説明

ガス化炉装置

【課題】様々の炭種の石炭(微粉炭、石炭スラリを含む)や、汚泥、バイオマス燃料等を燃料として、安定して生成ガスを生成し、高いガス化効率を達成できるガス化炉装置を提供する。
【解決手段】 本発明のガス化炉装置1は、固体燃料の一部を燃焼させる部分燃焼領域10aを備え、該燃焼の燃焼熱により残余の固体燃料を加熱して生成ガスを生成させるガス化炉10と、生成ガスの一部を抽気し、これを燃焼用酸化ガスと混合して燃焼させ、該生成ガスの燃焼熱により燃焼用酸化ガスを加熱して、固体燃料の着火温度以上の高温燃焼用酸化ガスを生成する高温燃焼用酸化ガス生成手段15と、高温燃焼用酸化ガスをガス化炉の部分燃焼領域に供給する高温酸化ガス供給手段12と、固体燃料を前記ガス化炉の部分燃焼領域に供給して該固体燃料の一部を燃焼させる燃料供給手段11とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス化複合サイクル発電等において、固体燃料の一部を燃焼させ、その燃焼熱で残余の固体燃料を加熱して生成ガスを生成させるガス化炉に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、固体燃料の一部のみを燃焼させ、その燃焼熱で残余の固体燃料を加熱し、熱分解させて生成ガスを発生させるガス化炉が知られている。このようなガス化炉により生成される生成ガスは、可燃性ガスを含むので、水素ガス製造の原料として使用される場合もあるが、ガス化炉をプロセスの一部に含むガス化複合サイクル発電(IGCC)におけるガスタービンの燃料ガスとして使用されることもある(例えば、特許文献1参照)。ガス化複合サイクル発電は、高い熱効率での発電が可能であるという優れた特徴を有し、ガス化炉は、固体燃料から上記複合サイクルの燃料となる生成ガスを生成するための必要不可欠な要素を構成している。
【特許文献1】特開2000−213307号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、ガス化炉内において燃料の一部を燃焼させる際には、ガス化炉内に燃焼用空気又は酸素等(以下、「燃焼用酸化ガス」という)を供給するが、その量は燃料の一部を燃焼させる量にすぎないので、燃焼によりガス化炉内には還元性雰囲気が形成される。また、ガス化炉内には低温の燃焼用酸化ガスが流入するので、ガス化炉内の部分燃焼領域の雰囲気温度が低下し、結局、低温の還元性雰囲気が形成され、燃料の着火性が低下するので、燃焼が不安定となり消炎の虞がある。
【0004】
従来の技術においては、低温の燃焼用酸化ガスを加熱するための余分の燃料をガス化炉に供給してガス化炉内の温度を上昇させることにより上記問題に対処している。しかし、特に、揮発や熱分解しにくく、生成ガスを生成しにくい炭種や、水分含有量の多い木材チップ等のバイオマス燃料及び汚泥等を燃料として使用する場合には、燃焼用酸化ガスの供給量を増加させる必要が生じ、そのために増加した燃焼用酸化ガスを含む雰囲気全体を高温に加熱するためにさらに余分の燃料が消費されることになるので、必ずしも、ガス化効率を十分に向上できるとはいえない。
【0005】
本発明は以上の事情に鑑みてなされたもので、その目的は、様々の炭種の石炭(微粉炭、石炭スラリを含む)や、汚泥、バイオマス燃料等を燃料として、安定して生成ガスを生成し、高いガス化効率を達成できるガス化炉装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1の発明によっては、固体燃料の一部を燃焼させる部分燃焼領域を備え、該燃焼の燃焼熱により残余の固体燃料を加熱して生成ガスを生成させるガス化炉と、前記生成ガスの一部を抽気し、これを燃焼用酸化ガスと混合して燃焼させ、該生成ガスの燃焼熱により前記燃焼用酸化ガスを加熱して、前記固体燃料の着火温度以上の高温燃焼用酸化ガスを生成する高温燃焼用酸化ガス生成手段と、前記高温燃焼用酸化ガスを前記ガス化炉の部分燃焼領域に供給する高温酸化ガス供給手段と、前記固体燃料を前記ガス化炉の部分燃焼領域に供給して、該固体燃料の一部を燃焼させる燃料供給手段とを備えることを特徴とするガス化炉装置が提供される。なお、本発明は種々の固体燃料が適用可能であり、ここでいう「固体燃料」には、石炭や木材チップ等の固体状燃料のほか、汚泥、石炭スラリー等スラリー状の燃料が含まれる。また、「生成ガス」中には、固体燃料が熱分解して発生した生成ガスの他、該生成ガスが燃焼して発生する燃焼排気ガスが含まれる。
