ガス検出装置
【課題】使用状況下での時間経過に伴いガス検出素子の特性変化(劣化)が生じる場合であっても、検出対象ガスのガス検出精度の低下を抑制するガス検出装置を提供する。
【解決手段】ガス検出装置150は、劣化判定処理(S140)にてD素子3が劣化状態であると判定された場合には、ガス検知性能設定処理(S150)において、ガス検知判定処理(S160)でのガス検出感度を上げるための補正処理を行う。このようにしてガス検出感度(酸化性ガス検知閾値Td)の補正処理を行うことで、D素子3が劣化して酸化性ガス検出時における電気的特性の正方向への変化量が減少した場合であっても、ガス検知判定処理(S160)での判定精度が低下するのを抑制できる。ガス検出装置150によれば、使用状況下での時間経過に伴い酸化性ガス用ガスセンサ素子3の特性変化(劣化)が生じる場合であっても、検出対象ガスの検出精度が低下するのを抑制できる。
【解決手段】ガス検出装置150は、劣化判定処理(S140)にてD素子3が劣化状態であると判定された場合には、ガス検知性能設定処理(S150)において、ガス検知判定処理(S160)でのガス検出感度を上げるための補正処理を行う。このようにしてガス検出感度(酸化性ガス検知閾値Td)の補正処理を行うことで、D素子3が劣化して酸化性ガス検出時における電気的特性の正方向への変化量が減少した場合であっても、ガス検知判定処理(S160)での判定精度が低下するのを抑制できる。ガス検出装置150によれば、使用状況下での時間経過に伴い酸化性ガス用ガスセンサ素子3の特性変化(劣化)が生じる場合であっても、検出対象ガスの検出精度が低下するのを抑制できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出対象ガスの濃度変化に応じて電気的特性が変化する酸化物半導体製のガス検出素子と、ガス検出素子における電気的特性の変化状態に基づいて検出対象ガスの有無(濃度変化)を判定するガス判定手段と、を備えるガス検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、検出対象ガスの検出を行うガス検出装置が知られている。
このようなガス検出装置としては、検出対象ガスに反応して電気的特性が変化するガス検出素子と、ガス検出素子における電気的特性の変化状態に基づいて検出対象ガスの有無(濃度変化)を判定するガス判定手段と、を備えて構成されるものがある(特許文献1、2)。
【0003】
なお、ガス検出素子は、検出対象ガスの濃度変化に応じて電気的特性(電気抵抗値など)が変化する酸化物半導体から構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−227807号公報
【特許文献2】特開2004−157051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ガス検出素子は、使用状況下での時間経過に伴い検出特性(検出対象ガスに反応する時の電気的特性の変化特性)が変化(換言すれば、劣化)することがある。
このような劣化が生じる場合には、使用開始直後と一定使用時間経過時とでは、ガス検出素子の検出特性が異なることになる。
【0006】
このため、ガス検出素子における電気的特性の変化状態に基づいて検出対象ガスの有無を判定する際の判定基準が一定である場合には、使用状況下での時間経過に伴いガス検出素子の検出特性が変化すると、その検出特性の変化の影響により、検出対象ガスの有無を判定する際の判定精度が低下するおそれがある。
【0007】
そこで、本発明は、使用状況下での時間経過に伴いガス検出素子の特性変化(劣化)が生じる場合であっても、検出対象ガスのガス検出精度の低下を抑制するガス検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するためになされた請求項1に記載の発明は、検出対象ガスの濃度変化に応じて電気的特性が変化する酸化物半導体製のガス検出素子と、ガス検出素子における電気的特性の変化状態に基づいて検出対象ガスの有無を判定するガス判定手段と、を備えるガス検出装置であって、ガス検出素子の電気的特性に関して、検出対象ガスの濃度が上昇するときの電気的特性の変化方向を正方向変化と定義し、検出対象ガスの濃度が低下するときの電気的特性の変化方向を負方向変化と定義した場合において、予め定められた劣化判定期間における電気的特性の単位時間あたりの変化量のうち、正方向変化の最大値である正方向最大変化量および負方向変化の最大値である負方向最大変化量を演算する変化量演算手段と、正方向最大変化量の絶対値および負方向最大変化量の絶対値に基づいて、ガス検出素子が劣化状態であるか否かを判定する素子劣化判定手段と、素子劣化判定手段にてガス検出素子が劣化状態であると判定された場合には、ガス判定手段におけるガス検出感度を上げるための補正処理を行う検出感度補正手段と、を備えていることを特徴とするガス検出装置である。
【0009】
まず、このガス検出素子は、劣化していない状態(未劣化状態)では、電気的特性における正方向最大変化量の絶対値が負方向最大変化量の絶対値よりも相対的に大きくなる特性を有し、劣化が進行するのに伴い、電気的特性における正方向最大変化量の絶対値が減少し、負方向最大変化量の絶対値が増加する特性を有する。
【0010】
つまり、正方向最大変化量の絶対値および負方向最大変化量の絶対値は、ガス検出素子の劣化状態に応じて変化する。このため、劣化状態のガス検出素子では、電気的特性における正方向最大変化量の絶対値が負方向最大変化量の絶対値よりも相対的に小さくなる。
【0011】
このことから、正方向最大変化量の絶対値および負方向最大変化量の絶対値に基づいてガス検出素子が劣化状態であるか否かを判定する素子劣化判定手段を備えることで、ガス検出素子の劣化状態の有無を判定することができる。
【0012】
そして、素子劣化判定手段にてガス検出素子が劣化状態であると判定された場合には、検出感度補正手段が、ガス判定手段におけるガス検出感度を上げるための補正処理を行う。このような補正処理を行うことで、ガス検出素子が劣化して検出対象ガス検出時における電気的特性の正方向への変化量が減少した場合であっても、ガス判定手段による判定精度が低下するのを抑制できる。
【0013】
よって、本発明によれば、使用状況下での時間経過に伴いガス検出素子の特性変化(劣化)が生じる場合であっても、劣化状態の有無に応じてガス検出感度を補正することにより、検出対象ガスの検出精度が低下するのを抑制できる。
【0014】
なお、上記のガス検出装置においては、正方向最大変化量の絶対値および負方向最大変化量の絶対値に基づきガス検出素子の劣化状態の有無を判定する方法として、種々の方法を採ることができる。
【0015】
例えば、正方向最大変化量の絶対値と負方向最大変化量の絶対値との比較結果は、ガス検出素子の劣化状態に応じて変化するため、正方向最大変化量の絶対値と負方向最大変化量の絶対値との比較結果に基づいて、ガス検出素子の劣化状態の有無を判定する方法を採ることができる。
【0016】
より具体的には、正方向最大変化量の絶対値と負方向最大変化量の絶対値との大小関係について判定を行い、その大小判定結果に基づいてガス検出素子の劣化状態を判定する方法が挙げられる。
【0017】
また、例えば、請求項2に記載のように、素子劣化判定手段は、正方向最大変化量の絶対値と負方向最大変化量の絶対値との比較結果を表す変化量比較結果値を演算する比較結果演算手段と、変化量比較結果値が予め定められた劣化判定基準範囲に含まれるか否かを判定し、変化量比較結果値が劣化判定基準範囲に含まれる場合にはガス検出素子が劣化状態であると判定し、変化量比較結果値が劣化判定基準範囲に含まれない場合にはガス検出素子が劣化状態ではないと判定する劣化状態判定手段と、を備える、という構成を採ることができる。
【0018】
つまり、正方向最大変化量の絶対値と負方向最大変化量の絶対値との比較結果を表す変化量比較結果値は、ガス検出素子の劣化状態に応じて変化するため、この変化量比較結果値を用いることで、ガス検出素子の劣化状態の有無を判定することができる。
【0019】
そして、本発明のガス検出装置は、正方向最大変化量の絶対値と負方向最大変化量の絶対値との比較結果を表す変化量比較結果値を演算し、変化量比較結果値が劣化判定基準範囲に含まれるか否かを判定することで、ガス検出素子の劣化状態の有無を判定する。
【0020】
よって、本発明によれば、変化量比較結果値を用いてガス検出素子の劣化状態の有無を判定することができ、劣化状態に応じてガス検出感度を補正することにより、検出対象ガスの検出精度が低下するのを抑制できる。
【0021】
なお、劣化判定基準範囲を定める方法としては、実際の測定結果などに基づいて、ガス検出素子が劣化状態であるときに変化量比較結果値がとりうる数値範囲を予め特定し、その数値範囲を劣化判定基準範囲として設定する方法を採ることができる。
【0022】
また、正方向最大変化量の絶対値と負方向最大変化量の絶対値との比較結果を表す変化量比較結果値としては、例えば、差分値、比率などが挙げられる。
次に、比較結果演算手段を備えるガス検出装置においては、例えば、請求項3に記載のように、比較結果演算手段は、複数の劣化判定期間でそれぞれ演算された複数の正方向最大変化量および複数の負方向最大変化量を用いて、変化量比較結果値を演算する、という構成を採ることができる。
【0023】
このように、複数の劣化判定期間での数値(最大変化量)を用いて変化量比較結果値を演算する場合には、ノイズなどの影響により、ある劣化判定期間で数値(最大変化量)が急変しても、ノイズの影響を受けていない別の劣化判定期間での数値(最大変化量)を用いて変化量比較結果値を演算できる。
【0024】
つまり、複数の劣化判定期間での数値(最大変化量)を用いる場合には、単一の劣化判定期間での数値を用いて変化量比較結果値を演算する場合に比べて、正方向最大変化量および負方向最大変化量が急変しても、その急変の影響を抑えつつ変化量比較結果値を演算できる。
【0025】
よって、本発明によれば、変化量比較結果値の変動に起因して劣化状態の判定精度が低下するのを抑制できる。
次に、複数の劣化判定期間での最大変化量を用いて変化量比較結果値を演算する構成のガス検出装置においては、例えば、請求項4に記載のように、比較結果演算手段は、劣化判定期間ごとに演算された変化量比較結果値をなまし処理したなまし値を、劣化状態判定手段の判定に用いられる変化量比較結果値として演算する、という構成を採ることができる。
【0026】
このように、なまし処理のもとなまし値として演算された変化量比較結果値を用いて劣化状態判定手段が判定を行うことで、短期間での最大変化量(正方向最大変化量および負方向最大変化量)ではなく、長期間(複数の劣化判定期間)にわたる最大変化量(正方向最大変化量および負方向最大変化量)の変化傾向が加味された変化量比較結果値を演算することができる。
【0027】
よって、本発明によれば、長期間にわたる最大変化量の変化傾向が加味された変化量比較結果値に基づいて劣化判定を行うことができるため、突発的な最大変化量の急変による影響を抑えつつ、ガス検出素子の劣化判定を行うことができる。
【0028】
なお、本発明における「なまし処理」とは、複数の劣化判定期間ごとに演算された変化量比較結果値の移動平均化処理や重み付け平均化処理といったフィルタ処理のほか、例えば、後述する[数2]を用いて、複数の変化量比較結果値の履歴を反映させつつ、最新に得られた変化量比較結果値を用いて、変化量比較結果値のなまし値を更新していく処理が挙げられる。
【0029】
次に、上述のガス検出装置においては、請求項5に記載のように、劣化状態判定手段は、変化量比較結果値が劣化判定基準範囲に含まれると判定した場合には、変化量比較結果値が予め定められた低程度判定基準範囲に含まれるか否かを判定し、変化量比較結果値が低程度判定基準範囲に含まれる場合にはガス検出素子の劣化程度が低いと判定し、変化量比較結果値が低程度判定基準範囲に含まれない場合にはガス検出素子の劣化程度が高いと判定する、という構成を採ることができる。
【0030】
このガス検出装置は、変化量比較結果値が劣化判定基準範囲に含まれると判定した場合に、さらに変化量比較結果値が低程度判定基準範囲に含まれるか否かを判定することから、ガス検出素子が劣化状態であるか否かのみならず、ガス検出素子の劣化程度を判定することができる。
【0031】
このようにしてガス検出素子の劣化程度を判定することで、劣化程度に応じて検出感度補正手段での補正処理を変更することが可能となり、ガス検出素子の劣化程度に応じて適切な補正処理を行うことで、劣化判定の判定精度を向上させることができる。
【0032】
よって、本発明によれば、ガス検出素子の状態を非劣化状態と劣化状態の2段階の区分ではなく、より細かい区分(3段階以上の区分)に分類することで、ガス検知における補正内容を細分化でき、ガス検知精度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明が適用されたガス検出装置に備えられる一体型ガスセンサ素子の概略構成図である。
【図2】本発明が適用されたガス検出装置を備える車両用外気導入制御システムの概略構成を表す構成図である。
【図3】マイコンにおいて実行されるガス検知判定処理の処理内容を表すフローチャートである。
【図4】S130における微分値計算処理の処理内容を詳細に表したフローチャートである。
【図5】S140における劣化判定処理の処理内容を詳細に表したフローチャートである。
【図6】S480における比較結果判定処理の処理内容を詳細に表したフローチャートである。
【図7】S150におけるガス検知性能設定処理の処理内容を詳細に表したフローチャートである。
【図8】第2ガス検出装置における比較結果判定処理(S480)の処理内容を詳細に表したフローチャートである。
【図9】第2ガス検出装置におけるガス検知性能設定処理(S150)の処理内容を詳細に表したフローチャートである。
【図10】実施形態のガス検出装置において、検出対象ガスの検出精度が低下するのを抑制できるか否かを評価した実験結果である。
【図11】新品のD素子および劣化状態のD素子のそれぞれについて、15分間隔で演算した演算値(D側センサ出力値S(n1)の個別変化量比較結果値S/N(n2))を測定した測定結果である。
【図12】新品のD素子および劣化状態のD素子のそれぞれについて、実施形態のガス検出装置を用いて、15分間隔で5回にわたり、個別変化量比較結果値S/N(n2)の移動平均値である変化量比較結果値変数G(n2)を測定した測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
実施形態として、本発明が適用されたガス検出装置を備える車両用外気導入制御システムについて、図面と共に説明する。
【0035】
まず、図1に、本発明が適用されたガス検出装置に備えられる一体型ガスセンサ素子10の概略構成図を示す。図1に示すように、一体型ガスセンサ素子10は、還元性ガス用ガスセンサ素子2、酸化性ガス用ガスセンサ素子3およびヒータ4が、単一のセラミック基板1に形成されて構成されている。
【0036】
このうち、還元性ガス用ガスセンサ素子2(以下、単に「G素子2」ともいう)は、SnO2 を主成分とする酸化物半導体からなる抵抗体であり、主としてCO、HC(ハイドロカーボン)等の還元性ガスに反応してその抵抗値(以下、Gセンサ抵抗値Rgともいう)が変化する性質を有している。また、酸化性ガス用ガスセンサ素子3(以下、単に「D素子3」ともいう)は、WO3 を主成分とする酸化物半導体からなる抵抗体であり、主としてNOx等の酸化性ガスに反応してその抵抗値(以下、Dセンサ抵抗値Rdともいう)が変化する性質を有している。
【0037】
なお、G素子2およびD素子3は、常温ではガスに反応することはなく、所定の活性化温度(例えば、200[℃]以上の温度)になることで、それぞれ還元性ガスあるいは酸化性ガスに反応する活性化状態となる。そして、活性化状態となったG素子2は、還元性ガスの濃度の上昇に伴いGセンサ抵抗値Rgが低下する方向に変化することから、Gセンサ抵抗値Rgの変化に基づいて還元性ガスの濃度変化を検出することができる。また、活性化状態となったD素子3は、酸化性ガスの濃度の上昇に伴いDセンサ抵抗値Rdが上昇する方向に変化することから、Dセンサ抵抗値Rdの変化に基づいて酸化性ガスの濃度変化を検出することができる。
【0038】
また、ヒータ4は、セラミック基板1に形成された抵抗配線からなり、所定の電圧が印加されると発熱するよう構成されており、G素子2およびD素子3を活性化温度以上の目標温度に加熱・維持して活性化状態とするために備えられている。なお、ヒータ4は、少なくともG素子2およびD素子3が活性化温度以上まで加熱できるように、抵抗値などの特性が選択されて構成されている。
【0039】
そして、図1に示す一体型ガスセンサ素子10においては、D素子端子5が後述するマイクロコンピュータ101(後述する図2参照)の第2AD変換入力端子103に接続され、G素子端子6が後述するマイクロコンピュータ101(図2参照)の第1AD変換入力端子102に接続され、ヒータ端子7が後述するヒータ回路131(図2参照)に接続され、基準端子8が後述する電源装置191(図2参照)の負極と同電位のグランドに接続される。
