説明

ガス分解装置

【課題】 固体電極とくに電気艇庫が高い電極における電力消費を抑制し、かつガス分解速度の向上をはかることができる、ガス分解装置を提供する。
【解決手段】アノード2、カソード3、固体電解質層1および電源9を備え、アノードおよびカソードは、固体電解質層上に接して位置し、間隙1gを挟んで交互に延在する複数の延在部2e,3eを有しており、カソード3はアノード2より電気抵抗が高く、電源9と導電接続する導電材料からなるカソード導電部13は、カソードの複数の延在部3eを導電接続するようにカソードの延在部の延在方向に交差する方向に延びていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス分解装置であって、より具体的には、ガスをエネルギー効率よく分解することができるガス分解装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン自動車を重視する国々において、厳しい廃ガス規制をクリアする必要があり、ディーゼルエンジンの排出ガスを低減する各種の触媒装置が開発されている。それらの触媒装置のなかで、尿素選択還元システムはNOxを、エンジンスピードが低い温度域で効率よく窒素および水へと還元浄化するものとして推奨されている(非特許文献1)。
また、金属ハニカムの表面に、NOx還元触媒と、炭化水素の酸化触媒と、イオン導電性の固体電解質と、を混合して分散配置して、電気化学的にNOxを分解する方法の提案がなされている(特許文献1)。この発明では、金属ハニカムとして、波状加工されたステンレス鋼波板と、ステンレス鋼平板との重ね合わせにより得られるハニカム構造またはそれと類似の積層構造(特許文献2、非特許文献2)が挙げられている。
また、電気化学反応によってNOx分解を促進するために、固体電解質(SE:Solid Electrolyte)層を挟むアノードとカソードの電圧を印加する方法が提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−070755号公報
【特許文献2】特開平05−301048号公報
【特許文献3】特開平8−168673号公報
【0004】
【非特許文献1】平田公信ら,「大型車ディーゼルの尿素選択還元システム」,自動車技術,Vol.60,No.9,2006,pp28-33
【非特許文献2】産総研プレスリリース2003年5月20日「電気化学式NOx分解装置」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
NOxを分解する尿素選択還元装置については、自動車にとって大掛かりな尿素選択還元装置を排気系統に配置するものであり、重量増をもたらす。自動車用では、当然のことながら小型で軽量であることが強く要求される。
また、金属ハニカムの表面に、NOx還元触媒等を分散配置した方法では、金属ハニカムは薄くて、圧力損失がある程度低くなる利点はあるものの、電気化学反応箇所の密度はそれほど向上せず、また圧力損失の低減も十分ではない。すなわち、小型化と分解効率の両方を推進する点で、不十分である。
電気化学反応を用いる方法では、装置が大掛かりにならない利点を有する。しかし、所定の厚みを有する固体電解質では800〜950℃程度の高温度にしないと、実用的なイオン導電率が得られず、それより低い温度では十分なNOx分解速度を得ることができない。
上記の他に、固体電極および固体電解質を用いた電気化学反応には、固体電極とくにカソードの電気抵抗が大きいという問題がある。このカソードの大きな電気抵抗のためにガス分解に用いられない電力の消費が大きく、改良が求められている。
【0006】
本発明は、電気化学反応を用いて所定のガスを分解する装置において、固体電極とくに電気抵抗が高いほうの電極における電力消費を防止することができ、かつガス分解速度の向上をはかることができる、ガス分解装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のガス分解装置は、第1電極、該第1電極と対をなす第2電極、固体電解質層、および第1電極/第2電極間に電圧を印加する電源を備える。このガス分解装置では、第1電極および第2電極は、固体電解質層上に接して位置し、間隙を挟んで交互に延在する複数の延在部を有しており、第2電極は第1電極よりも電気抵抗が高く、電源と導電接続する導電材料からなる第2電極導電部は、第2電極の複数の延在部を導電接続するように第2電極の延在部の延在方向に交差する方向に延びていることを特徴とする。
【0008】
分かり易さのために、この部分の説明では、カソードの電気抵抗がアノードの電気抵抗よりも高い場合を対象にする。すなわち第1電極をアノードとし、第1電極よりも電気抵抗が高い第2電極をカソードとする。このような場合は、NOx分解のガス分解装置が該当する。この場合、上記の構成によれば、導電材料からなるカソード導電部がカソードの延在部を導電接続するので、カソードにおける電気抵抗による電圧降下は延在部の中に限定される。すなわち電気化学反応におけるカソードの高抵抗に起因する電力消耗は、ほとんど、(1つのカソード延在部における電力消耗)×(カソード延在部の数)に限定される。すなわち、ガス分解装置上において電源とカソードとを導電接続するための配線は、導線やカソード導電部に限定され、カソードはガス分解作用が発現する場所に限定して配置され、カソードが配線のためにのみ配置されるのをなくす。これによってカソードで消耗される電力を、ガス分解に直接的に関与する部分に集中して用いることができる。
