説明

ガス検出装置

【課題】正確に検出対象ガスの濃度を検出しつつ省電力化及び小型化を図ることができるガス検出装置を提供する。
【解決手段】センサ部2は、検知対象ガスと接触燃焼して温度が変化する。加熱回路3が、検出対象ガスと接触燃焼する温度にセンサ素子を加熱する。CPU51が、加熱回路3の加熱時に測定したセンサ部2の温度TONと、加熱回路3の非加熱時に測定したセンサ部2の温度TOFFと、の差(TON−TOFF)に基づいて検出対象ガスの濃度を検出するように設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス検出装置に係り、特に、検出対象ガスと接触燃焼して温度が変化する接触燃焼式のセンサ素子と、前記検出対象ガスと接触燃焼するような温度に前記センサ素子を加熱する加熱手段と、前記センサ素子の温度又は前記温度に応じた値を測定する測定手段と、前記測定手段により測定された測定値に基づいて前記検出対象ガスの濃度を検出するガス濃度検出手段と、を備えたガス検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上述した従来のガス検出装置として、例えば図7に示されたものが一般的に知られている(特許文献1)。同図に示すように、ガス検出装置は、センサ素子101と比較素子102とを有している。センサ素子101は、白金コイルと、この白金コイルに塗布した、検出対象ガスとの接触燃焼を促進する触媒とで構成されている。比較素子102は、白金コイルと、この白金コイルに塗布した、検出対象ガスに反応しないアルミナ層とで構成されている。
【0003】
上記センサ素子101の白金コイルと、比較素子102の白金コイルとは、検出対象ガスのない空気中では等しい抵抗値になるように設けられている。上述したセンサ素子101及び比較素子102は、抵抗R1、R2と共にブリッジ回路103を構成している。このブリッジ回路103の端子aと端子bとの間には、駆動電圧Eoが供給されている。駆動電圧Eoを供給すると、センサ素子101が、加熱されて検出対象ガスと接触燃焼する。
【0004】
以上の構成によれば、ブリッジ回路103は検出対象ガスのない空気中では平衡状態となり、電流が流れない。これに対して、検出対象ガスを含む空気中では検出対象ガスとの燃焼熱によりセンサ素子101の温度が上昇し、これに伴ってセンサ素子101の白金コイルの抵抗値が増加するために不平衡状態となり、不平衡電流Iuが増加する。不平衡電流Iuは検出対象ガスの濃度に応じた値である。そして、ブリッジ回路103の端子c、端子d間に接続されたメータが、この不平衡電流Iuを電圧に変換して検出対象ガスに応じた出力Vsとして出力する。
【0005】
また、検出対象ガスのない空気中でブリッジ回路103を平衡状態とするのは難しい。例えば、経年変化によりブリッジ回路103の平衡はすぐにくずれてしまう。そこで、検出対象ガスがないときのメータの出力と検出対象ガスがあるときのメータの出力との差を検出対象ガスに応じた出力Vsとして得ることもある。
【特許文献1】特開2001−99798号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した従来のガス検出装置は、センサ素子101及び比較素子102を含むブリッジ回路103を構成することにより、出力Vsを、周囲温度の変化の影響や、センサ素子101の経時変化の影響をほとんど受けない値とすることができる。つまり、周囲温度の変動に伴ってセンサ素子101の抵抗値が増減すると、比較素子102も同様にその抵抗値が増減する。このため、出力Vsは、周囲温度(環境温度)の変化の影響を受けず、検出対象ガスの濃度のみに応じた値となる。
【0007】
また、経時変化によってセンサ素子101の抵抗値が変動しても、比較素子102も同様に経時変化が生じているため、センサ素子101と同様にその抵抗値が変動する。このため、ブリッジ回路103の出力である不平衡電流Iuは、経時変化の影響をほとんど受けず、検出対象ガスの濃度のみに応じた値となる。