【0040】
次に、図2に、本発明が適用されたガス検出装置150を備える車両用外気導入制御システム100の概略構成を表す構成図を示す。なお、車両用外気導入制御システム100は、ガス検出装置150により外気中に含まれる酸化性ガス濃度および還元性ガス濃度の変化を検出し、その検出結果に基づいて外気導入用フラップ174(以下、単に、フラップ174ともいう)を開閉制御するものである。
【0041】
そして、車両用外気導入制御システム100は、定電圧(定格電圧12[V]。以下、バッテリ電圧VBともいう)を出力する電源装置191(以下、単にバッテリ191ともいう)と、マイクロコンピュータ101(以下、マイコン101ともいう)と、G素子2におけるGセンサ抵抗値Rgの変化に応じた電圧を出力するG素子回路110と、D素子3におけるDセンサ抵抗値Rdの変化に応じた電圧を出力するD素子回路120と、G素子2およびD素子3を活性化温度に加熱・維持するためのヒータ4と、ヒータ4の通電制御を行うヒータ回路131と、駆動電圧Vcc(5[V])を供給するレギュレータ回路140と、フラップ174を制御する電子制御アセンブリ160と、を備えて構成されている。
【0042】
なお、車両用外気導入制御システム100のうち、電源装置191、G素子回路110、D素子回路120、ヒータ4、ヒータ回路131およびマイコン101がガス検出装置150を構成している。
【0043】
電源装置191は、バッテリ電圧VBを出力する電圧出力部192と、アノードが電圧出力部192の負極と同電位のグランドに接続されると共にカソードが電圧出力部192の正極に接続されたツェナーダイオード193と、を備えて構成されており、出力可能な最大出力電圧が40[V]に制限されている。 電子制御アセンブリ160は、外気導入用フラップ174を制御するものである。なお、外気導入用フラップ174は、自動車室内に繋がるダクト171に二股状に接続された内気取り入れ用ダクト172と外気取り入れ用ダクト173とを切り替えるために備えられている。つまり、外気導入用フラップ174は、自動車に備えられる空調システムのうち車室内につながるダクト171に設けられており、車室内への送風の循環状態を外気導入あるいは内気循環に切り替えるために備えられている。
【0044】
また、電子制御アセンブリ160は、フラップ制御回路161と、アクチュエータ162と、を備えて構成されている。このうち、フラップ制御回路161は、マイコン101の出力端子106(OUT端子106)に接続されており、出力端子106からのアセンブリ制御信号(フラップ開閉信号Sf)に従いアクチュエータ162を駆動して、フラップ174を回動することで、内気取り入れ用ダクト172および外気取り入れ用ダクト173のいずれかをダクト171に接続する。なお、ダクト171の内部には、空気を車室内側に向けて圧送するファン175が備えられている。
【0045】
次に、マイコン101は、詳細は図示しないが、公知の構成を有し、演算を行うマイクロプロセッサ、プログラムやデータを一時記憶するRAM、プログラムやデータを保持するROM、アナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換回路などを含んで構成されている。なお、A/D変換回路は、第1AD変換入力端子102、第2AD変換入力端子103、第3AD変換入力端子104から入力されるアナログ信号を、マイクロプロセッサなどで使用可能なデジタル信号に変換する。また、マイコン101は、ヒータ回路131に対してパルス指令信号Shを出力するPWM端子105を備えている。
【0046】
さらに、レギュレータ回路140は、レギュレータ141によって、バッテリ電圧VBの変動に拘わらず、常に一定の駆動電圧Vcc(5[V])を出力するよう構成されており、マイコン101、G素子回路110、D素子回路120等に対して駆動電圧Vccを出力することで、電力供給を行う。なお、マイコン101は、受電端子107(Vcc端子)にて駆動電圧Vccを受電する。
【0047】
また、G素子回路110は、G素子2と抵抗値Raの第1抵抗111とで駆動電圧Vccを抵抗分圧する回路であり、G素子2と第1抵抗111との分圧点(以下、動作点Pgともいう)が、マイコン101の第1AD変換入力端子102に接続されている。そして、動作点Pgの電位(以下、G素子電圧Vgともいう)は、Gセンサ抵抗値Rgの変化に応じて値が変化しており、具体的には、還元性ガス(CO、HCなど)の濃度が上昇すると、G素子電圧Vgは低下する。
【0048】
同様に、D素子回路120は、D素子3と抵抗値Rbの第2抵抗121とで駆動電圧Vccを抵抗分圧する回路であり、D素子3と第2抵抗121との分圧点(以下、動作点Pdともいう)が、マイコン101の第2AD変換入力端子103に接続されている。そして、動作点Pdの電位(以下、D素子電圧Vdともいう)は、Dセンサ抵抗値Rdの変化に応じて値が変化しており、具体的には、酸化性ガス(NOxなど)の濃度が上昇すると、D素子電圧Vdは上昇する。
【0049】
そして、マイコン101は、後述するガス検知判定処理を実行することで、第1AD変換入力端子102および第2AD変換入力端子103に入力されたG素子電圧VgおよびD素子電圧Vdの変化に応じて、還元性ガスや酸化性ガスの濃度変化を検出する。また、マイコン101は、還元性ガスや酸化性ガスの濃度変化についての検出結果に基づき、フラップ開閉信号Sfを電子制御アセンブリ160に対して出力し、ダクト171の内部に備えられるフラップ174の切り替え制御処理を行う。
【0050】
また、ヒータ回路131は スイッチング回路132と、電圧検出回路180とを備えて構成されている。
このうち、電圧検出回路180は、抵抗181,182およびコンデンサ183を備えており、バッテリ191からヒータ4への印加電圧値(換言すれば、バッテリ電圧VB)を分圧し、その分圧した分圧バッテリ電圧VEをマイコン101の第3AD変換入力端子104に入力するよう構成されている。 また、スイッチング回路132は、マイコン101からのパルス指令信号Shに基づき、ヒータ4への電力供給経路を通電状態あるいは遮断状態に切り替え可能に構成されている。つまり、スイッチング回路132は、マイコン101からのパルス指令信号Shが抵抗134を通じてトランジスタ135のベースに入力されるよう構成されており、トランジスタ135は、パルス指令信号Shの状態に応じてオン状態(通電状態)またはオフ状態(遮断状態)に設定される。なお、抵抗136は、バイアス抵抗である。このようなトランジスタ135の状態変化により、抵抗137および抵抗138の接続点に接続するpチャネルMOSFET133のゲート電位が変化して、MOSFET133は、パルス指令信号Shの状態に応じてオン状態(通電状態)またはオフ状態(遮断状態)に設定される。
【0051】
つまり、スイッチング回路132は、マイコン101からのパルス指令信号Shに応じて、ヒータ4への通電・遮断を切り替えることで、ヒータ4への印加電圧をPWM制御するよう構成されている。
【0052】
次に、マイコン101において実行されるガス検知判定処理について、図3に示すフローチャートを用いて説明する。
なお、ガス検知判定処理は、車両用外気導入制御システム100が起動されると共に処理が開始され、車両用外気導入制御システム100が停止するまで処理を継続する。
【0053】
ガス検知判定処理が開始されると、まず、S110(Sはステップを表す)では、RAM動作の初期化などを含む初期設定処理を行う。
なお、S110での初期設定処理には、サンプリング時間カウンタ更新処理を起動する処理や各種パラメータの値を初期値に設定する処理などが含まれる。サンプリング時間カウンタ更新処理は、S200での判定処理に用いるサンプリング時間カウンタを経過時間に応じた値に更新する処理を行う。
【0054】
また、Max(0)は正方向最大変化量変数Max(n1)の初期値であり、Min(0)は負方向最大変化量変数Min(n1)の初期値であり、これらには「0」を設定する。G(0)は変化量比較結果値変数G(n2)の初期値であり、S/N(0)は個別変化量比較結果値変数S/N(n2)の初期値であり、これらには「1」を設定する。
【0055】
そして、正方向最大変化量変数Max(n1)は、D側センサ出力値S(n1)の変化量(微分値)のうち最大値を記録するための内部変数(マイコン101の内部処理に用いる変数)である。なお、D側センサ出力値S(n1)は、D素子3の抵抗値(Dセンサ抵抗値Rd)に相当する数値であり、n1は内部処理の引数(本実施形態では、0.1[sec]毎にインクリメントされるカウンタ用引数)であり、n2は内部処理の引数(本実施形態では、15[min]毎にインクリメントされるカウンタ用引数)である。
【0056】
また、負方向最大変化量変数Min(n1)は、D側センサ出力値S(n1)の変化量(微分値)のうち最小値を記録するための内部変数(マイコン101の内部処理に用いる変数)である。
【0057】
さらに、個別変化量比較結果値S/N(n2)は、正方向最大変化量変数Max(n1)の絶対値を負方向最大変化量変数Min(n1)の絶対値で除算した値であり、後述する[数1]に基づいて演算される。また、変化量比較結果値変数G(n2)は、個別変化量比較結果値S/N(n2)のなまし値である。
【0058】
なお、D素子3は、劣化していない状態(未劣化状態)では、酸化性ガスの濃度が上昇するときのD側センサ出力値S(n1)の変化量の絶対値が、酸化性ガスの濃度が低下するときのD側センサ出力値S(n1)の変化量の絶対値に比べて、相対的に大きくなる特性を有している。また、D素子3は、劣化が進行するのに伴い、酸化性ガスの濃度が上昇するときのD側センサ出力値S(n1)の変化量の絶対値が減少し、酸化性ガスの濃度が低下するときのD側センサ出力値S(n1)の変化量の絶対値が増加する特性を有している。
【0059】
つまり、正方向最大変化量変数Max(n1)の絶対値および負方向最大変化量変数Min(n1)の絶対値は、D素子3の劣化状態に応じて変化する。このため、D素子3が劣化状態になると、正方向最大変化量変数Max(n1)の絶対値が負方向最大変化量変数Min(n1)の絶対値よりも相対的に小さくなる。
【0060】
このことから、正方向最大変化量変数Max(n1)の絶対値および負方向最大変化量変数Min(n1)の絶対値に基づいて、D素子3の劣化状態の有無を判定することができる。
【0061】
次のS120では、D素子3の抵抗値(Dセンサ抵抗値Rd)に応じた値を示すD側センサ出力値と、G素子2の抵抗値(Gセンサ抵抗値Rg)に応じた値を示すG側センサ出力値と、を取得する処理を行う。ここでは、第1AD変換入力端子102および第2AD変換入力端子103から入力されるアナログ信号をA/D変換回路で変換して得られるデジタル信号を、G側センサ出力値およびD側センサ出力値として取得する。
【0062】
なお、以下の説明においては、D素子3の抵抗値(Dセンサ抵抗値Rd)に応じた値を示すD側センサ出力値を「D側センサ出力値S(n1)」ともいう。
次のS130では、S120で取得したD側センサ出力値S(n1)の微分値を計算する処理(微分値計算処理)を実行する。
【0063】
ここで、S130における微分値計算処理の処理内容を詳細に表したフローチャートを、図4に示す。
微分値計算処理が起動されると、まず、S310では、車両用外気導入制御システム100の起動時点(電源投入時点)から初期待機時間(本実施形態では、1.6[sec])が経過したか否かを判定しており、否定判定する場合にはS320に移行し、肯定判定する場合には、S330に移行する。
【0064】
S310で否定判定されてS320に移行すると、S320では、D側センサ出力微分値変数B(n1)に対して現在のD側センサ出力値S(n1)からD側センサ出力値の初期値S(0)を差し引いた値を代入する処理(B(n1)=S(n1)−S(0))を実行する。
【0065】
S310で肯定判定されてS330に移行すると、S330では、D側センサ出力微分値変数B(n1)に対して現在のD側センサ出力値S(n1)から16サンプリング前のD側センサ出力値S(n1−16)を差し引いた値を代入する処理(B(n1)=S(n1)−S(n1−16))を実行する。
【0066】
S320またはS330での処理が終了するとS340に移行し、S340では、D側センサ出力微分値変数B(n1)が正方向最大変化量変数Max(n1)よりも大きいか否かを判断し、肯定判定する場合にはS360に移行し、否定判定する場合にはS350に移行する。
【0067】
S340で肯定判定されてS360に移行すると、S360では、D側センサ出力微分値変数B(n1)を正方向最大変化量変数Max(n1)に代入する処理(Max(n1)=B(n1))を実行する。
【0068】
S340で否定判定されてS350に移行すると、S350では、D側センサ出力微分値変数B(n1)が負方向最大変化量変数Min(n1)よりも小さいか否かを判断し、肯定判定する場合にはS370に移行し、否定判定する場合には本処理(微分値計算処理)を終了する。
【0069】
S360またはS370での処理が終了するか、S350で否定判定されると、本処理(微分値計算処理)が終了し、再度、ガス検知判定処理に移行する。
ガス検知判定処理に移行すると、S140にて、酸化性ガス用ガスセンサ素子3(D素子3)が劣化状態であるか否かを判定する処理(劣化判定処理)を実行する。
【0070】
ここで、S140における劣化判定処理の処理内容を詳細に表したフローチャートを、図5に示す。
劣化判定処理が起動されると、まず、S410では、劣化判定期間が経過したか否かを判定しており、肯定判定する場合にはS420に移行し、否定判定する場合には、S430に移行する。なお、劣化判定期間は、劣化判定を行う周期に相当するものであり、本実施形態では、劣化判定期間として「15分」が設定されている。
【0071】
なお、S410で否定判定されると、S430にて、監視カウンタCnのインクリメント処理を実行する。ここでの監視カウンタCnとは、劣化判定期間が経過したか否かを監視するためのカウンタ変数のことである。
【0072】
つまり、S410およびS430での処理によって、劣化判定期間が経過する毎にS410で肯定判定される。これにより、劣化判定期間に相当する周期毎に、S420〜S490での処理(変化量比較結果値G(n2)の演算処理、劣化判定処理)が実行される。
【0073】
S410で肯定判定されてS420に移行すると、S420では、今回の劣化判定期間における変化量比較結果値を演算する処理を行う。具体的には、正方向最大変化量変数Max(n1)の絶対値を負方向最大変化量変数Min(n1)の絶対値で除算した値を、個別変化量比較結果値S/N(n2)に代入する処理を実行する。つまり、[数1]に基づいて個別変化量比較結果値S/N(n2)の演算を行う。
【0074】
【数1】
【0075】
次のS440では、個別変化量比較結果値S/N(n2)が1より小さいか否かを判定しており、肯定判定する場合にはS450に移行し、否定判定する場合にはS460に移行する。
【0076】
S440で肯定判定されてS450に移行すると、S450では、なまし処理演算用係数K1に対して「1/2」を設定する処理(K1=1/2)を行う。
S440で否定判定されてS460に移行すると、S460では、なまし処理演算用係数K1に対して「1/16」を設定する処理(K1=1/16)を行う。
【0077】
S450またはS460での処理が終了するとS470に移行し、S470では、個別変化量比較結果値S/N(n2)のなまし値(変化量比較結果値変数G(n2))を演算するなまし処理を行う。
【0078】
具体的には、[数2]に基づいて変化量比較結果値変数G(n2)の演算を行う。
【0079】
【数2】
【0080】
なお、[数2]のうち、K1はなまし処理演算用係数であり、S450またはS460で値が設定される。
また、[数2]の演算では、変化量比較結果値変数G(n2)の過去データ(G(n2−1))を用いるが、S470の初回演算時には、S110で設定した初期値G(0)を過去データ(G(n2−1))として用いる。
【0081】
次のS480では、変化量比較結果値変数G(n2)に基づいてD素子3が劣化状態であるか否かを判定する処理(比較結果判定処理)を行う。
ここで、S480における比較結果判定処理の処理内容を詳細に表したフローチャートを、図6に示す。
【0082】
比較結果判定処理が起動されると、まず、S610では、変化量比較結果値変数G(n2)が劣化判定閾値Th1よりも大きいか否かを判断し、肯定判定する場合にはS620に移行し、否定判定する場合にはS630に移行する。
【0083】
