説明

ガス化処理装置および土壌処理システム

【課題】 少ないエネルギー消費量で、かつ効率的にダイオキシン類により汚染された土壌からダイオキシン類を分解除去し、土壌浄化できる装置を提供する。
【解決手段】 この装置は、土壌を受け入れ、回転することにより土壌を該土壌の受入口から排出口まで移動させる螺旋板が設けられた内管を備える加熱容器13、23、33と、加熱容器13、23、33の外周に巻かれたチューブ14、24、34と、チューブ14、24、34内で燃料を燃焼させる燃焼手段とから構成される3つの加熱装置10、20、30を含む。第1の加熱装置10は、土壌を第1温度に加熱し、土壌中の水分を蒸発させ、第2の加熱装置20は、土壌を第2温度に加熱し、第3の加熱装置30は、第3温度に加熱して土壌中の難分解性有機化合物を揮発させ、過熱蒸気と反応させて難分解性有機化合物を分解する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイオキシン類等の難分解性有機化合物により汚染された土壌を浄化するために用いられるガス化処理装置およびそのガス化処理装置を含む土壌処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック製品の増加に伴い、プラスチック廃棄物が増加している。こうした廃棄物の処理は、焼却炉での焼却処理が一般的であるが、その燃焼温度によってダイオキシン類が発生することが問題となっている。このダイオキシン類は、除草剤の分解によっても発生し、金属精錬施設、自動車の排ガス、たばこの煙等からも発生する。発生したダイオキシン類は、雨水や焼却灰等とともに土壌へ蓄積され、土壌を汚染する。
【0003】
ダイオキシン類は、毒性の強い難分解性の有機化合物であり、発ガン性、生殖毒性、免疫毒性等を有し、ダイオキシン類により汚染された土壌で育成された牧草、穀類、豆類等を介して人体へ蓄積され、人体に重大な影響を及ぼす。難分解性の有機化合物には、自然に分解されにくく生物濃縮によって人体等に害を及ぼす残留性有機汚染物質(POPs)があり、上記のダイオキシン類は、このPOPsに該当するものである。そのほか、POPsに該当するものには、熱に対して安定で電気絶縁性が高く、耐薬品性に優れることから熱媒体や電気機器の絶縁油等に広く用いられたポリ塩化ビフェニル(PCB)や、殺虫剤や農薬に用いられたジクロロジフェニルトリクロロエタン(DDT)等がある。このPOPsは、人体等に害を及ぼすことから除去する必要があり、こういった有機化合物により汚染された土壌からその有機化合物を除去するための装置や方法が、これまでに数多く提案されている(例えば、特許文献1〜4参照)。
【0004】
特許文献1では、有機系汚染物質で汚染された土壌を、土壌供給口と土壌加熱部と土壌排出口とを備えた土壌加熱装置により処理する方法を提案している。この方法では、汚染された土壌を土壌供給口から土壌加熱部に供給し、その土壌加熱部内で土壌を加熱して、その土壌に含まれる有機系汚染物質を揮発させて除去し、土壌排出口側から土壌加熱装置の内部に向けてキャリアガスを流しながら、土壌を土壌排出口から排出させている。このとき、土壌の加熱は、200℃〜700℃の温度で行い、キャリアガスとして、空気、窒素または水蒸気を使用している。
【0005】
この方法では、加熱処理後の土壌が冷却され始める土壌排出口付近で局所的に起こりやすい、一旦揮発した有機系汚染物質の土壌への再付着を有効に防止することができ、キャリアガスの導入により土壌加熱部のガス中の有機系汚染物質濃度が小さくなり、汚染土壌から有機系汚染物質を揮発しやすくすることにより、処理後の土壌が所定の基準値(ダイオキシン類の土壌環境基準:1000pg−TEQ/g、ダイオキシン類の底質環境基準:150pg−TEQ/g、PCB除去基準:10mg/kg等)以下とすることを可能にしている。
【0006】
特許文献2〜4では、汚染土壌からPCB類、ダイオキシン類等の有機ハロゲン化合物を効率よく抽出し、水蒸気を用いることにより有機ハロゲン化合物をハロゲン化水素と二酸化炭素に安定的に分解し無害化する装置および方法を提案している。この装置および方法では、汚染土壌を間接的に加熱し、その汚染土壌に含まれる有機ハロゲン化合物を揮発させ、間接的に加熱された系内で水蒸気と反応させ、ハロゲン化水素と二酸化炭素に分解する。このとき、水蒸気量を生成するガス中の一酸化炭素濃度により制御しながら間接的に加熱し、土壌中に含まれる有機ハロゲン化合物を確実に分解処理している。
【0007】
ダイオキシン類を揮発させる加熱温度は、200℃〜600℃の温度とし、水蒸気と反応させて分解する温度は、600℃〜1300℃の温度とし、汚染土壌を撹拌・連続加熱処理する炉として、回転式スクリューフィーダもしくは回転式キルンを用い、炉内を熱源により外部から間接的に加熱することを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−194543号公報
【特許文献2】特開2006−035218号公報
【特許文献3】特開2004−298800号公報
【特許文献4】特開2004−057911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の装置は、中空円筒状の容器内にスクリューを設け、その容器の外側にヒータを設け、内部へ投入した土壌をスクリューで移動させつつ間接加熱することにより所定温度にまで加熱し、土壌中に含まれるダイオキシン類を揮発させ、その容器内へ供給された水蒸気と反応させてそのダイオキシン類を分解している。
【0010】
また、従来の装置では、2つの容器を用い、1段目を土壌中に含まれる水分を蒸発させるための容器とし、2段目を土壌中に含まれるダイオキシン類を揮発させ、分解させるための容器とし、1段目で発生した水蒸気を有効活用し、別途供給される水蒸気量を減少させることにより、エネルギー消費量を削減している。
