説明

ガス化焼却炉

【課題】 粉塵、悪臭を防止し、燃焼の際に合成された各種有害物質等が排煙や排気ガスに混入して大気放出されることを防止する。
【解決手段】 投入口2から投入された被燃焼物をガス化させ、ガス化により発生した残渣を燃焼させ、この燃焼により発生した灰を溶融させる燃焼室3と、燃焼室3内に配置され、被燃焼物を加熱する第1の発熱体14と、燃焼室3に空気を送風する第1の空気送風口16と、燃焼により発生した灰を溶融させたスラグを排出する排出口7と、被燃焼物がガス化されることにより発生したガスを燃焼させる再燃焼室4と、燃焼室3と再燃焼室4を連通する流路5内に配置され、再燃焼室4に流入するガスを加熱する第2の発熱体21と、再燃焼室4に空気を送風する第2の空気送風口28とを備え、第1の発熱体14及び第2の発熱体21は、通電により発熱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被燃焼物を焼却する際に発生する排煙、排気ガス等に含まれる有害物質を除去し、無害化するのに適したガス化焼却炉に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴミ焼却炉等により廃棄物を焼却させると、この燃焼により生じたすすや各種燃えかす等の粉塵、悪臭、燃焼の際に合成された各種有害物質等が排煙や排気ガスに混入して大気放出され、この排煙や排気ガスによる公害が発生している。
【0003】
特に、廃棄されたタイヤ、プラスチック、塗料、その他の各種樹脂製品を焼却した際に発生する排煙中には、粉塵や悪臭の他に一酸化炭素、窒素酸化物、硫黄酸化物、ダイオキシン等の各種の有害物質が含まれる。このような各種有害物質を含んだ排煙は、大気に放出すると、大気汚染や環境破壊の原因となる。中でも毒性の強い物質として知られているダイオキシン等の有害物質の排出は、周辺住民の健康を阻害し、動植物の奇形を発生させ、公害病の原因となり、周辺環境に重大な影響を与えてしまう。このような有害物質の排出をいかにして防止するかは重要な問題である。
【0004】
このような有害物質の除去を目的として、例えば焼却炉内に灯油や重油等の石油燃料と空気との混合したものを供給して廃棄物と共に800℃以下の温度で燃焼させる構造の焼却炉が存在する。
【0005】
上述のように、灯油や重油と共に廃棄物を燃焼させる従来の焼却炉にあっては、廃棄物の燃焼が800℃以下の温度で行われるため、廃棄物中に含まれる塩素化合物が他の物質と化合してダイオキシンの生成が助長される。
【0006】
この種の焼却炉においては、焼却炉から排出される排煙を浄化する目的で、この廃棄物の焼却により生じた排煙に灯油、重油、ガス等を燃料としてバーナーによって火炎を噴射して再燃焼させ、排煙中に含まれる有害物質等を燃焼・除去する方法等が提案されている。
【0007】
しかし、バーナーによる燃焼を行う焼却炉では、完全に排煙が火炎に接することは困難であり、また、温度も低いため、一酸化炭素、すす、悪臭等の一部の有害物質を燃焼させて排煙を無色無臭化させることはできても、ダイオキシン、その他高温下で初めて無害化される有害物質を無害化することはできない。
【0008】
【特許文献1】特開平11−82980号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、発熱体を通電することで発熱させ、これを熱源として被燃焼物をガス化及び燃焼させることで、すすや燃えかす等の粉塵、悪臭を防止し、燃焼の際に合成された各種有害物質等が排煙や排気ガスに混入して大気放出されることを防止するガス化焼却炉を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を達成するため、本発明に係るガス化焼却炉は、被燃焼物を投入する投入口と、投入口から投入された被燃焼物をガス化させ、ガス化により発生した残渣を燃焼させ、この燃焼により発生した灰を溶融させる燃焼室と、燃焼室内に配置され、被燃焼物を加熱する第1の発熱体と、燃焼室に空気を送風する第1の空気送風口と、燃焼により発生した灰を溶融させたスラグを排出する排出口と、被燃焼物がガス化されることにより発生したガスを燃焼させる再燃焼室と、燃焼室と再燃焼室を連通する流路と、流路内に配置され、再燃焼室に流入するガスを加熱する第2の発熱体と、再燃焼室に空気を送風する第2の空気送風口と、再燃焼室内でガスが燃焼されることにより発生する排ガスを排出する煙突と、燃焼室及び再燃焼室を包囲する断熱材とを備え、第1の発熱体及び第2の発熱体は、通電により発熱するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、投入口から投入された被燃焼物を燃焼室で通電することで急速加熱された第1の発熱体を熱源として加熱してガス化させ、ガス化により発生した残渣を燃焼させ、燃焼により発生した灰を溶融させてスラグとし排出口から排出させる。