説明

ガス検知器

【課題】外部放熱によって生じる無駄な消費電力を削減しつつ、パッケージサイズの小型化を図ることができるガス検知器を提供すること。
【解決手段】本発明のガス検知器1は、空気層に挟まれた絶縁性耐熱材の基板9と、基板の表面上の発熱素子10と、発熱素子10に接合され発熱素子10の加熱によって所定の温度に被検知ガスと反応するガス反応素子2と、基板10の表面上の発熱素子10の形成領域10p外に形成された複数の電極8と、基板9において発熱素子10の形成領域10pから電極8の形成領域8pを隔てる断熱溝9gと他の部材6、7を備えており、基板9の周辺の空気を断熱材として利用することにより発熱素子10の形成領域10p外への放熱を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス検知器に係り、特に、水素や水蒸気などの気体を検知するのに好適に用いられるガス検知器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高出力・長時間発電・小型化が容易な水素燃料電池が実用化されつつある。この水素燃料電池には、使用時の安全性を担保するため、水素ガス検知器や水蒸気検知器などのガス検知器が併設されていることが多い。
【0003】
図4または図5に示すように、従来のガス検知器101A、101Bは、その一例として、所定の温度において被検知ガスに反応することにより電気抵抗などの物性値を変化させるガス反応素子102と、加熱によりガス反応素子102の測定温度を一定に保つ発熱素子110とを少なくとも備えている。これらガス反応素子102および発熱素子110は、セラミックス製の基台110bの表面上に薄膜状の金属発熱体110aが形成されており、その金属発熱体110aにガス反応素子102が金属接合されている。また、基板109上には電極108が形成されており、その電極108に対して発熱素子110およびガス反応素子102が金属製ワイヤなどの内部配線106を介して接続されている。さらに、これらガス反応素子102および発熱素子110は、内部配線106、電極108およびその電極108に接続された外部からの配線(以下、「外部配線」という。)107を介して、ガス検知器101A、101Bの外部に設置されたガス反応素子102のガス反応量を測定する測定手段(図示せず)および発熱素子110の発熱量を制御する温度制御回路(図示せず)に接続されている(特許文献1を参照)。
【0004】
ここで、従来のガス検知器101A、101Bは、発熱素子110によって発生した熱が内部配線106および電極108を介して外部配線107から外部に放熱してしまうことを防止するため、図4に示すようなアルミナなどの断熱部材112や、図5に示すような空気層114aを有するシリコン製の断熱基台114を発熱素子110と基板109との間に介在させていた。
【0005】
【特許文献1】特開2005−189214号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図4に示すように、図5で用いられている空気層114aを有する断熱基台114と比較して、断熱効率があまり良くない断熱部材112を基板109と発熱素子110との間に介在させる場合においては、外部配線107から外部に放熱する熱量が多いことから、ガス反応素子102に供給する発熱素子110の熱効率が悪くなり、ガス検知器101Aの不必要な消費電力が大きくなるという問題があった。
【0007】
また、断熱部材112を介在させると、断熱部材112と発熱素子110との接合に用いる接着剤が揮発して不要なガスを発生させてしまい、当該不要なガスによってガス反応素子102の反応能力や他のデバイス特性が劣化するおそれがあるという問題もあった。
【0008】
他方、図5に示すように、空気層114aを有する断熱基台114を基板109と発熱素子110との間に介在させる場合においては、断熱効率を向上させるために必要な空気層114aの厚さ分だけ大きなスペースが必要となり、それに比例してガス検知器101Bのパッケージサイズが大きくなってしまうという問題があった。
【0009】