【0011】
この装置では、1段目で水分を蒸発させるだけでよいため、200℃程度まで加熱し、2段目ではダイオキシン類を揮発させる必要があるため、600℃程度まで加熱している。容器内の空気や蒸気と土壌とでは熱の移動速度が異なることから、2段目の容器内の温度、すなわち容器内の空気および蒸気の温度を600℃で一定にするまでに時間を要し、また、600℃で一定になった場合でも、このように温度勾配が大きい場合には、土壌の温度がダイオキシン類を揮発させることができる温度、例えば550℃以上になるには相当の時間を要する。これでは、処理時間を短縮することはできず、効率的に処理を行うことはできない。
【0012】
難分解性の有機化合物には、ダイオキシン類のほか、PCBやDDT等もあるが、物質により揮発する温度が異なるため、物質に応じて加熱温度を変更することで処理効率を向上させることができる。しかしながら、それらの揮発する温度はダイオキシン類の場合と大きく相違するものではないため、2段目の温度勾配は大きく、容器内の温度を安定させ、かつ土壌が所定温度に達するまでには相当の時間を要する。これでは、物質に応じた細かな制御を行うことは難しい。
【0013】
また、従来の装置では、2段目の容器内の温度が600℃に達した際、土壌の温度がまだ400℃や450℃であっても、その容器内を600℃に保持するためにエネルギーが消費され、また、土壌が所定温度に達するまでには相当の時間を要することから、エネルギー消費量を充分に削減するものにはなっていない。
【0014】
このため、出来るだけ少ないエネルギー消費量で、細かな制御を行うことができ、効率的にダイオキシン類により汚染された土壌からダイオキシン類を分解除去し、土壌浄化を行うことができる装置の提供が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の発明者らは、鋭意検討の結果、上記の中空円筒形の容器を3つ用い、1つは、土壌中に含まれる水分をすべて蒸発させるために使用し、もう1つは、温度勾配を小さくし、ゆるやかな昇温を実現するべく、土壌中に含まれる難分解性有機化合物が揮発しない所定の温度にまで土壌を加熱するために使用し、残りの1つは、土壌中に含まれる難分解性有機化合物を揮発させ、難分解性有機化合物が除去され浄化された土壌と、揮発した難分解性有機化合物とを別々に排出させるために使用する構成とし、また、その容器を、内部に螺旋状に形成された板状突起部を備え、回転するキルンとし、そのキルンの外周に螺旋状に巻かれたラジエントチューブバーナーを備える構成とすることで、少ないエネルギー消費量で、かつ効率的に難分解性有機化合物により汚染された土壌から難分解性有機化合物を除去し、土壌浄化を行うことができることを見出した。このとき、揮発した難分解性有機化合物の大部分が、蒸発した水分が加熱されてできた過熱蒸気と反応して分解し、低分子からなる分解ガスになることが見出された。
【0016】
ラジエントチューブバーナーは、燃料として重油や都市ガス等を使用するが、電気ヒータに比較してコストを約1/3に抑制することができる。また、3段階に撹拌しながら加熱することで、2段目において、土壌中に含まれる難分解性有機化合物が揮発する温度より低く、かつその温度に近い所定の温度にまで土壌を加熱することができるため、3段目においては、温度勾配が小さくなり、容器内を加熱する際、容器内の温度と土壌の温度との差を小さく維持しつつ加熱することができるため、3段目の容器内の温度が目標温度に達するとほぼ同時に、土壌の温度も目標温度にすることができる。これにより、加熱時間を短縮することができ、エネルギー消費量も削減することが可能となる。また、1段目および2段目においては、土壌に含まれる難分解性有機化合物の濃度や種類によらず、第1温度および第2温度まで加熱し、3段目において、その濃度や種類に応じて加熱温度や加熱時間を細かく調整することができるので、細かい制御が可能となる。
【0017】
本発明は、これらのことを見出すことによりなされたものであり、上記課題は、上記構成のガス化処理装置およびそのガス化処理装置を含む土壌処理システムを提供することにより解決することができる。
【0018】
ガス化処理装置は、ダイオキシン類等の難分解性有機化合物により汚染された土壌を受け入れ、回転することにより前記土壌を該土壌の受入口から排出口まで移動させる螺旋板が設けられた内管を備える加熱容器と、前記内管内に挿設され、または前記加熱容器の外周に巻かれたチューブと、前記チューブ内で燃料を燃焼させる燃焼手段とから構成される加熱装置を3つ備えており、第1の加熱装置が前記土壌を第1温度に加熱して該土壌に含まれる水分を蒸発させ、第2の加熱装置が前記第1の加熱装置で加熱された前記土壌を前記第1温度より高い第2温度に加熱し、第3の加熱装置が前記第2の加熱装置で加熱された前記土壌を第2温度より高い第3温度に加熱して該土壌に含まれる前記難分解性有機化合物を揮発させ、蒸発した前記水分を加熱することにより生成された過熱蒸気と反応させて該難分解性有機化合物を分解することを特徴とする。
【0019】
第1の加熱装置の加熱容器内の温度は、土壌中の水分を蒸発させることができる温度とされ、約150℃〜約200℃とされる。第2の加熱装置の加熱容器内の温度は、上記の第1の加熱装置の加熱容器内の温度より高く、難分解性有機化合物が揮発しない温度とされ、約300℃〜約400℃とされる。第3の加熱装置の加熱容器内の温度は、上記の第2の加熱装置の加熱容器内の温度より高く、難分解性有機化合物を揮発させ、過熱蒸気と反応させて難分解性有機化合物を分解することができる温度とされ、約500℃〜約600℃とされる。
【0020】
