説明

ガス処理装置

【課題】ガスの被処理成分の処理効率の向上を図るとともに、容器の小型化を図ることが可能なガス処理装置を提供する。
【解決手段】ガス導入部42から容器41内にガスGを導入して旋回流形成部50に流入することにより、ガスGの旋回流48を形成する。この旋回流48を形成するときのガスGの勢いにより、4つの液体噴射部53から噴射されて溜まり部60に溜まった液体Lを旋回流48に巻き込んでガスGと液体Lを接触させてガスGの被処理成分(アンモニア)を処理する。さらに、旋回流形成部50でガスGの被処理成分(アンモニア)を十分に処理しきれなくても、ガスGが旋回流形成部50の開口から容器41上方の下流側へ流動する間に、液体噴射部53から噴射された液体Lに接触させてガスGの被処理成分(アンモニア)を効率よく処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、燃料電池システムなどの各種産業製品に装備されるガス処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ドラフト装置等の排気装置に採用されるガス洗浄装置が知られており、一般にガス洗浄装置は、洗浄塔本体と、この洗浄塔本体内に設けられ、洗浄液を噴霧するシャワーとを備えている。
【0003】
この種ガス洗浄装置として、例えば、洗浄塔本体の内部空間が下側から順に、吸気室、充填材室および洗浄室として区画され、シャワーが洗浄室に設けられているドラフト用縦型ガス洗浄装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
そして、上記したドラフト用縦型ガス洗浄装置では、ドラフト装置等からの排気ガスが洗浄塔本体内に導入されると、排気ガスは吸気室、充填材室および洗浄室を順次通過するように、下方から上方に向かって流動し、洗浄室を通過するときに、シャワーから噴射される洗浄液(水)と接触して、洗浄(処理)される。また、洗浄(処理)された排気ガスは、洗浄室と連通する排気筒から洗浄塔本体外に排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】登録実用新案3096457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記した特許文献1に記載のドラフト用縦型ガス洗浄装置では、排気ガスが洗浄室を通過するときに、洗浄液と接触して洗浄(処理)されるので、所望の排気ガスの処理効率を確保するためには、洗浄室を一定以上の大きさに形成する必要がある。そのため、ドラフト用縦型ガス洗浄装置(洗浄塔本体)の小型化を図るには限度がある。
【0007】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、ガスの被処理成分の処理効率の向上を図るとともに、容器の小型化を図ることが可能なガス処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するために、本発明のガス処理装置は、被処理成分を含むガスを処理するガス処理装置において、容器と、前記容器内に前記ガスを導入するガス導入部と、前記ガスを処理するための処理成分を含む液体を貯留する貯留部と、前記貯留部の前記液体を前記容器内の上部から噴射する液体噴射部と、前記容器内の前記液体噴射部の下方に一部が開口して設けられ、前記液体噴射部から噴射された前記液体および前記ガス導入部から導入された前記ガスを受け、前記ガスを旋回流形成壁内面に反射させて旋回流を形成する旋回流形成部と、前記容器内の前記液体噴射部の上方であって前記ガスの下流側に設けられ前記ガスを前記容器外に排出する排出部とを備えたことを特徴とする。
【0009】
また、前記ガス導入部から導入される前記ガスを前記旋回流形成部の下方に向かって導入するガス導入路をさらに備え、前記旋回流形成壁の上面部分が、前記ガス導入路方向に向けて傾斜している構成であってもよい。
【発明の効果】
【0010】
請求項1にかかる発明によれば、ガス導入部から導入されたガスの旋回流形成部に流入するときの勢いにより、ガスの旋回流が形成され、液体噴射部から噴射された液体が旋回流形成部に入るとともに、ガスの旋回流に巻き込まれるため、ガスの被処理成分が液体に接触して効率よく処理される。