また、電気化学反応を生じさせる対向するアノードおよびカソードの箇所を、固体電解質上に高密度で配置することができる。またアノードとカソードとの間隙を装置の精度の範囲で狭くできるので、酸素イオン等がアノード/カソード間を移動する時間を短くでき、従来ほど高温にしなくても、ガス分解速度を向上させることができる。この結果、ガス分解を実用レベルで遂行することができる。また温度を従来と同様にすれば、ガス分解速度を大幅に向上させることができる。
さらに脆弱な固体電解質に対しては、補強のために固体電界質層の裏面等を利用する余裕を生じるので、裏面等に補強をすることで耐衝撃性能の向上を得ることができる。
また、固体電解質、アノード、カソード等はスクリーン印刷などで製造できるのでコスト低減に役立つ。
なお、上記の延在部は真っ直ぐ延在していてもよいし、一箇所または複数箇所で交互に湾曲して延在していてもよい。
【0009】
第2電極の面積を、前記第1電極の面積よりも大きくすることができる。仮に、電気抵抗の大きい第2電極の面積と、それより電気抵抗の小さい第1電極の面積を同じにすると、ガス分解の電気化学反応が第2電極の面積によって律速されることになる。上記のように、第2電極の面積を大きくすることでガス分解反応を促進することができる。また、付随して、電気抵抗の大きい第2電極を流れる電荷に経路の断面積も大きくなるので、導電部との接続部など電気化学反応が生じない部分での電力消費を、より一層、抑制することができる。
【0010】
上記の場合は、最初に場合を限定したように、第2電極がカソードであり、電源と導電接続する導電材料からなるカソード導電部は、カソードの複数の延在部を導電接続するようにカソードの延在部の延在方向に交差する方向に延びている構成を対象にしている。しかし、広くは、アノードの電気抵抗がカソードより高い場合であってもよく、この場合は、アノード導電部がアノードの延在部の延在方向に延びるように配置される。アノードおよびカソードにおける電気抵抗の大小は、分解対象のガス成分に応じて変わり、NOx分解の場合、カソード上でのNOx分解反応の反応速度が遅く律速となる。従ってカソードの電気抵抗がアノードよりも高くなる。
【0011】
固体電解質層は絶縁基板上に位置しており、カソードの延在部は該固体電解質層の第1の端側から反対側の第2の端側に向かって延材しており、カソード導電部は絶縁基板または固体電解質層の第1の端に平行に延びている構成をとることができる。絶縁基板は、多くの種類の機械強度に優れた材料がある。このため、絶縁基板には、機械強度の高い材料、もしくは簡単に破損しない材料を用いることができ、本ガス分解装置の機械的な強度もしくは耐久性を向上させることができる。また、カソードおよびアノードの延在部の幅長さ(延在方向に交差する方向の長さ)および間隙を小さくして、間隙を固体電界質上に高密度で配置することができる。この結果、単位時間当たり面積当たりのガス分解量を向上させることができる。すなわち、間隙密度=(間隙の長さ/固体電界質層の面積)を高めることで、小型でガス分解能率の高い装置を得ることができる。
【0012】
第1電極および第2電極の間の間隙を、2μm〜200μmの範囲にすることができる。これによって、アノードとカソードとの間のイオンの移動距離を短くすることができ、対象ガスの分解速度を向上させることができる。このため、ガス分解装置の温度を低くすることができる。また、アノードとカソードとの間に電圧を印加するとき、間隙が小さいことで、アノードとカソードとの間に大きな電場を生じる。間隙が200μmを超えるとイオンの移動に時間がかかり本発明の特徴を生かしにくくなる。また、間隙が2μmになると製作精度から確実に間隙を確保することが難しくなる。上記の間隙の結果、イオン移動速度を大きく向上させることができ、ガス分解速度の向上を得ることができる。
【0013】
第2電極導電部を、Auペーストによって形成することができる。これによって、高温に加熱して稼働させた場合でも排ガスによって変質して電気抵抗が増大したり、導電性を無くしたりする事態を避けることができる。上記のAuペーストは稼働時の高温加熱によって、初期の状態から、ペースト部分の樹脂等が、当然、変わっている。
【0014】
固体電解質層を酸素イオン導電性とし、第2電極に金属粒連鎖体の酸化物、GDC(gadolinium doped ceria)、およびBaCOを含ませることができる。これによって、たとえばNOxを導入されたカソードは、NOxと接触することで酸素イオンを抜き出して酸素イオンを固体電界質層に送り出すことができる。その結果、NOxは分解され、カソードから窒素ガスを放出することができる。
【0015】
固体電解質層をプロトン導電性とし、第2電極に金属粒連鎖体の酸化物、貴金属、およびプロトン導電性材料を含ませることができる。これによって、たとえばカソードでは、アノードから固体電解質を移動してくるプロトンと電気化学反応を起こし、NOxは分解され、カソードから窒素ガス、水蒸気等が放出される。一方、アノードには、水蒸気、炭化水素、水素等の混合ガスを導入され、アノードはこれら混合ガスと接触することで、上述のプロトンを固体電界質層に送り出すことができる。プロトンは、酸素イオンに比べて小さいので拡散速度が大きく、稼働温度を大幅に下げることができる。またイオン移動度が大きいので、ガス分解速度を大きくすることができる。
稼働温度を下げることは、たとえば第2電極導電部に、Auペーストに代えて安価な材料を用いる利点をもたらす。
【0016】
上記の絶縁基板は、固体電解質層を補強するための基板とするのがよく、これによって、固体電解質の大きな短所である脆さを克服することができ、たとえば自動車等の衝撃が頻繁に加わる箇所にも用いることができる。
【0017】
固体電解質層が、基板の表面および裏面に位置している構造をとることができる。これによって、固体電解質の大きな短所である脆さを克服しながら、ガス分解装置の小型化を推進することができる。そして、ガス分解装置の配設における空間利用効率を高めることができる。
【0018】