螺旋板は、その螺旋板間をつなぐように設けられ、内管の回転により、その螺旋板間に介在する土壌に衝突させて土壌を撹拌するための土壌撹拌部材を備えることができる。これにより、土壌を強制的に撹拌し、加熱むらを減少させ、効率的に加熱処理を行うことができる。
【0021】
第3の加熱装置は、第3温度に加熱された過熱蒸気を受け入れるための蒸気受入口を備えることができる。過熱蒸気は、空気の2倍の比熱を有し、空気より対流伝熱効果が大きく、かつ熱放射による伝熱効果が得られるため、空気中で加熱するよりも低温かつ短時間で必要な熱量を被加熱物に与えることができる。土壌に含まれる水分量が少なく、生成される過熱蒸気が少ないと、土壌を所定温度、すなわち土壌中の難分解性有機化合物を揮発させるために必要とされる温度へ加熱するのに時間を要し、また、難分解性有機化合物との反応も不十分となる。このため、土壌の含水比や難分解性有機化合物の濃度に応じて、適切な量の過熱蒸気を受け入れることができるように、蒸気受入口を備えることができる。この蒸気受入口は、第1の加熱装置や第2の加熱装置も備えることができる。これにより、土壌中の水分の蒸発によって反応に必要とされる蒸気を確保することができる場合であっても、過熱蒸気の熱を土壌に与えることにより、より短時間で効率的に土壌を所定温度に加熱することができ、燃焼手段が消費する燃料量を削減することができる。
【0022】
ガス化処理装置は、過熱蒸気を供給することができるように、水を貯留する貯水槽と、その水を蒸発させる蒸気発生手段と、貯水槽から蒸気発生手段へ給水する給水手段と、蒸気を加熱して過熱蒸気を生成する蒸気加熱手段とを含む過熱蒸気生成装置をさらに備えることができる。
【0023】
本発明では、上記のガス化処理装置のほか、そのガス化処理装置を含む土壌処理システムも提供することができる。土壌処理システムは、上記のガス化処理装置に加えて、未分解の難分解性有機化合物をさらに加熱し、過熱蒸気と反応させて分解する反応装置を含む。これにより、難分解性有機化合物を充分に分解することができ、排出される分解物中の難分解性有機化合物の濃度を充分に低減させることができる。
【0024】
また、反応装置から排出される分解物を冷却するとともにガス成分を分離するバブリングタンクとを含むことができ、バブリングタンク内に残留する固形物を再加熱処理するために、固形物を含む液体を受け入れ、液体中に浮遊する固形物を凝集沈殿させる凝集槽をさらに含むことができる。さらに、大気放出されるガス成分中に含まれる微細な粉塵を吸着除去するための吸着装置を含むことができる。これにより、分解物に含まれる塩化水素や一部の炭酸ガス等を溶解させて除去することができ、また、微細な粉塵を吸着装置において吸着除去することができるので、大気汚染を防止することができ、さらに、固形物を分離し、再加熱処理するため、廃棄物をなくすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明のガス化処理装置の構成例を示した図。
【図2】ガス化処理装置に用いられる加熱装置の構成例を示した断面図。
【図3】螺旋板の1つの構成例を示した図。
【図4】過熱蒸気生成装置の構成例を示した図。
【図5】本発明の土壌処理システムの構成例を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、本発明のガス化処理装置の構成を例示した図である。本発明のガス化処理装置は、第1の加熱装置10、第2の加熱装置20、第3の加熱装置30の3つの加熱装置を直列に接続した構成とされる。
【0027】
これらの加熱装置は、ダイオキシン類やPCB等の難分解性有機化合物により汚染された土壌を受け入れるための土壌受入口11、21、31と、土壌を排出するための土壌排出口12、22、32と、受け入れた土壌を収容する加熱容器13、23、33と、加熱容器の外周に螺旋状に巻かれたチューブ14、24、34と、チューブ14、24、34内に燃料を燃焼させる図示しない燃焼手段とを含んで構成される。ここでは、チューブ14、24、34が加熱容器13、23、33の外周に螺旋状に巻かれた構成を説明するが、チューブは、加熱容器13、23、33の後述する内管内に挿設された構成としてもよい。このようにチューブを挿設することで、チューブからの熱をすべて土壌へ与えることができ、土壌をより効率的に加熱することができる。
【0028】
加熱容器13、23、33は、一方に長くされた中空円筒形の容器とされ、土壌受入口11、21、31から受け入れた土壌を、その土壌受入口11、21、31から土壌排出口12、22、32へ移動させることができるようになっている。このため、加熱容器13、23、33は、土壌受入口11、21、31や土壌排出口12、22、32が設けられる容器内に、螺旋板が設けられた内管を備える二重構造とされており、その内管が回転することにより土壌受入口11、21、31から土壌排出口12、22、32へ土壌を移動させることができるように構成されている。
【0029】
また、加熱容器13、23、33の外周には、その切断面が略矩形とされたチューブ14、24、34が螺旋状に巻かれており、そのチューブ14、24、34内の一端には、燃焼手段としての点火プラグおよび噴射ノズルが挿設されている。
【0030】
チューブ14、24、34は、その切断面が円形ではなく、略矩形とされているため、チューブ14、24、34と加熱容器13、23、33とが隣接して接触する接触面積を大きくとることができ、熱を効率的に加熱容器13、23、33の内部に伝えることができる。このチューブ14、24、34の外周は、セラミックス等からなる板で覆い、その上から保温材で巻くことにより外部へ熱が放散するのを抑制することができる。
【0031】