【0011】
さらに、下流側に流動するガスが旋回流形成部で被処理成分を十分に処理しきれなくても、ガスが旋回流形成部の開口から容器上方の下流側へ流動する間に液体噴射部から噴射された液体に接触することから、ガスに含まれる処理しきれない被処理成分が容器上部の下流側である排出部方向へ流動する間に液体と接触して効率よく処理される。
【0012】
したがって、容器内下部の旋回流形成部でガスの旋回流に液体を巻き込んでガスの被処理成分を処理できるとともに、旋回流形成部の開口を経てガスが容器上部の下流側へ流動する間に、旋回流形成部で処理しきれないガスの被処理成分を処理できるため、容器を小型にしても効率よくガスの被処理成分を処理することができ、容器の小型化による低コスト化および軽量化を図ることが可能になる。
【0013】
また、請求項2にかかる発明によれば、旋回流形成壁の上面部分が、ガス導入路方向に向けて傾斜していることから、ガス導入路により、ガスが旋回流形成部の下方に向かって導入されることにより、ガスの旋回流形成部への導入時の勢いにより旋回流を効果的に形成できるため、ガスと液体の大部分とが旋回流形成部において旋回流に乗って接触し、ガスの被処理成分を処理することができ、旋回流形成部でガスの被処理成分が処理されたガスの大部分が旋回流形成部の開口から出て容器上部の下流側に向かう。
【0014】
そのため、旋回流形成部で処理される前のガスと処理された後のガスとの旋回流形成部の開口での入出が円滑になり、より一層効率よくガスの被処理成分を処理することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のガス処理装置の一実施形態を搭載した電動車両の概略構成説明図である。
【図2】図1に示されるガス処理装置の側断面図である。
【図3】図2のガス処理装置の液体噴射部の配置を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施形態にかかるガス処理装置を電動車両に搭載した例について、図1ないし図3を参照して説明する。なお、図1は電動車両の概略構成説明図、図2はガス処理装置の側断面図、図3はガス処理装置の液体噴射部の配置を示す平面図である。
【0017】
A.燃料電池システムの全体構成
図1に示すように、電動車両1は、燃料電池およびバッテリを選択的に動力源とするハイブリッド車であり、車両用燃料電池システムとしての燃料電池システム2を搭載している。
【0018】
燃料電池システム2は、燃料電池3と、燃料給排部4と、図示しない空気給排部と、制御部5と、動力部6と、DC/DCコンバータ7と、ガス処理装置8とを備えている。
【0019】
(1)燃料電池
燃料電池3は、液体燃料が直接供給され、例えば、アニオン交換型燃料電池であって、電動車両1の中央下側に配置されている。燃料電池3に供給される液体燃料としては、例えば、ヒドラジン(無水ヒドラジンや、ヒドラジン1水和物などの水加ヒドラジンなどを含む)などが挙げられる。
【0020】
また、燃料電池3の出力電圧は、例えば0.2V〜1.5Vであり、出力電流は、例えば10〜400Aである。なお、これら出力は、後述する単位セル1個当たりの出力である。
【0021】
燃料電池3は、アニオン交換部からなる電解質層9と、電解質層9の一方側に配置されたアノード10と、電解質層9の他方側に配置されたカソード11とを備える単位セル(燃料電池セル)12が、絶縁材料からなるセパレータ(図示せず)を介して複数積層されたスタック構造に形成されている。すなわち、電解質層9を介してアノード10およびカソード11が対向配置される単位セル12が複数積層されている。なお、図1では、積層される複数の単位セル12のうち、電動車両1の前後方向の最前端に配置される単位セル12だけを表わしており、その他の単位セル12は図示省略している。
【0022】
さらに、燃料電池3は、燃料供給口14と燃料排出口15と空気供給口(図示せず)と空気排出口(図示せず)とを備えている。燃料供給口14は、液体燃料をアノード10内に流入させるための入口であり、燃料電池3の後端部下側に形成されている。燃料排出口15は、液体燃料をアノード10から排出するための出口であり、燃料電池3の後端部上側に形成されている。また、空気供給口は、空気をカソード11内に流入させるための入口であり、空気排出口は、空気をカソード11から排出させるための出口である。