さらに、従来のガス検知器101A、101Bが水素ガスを検知する水素ガス用ガス検知器の場合、水素ガスの漏洩レベルに応じて水素漏洩の警告を段階的に行なうために反応濃度の異なる同種の水素用ガス検出器を併設させることが多く、また水素用ガス検出器が湿度の影響を受けやすいことから水蒸気用ガス検出器(湿度計測器)を併設させることも多い。そのため、1つの水素ガス検出器に対して複数のガス検知器を配設しなければならず、配設スペースを余計に設ける必要があった。
【0010】
また、複数のガス検知器が配設されると、ガス検知器の個数分だけ発熱素子110を発熱させる必要が生じるので、それに比例してガス検知器に必要な消費電力が大きくなってしまうという問題も生じた。
【0011】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、外部放熱によって生じる無駄な消費電力を削減しつつ、パッケージサイズの小型化を図ることができるガス検知器を提供することを本発明の目的としている。
【0012】
また、本発明は、発熱素子の熱効率を向上させるとともに、省スペース化を図ることができるガス検知器を提供することを他の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述した目的を達成するため、本発明のガス検知器は、その第1の態様として、絶縁性耐熱材を用いて形成されていると共に空気層に挟まれている基板と、前記基板の表面上に形成されている発熱素子と、前記発熱素子に接合されているとともに前記発熱素子の加熱によって所定の温度になると被検知ガスに反応するガス反応素子と、前記基板の表面上において前記発熱素子の形成領域外に形成されている複数の電極と、前記基板において前記発熱素子の形成領域から前記電極の形成領域を隔てる断熱溝と、前記発熱素子および前記ガス反応素子を前記電極に接続させる内部配線と、前記基板の外部に設置された前記ガス反応素子のガス反応量を測定する測定回路および前記発熱素子の温度を制御する温度制御回路を前記電極に接続させる外部配線とを備えていることを特徴としている。
【0014】
本発明の第1の態様によって、発熱素子の発生熱が断熱溝によって発熱素子の形成領域に閉じこめられるので、発熱素子の形成領域外に形成された電極と接続された外部配線から発熱素子の発生熱が放熱することを防止することができる。また、基板の両面は断熱性の良い空気層に挟まれて覆われるので、発熱素子の形成領域外への放熱も少なく、加熱のための電力を削減することができる。つまり、発熱素子によって発生した熱が発熱素子の形成領域外に放熱することを防止しすることができる。
【0015】
本発明の第2の態様は、発熱素子およびガス反応素子が基板の両面にそれぞれ配設されていることを特徴としている。
【0016】
本発明の第2の態様によって、複数のガス検知器を1パッケージ化することができ、さらに基板の同一平面上にガス反応素子を配設するよりも小型化することができる。また、基板両面の発熱素子の形成領域に発生した発熱素子の発生熱を基板両面に配設されたそれぞれのガス反応素子に有効に供給することができる。
【0017】
本発明の第3の態様は、第1または第2の態様のガス検知器において、断熱溝が基板両面に貫通した通気孔となっていることを特徴としている。
【0018】
本発明の第3の態様によって、断熱溝による断熱効果を最大限に発揮することができる。また、基板両面に存在するガスを双方向に通過させることができるので、基板両面に存在するガスの温度を均一にすることができる。
【0019】
本発明の第4の態様は、第2または第3の態様のガス検知器において、基板両面に配設されたガス反応素子はガスの反応濃度がそれぞれ異なる同種のガス反応素子であることを特徴としている。
【0020】
本発明の第4の態様によって、同種ガスの濃度を広範囲に若しくは段階的に検知することができる。
【0021】
本発明の第5の態様は、第2または第3の態様のガス検知器において、基板両面に配設されたガス反応素子は、反応するガスの種類がそれぞれ異なる異種のガス反応素子であることを特徴としている。
【0022】
本発明の第5の態様によって、数種のガスを1のガス検知器を用いて検知することができる。
【0023】