上記のいずれかのガス分解装置が、複数、間隔をあけて重ねられ、筐体内に固定されている構成をとることができる。これによって、ガス分解容量が大きく、かつ小型化された装置を得ることができる。
【0019】
上記のいずれかのガス分解装置が自動車に搭載され、当該ガス分解装置を当該自動車の廃熱によって加熱することができる。自動車において、エネルギー効率の高いガス分解装置、なかでもNOx分解装置を得ることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のガス分解装置によれば、固体電極とくに電気抵抗が高い方の電極における電力消費を抑制することができる。また、ガス分解速度の向上をも得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態1におけるガス分解装置を示し、(a)は平面図、(b)はIB−IB線に沿う断面図、(c)はIC−IC線に沿う断面図である。
【図2】酸素イオン導電性の固体電解質を用いてNOxを分解するときの、電気化学反応を説明するための図である。
【図3】図2におけるカソードにおけるNOx分解反応(カソード反応)を説明するための図である。
【図4】図2におけるアノードでのアノード反応を説明するための図である。
【図5】本発明の実施の形態1の変形例1を示す平面図である。
【図6】本発明の実施の形態1の変形例2を示す平面図である。
【図7】本発明の実施の形態2におけるガス分解装置を示し、(a)は平面図、(b)はVIIB−VIIB線に沿う断面図、(c)はVIIC−VIIC線に沿う断面図である。
【図8】本発明の実施の形態3におけるガス分解装置の原理を説明するための図である。
【図9】本発明の実施の形態4のガス分解装置(複数の積層構造)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(実施の形態1)
図1(a)は、本発明の実施の形態1におけるガス分解装置であるNOx分解装置10を示す平面図であり、図1(b)は、IB−IB線に沿う断面図であり、図1(c)はIC−IC線に沿う断面図である。このNOx分解装置10では、絶縁基板14上に固体電界質層1が位置し、その固体電界質層1に接して、間隙1gを挟んで、アノード(第1電極)2およびカソード(第2電極)3の延在部2e,3eが交互に位置している。間隙1gの間隔dは一定である必要はないが、10μm〜1mm程度と、小さいことが1つのポイントである。図1(a)に示すように、アノード2およびカソード3は間隙1gの間隔dで、交互にy方向に延在する延在部2e,3eを主要部として構成されている。本実施の形態において、絶縁基板14、固体電解質1等の平面形状は矩形である。矩形は、たとえば製作のしやすさから10cm×15cmとするのがよいが、これに限定されず、大きくても小さくてもよい。アノード2およびカソード3には、分解対象のガス成分に応じて、両者の間に所定の電圧を印加、または電力を供給するための電源9を設ける。電源9の出力電圧は10V〜20V程度とするのがよい。カソード(第2電極)3には、電源9の陰極が導電接続されるが、カソード導電部13を介して電源9に導電接続される。この場合、カソード3は、電気抵抗が比較的高く、アノード(第1電極)2よりも高いので、カソード導電部13は、カソード3の根元部3bのすべてにわたって乗り上げるように接触して、延在部3eは並列に導電接続される。このため、カソード導電部13は、カソード3の延在部3eの延在方向yに交差する方向(x方向)に延びるように位置する。本発明のポイントは、このカソード導電部13がカソード延在部3eにすべて導電接触して、カソード3における消費電力の抑制を実現することである。図1(a)に示すカソード導電部13の配置によって、カソード3での消費電力は抑制される。
アノード2の延在部も電源9の陽極に導電接続されるが、アノード2の電気抵抗はカソード3に比べて高くないので、アノード導電部12はカソード導電部13と同じような形態をとる必要はない。アノード導電部12は、アノード根元部2bの側面に接するだけでもよいし、または、カソード導電部13のように、アノード2の根元部2bに乗り上げるように接触して、延在部2eの延在方向であるy方向に交差する方向(x方向)に延びるように配置してもよい。以後の説明において、各電極2,3とその延在部2e,3eとを厳密に区別しないで、アノード2またはカソード3というとき、それぞれの延在部2e,3eをさす場合がある。
カソード導電部13およびアノード導電部12は、矩形の固体電解質層1、絶縁基板14の端に沿って位置している。固体電解質層1等の端とは、側面である端面から数cmの範囲内の領域とするが、電気化学反応の主要な生起場所である延在部2e,3eの形成の妨げとならない領域とする。
【0023】
アノード2およびカソード3のどちらの電気抵抗が高くなるかは、分解対象のガス成分によって相違する。本実施の形態のように、NOxを分解する場合は、アノード2に触媒の銀粒子を含ませる。
カソード3には、酸化層付き金属粒連鎖体および酸素イオンセラミックスを含ませるので、カソード3の電気抵抗がアノード2よりも高くなる。本実施の形態では説明しないが、水蒸気や水素を用いてアンモニアを分解する場合には、カソードに触媒の銀粒子を用いてアノードには銀粒子を含ませないので、アノードの電気抵抗がカソードよりも高くなる。カソード上でのNOx分解反応の反応速度が遅く律速となる。従ってカソード3の電気抵抗がアノード2よりも高くなる。どちらの電極の方が抵抗が大きくなるかは、被処理ガスの分解のし易さなどで決まる。
【0024】