なお、劣化判定閾値Th1は、D素子3の非劣化状態と劣化状態との境界値が設定されており、本実施形態では、劣化判定閾値Th1は「0.6」が設定されている。つまり、変化量比較結果値変数G(n2)が劣化判定閾値Th1よりも大きい場合には、D素子3が非劣化状態であると判定でき、変化量比較結果値変数G(n2)が劣化判定閾値Th1以下である場合には、D素子3が劣化状態であると判定できる。
【0084】
なお、劣化判定閾値Th1を定める方法としては、例えば、実際の測定結果などに基づいて、D素子3の変化量比較結果値(個別変化量比較結果値S/N(n2))がとりうる数値範囲を特定し、劣化判定閾値Th1を定める方法が挙げられる。つまり、実際の測定結果などに基づいて、D素子3が劣化状態であるときに変化量比較結果値がとりうる数値範囲と、D素子3が非劣化状態(新品状態)のときに変化量比較結果値がとりうる数値範囲と、の境界値を劣化判定閾値Th1として定める方法が挙げられる。
【0085】
S610で肯定判定されてS620に移行すると、S620では、D素子3の状態が非劣化状態(新品状態)であると認識する処理(新品認識処理)を行う。なお、S620では、マイコン101の内部フラグとしての新品認識フラグFnをセット状態(ON状態)に設定する。
【0086】
S610で否定判定されてS630に移行すると、S630では、D素子3の状態が劣化状態であると認識する処理(劣化品認識処理)を行う。なお、S630では、マイコン101の内部フラグとしての新品認識フラグFnをリセット状態(OFF状態)に設定する。
【0087】
S620またはS630での処理が終了すると(換言すれば、比較結果判定処理が終了すると)、再び劣化判定処理に戻り、続くS490に移行する。
S490では、正方向最大変化量変数Max(n1)、負方向最大変化量変数Min(n1)、監視カウンタCnをクリアする処理(クリア処理)を行う。具体的には、正方向最大変化量変数Max(n1)に0を代入し、負方向最大変化量変数Min(n1)に0を代入し、監視カウンタCnをリセットする処理を行う。
【0088】
また、S490では、引数n2をインクリメントする処理を実行しており、引数n2は、15分毎にインクリメント(1加算)される。
S490での処理が終了すると(換言すれば、劣化判定処理が終了すると)、再びガス検知処理に移行する。
【0089】
ガス検知処理に移行すると、S150にて、酸化性ガス用ガスセンサ素子3(D素子3)のD側センサ出力値S(n1)を用いたガス検知性能(ガス検知精度)を設定する処理(ガス検知性能設定処理)を実行する。
【0090】
ここで、S150におけるガス検知性能設定処理の処理内容を詳細に表したフローチャートを、図7に示す。
ガス検知性能設定処理が起動されると、まず、S710では、新品認識フラグFnがセット状態(ON状態)であるか否かを判断し、肯定判定する場合にはS720に移行し、否定判定する場合にはS730に移行する。つまり、S710では、S140(劣化判定処理)での判定結果に基づいて、D素子3が非劣化状態(新品状態)であるか否かを判定する。
【0091】
S710で肯定判定されてS720に移行すると、S720では、D側センサ出力値S(n1)を用いたガス検知性能(ガス検知精度)を「新品用ガス検知性能」に設定する処理を実行する。
【0092】
具体的には、酸化性ガス検知閾値Tdに対して新品用閾値Tnを設定する処理を行う。なお、新品用閾値Tnは、非劣化状態(新品状態)のD素子3に関して、酸化性ガスを検出したときにD側センサ出力値S(n1)がとりうる数値範囲と、酸化性ガスを検出していないときにD側センサ出力値S(n1)がとりうる数値範囲と、の境界値が設定されている。
【0093】
S710で否定判定されてS730に移行すると、S730では、D側センサ出力値S(n1)を用いたガス検知性能(ガス検知精度)を「劣化品用ガス検知性能」に設定する処理を実行する。
【0094】
具体的には、酸化性ガス検知閾値Tdに対して劣化品用閾値Toを設定する処理を行う。なお、劣化品用閾値Toは、劣化状態のD素子3に関して、酸化性ガスを検出したときにD側センサ出力値S(n1)がとりうる数値範囲と、酸化性ガスを検出していないときにD側センサ出力値S(n1)がとりうる数値範囲と、の境界値が設定されている。
【0095】
なお、非劣化状態(新品状態)から劣化状態に移行するに従い、同一濃度の酸化性ガスを検出したときにD側センサ出力値S(n1)がとりうる数値範囲が低下する特性を有するD素子3においては、新品用閾値Tnは、劣化品用閾値Toよりも大きい値となる。
【0096】
S720またはS730での処理が終了すると(換言すれば、ガス検知性能設定処理が終了すると)、再びガス検知処理に移行する。
ガス検知処理に移行すると、S160にて、S120で取得したD側センサ出力値およびG側センサ出力値を用いて、外気中から酸化性ガスまたは還元性ガスを検知したか否かを判定する処理(ガス検知判定処理)を実行する。
【0097】
なお、S160では、酸化性ガスを検知したか否かを判定する処理(酸化性ガス検知判定処理)と、還元性ガスを検知したか否かを判定する処理(還元性ガス検知判定処理)とを実行するが、この処理は、センサ出力値と、当該センサ出力値に基づいて算出される基準値との差分値をガス検知閾値と比較することにより行っている。なお、上記基準値の算出手法を含めた上記差分値と上記ガス検知閾値との比較手法については、本出願人が出願した特開2003−227807に記載の公知の手法を、D側センサ出力値、G側センサ出力値共に採用すればよい。
【0098】
そして、S160では、酸化性ガス検知判定処理として、酸化性ガス用ガスセンサ素子3(D素子3)のD側センサ出力値S(n1)と、D側センサ出力値を用いて算出された基準値との差分値が、酸化性ガス検知閾値Tdよりも大きいか否かを判断して、酸化性ガスを検知したか否かを判定する処理を実行する。
【0099】
つまり、S160の酸化性ガス検知判定処理では、D側センサ出力値S(n1)と基準値B(n1)との差分値D(n1)(=S(n1)−B(n1))が酸化性ガス検知閾値Tdよりも大きいか否か(D(n1)>Td?)を判断しており、肯定判定した場合(差分値D(n1)が酸化性ガス検知閾値Tdよりも大きい場合)に酸化性ガスを検知したと判定し、否定判定した場合(差分値D(n1)が酸化性ガス検知閾値Td以下である場合)に酸化性ガスを検知していないと判定する。
【0100】
そして、酸化性ガスを検知したと判定した場合には、酸化性ガス検知フラグ(D検知F)をセット状態(ON状態)に設定し、酸化性ガスを検知していないと判定した場合には、酸化性ガス検知フラグ(D検知F)をリセット状態(OFF状態)に設定する。
【0101】
また、S160では、還元性ガス検知判定処理として、G側センサ出力値を用いて算出された基準値と、還元性ガス用ガスセンサ素子2(G素子2)のG側センサ出力値との差分値が、還元性ガス検知用閾値よりも大きいか否かを判断して、還元性ガスを検知したか否かを判定する処理を実行する。
【0102】
そして、還元性ガスを検知したと判定した場合には、還元性ガス検知フラグ(G検知F)をセット状態(ON状態)に設定し、還元性ガスを検知していないと判定した場合には、還元性ガス検知フラグ(G検知F)をリセット状態(OFF状態)に設定する。
【0103】
次のS170では、酸化性ガス検知フラグ(D検知F)および還元性ガス検知フラグ(G検知F)の状態に基づいて、外気中から酸化性ガスまたは還元性ガスの検知中であるか否かを判断し、肯定判定する場合にはS180に移行し、否定判定する場合にはS190に移行する。
【0104】
具体的には、S170では、酸化性ガス検知フラグ(D検知F)および還元性ガス検知フラグ(G検知F)のうち少なくとも一方がセット状態(ON状態)であるか否かを判定し、肯定判定する場合(D検知FまたはG検知Fの少なくとも一方がセット状態(ON状態)の場合)には、ガス検知中であると判定してS180に移行し、否定判定する場合(D検知FおよびG検知Fのいずれもがリセット状態(OFF状態)の場合)には、ガス検知していないと判定してS190に移行する。
【0105】
S170で肯定判定されてS180に移行すると、S180では、外気の中から酸化性ガスまたは還元性ガスを検知した場合に対応した信号出力処理を行う。具体的には、S180では、フラップ開閉信号Sfを「フラップ174の位置を内気循環状態とする指令内容」(内気循環指令)に設定して、フラップ開閉信号Sfを電子制御アセンブリ160に対して出力する処理を行う。
【0106】
つまり、S170で肯定判定される場合には、外気中に酸化性ガスまたは還元性ガスが含まれていると判定できる(換言すれば、外気が検出対象ガスにより汚れていると判定できる)。このような場合、ガス検出装置150は、内気循環指令としてのフラップ開閉信号Sfを出力して、フラップ174の位置を内気循環状態に設定することで、汚れた外気が導入されるのを防止する。
【0107】
S170で否定判定されてS190に移行すると、S190では、外気が正常である場合に対応した信号出力処理を行う。具体的には、S190では、フラップ開閉信号Sfを「フラップ174の位置を外気導入状態とする指令内容」(外気導入指令)に設定して、フラップ開閉信号Sfを電子制御アセンブリ160に対して出力する処理を行う。
【0108】
つまり、S170で否定判定される場合には、外気中に酸化性ガスおよび還元性ガスが含まれていないと判定できる(換言すれば、外気が検出対象ガスにより汚れていないと判定できる)。このような場合、ガス検出装置150は、外気導入指令としてのフラップ開閉信号Sfを出力して、フラップ174の位置を外気導入状態に設定することで、外気が導入されるように制御を行う。
【0109】
なお、フラップ開閉信号Sfを受信した電子制御アセンブリ160は、フラップ開閉信号Sfの指令内容に応じて、フラップ174を駆動制御する。
次のS200では、サンプリング時間カウンタの数値に基づいてサンプリング時間がカウントアップされたか否かを判定しており、肯定判定する場合には再びS120に移行し、否定判定する場合には同ステップを繰り返し実行することで肯定判定されるまで待機する。つまり、S200は、予め定められたサンプリング周期(サンプリング時間)が経過する毎に肯定判定する処理を行う。
【0110】
このように構成されたガス検出装置150は、S120でのセンサ値取得処理が周期的に実行され、D素子3およびG素子2のセンサ値を周期的に取得する。
そして、ガス検出装置150は、S120〜S200までの処理を繰り返し実行することで、D素子3およびG素子2のセンサ値を周期的に取得し、取得したセンサ値に基づいて酸化性ガスまたは還元性ガスの検知(換言すれば、酸化性ガスまたは還元性ガスの濃度上昇の有無についての判定)を行う。
【0111】
また、ガス検出装置150は、ガス検知判定に際して、D素子3の劣化判定を行い(S140)、劣化判定の判定結果に基づいてガス検知性能を設定する(S150)ことにより、素子(D素子3)の劣化に起因するガス検出精度の低下を抑制している。
【0112】
次に、本実施形態のガス検出装置150を用いて、使用状況下での時間経過に伴いガス検出素子(D素子3)の特性変化(劣化)が生じる場合であっても、劣化状態に応じてガス検出感度を補正することにより、検出対象ガス(酸化性ガス)の検出精度が低下するのを抑制できるか否かを評価した実験結果について説明する。
【0113】
実験は、測定対象ガスにおける酸化性ガスおよび還元性ガスの濃度をそれぞれ変動させる条件下でガス検知判定を行い、そのときのD側センサ出力値S(n1)、酸化性ガス検知フラグ(D検知F)などの各変数の変化状態を記録する、という方法を採った。また、本実験では、新品のD素子3および劣化状態のD素子3をそれぞれ用いて行い、特に、劣化状態のD素子3については、ガス検出感度の補正を行う場合と補正を行わない場合とについて、実験を実施した。
【0114】
なお、本実験では、酸化性ガスとしてはNO2 を用い、還元性ガスとしてはCOおよびH2 を用いた。
図10に、本実施形態のガス検出装置150において、検出対象ガス(酸化性ガス)の検出精度が低下するのを抑制できるか否かを評価した実験結果を示す。なお、図10では横軸を経過時間とし、縦軸を各変数の値や変数の状態として、実験結果を表す。また、図10では、劣化状態のD素子3のD側センサ出力値S(n1)を「劣化センサ値」として、新品のD素子3のD側センサ出力値S(n1)を「新品センサ値」として、劣化状態のD素子3において補正を行わない場合でのD検知Fの状態を「劣化センサ検知(補正前)」として、劣化状態のD素子3において補正を行う場合でのD検知Fの状態を「劣化センサ検知(補正後)」として、新品のD素子3において補正を行わない場合でのD検知Fの状態を「新品センサ検知(補正無)」として、それぞれ表している。
【0115】
実験結果に示すように、D側センサ出力値S(n1)である新品センサ値と劣化センサ値とは明らかに値が異なっており、劣化センサ値は、新品センサ値に比べると小さい値を示すことが判る。
【0116】
そして、酸化性ガス検知フラグ(D検知F)については、「新品センサ検知(補正無)」ではガス検知中の状態(セット状態)であるにもかかわらず、「劣化センサ検知(補正前)」ではガス検知していない状態(リセット状態)となる部分が多数存在する。これに対して、「劣化センサ検知(補正後)」では、ガス検知中の状態(セット状態)となる部分が増えており、「劣化センサ検知(補正前)」では検出できないガスを検知できることが判る。
【0117】
よって、この実験結果によれば、本実施形態のガス検出装置150を用いることで、ガス検出素子(D素子3)の特性変化(劣化)が生じる場合であっても、劣化状態に応じてガス検出感度を補正することにより、検出対象ガス(酸化性ガス)の検出精度が低下するのを抑制できることが判る。
【0118】
次に、D素子3のD側センサ出力値S(n1)における個別変化量比較結果値S/N(n2)に関して、15分間隔で演算した演算値と、本実施形態のガス検出装置150と同様の方法で算出したなまし値(換言すれば、変化量比較結果値変数G(n2))と、を比較するための比較測定における測定結果について説明する。
【0119】
まず、新品のD素子3および劣化状態のD素子3のそれぞれについて、15分間隔で演算した演算値(D側センサ出力値S(n1)の個別変化量比較結果値S/N(n2))を5回にわたり測定した測定結果を図11に示す。なお、図11では、個別変化量比較結果値S/N(n2)を縦軸の「S/N比」として記載している。
【0120】
図11に示す測定結果によれば、新品センサの個別変化量比較結果値S/N(n2)および劣化センサの個別変化量比較結果値S/N(n2)は、いずれも5回の測定それぞれにおいて値が変動していることが判る。つまり、新品センサであっても、劣化センサであっても、個別変化量比較結果値S/N(n2)は、常に一定値を示すものではなく値が変動していることが判る。
【0121】
次に、新品のD素子3および劣化状態のD素子3のそれぞれについて、本実施形態のガス検出装置150を用いて、15分間隔で5回にわたり、個別変化量比較結果値S/N(n2)のなまし値である変化量比較結果値変数G(n2)を測定した測定結果を図12に示す。なお、図12では、変化量比較結果値変数G(n2)を縦軸の「判定用S/N比」として記載している。なお、なまし値である変化量比較結果値変数G(n2)を取得するためのなまし処理による演算については、上述した通りである。
【0122】
図12に示す測定結果によれば、新品センサの変化量比較結果値変数G(n2)は、5回の測定結果がいずれも1.0〜1.2の範囲に含まれていることが判り、また、劣化センサの変化量比較結果値変数G(n2)は、3回目以降の測定結果が0.6以下となることが判る。
【0123】
これらの結果から、図11に示す個別変化量比較結果値S/N(n2)の測定結果に比べて、図12に示す変化量比較結果値変数G(n2)の測定結果は、値の変動幅が小さいことが判る。
【0124】
つまり、D素子3のD側センサ出力値S(n1)における個別変化量比較結果値S/N(n2)に関しては、演算した値をそのまま用いる場合よりも、なまし値(換言すれば、変化量比較結果値変数G(n2))を用いることで、瞬時的な値の変動の影響を抑えつつ、素子の状態(劣化状態)を判定することが可能となる。
【0125】
したがって、本実施形態のガス検出装置150によれば、D素子3のD側センサ出力値S(n1)における瞬時的な値の変動の影響を抑えつつ、素子の状態(劣化状態)を判定すること(S480)が可能となる。
【0126】
なお、図12の測定結果によれば、S610での判定処理に用いる劣化判定閾値Th1の値を「0.6」に設定することで、D素子3の非劣化状態と劣化状態との判定が可能となることが判る。
【0127】
以上説明したように、本実施形態の酸化性ガス用ガスセンサ素子3(D素子3)は、劣化状態に応じて、正方向最大変化量変数Max(n1)の絶対値および負方向最大変化量変数Min(n1)の絶対値が変化する特性を有している。
【0128】