【0008】
しかしながら、上述した従来のガス検出装置は、センサ素子101の他に比較素子102が存在し、センサ素子101以外の比較素子102でも電力が消費され、省電力化及び小型化を図ることができない、という問題があった。そこで、比較素子102を省いてセンサ素子101のみを用いて検出対象ガスの濃度を検出することが考えられるが、上述したようにセンサ素子101のみでは周囲温度の変化の影響や経時変化の影響を受けるため、検出対象ガスの濃度を正確に検出することができない、という問題があった。つまり、従来の技術では、省電力化及び小型化と高精度なガス検出との両立が難しいという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、上記のような問題点に着目し、正確に検出対象ガスの濃度を検出しつつ省電力化及び小型化を図ることができるガス検出装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するためになされた請求項1記載の発明は、検出対象ガスと接触燃焼して温度が変化する接触燃焼式のセンサ素子と、前記検出対象ガスと接触燃焼するような温度に前記センサ素子を加熱する加熱手段と、前記センサ素子の温度又は前記温度に応じた値を測定する測定手段と、前記測定手段により測定された測定値に基づいて前記検出対象ガスの濃度を検出するガス濃度検出手段と、を備えたガス検出装置において、前記ガス濃度検出手段が、前記加熱手段の加熱時に前記測定手段により測定された前記測定値と、前記加熱手段の非加熱時に前記測定手段により測定された前記測定値と、の両方に基づいて前記検出対象ガスの濃度を検出するように設定されていることを特徴とするガス検出装置に存する。
【0011】
請求項2記載の発明は、検出対象ガスがない環境において前記加熱手段の加熱時に前記測定手段により測定された前記測定値と、検出対象ガスがない環境において前記加熱手段の非加熱時に前記測定手段により測定された前記測定値と、の差を補正値として予め記憶する補正値記憶手段と、前記加熱手段の加熱時に前記測定手段により測定された前記測定値と、前記加熱手段の非加熱時に前記測定手段により測定された前記測定値と、の差を演算する差演算手段と、を備え、そして、前記ガス濃度検出手段が、前記差演算手段により演算された前記差から前記補正値記憶手段に記憶されている補正値を差し引いた値に基づいて前記検出対象ガスの濃度を検出するように設定されていることを特徴とする請求項1に記載のガス検出装置に存する。
【0012】
請求項3記載の発明は、前記加熱手段の加熱時に前記測定手段により測定された前記測定値が小さいほど前記補正値が小さくなるように補正する第1補正手段をさらに備えたことを特徴とする請求項2に記載のガス検出装置に存する。
【0013】
請求項4記載の発明は、前記差演算手段によって演算された差から前記補正値を差し引いた値が0より小さいときに、前記差し引いた値の大きさが大きいほど前記補正値が小さくなるように補正する第2補正手段をさらに備えたことを特徴とする請求項2又は3に記載のガス検出装置に存する。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように請求項1記載の発明によれば、加熱手段の非加熱時のセンサ素子の温度は、接触燃焼が生じていないため検出対象ガスの濃度に対して不感となる。以上のことに着目し、ガス濃度検出手段が、加熱手段の加熱時に測定手段により測定された測定値と、加熱手段の非加熱時に測定手段により測定された測定値と、の両方に基づいて検出対象ガスの濃度を検出するように設定されているので、センサ素子とは別途に比較素子を用いなくても、非加熱時のセンサ素子を比較素子の代わりに用いて、加熱時の測定値から周囲温度の変動分や経年変化によるセンサ素子の温度の変動分を相殺することができるので、正確に検出対象ガスの濃度を検出しつつ省電力化及び小型化を図ることができる。
