材上に直に、又はUC層を介してプラスチック基材上に塗布し、加熱処理してなるものである。そこで本発明において用いられるUC層について説明する。UC層は、ガスバリア層とプラスチック基材との間に位置し、ガスバリア層の密着性向上の役割を主として担う。
UC層は、ウレタン系、ポリエステル系、アクリル系、エポキシ系等種々のポリマーから形成され得、ウレタン系のUC層が好ましい。
【0081】
例えば、ウレタン系のUC層の場合、
(1) ポリエステルポリオールやポリエーテルポリオール等のポリオール成分とポリイソシアネート成分とを含有するUC用組成物をプラスチック基材上に塗工、加熱し、ポリオール成分とポリイソシアネート成分とを反応させ、ウレタン系のUC層を形成することができる。該UC層上に、ガスバリア性塗料の溶液を塗工し、これを加熱すれば基材/UC層/ガスバリア層からなる積層体を得ることができる。
(2) UC用組成物をプラスチック基材上に塗工、乾燥し、ポリオール成分とポリイソシアネート成分との反応が完了していない、UC層の前駆体を得、該前駆体上にガスバリア性塗料の溶液を塗工し、加熱することによってUC層の形成とガスバリア層の形成とを一度に行って、基材/UC層/ガスバリア層を得ることもできる。
(3) あるいは、UC用組成物をプラスチック基材上に塗工後、加熱せずに、ガスバリア性塗料を塗工し、加熱することによってUC層の形成とガスバリア層の形成とを一度に行って、基材/UC層/ガスバリア層からなる積層体を得ることもできる。
UC用組成物に含まれるポリイソシアネートが,ガスバリア層との界面領域において,ポリアルコール系ポリマー(A)中の水酸基とも反応し、密着性向上に寄与する他、ガスバリア層の架橋を補助し、耐水性の向上にも効果があると考えられるので、(2)、(3)の方法が好ましい。
【0082】
UC層の形成に供されるポリオール成分としては、ポリエステルポリオールが好ましく、ポリエステルポリオールとしては、多価カルボン酸もしくはそれらのジアルキルエステルまたはそれらの混合物と、グリコール類もしくはそれらの混合物とを反応させて得られるポリエステルポリオールが挙げられる。
多価カルボン酸としては、例えばイソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族多価カルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸,シクロヘキサンジカルボン酸の脂肪族多価カルボン酸が挙げられる。
グリコールとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6ーヘキサンジオールなどが挙げられる。
【0083】
これらのポリエステルポリオールは,ガラス転移温度(以下、Tgという)−50℃〜120℃のものが好ましく,−20℃〜100℃のものがより好ましく,0℃〜90℃のものがさらに好ましい。ポリエステルポリオールの好適なTgは、ガスバリア性塗料を塗布後加熱硬化する際の加熱硬化条件とも関係する。比較的低温で加熱硬化する場合には、比較的高Tgのポリエステルポリオールが好ましく、比較的高温で加熱硬化する場合には、低温から高温まで比較的幅広いTgのポリエステルポリオールが好適に使用できる。例えば、180℃でガスバリア性塗料を加熱硬化する場合には、70〜90℃程度のTgのポリエステルポリオールが好ましい。一方、200℃でガスバリア性塗料を加熱硬化する場合には、0〜90℃程度のTgのポリエステルポリオールを使用することができる。
また,これらのポリエステルポリオールの数平均分子量は1000〜10万のものが好ましく,3000〜5万のものがより好ましく,1万〜4万のものがさらに好ましい。
【0084】
UC層の形成に供されるポリイソシアネートとしては、
例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フエニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフエニレンジイソシアネート、3,3’−ジクロロ−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,5−テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート、
テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジ イソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、
上記ポリイソシアネート単量体から誘導されたイソシアヌレート、ビューレット、アロファネート等の多官能ポリイソシアネート化合物、あるいはトリメチロールプロパン、グリセリン等の3官能以上のポリオール化合物との反応により得られる末端イソシアネート基含有の多官能ポリイソシアネート化合物等を挙げることができる。ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、HMDIともいう)の三量体である3官能イソシアヌレート体が好ましい。
【0085】
ポリエステルポリオールとポリイソシアネートの重量比は10:90〜99:1のものが好ましく,30:70〜90:10のものがより好ましく,50:50〜85:15のものがさらに好ましい。
【0086】
UC層の膜厚は使用する用途に応じて適宜決めることが出来るが、0.1μm〜10μmの厚みであることが好ましく、0.1μm〜5μmの厚みであるとより好ましく、0.1μm〜1μmの厚みであることが特に好ましい。0.1μm未満の厚みでは接着性を発現する事が困難となり、一方10μmを越える厚みになると塗工等の生産工程において困難を生じやすくなる。
【0087】
UC用組成物中のポリエステルオールとポリイソシアネートとの濃度は適切な溶剤を用いて調節することができ,その濃度は両者を足して0.5〜80重量%の範囲であることが好ましく、1〜70重量%の範囲であることがより好ましい。溶液の濃度が低すぎると,必要な膜厚の塗膜を形成することが困難となり,また,乾燥時に余分な熱量を必要としてしまうので好ましくない.溶液の濃度が高すぎると溶液粘度が高くなりすぎて,混合、塗工時などにおける操作性の悪化を招く問題が生じる。
【0088】
UC用組成物に使用できる溶剤としては、例えば,トルエン,MEK,シクロヘキサノン,ソルベッソ,イソホロン,キシレン,MIBK,酢酸エチル,酢酸ブチルがあげられるが,これらに限定されるものではない.