【0007】
請求項2の発明によっては、炉体底部に配設される、流動媒体からなる流動層を有し、該流動層を流動化させる流動床炉方式のガス化炉装置において、固体燃料の一部を燃焼させる部分燃焼領域を前記流動層の上側に形成し、該燃焼の燃焼熱により残余の固体燃料を加熱して生成ガスを生成させるガス化炉と、前記生成ガスの一部を抽気し、燃焼用酸化ガスと混合して燃焼させ、該生成ガスの燃焼熱により前記燃焼用酸化ガスを加熱して、前記固体燃料の着火温度以上の高温燃焼用酸化ガスを生成する高温燃焼用酸化ガス生成手段と、前記流動層に前記高温燃焼用酸化ガスを吹き込んで流動化させる散気手段と、前記固体燃料を前記流動層に供給し、該固体燃料の一部を燃焼させる燃料供給手段とを備えることを特徴とするガス化炉装置が提供される。
【0008】
前記燃料供給手段の噴出口より後流側に固体燃料を供給し、該固体燃料を熱分解させて生成ガスを更に発生させる後段燃料供給手段を更に備えていてもよい(請求項3)。
前記生成ガスから粉塵を除去する粉塵除去手段と、該粉塵除去手段により除去された粉塵を前記部分燃焼領域に噴出させる粉塵供給手段とを更に備えていてもよい(請求項4)。
【0009】
また、前記燃焼用酸化ガスは、空気であってもよく(請求項5)、酸素であってもよい(請求項6)。
前記固体燃料は、石炭であって、前記高温燃焼用酸化ガス生成手段は、前記燃焼用酸化ガス温度を、800℃以上に加熱することとしてもよい(請求項7)。
【発明の効果】
【0010】
請求項1のガス化炉装置は、燃料供給手段から供給される固体燃料の一部を燃焼させ、その燃焼熱により残余の固体燃料を熱分解させて生成ガスを生成させるガス化炉であり、その技術的特徴は、2つある。すなわち、第1の技術的特徴は、固体燃料の燃焼に使用する燃焼用酸化ガスを固体燃料の着火温度以上に加熱した高温燃焼用酸化ガスとして供給することである。また、第2の技術的特徴は、高温燃焼用酸化ガスが、高温の生成ガスの一部を抽気して、燃焼用酸化ガスと混合、燃焼させ、該燃焼の燃焼熱により、燃焼により消費されなかった燃焼用酸化ガスを加熱することにより生成されることである。
【0011】
上記、請求項1の発明の技術的特徴により以下の5点の効果が得られる。
第1に、固体燃料の着火温度以上の高温燃焼用酸化ガスを生成するので、ガス化炉内雰囲気が高温となり、還元性雰囲気であっても安定した燃焼を維持することができる。
第2に、高温の燃焼用酸化ガスの供給により燃焼領域に高温雰囲気が形成され、固体燃料の熱分解が促進されて、着火性が向上するので、熱分解しにくく、生成ガスを生成しにくい炭種や、水分含有量の多い木材チップ等のバイオマス燃料及び汚泥等を燃料として使用する場合にも、燃焼用空気等の供給量を増加させる必要がなく、燃焼用空気等を含む雰囲気全体を高温に加熱するための余分の燃料が不要となり、そのためにガス化効率を向上させることができる。
【0012】
第3に、上記「固体燃料の熱分解が促進される」とは、言い換えれば「熱分解により発生する生成ガス量が増加する」ことであるから、同じ量の燃料から得られる生成ガス量が増加する、すなわちガス化効率が増加する。
第4に、高温燃焼用酸化ガスを供給するので、補助燃料や補助バーナを使用せず含水率の高い(例えば、80%)の汚泥等のみを燃料として生成ガスを生成させることができる。すなわち、従来技術によってはスラリ状の汚泥を燃料として使用する場合には、多量の水分を蒸発させるため、燃料の部分酸化量を増やしたり、オイル混焼を行うか、或いは補助バーナ等を使用したりしているが、本発明によっては高温燃焼用酸化ガスが供給されてその熱により水分を蒸発させられるため、これらの補助装置等を必要とせず、含水率の高い汚泥等のみを燃料として使用し、しかもその部分酸化量を増やすことなくガス化することができる。