【0015】
請求項2記載の発明によれば、ガス濃度検出手段が、差演算手段により演算された差から補正値記憶手段に記憶されている補正値を差し引いているので、検出対象ガスとの接触燃焼による計測値の増加分を得ることができ、より一層正確に検出対象ガスの濃度を検出することができる。
【0016】
請求項3記載の発明によれば、第1補正手段が加熱手段の非加熱時に測定手段により測定された測定値が小さくほど補正値が小さくなるように補正するので、周囲温度の変動を除去した補正値を用いることができるため、より一層正確に検出対象ガスの濃度を検出することができる。
【0017】
請求項4記載の発明によれば、第2補正手段が差演算手段によって演算された差から補正値を差し引いた値が0より小さいときに、差し引いた値の大きさが大きいほど補正値が小さくなるように補正するので、センサ素子の経年変化や、抵抗値降下の変動を除去した補正値を用いることができるため、より一層正確に検出対象ガスの濃度を検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の一実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明のガス検出装置1の一実施形態を示す回路図である。図2は、図1のガス検出装置1を構成するセンサ部2の上面図であり、図3は、図2のI−I線断面図である。同図に示すように、ガス検出装置1は、センサ素子としてのセンサ部2と、加熱手段としての加熱回路3と、測定手段としての測定回路4と、マイクロコンピュータ5(以下μCOM5)と、を備えている。
【0019】
センサ部2は、測温抵抗体Rs、ヒータ用抵抗体Rh及び触媒21を有している。上記測温抵抗体Rsは、温度センサとして働き、検出対象ガスと接触燃焼してセンサ部2の温度が変化すると抵抗値が変化する抵抗体である。ヒータ用抵抗体Rhは、駆動電圧が印加されると発熱して、検出対象ガスと接触燃焼する高温にセンサ部2を加熱する。上記測温抵抗体Rs及びヒータ用抵抗体Rhは、例えば白金(Pt)から構成されている。上記触媒21は、センサ部2の検出対象ガスとの接触燃焼を促進するための触媒である。触媒21は、白金族、例えばパラジウム(Pd)を担持したアルミナ(Al22)からなるPd/Al22から構成されている。
【0020】
また、センサ部2は、図2及び図3に示すように、上記測温抵抗体Rs、ヒータ用抵抗体Rh及び触媒21に加えて、基台22と、絶縁薄膜23と、絶縁薄膜24とを有している。基台22は、例えばシリコンなどから形成されている。絶縁薄膜23は、上記基台22上に成膜されている。絶縁薄膜23は、例えば酸化シリコン(SiO2)、窒化シリコン(SiN)及び酸化ハフニウム(HfO2)などから成る。また、基台22中央には、異方性エッチングにより凹部25が形成されていて、絶縁薄膜23のみからなる薄膜ダイアフラムDが形成されている。上記測温抵抗体Rs及びヒータ用抵抗体Rhは、この熱容量の小さい薄膜ダイアフラムD上に設けられている。絶縁薄膜24は、上記測温抵抗体Rs及びヒータ用抵抗体Rhが設けられた絶縁薄膜23上に成膜される。そして、触媒21が、測温抵抗体Rs及びヒータ用抵抗体Rhが設けられた薄膜ダイアフラムD上に設けられている。
【0021】
上記加熱回路3は、定電圧源31と、スイッチ32と、を有している。定電圧源31は、ヒータ用抵抗体Rhに駆動電圧を印加するための電源である。スイッチ32は、ヒータ用抵抗体Rhと定電圧源31との間に設けられていて、ヒータ用抵抗体Rhに対する駆動電圧の供給をオンオフする。このスイッチ32のオンオフ制御は、後述するμCOM5内のCPU51によって行われている。スイッチ32がオンするとヒータ用抵抗体Rhに駆動電圧が印加されてヒータ用抵抗体Rhが発熱して、検出対象ガスと接触燃焼するような温度にセンサ部2を加熱する。