【0023】
(2)燃料給排部
燃料給排部4は、電動車両1の後側であって燃料電池3よりも後方に配置され、液体燃料を貯蔵するための燃料タンク18と、燃料タンク18から供給される液体燃料をアノード10に供給するとともに、燃料電池3から排出される液体燃料を燃料電池3に還流するための還流管20とを備えている。
【0024】
燃料タンク18はほぼボックス形状に形成され、その内部には液体燃料として例えばヒドラジンなどが貯蔵されている。還流管20は、その一端側(下側)が燃料電池3の燃料供給口14に接続され、他端側(上側)が燃料電池3の燃料排出口15に接続されている。これにより、燃料電池3と燃料給排部4との間には、燃料排出口15(上流側)から排出される液体燃料が、還流管20を介して燃料供給口14(下流側)へ流れることによりアノード10を循環するクローズドライン(閉流路)が形成される。
【0025】
ここで、還流管20の途中には、燃料電池3の後上側において、気液分離器21が介在されている。この気液分離器21はほぼボックス形状に形成され、その底壁に底部流通口22が2つ形成され、その後側における上側部分に上部流通口23が1つ形成されている。そして、2つの底部流通口22が還流管20に接続されることにより、気液分離器21が還流管20に介装されている。
【0026】
また、気液分離器21は、後に詳述するように、上部流通口23とガス処理装置8のガス導入口44とがガス導入管24によって接続されることにより、ガス処理装置8と接続されている。そして、後に詳述するが、気液分離器21内において、生成水(HO)および未消費ヒドラジンなどを含有する液溜まり26と、窒素ガス(N)およびアンモニア(NH)などを含有する被処理ガスとに分離される。
【0027】
なお、還流管20の途中において、気液分離器21と燃料供給口14との間には、燃料還流ポンプ28が介在されている。この燃料還流ポンプ28としては、例えば、ロータリーポンプ、ギヤポンプなどの回転式ポンプ、ピストンポンプ、ダイヤフラムポンプなどの往復式ポンプなど、公知の送液ポンプが挙げられる。燃料還流ポンプ28は、後述するコントロールユニット35に電気的に接続されており(図1中の破線)、これによりコントロールユニット35からの制御信号が、燃料還流ポンプ28に入力され、コントロールユニット35による燃料還流ポンプ28の駆動および停止の制御が行われる。
【0028】
還流管20において、燃料還流ポンプ28と燃料供給口14との間には、燃料タンク18に貯蔵された液体燃料を還流管20へ供給するための燃料供給管30が接続されている。すなわち、燃料供給管30の上端側端部は燃料タンク18に接続され、燃料供給管30の下端側端部は還流管20の流れ方向途中に接続されている。そして、還流管20の流れ方向途中には、燃料供給ポンプ31が介在されている。
【0029】
燃料供給ポンプ31としては、燃料還流ポンプ28と同様の公知の送液ポンプが挙げられる。燃料供給ポンプ31は、後述するコントロールユニット35に電気的に接続されており(図1中の破線)、これによりコントロールユニット35からの制御信号が、燃料供給ポンプ31に入力され、コントロールユニット35による燃料供給ポンプ31の駆動および停止の制御が行われる。
【0030】
燃料供給管30において燃料供給ポンプ31の下流側には、燃料供給弁32が設けられている。この燃料供給弁32は、燃料供給管30を開閉するための弁であって、例えば電磁弁など、公知の開閉弁が挙げられる。また、燃料供給弁32は、後述するコントロールユニット35に電気的に接続されており(図1中の破線)、これによりコントロールユニット35からの制御信号が、燃料供給弁32に入力され、コントロールユニット35による燃料供給弁32の開閉制御が行われる。
【0031】
(3)空気給排部
空気給排部は、詳細の図示は省略するが、燃料電池システム2に採用される公知の構成でよく、具体的には、空気をカソード11に供給するための空気供給管(図示せず)と、カソード11から排出される空気を外部に排出するための空気排出管(図示せず)とを備えている。