【0013】
第5に、高温燃焼用酸化ガスの生成方法が、生成ガスの一部を抽気して燃焼させることであるので、大型・高温の熱交換器等を使用せず、簡単な装置で容易に高温燃焼用酸化ガスを生成できる。
請求項2の発明は、流動床式のガス化炉において、請求項1の発明と同様、(1)燃焼用酸化ガスとして固体燃料の着火温度以上の高温燃焼用酸化ガスを供給すること、(2)高温燃焼用酸化ガスは、生成ガスを一部抽気して燃焼用酸化ガスと混合、燃焼させ、その燃焼熱により燃焼用酸化ガスを加熱することにより生成すること、を技術的特徴とするものである。従って、その効果は、流動床方式のガス化炉において、請求項1と同様の5つの効果を奏することができることにある。
【0014】
請求項3の発明によっては、燃料燃料供給手段の噴出口より後流側に固体燃料を供給し、該固体燃料を熱分解させて生成ガスを更に発生させる後段燃料供給手段を更に備えることとしたので、前段の燃料供給手段からの燃料の燃焼により形成される火炎の熱を有効に利用して後段燃料供給手段から供給される固体燃料を熱分解して生成ガスを生成させ、ガス化効率を更に高めることができる。
【0015】
請求項4の発明によっては、生成ガスから粉塵を除去する粉塵除去手段と、該粉塵除去手段により除去された粉塵を部分燃焼領域に噴出させる粉塵供給手段とを更に備えたので、生成ガス中の粉塵が除去され、ガス化炉装置の後流に接続してガス化炉装置からの生成ガスを燃焼等させるガスタービン装置等において該粉塵による磨耗や粉塵付着による閉塞を生じる虞がない。また、粉塵に含まれるチャーをガス化炉に戻してガス化させることができるので、ガス化効率を向上させることができる。
【0016】
高温燃焼用酸化ガスとしては、適宜濃度の酸素を含有するガスであれば様々のガスが使用できるが、空気を使用して供給コストを低減することも可能であり(請求項5)、また、酸素を使用して生成ガス中に窒素が含まれることを防止して、生成ガスの単位体積(又は単位重量)あたりの発熱量を増加させることもできる(請求項6)。
また、本発明の固体燃料としては、汚泥、バイオマス燃料をはじめとする様々の燃料が使用可能であるが、固体燃料が石炭の場合、石炭の着火性は炭種により異なるが、種々の炭種を考慮しても高温燃焼用酸化ガス温度を800℃以上とすることにより(請求項7)、高い着火性が確保され、高いガス化効率を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明を実施するための形態を、図面を参照しつつ種々実施例に基づき説明する。
図1に示す本発明の第1の実施例にかかるガス化炉装置1は、例えば、IGCCの一部として構成され、石炭スラリFLを燃料として生成ガスを生成させ、ガスタービン発電設備の燃料として、該生成ガスを供給するものである。
ガス化炉装置1は、石炭スラリ(固体燃料)FLの一部を乾燥(水分蒸発)させて燃焼させる部分燃焼領域10aを備え、該燃焼の燃焼熱により残余の石炭スラリFLを乾燥、加熱して生成ガスGを生成させるガス化炉10と、ガス化炉10から排出される生成ガスGの一部を抽気して、燃焼用酸化ガスBAに混合、燃焼させて、その燃焼熱により燃焼により消費されなかった燃焼用酸化ガスを石炭(乾燥石炭)の着火温度(例えば、800℃)以上の高温燃焼用空気BAH(高温燃焼用酸化ガス)とする燃焼器(高温燃焼用酸化ガス生成手段)15と、抽気されなかった残余の生成ガスの温度を熱交換によりガスタービン燃料として適切な温度にまで低下させるとともに水蒸気を発生させる蒸気発生器21と、蒸気発生器21の下側に接続する溶融灰のホッパ31等を備える。
【0018】