また、燃焼室でガス化したガスを再燃焼室に流入する前に、流路で通電することで急速加熱された第2の発熱体を熱源として加熱して、再燃焼室で第2の空気送風口から送風された空気と混合させて再燃焼させるので、被燃焼物を高温で完全燃焼させることができ、燃焼の際に発生するすすや燃えかす等の粉塵、悪臭を防止し、燃焼の際に合成された各種有害物質等が排煙や排気ガスに混入して大気放出されることを防止し、安全な被燃焼物の燃焼を可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明が適用されたガス化焼却炉の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0013】
本発明が適用されたガス化焼却炉1は、図1に示すように、被燃焼物を投入する投入口2と、この投入口2から投入された被燃焼物を加熱してガス化させ、ガス化後の残渣を燃焼させて灰とさせ、この灰を溶融させてスラグとする燃焼室3と、ガス化した被燃焼物を燃焼させる再燃焼室4と、燃焼室3と再燃焼室4を連通するガス流路5とを備える。
【0014】
また、このガス化焼却炉1は、再燃焼室4でガス化した被燃焼物が燃焼されることにより発生する排ガスを外部に排出する煙突6と、燃焼室3で被燃焼物のガス化後の残渣が燃焼され、燃焼後の灰が溶融されることで発生するスラグを外部に排出する排出口7とを備える。
【0015】
ガス化焼却炉の排出口7の下部には、排出されたスラグを堆積する水槽8と、この水槽8と排出口7とを連結すると共に水槽8によりガス化焼却炉を水封するためのフード9とが設けられている。
【0016】
燃焼室3及び再燃焼室4は、ステンレス等の金属板を角筒状に曲折して形成されており、燃焼室3、再燃焼室4及びガス流路5の周囲には、ガス化焼却炉1内部の熱が外部に放出されないように断熱材11,12,13が配置されている。
【0017】
燃焼室3を断熱する断熱材11は、内面に設けられる耐火煉瓦11aと、外面に設けられるシリカボード11bと、複雑な形状の部分に設けられる耐火キャスタ11cとからなる。再燃焼室4及びガス流路5を断熱する断熱材12、13は、耐火キャスタ12a,13aからなる。これらの耐火キャスタ11c,12a,13aは、キャスターフック11d,12d,13dにより固定されている。
【0018】
燃焼室3には、図1及び図2に示すように、投入された被燃焼物を加熱するための耐熱性及び電導性を有する第1の発熱体14と、この第1の発熱体14に電流を印加する第1の電極板15と、燃焼室3の第1の発熱体14が配置される領域に空気を送風する第1の空気送風口16とが設けられている。また、燃焼室3には、第1の発熱体14が排出口7に落下することを防止する火格子(ロストル)17が設けられており、第1の発熱体14が、この火格子17上に充填されている。
【0019】
第1の発熱体14は、例えば、粒径20〜30mm程度のグラファイト、活性炭、木炭、石炭等の粒状の炭素質物質にクロム、アルミニウム、モリブデン、タングステン等の金属を拡散・浸透させてその表面に金属被膜を形成したものであり、この発熱体を多数容器等に充填して所定の電流を印加すると、発熱体相互間の接触抵抗、各発熱体が有する抵抗により発熱するいわゆる、サーマルボール等からなる。この第1の発熱体14は、通電すると発熱し、通電を停止すると、発熱を停止する。通電により発熱する第1の発熱体14の粒状の炭素質物質は、発熱により消失することなく自然冷却により短時間でもとの状態に戻る。
【0020】