【0022】
測定回路4は、定電流源41と、スイッチ42と、固定抵抗R3と、差動増幅器43と、差動増幅器44と、を有している。定電流源41は、測温抵抗体Rsの抵抗値を測定するために微少電流Iを供給するための電源である。スイッチ42は、測温抵抗体Rsと定電流源41との間に設けられていて、測温抵抗体Rsに対する微少電流Iの供給をオンオフする。微少電流としては、例えば測温抵抗体Rsが発熱せずに、センサ部2と周囲温度とが等しくなるような微少な電流が望ましい。
【0023】
固定抵抗R3は、測温抵抗体Rsに供給される微少電流Iの値を測定するための抵抗である。差動増幅器43は、測温抵抗体Rsの両端電圧を増幅した出力Vsを後述するμCOM5に出力する。差動増幅器44は、固定抵抗R3の両端電圧を増幅した出力Viを後述するμCOM5に出力する。
【0024】
上記μCOM5は、処理プログラムに従って各種の処理を行う中央演算処理ユニット(以下CPU)51、CPU51が行う処理のプログラムなどを格納した読出専用のメモリであるROM52、及び、CPU51での各種の処理過程で利用するワークエリア、各種データを格納するデータ記憶エリアなどを有する読出書込自在のメモリであるRAM53、を有している。
【0025】
次に、上述したセンサ部2の特性について説明する。センサ部2は、非加熱時では検出対象ガスと反応せずに接触燃焼が起こらない。このときのセンサ部2内の温度は、周囲温度と等しくなり検出対象ガスに対して不感となる。センサ部2は、加熱されて温度が高くなると検出対象ガスとの接触燃焼が起こり、その温度が検出対象ガスの濃度に応じた出力となる。よって、加熱時のセンサ部2の温度TONと非加熱時のセンサ部2の温度TOFFとの差(TON−TOFF)は周囲温度や経年変化の影響が除去された検出対象ガスの濃度に応じた値となる。
【0026】
そこで、μCOM5内のCPU51は、測温抵抗体Rsの抵抗値から加熱時のセンサ部2の温度TONと非加熱時のセンサ部2の温度TOFFとを求めて、求めた温度TONと温度TOFFとの差(TON−TOFF)に基づいて検出対象ガスの濃度を検出する。
【0027】
また、上述した補正値記憶手段としてのROM52内には、上記差(TON−TOFF)を補正するための初期補正値ΔTiが記憶されている。初期補正値ΔTiは、予め検出対象ガスがなく(エアベース)、周囲温度が基準温度に保たれた環境を作っておいて、その環境中で非加熱時の測温抵抗体Rsの抵抗値から求めたセンサ部2の温度TOFFAIRと、加熱時の測温抵抗体Rsの抵抗値から求めたセンサ部2の温度TONAIRと、の差を初期補正値ΔTiとして予めROM52内に格納している。
∵TONAIR−TOFFAIR=ΔTi
【0028】
次に、上述した構成のガス検出装置1の動作を図4及び図5を参照して以下説明する。図4(A)はヒータ用抵抗体Rhの両端電圧のタイムチャートであり、図4(B)は測温抵抗体Rsに流れる電流のタイムチャートである。図5は、図1のガス検出装置1を構成するCPU51の処理手順を示すフローチャートである。
【0029】
まず、CPU51は、電源投入に応じて動作を開始し、時間T1(図4参照)のカウントを開始する(ステップS1)。CPU51は、時間T1のカウントが終了するまでスイッチ32をオフに保持してセンサ部2を非加熱状態とする。時間T1のカウントが終了すると(ステップS2でY)、CPU51は、測定回路4のスイッチ42をオンして測温抵抗体Rsに微少電流Iを供給する(ステップS3)。次に、CPU51は、差動増幅器43、44から出力される測温抵抗体Rsの両端電圧に応じた出力Vs、測温抵抗体Rsの流れる微少電流Iに応じた出力Viを取り込んで、測温抵抗体Rsの抵抗値を求める。そして、CPU51は、測温抵抗体Rsの抵抗値から求めたセンサ部2の温度Tを非加熱時のセンサ部2の温度TOFFとする(ステップS4)。この温度TOFFは、周囲温度と等しい。
【0030】