UC層には上記成分の他に、公知である硬化促進触媒,充填剤、軟化剤、老化防止剤、安定剤、接着促進剤、レベリング剤、消泡剤、可塑剤、無機フィラー、粘着付与性樹脂、繊維類、顔料等の着色剤、可使用時間延長剤等を使用することもできる。
【0089】
UC層、ガスバリア層を形成するには,各層を形成するための組成物を,ロールコーター方式,グラビア方式,グラビアオフセット方式,スプレー塗装方式,あるいはそれらを組み合わせた方式などにより,それぞれプラスチック基材上、UC層上に、所望の厚さに塗布することができるが,これらの方式に限定されるものではない。
また、未延伸フィルムに塗布して乾燥した後、延伸処理することもできる。例えば、乾燥後、テンター式延伸機に供給してフィルムを走行方向と幅方向に同時に延伸(同時2軸延伸)、熱処理することもできる。あるいは、多段熱ロール等を用いてフィルムの走行方向に延伸を行った後に塗料等を塗布し、乾燥後、テンター式延伸機によって幅方向に延伸(逐次2軸延伸)してもよい。また、走行方向の延伸とテンターでの同時2軸延伸を組み合わせることも可能である。
本発明におけるガスバリア層の厚みは、積層体のガスバリア性を十分高めるためには少なくとも0.1μmより厚くすることが望ましい。
【0090】
[ ガスバリア性積層体 ]
本発明のガスバリア性積層体は、上述のガスバリア性塗料をプラスチック基材上に直に、又はUC層を介してプラスチック基材上に塗布し、加熱処理したものである。
即ち、ガスバリア性塗料を塗布した後、一旦加熱処理することによって、ポリアルコール系ポリマー(A)とポリカルボン酸系ポリマー(B)とのエステル化反応及び、ポリカルボン酸系ポリマー(B)と多価金属と揮発性塩基とを構成要素とする化合物(C)とのイオン架橋により、ガスバリア性積層体が生成される。
【0091】
ポリアルコール系ポリマー(A)とポリカルボン酸系ポリマー(B)との比や、塗料中に含まれる種々の成分等によっても影響を受け得るので、ガスバリア性塗料の好ましい加熱処理条件は一概には言えないが、100℃以上300℃以下の温度で行うことが好ましく、120℃以上250℃以下がより好ましく、140℃以上240℃以下がさらに好ましく、160℃以上220℃以下が特に好ましい。
詳しくは、100℃以上140℃未満の温度範囲で90秒以上、または140℃以上180℃未満の温度範囲で1分以上、または180℃以上250℃未満の温度範囲で30秒以上の熱処理を行うことが好ましく、
100℃以上140℃未満の温度範囲で2分以上、または140℃以上180℃未満の温度範囲で90秒以上、または180℃以上240℃以上の温度範囲で1分以上の熱処理を行うことがより好ましく、
100℃以上140℃未満の温度範囲で4分以上、または140℃以上180℃未満の温度範囲で3分以上、または180℃以上220℃未満の温度範囲で2分程度の熱処理を行うことが特に好ましい。
【0092】
背景技術の欄で述べたように、塗料を塗布した後、加熱することによって、ポリアルコール系ポリマー(A)中の水酸基とポリアクリル酸系ポリマー(B)中のCOOHとをエステル化反応させただけでは、高温高湿度下にガスバリア性積層体が長時間保存されるとエステル結合が加水分解をおこし、ガスバリア性の劣化が著しかった。
これに対し、多価金属と揮発性塩基を構成要素とする化合物(C)をさらに含有する塗料を塗布後加熱すると、前記化合物(C)が分解し、多価金属が生成する。そして、その多価金属が、ポリカルボン酸系ポリマー(B)とイオン架橋することによって、高湿度下に曝されても従来よりもはるかにガスバリア性の低下を抑制・防止できる。
【実施例】
【0093】
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明について具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
【0094】
<酸素透過度>
Modern Control社製、酸素透過試験器OX−TRAN TWINを用い、25℃、80%RHにおける酸素透過度を求めた。具体的には、初期状態、及び40℃、湿度90%の環境下に7日間曝した後の酸素透過度を、25℃、80%RHに加湿した酸素ガス及び窒素ガス(キャリアーガス)を用い、それぞれ求めた。
【0095】