第1の電極板15は、燃焼室の下部側の対向する内壁面に一対に配置され、第1の発熱体14に通電して第1の発熱体14を加熱させる。第1の電極板15は、導電性の良好な材質で、且つ、第1の発熱体14より生ずる高温に対する耐性を有するものであればいかなる材質であってもよく、このガス化焼却炉1にあっては、グラファイトよりなる板体を使用している。そして、この電極板15は、図示しない電源に電極コードを介して接続されている。第1の発熱体14は、対向する一対の第1の電極板15間に多数収容されており、所定の電流が印加されることにより発熱される。
【0021】
第1の空気送風口16は、燃焼室3内部であって、第1の発熱体14が配置された領域に空気を送風可能とし、送風する空気の量を調整可能とする。この第1の空気送風口16は、燃焼室3の被燃焼物の状態に応じて、適切な送風量で空気を送風することができ、燃焼室3の燃焼形態、すなわち、被燃焼物のガス化、ガス化によって発生した残渣の燃焼、又は、残渣の燃焼により発生した灰の溶融等の燃焼室3の燃焼形態を切り換えることができる。
【0022】
第1の空気送風口16は、図示しない送風機を有しており、インバータ方式でモータの回転数を制御し、ダンパにより送風量を制御することで、被燃焼物の状態により空気の送風量を自在に調整することができる。
【0023】
燃焼室3と再燃焼室4とを連通するガス流路5には、図1及び図3に示すように、燃焼室3から再燃焼室4に流入するガスを加熱するための耐熱性及び電導性を有し、通電することで加熱される第2の発熱体21と、この第2の発熱体21に電流を印加する第2の電極板22と、ガス流路5の第2の発熱体21が配置される領域に空気を送風する第2の空気送風口26とが設けられている。
【0024】
第2の発熱体21は、複数のセラミック製の円筒管等の筒体23と、各々のセラミックの筒体の内周側に設けられるモリブデン素子24とからなるものである。このモリブデン素子24は、セラミックの筒体の内周側に、通電することにより加熱されて、このセラミック筒体を十分に加熱できるように配置されている。
【0025】
第2の電極板22は、ガス流路5の再燃焼室4側の対向する内壁面に、燃焼室3に設けられた第1の電極板15と同様に、その対向する内壁面に一対に配置され、第2の発熱体21に通電して第2の発熱体21を加熱させる。第2の発熱体21は、対向する一対の第2の電極板22間に複数配置され、所定の電流が印加されることにより発熱される。
【0026】
第2の電極板22は、導電性の良好な材質で、且つ、第2の発熱体21より生ずる高温に対する耐性を有するものであればいかなる材質であってもよく、このガス化焼却炉1にあっては、グラファイトよりなる板体を使用している。そして、この電極板は、図示しない電源に電極コードを介して接続されている。
【0027】
第2の発熱体21を構成するセラミックの筒体23は、図1及び図4に示すように、ガスの流入する方向に対して直交方向であって、それぞれが略等間隔であって平行に配置される。また、第2の発熱体21を構成するセラミックの筒体23は、筒体に垂直な断面において、千鳥格子状に配置(千鳥掛け)されている。すなわち、筒体23は、筒体に垂直な断面において、ガスの流入する方向に対して直交する方向に平行且つ等間隔に配置されて複数の群を形成し、ある一群に隣接する他の一群の筒体が、ある一群に配置されたそれぞれの筒体の中間に配置されるように構成されている。例えば、燃焼室3に近接した、ガス流路5の下部に設けられたガスの流入する方向に対して直行する面内に平行且つ等間隔に配置された複数の筒体からなる第1の群21aと、第1の群21aの上部側であってガスの流入する方向に対して直行する面内に平行且つ等間隔に配置された複数の筒体からなる第2の群21bと、第2の群21bの上部側であってガスの流入する方向に対して直行する面内に平行且つ等間隔に配置された複数の筒体からなる第3の群21cとからなり、第2の群21bの複数の筒体が、それぞれガス流入方向からみて第1の群21aの筒体間の中間に配置され、第3の群21cの複数の筒体が、それぞれガス流入方向からみて第2の群21bの筒体間の中間に配置されている。
【0028】
第2の発熱体21は、上述のように千鳥格子状に配置されるので、燃焼室3で発生したガスが直進して再燃焼室4に流入することを防止し、ガス流路5の第2の発熱体21が配置された領域に滞留する時間を増加させることで、十分に加熱されるので、このガスが再燃焼室3で完全燃焼させることができる。