噴射ノズルは、燃料を供給するための燃料ラインと、空気を供給するための空気ラインと、それらの流量を調節するための燃料調節弁および空気調節弁とを備えている。点火プラグは、火花を飛ばして燃料に着火させる。このため、噴射ノズルへ燃料および空気を供給し、点火プラグにより火花を発生させると、燃料へ着火し、燃焼を開始する。燃焼後の高温の排ガスは、チューブ14、24、34内を流れ、その熱は、加熱容器13、23、33の壁面を介し、内管を介して内部の土壌へ伝えられる。
【0032】
燃料および空気の流量は、燃料調節弁および空気調節弁により調節され、加熱容器13、23、33内の温度を温度計により計測し、所定の温度になるように調節される。温度計により計測される温度は、加熱容器13、23、33内の土壌の温度であってもよい。燃料としては、重油、軽油、ナフサ、プロパンガス、都市ガス等を使用することができ、燃料の種類および量に対し、適切な量の空気が供給される。
【0033】
図1では、第1の加熱容器10、第2の加熱容器20、第3の加熱容器30の各々に、過熱蒸気を供給することができるように蒸気ライン15、25、35が接続される蒸気土壌混合ノズル16、26、36が設けられており、この蒸気土壌混合ノズル16、26、36に土壌受入口11、21、31が設けられている。
【0034】
このガス化処理装置に投入される土壌は、難分解性有機化合物であるダイオキシン類やPCB等により汚染された土壌である。ダイオキシン類は、ポリ塩化ジベンゾパラジオキシン(PCDD)、ポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)、ダイオキシン様ポリ塩化ビフェニル(DL−PCB)を総称したもので、塩素で置換された2つのベンゼン環をもつ共通の構造を有し、類似した毒性を示すものである。このダイオキシン類は、塩素を含む物質の不完全燃焼や、薬品合成において副合成物として生成される。
【0035】
難分解性有機化合物は、大小様々な粒子径を有する土壌中の土粒子に付着した状態で存在する。土粒子には、その大きさから大きい順に、石、岩石が壊れてできた砕屑物である礫、砂、泥(シルト、粘土)がある。石は、粒子径が75mm以上のものをいい、礫は、粒子径が2〜75mmのものをいい、砂は、0.074〜2mmのものをいい、泥は、0.074mm以下のものをいう。
【0036】
難分解性有機化合物は、いずれのサイズの土粒子にも付着しているが、サイズの大きい石や礫は水で洗浄することにより除去することができる。一方、粒子径の小さい砂や泥は、比表面積が大きく、水で洗浄しても充分に除去することはできない。このため、これらの粒子径の小さい砂や泥を処理すべき汚染土壌としてガス化処理装置へ供給し、付着した難分解性有機化合物を揮発させて分離除去する。
【0037】
したがって、難分解性有機化合物が付着した土壌を洗浄した後、その洗浄した土壌をガス化処理装置へ投入する際、粒子径の大きい石や礫をふるい等の分級装置により分別し、粒子径の小さい砂や泥からなる土壌を第1の加熱装置10へ投入することができる。
【0038】
本発明では、上記の砂や泥からなる土壌を供給することができるが、供給される土壌に含まれる粒子の径が大小様々存在すると、その粒子径によって熱伝導が異なり、また、水分を多く含み、粘土やシルトといった粉末状物を含んでいるため、ガス化処理装置内で急速に加熱されて乾燥硬化した土塊が形成され、その土塊の内部へと熱が伝えられ、その内部において付着している難分解性有機化合物が揮発するには相当の時間を要する。
【0039】
そこで、ガス化処理装置へ投入する前の前処理として、土壌中の粒子径の大きな石や礫を取り除いた後、粒子径の小さい粘土やシルトは造粒装置を用いて造粒し、粒子径を揃えることができる。これにより、粘土やシルトといった粉末状物がなくなるため、ガス化処理装置へ投入しても土塊を形成することはなく、粒子径がほぼ揃っているため均一に加熱することができ、その結果、加熱時間を短縮することができ、エネルギー消費量を低減することができる。
【0040】
一般に、土壌にはある程度の水分が含まれるので、ガス化処理装置へ過熱蒸気を供給する必要はない。第1の加熱装置10に投入される土壌は、土壌受入口11に接続されたホッパー内に投入され、土壌受入口11を介して加熱容器13内へ供給される。加熱容器13の外周には、チューブ14および燃焼手段が設けられ、燃料の燃焼により生成された高温の排ガスが、チューブ14内を流れ、その排ガスの熱は、そのチューブ14内を流れる間、加熱容器13の壁面を通して内管へ伝えられ、その内管から土壌へと伝えられ、土壌が加熱される。
【0041】
土壌は、内管の回転と、内管の内壁に設けられた螺旋板とにより、土壌排出口12側へと送られ、加熱されるとともに撹拌される。この間、土壌に含まれる水分は、熱が与えられて蒸発する。この土壌は、土壌排出口12まで到達すると、土壌排出口12から第2の加熱装置20の土壌受入口21に向けて落下し、第2の加熱装置20へ投入される。このとき、土壌とともに発生した蒸気も第2の加熱装置20へ供給される。なお、第1の加熱装置10内は、約150℃〜約200℃の温度に加熱されるため、発生した蒸気は、常圧で、100℃を超える過熱蒸気となっており、土壌も、100℃を超える第1温度となっている。
【0042】
第2の加熱装置20も、外部から過熱蒸気を受け入れる必要はなく、第1の加熱装置10により加熱された土壌が投入され、過熱蒸気を受け入れる。そして、土壌および過熱蒸気は、第2の加熱装置20内の加熱容器23内へ供給される。加熱容器23の外周には、チューブ24および燃焼手段が設けられ、燃料の燃焼により生成された高温の排ガスが、チューブ24内を流れ、その排ガスの熱は、そのチューブ24内を流れる間、加熱容器23の壁面を通して内管へ伝えられ、その内管から土壌へと伝えられ、土壌が加熱される。
【0043】