本発明の第6の態様は、第2から第5のいずれか1の態様のガス検知器において、基板両面に配設された発熱素子の一方には基板両面のガス反応素子のガス反応量を測定する基準となるリファレンス素子が1つ配設されており、他方の発熱素子には基板両面の発熱素子を測温する測温素子が1つ配設されていることを特徴としている。
【0024】
本発明の第6の態様によって、複数のガス反応素子に対してリファレンス素子および測温素子を共用し、ガス検知器のパッケージサイズを小型化することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明のガス検知器によって、ガス検知器に接続された外部配線および発熱素子の形成領域からの輻射による放熱を防止することができるので、無駄な消費電力を削減しつつ、パッケージサイズが小型化するという効果を奏する。
【0026】
また、本発明のガス検知器によって、ガス検知器を1パッケージ化・小型化にしつつ、発熱素子の熱を有効に利用して広範囲もしくは段階的なガス濃度の検知や複数種のガス検知を行なうことができるので、ガス検知器に係る設置範囲の省スペース化とガス検知器の低消費電力化がなされるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図1から図3を用いて、本発明のガス検知器における2つの実施形態を説明する。
【0028】
はじめに、図1および図2を用いて第1の実施形態のガス検知器を説明する。ここで、図1は、第1の実施形態のガス検知器の分解斜視図を示している。また、図2は、第1の実施形態のガス検知器に用いられる基板、発熱素子および電極の平面図を示している。
【0029】
図1に示すように、第1の実施形態のガス検知器1Aは、筐体11の内部に、基板9、発熱素子10、ガス反応素子2、測温素子4およびリファレンス素子5を備えている。また、基板9上の表面9aには電極8が形成されており、当該電極8には、発熱素子10、ガス反応素子2、測温素子4およびリファレンス素子5にそれぞれ接続された内部配線6と、外部に設置された測定回路(図示せず)および温度制御回路(図示せず)にそれぞれ接続された外部配線7とがそれぞれ接続されている。
【0030】
ここで、ガス検知器1Aの筐体11は、ステンレスやアルミニウムなどの金属を用いて分割可能な円筒状に形成されている。また、その筐体11の2つの底板11b1の少なくともどちらか一方には筐体11の外部に存在する被検知ガスを含んだ外気を筐体11の内部に取り入れる複数の通気孔11vを有しており、他方の底板11b2には外部配線7を通す円形状の配線孔11hを有している。そして、当該筐体11の内部には、筐体11の内部に備わる基板9の端部を部分的に支持して基板9の両面9a、9bに空気層を介在させる支持部11sを有している。
【0031】
ガス検知器1Aの基板9は、図2(a)もしくは(b)に示すように、アルミナなどのセラミックス製絶縁性耐熱材を用いて矩形状に形成されており、その基板9の表面9a上に発熱素子10および電極8が形成されている。この発熱素子10は、Pt、Moなどの高融点金属発熱体やFeCrAl、NiCrなどの合金系発熱体を用いてつづら折り状に形成されている。電極8は、発熱素子10の形成領域10p外の領域において、金や銅などの導電率の良い金属を用いて矩形状に複数個形成されている。
【0032】
また、この発熱素子10の形成領域10p周辺には、発熱素子10の形成領域10pと電極8の形成領域8pとを隔てるように断熱溝9gが形成されている。この断熱溝9gは、図2(a)に示すように、発熱素子10の形成領域10pの両側方において発熱素子10の形成領域10pを電極8の形成領域8pを含む基板9上の他の領域から熱的に隔離させるような長穴状に形成されていても良いし、図2(b)に示すように、発熱素子10の形成領域10pが他の形成領域に部分的に支持されながら発熱素子10の形成領域10pの周囲を取り囲む堀割状に形成されていても良い。すなわち、この断熱溝9gは、少なくとも発熱素子10の形成領域10pを電極8の形成領域8pから隔てることにより発熱素子10の形成領域10pと電極8の形成領域8pとの温度分布を異ならせる形状に形成されていればよい。なお、この断熱溝9gは、断熱効果を向上させるため、貫通させることが好ましい。
【0033】