そして、本実施形態のガス検出装置150は、正方向最大変化量変数Max(n1)の絶対値および負方向最大変化量変数Min(n1)の絶対値に基づいて、D素子3が劣化状態であるか否かを判定する劣化判定処理(S140)を実行するマイコン101を備えている。具体的には、正方向最大変化量変数Max(n1)の絶対値および負方向最大変化量変数Min(n1)の絶対値に基づいて、これらの比率を表す個別変化量比較結果値変数S/N(n2)および変化量比較結果値変数G(n2)を演算して(S420,S470)、変化量比較結果値変数G(n2)に基づいてD素子3の劣化状態の有無を判定している(S610)。
【0129】
そして、劣化判定処理(S140)にてD素子3が劣化状態であると判定された場合には、ガス検知性能設定処理(S150)において、ガス検知判定処理(S160)でのガス検出感度を上げるための補正処理を行う。具体的には、非劣化状態と判定した場合には、酸化性ガス検知閾値Tdに対して新品用閾値Tnを設定し(S720)、劣化状態と判定した場合には、酸化性ガス検知閾値Tdに対して劣化品用閾値Toを設定する(S730)。
【0130】
このようにしてガス検出感度(酸化性ガス検知閾値Td)の補正処理を行うことで、D素子3が劣化して酸化性ガス検出時における電気的特性の正方向への変化量が減少した場合であっても、ガス検知判定処理(S160)での判定精度が低下するのを抑制できる。
【0131】
よって、本実施形態のガス検出装置150によれば、使用状況下での時間経過に伴い酸化性ガス用ガスセンサ素子3(D素子3)の特性変化(劣化)が生じる場合であっても、劣化状態に応じてガス検出感度(酸化性ガス検知閾値Td)を補正することにより、検出対象ガスの検出精度が低下するのを抑制できる。
【0132】
また、本実施形態の劣化判定処理(S140)では、単一の劣化判定期間で演算された個別変化量比較結果値変数S/N(n2)のみを用いて劣化判定を行うのではなく、複数の劣化判定期間でそれぞれ演算された個別変化量比較結果値変数S/N(n2)が反映された変化量比較結果値変数G(n2)を用いて劣化判定を行う(S610)。
【0133】
この変化量比較結果値変数G(n2)は、ノイズなどの影響により、ある特定の劣化判定期間で、正方向最大変化量変数Max(n1)の絶対値および負方向最大変化量変数Min(n1)の絶対値が急変しても、ノイズの影響を受けていない別の劣化判定期間での数値も反映された数値として演算される。
【0134】
つまり、変化量比較結果値変数G(n2)を用いる場合には、単一の劣化判定期間での数値である個別変化量比較結果値変数S/N(n2)を用いる場合に比べて、正方向最大変化量変数Max(n1)の絶対値および負方向最大変化量変数Min(n1)の絶対値が急変しても、その急変の影響を抑えつつ劣化判定に用いる数値(変化量比較結果値)を演算できる。
【0135】
よって、本実施形態のガス検出装置150によれば、正方向最大変化量変数Max(n1)の絶対値および負方向最大変化量変数Min(n1)の絶対値が急変しても、劣化判定に用いる数値(変化量比較結果値)が不適切な値となるのを抑制することができ、ノイズなどの突発的な現象に起因して劣化状態の判定精度が低下するのを抑制できる。
【0136】
なお、本実施形態においては、酸化性ガス用ガスセンサ素子3(D素子3)が特許請求の範囲におけるガス検出素子に相当している。
また、S120,S160を実行するマイコン101がガス判定手段に相当し、S130を実行するマイコン101が変化量演算手段に相当し、S140を実行するマイコン101が素子劣化判定手段に相当し、S150を実行するマイコン101が検出感度補正手段に相当している。
【0137】
さらに、S420,S440,S450,S460,S470を実行するマイコン101が比較結果演算手段に相当し、S480,S610,S620,S630を実行するマイコン101が劣化状態判定手段に相当している。
【0138】
また、個別変化量比較結果値変数S/N(n2)および変化量比較結果値変数G(n2)が変化量比較結果値に相当し、劣化判定閾値Th1以下の数値範囲が劣化判定基準範囲に相当している。
【0139】
なお、上記実施形態(以下、第1実施形態ともいう)では、素子の状態を2段階(新品状態、劣化状態)で判定する構成を採用しているが、素子の状態を3段階以上で判定する構成を採ることも可能である。
【0140】
そこで、第2実施形態として、素子の状態を3段階(新品状態、劣化低状態、劣化高状態)で判定する構成の第2ガス検出装置について説明する。
なお、第2ガス検出装置は、第1実施形態のガス検出装置150と比べて、比較結果判定処理(S480)およびガス検知性能設定処理(S150)の処理内容が異なることから、この相違点を中心に説明する。
【0141】
まず、第2ガス検出装置における比較結果判定処理(S480)について説明する。なお、第2ガス検出装置における比較結果判定処理(S480)の処理内容を詳細に表したフローチャートを、図8に示す。
【0142】
図8に示す比較結果判定処理が起動されると、まず、S810では、変化量比較結果値変数G(n2)が低劣化判定閾値Th2よりも大きいか否かを判断し、肯定判定する場合にはS820に移行し、否定判定する場合にはS830に移行する。
【0143】
なお、低劣化判定閾値Th2は、D素子3の非劣化状態と低劣化状態との境界値が設定されており、本実施形態では、低劣化判定閾値Th2は「0.6」が設定されている。つまり、変化量比較結果値変数G(n2)が低劣化判定閾値Th2よりも大きい場合には、D素子3が非劣化状態であると判定でき、変化量比較結果値変数G(n2)が低劣化判定閾値Th2以下である場合には、D素子3が少なくとも低劣化状態であると判定できる。
【0144】
S810で肯定判定されてS820に移行すると、S820では、D素子3の状態が非劣化状態(新品状態)であると認識する処理(新品認識処理)を行う。なお、S820では、マイコン101の内部変数としての素子状態変数Vnに対して新品状態を表す値を設定する。なお、素子状態変数Vnは、素子の状態に応じた値が設定される変数であり、例えば、新品状態を表す値としては「0」、低劣化状態を表す値としては「1」、高劣化状態を表す値としては「2」が設定される。
【0145】
S810で否定判定されてS830に移行すると、S830では、変化量比較結果値変数G(n2)が高劣化判定閾値Th3よりも大きいか否かを判断し、肯定判定する場合にはS840に移行し、否定判定する場合にはS850に移行する。
【0146】
なお、高劣化判定閾値Th3は、D素子3の低劣化状態と高劣化状態との境界値が設定されており、本実施形態では、高劣化判定閾値Th3は「0.4」が設定されている。つまり、変化量比較結果値変数G(n2)が高劣化判定閾値Th3よりも大きい場合には、D素子3が低劣化状態であると判定でき、変化量比較結果値変数G(n2)が高劣化判定閾値Th3以下である場合には、D素子3が高劣化状態であると判定できる。
【0147】
S830で肯定判定されてS840に移行すると、S840では、D素子3の状態が低劣化状態であると認識する処理(劣化レベル低認識処理)を行う。なお、S840では、マイコン101の内部変数としての素子状態変数Vnに対して低劣化状態を表す値を設定する。
【0148】
S830で否定判定されてS850に移行すると、S850では、D素子3の状態が高劣化状態であると認識する処理(劣化レベル高認識処理)を行う。なお、S850では、マイコン101の内部変数としての素子状態変数Vnに対して高劣化状態を表す値を設定する。
【0149】
なお、低劣化判定閾値Th2および高劣化判定閾値Th3を定める方法としては、例えば、実際の測定結果などに基づいて、D素子3の変化量比較結果値(個別変化量比較結果値S/N(n2))がとりうる数値範囲を特定し、低劣化判定閾値Th2および高劣化判定閾値Th3を定める方法が挙げられる。
【0150】
つまり、実際の測定結果などに基づいて、D素子3が低劣化状態であるときに変化量比較結果値がとりうる数値範囲と、D素子3が非劣化状態(新品状態)のときに変化量比較結果値がとりうる数値範囲と、の境界値を低劣化判定閾値Th2として定める方法が挙げられる。また、実際の測定結果などに基づいて、D素子3が低劣化状態であるときに変化量比較結果値がとりうる数値範囲と、D素子3が高劣化状態のときに変化量比較結果値がとりうる数値範囲と、の境界値を高劣化判定閾値Th3として定める方法が挙げられる。
【0151】
S820,S840,S850での処理が終了すると(換言すれば、比較結果判定処理が終了すると)、再び劣化判定処理に戻り、続くS490に移行する。
次に、第2ガス検出装置におけるガス検知性能設定処理(S150)について説明する。なお、第2ガス検出装置におけるガス検知性能設定処理(S150)の処理内容を詳細に表したフローチャートを、図9に示す。
【0152】
図9に示すガス検知性能設定処理が起動されると、まず、S910では、素子状態変数Vnの値が新品状態を表す値「0」であるか否かを判断しており、肯定判定する場合にはS920に移行し、否定判定する場合にはS930に移行する。つまり、S910では、S140(劣化判定処理。より詳細には、S480の比較結果判定処理。)での判定結果に基づいて、D素子3が非劣化状態(新品状態)であるか否かを判定する。
【0153】
S910で肯定判定されてS920に移行すると、S920では、D側センサ出力値S(n1)を用いたガス検知性能(ガス検知精度)を「新品用ガス検知性能」に設定する処理を実行する。
【0154】
具体的には、酸化性ガス検知閾値Tdに対して新品用閾値Tnを設定する処理を行う。 S910で否定判定されてS930に移行すると、S930では、素子状態変数Vnの値が低劣化状態を表す値「1」であるか否かを判断しており、肯定判定する場合にはS940に移行し、否定判定する場合にはS950に移行する。つまり、S910では、S140(劣化判定処理。より詳細には、S480の比較結果判定処理。)での判定結果に基づいて、D素子3が低劣化状態であるか否かを判定する。
【0155】
S930で肯定判定されてS940に移行すると、S940では、D側センサ出力値S(n1)を用いたガス検知性能(ガス検知精度)を「劣化レベル低品用ガス検知性能」に設定する処理を実行する。
【0156】
具体的には、酸化性ガス検知閾値Tdに対して低劣化品用閾値To1を設定する処理を行う。
S930で否定判定されてS950に移行すると、S950では、D側センサ出力値S(n1)を用いたガス検知性能(ガス検知精度)を「劣化レベル高品用ガス検知性能」に設定する処理を実行する。
【0157】
具体的には、酸化性ガス検知閾値Tdに対して高劣化品用閾値To2を設定する処理を行う。
なお、非劣化状態(新品状態)から劣化状態に移行するに従い、酸化性ガスが同一の濃度変化を生じたときにD側センサ出力値S(n1)がとりうる数値範囲が低下する特性を有するD素子3においては、新品用閾値Tnは低劣化品用閾値To1よりも大きい値となり、さらに、低劣化品用閾値To1は高劣化品用閾値To2よりも大きい値となる。
【0158】
S920,S940,S950での処理が終了すると(換言すれば、ガス検知性能設定処理が終了すると)、再びガス検知処理に移行する。
このような構成の第2ガス検出装置は、変化量比較結果値変数G(n2)が低劣化判定閾値Th2以下と判定された場合(S810で否定判定)に、さらに変化量比較結果値変数G(n2)と高劣化判定閾値Th3との比較判定を行うことから、D素子3が劣化状態であるか否かのみならず、D素子3の劣化程度(低劣化状態、高劣化状態)を判定することができる。
【0159】
このようにしてD素子3の劣化程度を判定することで、劣化程度に応じて酸化性ガス検知閾値Tdを変更(補正)することが可能となり、D素子3の劣化程度に応じて適切な補正処理を行うことで、劣化判定の判定精度を向上させることができる。
【0160】
よって、第2実施形態によれば、D素子3の状態を非劣化状態と劣化状態の2段階の区分ではなく、より細かい区分(3段階以上の区分)に分類することで、ガス検知における補正内容を細分化でき、ガス検知精度の向上を図ることができる。
【0161】
なお、第2実施形態においては、S480,S810,S820,S830,S840,S850を実行するマイコン101が劣化状態判定手段に相当し、S150,S910,S920,S930,S940,S950を実行するマイコン101が検出感度補正手段に相当している。
【0162】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の態様を採ることができる。
例えば、上記実施形態(以下、第1実施形態ともいう)では、正方向最大変化量の絶対値と負方向最大変化量の絶対値との比較結果を表す変化量比較結果値としては、正方向最大変化量変数Max(n1)の絶対値と負方向最大変化量変数Min(n1)の絶対値との比率を用いて、劣化判定を行う構成を採用している。具体的には、個別変化量比較結果値S/N(n2)および変化量比較結果値変数G(n2)を用いて、劣化判定を行う構成を採用している。
【0163】
しかし、正方向最大変化量の絶対値と負方向最大変化量の絶対値との比較結果を表す変化量比較結果値は、比率に限られることはなく、差分値であってもよい。
例えば、正方向最大変化量変数Max(n1)の絶対値から負方向最大変化量変数Min(n1)の絶対値を差し引いた差分値を変化量比較結果値として演算して、その変化量比較結果値が予め定められた劣化判定基準範囲に含まれるか否かを判定することで、素子の劣化状態の有無を判定しても良い。
【0164】
この場合、ガス検出素子が劣化状態であるときに差分値(変化量比較結果値)が採りうる数値範囲を劣化判定基準範囲として予め定めておくことで、ガス検出素子の劣化状態の有無を判定することができる。
【0165】
また、上述した実施形態では、劣化判定閾値Th1、低劣化判定閾値Th2、高劣化判定閾値Th3、なまし処理演算用係数K1、酸化性ガス検知閾値Tdなど、各変数に関する具体的な数値を示したが、これらの数値は、あくまで例示であり、本発明の技術的範囲に属する限り、任意の値をとることができる。
【符号の説明】
【0166】
1…セラミック基板、2…還元性ガス用ガスセンサ素子(G素子)、3…酸化性ガス用ガスセンサ素子(D素子)、4…ヒータ、10…一体型ガスセンサ素子、100…車両用外気導入制御システム、101…マイクロコンピュータ(マイコン)、110…G素子回路、120…D素子回路、131…ヒータ回路、132…スイッチング回路、140…レギュレータ回路、150…ガス検出装置、160…電子制御アセンブリ、161…フラップ制御回路、162…アクチュエータ、171…ダクト、172…内気取り入れ用ダクト、173…外気取り入れ用ダクト、174…外気導入用フラップ、180…電圧検出回路、191…電源装置(バッテリ)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出対象ガスの濃度変化に応じて電気的特性が変化する酸化物半導体製のガス検出素子と、ガス検出素子における電気的特性の変化状態に基づいて検出対象ガスの有無(濃度変化)を判定するガス判定手段と、を備えるガス検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、検出対象ガスの検出を行うガス検出装置が知られている。
このようなガス検出装置としては、検出対象ガスに反応して電気的特性が変化するガス検出素子と、ガス検出素子における電気的特性の変化状態に基づいて検出対象ガスの有無(濃度変化)を判定するガス判定手段と、を備えて構成されるものがある(特許文献1、2)。
【0003】
なお、ガス検出素子は、検出対象ガスの濃度変化に応じて電気的特性(電気抵抗値など)が変化する酸化物半導体から構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−227807号公報
【特許文献2】特開2004−157051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ガス検出素子は、使用状況下での時間経過に伴い検出特性(検出対象ガスに反応する時の電気的特性の変化特性)が変化(換言すれば、劣化)することがある。
このような劣化が生じる場合には、使用開始直後と一定使用時間経過時とでは、ガス検出素子の検出特性が異なることになる。
【0006】
このため、ガス検出素子における電気的特性の変化状態に基づいて検出対象ガスの有無を判定する際の判定基準が一定である場合には、使用状況下での時間経過に伴いガス検出素子の検出特性が変化すると、その検出特性の変化の影響により、検出対象ガスの有無を判定する際の判定精度が低下するおそれがある。
【0007】