各性塗料から形成されたガスバリア層の酸素透過度は以下の計算式により求めた。
1/Ptotal=1/Pfilm+1/PNy
但し、
total:各塗料から形成されたガスバリア層、及び基材フィルム(2軸延伸ナイロンフィルム)層とからなる積層フィルムの酸素透過度。UC層を有する場合には、ガスバリア層、UC層及び基材フィルムの酸素透過度。
film:各塗料から形成されたフィルム層(ガスバリア層)の酸素透過度。
Ny:基材フィルム(2軸延伸ナイロンフィルム)層の酸素透過度。UC層を有する場合には、UC層及び基材フィルムの酸素透過度。
【0096】
<耐水性>
ガスバリア性塗料をプラスチック基材に積層したガスバリア性積層体を、蒸留水中で95℃、30分ボイル処理したときのガスバリア性積層体の外観変化を観察した。
【0097】
[製造例1]
PVA(クラレ(株)製、ポバール105(ポリビニルケン化度98〜99%、平均重合度約500)100重量部を蒸留水900重量部に加え、95℃で3時間加熱し、PVAを溶解し、固形分10%のPVA溶液を得た。
【0098】
[製造例2]
EMA(重量平均分子量100000)100重量部を蒸留水900重量部に加え、95℃で3時間加熱し、EMAを溶解し、固形分10%のEMA溶液を得た。
【0099】
[製造例3]
ポリアクリル酸(数平均分子量200000、25重量%水溶液、東亞合成(株)製商品名A10H)400重量部を蒸留水600重量部に加え、1時間加熱し、ポリアクリル酸を溶解し、固形分10%のポリアクリル酸溶液を得た。
【0100】
[製造例4]
酸化亜鉛を10重量部、25%アンモニア水80重量部及び炭酸水素アンモニウム10重量部を混合し透明な亜鉛化合物の溶液を得た。
【0101】
[実施例1]
ガラス容器に製造例1のPVA溶液を40gと製造例2のEMA溶液を60g入れ混合後、製造例4の亜鉛化合物溶液38.8gを加え混合し、更に10%水酸化ナトリウム水溶液3.8gを加え混合し、固形分10%、亜鉛がカルボン酸に対し1化学当量であり、水酸化ナトリウムはカルボン酸に対し10mol%中和量であるガスバリア性塗料を得た。
このガスバリア性塗料を2軸延伸ナイロンフィルム(厚み15μm)の上に、バーコーターNo.12を用いて塗工し、電気オーブンで80℃、2分間乾燥後、電気オーブンで180℃、2分間加熱し、厚さ1.5μmのガスバリア性積層体を得た。
得られたガスバリア性積層体について、40℃、湿度90%の環境に7日間放置する前後の酸素透過度を測定した。また、得られたガスバリア性積層体について、耐水性を評価した。結果を表2に示す。
【0102】
[実施例2〜5]
実施例1で用いた多価金属化合物の溶液及び水酸化ナトリウムの量を表1に示すように変えた以外は実施例1と同様にしてガスバリア性積層体を得、耐水性、及び高温高湿下保存前後における酸素透過度を測定した。結果を表2に示す。
【0103】
[実施例6]
ガラス容器に製造例1のPVA溶液を40gと製造例2のEMA溶液を60g入れ混合後、製造例4の亜鉛化合物の溶液38.8gを加え混合し、更に10%水酸化ナトリウム水溶液3.8gを加え混合後、25%アンモニア水6.5gを加え混合し、固形分10%、亜鉛がカルボン酸に対し1化学当量であり、水酸化ナトリウムはカルボン酸に対し10mol%中和量であるガスバリア性塗料を得た。
このガスバリア性塗料を2軸延伸ナイロンフィルム(厚み15μm)の上に、バーコーターNo.12を用いて塗工し電気オーブンで80℃、2分間乾燥後、電気オーブンで180℃、2分間加熱し、厚さ1.5μmのガスバリア性積層体を得た。
以下実施例1と同様にガスバリア性積層体の耐水性、及び高温高湿下保存前後における酸素透過度を測定した。結果を表2に示す。
【0104】
[実施例7]
実施例6で用いた25%アンモニア水の代わりに、表1に示すエタノールアミンを5.8g用いた以外は実施例6と同様にしてガスバリア性積層体を得、耐水性及び酸素透過度を測定した。結果を表2に示す。
【0105】
[実施例8]
ガラス容器に製造例1のPVA溶液を40gと製造例2のEMA溶液を60g入れ混合後、10%水酸化ナトリウム3.8gを加え混合した。更に25%アンモニア水31.2gと炭酸水素アンモニウム3.9gを加えよく撹拌後、酸化亜鉛3.9gを加え混合し、固形分10%、亜鉛がカルボン酸に対し1化学当量であり、水酸化ナトリウムはカルボン酸に対し10mol%中和量であるガスバリア性塗料を得た。