【0029】
第2の空気送風口26は、ガス流路5の内部であって、第2の発熱体21が配置された領域に空気を送風可能とし、送風する空気の量を調整可能とする。この第2の空気送風口26は、燃焼室3から再燃焼室4に流入するガスをガス流路5で空気を送風し、混合することができる。
【0030】
第2の空気送風口26は、図示しない送風機を有しており、インバータ方式でモータの回転数を制御し、ダンパにより送風量を制御することで、ガス流路5を通過するガスの状態により空気の送風量を自在に調整することができる。
【0031】
また、ガス流路5には、この第2の発熱体21の上部に多孔質であって粒状に形成された(いわゆる軽石状の)セラミック粒体25が設けられている。このセラミック粒体25は、第2の発熱体21に比べて間隔、すなわち、ガスが通過する隙間が小さくされ、千鳥格子状に配置された第2の発熱体21に加熱されているので、第2の発熱体21を通過したガスの速度を抑え、さらに十分に加熱させ、再燃焼室4で完全燃焼させることを可能とする。
【0032】
再燃焼室4内には、燃焼室3から流入した被燃焼物をガス化させることにより発生したガスを滞留させるために旋回させるスタビライザ27と、再燃焼室4内に流入したガスに空気を送風する第3の空気送風口28とが設けられている。
【0033】
スタビライザ27は、ガス流路5から再燃焼室4にガスが流れ込むための隙間を形成する隙間形成部材29と、ガス流路5に直交する面状に配置されガス流路5から再燃焼室4に流れ込むガス及び熱がガス流路5の延長上に設けられた煙突6から外部に流出してしまうことを防止するバッフルプレート30となる板面とが設けられる。隙間形成部材29は、複数の耐熱部材がガス流路5から再燃焼室4に流入するガスを旋回させるように旋回方向R側に傾けて配設されている。このスタビライザ27は、ガスの旋回方向Rに向かって燃焼用の空気を送風するので、ガスの滞留時間を増加させ、再燃焼室4内で完全燃焼させることを可能とする。
【0034】
第3の空気送風口28は、再燃焼室4のスタビライザ27が配置された領域に空気を送風可能とし、送風する空気の量を調整可能とする。この第3の空気送風口28は、再燃焼室4内部に流入されたガスに空気を十分に混合するように送風することができる。
【0035】
第3の空気送風口28は、図示しない送風機を有しており、インバータ方式でモータの回転数を制御し、ダンパにより送風量を制御することで、再燃焼室4に流入するガスの状態により空気の送風量を自在に調整することができる。
【0036】
以上のように構成されたガス化焼却炉1の投入口2から被燃焼物が投入されると、図示しない電源によって第1の電極板15を通電することにより、第1の発熱体14が急速に発熱される。被燃焼物が投入された時点では、第1の空気送風口16から空気が流入されていない。このとき、第1の空気送風口16から空気が流入されていないので、第1の発熱体14の熱を被燃焼物に伝えることができないので、ガス化焼却炉1内の温度は、第1の発熱体14の放射熱のみによるものである。空気が流入されていない状況で、第1の発熱体14の放射熱のみより加熱された被燃焼物は、ガス化され、可燃性のガスとその残渣とになる。
【0037】
次に、第1の空気送風口16から、微量の空気、すなわち、理論空気量以下の空気を第1の発熱体14が設けられた領域に送風する。この第1の空気流入口16から微量の空気を送風することにより、送風された空気及び被燃焼物を熱伝導体として加熱することができ、燃焼室3内は急速に温度上昇する。尚、ここで、理論空気量とは、投入された被燃焼物が熱分解するのに必要な空気量のことである。
【0038】
被燃焼物は、第1の空気送風口16から送風された微量な空気と混合され、この第1の発熱体14により加熱されることにより、ゆっくりガス化される。被燃焼物がガス化することにより発生した可燃性ガスは、ガス流路5を通って再燃焼室4に流入される。一方、ガス化が完了した被燃焼物の残渣は、炭化物となり燃焼室内に残留する。
【0039】
被燃焼物のガス化が完了した後に、第1の空気送風口16から送風される空気量を増量し、理論空気量以上の空気が燃焼室内に送風される。この第1の空気送風口16から理論空気量以上の空気が送風されることにより、第1の発熱体14の表面が酸化反応を起こして1400℃程度の高熱とされ、燃焼室3内に残留した残渣である炭化物は、燃焼されて灰になり第1の発熱体14上に堆積する。