そこで、本発明は、使用状況下での時間経過に伴いガス検出素子の特性変化(劣化)が生じる場合であっても、検出対象ガスのガス検出精度の低下を抑制するガス検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するためになされた請求項1に記載の発明は、検出対象ガスの濃度変化に応じて電気的特性が変化する酸化物半導体製のガス検出素子と、ガス検出素子における電気的特性の変化状態に基づいて検出対象ガスの有無を判定するガス判定手段と、を備えるガス検出装置であって、ガス検出素子の電気的特性に関して、検出対象ガスの濃度が上昇するときの電気的特性の変化方向を正方向変化と定義し、検出対象ガスの濃度が低下するときの電気的特性の変化方向を負方向変化と定義した場合において、予め定められた劣化判定期間における電気的特性の単位時間あたりの変化量のうち、正方向変化の最大値である正方向最大変化量および負方向変化の最大値である負方向最大変化量を演算する変化量演算手段と、正方向最大変化量の絶対値および負方向最大変化量の絶対値に基づいて、ガス検出素子が劣化状態であるか否かを判定する素子劣化判定手段と、素子劣化判定手段にてガス検出素子が劣化状態であると判定された場合には、ガス判定手段におけるガス検出感度を上げるための補正処理を行う検出感度補正手段と、を備えていることを特徴とするガス検出装置である。
【0009】
まず、このガス検出素子は、劣化していない状態(未劣化状態)では、電気的特性における正方向最大変化量の絶対値が負方向最大変化量の絶対値よりも相対的に大きくなる特性を有し、劣化が進行するのに伴い、電気的特性における正方向最大変化量の絶対値が減少し、負方向最大変化量の絶対値が増加する特性を有する。
【0010】
つまり、正方向最大変化量の絶対値および負方向最大変化量の絶対値は、ガス検出素子の劣化状態に応じて変化する。このため、劣化状態のガス検出素子では、電気的特性における正方向最大変化量の絶対値が負方向最大変化量の絶対値よりも相対的に小さくなる。
【0011】
このことから、正方向最大変化量の絶対値および負方向最大変化量の絶対値に基づいてガス検出素子が劣化状態であるか否かを判定する素子劣化判定手段を備えることで、ガス検出素子の劣化状態の有無を判定することができる。
【0012】
そして、素子劣化判定手段にてガス検出素子が劣化状態であると判定された場合には、検出感度補正手段が、ガス判定手段におけるガス検出感度を上げるための補正処理を行う。このような補正処理を行うことで、ガス検出素子が劣化して検出対象ガス検出時における電気的特性の正方向への変化量が減少した場合であっても、ガス判定手段による判定精度が低下するのを抑制できる。
【0013】
よって、本発明によれば、使用状況下での時間経過に伴いガス検出素子の特性変化(劣化)が生じる場合であっても、劣化状態の有無に応じてガス検出感度を補正することにより、検出対象ガスの検出精度が低下するのを抑制できる。
【0014】
なお、上記のガス検出装置においては、正方向最大変化量の絶対値および負方向最大変化量の絶対値に基づきガス検出素子の劣化状態の有無を判定する方法として、種々の方法を採ることができる。
【0015】
例えば、正方向最大変化量の絶対値と負方向最大変化量の絶対値との比較結果は、ガス検出素子の劣化状態に応じて変化するため、正方向最大変化量の絶対値と負方向最大変化量の絶対値との比較結果に基づいて、ガス検出素子の劣化状態の有無を判定する方法を採ることができる。
【0016】
より具体的には、正方向最大変化量の絶対値と負方向最大変化量の絶対値との大小関係について判定を行い、その大小判定結果に基づいてガス検出素子の劣化状態を判定する方法が挙げられる。
【0017】
また、例えば、請求項2に記載のように、素子劣化判定手段は、正方向最大変化量の絶対値と負方向最大変化量の絶対値との比較結果を表す変化量比較結果値を演算する比較結果演算手段と、変化量比較結果値が予め定められた劣化判定基準範囲に含まれるか否かを判定し、変化量比較結果値が劣化判定基準範囲に含まれる場合にはガス検出素子が劣化状態であると判定し、変化量比較結果値が劣化判定基準範囲に含まれない場合にはガス検出素子が劣化状態ではないと判定する劣化状態判定手段と、を備える、という構成を採ることができる。
【0018】
つまり、正方向最大変化量の絶対値と負方向最大変化量の絶対値との比較結果を表す変化量比較結果値は、ガス検出素子の劣化状態に応じて変化するため、この変化量比較結果値を用いることで、ガス検出素子の劣化状態の有無を判定することができる。
【0019】
そして、本発明のガス検出装置は、正方向最大変化量の絶対値と負方向最大変化量の絶対値との比較結果を表す変化量比較結果値を演算し、変化量比較結果値が劣化判定基準範囲に含まれるか否かを判定することで、ガス検出素子の劣化状態の有無を判定する。
【0020】
よって、本発明によれば、変化量比較結果値を用いてガス検出素子の劣化状態の有無を判定することができ、劣化状態に応じてガス検出感度を補正することにより、検出対象ガスの検出精度が低下するのを抑制できる。
【0021】
なお、劣化判定基準範囲を定める方法としては、実際の測定結果などに基づいて、ガス検出素子が劣化状態であるときに変化量比較結果値がとりうる数値範囲を予め特定し、その数値範囲を劣化判定基準範囲として設定する方法を採ることができる。
【0022】
また、正方向最大変化量の絶対値と負方向最大変化量の絶対値との比較結果を表す変化量比較結果値としては、例えば、差分値、比率などが挙げられる。
次に、比較結果演算手段を備えるガス検出装置においては、例えば、請求項3に記載のように、比較結果演算手段は、複数の劣化判定期間でそれぞれ演算された複数の正方向最大変化量および複数の負方向最大変化量を用いて、変化量比較結果値を演算する、という構成を採ることができる。
【0023】
このように、複数の劣化判定期間での数値(最大変化量)を用いて変化量比較結果値を演算する場合には、ノイズなどの影響により、ある劣化判定期間で数値(最大変化量)が急変しても、ノイズの影響を受けていない別の劣化判定期間での数値(最大変化量)を用いて変化量比較結果値を演算できる。
【0024】
つまり、複数の劣化判定期間での数値(最大変化量)を用いる場合には、単一の劣化判定期間での数値を用いて変化量比較結果値を演算する場合に比べて、正方向最大変化量および負方向最大変化量が急変しても、その急変の影響を抑えつつ変化量比較結果値を演算できる。
【0025】
よって、本発明によれば、変化量比較結果値の変動に起因して劣化状態の判定精度が低下するのを抑制できる。
次に、複数の劣化判定期間での最大変化量を用いて変化量比較結果値を演算する構成のガス検出装置においては、例えば、請求項4に記載のように、比較結果演算手段は、劣化判定期間ごとに演算された変化量比較結果値をなまし処理したなまし値を、劣化状態判定手段の判定に用いられる変化量比較結果値として演算する、という構成を採ることができる。
【0026】
このように、なまし処理のもとなまし値として演算された変化量比較結果値を用いて劣化状態判定手段が判定を行うことで、短期間での最大変化量(正方向最大変化量および負方向最大変化量)ではなく、長期間(複数の劣化判定期間)にわたる最大変化量(正方向最大変化量および負方向最大変化量)の変化傾向が加味された変化量比較結果値を演算することができる。
【0027】
よって、本発明によれば、長期間にわたる最大変化量の変化傾向が加味された変化量比較結果値に基づいて劣化判定を行うことができるため、突発的な最大変化量の急変による影響を抑えつつ、ガス検出素子の劣化判定を行うことができる。
【0028】
なお、本発明における「なまし処理」とは、複数の劣化判定期間ごとに演算された変化量比較結果値の移動平均化処理や重み付け平均化処理といったフィルタ処理のほか、例えば、後述する[数2]を用いて、複数の変化量比較結果値の履歴を反映させつつ、最新に得られた変化量比較結果値を用いて、変化量比較結果値のなまし値を更新していく処理が挙げられる。
【0029】
次に、上述のガス検出装置においては、請求項5に記載のように、劣化状態判定手段は、変化量比較結果値が劣化判定基準範囲に含まれると判定した場合には、変化量比較結果値が予め定められた低程度判定基準範囲に含まれるか否かを判定し、変化量比較結果値が低程度判定基準範囲に含まれる場合にはガス検出素子の劣化程度が低いと判定し、変化量比較結果値が低程度判定基準範囲に含まれない場合にはガス検出素子の劣化程度が高いと判定する、という構成を採ることができる。
【0030】
このガス検出装置は、変化量比較結果値が劣化判定基準範囲に含まれると判定した場合に、さらに変化量比較結果値が低程度判定基準範囲に含まれるか否かを判定することから、ガス検出素子が劣化状態であるか否かのみならず、ガス検出素子の劣化程度を判定することができる。
【0031】
このようにしてガス検出素子の劣化程度を判定することで、劣化程度に応じて検出感度補正手段での補正処理を変更することが可能となり、ガス検出素子の劣化程度に応じて適切な補正処理を行うことで、劣化判定の判定精度を向上させることができる。
【0032】
よって、本発明によれば、ガス検出素子の状態を非劣化状態と劣化状態の2段階の区分ではなく、より細かい区分(3段階以上の区分)に分類することで、ガス検知における補正内容を細分化でき、ガス検知精度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明が適用されたガス検出装置に備えられる一体型ガスセンサ素子の概略構成図である。
【図2】本発明が適用されたガス検出装置を備える車両用外気導入制御システムの概略構成を表す構成図である。
【図3】マイコンにおいて実行されるガス検知判定処理の処理内容を表すフローチャートである。
【図4】S130における微分値計算処理の処理内容を詳細に表したフローチャートである。
【図5】S140における劣化判定処理の処理内容を詳細に表したフローチャートである。
【図6】S480における比較結果判定処理の処理内容を詳細に表したフローチャートである。
【図7】S150におけるガス検知性能設定処理の処理内容を詳細に表したフローチャートである。
【図8】第2ガス検出装置における比較結果判定処理(S480)の処理内容を詳細に表したフローチャートである。
【図9】第2ガス検出装置におけるガス検知性能設定処理(S150)の処理内容を詳細に表したフローチャートである。
【図10】実施形態のガス検出装置において、検出対象ガスの検出精度が低下するのを抑制できるか否かを評価した実験結果である。
【図11】新品のD素子および劣化状態のD素子のそれぞれについて、15分間隔で演算した演算値(D側センサ出力値S(n1)の個別変化量比較結果値S/N(n2))を測定した測定結果である。
【図12】新品のD素子および劣化状態のD素子のそれぞれについて、実施形態のガス検出装置を用いて、15分間隔で5回にわたり、個別変化量比較結果値S/N(n2)の移動平均値である変化量比較結果値変数G(n2)を測定した測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
実施形態として、本発明が適用されたガス検出装置を備える車両用外気導入制御システムについて、図面と共に説明する。
【0035】
まず、図1に、本発明が適用されたガス検出装置に備えられる一体型ガスセンサ素子10の概略構成図を示す。図1に示すように、一体型ガスセンサ素子10は、還元性ガス用ガスセンサ素子2、酸化性ガス用ガスセンサ素子3およびヒータ4が、単一のセラミック基板1に形成されて構成されている。
【0036】
このうち、還元性ガス用ガスセンサ素子2(以下、単に「G素子2」ともいう)は、SnO2 を主成分とする酸化物半導体からなる抵抗体であり、主としてCO、HC(ハイドロカーボン)等の還元性ガスに反応してその抵抗値(以下、Gセンサ抵抗値Rgともいう)が変化する性質を有している。また、酸化性ガス用ガスセンサ素子3(以下、単に「D素子3」ともいう)は、WO3 を主成分とする酸化物半導体からなる抵抗体であり、主としてNOx等の酸化性ガスに反応してその抵抗値(以下、Dセンサ抵抗値Rdともいう)が変化する性質を有している。
【0037】
なお、G素子2およびD素子3は、常温ではガスに反応することはなく、所定の活性化温度(例えば、200[℃]以上の温度)になることで、それぞれ還元性ガスあるいは酸化性ガスに反応する活性化状態となる。そして、活性化状態となったG素子2は、還元性ガスの濃度の上昇に伴いGセンサ抵抗値Rgが低下する方向に変化することから、Gセンサ抵抗値Rgの変化に基づいて還元性ガスの濃度変化を検出することができる。また、活性化状態となったD素子3は、酸化性ガスの濃度の上昇に伴いDセンサ抵抗値Rdが上昇する方向に変化することから、Dセンサ抵抗値Rdの変化に基づいて酸化性ガスの濃度変化を検出することができる。
【0038】
また、ヒータ4は、セラミック基板1に形成された抵抗配線からなり、所定の電圧が印加されると発熱するよう構成されており、G素子2およびD素子3を活性化温度以上の目標温度に加熱・維持して活性化状態とするために備えられている。なお、ヒータ4は、少なくともG素子2およびD素子3が活性化温度以上まで加熱できるように、抵抗値などの特性が選択されて構成されている。
【0039】
そして、図1に示す一体型ガスセンサ素子10においては、D素子端子5が後述するマイクロコンピュータ101(後述する図2参照)の第2AD変換入力端子103に接続され、G素子端子6が後述するマイクロコンピュータ101(図2参照)の第1AD変換入力端子102に接続され、ヒータ端子7が後述するヒータ回路131(図2参照)に接続され、基準端子8が後述する電源装置191(図2参照)の負極と同電位のグランドに接続される。
【0040】
次に、図2に、本発明が適用されたガス検出装置150を備える車両用外気導入制御システム100の概略構成を表す構成図を示す。なお、車両用外気導入制御システム100は、ガス検出装置150により外気中に含まれる酸化性ガス濃度および還元性ガス濃度の変化を検出し、その検出結果に基づいて外気導入用フラップ174(以下、単に、フラップ174ともいう)を開閉制御するものである。
【0041】
そして、車両用外気導入制御システム100は、定電圧(定格電圧12[V]。以下、バッテリ電圧VBともいう)を出力する電源装置191(以下、単にバッテリ191ともいう)と、マイクロコンピュータ101(以下、マイコン101ともいう)と、G素子2におけるGセンサ抵抗値Rgの変化に応じた電圧を出力するG素子回路110と、D素子3におけるDセンサ抵抗値Rdの変化に応じた電圧を出力するD素子回路120と、G素子2およびD素子3を活性化温度に加熱・維持するためのヒータ4と、ヒータ4の通電制御を行うヒータ回路131と、駆動電圧Vcc(5[V])を供給するレギュレータ回路140と、フラップ174を制御する電子制御アセンブリ160と、を備えて構成されている。
【0042】
なお、車両用外気導入制御システム100のうち、電源装置191、G素子回路110、D素子回路120、ヒータ4、ヒータ回路131およびマイコン101がガス検出装置150を構成している。
【0043】
電源装置191は、バッテリ電圧VBを出力する電圧出力部192と、アノードが電圧出力部192の負極と同電位のグランドに接続されると共にカソードが電圧出力部192の正極に接続されたツェナーダイオード193と、を備えて構成されており、出力可能な最大出力電圧が40[V]に制限されている。 電子制御アセンブリ160は、外気導入用フラップ174を制御するものである。なお、外気導入用フラップ174は、自動車室内に繋がるダクト171に二股状に接続された内気取り入れ用ダクト172と外気取り入れ用ダクト173とを切り替えるために備えられている。つまり、外気導入用フラップ174は、自動車に備えられる空調システムのうち車室内につながるダクト171に設けられており、車室内への送風の循環状態を外気導入あるいは内気循環に切り替えるために備えられている。
【0044】
また、電子制御アセンブリ160は、フラップ制御回路161と、アクチュエータ162と、を備えて構成されている。このうち、フラップ制御回路161は、マイコン101の出力端子106(OUT端子106)に接続されており、出力端子106からのアセンブリ制御信号(フラップ開閉信号Sf)に従いアクチュエータ162を駆動して、フラップ174を回動することで、内気取り入れ用ダクト172および外気取り入れ用ダクト173のいずれかをダクト171に接続する。なお、ダクト171の内部には、空気を車室内側に向けて圧送するファン175が備えられている。
【0045】
次に、マイコン101は、詳細は図示しないが、公知の構成を有し、演算を行うマイクロプロセッサ、プログラムやデータを一時記憶するRAM、プログラムやデータを保持するROM、アナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換回路などを含んで構成されている。なお、A/D変換回路は、第1AD変換入力端子102、第2AD変換入力端子103、第3AD変換入力端子104から入力されるアナログ信号を、マイクロプロセッサなどで使用可能なデジタル信号に変換する。また、マイコン101は、ヒータ回路131に対してパルス指令信号Shを出力するPWM端子105を備えている。
【0046】
さらに、レギュレータ回路140は、レギュレータ141によって、バッテリ電圧VBの変動に拘わらず、常に一定の駆動電圧Vcc(5[V])を出力するよう構成されており、マイコン101、G素子回路110、D素子回路120等に対して駆動電圧Vccを出力することで、電力供給を行う。なお、マイコン101は、受電端子107(Vcc端子)にて駆動電圧Vccを受電する。