ガス化炉10は、両端が半球状の蓋部及び底部により閉じた縦型円筒形状を有し、上部の蓋部には、図示しないスラリ貯層から供給される石炭スラリFLを部分燃焼領域10aに供給して乾燥させ、その一部を燃焼させて火炎Fを形成させる燃料供給管(燃料供給手段)11、高温燃焼用空気BAHを火炎F近傍に噴出させる高温空気ノズル(高温酸化ガス供給手段)12等を備え、またガス化炉10底部近傍には、蒸気発生器21の生成ガス入口21aに配管を介して接続する生成ガス排気口10c、及び燃焼器15の吸引側配管15cに接続する生成ガス抽気口10dを備える。
【0019】
なお、ガス化炉10内部は、燃料供給管11近傍の、石炭スラリFLの一部を乾燥、燃焼させて火炎Fを形成させる部分燃焼領域10aと、部分燃焼領域10aの下側(生成ガスの流れとしては後流)の空間であって、火炎Fの輻射熱および燃焼排気ガスの熱により残余の石炭スラリFLを乾燥、熱分解させて生成ガスGを生成するガス生成領域10bとに区分される。
【0020】
また、ガス化炉10の寸法は特に限定するものではないが、部分燃焼による火炎Fの形成を妨げないよう部分領域10aの径や高さを設定するとともに、生成ガスGがガス生成領域10b内を下降して流れる間に生成ガスGに同伴する石炭スラリが総て乾燥、熱分解して生成ガスGを生成するよう、生成ガスGの下降速度と熱分解の反応時間等とを考慮してガス生成領域の高さが設定され、全体としてガス化炉10の径と高さとが設定される。また、生成ガス排気口10cを底部に配置するのは、ガス生成領域10bでの生成ガスGの下降時間を十分に確保するためである。
【0021】
ガス化炉10に開口する燃料供給管11は、部分燃焼領域10aを臨むようにガス化炉10蓋部に取りつけられており、図示しないスラリ供給貯層から供給される石炭スラリFLを燃焼領域10aに供給する機能を有する。燃料供給管11の形状、大きさ、材質、供給方向等については、特に制限はないが、石炭スラリFLを部分燃焼領域10aの所望の位置に閉塞なく供給できる様々の形式のものが採用できる。また、乾燥した石炭に着火することのできる図示しない着火装置も備えることは言うまでもなく、必要の応じ、スラッギング防止装置等も設置できる。
【0022】
ガス化炉10に開口する高温空気ノズル12は、ガス化炉10蓋部に開口し、高温燃焼用空気BAHを適宜方向に適宜強さの旋回を与えて部分燃焼領域10aに噴出させるもので、該噴出機能を有する様々の形式が採用できる。
燃焼器15は、その機構を図2に示すように、エジェクタ15bと該エジェクタ15bを内蔵する容器15a等から構成され、該容器15a内で生成された高温燃焼用空気BAHを排出して高温空気ノズル12に供給する配管15dを備える。エジェクタ15bは、給気装置(図示せず)から加圧されて供給される燃焼用空気BAを作動流体として生成ガスGの一部を生成ガス抽気口10d、及びエジェクタ側の吸引側配管10cを通して、ガス化炉10から吸引抽気するもので、エジェクタ15aの出口15e近傍には図示しない着火装置を備える。
【0023】
蒸気発生器21は、ガス化炉10の下側に配設され、ガス化炉の生成ガス排気口10cと接続する生成ガス流入口21aから生成ガスGを流入させ、蒸気発生器内を流れる冷却水を加熱して蒸気を発生させた後、脱硫装置22へ接続する生成ガス出口21bから排出させる機能を有する。
脱硫装置22は、図示しない集塵装置等を経てガスタービン燃焼室(図示せず)に接続し、脱硫装置22内で生成ガスから硫黄酸化物等を除去して、集塵装置等を介してガスタービン燃焼室に燃料ガスとして供給する機能を有する。
【0024】
ホッパ31は、その上部に蒸気発生器21下部に開口するのスラグ入口31aを有し、該入口31aを通して、ガス化炉10内で燃料の燃焼、ガス化に伴なって発生しガス化炉10及び蒸気発生器21内を通過して落下する溶融スラグMSを受け入れ収納する機能を有する。
次に本ガス化炉装置1の作用を説明する。
【0025】