【0040】
第1の発熱体14の上に堆積した灰は、1200℃程度で溶融するので、堆積すると同時に溶融を始める。さらに、この灰の溶融現象は、その周囲の温度を上昇させるので、溶融していない灰の溶融を助長する。溶融した灰は、スラグ状になり排出口7より外部に排出される。この排出されたスラグは、フード9内を通過して水槽8内に堆積され、一定量堆積したときに排出用ケース10により搬出される。
【0041】
このガス化焼却炉1の炉内の圧力は9.8Pa〜29.4Pa(1〜3mm/HO)程度の加圧状態となるように、空気は押し込み方式で送風されている。したがって、第1の発熱体14を支持する火格子17(ロストル)は、排出口7を通して大気に開放された状態であってもよい。このガス化焼却炉1では、フード9を設けてフード下部を水槽8で水封しているので、第1の発熱体14が外部の空気に触れ酸化されることによる消耗を低減することができる。
【0042】
燃焼室3でガス化により発生した可燃性ガスは、燃焼室3と再燃焼室5とを連通するガス流路4を通過して再燃焼室5に流入される。このとき、可燃性ガスは、ガス流路4に設けられた第2の発熱体21及びセラミック粒体25の隙間を通過する。第2の発熱体21は、通電されることにより、その表面が1400℃程度に加熱されており、さらに、第2の発熱体21の上部に設けられたセラミック粒体25を十分に加熱している。第2の発熱体21及びセラミック粒体25は、通過するガスを十分に加熱することができる。また、ガス流路4を通過する可燃性ガスは、第2の空気送風口26により送風された空気と混合される。可燃性ガスは、ガス流路5を通過するときに、第2の発熱体21により加熱されるとともに、第2の空気送風口26により送風された空気と混合されて燃焼しながら再燃焼室4に流入する。
【0043】
再燃焼室4内に流入した可燃性ガスは、スタビライザ27により充分な燃焼用の空気と混合されて、旋回される。スタビライザ27により旋回された可燃性ガスは、第3の空気送風口28から流入された充分な燃焼用の空気と混合し、充分な時間滞留されることにより完全に燃焼し、CO等が含まれない排気ガスとなり煙突6から排出される。また、可燃性ガスは、第1の発熱体14及び第2の発熱体21により充分に加熱されるので、800℃以上の高温により無害化するダイオキシン等の有害物質についても無害化される。
【0044】
本発明を適用したガス化焼却炉1は、投入された被燃焼物を燃焼室3において、通電することで急速加熱された第1の発熱体14を熱源として加熱してガス化させ、第1の空気送風口16から空気を増量してガス化後の残渣を燃焼させ、燃焼により発生した灰を溶融させてスラグとして排出口7から排出させることができる。また、燃焼室3でガス化したガスを再燃焼室4に流入する前に、ガス流路5で通電することで急速加熱された第2の発熱体21を熱源として加熱するとともに第2の空気送風口28から送風された空気と混合されて、さらに、再燃焼室4で第3の空気送風口28から送風された空気と混合させて再燃焼させるので、被燃焼物を高温で完全燃焼させることができ、すすや燃えかす等の粉塵、悪臭を防止し、燃焼の際に合成された各種有害等が排煙や安全な被燃焼物の燃焼を可能とする。
【0045】
尚、上述のガス化焼却炉1においては、燃焼室3及び再燃焼室4は、角筒状に形成されたが、円筒状に形成してもよい。燃焼室及び再燃焼室を円筒状に形成した場合には、スタビライザーによる旋回がさらに効率よくなり、ガスの再燃焼室に滞留する時間が増加するので、十分にガスと空気とが混合されてより完全に燃焼させることができる。
【0046】
(実験例)
以下に、上述のガス化焼却炉により実験を行った結果を図5に示す。図5において、縦軸は温度(℃)、横軸は、時間(分)とし、実線部(a)は、再燃焼室での温度、一点鎖線部(b)は、燃焼室での温度、点線部(c)及び(d)は、それぞれ熱源である第1の発熱体及び第2の発熱体の温度を示すものとする。また、図5において、縦軸に炉圧(Pa)とし、横軸に時間(分)として、二点鎖線部(e)は、ガス化焼却炉1内部の炉圧を示すものとする。
【0047】