【0032】
上記した空気供給管は、その一端側(上流側)が大気中に開放され、他端側(下流側)が空気供給口(図示せず)に接続されている。空気供給管の途中には、エアコンプレッサなどの口の空気供給ポンプ(図示せず)が介在されており、また、その下流側には空気供給弁(図示せず)が設けられている。
【0033】
上記した空気供給ポンプおよび空気供給弁は、それぞれ後述するコントロールユニット35に電気的に接続されており(図1中の破線)、コントロールユニット35からの制御信号が、空気供給ポンプおよび空気供給弁に入力され、コントロールユニット35による空気供給ポンプの駆動および停止並びに空気供給弁の開閉制御が行われる。また、上記した空気排出管はその一端側(上流側)が空気排出口(図示せず)に接続され、他端側(下流側)がドレンされる。
【0034】
(4)制御部
制御部5は、コントロールユニット35を備えている。コントロールユニット35は、電動車両1における電気的な制御を実行するユニット(例えば、ECU:Electronic Contorol Unit)であり、CPU,ROMおよびRAMなどを備えるマイクロコンピュータ構成である。
【0035】
(5)動力部
動力部6は、電動車両1の前側であって、燃料電池3よりも前方に配置されており、燃料電池3から出力される電気エネルギを電動車両1の駆動力として機械エネルギに変換するためのモータ37と、モータ37に電気的に接続されるインバータ38と、モータ37による回生エネルギを蓄電するための動力用バッテリ39とを備えている。
【0036】
モータ37は電動車両1の前端部に配置されている。モータ37としては、例えば三相誘導電動機、三相同期電動機など、公知の三相電動機が挙げられる。
【0037】
インバータ38はモータ37と燃料電池3との間に配置されている。インバータ38は、燃料電池3で発電された直流電力を交流電力に変換する装置であり、例えば公知のインバータ回路が組み込まれた電力変換装置が挙げられる。また、インバータ38は、配線により燃料電池3およびモータ37にそれぞれ電気的に接続されている。
【0038】
動力用バッテリ39としては、例えば定格電圧が100V程度のニッケル水素電池やリチウムイオン電池など、公知の二次電池が挙げられる。また、動力用バッテリ39は、インバータ38と燃料電池3との間の配線に接続され、これにより燃料電池3からの電力を蓄電可能で、かつ、モータ37に電力を供給可能とされている。
【0039】
(6)出力制御手段(DC/DCコンバータ)
DC/DCコンバータ7は、コントロールユニット35と電気的に接続されており(図1中の破線)、これによりコントロールユニット35から出力される出力制御信号の入力に応じて、燃料電池3の出力(出力電圧)の制御が行われる。
【0040】
また、DC/DCコンバータ7は、配線により燃料電池3および動力用バッテリ39にそれぞれ電気的に接続されるとともに、配線の分岐によりインバータ38に電気的に接続されている。これにより、DC/DCコンバータ7からモータ37への電力は、インバータ38において直流電力から三相交流に変換され、三相交流電力としてモータ37に供給される。
【0041】
(7)ガス処理装置
ガス処理装置8は気液分離器21の後側に配置されており、図2に示すように、直方体形状の容器41と、ガス導入部42とを備えるとともに、後述する旋回流形成部50、貯留部であるドレインタンク52、液体噴射部53および排出部69を備えている。
【0042】
ガス導入部42は、容器41の前壁上部に形成され上記したガス導入管24により気液分離器21と接続されるガス導入口43と、容器41の前内側面に沿ってガス導入口24に連通したガス流路44を形成する前後の仕切壁45a,45bと、ガス流路44先端部のガス導入路44aおよびさらにその先端のガス噴出口46とにより構成される。ガス導入路44aは、ガス流路44を形成する両仕切壁45a,45bの下端が後方に向かうに連れて下向きに折曲されるとともに、後端出口に向かうほど先窄まりに形成され、後に詳述するガス流路44の先端部であるガス導入路44aが旋回流形成部50の下方に向かうように配置されている。
【0043】