その後、CPU51は、スイッチ42をオフして測温抵抗体Rsに対する微少電流Iの供給を遮断する(ステップS5)。上記ステップS3〜S5において、CPU51は、測定手段として働く。また、ステップS4で求めた温度TOFFが、請求項中の「加熱手段の非加熱時に測定手段により測定された測定値」に相当する。次に、CPU51は、加熱回路3のスイッチ32をオンしてヒータ用抵抗体Rhに駆動電圧を印加した後(ステップS6)、時間T2(図4参照)のカウントを開始する(ステップS7)。上記駆動電圧の印加によりヒータ用抵抗体Rhが発熱して、検出対象ガスと接触燃焼する温度にセンサ部2を加熱する。
【0031】
そして、CPU51は、時間T2のカウントが終了すると(ステップS8でY)、測定回路4のスイッチ42をオンして測温抵抗体Rsに微少電流Iを供給する(ステップS9)。次に、CPU51は、差動増幅器43、44から出力される測温抵抗体Rsの両端電圧に応じた出力Vs、測温抵抗体Rsに流れる微少電流Iに応じた出力Viを取り込んで、測温抵抗体Rsの抵抗値を求める。そして、CPU51は、測温抵抗体Rsの抵抗値から求めたセンサ部2の温度Tを加熱時のセンサ部2の温度TONとする(ステップS10)。上記ステップS9〜S10において、CPU51は、測定手段として働く。また、ステップS10で求めた温度TONが、請求項中の「加熱手段の加熱時に測定手段により測定された測定値」に相当する。
【0032】
次に、CPU51は、スイッチ42をオフして測温抵抗体Rsに対する微少電流Iの供給を遮断すると共に(ステップS11)、スイッチ32をオフしてヒータ用抵抗体Rhに対する駆動電圧の供給を遮断する(ステップS12)。その後、CPU51は、第1補正手段として働き、初期補正値ΔTiを現在の周囲温度であるステップS4で求めた温度TOFFで補正して、現在の周囲温度に保たれたエアベースにおける加熱時のセンサ部2の温度TONと非加熱時のセンサ部2の温度TOFFとの差である補正値ΔTを求める(ステップS13)。
【0033】
上記初期補正値ΔTiは、上述したように基準温度に保たれたエアベースにおける加熱時のセンサ部2の温度TONと非加熱時のセンサ部2の温度TOFFとの差に相当する。一般に、周囲温度とセンサ部2との温度差が大きいほど、センサ部2から奪われる熱量が多くなる。即ち、周囲温度が下がったとき、温度TONの下降量が、温度TOFFの下降量に比べて大きくなり、(TONAIR−TOFFAIR)が小さくなる。よって、CPU51は、現在の周囲温度であるステップS4で求めた温度TOFFが小さいほど、初期補正値ΔTiが小さくなるように補正して補正値ΔTとする。この補正の一例として、下記の補正式(1)を示す。
ΔT=ΔTi+(a×TOFF+b) …(1)
(a、bはセンサ部2の温度特性によって決定される定数)
【0034】
次に、CPU51は、差演算手段として働き、ステップS4で求めた温度TOFFとステップS10で求めた温度TONとの差を求めて、さらに求めた差(TON−TOFF)からステップS13で求めた補正値ΔTを差し引いた値を検出対象ガス濃度に応じた値S1t(=(TON−TOFF)−ΔT)として求める(ステップS14)。上記値S1tは、検出対象ガスとの接触燃焼に起因したセンサ部2温度の増加分に相当する。つまり、値S1tは、周囲温度の変動や、加熱温度の影響を除去した検出対象ガス濃度に応じた値となる。
【0035】
CPU51は、値S1tが0以上であれば(ステップS16でN)、補正値ΔTをさらに補正する必要がないと判断して、ガス濃度検出手段として働き、値S1tが警報判定値Xを超えているか否かを判断する(ステップS17)。値S1tが警報判定値Xを超えていれば(ステップS17でY)、CPU51は、警報レベル以上の検出対象ガスの濃度を検出したと判断して警報を発生した後(ステップS18)、再びステップS1に戻る。これに対して値S1tが警報判定値X以下であれば(ステップS17でN)、CPU51は、ガス漏れが生じていないと判断して、直ちにステップS1に戻る。