ガス反応素子2は、図1に示すように、チップ状に形成された半導体基台2bと、当該半導体基台2b上に形成されたガス吸収層2aとを有している。また、ガス吸収層2aは、合金粉末とバインダー樹脂とを混合して形成されており、発熱素子10に金属接合している。この金属接合としては、導電率の観点から、Au−Sn接合、Au−Au接合、Au−半田接合などを採用することが好ましい。
【0034】
ここで、半導体基台2bとしては、たとえばGaAs、GaP、GaN、InP、InAsなどの化合物半導体や、SnO2、ZnO、TiO2、Y2O5、などの金属酸化物半導体等が用いられている。
【0035】
ガス吸収層2aの合金粉末としては、所定の使用温度およびガス濃度に到達すると急激に当該ガスを吸収して電気抵抗などの物性値を変化させる材料が用いられている。たとえばガス吸収層2aに水素吸収材を用いることにより、ガス吸収層2aに水素ガスを吸収させて電気抵抗を変化させる場合、当該合金粉末としては、Pdを主成分とする材料、ZrNi合金、ZrCr合金、TiMn合金、TiFeMn合金、TiFeZrNb合金、FeTi0合金、MgNi合金、CaNi合金、LaNi合金、LaNiAl合金などの合金粉末を用いることが好ましい。
【0036】
また、ガス吸収層2aのバインダー樹脂としては、ベンゾサイクロブテン樹脂とメシチレンなどの溶剤とによって形成されたものを用いることが好ましい。
【0037】
ガス検知器1Aの測温素子4は、アルミナ製の基台4b上に白金測温抵抗体などの測温抵抗体4aが薄膜状に形成されたものとなっており、発熱素子10の形成領域10p内であってガス反応素子2の周辺に配設されている。
【0038】
リファレンス素子5は、ガス反応素子2に用いられたチップ状の半導体基台2bと同一の材料を用いて同一形状に形成されており、発熱素子10に金属接合されている。この金属接合としては、導電率の観点から、Au−Sn接合、Au−Au接合、Au−半田接合を採用することが好ましい。
【0039】
なお、ガス検知器1Aの小型化の観点から、測温素子4およびリファレンス素子5をガス検知器1Aから省いても良い。
【0040】
内部配線6は、金や銅などの導電率の良い金属を用いてワイヤ状に形成されている。また、内部配線6の表面積を小さくして内部配線からの放熱をできる限り阻止することで熱効率を向上させることができるため、内部配線6はできる限り短く形成されていることが好ましい。
【0041】
また、各々の外部配線7は、各電極8および各内部配線6を介して、ガス反応素子2およびリファレンス素子5を測定回路に接続し、発熱素子10および測温素子4を温度制御回路に接続する。ここで、測定回路とは、ガス反応素子2が反応したガス反応量を電気的に測定するために用いられる測定回路であり、ガス反応素子2の電気抵抗とリファレンス素子5の電気抵抗との相対測定に基づいて得られたガス吸収層2aのみの電気抵抗またはリファレンス素子5を省く場合はガス反応素子2全体の電気抵抗から被検知ガスのガス濃度を測定するように形成されている。また、温度制御回路とは、測温素子4から得た温度に基づいて温度補正を行ないながら発熱素子10に電流を供給することにより、または測温素子4を省く場合は発熱素子10への電流供給のみにより、発熱素子10の発熱量を適切に制御する回路である。
【0042】
内部配線6および外部配線7は、各電極8に金属接合している。この金属接合としては、導電率の観点から、Au−Sn接合、Au−Au接合、Au−半田接合などを採用することが好ましい。
【0043】
次に、図1を用いて、第1の実施形態のガス検知器1Aの作用を説明する。
【0044】