NOx分解の電気化学反応においては、本実施の形態では、カソード3での反応で発生する酸素イオン(O2−)が固体電解質1中を通って、アノード2に到達することが、反応が持続するために必須となる。ただし、プロトン導電性の固体電界質を用いる場合は、酸素イオンではなくプロトンが逆の方向に移動する(実施の形態2参照)。酸素イオンの移動を利用する本実施の形態では、低温の場合、酸素イオンが固体電解質1を通ってアノード2に到達する時間が、NOx分解速度を律速する場合が多い。このため、固体電解質1中の酸素イオンの速度を向上させるため、また、その他の反応速度の制限を緩和して反応を促進するため、ガス分解装置10を250℃〜600℃に加熱する。このため、図1(a)〜(c)には図示していないが、ヒータを配置するのがよい。自動車の排気経路に、このNOx分解装置10を配置する場合には、ヒータと併せて、またはヒータの代わりに、自動車の廃熱を利用して加熱するのがよい。
【0025】
図1(c)に示す、間隙1gの幅dは、通常、200μm以下とする。より好ましくは、間隙1gの幅dは30μm以下、さらに好ましくは10μm以下たとえば5μmとするのがよい。この間隙1gの幅dを小さくすることで、カソード3で生じた酸素イオンがアノード2に到達する時間を短くすることができ、NOx分解速度の上昇につながる。またはガス分解速度を実用レベルにするために、加熱するヒータ等の負担を軽くし、または自動車等に搭載する場合には廃熱を利用してヒータ等をなくすことも考えられる。特許文献3に開示されているように、従来のガス分解装置では、固体電解質として外径10mm、内径7mm、したがって厚み1.5mmのジルコニア管を用いて、ジルコニア管の内面にカソードを、外面の端の一定範囲にアノードを形成したガス分解装置を提案している。この場合、酸素イオンは、ジルコニア管の厚み1.5mm(1500μm)を拡散する必要がある。このため、ジルコニア管に電圧を印加して、かつガス分解装置は600℃〜800℃の温度域、たとえば700℃に加熱して動作させる。
【0026】
自動車に搭載する場合、電圧印加は困難ではないが、排気経路内に700℃に加熱する部分を設けることは、容易ではない。本実施の形態に示すように、固体電解質1の一方の表面に、アノード2とカソード3とを小さい間隙1gをあけて配置することで、上記の固体電解質中の酸素イオンの移動時間は大幅に短縮することができる。本実施の形態のガス分解装置10の場合、上記のジルコニア管の酸素イオンの移動距離に比較して、1/(数十〜百)に小さくすることができる。これによって、上記の加熱温度を低くして、自動車に容易に搭載できる加熱機構とすることが可能になる。
【0027】
図2は、本実施の形態におけるNOx分解装置10を用いてNOxを分解するときの電気化学反応を模式的に示す原理図である。本発明では、アノード2およびカソード3の別なく、両者に同じ排気ガスが導入される。大部分の電気化学反応は、アノード2およびカソード3の延在部2e,3eで行われるが、原理を説明するときは、簡単明瞭さのため、延在部2e,3eは省略する。
カソード3では、次のカソード反応:2NO+8e→N+4O2−、またはNO+2e→(1/2)N+O2−、が生じる。カソード反応で生じた酸素イオンO2−は、カソード3直下の固体電解質1を通って、間隙1gを渡って、アノード2に到達する。
また、アノード2では、O2−+O2−→O+4eの反応が生じる。電子eは、アノード2から外部回路を経て、カソード3に至り、上記のカソード反応にあずかる。
図2では、カソード導電部13、およびアノード導電部12が配置されているが、省略している。
【0028】
アノード2とカソード3との間に電圧を印加する電源は自動車の場合、補機電池などを用いて10V〜20Vの適当な電圧を印加するようにするのがよい。上記のように間隙1gは、固体電解質1の厚みを挟んで表裏面にアノードおよびカソードを配置する場合の厚みに比較して、非常に小さい。このため、小さい電圧印加であっても、アノード/カソード間に、大きな電場を生じることができる。酸素イオンは、大きな電場中で移動速度を向上させられ、ガス分解速度を向上させることができる。自動車等に搭載されるガス分解装置は、電源の電圧に制約を受けるので、上記のように小さい間隙1gを間に対面するように位置するアノード2およびカソード3の配置は、大きな利点をもたらす。
【0029】
カソード3、アノード2、および固体電解質1を形成する材料については、とくに限定せず、上記の電気化学反応を生じさせる材料であれば、どのような材料を用いてもよい。これから説明するカソード3、アノード2および固体電解質1の材料は、あくまで一つの例示である。
−カソード−
図3は、カソード3におけるNOx分解反応(カソード反応)を説明するための図である。カソード3は、表面酸化層31bに被覆された金属31aからなるNi粒連鎖体31と、酸素イオン導電性のセラミックス32とを主成分とする焼結体とするのがよい。酸素イオン導電性のセラミックスとしては、SSZ(スカンジウム安定化ジルコニア)、YSZ(イットリウム安定化ジルコニア)、SDC(サマリウム安定化セリア)、LSGM(ランタンガレート)、GDC(ガドリア安定化セリア)などを用いることができる。表面酸化した金属粒子とくに表面酸化した金属粒連鎖体(ひも状または針状)31を加えると、触媒作用の増大と、上記の電子伝導性を高めることができるので、上記のカソード反応を促進することができる。金属粒連鎖体31の導電部(酸化層で被覆される金属部)31aは、Niのみでもよいし、NiにFe、Ti等を含ませたものでもよい。