土壌は、内管の回転と、内管の内壁に設けられた螺旋板とにより、土壌排出口22側へと送られ、加熱されるとともに撹拌される。この間、土壌は、熱が与えられて所定温度に加熱される。この土壌は、土壌排出口22まで到達すると、土壌排出口22から第3の加熱装置30の土壌受入口31に向けて落下し、第3の加熱装置30へ投入される。このとき、土壌とともに過熱蒸気も第3の加熱装置30へ供給される。第2の加熱装置20内は、第1の加熱装置10内の温度より高く、難分解性有機化合物が揮発しない約300℃〜約400℃の温度に加熱される。
【0044】
第2の加熱装置20内に受け入れられた土壌は、第1の加熱装置10により約100℃を超える温度に加熱されているので、約200℃加熱すればよく、従来の装置に比較して温度勾配が小さいので、加熱容器23内を加熱する際、加熱容器23内の温度と土壌の温度との差を小さく維持しつつ加熱することができる。このため、第2の加熱装置20の加熱容器23内の温度が目標温度である約300℃〜約400℃に達するとほぼ同時に、土壌の温度も目標温度である約250℃〜約350℃という第2温度に到達させることができる。
【0045】
第3の加熱装置30も、外部から過熱蒸気を受け入れる必要はなく、第2の加熱装置20により加熱された土壌が投入され、過熱蒸気を受け入れる。そして、土壌および過熱蒸気は、第3の加熱装置30内の加熱容器33内へ供給される。加熱容器33の外周には、チューブ34および燃焼手段が設けられ、燃料の燃焼により生成された高温の排ガスが、チューブ34内を流れ、その排ガスの熱は、そのチューブ34内を流れる間、加熱容器33の壁面を通して内管へ伝えられ、その内管から土壌へと伝えられ、土壌が加熱される。
【0046】
土壌は、内管の回転と、内管の内壁に設けられた螺旋板とにより、土壌排出口32側へと送られ、加熱されるとともに撹拌される。第3の加熱装置30内は、第2の加熱装置20内より温度が高く、ダイオキシン類が揮発する約500℃〜約600℃の温度に加熱される。第3の加熱装置30内に受け入れられた土壌は、第2の加熱装置20により約250℃〜約350℃に加熱されているので、約200℃加熱すればよく、これも従来の装置に比較して温度勾配が小さいので、加熱容器33内を加熱する際、加熱容器33内の温度と土壌の温度との差を小さく維持しつつ加熱することができる。このため、第3の加熱装置30の加熱容器33内の温度が目標温度である約500℃〜約600℃に達するとほぼ同時に、土壌の温度も目標温度である約450℃〜約550℃という第3温度に到達させることができる。
【0047】
第3の加熱装置30では、加熱により土壌中の砂、粘土やシルトに付着している難分解性有機化合物を揮発させることができる。そして、揮発したダイオキシン類と過熱蒸気とを反応させ、難分解性有機化合物を水素、一酸化炭素、二酸化炭素、塩化水素といった低分子に分解することができる。この土壌は、土壌排出口32に到達するころには、ほぼすべてのダイオキシン類が揮発し、分解されており、浄化された土壌として土壌排出口32から落下し、処理土壌を収容する土壌収容容器へ入れられる。
【0048】
土壌収容容器へ入れられた処理土壌は、この容器内で水を噴霧して冷却され、埋め立て用の土壌等として再利用される。なお、処理土壌を冷却するために、送風機により空気を送風して空冷することも可能であり、また、自然冷却することも可能である。約450℃〜約550℃に加熱された処理土壌に対し、水を噴霧すると、その水は容易に蒸発し、過熱蒸気を生成する。生成された過熱蒸気は、その温度にもよるが、第1あるいは第2の加熱装置10、20へ供給し、利用することが可能である。なお、第3の加熱装置30へは、生成される過熱蒸気の温度が第3温度より低くなるので、ガス化処理装置の熱効率を考慮すると、供給することは難しい。
【0049】
ここで、図2に示す装置断面図を参照して、加熱装置を詳細に説明する。なお、第1〜第3の加熱装置10、20、30はいずれも同じ構成であるので、第1の加熱装置10として説明する。第1の加熱装置10は、上記の土壌受入口11、土壌排出口12、加熱容器13、チューブ14、燃焼手段、動力手段18から構成されている。ただし、第3の加熱装置30のみ、難分解性有機化合物が分解されてできた分解ガスや、未分解の難分解性有機化合物や、シルトや粘土といった微粒子を含む分解物を排出するためのラインが設けられる。
【0050】
加熱容器13は、一方に長くされた中空円筒形の炭素鋼やステンレス鋼等から形成された鋼製容器であり、その内部に、その鋼製容器より小さい径をもつ回転可能な同じ材質からなる内管13aが挿設されている。鋼製に限らず、熱伝導率が高いアルミニウムや銅等から形成された容器を用いることも可能であるが、材料コストを考慮すると、鋼製が好ましい。内管13aの内壁には、螺旋状に形成された内側に向けて突出する螺旋板13bが配設されている。加熱容器13は、容器の長手方向を水平方向にして設置されるため、容器内に鋼製の球体やセラミックボール等の球状物13cを配置し、その上に内管13aを設置することにより、内管13aのみを回転させることが可能となる。なお、これは一例であるので、本発明はこの構成に限定されるものではない。
【0051】
加熱容器13の一端には、蒸気ライン15が接続される蒸気土壌混合ノズル16が設けられ、その蒸気土壌混合ノズル16に、土壌受入口11が設けられている。土壌受入口11は、フランジ接続することができるようにされていて、ホッパーを接続することができる。加熱容器13の他端側に、土壌排出口12が設けられ、第2の加熱装置20の土壌受入口21とフランジ接続することができるようにされている。
【0052】
蒸気土壌混合ノズル16は、図2に示すように水平であってもよいが、加熱容器13側が下方となるように傾斜が設けられ、土壌受入口11から投入された土壌がスムーズに加熱容器13内に入れられるようにすることもできる。蒸気土壌混合ノズル16には、このノズルに連続して、土壌を内管13a内へ案内するためのガイド17が配設されている。例えば、ガイド17は、円管をその長さ方向に半分に切断し、円弧形にしたものを用いることができる。