第1の実施形態のガス検知器1Aの外部に配設された発熱素子10の温度制御回路により発熱素子10が発熱すると、発熱素子10に接合されたガス反応素子2およびリファレンス素子5が加熱される。また、それに伴い、基板9に形成された発熱素子10の形成領域10pが加熱される。当該発熱素子10の形成領域10pに加えられた熱は低温側となる発熱素子10の形成領域10p外に流れようとするが、発熱素子10の形成領域10pが断熱溝9gによって当該形成領域10p外の他の領域から隔離(正確には他の形成領域によって発熱素子10の形成領域10pを支持する部分を除いて隔離)されているため、放熱することができない。また、断熱溝9gを有する基板9は筐体11の支持部11sによって空気層に挟まれるように支持されているので、基板9に形成された発熱素子10の形成領域10pから発熱素子10の熱が輻射して放熱することもできない。つまり、発熱素子10によって発生した熱が発熱素子10の形成領域10p外に放熱することを防止し、発生した熱の大部分を発熱素子10に接合されたガス反応素子2およびリファレンス素子5に供給することができる。これによって、放熱によって生じていた不必要な消費電力を削減し、発熱素子10の熱効率の向上を実現することができる。
【0045】
なお、ガス反応素子2、リファレンス素子5および測温素子4の配設に必要な配設領域と発熱素子10の形成領域10pとを同等にすることによって、発熱素子10の熱効率を最適なものとすることができる。
【0046】
また、第1の実施形態のガス検知器1Aにより外部配線7から放熱することを防ぐことができることから、従来のガス検知器101Aに用いられていた断熱部材を排除することができる。これによって、ガス検知器1Aから断熱部材を排除することができ、パッケージの省コスト化に貢献する。なお、二次的な効果として、断熱部材の接合に用いられていた接着剤を排除することができることから、発熱素子10の発熱により揮発した接着剤によるガス検知器1Aの性能劣化を防止することができる。
【0047】
さらに、発生した熱を発熱素子10に接合されたガス反応素子2およびリファレンス素子5に効率よく供給させることができることから、ガス検知器1Aの作動時間を早くすることができる。また、放熱による温度変化が生じにくく、ガス反応素子2の使用温度を一定に保つことができるので、被検知ガスを極めて正確に検知することができる。
【0048】
なお、第1の実施形態のガス検知器1Aにリファレンス素子5および測温素子4が配設されていると、被検知ガスの検知および発熱素子10の温度制御を極めて正確におこなうことができる。
【0049】
つづいて、図3を用いて、第2の実施形態のガス検知器を説明する。ここで、図3は、第2の実施形態のガス検知器を図1の3−3方向から示した断面図である。
【0050】
図3に示すように、第2の実施形態のガス検知器1Bは、被検知ガスのガス濃度に応じて2段階の警告を発したり、2種以上の被検知ガスを1つのガス検知器1Bによって測定したりする場合に使用可能となるように形成されている。
【0051】
具体的には、第2の実施形態のガス検知器1Bは、円筒状の筐体11の内部に、アルミナなどの絶縁性耐熱材を用いて形成された基板9と、基板9の両面9a、9bに形成された発熱素子10A、10Bと、基板両面9a、9bの発熱素子10A、10Bにそれぞれ接合された同種のガス反応素子2A、2Bもしくは異種のガス反応素子2A、3と、基板両面9a、9bの発熱素子10A、10Bの形成領域10Ap、10Bp外に形成された複数の電極8A、8Bと、発熱素子10A、10Bの形成領域10Ap、10Bp周辺に電極8A、8Bの形成領域8Ap、8Bpを隔てるように形成された断熱溝9gとを備えている。また、第1の実施形態と同様、ガス反応素子2A、2B(もしくは3)のガス反応量を測定する際の基準となるリファレンス素子5と、発熱素子10A、10Bの周囲を測温する測温素子4と、発熱素子10A、10B、ガス反応素子2A、2B(もしくは3)、リファレンス素子5および測温素子4を各電極8A、8Bにそれぞれ接続する内部配線6と、基板9の外部に設置された測定回路(図示せず)および温度制御回路(図示せず)を各電極8A、8Bに接続する外部配線7とを備えている。
【0052】
ガス検知器1Bの筐体11は、第1の実施形態と同様の材料を用いて同様の外形を有しており、筐体11の外部に存在する被検知ガスを含んだ外気を筐体11の内部にある基板両面9a、9bに取り入れる通気孔11vや外部配線7を通す円形状の配線孔11hを有している。また、筐体11の内部に備わる基板9の端部を部分的に支持して基板9の両面9a、9bに空気層を介在させる支持部11sも有している。
【0053】