【0036】
一方、CPU51は、値S1tが0未満であれば(ステップS16でY)、補正値ΔTを補正する必要があると判断してステップS19に進む。測温抵抗体Rsに異物が付着したり、経年変化によりヒータ用抵抗体Rhの抵抗が降下すると、こられの影響を受けて温度TONは下がるが温度TOFFは変化しない。それ故に、値S1tが0未満になってしまったと考えられる。そこで、CPU51は、第2補正手段として働き、値S1t(<0)の絶対値が大きいほど補正値ΔTが小さくなるように補正して新たな補正値ΔTとする。この補正の一例として、下記の補正式(2)を示す。
新たなΔT=ステップS13で求めたΔT−|S1t| …(2)
【0037】
その後、CPU51は、ステップ14に戻って、新たな補正値ΔTを用いて値S1tを求め直した後に、値S1tが警報判定値Xを超えているか否かを判断する(ステップS17)。
【0038】
上述したガス検出装置1によれば、非加熱時のセンサ部2の温度は、接触燃焼が生じていないため検出対象ガスの濃度に対して不感となる。以上のことに着目し、CPU51は、加熱時のセンサ部2の温度TONと、非加熱時のセンサ部2の温度TOFFと、差(TON−TOFF)に基づいて検出対象ガスの濃度を検出するように設定されている。これにより、センサ部2とは別途に比較素子を用いなくても、加熱されていないときのセンサ部2を比較素子の代わりに用いて、加熱されたときの温度TONから周囲温度の変動分や経年変化によるセンサ部2の温度の変動分を相殺することができるので、正確に検出対象ガスの濃度を検出しつつ省電力化及び小型化を図ることができる。
【0039】
また、上述したガス検出装置1によれば、ステップS14においてCPU51が、演算された差(TON−TOFF)から補正値ΔTを差し引いているので、検出対象ガスとの接触燃焼によるセンサ部2の温度の増加分を得ることができ、より一層正確に検出対象ガスの濃度を検出することができる。
【0040】
また、上述したガス検出装置1によれば、ステップS13においてCPU51が、ステップS4で測定した非加熱時のセンサ部2の温度TOFFが小さいほど補正値ΔTが小さくなるように補正するので、周囲温度の変動を除去した補正値ΔTを用いることができるため、より一層正確に検出対象ガスの濃度を検出することができる。
【0041】
また、上述したガス検出装置1によれば、ステップS19においてCPU51が、差(TON−TOFF)から補正値ΔTを差し引いた値S1tが0より小さいときに、値S1tが大きいほど補正値ΔTが小さくなるように補正するので、センサ部2の経年変化や、加熱温度の変動を除去した補正値ΔTを用いることができるため、より一層正確に検出対象ガスの濃度を検出することができる。
【0042】
なお、上述した実施形態では、センサ部2は基台22上に搭載されていたが、本発明はこれに限ったものではない。例えば、図6(A)及び(B)に示すように構成してもよい。同図に示すように、ヒータ用抵抗体Rhは、コイル状に形成されている。一方、測温抵抗体Rsは、線状に形成されていて、コイル状に形成されたヒータ用抵抗体Rhの中央に貫通している。このような状態で、触媒21によってヒータ用抵抗体Rh及び測温抵抗体Rsを覆って固定している。また、ヒータ用抵抗体Rh及び測温抵抗体Rsの両端は、台座26によって固定された端子27にそれぞれ接続されている。
【0043】
また、上述した実施形態では、初期補正値ΔTiを温度TOFF及び値S1tの両方によって補正していたが、本発明はこれに限ったものではない。精度的に問題がなければ、初期補正値ΔTiの補正を行わなくても良いし、温度TOFF及び値S1tの何れか一方で補正してもよい。
【0044】
また、上述した実施形態では、差(TON−TOFF)から補正値ΔTを差し引いた値S1tに基づいてガス漏れが生じているか否かを判断していたが、本発明はこれに限ったものではない。精度的に問題がなければ、差(TON−TOFF)に基づいてガス漏れが生じているか否かを判断するようにしても良い。