そして、気液分離器21で分離された被処理成分であるアンモニア(NH)を含むガスGが、図2中の実線矢印で示すようにガス導入管24によりガス導入口43からガス導入路44内に導入され、ガス流路44およびその先端部のガス導入路44aを経て、ガス噴出口46から容器41内に噴射される。このとき、上記したように、ガス流路44先端部のガス導入路44aが旋回流形成部50の下方に向かうようにし、かつ、ガス導入路44aを先端のガス噴出口46に向かうに連れ先窄まりにしたことで、ガス噴出口46から旋回流形成部50に噴出されるガスGの流速を所定値以上にして、より効率よく旋回流48を形成することができる。
【0044】
旋回流形成部50は、容器41内の後側下部に、ガス噴出口46から斜め下方に向けて噴出されたガスの上前方向への旋回流48を形成する断面円弧状の旋回流形成壁49が配置されて形成されている。この旋回流形成壁49は断面円弧状であるため前側が開口しており、後述する溜まり部60に溜まったガスの処理(中和)用の液体Lが、ガス噴出口46から噴出されたガスGの旋回流48の勢いに巻き込まれて、図2中の1点鎖線矢印に示すようにガスGととともに巻き上げられ、ガスGおよび液体Lが旋回流48において接触するようになっている。
【0045】
貯留部であるドレインタンク52は、密閉型であって容器41の下側に配置され、被処理成分(アンモニア)を含むガスGを処理(中和)するための処理成分を含む液体Lを貯留する。ドレインタンク52に貯留される液体Lとしては、例えば、液体燃料がヒドラジンである場合、容器41内に導入されるガスには被処理成分の一例としてのアンモニア(NH)が含まれるため、これを中和し得る塩酸、硫酸などの無機酸や、酢酸などの有機酸等の水溶液、すなわち無機酸水溶液、有機酸水溶液が挙げられる。なお、液体Lの処理成分濃度は、例えば、5〜10質量%。好ましくは、9〜10質量%である。
【0046】
また、液体噴射部53が、図2、図3に示すように容器41内の上部4か所に配置され、連結管54によってドレインタンク52に接続されている。各液体噴射部53の下端部には拡径部が設けられて下方に向けて円錐状或いは四角錐状に、ドレインタンク52からの液体Lを霧状或いは小径の液滴状にして図2中の破線矢印のように下方に噴射する。このとき、図3に示すように、各液体噴射部53から容器41の内部全体にわたって漏れなく液体Lを噴射できるように、液体噴射部53の噴射口が形成されている。
【0047】
ドレインタンク52と各液体噴射部53との間には、循環ポンプ55が介在されている。そして、循環ポンプ55の駆動によりドレインタンク52からの液体Lが各液体噴射部53に供給されて容器41内の上部から下方に向けて液体Lが噴射される。このように、ドレインタンク52、循環ポンプ55、連結管54および容器41を処理(中和)用の液体Lが循環するクロースドライン(閉流路)が形成されている。
【0048】
循環ポンプ55としては、燃料還流ポンプ28と同様の公知の送液ポンプが挙げられる。循環ポンプ55は、コントロールユニット35に電気的に接続されており(図1中の破線)、これによりコントロールユニット35からの制御信号が、循環ポンプ55に入力され、コントロールユニット35による循環ポンプ55の駆動および停止の制御が行われる。
【0049】
各液体噴射部53が接続された連結管54の途中には、PH(ペーハー)センサ56が介在され、このPHセンサ56がコントロールユニット35に電気的に接続されてコントロールユニット35によりドレインタンク52から各液体噴射部53への液体のPHが検出されるようになっている。例えば、ドレインタンク52に硫酸を貯留する場合、硫酸のPH値は通常0.4であるが、アンモニアの中和処理を繰り返すことにより、PHセンサ56によって検出されるPH値が2.0程度に上昇すれば、表示灯の点灯などにより硫酸の中和能力の低下したため、ドレインタンク52内の硫酸を新しく交換する必要が生じたことを報知する制御が行われる。
【0050】
各液体噴射部53の噴射口から噴射された液体Lは、下端がネット(図示せず)により支えられて容器41内に収容配置された充填材58を通過し、容器41内の底部の溜まり部60に溜まる。溜まり部60は、容器41の底壁内面に左右方向にわたって立設された板材61により、容器41の底部後側に液体Lを溜め得るように形成されている。