ガス化炉10の部分燃焼領域10aには、燃料供給管11から石炭スラリFLが供給される。該石炭スラリFLは、高温燃焼用酸化ガスBAHにより加熱されて水分が蒸発し、該石炭スラリの一部が乾燥、燃焼して火炎Fを形成する。火炎F周囲には、高温空気ノズル12から噴出する高温燃焼用空気BAHが噴出供給されるが、その量は燃料である石炭スラリFLを全量燃焼させるのに必要な量に比較して少ないので、石炭スラリFLの一部が燃焼するにすぎない。また、火炎F周囲は、該空気BAH量が少ないので還元性雰囲気となっているが、着火点以上の高温が維持されているので、消炎の虞なく安定な燃焼が維持される。また、残余の石炭スラリFLは高温に熱せられて高い効率で分解し、生成ガス(H2、CO、CH4、C22等)Gを発生する。生成ガスGは、燃焼そのものにより発生する燃焼排気ガスとともに、部分燃焼領域10aからガス生成領域10bに向って下降して流れる。なお、この下降流は、脱硫装置22の更に後流側に設置される図示しないブロワの吸気作用により発生するもので、その流量や圧力は該ブロワ等により適宜調整される。生成ガスG中には、未反応の石炭スラリFL(該石炭スラリが乾燥したものを含む)も含まれるが、ガス生成領域10b内を下降する間に該未反応の石炭スラリFLが火炎Fの輻射熱や高温の生成ガスGの熱により乾燥、熱分解されて生成ガスGを生成する。前述のように、ガス生成領域10bの高さは、生成ガスGがガス生成領域10b内に、かかる反応を完結させるのに必要な時間滞留した後に生成ガス排気口10cからガス化炉10外へ排出されるように設定されるので、燃料ノズル11から供給された石炭スラリFLの殆どすべてが生成ガスGとなって生成ガス排気口10cから排出される。また、燃焼及び熱分解により発生し、高温のため溶融状態で生成ガスに同伴する溶融灰は、溶融灰スラグMSとなってガス化炉10内を下へ移動し、蒸気発生器21を経て、ホッパ31に収容される。
【0026】
高温の生成ガスGの一部は、生成ガス抽気口10dから燃焼器15のエアエジェクタ15bの吸引作用により抽気され、燃焼用空気BAと混合されて、燃焼器15内のエアエジェクタ出口15e近傍において燃焼する。該燃焼の燃焼熱により燃焼により消費されなかった残余の燃焼用空気BAを加熱して高温燃焼用空気BAH(例えば、800〜900℃)を生成する。このとき、吸引抽気される生成ガスGの量は、燃焼用酸化ガスBAを該生成ガスGの燃焼により加熱して所望の温度の高温燃焼用酸化ガスBAHが得られるよう適宜設定する。なお、この際の燃焼用酸化ガスBAの量は、少なくとも生成ガスの燃焼に必要な量にガス化炉10内での石炭スラリFLの燃焼に必要な量を加えたものである。なお、高温空気ノズル12に供給される高温燃焼用空気BAHは、実際には、生成ガスGの燃焼による排気ガスも含む。しかし、もともと高温燃焼用空気BAHの生成のために必要な生成ガスGの量が少なく、従って、該生成ガスの燃焼のために消費される酸素量、上記排気ガス量も少ない。そのため、高温燃焼用空気BAH中の酸素濃度は、若干低下してはいるものの極端な低下はなく、ガス化炉10内における部分燃焼に悪影響はない。
【0027】
該高温燃焼用空気BAHは、前述のように高温空気ノズル12からガス化炉10の部分燃焼領域10aに形成されている火炎F近傍へ噴出供給される。
抽気されなかった残余の生成ガスGは、生成ガス排気口10cを介して蒸気発生器21へ流入し、蒸気発生気21の冷却水を加熱して水蒸気を発生させるとともに自らの温度は所定の温度まで低下し、脱硫装置22において硫黄酸化物等を除去し、さらに図示しない集塵器により粉塵等を除去してガスタービンエンジン燃焼室(図示せず)へ燃料として供給され、発電等を行う。さらに、蒸気発生器21において発生した水蒸気は、図示しない蒸気タービンに送られ、蒸気タービンを回転させて発電等を行う。
【0028】
以上で第1の実施例にかかるガス化炉装置1の説明を終了するが、第1実施例にかかるガス化炉装置には様々の態様があることはいうまでもない。以下にかかる別態様について説明する。