尚、被燃焼物のデータを表1に、ガス化焼却炉の能力を表2に示す。また、本実験における第1の発熱体及び第2の発熱体での消費電気使用データを表3に示す。
【0048】
図5から、再燃焼室における燃焼温度は、800℃以上であり、ダイオキシン等の各種有害物質等を完全に燃焼できることが確認でき、表3から全使用電力(KW=A×V)が約28KWと非常に低消費電力で運転が可能となることが確認できた。また、ガス化焼却炉の炉内の圧力が略大気圧で運転が可能であることが確認できた。
【0049】
【表1】

【0050】
【表2】

【0051】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明を適用したガス化焼却炉の正面断面図である。
【図2】本発明を適用したガス化焼却炉の図1に示すA−A断面図である。
【図3】本発明を適用したガス化焼却炉の図1に示すB−B断面図である。
【図4】本発明を適用したガス化焼却炉の図2及び図3に示すC−C断面図である。
【図5】本発明を適用したガス化焼却炉の実験例における燃焼室、再燃焼室、第1の発熱体及び第2の発熱体の時間に伴う温度の変化、並びに、時間に伴う炉内の圧力の変化を示す図である。
【符号の説明】
【0053】
1 ガス化焼却炉、 2 投入口、 3 燃焼室、 4 再燃焼室、 5 ガス流路、6 煙突、 7 排出口、 8 水槽、 9 フード、 11,12,13 断熱材、 14 第1の発熱体、 15 第1の電極板、 16 第1の空気送風口、 17 火格子、 21 第2の発熱体、 22 第2の電極板、 27 スタビライザ、 26 第2の空気送風口、 28 第3の空気送風口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被燃焼物を投入する投入口と、
上記投入口から投入された被燃焼物をガス化させ、ガス化により発生した残渣を燃焼させ、この燃焼により発生した灰を溶融させる燃焼室と、
上記燃焼室内に配置され、上記被燃焼物を加熱する第1の発熱体と、
上記燃焼室に空気を送風する第1の空気送風口と、
上記燃焼により発生した灰を溶融させたスラグを排出する排出口と、
上記被燃焼物がガス化されることにより発生したガスを燃焼させる再燃焼室と、
上記燃焼室と上記再燃焼室を連通する流路と、
上記流路内に配置され、上記再燃焼室に流入するガスを加熱する第2の発熱体と、
上記再燃焼室に空気を送風する第2の空気送風口と、
上記再燃焼室内で上記ガスが燃焼されることにより発生する排ガスを排出する煙突と、
上記燃焼室及び上記再燃焼室を包囲する断熱材とを備え、
上記第1の発熱体及び上記第2の発熱体は、通電により発熱するガス化焼却炉。
【請求項2】
上記第1の発熱体は、粒状の炭素質物質の表面に、クロム、モリブデン、アルミニウム、マグネシウムのいずれか1以上の金属よりなる被膜を形成してなることを特徴とする請求項1記載のガス化焼却炉。
【請求項3】
上記炭素質物質が、木炭、コークス又は石炭である請求項2記載のガス化焼却炉。
【請求項4】
上記第2の発熱体は、セラミックの筒体の内周側に設けられてなる請求項1記載のガス化焼却炉。
【請求項5】
上記第1の空気送風口は、上記燃焼室へ送風する空気の量を調整可能とし、
上記第2の空気送風口は、上記再燃焼室へ送風する空気の量を調整可能とすることを特徴とする請求項1記載のガス化焼却炉。
【請求項6】
上記第1の空気送風口は、上記燃焼室へ送風する空気の量を理論空気量以下とすることで、被燃焼物をガス化させ、また、上記燃焼室へ送風する空気の量を理論空気量以上とすることでガス化後の被燃焼物の残渣を燃焼させ、かつこの燃焼により発生した灰を溶融させることを特徴とする請求項5記載のガス化焼却炉。
(ここで、理論空気量とは、被燃焼物が熱分解するのに必要な空気量である。)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−10283(P2006−10283A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−191910(P2004−191910)
【出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【出願人】(591219614)株式会社ジェット炉 (3)
【Fターム(参考)】