金属粒連鎖体の金属は、ニッケル(Ni)とするのがよい。Niに鉄(Fe)を少し含むものであってもよい。さらに好ましくはTiを2〜10000ppm程度の微量含むものである。(1)Ni自体、NOxの分解を促進する触媒作用を有する。また、FeやTiを微量含むことでさらに触媒作用を高めることができる。さらに、このNiを酸化させて形成されたニッケル酸化物は、これら金属単味の促進作用をさらに大きく高めることができる。(2)上記の触媒作用に加えて、カソードにおいて、電子を分解反応に参加させている。すなわち、分解を電気化学反応のなかで行う。上記のカソード反応2NO+4e→N+2O2−、および2NO+8e→N+4O2−では、電子の寄与があり、NOxの分解速度を大きく向上させる。(3)カソード反応のために、電子eの移動をスムースにする。電子eがカソードに導電されないと、カソード反応の進行は、妨げられる。金属粒連鎖体31は、ひも状または針状に細長く、酸化層31bで被覆された中身31aは良導体の金属(Ni)である。電子eは、ひも状の金属粒連鎖体の長手方向に、スムースに流れる。このため、電子eがカソード3に導電しないことはなく、金属粒連鎖体31の中身31aを通って、流れ込む。金属粒連鎖体31により、電子eの通りが、金属粒連鎖体31がない場合に比べて非常に良くなる。しかし、カソード3全体としては、電気抵抗は高く、上記のようなカソード導電部13の配置による貢献を受けることで、カソード3におけるガス分解以外の電力消費を抑制することができる。
【0030】
−アノード−
図4は、アノード2におけるアノード反応を説明するための図である。アノード2は、銀粒子(触媒)23と、酸素イオン導電性セラミックス22とを含む焼結体とするのがよい。酸素イオン導電性セラミックス22としては、LSM(ランタンストロンチウムマンガナイト)、LSC(ランタンストロンチウムコバルタイト)、SSC(サマリウムストロンチウムコバルタイト)などを用いるのがよい。
【0031】
−固体電解質−
固体電解質1は、酸素イオン導電性がある、固体酸化物、溶融炭酸塩、リン酸、固体高分子などを用いることができるが、固体酸化物は小型化でき、取り扱いが容易なので好ましい。固体電解質1としては、SSZ、YSZ、SDC、LSGM、GDCなどを用いるのがよい。
【0032】
−製造方法−
上記のガス分解装置を構成する材料は、金属粒連鎖体以外は、市販されており市販品を用いることができる。絶縁基板14はアルミナ(Al)板等を用いることができる。固体電解質1は、たとえばYSZの薄板の市販品を購入することができる。厚みは、絶縁基板9に貼り付ける場合には、数十μm〜数百μmの厚さとするのがよい。とくに好適な固体電解質層1の厚みは、5μm〜20μmである。絶縁基板14にはアルミナ基板等を用いることができる。固体電解質1の絶縁基板14への貼り付けは既存の焼結性バインダーを用いることができる。また、絶縁基板9を用いない場合には、強度を確保するために、数百μm〜数mmのものを用いるのがよい。
固体電解質1の上に、上述の成分を含む、アノード2およびカソード3をスクリーン印刷法によって配置する。アノード2およびカソード3ともに、厚みは5μm〜50μmとするのがよく、とくに10μm〜25μm程度である。アノード2における銀粒子23の平均径は10nm〜100nmとするのがよい。また、酸素イオン導電性のセラミックス粒子22,32、たとえばLSM,GDCの平均径は0.5μm〜50μmの範囲内のものがよい。銀粒子とLSMとの配合比、または金属粒連鎖体31とGDC32との配合比は、0.01〜10程度とするのがよい。
バインダー樹脂および有機溶媒と、上記の粒子とを混練してペースト状にして、スクリーン印刷する。スクリーン印刷したあと、たとえば還元雰囲気中で、800℃〜900℃の温度に、30分間〜180分間程度保持することで焼結する。
絶縁基板14/固体電界質層1/(アノード2+カソード3)、の積層体を形成した後、カソード導電部12およびアノード導電部13に金(Au)ペーストを塗布して乾燥する。
【0033】
(金属粒連鎖体の製造方法)
金属粒連鎖体は、市販されておらず、特別な材料なので、以下に製造方法を説明する。
(1)金属粒連鎖体
金属粒連鎖体31は、還元析出法によって製造するのがよい。この金属粒連鎖体の還元析出法については、特開2004−332047号公報などに詳述されている。ここで紹介されている還元析出法は、還元剤として3価チタン(Ti)イオンを用いる方法であり、析出する金属粒(Ni粒など)は微量のTiを含む。このため、Ti含有量を定量分析することで、3価チタンイオンによる還元析出法で製造されたものと特定することができる。3価チタンイオンとともに存在する金属イオンを変えることで、所望の金属の粒を得ることができる。Niの場合はNiイオンを共存させる。Feイオンを微量加えると、微量Feを含むNi粒連鎖体が形成される。
また、連鎖体を形成するには、金属が強磁性金属であり、かつ所定のサイズ以上であることを要する。NiもFeも強磁性金属なので、金属粒連鎖体を容易に形成することができる。サイズについての要件は、強磁性金属が磁区を形成して、相互に磁力で結合し、その結合状態のまま金属の析出→金属層の成長が生じて、金属体として全体が一体になる過程で、必要である。所定サイズ以上の金属粒が磁力で結合した後も、金属の析出は続き、たとえば結合した金属粒の境界のネックは、金属粒の他の部分とともに、太く成長する。カソード3に含まれる金属粒連鎖体の平均直径Dは5nm以上、500nm以下の範囲とするのがよい。また、平均長さLは0.5μm以上、1000μm以下の範囲とするのがよい。また、上記平均長さLと平均径Dとの比は3以上とするのがよい。ただし、これら範囲外の寸法を持つものであってもよい。
(2)表面酸化
金属粒連鎖体の表面酸化処理は、(i)気相法による熱処理酸化、(ii)電解酸化、(iii)化学酸化の3種類が好適な手法である。(i)では大気中で500〜700℃にて1〜30分処理するのがよい。最も簡便な方法であるが、酸化膜厚の制御が難しい。(ii)では標準水素電極基準で3V程度に電位を印加し、陽極酸化することにより表面酸化を行うが、表面積に応じ電気量により酸化膜厚を制御できる特徴がある。しかし、大面積化した場合、均一に酸化膜をつけることは難しい手法である。(iii)では硝酸などの酸化剤を溶解した溶液に1〜5分程度浸漬することで表面酸化する。酸化膜厚は時間と温度、酸化剤の種類でコントロールできるが薬品の洗浄が手間となる。いずれの手法も好適であるが、(i)または(iii)がより好ましい。