第1実施例においては、生成ガスGを蒸気発生器21から直接脱硫装置22へ供給していたが、図3に示すように蒸気発生器21の生成ガス出口21bと脱硫装置22との間にサイクロン(粉塵除去手段)32を介装して、生成ガスG中の粉塵(飛灰、チャ−を含む)を除去して該ガスGを脱硫装置22へ供給するとともに、除去された粉塵は、高温空気ノズル12近傍に設置された粉塵ノズル(粉塵供給手段)33を介してガス化炉10内に戻す構造としてもよい。生成ガスG中に含まれる粉塵をサイクロン32により除去して、脱硫装置22や更にその後流に接続されるガスタービン装置等における粉塵による閉塞や磨耗を防止するとともに、除去された粉塵は、ガス化炉10内に戻して燃焼、ガス化または溶融処理でき、特にチャ−についてはガス化炉10内でガス化させ、ガス化効率をさらに向上できる。
【0029】
第1実施例においては燃料供給管11を部分燃焼領域10aを臨むようにのみ設置したが、図4に示すように該燃料供給管11に加えて、ガス生成領域10bを臨むように後段燃料供給管(後段燃料供給手段)41を設置してもよい。この場合には、燃料供給管11から供給される石炭スラリFLの一部により火炎が形成され、ガス化炉10内が高温になる。一方、該後段燃料供給管41から供給される石炭スラリFLは、上記火炎からの輻射熱等により加熱されるが、燃焼用の空気が供給されず、後段燃料供給管41近傍には強い還元性雰囲気が形成され、石炭スラリFLの殆どは燃焼せず、乾燥、熱分解して生成ガスGを生成する。
【0030】
また、第1実施例においては、燃焼用酸化ガスとしては空気を使用したが、これに代えて酸素を使用してもよい。酸素を使用した場合には、空気を使用した場合と異なり生成ガス中に窒素が存在しないので、生成ガスの単位体積(又は単位重量)あたりの発熱量が増加する。
第1実施例においては、生成ガスGを抽気するため、燃焼器15内にエアエジェクタ15bを設置したが、例えば、高温で使用できるブロワの吸入側を生成ガス抽気口10dに接続し、吐出側をエアエジェクタを内蔵しない燃焼器に接続してもよい。ブロワの吸入作用により生成ガスGの一部をガス化炉から抽気して、燃焼器に供給し、別途供給される燃焼用空気BAと混合、燃焼させて高温燃焼用空気BAHを生成することができる。なお、この場合には、高温燃焼用酸化ガス生成手段には、燃焼器等の他、ブロワが含まれることになる。
【0031】
第1実施例においては、生成ガスGの温度を適切な温度に冷却するために蒸気発生器を使用したが、生成ガスの用途により、高温の生成ガスが必要な場合には、蒸気発生器を省略し、直接高温の生成ガスを供給することとしてもよい。
さらに、第1実施例においては、固体燃料としては石炭スラリFLを使用したが、微粉炭やより粒子の粗い粒状の石炭や木材チップ等のバイオマス燃料、或いは、例えば含水率80%程度の汚泥を使用することもできる。特に汚泥を使用した場合には、燃焼、或いは熱分解による生成ガス生成の前に、汚泥に含有される水分を蒸発させることが必要になるが、本発明によっては、ガス化炉内に高温燃焼用空気BAHを供給するので、第1実施例の石炭スラリの乾燥、部分燃焼及び熱分解による生成ガス生成プロセスと同様、補助燃料や補助バーナを使用せずに、汚泥のみを燃料として該水分を蒸発させ、生成ガスを生成させることができる。
【0032】
第1実施例においては、本ガス化炉は、ガス化複合サイクル発電への燃料供給を目的として使用したが、水素ガス、ジメチルエーテル或いはメタノール等の燃料生産システム、或いはガス化燃料電池発電システム(IGFC)等への燃料供給も考えられる。
次に本発明の第2の実施例にかかるガス化炉装置50を図5を参照しつつ説明する。
本ガス化炉装置50は、流動床炉をガス化炉51として本発明を適用する例であり、ガス化炉51の形状、構造等及びそれに伴なう生成ガスの流れ等を除く、基本的なシステム構成、機器等及びその作用効果については、第1実施例と同様である。
【0033】
ガス化炉装置50は、固体燃料である石炭、例えば石炭スラリFLを燃料とするガス化炉設備であるが、底部近傍に流動媒体である砂の流動層が形成され、流動層を流動化させながら石炭スラリFLを乾燥(水分蒸発)させ、その一部を燃焼させるとともに残余の石炭スラリFLを、乾燥、熱分解させてガス化するガス化炉51と、第1の実施例の燃焼器15と同様の構造、機能を有する燃焼器(高温燃焼用酸化ガス生成手段)59と蒸気発生器61等を備える。