ガス検知器1Bの基板9は、第1の実施形態と同様の材料を用いて矩形状に形成されており、基板両面9a、9bに発熱素子10A、10Bと電極8A、8Bとをそれぞれ有している。また、基板両面9a、9bの発熱素子10A、10Bの形成領域10Ap、10Bpの周辺において、発熱素子10A、10Bの形成領域10Ap、10Bp外に形成された電極8A、8Bを隔てるように形成された断熱溝9gを有している。
【0054】
この断熱溝9gは、第1の実施形態と同様に、基板両面9a、9bにそれぞれ形成された発熱素子10A、10Bの形成領域10Ap、10Bpを少なくとも基板両面9a、9bの電極8A、8Bの形成領域8Ap、8Bpからそれぞれ隔てることによって発熱素子10A、10Bの各形成領域10Ap、10Bpと電極8A、8Bの各形成領域8Ap、8Bpとの温度分布が異なるように形成されていることを条件として、基板両面9a、9bにおいて貫通させずに個別に形成されても良いし、図3に示すように基板両面9a、9bに貫通させて一体に形成されていても良い。
【0055】
また、基板両面9a、9bにガス反応素子2A、2B(もしくは3)が配設されるため、当該基板9には基板両面9a、9bに存在する気体を通気させる通気孔(図示せず)が形成されているが、たとえば断熱溝9gを基板両面9a、9bに貫通させて形成した場合、当該断熱溝9gが通気孔の役割を果たすことから、当該基板9に通気孔を別個独立に形成しなくともよい。
【0056】
発熱素子10A、10Bおよび電極8A、8Bは、基板両面9a、9bにおいて第1の実施形態と同様に形成されている。
【0057】
ガス反応素子2A、2B(もしくは3)は、被検知ガスのガス濃度や検知数に対応して基板両面9a、9bに1個ずつ配設されている。例えば、水素ガスのガス濃度を漏洩レベルに応じて段階的に測定したい場合、検知するガス濃度が異なる同種の水素ガス用ガス反応素子を同種のガス反応素子2A、2Bとして基板両面9a、9bの発熱素子10A、10Bに金属接合する。また、水素と水蒸気が混同した外気から水素ガスおよび水蒸気の両方を測定したい場合、水素ガス用ガス反応素子および水蒸気用ガス反応素子を異種のガス反応素子2A、3として基板両面9a、9bの発熱素子10A、10Bにそれぞれ金属接合する。
【0058】
ここで、水素ガス用ガス反応素子としては、第1の実施形態と同様、半導体基台に水素吸収材が積層されたものが用いられている。また、水蒸気用ガス反応素子としては、たとえばMgCr2O4−TiO2系セラミックス湿度センサなどのような、水素ガス用ガス反応素子の使用温度下(たとえば0〜150℃程度)において相対湿度10%RH以下の測定が可能な湿度センサが用いられている。
【0059】
もちろんガス反応素子2A、2B(もしくは3)は、前述した水素ガス用ガス反応素子や水蒸気用ガス反応素子に限られず、所定の使用温度およびガス濃度において被検知ガスに反応するガス反応素子であれば、酸素、二酸化炭素、アンモニア、メタノールガスなどの被検知ガスを測定するガス反応素子であっても良い。
【0060】
なお、ガス反応素子2A、2B(もしくは3)と発熱素子10A、10Bとの金属接合は、第1の実施形態と同様にして行なう。
【0061】
また、ガス検知器1Bの測温素子4およびリファレンス素子5は、第1の実施形態と同様にして形成されており、測温素子4は基板表面9a側にある発熱素子10Aの形成領域10Apに、リファレンス素子5は基板裏面9b側にある発熱素子10Bの形成領域10Bpに、それぞれ配設されている。もちろん、第1の実施形態と同様、ガス検知器1Bの小型化の観点から、測温素子4およびリファレンス素子5をガス検知器1Bから省いても良い。
【0062】
そして、内部配線6は、第1の実施形態と同様に形成されており、基板両面9a、9bのガス反応素子2A、2B(もしくは3)、基板両面9a、9bの発熱素子10A、10B、リファレンス素子5および測温素子4と各電極8A、8Bとをそれぞれ接続している。また、外部配線7は、第1の実施形態と同様に形成されており、電極8A、8Bおよび内部配線6を介して、基板両面9a、9bのガス反応素子2A、2B(もしくは3)およびリファレンス素子5を測定回路に接続させ、基板両面9a、9bの発熱素子10A、10Bおよび測温素子4を温度制御回路に接続させている。
【0063】
次に、図3を用いて、第2の実施形態のガス検知器1Bの作用を説明する。