【0053】
内管13aの内壁には螺旋板13bが設けられているため、内管13aの回転により土壌受入口11の側から土壌排出口12の側へ向け、螺旋板13bに沿って土壌が移動される。このとき、土壌は、螺旋板13bにより撹拌される。内管13aは、土壌排出口12の側に、土壌排出口12から土壌が適切に排出されるように複数の開口13dが形成されており、その末端が閉鎖され、モータ等の動力手段18と接続されている。このため、動力手段18へは土壌が入り込むことはなく、複数の開口13dを通り、土壌排出口12へ排出される。
【0054】
螺旋板13bは、螺旋状に連続する1枚の板から構成され、内管13aの内壁から突出するように溶接する等して設けられる。図2の断面図では、螺旋板13bが、加熱容器13の長手方向に一定間隔で配列する板として示されており、その板間には何も設けられていないが、図3に示すように、その板間をつなぐ棒状あるいは板状の土壌撹拌部材19を設けることができる。土壌撹拌部材19は、内管13aが回転することにより、その板間に介在する土壌と衝突し、その土壌を内管13aの径方向へ移動させることにより強制的に撹拌し、土壌をより効率的に均一に加熱することができる。なお、土壌撹拌部材19としては、螺旋板13bの表面から突出する複数の突起としてもよいが、内管13aの回転により土壌と直接接触して強い力を受けるため、破損しにくい板間をつなぐ棒状あるいは板状のものとして構成することが好ましい。また、板状のものである場合、これと衝突する土壌が後方へスムーズに送られるように、回転方向に対し、その面が傾斜するように配設されることが好ましい。
【0055】
再び図2を参照して、加熱容器13の外周に巻かれるチューブ14および燃焼手段は、ラジエントチューブバーナーとすることができる。チューブ14は、加熱容器13の外壁との接触面積を増加させるべく、その断面が略矩形とされる。なお、図1および図5ではチューブ14が巻かれていることが明確になるように巻き数が少なくなっているが、チューブ14は、図2に示すように、隣り合うチューブの間隔が出来るだけ狭くなるように巻くことができる。燃焼手段は、図示していないが、チューブ14の一端に設けられ、噴射ノズルと点火プラグとを備える。チューブ14内は、噴射ノズルから噴射される燃料を燃焼させることにより発生する高温の排ガスが流れる。この排ガスは、チューブ14内を流れる間に、加熱容器13の壁面、内管13aの壁面を通して、内管13aの内部の土壌に伝えられる。また、その熱は、内管13aに設けられる螺旋板13bにも伝えられるので、螺旋板13bにより土壌が撹拌および移動される間、常時土壌に熱が与えられ、効率良く加熱することができる。
【0056】
本発明では、このラジエントチューブバーナーを用いることで、燃料として重油や都市ガス等を使用するものの、その熱効率が非常に良いことから、電気ヒータに比較してコストを約1/3に抑制することができる。上記のような加熱容器13を用い、土壌を効率良く加熱ことができるので、その加熱容器13の径を大きくとることができ、同じ加熱時間であっても汚染土壌の処理量を増加させることが可能となる。
【0057】
また、このような構成の加熱装置を、本発明では3つ直列に接続し、各加熱装置における温度勾配を小さくし、ゆるやかに加熱していくことで、装置全体としての加熱時間を短縮することができ、その結果、エネルギー消費量を削減することができる。そして、第1および第2の加熱装置10、20は、土壌に含まれる難分解性有機化合物の濃度や種類によらず、土壌を第1温度および第2温度まで加熱し、第3の加熱装置30において、その濃度や種類に応じて加熱温度や加熱時間を細かく調整することができるので、細かい制御が可能となる。なお、加熱装置を直列に4つ以上設けることにより、さらに細かい制御を実現することができるが、3つの場合に比較して加熱時間が大きく短縮されることはなく、このため、エネルギー消費量が大きく削減されることもない割合に、加熱装置が追加されることによる装置コストが増加し、設置場所が別途必要となることから、3つの加熱装置で構成されることが好ましい。
【0058】
第1の加熱装置10、第2の加熱装置20、第3の加熱装置30は、蒸気ラインを介して図4に示す過熱蒸気生成装置に接続され、過熱蒸気生成装置から常圧で、各温度の過熱蒸気を受け入れることができる。過熱蒸気は、土壌の含水比が低い場合やダイオキシン類の濃度が高い場合等、ダイオキシン類との反応に必要とされる蒸気量を確保できないときや、処理時間を短くしたいときに供給することができる。
【0059】
図4に示す過熱蒸気生成装置は、水を貯留する貯水槽としての貯水タンク40と、水を蒸発させ、蒸気を発生させる蒸気発生手段としてのボイラ41と、貯水タンク40からボイラ41へ水を給水する給水手段としての給水ポンプ42と、ボイラ41で発生した蒸気を加熱して過熱蒸気を生成する蒸気加熱手段としての蒸気加熱機43とから構成される。
【0060】
貯水タンク40は、所定量の水を収容することができるFRPや炭素鋼等から作製された所定容量の容器とされ、給水ポンプ42は、遠心ポンプ、斜流ポンプ、軸流ポンプ、往復ポンプ等を使用することができる。また、ボイラ41は、バーナーや電気ヒータを使用して水を加熱し、蒸発させることにより蒸気を発生させるものを採用することができる。上述したチューブと燃焼手段とから構成されるラジエントチューブバーナーを採用することも可能である。
【0061】