【0034】
ガス化炉51は、上部に膨らみを有し、上下両端が閉じられた円筒状構造物である。底部近傍に炉床52が配設され、ガス化炉51を炉床52上側の上部空間53と下側の空気室57とに区画している。上部空間53は、砂(流動媒体)54aが適宜高さまで充填される流動層54、流動化した石炭(石炭スラリが乾燥したもの)の一部が燃焼する部分燃焼領域55と、更にその上の炉頂近傍のリダクタ56が炉床52から上に向ってこの順序で形成される。部分燃焼領域55とリダクタ56との境界近傍のガス化炉51壁面には石炭スラリFLをガス化炉51内の流動層54の上に定量的に供給する燃料供給管58が開口している。燃料供給管58は、図示しない着火装置を備える。
【0035】
また、ガス化炉51の炉頂近傍には、ガス化炉51内で生成する生成ガスGの一部を抽気する生成ガス抽気口56bと、抽気されなかった残余の生成ガスGを排出する生成ガス排気口56aが配設され、抽気口56bは燃焼器59に、排気口56aは蒸気発生器61にそれぞれ配管を介して接続している。
一方、ガス化炉51下部の空気室57内には、燃焼器59から供給される高温燃焼用空気BAHを、空気室57に噴出させる高温空気ノズル57aを備える。
【0036】
前述の炉床52には、炉床52を上下に貫通する孔部である、多数の散気ノズル(散気手段)52aが開孔しており、前述の高温空気ノズル57aから空気室57へ流入した高温燃焼用空気BAHを流動層54内へ均一に吹き込むことができる構造となっている。なお、該炉床52および散気ノズル52aは、それぞれ流動床炉において公知のものである。
【0037】
燃焼器59は、第1実施例の燃焼器15と同様の構造、機能を有するので説明を省略する。蒸気発生器61及び脱硫装置62の機能等も、第1実施例のそれらと同様である。
次に本ガス化炉装置50の作用について説明する。
高温燃焼用空気BAHが高温空気ノズル57aを介して空気室57に流入し、炉床52の多数の散気ノズル52aを通して流動層54内に均一に噴出し、流動媒体(砂)54aをまきあげて流動層54を流動化させる。この状態で燃料供給管58から流動層54の上に石炭スラリFLが供給される。該石炭スラリFL中の水分が、高温燃焼用空気BAHにより加熱されてただちに蒸発し、燃料FL自身も水分蒸発により乾燥するとともに、燃料FLの一部が高温燃焼用空気BAHにより加熱され着火温度まで加熱されて着火し、安定な燃焼火炎Fを形成する。このとき、残余の未燃石炭スラリ(及びその乾燥物)は、燃焼ガスとともにリダクタ56内を上昇しつつ火炎Fからの輻射熱及び燃焼排気ガスを含む生成ガスGにより加熱されて高い効率で熱分解して生成ガスGを生成する。
【0038】
生成ガスGの一部が、生成ガス抽気口56bから燃焼器59の作用により吸引抽気されること、抽気された該生成ガスGの燃焼により燃焼用空気BAが加熱されて高温燃焼用空気BAHが生成され、該空気BAHが高温空気ノズル57aからガス化炉51に供給されること、抽気されなかった残余の生成ガスGは、生成ガス排気口56aから排出されて蒸気発生器61において水蒸気を発生させた上、脱硫装置62において硫黄酸化物が除去され、集塵装置等(図示せず)を介してガスタービン燃焼室(図示せず)などへ供給されることは、第1実施例と同様である。
【0039】
なお、第2実施例についても第1実施例に記載した様々の別態様を適宜適用することができることはいうまでもない。
また、ここで説明した実施形態は一つの例であって、本発明はこれのみに限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲において変更を加えうることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の第1実施例にかかるガス化炉装置の構成を示すシステム図である。
【図2】図1に示された燃焼器の概略を示す説明図である。