【0064】
第2の実施形態のガス検知器1Bは、発熱素子10A、10Bの形成領域10Ap、10Bpと電極8A、8Bの形成領域8Ap、8Bpとの間に断熱溝9gが形成されていると共に、基板9の両面9a、9bが空気層に挟まれているので、発熱素子10A、10Bによって発生した熱が発熱素子10A、10Bの形成領域10Ap、10Bp外に放熱することを防止し、発熱素子10A、10Bの発生熱の大部分を基板両面9a、9bのガス反応素子2A、2B(もしくは3)、リファレンス素子5および測温素子4に供給することができる。これによって、放熱によって生じていた不必要な消費電力を削減し、発熱素子10A、10Bの熱効率の向上を実現することができる。
【0065】
さらに、第2の実施形態のガス検知器1Bは、基板9の両面9a、9bにガス反応素子2A、2B(もしくは3)、リファレンス素子5および測温素子4を配設したことにより、一方の発熱素子の形成領域(例えば基板表面9a側の発熱素子10Aの形成領域10Ap)の反対面側に伝熱した熱を他方の発熱素子の形成領域(例えば基板裏面9b側の発熱素子10Bの形成領域10Bp)に発生した熱として利用することができる。これにより、各々の発熱素子10A、10Bによって発生した熱を基板両面9a、9bに配設された各々のガス反応素子2A、2B(もしくは3)およびリファレンス素子5に無駄なく供給することができる。
【0066】
また、第2の実施形態のガス検知器1Bは、基板両面9a、9bに配設されたガス反応素子2A、2B(もしくは3)を使用態様に応じて様々なパターンに組み合わされ、1パッケージ化されていることから、被検知ガスのガス濃度に応じて2段階の警告を発したり、2種以上の被検知ガスを1つのガス検知器1Bによって測定したりするといったような、複数の検知を行なうことができる。
【0067】
たとえば、検知する水素ガスのガス濃度がそれぞれ異なる同種のガス反応素子2A、2Bを基板両面9a、9bにそれぞれ配設した場合、外気に混入したガス濃度の高低に応じて水素ガスが検知されることになり、水素燃料電池による水素ガス漏洩の際に、「注意」・「危険」などといったような水素ガスの漏洩レベルに応じた2段階の警告を発することができる。
【0068】
他方、水素ガス用ガス反応素子と水蒸気用ガス反応素子といったように、検知するガスの種類がそれぞれ異なる異種のガス反応素子2A、3を基板両面9a、9bに配設させた場合、1のガス検知器1Bによって2種の被検知ガスを検知することができる。これは、水素ガス用ガス検知器が水蒸気用ガス検知器と併設されやすいといったような、複数個のガス検知器が同一範囲内に近接して設置されるような場合に大変有効である。
【0069】
ここで、第2の実施形態のガス検知器1Bは、基板9に通気孔(図示せず)を有していること若しくは断熱溝9gが基板両面9a、9bに貫通した通気孔にもなっていることから、基板両面9a、9bに存在するガスを双方向に通過させることができる。これによって、基板両面9a、9bに存在する被検知ガスの温度を平衡にすることができるので、たとえばガス検知器1Bを配設する向きによって検知結果が異なるといったようなことを防止することができる。
【0070】
さらに、第2の実施形態のガス検知器1Bは、基板表面9aにリファレンス素子5が配設され、基板裏面9bに測温素子4が配設されており、複数のガス反応素子2A、2B(もしくは3)および発熱素子10A、10Bに対してリファレンス素子5および測温素子4を共用している。これによって、ガス反応素子2A、2B(もしくは3)および発熱素子10A、10Bの配設個数に応じて複数個のリファレンス素子5および測温素子4を配設することがなくなるので、ガス検知器1Bのパッケージサイズをさらに小型化することができる。
【0071】
なお、第1の実施形態のガス検知器1Aと同様、第2の実施形態のガス検知器1Bは、従来のガス検知器101A、101Bに用いられていた断熱部材および接着剤を排除することができるので、それに伴い同様の効果を得ることができる。
【0072】