望ましい酸化層31bの厚みは、1nm〜100nmであり、より好ましくは10nm〜50nmの範囲とする。ただし、この範囲外であってもかまわない。酸化皮膜が薄すぎると触媒機能が不十分となる。また、わずかな還元雰囲気でもメタライズされてしまう恐れがある。逆に酸化皮膜が厚すぎると触媒性は充分保たれるが、反面、界面での電子伝導性が損なわれ、発電性能が低下する。
【0034】
上記のNOx分解装置によれば、導電材料からなるカソード導電部13がカソード3の延在部3eを並列に導電接続するので、カソードにおける電気抵抗による電圧降下は延在部3eに限定される。すなわち電気化学反応におけるカソードの高抵抗に起因する電力消耗は、(1つのカソード延在部における電力消耗)×(カソード延在部の数)に限定される。ガス分解装置10上において電源9とカソード3とを導電接続するために引き回す配線は、カソード導電部13に限定され、カソード3はガス分解作用が発現する場所に限定配置される。これによってカソードで消耗される電力を、ガス分解に直接的に関与する部分に集中して用いることができる。
また、電気化学反応を生じさせるアノード2およびカソード3の延在部2e,3eを、矩形の固体電解質層1上に高密度で配置することができる。延在部2e,3eは、矩形の固体電解質層1または絶縁基板14の端に平行に配置される。またアノード2とカソード3との間隙1gを装置の精度の範囲で狭くできるので、酸素イオン等がアノード2/カソード3間を移動する時間を短くでき、従来ほど高温にしなくても、ガス分解速度を向上させることができる。この結果、ガス分解を実用レベルで遂行することができる。
さらに脆弱な固体電解質層1に対しては、補強のために固体電界質層1の裏面等を利用する余裕を生じる。本実施の形態ではアルミナ基板14を用いて裏面等に補強をすることで耐衝撃性能の向上を得ることができる。また、固体電解質1、アノード2、カソード3等はスクリーン印刷などで製造できるのでコスト低減に役立つ。
【0035】
(実施の形態1の変形例1)
図5は、実施の形態1の変形例1であり、本発明の実施の形態の一例のガス分解装置を示す図である。図5に示すガス分解装置10では、基本的な構成は、図1に示すガス分解装置10と同じであるが、次の点で独自性を有する。すなわち、カソード3の延在部3eを固体電解質層1の幅または長さ一杯にわたって配置して、そのカソード延在部3eの中央部に、延在方向に直交させて延ばしたカソード導電部13を設けた点にある。アノード2は、2つに別れ、矩形の対向する2つの端に沿って端縁に位置する2つのアノード導電部12から電圧を印加される。
上記の構成によって、カソード延在部3eは、カソード導電部13から延在部3eの先端までの距離を、同じ全体形状の場合、半減することができる。すなわちカソードの延在部3eの全体の長さが、図1と同じ場合、カソード導電部13から延在部3eの先端までの距離を半減できる。この結果、電気抵抗が比較的高いカソードでの電力消費を、さらに抑制することができる。結果的に、アノード2においても、アノード延在部2eにおけるアノード導電部12から延在部2e先端までの距離を半減することができる。当然、小さいながらアノード2における電力消費の抑制を得ることができる。
【0036】
なお、あらためて図示はしないが、図5における、カソード3、カソード延在部3e、カソード根元部3bに代えて、アノード2、アノード延在部2e、アノード根元部2bとし、また、図5における、アノード2、アノード延在部2e、アノード根元部2bに代えて、カソード3、カソード延在部3e、カソード根元部3bとすることでも、図1におけるガス分解装置10におけるカソード3での電力消費を抑制することができる。すなわち、図5におけるアノード2とカソード3とを入れ替えても、図5のガス分解装置10と同じように、カソード3での電力消費を抑制することができる。
【0037】
(実施の形態1の変形例2)
図6は、実施の形態1の変形例2であり、本発明の実施の形態の一例を示す図である。図6に示すガス分解装置10では、基本的な構成は、図1に示すガス分解装置10と同じであるが、次の点で独自性を有する。
(1)カソード3の延在部3eを固体電解質層1の幅または長さ一杯にわたって配置して、そのカソード延在部3eの中央部に、延在方向に直交させて延ばした、カソード導電部13を設ける。これは、図5のガス分解装置10と同じである。
(2)アノード2へ電圧印加するアノード導電部12を、矩形の1辺側につき1箇所にして、辺縁に沿って連続するアノード根元部2bによって複数のアノード延在部2eに電圧印加する。
上記の(1)は、変形例1(図5)と同じ構造である。また、上記の(2)によって、比較的高価な金ペーストの使用量を減らすことができる。アノード2は、銀粒子23を含み電気抵抗が低いので、図6に示すように、アノード根元部2bをアノード導電部として用いても、電力消費の実質的増大にはつながらない。
【0038】
(実施の形態2)
図7(a)は、本発明の実施の形態2におけるガス分解装置であるNOx分解装置10を示す平面図であり、図7(b)は、VIIB−VIIB線に沿う断面図であり、図7(c)はVIIC−VIIC線に沿う断面図である。本実施の形態のNOx分解装置10では、カソード3の面積がアノード2の面積よりも大きい点が特徴である。その他の部分は、実施の形態1のNOx分解装置(図1)と同じである。カソード3またはアノード2の面積は、大部分、カソード延在部3eまたはアノード延在部2eで占められるので、上記の面積の大小関係は、カソード延在部3eがアノード延在部2eより大きいと言い換えることができる。