【0051】
そのため、溜まり部60に溜まる液体Lが、板材61をオーバーフローする量になれば、容器41の底壁前部に形成された還流口64およびこれに接続された接続管65を介してドレインタンク52内に還流するよう構成されている。なお、ドレインタンク52内において、接続管65から還流された液体Lに混ざった不要な微粒子を除去するフィルタ67を通してドレインタンク52内の液体Lが循環ポンプ55を経て液体噴射部53に供給されるようになっている。
【0052】
ここで、溜まり部60に溜まる液体Lは、体積が0.258リットルで、1分管に約32回入れ替わるように、各液体噴射部53から噴射される液体Lの噴射量が設定されており、具体的には、1つの液体噴射部53から1分間あたり2.12リットルの液体を噴射するように循環ポンプ55の制御が行われるようになっている。
【0053】
充填材58は、容器41の内寸と略同等の外寸の直方体形状を有する公知のプラスチック製充填材からなり、具体的には市販品である月島環境エンジニアリング社製のテラレット(登録商標)を用いることができる。
【0054】
排出部69は、容器41内の各液体噴射部53の上方であって、ガス噴出口46から噴出されて容器41内を上方に流動するガスGの下流側位置に設けられている。この排出部69は、容器41の上壁に形成された排気口70と、この排気口70に接続されて容器41内部に連通され容器41内のガスGを電動車両1の後部から外に排気する排気管71と、排気管71の途中に介在された排気弁73とを備えている。
【0055】
排気弁73は、コントロールユニット35に電気的に接続されており(図1中の破線)、コントロールユニット35からの制御信号が、排気弁73に入力され、コントロールユニット35による排気弁73の開閉制御が行われる。
【0056】
ところで、旋回流48においてガスGと液体Lとが接触することにより、ガスGに含まれるアンモニアが処理(中和)されるが、この旋回流48での処理(中和)を第1段階処理とすると、第1段階処理において処理(中和)しきれなかったアンモニア(NH)を含むガスGは充填材58を通って容器41内を、図2中の実線矢印のように上方に向かって流動する。そして、充填材58の上方の各液体噴射部53から噴射される液体Lと再度接触するため、効率よくガスGの処理(中和)が行われる。このように充填材58の上方におけるガスGの処理(中和)が第2段階処理となる。
【0057】
そして、上記した第1、第2段階処理を経て処理(中和)されたガスGは無害となり、容器41の上壁に形成された排気口70およびこれに連通された排気管71を経て外部に排出される。
【0058】
ところで、充填材58は、ガスGの流速が1m/s以下になるような断面積であって、かつ、液体噴射部53から噴射された液体Lの液滴の重力が、旋回流形成部50の開口を経て上方に流動するガスGの上昇流による吹き上げ力よりも大きくなる断面積に設定するのが望ましい。具体的には、液体Lの液滴の吹き上げ限界、つまりガスGの上昇流(1m/s)以下との条件から、充填材58の断面積を算出することができて、ガス流量を2m/minとした場合、200mm×200mmの断面積に設定すれば、充填材58を上昇するガスGの流速は0.83m/sとなり、上記した1m/s以下におさまる。
【0059】
B.燃料電池システムによる発電
上記した燃料電池システム2では、コントロールユニット35の制御により、燃料供給弁32が開かれ、燃料還流ポンプ28および燃料供給ポンプ31が駆動されることにより、液体燃料が還流管20を介してアノード10に供給される。一方、空気供給弁(図示せず)が開かれ、空気供給ポンプ(図示せず)が駆動されることにより、空気が空気供給管(図示せず)を介してカソード11に供給される。なお、燃料供給弁32は、液体燃料が所定量供給された後に閉じられる。
【0060】
アノード10では液体燃料がアノード10内を通過する一方、カソード11では、空気がカソード11内を通過する。
【0061】
そして、アノード10およびカソード11において電気化学反応が生じ、起電力が発生する。例えば、液体燃料がヒドラジンである場合には、下記式(1)〜(3)のとおりとなる。
<アノード10での反応>