蒸気加熱機43は、上記のバーナーを使用するもののほか、電磁誘導加熱によるものであってもよい。電磁誘導加熱は、コイルに強い電流を流して強力な磁場を発生させ、その上に電気を通しやすい鉄やステンレス鋼等の金属を置き、電磁誘導により渦電流を発生させ、その抵抗により金属が発熱するという原理を利用した加熱方法である。したがって、この電磁誘導加熱を利用した蒸気加熱機としては、鉄またはステンレス鋼等で作製された円筒管の外周に導線を巻いたものを用いることができる。
【0062】
なお、ボイラ41から蒸気加熱機43への配管および蒸気加熱機43から第1の加熱装置10、第2の加熱装置20、第3の加熱装置30への配管は、内部を流れる蒸気および過熱蒸気の温度が低下しないように断熱材が巻かれる。
【0063】
図5は、上述したガス化処理装置を備える土壌処理システムの構成を例示した図である。この土壌処理システムは、第1の加熱装置10と第2の加熱装置20と第3の加熱装置30とから構成されるガス化処理装置に加えて、上述した分級装置としてのふるい50とホッパー51と土壌収容容器52を備えている。また、第3の加熱装置30から排出された、上述した低分子からなる分解ガス、未分解の難分解性有機化合物および未反応の過熱蒸気を受け入れ、それらを、第3の加熱装置30で加熱する温度より高い温度に加熱し、必要に応じて過熱蒸気および空気を受け入れて未分解の難分解性有機化合物を分解し、また、分解ガス中の一酸化炭素を酸化させ、二酸化炭素にする反応装置53をさらに備えている。
【0064】
本発明のガス化処理装置の各段において約20分ずつ、約200℃、約400℃、約600℃で加熱すると、第3の加熱装置30から排出される浄化土壌に含まれるダイオキシン類の濃度を、約1〜約10pg−TEQ/gにまで低下させることができる。したがって、土壌環境基準の基準値(1000pg−TEQ/g以下)、ダイオキシン類の底質環境基準値(150pg−TEQ/g以下)を充分に満たすものである。ダイオキシン類の濃度を約1〜約10pg−TEQ/gにまで低下させることを要求されなければ、さらに処理時間を短縮することが可能となる。
【0065】
一方、処理時間を短縮することにより、未分解のダイオキシン類が増加することとなる。ダイオキシン類は、光化学オキシダントによる健康被害の要因の1つで、大気汚染物質であり、そのまま大気中へ放散することはできない。このため、反応装置53を設け、未分解のダイオキシン類を分解し、大気へ放出できるようにすることができる。
【0066】
反応装置53は、第3の加熱装置30から排出されたガスを過熱蒸気とともに約900〜約1200℃の温度に加熱する。このため、反応装置53には、円筒管内に電気ヒータを備えるものや、円筒管の外周に導線を巻いた電磁誘導加熱装置等を用いることができる。
【0067】
反応装置53には、ガス化処理装置で発生する難分解性有機化合物および過熱蒸気が供給されるほか、必要に応じて追加の過熱蒸気や空気が供給される。反応装置53内では、これらを上記の温度に加熱し、難分解性有機化合物を過熱蒸気と反応させ、加水分解、熱分解により水素、一酸化炭素、二酸化炭素、塩化水素等まで分解する。また、空気を供給することにより水素や一酸化炭素を酸化させ、蒸気や二酸化炭素を生成させる。
【0068】
第3の加熱装置30から反応装置53へ送られるガスには、シルトや粘土等の微粒子も含まれる場合がある。したがって、反応装置53から排出されるものには、上記の未反応の一酸化炭素、二酸化炭素、蒸気、塩化水素、微粒子が含まれる。また、その温度も、約900〜約1200℃といった高温である。このため、そのまま大気中へ放出することはできない。
【0069】
そこで、反応装置53から排出されるこれらのものを含む分解物を適切に処理した後、大気放散するようにする。図5では、反応装置53のほか、バブリングタンク54、凝集槽55、排水処理装置56、吸着装置としての活性炭塔57、ブロワ58が設けられている。
【0070】
バブリングタンク54は、反応装置53を出た低分子とされた未反応の一酸化炭素、二酸化炭素、塩化水素、蒸気等の分解ガス、粘土やシルト、含まれる場合には重金属等を急冷し、ガス成分を分離する。バブリングタンク54は、アルカリ性の水溶液を収容していて、分解ガスを、水溶液内を通過させることによりアルカリと反応させ、塩化水素中の塩素といったハロゲン、二酸化炭素の一部、含有されている場合にはSO等を回収・除去する。アルカリとしては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウムを用いることができる。バブリングタンク54では、アルカリと反応しなかった二酸化炭素、反応装置53で反応に使用されなかった空気が、アルカリ水溶液中に気泡となって上部へと移動し、ブロワ58によって吸引されて活性炭塔57を通過した後に大気中へ放散される。
【0071】
活性炭塔57は、バブリングタンク54において気泡が破裂した際、その気泡内に存在し、ブロワ58により吸引される微細な粉塵を吸着除去する。これにより、大気中へこれらの微細な粉塵が放散されるのを防止することができる。ブロワ58は、吸引することにより、ガス化処理装置、反応装置53、バブリングタンク54、活性炭塔57内を負圧に保持し、それらの装置が万一損傷したとしても、汚染物質が大気中へ放出されないようにしている。
【0072】
凝集槽55は、バブリングタンク54内の液体の一部を抜き取り、その液体中に浮遊する固形物を凝集沈殿させる。凝集槽55内には、凝集剤が添加されており、液体がバブリングタンク54から抜き出されると、液体中に浮遊する固形物が凝集剤により凝集して大きな塊となって沈殿する。沈殿物は、脱水後、新たに処理される汚染土壌とともにガス化処理装置へと送られる。そして再び加熱処理が行われ、沈殿物に含まれた重金属や、粘土およびシルトに付着したダイオキシン類を再処理する。
【0073】