NOx分解効率はカソード3の面積に律速され、カソード3の面積に比例する。このため、カソード3とアノード2の面積を同じにすると、NOx分解効率は最適条件から外れてしまう。カソード3の面積をアノード2の面積よりも大きくすることで、NOx分解効率の最適条件にするか、もしくは最適条件へとより一層近づくことができる。最適条件に一致するかどうかはさておき、図7に示すように、カソード3の面積をアノード2の面積よりも大きくすることで、カソード3とアノード2の面積が同じNOx分解装置よりも、ともかくNOx分解効率はより一層向上する方向になる。最適条件に一致させるためにどの程度カソード3の面積をアノード2の面積より大きくすべきかは、各構成部分1,2,3,1gの性能やサイズ等に大きく影響されるので、ある程度は計算により、それから先の詳細は実験的に決めてゆくのがよい。
【0039】
図7(a)に示すように、カソード3の延在部3eを、アノード2の延在部2eよりも均等に大きくすることにより、電気抵抗の高いカソード3における電荷の経路の断面積を大きくすることができる。この結果、カソード3と導電部13との接続部など、NOx分解が起こる部分以外の部分、で消費される電力を、より一層、抑制することが可能となる。
絶縁基板14を機械強度に優れた材料、たとえばアルミナ焼結材を用いることで、機械強度を高めて耐久性の向上を得ることができることなどは、実施の形態1と同じである。また、製造方法についても、カソード3とアノード2の面積が異なるだけで後は同じである。
【0040】
(実施の形態3)
図8は、本発明の実施の形態2におけるガス分解装置の原理を説明するための図である。実施の形態3におけるガス分解装置10の基本形状は、図1、図5または図6に示すガス分解装置10と同じである。実施の形態3では、材料の中身が、実施の形態1における酸素イオン移動材料から、プロトン移動材料へと変わる。自動車の排気ガス中には、NOxのほかに、炭化水素(CmHn)、水素(H)、水蒸気(HO)等が含まれる。この排気ガス中に、プロトン移動に対応した材料で形成された、図1、図5または図6に示す配置を有するガス分解装置10を置く。アノード2およびカソード3における反応は、次のとおりである。
(アノード反応):次の(A1)および/または(A2)のプロトン(H)の供給反応が進行する。
(A1)H→2H+2e
(A2)C+2mHO→mCO+(4m+n)H+(4m+n)e
(カソード反応):
(NO):2NO+4H+4e→N+2H
(NO):2NO+8H+8e→N+4H
【0041】
本実施の形態では、固体電解質層1は、プロトン導電体で形成される。プロトン導電材料としては、CsHSO、BaZrOなどを用いることができる。
アノード2は、Ag粒子、プロトン導電セラミックス粒子のCsHSO、BaZrO3等で形成される。また、カソード3は、Ni粒連鎖体の表面酸化材、プロトン導電セラミックス粒子のBaZrO、CsHSO等、およびPtやRhなどの貴金属等で形成される。
【0042】
本実施の形態においても、アノード2はAg粒子を含むため電気抵抗は低く、カソード3はNi粒連鎖体の表面酸化材料のコアは導電材であるが表面酸化されているため電気抵抗が比較的高い。このため、プロトン移動を利用する本実施の形態におけるガス分解装置10においても、カソード3の電気抵抗が比較的高いことは、実施の形態1と変わらない。このため、図1(実施の形態1)、図5(変形例1)または図6(変形例2)において、説明したカソード導電部13等の作用効果は、そのまま、本実施の形態のガス分解装置においても成り立つ。さらに、図7(実施の形態2)のように、カソード3の面積をアノード2の面積より大きくした装置であってもよい。すなわち、図7(a)〜(c)に示す構造のNOx分解装置の固体電解質等を、上述のように、プロトン伝導用に置き換えればよい。
本実施の形態では、プロトン移動を利用するため、プロトン移動速度が酸素イオン移動速度に比べて高いことから、ガス分解装置の稼働温度を低くできる、また同じ稼働温度ではガス分解速度を大きくすることができるなどの利点を得ることができる。
【0043】
(実施の形態4)
図9は、本発明の実施の形態4のガス分解装置50を示す図である。このガス分解装置では、実施の形態1、その変形例1もしくは2、実施の形態2または実施の形態3のNOx分解装置10が、絶縁基板14の両面に配置されている。しかも、両面に固体電解質層1、アノード2およびカソード3を配置した絶縁基板14が、複数、積層支持部材21によって積層保持されている。言うまでもないが、複数のカソード延在部3eがカソード導電部13によって並列に導電接続されており、アノード2およびカソード3が、固体電解質層1上に数μm〜数十μmの間隙1gをあけて対面するように配置されている点は、実施の形態1、変形例1,2、実施の形態2および実施の形態3と同じである。
図8にガス分解装置50は、たとえば自動車に搭載する場合には、高さ10cm〜15cm程度、幅10cm〜15cm程度、奥行き10cm〜20cm程度であり、全体の体積は1.5l〜2l程度とするのがよい。これは三元触媒のNOx分解装置と同じ程度の体積である。
このように、NOx分解装置10が、複数(たとえば20層程度)、相互にスペースをあけて積層されることで、大量のNOxを短時間に分解することができる。このため、ディーゼルエンジンの廃ガス中のNOxを分解するのに使用できることができる。また、実施の形態1、変形例1,2、実施の形態2または実施の形態3における利点を得ることができる。すなわち、カソード導電部13によりカソード3における電力消費を抑制することができ、かつ、アノードとカソードとの間隙を狭くできるので、アノード/カソード間を移動する時間を短くでき、従来ほど高温にしなくても、ガス分解速度を向上させることができる。この結果、ガス分解を実用レベルで遂行することができる。さらに脆弱な固体電解質に対しては、補強のために裏面等を利用する余裕を生じるので、裏面等に補強をすることで耐衝撃性能の向上を得ることができる。また、固体電解質、アノード、カソード等はスクリーン印刷などで製造できるのでコスト低減に役立つ。