【図3】本発明の第1実施例の別態様のガス化炉装置の構成を示すシステム図である。
【図4】本発明の第1実施例の更に又別の態様のガス化炉装置の構成を示すシステム図である。
【図5】本発明の第2実施例にかかるガス化炉装置の構成を示すシステム図である。
【符号の説明】
【0041】
1、50 ガス化炉装置
10、51 ガス化炉
10a、55 部分燃焼領域
10d、56b 生成ガス抽気口
11、58 燃料供給管(燃料供給手段)
12、57a 高温空気ノズル(高温燃焼用酸化ガス供給手段)
15、59 燃焼器(高温燃焼用酸化ガス生成手段)
32 サイクロン(粉塵除去手段)
33 粉塵ノズル(粉塵供給手段)
41 後段燃料ノズル(後段燃料供給手段)
52a 散気ノズル(散気手段)
54 流動層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体燃料の一部を燃焼させる部分燃焼領域を備え、該燃焼の燃焼熱により残余の固体燃料を加熱して生成ガスを生成させるガス化炉と、
前記生成ガスの一部を抽気し、これを燃焼用酸化ガスと混合して燃焼させ、該生成ガスの燃焼熱により前記燃焼用酸化ガスを加熱して、前記固体燃料の着火温度以上の高温燃焼用酸化ガスを生成する高温燃焼用酸化ガス生成手段と、
前記高温燃焼用酸化ガスを前記ガス化炉の部分燃焼領域に供給する高温酸化ガス供給手段と、
前記固体燃料を前記ガス化炉の部分燃焼領域に供給して、該固体燃料の一部を燃焼させる燃料供給手段と
を備えることを特徴とするガス化炉装置。
【請求項2】
炉体底部に配設される、流動媒体からなる流動層を有し、該流動層を流動化させる流動床炉方式のガス化炉装置において、
固体燃料の一部を燃焼させる部分燃焼領域を前記流動層の上側に形成し、該燃焼の燃焼熱により残余の固体燃料を加熱して生成ガスを生成させるガス化炉と、
前記生成ガスの一部を抽気し、これを燃燃焼用酸化ガスと混合して燃焼させ、該生成ガスの燃焼熱により前記燃焼用酸化ガスを加熱して、前記固体燃料の着火温度以上の高温燃焼用酸化ガスを生成する高温燃焼用酸化ガス生成手段と、
前記流動層に前記高温燃焼用酸化ガスを吹き込んで流動化させる散気手段と、
前記固体燃料を前記流動層に供給し、該固体燃料の一部を燃焼させる燃料供給手段と
を備えることを特徴とするガス化炉装置。
【請求項3】
前記燃料供給手段の噴出口より後流側に固体燃料を供給し、該固体燃料を熱分解させて生成ガスを更に発生させる後段燃料供給手段を更に備えることを特徴とする、請求項1又は2のいずれかに記載のガス化炉装置。
【請求項4】
前記生成ガスから粉塵を除去する粉塵除去手段と、
該粉塵除去手段により除去された粉塵を前記部分燃焼領域に噴出させる粉塵供給手段とを更に備えることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載のガス化炉装置。
【請求項5】
前記燃焼用酸化ガスは、空気であることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載のガス化炉装置。
【請求項6】
前記燃焼用酸化ガスは、酸素であることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載のガス化炉装置。
【請求項7】
前記固体燃料は、石炭であって、前記高温燃焼用酸化ガス生成手段は、前記燃焼用酸化ガス温度を、800℃以上に加熱することを特徴とする、請求項1乃至6のいずれかに記載のガス化炉装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−89628(P2006−89628A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−277766(P2004−277766)
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【出願人】(000000099)石川島播磨重工業株式会社 (5,014)
【Fターム(参考)】