【0047】
また、G素子回路110は、G素子2と抵抗値Raの第1抵抗111とで駆動電圧Vccを抵抗分圧する回路であり、G素子2と第1抵抗111との分圧点(以下、動作点Pgともいう)が、マイコン101の第1AD変換入力端子102に接続されている。そして、動作点Pgの電位(以下、G素子電圧Vgともいう)は、Gセンサ抵抗値Rgの変化に応じて値が変化しており、具体的には、還元性ガス(CO、HCなど)の濃度が上昇すると、G素子電圧Vgは低下する。
【0048】
同様に、D素子回路120は、D素子3と抵抗値Rbの第2抵抗121とで駆動電圧Vccを抵抗分圧する回路であり、D素子3と第2抵抗121との分圧点(以下、動作点Pdともいう)が、マイコン101の第2AD変換入力端子103に接続されている。そして、動作点Pdの電位(以下、D素子電圧Vdともいう)は、Dセンサ抵抗値Rdの変化に応じて値が変化しており、具体的には、酸化性ガス(NOxなど)の濃度が上昇すると、D素子電圧Vdは上昇する。
【0049】
そして、マイコン101は、後述するガス検知判定処理を実行することで、第1AD変換入力端子102および第2AD変換入力端子103に入力されたG素子電圧VgおよびD素子電圧Vdの変化に応じて、還元性ガスや酸化性ガスの濃度変化を検出する。また、マイコン101は、還元性ガスや酸化性ガスの濃度変化についての検出結果に基づき、フラップ開閉信号Sfを電子制御アセンブリ160に対して出力し、ダクト171の内部に備えられるフラップ174の切り替え制御処理を行う。
【0050】
また、ヒータ回路131は スイッチング回路132と、電圧検出回路180とを備えて構成されている。
このうち、電圧検出回路180は、抵抗181,182およびコンデンサ183を備えており、バッテリ191からヒータ4への印加電圧値(換言すれば、バッテリ電圧VB)を分圧し、その分圧した分圧バッテリ電圧VEをマイコン101の第3AD変換入力端子104に入力するよう構成されている。 また、スイッチング回路132は、マイコン101からのパルス指令信号Shに基づき、ヒータ4への電力供給経路を通電状態あるいは遮断状態に切り替え可能に構成されている。つまり、スイッチング回路132は、マイコン101からのパルス指令信号Shが抵抗134を通じてトランジスタ135のベースに入力されるよう構成されており、トランジスタ135は、パルス指令信号Shの状態に応じてオン状態(通電状態)またはオフ状態(遮断状態)に設定される。なお、抵抗136は、バイアス抵抗である。このようなトランジスタ135の状態変化により、抵抗137および抵抗138の接続点に接続するpチャネルMOSFET133のゲート電位が変化して、MOSFET133は、パルス指令信号Shの状態に応じてオン状態(通電状態)またはオフ状態(遮断状態)に設定される。
【0051】
つまり、スイッチング回路132は、マイコン101からのパルス指令信号Shに応じて、ヒータ4への通電・遮断を切り替えることで、ヒータ4への印加電圧をPWM制御するよう構成されている。
【0052】
次に、マイコン101において実行されるガス検知判定処理について、図3に示すフローチャートを用いて説明する。
なお、ガス検知判定処理は、車両用外気導入制御システム100が起動されると共に処理が開始され、車両用外気導入制御システム100が停止するまで処理を継続する。
【0053】
ガス検知判定処理が開始されると、まず、S110(Sはステップを表す)では、RAM動作の初期化などを含む初期設定処理を行う。
なお、S110での初期設定処理には、サンプリング時間カウンタ更新処理を起動する処理や各種パラメータの値を初期値に設定する処理などが含まれる。サンプリング時間カウンタ更新処理は、S200での判定処理に用いるサンプリング時間カウンタを経過時間に応じた値に更新する処理を行う。
【0054】
また、Max(0)は正方向最大変化量変数Max(n1)の初期値であり、Min(0)は負方向最大変化量変数Min(n1)の初期値であり、これらには「0」を設定する。G(0)は変化量比較結果値変数G(n2)の初期値であり、S/N(0)は個別変化量比較結果値変数S/N(n2)の初期値であり、これらには「1」を設定する。
【0055】
そして、正方向最大変化量変数Max(n1)は、D側センサ出力値S(n1)の変化量(微分値)のうち最大値を記録するための内部変数(マイコン101の内部処理に用いる変数)である。なお、D側センサ出力値S(n1)は、D素子3の抵抗値(Dセンサ抵抗値Rd)に相当する数値であり、n1は内部処理の引数(本実施形態では、0.1[sec]毎にインクリメントされるカウンタ用引数)であり、n2は内部処理の引数(本実施形態では、15[min]毎にインクリメントされるカウンタ用引数)である。
【0056】
また、負方向最大変化量変数Min(n1)は、D側センサ出力値S(n1)の変化量(微分値)のうち最小値を記録するための内部変数(マイコン101の内部処理に用いる変数)である。
【0057】
さらに、個別変化量比較結果値S/N(n2)は、正方向最大変化量変数Max(n1)の絶対値を負方向最大変化量変数Min(n1)の絶対値で除算した値であり、後述する[数1]に基づいて演算される。また、変化量比較結果値変数G(n2)は、個別変化量比較結果値S/N(n2)のなまし値である。
【0058】
なお、D素子3は、劣化していない状態(未劣化状態)では、酸化性ガスの濃度が上昇するときのD側センサ出力値S(n1)の変化量の絶対値が、酸化性ガスの濃度が低下するときのD側センサ出力値S(n1)の変化量の絶対値に比べて、相対的に大きくなる特性を有している。また、D素子3は、劣化が進行するのに伴い、酸化性ガスの濃度が上昇するときのD側センサ出力値S(n1)の変化量の絶対値が減少し、酸化性ガスの濃度が低下するときのD側センサ出力値S(n1)の変化量の絶対値が増加する特性を有している。
【0059】
つまり、正方向最大変化量変数Max(n1)の絶対値および負方向最大変化量変数Min(n1)の絶対値は、D素子3の劣化状態に応じて変化する。このため、D素子3が劣化状態になると、正方向最大変化量変数Max(n1)の絶対値が負方向最大変化量変数Min(n1)の絶対値よりも相対的に小さくなる。
【0060】
このことから、正方向最大変化量変数Max(n1)の絶対値および負方向最大変化量変数Min(n1)の絶対値に基づいて、D素子3の劣化状態の有無を判定することができる。
【0061】
次のS120では、D素子3の抵抗値(Dセンサ抵抗値Rd)に応じた値を示すD側センサ出力値と、G素子2の抵抗値(Gセンサ抵抗値Rg)に応じた値を示すG側センサ出力値と、を取得する処理を行う。ここでは、第1AD変換入力端子102および第2AD変換入力端子103から入力されるアナログ信号をA/D変換回路で変換して得られるデジタル信号を、G側センサ出力値およびD側センサ出力値として取得する。
【0062】
なお、以下の説明においては、D素子3の抵抗値(Dセンサ抵抗値Rd)に応じた値を示すD側センサ出力値を「D側センサ出力値S(n1)」ともいう。
次のS130では、S120で取得したD側センサ出力値S(n1)の微分値を計算する処理(微分値計算処理)を実行する。
【0063】
ここで、S130における微分値計算処理の処理内容を詳細に表したフローチャートを、図4に示す。
微分値計算処理が起動されると、まず、S310では、車両用外気導入制御システム100の起動時点(電源投入時点)から初期待機時間(本実施形態では、1.6[sec])が経過したか否かを判定しており、否定判定する場合にはS320に移行し、肯定判定する場合には、S330に移行する。
【0064】
S310で否定判定されてS320に移行すると、S320では、D側センサ出力微分値変数B(n1)に対して現在のD側センサ出力値S(n1)からD側センサ出力値の初期値S(0)を差し引いた値を代入する処理(B(n1)=S(n1)−S(0))を実行する。
【0065】
S310で肯定判定されてS330に移行すると、S330では、D側センサ出力微分値変数B(n1)に対して現在のD側センサ出力値S(n1)から16サンプリング前のD側センサ出力値S(n1−16)を差し引いた値を代入する処理(B(n1)=S(n1)−S(n1−16))を実行する。
【0066】
S320またはS330での処理が終了するとS340に移行し、S340では、D側センサ出力微分値変数B(n1)が正方向最大変化量変数Max(n1)よりも大きいか否かを判断し、肯定判定する場合にはS360に移行し、否定判定する場合にはS350に移行する。
【0067】
S340で肯定判定されてS360に移行すると、S360では、D側センサ出力微分値変数B(n1)を正方向最大変化量変数Max(n1)に代入する処理(Max(n1)=B(n1))を実行する。
【0068】
S340で否定判定されてS350に移行すると、S350では、D側センサ出力微分値変数B(n1)が負方向最大変化量変数Min(n1)よりも小さいか否かを判断し、肯定判定する場合にはS370に移行し、否定判定する場合には本処理(微分値計算処理)を終了する。
【0069】
S360またはS370での処理が終了するか、S350で否定判定されると、本処理(微分値計算処理)が終了し、再度、ガス検知判定処理に移行する。
ガス検知判定処理に移行すると、S140にて、酸化性ガス用ガスセンサ素子3(D素子3)が劣化状態であるか否かを判定する処理(劣化判定処理)を実行する。
【0070】
ここで、S140における劣化判定処理の処理内容を詳細に表したフローチャートを、図5に示す。
劣化判定処理が起動されると、まず、S410では、劣化判定期間が経過したか否かを判定しており、肯定判定する場合にはS420に移行し、否定判定する場合には、S430に移行する。なお、劣化判定期間は、劣化判定を行う周期に相当するものであり、本実施形態では、劣化判定期間として「15分」が設定されている。
【0071】
なお、S410で否定判定されると、S430にて、監視カウンタCnのインクリメント処理を実行する。ここでの監視カウンタCnとは、劣化判定期間が経過したか否かを監視するためのカウンタ変数のことである。
【0072】
つまり、S410およびS430での処理によって、劣化判定期間が経過する毎にS410で肯定判定される。これにより、劣化判定期間に相当する周期毎に、S420〜S490での処理(変化量比較結果値G(n2)の演算処理、劣化判定処理)が実行される。
【0073】
S410で肯定判定されてS420に移行すると、S420では、今回の劣化判定期間における変化量比較結果値を演算する処理を行う。具体的には、正方向最大変化量変数Max(n1)の絶対値を負方向最大変化量変数Min(n1)の絶対値で除算した値を、個別変化量比較結果値S/N(n2)に代入する処理を実行する。つまり、[数1]に基づいて個別変化量比較結果値S/N(n2)の演算を行う。
【0074】
【数1】
【0075】
次のS440では、個別変化量比較結果値S/N(n2)が1より小さいか否かを判定しており、肯定判定する場合にはS450に移行し、否定判定する場合にはS460に移行する。
【0076】
S440で肯定判定されてS450に移行すると、S450では、なまし処理演算用係数K1に対して「1/2」を設定する処理(K1=1/2)を行う。
S440で否定判定されてS460に移行すると、S460では、なまし処理演算用係数K1に対して「1/16」を設定する処理(K1=1/16)を行う。
【0077】
S450またはS460での処理が終了するとS470に移行し、S470では、個別変化量比較結果値S/N(n2)のなまし値(変化量比較結果値変数G(n2))を演算するなまし処理を行う。
【0078】
具体的には、[数2]に基づいて変化量比較結果値変数G(n2)の演算を行う。
【0079】
【数2】
【0080】
なお、[数2]のうち、K1はなまし処理演算用係数であり、S450またはS460で値が設定される。
また、[数2]の演算では、変化量比較結果値変数G(n2)の過去データ(G(n2−1))を用いるが、S470の初回演算時には、S110で設定した初期値G(0)を過去データ(G(n2−1))として用いる。
【0081】
次のS480では、変化量比較結果値変数G(n2)に基づいてD素子3が劣化状態であるか否かを判定する処理(比較結果判定処理)を行う。
ここで、S480における比較結果判定処理の処理内容を詳細に表したフローチャートを、図6に示す。
【0082】
比較結果判定処理が起動されると、まず、S610では、変化量比較結果値変数G(n2)が劣化判定閾値Th1よりも大きいか否かを判断し、肯定判定する場合にはS620に移行し、否定判定する場合にはS630に移行する。
【0083】
なお、劣化判定閾値Th1は、D素子3の非劣化状態と劣化状態との境界値が設定されており、本実施形態では、劣化判定閾値Th1は「0.6」が設定されている。つまり、変化量比較結果値変数G(n2)が劣化判定閾値Th1よりも大きい場合には、D素子3が非劣化状態であると判定でき、変化量比較結果値変数G(n2)が劣化判定閾値Th1以下である場合には、D素子3が劣化状態であると判定できる。
【0084】
なお、劣化判定閾値Th1を定める方法としては、例えば、実際の測定結果などに基づいて、D素子3の変化量比較結果値(個別変化量比較結果値S/N(n2))がとりうる数値範囲を特定し、劣化判定閾値Th1を定める方法が挙げられる。つまり、実際の測定結果などに基づいて、D素子3が劣化状態であるときに変化量比較結果値がとりうる数値範囲と、D素子3が非劣化状態(新品状態)のときに変化量比較結果値がとりうる数値範囲と、の境界値を劣化判定閾値Th1として定める方法が挙げられる。
【0085】
S610で肯定判定されてS620に移行すると、S620では、D素子3の状態が非劣化状態(新品状態)であると認識する処理(新品認識処理)を行う。なお、S620では、マイコン101の内部フラグとしての新品認識フラグFnをセット状態(ON状態)に設定する。
【0086】
S610で否定判定されてS630に移行すると、S630では、D素子3の状態が劣化状態であると認識する処理(劣化品認識処理)を行う。なお、S630では、マイコン101の内部フラグとしての新品認識フラグFnをリセット状態(OFF状態)に設定する。
【0087】
S620またはS630での処理が終了すると(換言すれば、比較結果判定処理が終了すると)、再び劣化判定処理に戻り、続くS490に移行する。
S490では、正方向最大変化量変数Max(n1)、負方向最大変化量変数Min(n1)、監視カウンタCnをクリアする処理(クリア処理)を行う。具体的には、正方向最大変化量変数Max(n1)に0を代入し、負方向最大変化量変数Min(n1)に0を代入し、監視カウンタCnをリセットする処理を行う。
【0088】
また、S490では、引数n2をインクリメントする処理を実行しており、引数n2は、15分毎にインクリメント(1加算)される。
S490での処理が終了すると(換言すれば、劣化判定処理が終了すると)、再びガス検知処理に移行する。
【0089】
ガス検知処理に移行すると、S150にて、酸化性ガス用ガスセンサ素子3(D素子3)のD側センサ出力値S(n1)を用いたガス検知性能(ガス検知精度)を設定する処理(ガス検知性能設定処理)を実行する。
【0090】
ここで、S150におけるガス検知性能設定処理の処理内容を詳細に表したフローチャートを、図7に示す。
ガス検知性能設定処理が起動されると、まず、S710では、新品認識フラグFnがセット状態(ON状態)であるか否かを判断し、肯定判定する場合にはS720に移行し、否定判定する場合にはS730に移行する。つまり、S710では、S140(劣化判定処理)での判定結果に基づいて、D素子3が非劣化状態(新品状態)であるか否かを判定する。
【0091】
S710で肯定判定されてS720に移行すると、S720では、D側センサ出力値S(n1)を用いたガス検知性能(ガス検知精度)を「新品用ガス検知性能」に設定する処理を実行する。
【0092】
具体的には、酸化性ガス検知閾値Tdに対して新品用閾値Tnを設定する処理を行う。なお、新品用閾値Tnは、非劣化状態(新品状態)のD素子3に関して、酸化性ガスを検出したときにD側センサ出力値S(n1)がとりうる数値範囲と、酸化性ガスを検出していないときにD側センサ出力値S(n1)がとりうる数値範囲と、の境界値が設定されている。
【0093】
S710で否定判定されてS730に移行すると、S730では、D側センサ出力値S(n1)を用いたガス検知性能(ガス検知精度)を「劣化品用ガス検知性能」に設定する処理を実行する。
【0094】
具体的には、酸化性ガス検知閾値Tdに対して劣化品用閾値Toを設定する処理を行う。なお、劣化品用閾値Toは、劣化状態のD素子3に関して、酸化性ガスを検出したときにD側センサ出力値S(n1)がとりうる数値範囲と、酸化性ガスを検出していないときにD側センサ出力値S(n1)がとりうる数値範囲と、の境界値が設定されている。