以下実施例1と同様にガスバリア性積層体を得、その耐水性、及び高温高湿下保存前後における酸素透過度を測定した。結果を表2に示す。
【0106】
[比較例1]
ガラス容器に製造例1のPVA溶液を40gと製造例2のEMA溶液を60g入れ混合後、10%水酸化ナトリウム水溶液3.8gを加え混合し、固形分10%、水酸化ナトリウムがカルボン酸に対し10mol%中和量でガスバリア性塗料を得た。
以下実施例1と同様にガスバリア性積層体を得、その耐水性、及び高温高湿下保存前後における酸素透過度を測定した。結果を表2に示す。
【0107】
[比較例2]
ガラス容器に製造例1のPVA溶液を40gと製造例2のEMA溶液を60g入れ混合後、製造例4の亜鉛化合物の溶液38.8gを加え混合し、固形分10%、亜鉛がカルボン酸に対し1化学当量であるガスバリア性塗料を得た。
以下実施例1と同様にガスバリア性積層体を得、その耐水性、及び高温高湿下保存前後における酸素透過度を測定した。結果を表2に示す。
【0108】
[比較例3]
ガラス容器に製造例1のPVA溶液を40gと製造例2のEMA溶液を60g入れ混合後、10%水酸化ナトリウム3.8gを加え混合した。この混合物に酸化亜鉛を3.9g加えたところただちに凝集しゲル化した
【0109】
[比較例4]
製造例3のポリアクリル酸溶液を100gと、25%アンモニア水218gと炭酸水素アンモニウム27gをよく混合後、酸化亜鉛27.2gを加え混合し、固形分10%、亜鉛がカルボン酸に対し4.8化学当量であるガスバリア性塗料を得た。
以下実施例1と同様にガスバリア性積層体を得、その耐水性、及び高温高湿下保存前後における酸素透過度を測定した。結果を表2に示す。
【0110】
[比較例5]
比較例4で得たガスバリア性積層体にトップコートを塗工し耐水性試験及び酸素透過度を測定した結果を表2に示す。
なお、トップコートはエポキシ樹脂(レジナス化成(株)製ARP−01)40g、硬化剤(変性脂肪族ポリアミン)10g、及び希釈剤2−ブタノンを50g混合し得た。このトップコート形成用塗料をバーコーターNo.20で塗工し50℃で24時間加熱処理しトップコートを形成した。
【0111】
【表1】

【0112】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアルコール系ポリマー(A)、ポリカルボン酸系ポリマー(B)、多価金属と揮発性塩基とを構成要素とする化合物(C)及びアルカリ金属化合物(D)を含有することを特徴とするガスバリア性塗料。
【請求項2】
多価金属と揮発性塩基からなる化合物(C)が、NHを構成要素とすることを特徴とする請求項1記載のガスバリア性塗料。
【請求項3】
ポリアルコール系ポリマー(A)が、ポリビニルアルコール、エチレン―ビニルアルコール共重合体、糖類のいずれか1種又はこれらの混合物であることを特徴とする請求項1又は2記載のガスバリア性塗料。
【請求項4】
ポリカルボン酸系ポリマー(B)が、オレフィン―マレイン酸共重合体であることを特徴とする請求項1ないし3いずれか記載のガスバリア性塗料。
【請求項5】
オレフィン―マレイン酸共重合体が、エチレン―マレイン酸共重合体であることを特徴とする請求項4記載のガスバリア性塗料。
【請求項6】
多価金属が、亜鉛であることを特徴とする請求項1ないし5いずれか記載のガスバリア性塗料。
【請求項7】
アルカリ金属化合物(D)が、アルカリ金属の水酸化物であることを特徴とする請求項1ないし6いずれか記載のガスバリア性塗料。
【請求項8】
請求項1ないし7いずれか記載のガスバリア性塗料から形成されるガスバリア層が、プラスチック基材上に直に、又はアンダーコート層を介してプラスチック基材上に、積層されていることを特徴とするガスバリア性積層体。

【公開番号】特開2006−219518(P2006−219518A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−31552(P2005−31552)
【出願日】平成17年2月8日(2005.2.8)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】