【0044】
上記の本発明の実施の形態においては、NOx分解の場合で、第2電極(電気抵抗が第1電極より高い)としてカソードの場合を説明したが、その他のガス成分の分解をするために、第2電極がアノードの場合であってもよい。
上記に開示された本発明の実施の形態は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれら発明の実施の形態に限定されない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明によれば、電気化学反応を用いて所定のガスを分解する装置において、固体電極とくにカソードにおける電力消耗を防止することができる。また、ガス分解速度の向上をも得ることができる。また、所定の場合、固体電解質における低いイオン移動速度、機械的な脆弱性および比較的高い製造コストを克服することができる、ガス分解装置を得ることができ、自動車等に搭載して廃熱を利用することで、ヒータの負担を軽減ないしなくすことが可能となる。
【符号の説明】
【0046】
1 固体電解質、1g アノードとカソードの間隙、2 アノード、2b アノード根元部、2e アノード延在部、3 カソード、3b カソード根元部、3e カソード延在部、9 電源、10 ガス分解装置、12 アノード導電部、13 カソード導電部、14 絶縁基板、21 積層支持部材、22 酸素イオン導電性セラミックス、23 銀粒子、31 酸化層付きNi粒連鎖体、31a Ni粒連鎖体、31b 酸化層、32 酸素イオン導電性セラミックス、50 積層構造のガス分解装置、d 間隙の寸法。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極、該第1電極と対をなす第2電極、固体電解質層、および前記第1電極/第2電極間に電圧を印加する電源を備えるガス分解装置であって、
前記第1電極および第2電極は、前記固体電解質層上に接して位置し、間隙を挟んで交互に延在する複数の延在部を有しており、
前記第2電極は前記第1電極よりも電気抵抗が高く、前記電源と導電接続する導電材料からなる第2電極導電部は、前記第2電極の複数の延在部を導電接続するように前記第2電極の延在部の延在方向に交差する方向に延びていることを特徴とする、ガス分解装置。
【請求項2】
前記第2電極の面積が、前記第1電極の面積よりも大きいことを特徴とする、請求項1に記載のガス分解装置。
【請求項3】
前記第2電極がカソードであり、前記電源と導電接続する導電材料からなるカソード導電部は、前記カソードの複数の延在部を導電接続するように前記カソードの延在部の延在方向に交差する方向に延びていることを特徴とする、請求項1または2に記載のガス分解装置。
【請求項4】
前記固体電解質層は絶縁基板上に位置しており、前記第2電極の延在部は該固体電解質層の第1の端側から反対側の第2の端側に向かって延材しており、前記第2電極導電部は前記絶縁基板または前記固体電解質層の第1の端に平行に延びていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のガス分解装置。
【請求項5】
前記第1電極および第2電極の間の間隙が、2μm〜200μmの範囲にあることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のガス分解装置。
【請求項6】
前記第2電極導電部がAuペーストによって形成されたものであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のガス分解装置。
【請求項7】
前記固体電解質層が酸素イオン導電性であり、前記第2電極が金属粒連鎖体の酸化物、GDC(gadolinium doped ceria)、およびBaCOを含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載のガス分解装置。
【請求項8】
前記固体電解質層がプロトン導電性であり、前記第2電極が金属粒連鎖体の酸化物、貴金属、およびプロトン導電性材料を含むることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載のガス分解装置。
【請求項9】
前記固体電解質層が、前記絶縁基板の表面および裏面に位置していることを特徴とする、請求項4〜8のいずれか1項に記載のガス分解装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のガス分解装置が、複数、間隔をあけて重ねられ、筐体内に固定されていることを特徴とする、ガス分解装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載のガス分解装置が自動車に搭載され、当該ガス分解装置を当該自動車の廃熱によって加熱するための加熱機構を備えることを特徴とする、ガス分解装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−104532(P2011−104532A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−263126(P2009−263126)
【出願日】平成21年11月18日(2009.11.18)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】