すなわち、第1および第2の実施形態のガス検知器によって、ガス検知器に接続された外部配線および発熱素子の形成領域からの輻射による放熱を防止することができるので、無駄な消費電力を削減しつつ、パッケージサイズが小型化するという効果を奏する。さらに、第2の実施形態のガス検知器1Bによって、複数のガス検知器を1パッケージ化するとともに小型化し、さらに発熱素子10A、10Bから発生した熱を有効に利用して複数種のガス検知や段階的なガス濃度の検知を行なうことができるので、ガス検知器1Bの消費電力が低減されたり、ガス検知器1Bの省配設スペース化がなされたりするという効果を奏する。
【0073】
なお、本発明は、前述した実施形態などに限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明のガス検知器の一実施形態を示す分解斜視図
【図2】本発明のガス検知器の一実施形態に用いられる基板、発熱素子および電極の平面図:(a)は、発熱素子の形成領域の側方に形成された長穴状の断熱溝を示しており、(b)は、発熱素子の形成領域の周囲を取り囲むように形成された堀割状の断熱溝を示している。
【図3】本発明のガス検知器の他の実施形態を図1の3−3方向から示した断面図
【図4】従来のガス検知器の一例を示す縦断面図
【図5】従来のガス検知器の他の例を示す縦断面図
【符号の説明】
【0075】
1A、1B ガス検知器
2、2A、2B、3 ガス反応素子
4 測温素子
5 リファレンス素子
6 内部配線
7 外部配線
8、8A、8B 電極
8p、8Ap、8Bp 電極の形成領域
9 基板
9g 断熱溝
10 発熱素子
10p 発熱素子の形成領域
11 筐体
11b 底板
11h 配線孔
11s 支持部
11v 通気孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性耐熱材を用いて形成されていると共に空気層に挟まれている基板と、
前記基板の表面上に形成されている発熱素子と、
前記発熱素子に接合されているとともに前記発熱素子の加熱によって所定の温度になると被検知ガスに反応するガス反応素子と、
前記基板の表面上において前記発熱素子の形成領域外に形成されている複数の電極と、
前記基板において前記発熱素子の形成領域から前記電極の形成領域を隔てる断熱溝と、
前記発熱素子および前記ガス反応素子を前記電極に接続させる内部配線と、
前記基板の外部に設置された前記ガス反応素子のガス反応量を測定する測定回路および前記発熱素子の温度を制御する温度制御回路を前記電極に接続させる外部配線と
を備えていることを特徴とするガス検知器。
【請求項2】
前記発熱素子および前記ガス反応素子は、前記基板の両面にそれぞれ配設されている
ことを特徴とする請求項1に記載のガス検知器。
【請求項3】
前記断熱溝は、前記基板両面に貫通した通気孔となっている
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のガス検知器。
【請求項4】
前記基板の両面に配設された前記ガス反応素子は、被検知ガスの反応濃度がそれぞれ異なる同種のガス反応素子である
ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載のガス検知器。
【請求項5】
前記基板の両面に配設された前記ガス反応素子は、反応する被検知ガスの種類がそれぞれ異なる異種のガス反応素子である
ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載のガス検知器。
【請求項6】
基板両面に配設された前記発熱素子の一方には基板両面の前記ガス反応素子のガス反応量を測定する基準となるリファレンス素子が1つ配設されており、他方の発熱素子には基板両面の前記発熱素子を測温する測温素子が1つ配設されている
ことを特徴とする請求項2から請求項5のいずれか1項に記載のガス検知器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−108047(P2007−108047A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−300007(P2005−300007)
【出願日】平成17年10月14日(2005.10.14)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】