【0045】
また、上述した実施形態では、センサ部2の温度を測定値としていたが、本発明はこれに限ったものではない。測定値としては、センサ部2の温度に応じた値であってもよく、例えば、測温抵抗体Rsの抵抗値であってもよい。
【0046】
また、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明のガス検出装置の一実施形態を示す回路図である。
【図2】図1のガス検出装置を構成するセンサ部の上面図である。
【図3】図2のI−I線断面図である。
【図4】(A)はヒータ用抵抗体の両端電圧のタイムチャートであり、(B)は測温抵抗体に流れる電流のタイムチャートである。
【図5】図1のガス検出装置を構成するCPU51の処理手順を示すフローチャートである。
【図6】図1のガス検出装置を構成するセンサ部の他の実施形態を示す図である。
【図7】従来のガス検出装置の一例を示す回路図である。
【符号の説明】
【0048】
1 ガス検出装置
2 センサ部(センサ素子)
3 加熱回路(加熱手段)
4 測定回路(測定手段)
51 CPU(測定手段、ガス濃度検出手段、差演算手段、第1補正手段、第2補正手段)
52 ROM(補正値記憶手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象ガスと接触燃焼して温度が変化する接触燃焼式のセンサ素子と、前記検出対象ガスと接触燃焼するような温度に前記センサ素子を加熱する加熱手段と、前記センサ素子の温度又は前記温度に応じた値を測定する測定手段と、前記測定手段により測定された測定値に基づいて前記検出対象ガスの濃度を検出するガス濃度検出手段と、を備えたガス検出装置において、
前記ガス濃度検出手段が、前記加熱手段の加熱時に前記測定手段により測定された前記測定値と、前記加熱手段の非加熱時に前記測定手段により測定された前記測定値と、の両方に基づいて前記検出対象ガスの濃度を検出するように設定されている
ことを特徴とするガス検出装置。
【請求項2】
検出対象ガスがない環境において前記加熱手段の加熱時に前記測定手段により測定された前記測定値と、検出対象ガスがない環境において前記加熱手段の非加熱時に前記測定手段により測定された前記測定値と、の差を補正値として予め記憶する補正値記憶手段と、
前記加熱手段の加熱時に前記測定手段により測定された前記測定値と、前記加熱手段の非加熱時に前記測定手段により測定された前記測定値と、の差を演算する差演算手段と、を備え、そして、
前記ガス濃度検出手段が、前記差演算手段により演算された前記差から前記補正値記憶手段に記憶されている補正値を差し引いた値に基づいて前記検出対象ガスの濃度を検出するように設定されていることを特徴とする請求項1に記載のガス検出装置。
【請求項3】
前記加熱手段の加熱時に前記測定手段により測定された前記測定値が小さいほど前記補正値が小さくなるように補正する第1補正手段をさらに備えたことを特徴とする請求項2に記載のガス検出装置。
【請求項4】
前記差演算手段によって演算された差から前記補正値を差し引いた値が0より小さいときに、前記差し引いた値の大きさが大きいほど前記補正値が小さくなるように補正する第2補正手段をさらに備えたことを特徴とする請求項2又は3に記載のガス検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−68876(P2009−68876A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−235069(P2007−235069)
【出願日】平成19年9月11日(2007.9.11)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】