【0095】
なお、非劣化状態(新品状態)から劣化状態に移行するに従い、同一濃度の酸化性ガスを検出したときにD側センサ出力値S(n1)がとりうる数値範囲が低下する特性を有するD素子3においては、新品用閾値Tnは、劣化品用閾値Toよりも大きい値となる。
【0096】
S720またはS730での処理が終了すると(換言すれば、ガス検知性能設定処理が終了すると)、再びガス検知処理に移行する。
ガス検知処理に移行すると、S160にて、S120で取得したD側センサ出力値およびG側センサ出力値を用いて、外気中から酸化性ガスまたは還元性ガスを検知したか否かを判定する処理(ガス検知判定処理)を実行する。
【0097】
なお、S160では、酸化性ガスを検知したか否かを判定する処理(酸化性ガス検知判定処理)と、還元性ガスを検知したか否かを判定する処理(還元性ガス検知判定処理)とを実行するが、この処理は、センサ出力値と、当該センサ出力値に基づいて算出される基準値との差分値をガス検知閾値と比較することにより行っている。なお、上記基準値の算出手法を含めた上記差分値と上記ガス検知閾値との比較手法については、本出願人が出願した特開2003−227807に記載の公知の手法を、D側センサ出力値、G側センサ出力値共に採用すればよい。
【0098】
そして、S160では、酸化性ガス検知判定処理として、酸化性ガス用ガスセンサ素子3(D素子3)のD側センサ出力値S(n1)と、D側センサ出力値を用いて算出された基準値との差分値が、酸化性ガス検知閾値Tdよりも大きいか否かを判断して、酸化性ガスを検知したか否かを判定する処理を実行する。
【0099】
つまり、S160の酸化性ガス検知判定処理では、D側センサ出力値S(n1)と基準値B(n1)との差分値D(n1)(=S(n1)−B(n1))が酸化性ガス検知閾値Tdよりも大きいか否か(D(n1)>Td?)を判断しており、肯定判定した場合(差分値D(n1)が酸化性ガス検知閾値Tdよりも大きい場合)に酸化性ガスを検知したと判定し、否定判定した場合(差分値D(n1)が酸化性ガス検知閾値Td以下である場合)に酸化性ガスを検知していないと判定する。
【0100】
そして、酸化性ガスを検知したと判定した場合には、酸化性ガス検知フラグ(D検知F)をセット状態(ON状態)に設定し、酸化性ガスを検知していないと判定した場合には、酸化性ガス検知フラグ(D検知F)をリセット状態(OFF状態)に設定する。
【0101】
また、S160では、還元性ガス検知判定処理として、G側センサ出力値を用いて算出された基準値と、還元性ガス用ガスセンサ素子2(G素子2)のG側センサ出力値との差分値が、還元性ガス検知用閾値よりも大きいか否かを判断して、還元性ガスを検知したか否かを判定する処理を実行する。
【0102】
そして、還元性ガスを検知したと判定した場合には、還元性ガス検知フラグ(G検知F)をセット状態(ON状態)に設定し、還元性ガスを検知していないと判定した場合には、還元性ガス検知フラグ(G検知F)をリセット状態(OFF状態)に設定する。
【0103】
次のS170では、酸化性ガス検知フラグ(D検知F)および還元性ガス検知フラグ(G検知F)の状態に基づいて、外気中から酸化性ガスまたは還元性ガスの検知中であるか否かを判断し、肯定判定する場合にはS180に移行し、否定判定する場合にはS190に移行する。
【0104】
具体的には、S170では、酸化性ガス検知フラグ(D検知F)および還元性ガス検知フラグ(G検知F)のうち少なくとも一方がセット状態(ON状態)であるか否かを判定し、肯定判定する場合(D検知FまたはG検知Fの少なくとも一方がセット状態(ON状態)の場合)には、ガス検知中であると判定してS180に移行し、否定判定する場合(D検知FおよびG検知Fのいずれもがリセット状態(OFF状態)の場合)には、ガス検知していないと判定してS190に移行する。
【0105】
S170で肯定判定されてS180に移行すると、S180では、外気の中から酸化性ガスまたは還元性ガスを検知した場合に対応した信号出力処理を行う。具体的には、S180では、フラップ開閉信号Sfを「フラップ174の位置を内気循環状態とする指令内容」(内気循環指令)に設定して、フラップ開閉信号Sfを電子制御アセンブリ160に対して出力する処理を行う。
【0106】
つまり、S170で肯定判定される場合には、外気中に酸化性ガスまたは還元性ガスが含まれていると判定できる(換言すれば、外気が検出対象ガスにより汚れていると判定できる)。このような場合、ガス検出装置150は、内気循環指令としてのフラップ開閉信号Sfを出力して、フラップ174の位置を内気循環状態に設定することで、汚れた外気が導入されるのを防止する。
【0107】
S170で否定判定されてS190に移行すると、S190では、外気が正常である場合に対応した信号出力処理を行う。具体的には、S190では、フラップ開閉信号Sfを「フラップ174の位置を外気導入状態とする指令内容」(外気導入指令)に設定して、フラップ開閉信号Sfを電子制御アセンブリ160に対して出力する処理を行う。
【0108】
つまり、S170で否定判定される場合には、外気中に酸化性ガスおよび還元性ガスが含まれていないと判定できる(換言すれば、外気が検出対象ガスにより汚れていないと判定できる)。このような場合、ガス検出装置150は、外気導入指令としてのフラップ開閉信号Sfを出力して、フラップ174の位置を外気導入状態に設定することで、外気が導入されるように制御を行う。
【0109】
なお、フラップ開閉信号Sfを受信した電子制御アセンブリ160は、フラップ開閉信号Sfの指令内容に応じて、フラップ174を駆動制御する。
次のS200では、サンプリング時間カウンタの数値に基づいてサンプリング時間がカウントアップされたか否かを判定しており、肯定判定する場合には再びS120に移行し、否定判定する場合には同ステップを繰り返し実行することで肯定判定されるまで待機する。つまり、S200は、予め定められたサンプリング周期(サンプリング時間)が経過する毎に肯定判定する処理を行う。
【0110】
このように構成されたガス検出装置150は、S120でのセンサ値取得処理が周期的に実行され、D素子3およびG素子2のセンサ値を周期的に取得する。
そして、ガス検出装置150は、S120〜S200までの処理を繰り返し実行することで、D素子3およびG素子2のセンサ値を周期的に取得し、取得したセンサ値に基づいて酸化性ガスまたは還元性ガスの検知(換言すれば、酸化性ガスまたは還元性ガスの濃度上昇の有無についての判定)を行う。
【0111】
また、ガス検出装置150は、ガス検知判定に際して、D素子3の劣化判定を行い(S140)、劣化判定の判定結果に基づいてガス検知性能を設定する(S150)ことにより、素子(D素子3)の劣化に起因するガス検出精度の低下を抑制している。
【0112】
次に、本実施形態のガス検出装置150を用いて、使用状況下での時間経過に伴いガス検出素子(D素子3)の特性変化(劣化)が生じる場合であっても、劣化状態に応じてガス検出感度を補正することにより、検出対象ガス(酸化性ガス)の検出精度が低下するのを抑制できるか否かを評価した実験結果について説明する。
【0113】
実験は、測定対象ガスにおける酸化性ガスおよび還元性ガスの濃度をそれぞれ変動させる条件下でガス検知判定を行い、そのときのD側センサ出力値S(n1)、酸化性ガス検知フラグ(D検知F)などの各変数の変化状態を記録する、という方法を採った。また、本実験では、新品のD素子3および劣化状態のD素子3をそれぞれ用いて行い、特に、劣化状態のD素子3については、ガス検出感度の補正を行う場合と補正を行わない場合とについて、実験を実施した。
【0114】
なお、本実験では、酸化性ガスとしてはNO2 を用い、還元性ガスとしてはCOおよびH2 を用いた。
図10に、本実施形態のガス検出装置150において、検出対象ガス(酸化性ガス)の検出精度が低下するのを抑制できるか否かを評価した実験結果を示す。なお、図10では横軸を経過時間とし、縦軸を各変数の値や変数の状態として、実験結果を表す。また、図10では、劣化状態のD素子3のD側センサ出力値S(n1)を「劣化センサ値」として、新品のD素子3のD側センサ出力値S(n1)を「新品センサ値」として、劣化状態のD素子3において補正を行わない場合でのD検知Fの状態を「劣化センサ検知(補正前)」として、劣化状態のD素子3において補正を行う場合でのD検知Fの状態を「劣化センサ検知(補正後)」として、新品のD素子3において補正を行わない場合でのD検知Fの状態を「新品センサ検知(補正無)」として、それぞれ表している。
【0115】
実験結果に示すように、D側センサ出力値S(n1)である新品センサ値と劣化センサ値とは明らかに値が異なっており、劣化センサ値は、新品センサ値に比べると小さい値を示すことが判る。
【0116】
そして、酸化性ガス検知フラグ(D検知F)については、「新品センサ検知(補正無)」ではガス検知中の状態(セット状態)であるにもかかわらず、「劣化センサ検知(補正前)」ではガス検知していない状態(リセット状態)となる部分が多数存在する。これに対して、「劣化センサ検知(補正後)」では、ガス検知中の状態(セット状態)となる部分が増えており、「劣化センサ検知(補正前)」では検出できないガスを検知できることが判る。
【0117】
よって、この実験結果によれば、本実施形態のガス検出装置150を用いることで、ガス検出素子(D素子3)の特性変化(劣化)が生じる場合であっても、劣化状態に応じてガス検出感度を補正することにより、検出対象ガス(酸化性ガス)の検出精度が低下するのを抑制できることが判る。
【0118】
次に、D素子3のD側センサ出力値S(n1)における個別変化量比較結果値S/N(n2)に関して、15分間隔で演算した演算値と、本実施形態のガス検出装置150と同様の方法で算出したなまし値(換言すれば、変化量比較結果値変数G(n2))と、を比較するための比較測定における測定結果について説明する。
【0119】
まず、新品のD素子3および劣化状態のD素子3のそれぞれについて、15分間隔で演算した演算値(D側センサ出力値S(n1)の個別変化量比較結果値S/N(n2))を5回にわたり測定した測定結果を図11に示す。なお、図11では、個別変化量比較結果値S/N(n2)を縦軸の「S/N比」として記載している。
【0120】
図11に示す測定結果によれば、新品センサの個別変化量比較結果値S/N(n2)および劣化センサの個別変化量比較結果値S/N(n2)は、いずれも5回の測定それぞれにおいて値が変動していることが判る。つまり、新品センサであっても、劣化センサであっても、個別変化量比較結果値S/N(n2)は、常に一定値を示すものではなく値が変動していることが判る。
【0121】
次に、新品のD素子3および劣化状態のD素子3のそれぞれについて、本実施形態のガス検出装置150を用いて、15分間隔で5回にわたり、個別変化量比較結果値S/N(n2)のなまし値である変化量比較結果値変数G(n2)を測定した測定結果を図12に示す。なお、図12では、変化量比較結果値変数G(n2)を縦軸の「判定用S/N比」として記載している。なお、なまし値である変化量比較結果値変数G(n2)を取得するためのなまし処理による演算については、上述した通りである。
【0122】
図12に示す測定結果によれば、新品センサの変化量比較結果値変数G(n2)は、5回の測定結果がいずれも1.0〜1.2の範囲に含まれていることが判り、また、劣化センサの変化量比較結果値変数G(n2)は、3回目以降の測定結果が0.6以下となることが判る。
【0123】
これらの結果から、図11に示す個別変化量比較結果値S/N(n2)の測定結果に比べて、図12に示す変化量比較結果値変数G(n2)の測定結果は、値の変動幅が小さいことが判る。
【0124】
つまり、D素子3のD側センサ出力値S(n1)における個別変化量比較結果値S/N(n2)に関しては、演算した値をそのまま用いる場合よりも、なまし値(換言すれば、変化量比較結果値変数G(n2))を用いることで、瞬時的な値の変動の影響を抑えつつ、素子の状態(劣化状態)を判定することが可能となる。
【0125】
したがって、本実施形態のガス検出装置150によれば、D素子3のD側センサ出力値S(n1)における瞬時的な値の変動の影響を抑えつつ、素子の状態(劣化状態)を判定すること(S480)が可能となる。
【0126】
なお、図12の測定結果によれば、S610での判定処理に用いる劣化判定閾値Th1の値を「0.6」に設定することで、D素子3の非劣化状態と劣化状態との判定が可能となることが判る。
【0127】
以上説明したように、本実施形態の酸化性ガス用ガスセンサ素子3(D素子3)は、劣化状態に応じて、正方向最大変化量変数Max(n1)の絶対値および負方向最大変化量変数Min(n1)の絶対値が変化する特性を有している。
【0128】
そして、本実施形態のガス検出装置150は、正方向最大変化量変数Max(n1)の絶対値および負方向最大変化量変数Min(n1)の絶対値に基づいて、D素子3が劣化状態であるか否かを判定する劣化判定処理(S140)を実行するマイコン101を備えている。具体的には、正方向最大変化量変数Max(n1)の絶対値および負方向最大変化量変数Min(n1)の絶対値に基づいて、これらの比率を表す個別変化量比較結果値変数S/N(n2)および変化量比較結果値変数G(n2)を演算して(S420,S470)、変化量比較結果値変数G(n2)に基づいてD素子3の劣化状態の有無を判定している(S610)。
【0129】
そして、劣化判定処理(S140)にてD素子3が劣化状態であると判定された場合には、ガス検知性能設定処理(S150)において、ガス検知判定処理(S160)でのガス検出感度を上げるための補正処理を行う。具体的には、非劣化状態と判定した場合には、酸化性ガス検知閾値Tdに対して新品用閾値Tnを設定し(S720)、劣化状態と判定した場合には、酸化性ガス検知閾値Tdに対して劣化品用閾値Toを設定する(S730)。
【0130】
このようにしてガス検出感度(酸化性ガス検知閾値Td)の補正処理を行うことで、D素子3が劣化して酸化性ガス検出時における電気的特性の正方向への変化量が減少した場合であっても、ガス検知判定処理(S160)での判定精度が低下するのを抑制できる。
【0131】
よって、本実施形態のガス検出装置150によれば、使用状況下での時間経過に伴い酸化性ガス用ガスセンサ素子3(D素子3)の特性変化(劣化)が生じる場合であっても、劣化状態に応じてガス検出感度(酸化性ガス検知閾値Td)を補正することにより、検出対象ガスの検出精度が低下するのを抑制できる。
【0132】
また、本実施形態の劣化判定処理(S140)では、単一の劣化判定期間で演算された個別変化量比較結果値変数S/N(n2)のみを用いて劣化判定を行うのではなく、複数の劣化判定期間でそれぞれ演算された個別変化量比較結果値変数S/N(n2)が反映された変化量比較結果値変数G(n2)を用いて劣化判定を行う(S610)。
【0133】
この変化量比較結果値変数G(n2)は、ノイズなどの影響により、ある特定の劣化判定期間で、正方向最大変化量変数Max(n1)の絶対値および負方向最大変化量変数Min(n1)の絶対値が急変しても、ノイズの影響を受けていない別の劣化判定期間での数値も反映された数値として演算される。
【0134】
つまり、変化量比較結果値変数G(n2)を用いる場合には、単一の劣化判定期間での数値である個別変化量比較結果値変数S/N(n2)を用いる場合に比べて、正方向最大変化量変数Max(n1)の絶対値および負方向最大変化量変数Min(n1)の絶対値が急変しても、その急変の影響を抑えつつ劣化判定に用いる数値(変化量比較結果値)を演算できる。
【0135】
よって、本実施形態のガス検出装置150によれば、正方向最大変化量変数Max(n1)の絶対値および負方向最大変化量変数Min(n1)の絶対値が急変しても、劣化判定に用いる数値(変化量比較結果値)が不適切な値となるのを抑制することができ、ノイズなどの突発的な現象に起因して劣化状態の判定精度が低下するのを抑制できる。
【0136】
なお、本実施形態においては、酸化性ガス用ガスセンサ素子3(D素子3)が特許請求の範囲におけるガス検出素子に相当している。
また、S120,S160を実行するマイコン101がガス判定手段に相当し、S130を実行するマイコン101が変化量演算手段に相当し、S140を実行するマイコン101が素子劣化判定手段に相当し、S150を実行するマイコン101が検出感度補正手段に相当している。
【0137】
さらに、S420,S440,S450,S460,S470を実行するマイコン101が比較結果演算手段に相当し、S480,S610,S620,S630を実行するマイコン101が劣化状態判定手段に相当している。
【0138】
また、個別変化量比較結果値変数S/N(n2)および変化量比較結果値変数G(n2)が変化量比較結果値に相当し、劣化判定閾値Th1以下の数値範囲が劣化判定基準範囲に相当している。
【0139】