凝集槽55の上澄み液は、排水処理された後、バブリングタンク54の補給水として使用されたり、洗浄水として使用される。その使用量が少なく水が余る場合には、水質分析を行った後、河川等に排水される。その反対に、水が不足する場合には補給される。排水処理は、排水処理装置56により行われる。この排水処理装置56は、砂ろ過槽と、繊維ろ過槽と、活性炭槽と、再利用タンクとを含むことができる。排水中の浮遊物は、その大きさに応じて、比較的大きいものは砂ろ過槽により、それより小さいものは糸くず状の繊維が収容された繊維ろ過槽により取り除かれ、最後に活性炭槽で微細物が吸着除去された後、その排水は、再利用のために再利用タンクへ収容される。
【0074】
これまで本発明のガス化処理装置および土壌処理システムについて図面に示した実施形態を参照しながら詳細に説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態や、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0075】
10…第1の加熱装置、11…土壌受入口、12…土壌排出口、13…加熱容器、13a…内管、13b…螺旋板、13c…球状物、13d…開口、14…チューブ、15…蒸気ライン、16…蒸気土壌混合ノズル、17…ガイド、18…動力手段、19…土壌撹拌部材、20…第2の加熱装置、21…土壌受入口、22…土壌排出口、23…加熱容器、24…チューブ、25…蒸気ライン、26…蒸気土壌混合ノズル、30…第3の加熱装置、31…土壌受入口、32…土壌排出口、33…加熱容器、34…チューブ、35…蒸気ライン、36…蒸気土壌混合ノズル、40…貯水タンク、41…ボイラ、42…給水ポンプ、43…蒸気加熱機、50…ふるい、51…ホッパー、52…土壌収容容器、53…反応装置、54…バブリングタンク、55…凝集槽、56…排水処理装置、57…活性炭塔、58…ブロワ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
難分解性有機化合物により汚染された土壌を浄化するために用いられるガス化処理装置であって、
前記土壌を受け入れ、回転することにより前記土壌を該土壌の受入口から排出口まで移動させる螺旋板が設けられた内管を備える加熱容器と、前記内管内に挿設され、または前記加熱容器の外周に巻かれたチューブと、前記チューブ内で燃料を燃焼させる燃焼手段とから構成される3つの加熱装置を含み、
第1の加熱装置が、前記土壌を第1温度に加熱して該土壌に含まれる水分を蒸発させ、第2の加熱装置が、前記第1の加熱装置で加熱された前記土壌を前記第1温度より高い第2温度に加熱し、第3の加熱装置が、前記第2の加熱装置で加熱された前記土壌を前記第2温度より高い第3温度に加熱して該土壌に含まれる前記難分解性有機化合物を揮発させ、蒸発した前記水分を加熱することにより生成された過熱蒸気と反応させて該難分解性有機化合物を分解することを特徴とする、ガス化処理装置。
【請求項2】
前記螺旋板は、該螺旋板間をつなぐように設けられ、前記内管の回転により、該螺旋板間に介在する前記土壌に衝突させて該土壌を撹拌するための土壌撹拌部材を備える、請求項1に記載のガス化処理装置。
【請求項3】
前記第1〜第3の加熱装置は、過熱蒸気を受け入れるための蒸気受入口を備える、請求項1または2に記載のガス化処理装置。
【請求項4】
水を貯留する貯水槽と、その水を蒸発させる蒸気発生手段と、貯水槽から蒸気発生手段へ給水する給水手段と、蒸気を加熱して過熱蒸気を生成する蒸気加熱手段とを含む過熱蒸気生成装置をさらに備える、請求項3に記載のガス化処理装置。
【請求項5】
難分解性有機化合物により汚染された土壌を浄化する土壌処理システムであって、
前記土壌を受け入れ、回転することにより前記土壌を該土壌の受入口から排出口まで移動させる螺旋板が設けられた内管を備える加熱容器と、前記内管内に挿設され、または前記加熱容器の外周に巻かれたチューブと、前記チューブ内で燃料を燃焼させる燃焼手段とから構成される3つの加熱装置を含み、第1の加熱装置が、前記土壌を第1温度に加熱して該土壌に含まれる水分を蒸発させ、第2の加熱装置が、前記第1の加熱装置で加熱された前記土壌を前記第1温度より高い第2温度に加熱し、第3の加熱装置が、前記第2の加熱装置で加熱された前記土壌を前記第2温度より高い第3温度に加熱して該土壌に含まれる前記難分解性有機化合物を揮発させ、蒸発した前記水分を加熱することにより生成された過熱蒸気と反応させて該難分解性有機化合物を分解するガス化処理装置と、
未分解の前記難分解性有機化合物をさらに加熱し、過熱蒸気と反応させて分解する反応装置とを含む、土壌処理システム。
【請求項6】
前記螺旋板は、該螺旋板間をつなぐように設けられ、前記内管の回転により、該螺旋板間に介在する前記土壌に衝突させて該土壌を撹拌するための土壌撹拌部材を備える、請求項5に記載の土壌処理システム。
【請求項7】
前記反応装置から排出される分解物を冷却するとともにガス成分を分離するバブリングタンクと、前記バブリングタンク内に残留する固形物を再加熱処理するために、前記固形物を含む液体を受け入れ、前記液体中に浮遊する前記固形物を凝集沈殿させる凝集槽と、大気放出される前記ガス成分中の粉塵を吸着除去するための吸着装置とを含む、請求項5または6に記載の土壌処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−189303(P2011−189303A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−58748(P2010−58748)
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【出願人】(000195971)西松建設株式会社 (329)
【出願人】(507270218)大旺新洋株式会社 (14)
【Fターム(参考)】