+4OH→N+4HO+4e ……(1)式
<カソード11での反応>
+2HO+4e→4OH ……(2)式
<燃料電池3全体での反応>
+O→N+HO ……(3)式
また、上記(1)式で示される反応では、実際には、主生成物である窒素ガス(N)および水(HO)に加えて、被処理成分の一例としてのアンモニア(NH)が副生する。
【0062】
このようなアノード10およびカソード11での電気化学的反応が連続的に生じることにより、燃料電池3全体として、上記(3)式で表わされる反応が生じて、燃料電池3に起電力が生じる。
【0063】
そして、発生した起電力が、配線を介してDC/DCコンバータ7に送電され動力部6では、インバータ38およびモータ37、および/または、動力用バッテリ39に送電される。モータ37では、インバータ36により三相交流電力に変換された電気エネルギが電動車両1の車輪を駆動させる機械エネルギに変換される。一方、動力用バッテリ39では、その電力が充電される。
【0064】
また、燃料給排部4では、燃料還流ポンプ28および燃料供給ポンプ31の駆動力により、生成した窒素ガス(N)、生成水(HO)およびアンモニア(NH)を含有する使用後および未反応の液体燃料が、アノード10から排出される。
【0065】
そして、その液体燃料が、還流管20を通過して上流側の底部流通口22から気液分離器21に流入する。気液分離器21では、水位が上部流通口23よりも下方位置に保持される液体燃料の液溜まり26が、気液分離器21の中空部分に生じるとともに、液溜まり26に含まれるガスが液溜まり26の上方空間へ分離される。
【0066】
すなわち、気液分離器21内において、生成水(HO)、未消費ヒドラジンなどを含有する液溜まり26と、窒素ガス(N)およびアンモニア(NH)などを含有する被処理ガスとに分離される。
【0067】
そして、液溜まり26の一部は下流側の底部流通口22から還流管20に流出し、還流管20に流出した液体燃料は、再び燃料供給口14から燃料電池3に流入する。
【0068】
これにより、液体燃料が、クローズドライン(還流管20、気液分離器21および燃料電池3)を循環する。
【0069】
C.ガス処理装置8によるガス処理(中和)
気液分離器21で分離された被処理ガスは、ガス導入管24をからガス導入部42のガス導入口43を介してガス流路44に導入され、さらにガス流路44先端部の先窄まりのガス導入路44aへと流動して、次第に加速されながらガス噴出口46から旋回流形成部50に向けて噴出される。このガスGの噴出時の勢いにより旋回流形成壁49に沿ってガスGの旋回流48が形成される。
【0070】
一方、4つの液体噴射部53には、循環ポンプ55の駆動によりドレインタンク52からの液体Lが供給され、各液体噴射部53から容器41内の下方に向けて液体Lが噴射され、噴射された液体Lは、充填材58を通過して容器41内の底部の溜まり部60に溜まる。
【0071】
そうすると、溜まり部60に溜まったガスの処理(中和)用の液体Lが、ガス噴出口46から噴出されたガスGの旋回流48の勢いに巻き込まれて、図2中の1点鎖線矢印に示すようにガスGととともに巻き上げられ、ガスGおよび液体Lが旋回流48において接触し、第1段階処理としてガスGに含まれるアンモニア(NH)が処理(中和)される。
【0072】
さらに、第1段階処理において処理(中和)しきれなかったアンモニア(NH)を含むガスGは、容器41内を上方に向かって流動し、充填材58を通過する際に、充填材58の上方の各液体噴射部53から噴射される液体Lと再度接触し、第2段階処理として充填材58を通過するガスGに含まれるアンモニア(NH)が液体Lと接触して効率よくガスGの処理(中和)が行われる。
【0073】
その後、第1、第2段階処理を経て処理(中和)され無害となったガスGは、排気口70および排気管71を経て容器41内部から電動車両1の後方に向けて排出される。
【0074】