なお、上記実施形態(以下、第1実施形態ともいう)では、素子の状態を2段階(新品状態、劣化状態)で判定する構成を採用しているが、素子の状態を3段階以上で判定する構成を採ることも可能である。
【0140】
そこで、第2実施形態として、素子の状態を3段階(新品状態、劣化低状態、劣化高状態)で判定する構成の第2ガス検出装置について説明する。
なお、第2ガス検出装置は、第1実施形態のガス検出装置150と比べて、比較結果判定処理(S480)およびガス検知性能設定処理(S150)の処理内容が異なることから、この相違点を中心に説明する。
【0141】
まず、第2ガス検出装置における比較結果判定処理(S480)について説明する。なお、第2ガス検出装置における比較結果判定処理(S480)の処理内容を詳細に表したフローチャートを、図8に示す。
【0142】
図8に示す比較結果判定処理が起動されると、まず、S810では、変化量比較結果値変数G(n2)が低劣化判定閾値Th2よりも大きいか否かを判断し、肯定判定する場合にはS820に移行し、否定判定する場合にはS830に移行する。
【0143】
なお、低劣化判定閾値Th2は、D素子3の非劣化状態と低劣化状態との境界値が設定されており、本実施形態では、低劣化判定閾値Th2は「0.6」が設定されている。つまり、変化量比較結果値変数G(n2)が低劣化判定閾値Th2よりも大きい場合には、D素子3が非劣化状態であると判定でき、変化量比較結果値変数G(n2)が低劣化判定閾値Th2以下である場合には、D素子3が少なくとも低劣化状態であると判定できる。
【0144】
S810で肯定判定されてS820に移行すると、S820では、D素子3の状態が非劣化状態(新品状態)であると認識する処理(新品認識処理)を行う。なお、S820では、マイコン101の内部変数としての素子状態変数Vnに対して新品状態を表す値を設定する。なお、素子状態変数Vnは、素子の状態に応じた値が設定される変数であり、例えば、新品状態を表す値としては「0」、低劣化状態を表す値としては「1」、高劣化状態を表す値としては「2」が設定される。
【0145】
S810で否定判定されてS830に移行すると、S830では、変化量比較結果値変数G(n2)が高劣化判定閾値Th3よりも大きいか否かを判断し、肯定判定する場合にはS840に移行し、否定判定する場合にはS850に移行する。
【0146】
なお、高劣化判定閾値Th3は、D素子3の低劣化状態と高劣化状態との境界値が設定されており、本実施形態では、高劣化判定閾値Th3は「0.4」が設定されている。つまり、変化量比較結果値変数G(n2)が高劣化判定閾値Th3よりも大きい場合には、D素子3が低劣化状態であると判定でき、変化量比較結果値変数G(n2)が高劣化判定閾値Th3以下である場合には、D素子3が高劣化状態であると判定できる。
【0147】
S830で肯定判定されてS840に移行すると、S840では、D素子3の状態が低劣化状態であると認識する処理(劣化レベル低認識処理)を行う。なお、S840では、マイコン101の内部変数としての素子状態変数Vnに対して低劣化状態を表す値を設定する。
【0148】
S830で否定判定されてS850に移行すると、S850では、D素子3の状態が高劣化状態であると認識する処理(劣化レベル高認識処理)を行う。なお、S850では、マイコン101の内部変数としての素子状態変数Vnに対して高劣化状態を表す値を設定する。
【0149】
なお、低劣化判定閾値Th2および高劣化判定閾値Th3を定める方法としては、例えば、実際の測定結果などに基づいて、D素子3の変化量比較結果値(個別変化量比較結果値S/N(n2))がとりうる数値範囲を特定し、低劣化判定閾値Th2および高劣化判定閾値Th3を定める方法が挙げられる。
【0150】
つまり、実際の測定結果などに基づいて、D素子3が低劣化状態であるときに変化量比較結果値がとりうる数値範囲と、D素子3が非劣化状態(新品状態)のときに変化量比較結果値がとりうる数値範囲と、の境界値を低劣化判定閾値Th2として定める方法が挙げられる。また、実際の測定結果などに基づいて、D素子3が低劣化状態であるときに変化量比較結果値がとりうる数値範囲と、D素子3が高劣化状態のときに変化量比較結果値がとりうる数値範囲と、の境界値を高劣化判定閾値Th3として定める方法が挙げられる。
【0151】
S820,S840,S850での処理が終了すると(換言すれば、比較結果判定処理が終了すると)、再び劣化判定処理に戻り、続くS490に移行する。
次に、第2ガス検出装置におけるガス検知性能設定処理(S150)について説明する。なお、第2ガス検出装置におけるガス検知性能設定処理(S150)の処理内容を詳細に表したフローチャートを、図9に示す。
【0152】
図9に示すガス検知性能設定処理が起動されると、まず、S910では、素子状態変数Vnの値が新品状態を表す値「0」であるか否かを判断しており、肯定判定する場合にはS920に移行し、否定判定する場合にはS930に移行する。つまり、S910では、S140(劣化判定処理。より詳細には、S480の比較結果判定処理。)での判定結果に基づいて、D素子3が非劣化状態(新品状態)であるか否かを判定する。
【0153】
S910で肯定判定されてS920に移行すると、S920では、D側センサ出力値S(n1)を用いたガス検知性能(ガス検知精度)を「新品用ガス検知性能」に設定する処理を実行する。
【0154】
具体的には、酸化性ガス検知閾値Tdに対して新品用閾値Tnを設定する処理を行う。 S910で否定判定されてS930に移行すると、S930では、素子状態変数Vnの値が低劣化状態を表す値「1」であるか否かを判断しており、肯定判定する場合にはS940に移行し、否定判定する場合にはS950に移行する。つまり、S910では、S140(劣化判定処理。より詳細には、S480の比較結果判定処理。)での判定結果に基づいて、D素子3が低劣化状態であるか否かを判定する。
【0155】
S930で肯定判定されてS940に移行すると、S940では、D側センサ出力値S(n1)を用いたガス検知性能(ガス検知精度)を「劣化レベル低品用ガス検知性能」に設定する処理を実行する。
【0156】
具体的には、酸化性ガス検知閾値Tdに対して低劣化品用閾値To1を設定する処理を行う。
S930で否定判定されてS950に移行すると、S950では、D側センサ出力値S(n1)を用いたガス検知性能(ガス検知精度)を「劣化レベル高品用ガス検知性能」に設定する処理を実行する。
【0157】
具体的には、酸化性ガス検知閾値Tdに対して高劣化品用閾値To2を設定する処理を行う。
なお、非劣化状態(新品状態)から劣化状態に移行するに従い、酸化性ガスが同一の濃度変化を生じたときにD側センサ出力値S(n1)がとりうる数値範囲が低下する特性を有するD素子3においては、新品用閾値Tnは低劣化品用閾値To1よりも大きい値となり、さらに、低劣化品用閾値To1は高劣化品用閾値To2よりも大きい値となる。
【0158】
S920,S940,S950での処理が終了すると(換言すれば、ガス検知性能設定処理が終了すると)、再びガス検知処理に移行する。
このような構成の第2ガス検出装置は、変化量比較結果値変数G(n2)が低劣化判定閾値Th2以下と判定された場合(S810で否定判定)に、さらに変化量比較結果値変数G(n2)と高劣化判定閾値Th3との比較判定を行うことから、D素子3が劣化状態であるか否かのみならず、D素子3の劣化程度(低劣化状態、高劣化状態)を判定することができる。
【0159】
このようにしてD素子3の劣化程度を判定することで、劣化程度に応じて酸化性ガス検知閾値Tdを変更(補正)することが可能となり、D素子3の劣化程度に応じて適切な補正処理を行うことで、劣化判定の判定精度を向上させることができる。
【0160】
よって、第2実施形態によれば、D素子3の状態を非劣化状態と劣化状態の2段階の区分ではなく、より細かい区分(3段階以上の区分)に分類することで、ガス検知における補正内容を細分化でき、ガス検知精度の向上を図ることができる。
【0161】
なお、第2実施形態においては、S480,S810,S820,S830,S840,S850を実行するマイコン101が劣化状態判定手段に相当し、S150,S910,S920,S930,S940,S950を実行するマイコン101が検出感度補正手段に相当している。
【0162】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の態様を採ることができる。
例えば、上記実施形態(以下、第1実施形態ともいう)では、正方向最大変化量の絶対値と負方向最大変化量の絶対値との比較結果を表す変化量比較結果値としては、正方向最大変化量変数Max(n1)の絶対値と負方向最大変化量変数Min(n1)の絶対値との比率を用いて、劣化判定を行う構成を採用している。具体的には、個別変化量比較結果値S/N(n2)および変化量比較結果値変数G(n2)を用いて、劣化判定を行う構成を採用している。
【0163】
しかし、正方向最大変化量の絶対値と負方向最大変化量の絶対値との比較結果を表す変化量比較結果値は、比率に限られることはなく、差分値であってもよい。
例えば、正方向最大変化量変数Max(n1)の絶対値から負方向最大変化量変数Min(n1)の絶対値を差し引いた差分値を変化量比較結果値として演算して、その変化量比較結果値が予め定められた劣化判定基準範囲に含まれるか否かを判定することで、素子の劣化状態の有無を判定しても良い。
【0164】
この場合、ガス検出素子が劣化状態であるときに差分値(変化量比較結果値)が採りうる数値範囲を劣化判定基準範囲として予め定めておくことで、ガス検出素子の劣化状態の有無を判定することができる。
【0165】
また、上述した実施形態では、劣化判定閾値Th1、低劣化判定閾値Th2、高劣化判定閾値Th3、なまし処理演算用係数K1、酸化性ガス検知閾値Tdなど、各変数に関する具体的な数値を示したが、これらの数値は、あくまで例示であり、本発明の技術的範囲に属する限り、任意の値をとることができる。
【符号の説明】
【0166】
1…セラミック基板、2…還元性ガス用ガスセンサ素子(G素子)、3…酸化性ガス用ガスセンサ素子(D素子)、4…ヒータ、10…一体型ガスセンサ素子、100…車両用外気導入制御システム、101…マイクロコンピュータ(マイコン)、110…G素子回路、120…D素子回路、131…ヒータ回路、132…スイッチング回路、140…レギュレータ回路、150…ガス検出装置、160…電子制御アセンブリ、161…フラップ制御回路、162…アクチュエータ、171…ダクト、172…内気取り入れ用ダクト、173…外気取り入れ用ダクト、174…外気導入用フラップ、180…電圧検出回路、191…電源装置(バッテリ)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象ガスの濃度変化に応じて電気的特性が変化する酸化物半導体製のガス検出素子と、
前記ガス検出素子における電気的特性の変化状態に基づいて前記検出対象ガスの有無を判定するガス判定手段と、
を備えるガス検出装置であって、
前記ガス検出素子の前記電気的特性に関して、前記検出対象ガスの濃度が上昇するときの前記電気的特性の変化方向を正方向変化と定義し、前記検出対象ガスの濃度が低下するときの前記電気的特性の変化方向を負方向変化と定義した場合において、
予め定められた劣化判定期間における前記電気的特性の単位時間あたりの変化量のうち、正方向変化の最大値である正方向最大変化量および負方向変化の最大値である負方向最大変化量を演算する変化量演算手段と、
前記正方向最大変化量の絶対値および前記負方向最大変化量の絶対値に基づいて、前記ガス検出素子が劣化状態であるか否かを判定する素子劣化判定手段と、
前記素子劣化判定手段にて前記ガス検出素子が劣化状態であると判定された場合には、前記ガス判定手段におけるガス検出感度を上げるための補正処理を行う検出感度補正手段と、
を備えていることを特徴とするガス検出装置。
【請求項2】
前記素子劣化判定手段は、
前記正方向最大変化量の絶対値と前記負方向最大変化量の絶対値との比較結果を表す変化量比較結果値を演算する比較結果演算手段と、
前記変化量比較結果値が予め定められた劣化判定基準範囲に含まれるか否かを判定し、前記変化量比較結果値が前記劣化判定基準範囲に含まれる場合には前記ガス検出素子が劣化状態であると判定し、前記変化量比較結果値が前記劣化判定基準範囲に含まれない場合には前記ガス検出素子が劣化状態ではないと判定する劣化状態判定手段と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載のガス検出装置。
【請求項3】
前記比較結果演算手段は、
複数の前記劣化判定期間でそれぞれ演算された複数の前記正方向最大変化量および複数の前記負方向最大変化量を用いて、前記変化量比較結果値を演算すること、
を特徴とする請求項2に記載のガス検出装置。
【請求項4】
前記比較結果演算手段は、前記劣化判定期間ごとに演算された前記変化量比較結果値をなまし処理したなまし値を、前記劣化状態判定手段の判定に用いられる前記変化量比較結果値として演算すること、
を特徴とする請求項3に記載のガス検出装置。
【請求項5】
前記劣化状態判定手段は、
前記変化量比較結果値が前記劣化判定基準範囲に含まれると判定した場合には、前記変化量比較結果値が予め定められた低程度判定基準範囲に含まれるか否かを判定し、
前記変化量比較結果値が前記低程度判定基準範囲に含まれる場合には前記ガス検出素子の劣化程度が低いと判定し、前記変化量比較結果値が前記低程度判定基準範囲に含まれない場合には前記ガス検出素子の劣化程度が高いと判定すること、
を特徴とする請求項2から請求項4のいずれか一項に記載のガス検出装置。
【請求項1】
検出対象ガスの濃度変化に応じて電気的特性が変化する酸化物半導体製のガス検出素子と、
前記ガス検出素子における電気的特性の変化状態に基づいて前記検出対象ガスの有無を判定するガス判定手段と、
を備えるガス検出装置であって、
前記ガス検出素子の前記電気的特性に関して、前記検出対象ガスの濃度が上昇するときの前記電気的特性の変化方向を正方向変化と定義し、前記検出対象ガスの濃度が低下するときの前記電気的特性の変化方向を負方向変化と定義した場合において、
予め定められた劣化判定期間における前記電気的特性の単位時間あたりの変化量のうち、正方向変化の最大値である正方向最大変化量および負方向変化の最大値である負方向最大変化量を演算する変化量演算手段と、
前記正方向最大変化量の絶対値および前記負方向最大変化量の絶対値に基づいて、前記ガス検出素子が劣化状態であるか否かを判定する素子劣化判定手段と、
前記素子劣化判定手段にて前記ガス検出素子が劣化状態であると判定された場合には、前記ガス判定手段におけるガス検出感度を上げるための補正処理を行う検出感度補正手段と、
を備えていることを特徴とするガス検出装置。
【請求項2】
前記素子劣化判定手段は、
前記正方向最大変化量の絶対値と前記負方向最大変化量の絶対値との比較結果を表す変化量比較結果値を演算する比較結果演算手段と、
前記変化量比較結果値が予め定められた劣化判定基準範囲に含まれるか否かを判定し、前記変化量比較結果値が前記劣化判定基準範囲に含まれる場合には前記ガス検出素子が劣化状態であると判定し、前記変化量比較結果値が前記劣化判定基準範囲に含まれない場合には前記ガス検出素子が劣化状態ではないと判定する劣化状態判定手段と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載のガス検出装置。
【請求項3】
前記比較結果演算手段は、
複数の前記劣化判定期間でそれぞれ演算された複数の前記正方向最大変化量および複数の前記負方向最大変化量を用いて、前記変化量比較結果値を演算すること、
を特徴とする請求項2に記載のガス検出装置。
【請求項4】
前記比較結果演算手段は、前記劣化判定期間ごとに演算された前記変化量比較結果値をなまし処理したなまし値を、前記劣化状態判定手段の判定に用いられる前記変化量比較結果値として演算すること、
を特徴とする請求項3に記載のガス検出装置。
【請求項5】
前記劣化状態判定手段は、
前記変化量比較結果値が前記劣化判定基準範囲に含まれると判定した場合には、前記変化量比較結果値が予め定められた低程度判定基準範囲に含まれるか否かを判定し、
前記変化量比較結果値が前記低程度判定基準範囲に含まれる場合には前記ガス検出素子の劣化程度が低いと判定し、前記変化量比較結果値が前記低程度判定基準範囲に含まれない場合には前記ガス検出素子の劣化程度が高いと判定すること、
を特徴とする請求項2から請求項4のいずれか一項に記載のガス検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−64487(P2011−64487A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−213249(P2009−213249)
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】
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