したがって、上記した実施形態によれば、容器41内の旋回流形成部50において、ガスGの旋回流48の勢いにより液体Lが巻き込まれるため、第1段階処理として、旋回流48においてガスGと液体Lを接触させてガスGに含まれるアンモニア(NH)を処理(中和)できるとともに、旋回流形成部50の開口を経てガスGが容器41の上方(下流側)に向かって流動する間に、第2段階処理として充填材58を通過するガスGを各液体噴射部53から噴射された液体Lと接触させて旋回流形成部50で処理しきれないアンモニア(NH)を処理(中和)できるため、充填材58を小さくして容器41を小型にしても効率よくガスGの被処理成分アンモニア(NH)を処理(中和)することができ、容器41の小型化による低コスト化および軽量化を図ることが可能になる。
【0075】
また、上記した実施形態によれば、ガス導入路44aを先端に向かうに連れて先窄まりにしたため、ガス噴出口46から噴出するガスGの流速を所定値以上にして効率よく旋回流48を形成することができる。
【0076】
また、上記した実施形態によれば、密閉型のドレインタンク52を設けたため、ガス処理装置8を電動車両1等の車両に搭載することが可能になる。
【0077】
また、板材61により、容器41の底部後側に液体Lの溜まり部60を形成し、一定量の液体Lを溜め得るように形成したため、走行する車両であってもある量の液体Lを溜めることができ、走行中においても燃料電池3から発生するアンモニア(NH)を含むガスGの処理(中和)を行うことができる。
【0078】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。
【0079】
上記した実施形態では、旋回流形成壁49を断面円弧状にした例について説明したが、円弧状でなくても断面コ字状であって、かつ、旋回流形成壁49の上側部分が斜め下方に向けて傾斜する形状のものを用いても、上記した実施形態と同様に、ガス噴出口46から噴出するガスGの旋回流48を形成することができる。
【0080】
また、上記した実施形態では、液体噴射部53を4つとした例について説明したが、液体噴射部53の個数は4つに限定されるものではない。
【0081】
また、上記した実施形態では、ヒドラジンを液体燃料とする燃料電池3から発生する被処理成分を含むガスを処理する例について説明したが、本発明はその他の液体燃料と空気を供給して発電する燃料電池にも適用することができるのは言うまでもない。
【0082】
また、上記した実施形態では、燃料電池3を搭載した電動車両1に適用した場合について説明したが、処理すべきガス(気体)を発生するその他のシステムにおけるガス処理について、本発明を適用できるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0083】
8… ガス処理装置
41… 容器
42… ガス導入部
44a… ガス導入路
48… 旋回流
49… 旋回流形成壁
50… 旋回流形成部
52… ドレインタンク(貯留部)
53… 液体噴射部
69… 排出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理成分を含むガスを処理するガス処理装置において、
容器と、
前記容器内に前記ガスを導入するガス導入部と、
前記ガスを処理するための処理成分を含む液体を貯留する貯留部と、
前記貯留部の前記液体を前記容器内の上部から噴射する液体噴射部と、
前記容器内の前記液体噴射部の下方に一部が開口して設けられ、前記液体噴射部から噴射された前記液体および前記ガス導入部から導入された前記ガスを受け、前記ガスを旋回流形成壁内面に反射させて旋回流を形成する旋回流形成部と、
前記容器内の前記液体噴射部の上方であって前記ガスの下流側に設けられ前記ガスを前記容器外に排出する排出部と
を備えたことを特徴とするガス処理装置。
【請求項2】
前記ガス導入部から導入される前記ガスを前記旋回流形成部の下方に向かって導入するガス導入路をさらに備え、
前記旋回流形成壁の上面部分が、前記ガス導入路方向に向けて傾斜していることを特徴とする請求項1に記載のガス処理装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−91007(P2013−91007A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232858(P2011−232858)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】