説明

ガス漏洩検知装置と方法、およびガス漏洩検知装置用の制御器

【課題】漏洩判定手法を改良することにより、着火流量レベル以下の小流量のガス漏洩を早期に検知可能とする。
【解決手段】選択部111は、ガス流量センサ121で計測されたガス流量Qの流量区分を判定し、判定された流量区分に応じて大流量漏洩判定部112と小流量漏洩判定部113のいずれかを選択する。大流量漏洩判定部112は、100L/hを超える大流量区分の流量範囲の判定に好適な判定方法を用いて大流量漏洩判定処理を行う。小流量漏洩判定部113は、大流量漏洩判定用の判定方法とは異なる、5.5L/h〜100L/hの小流量区分の流量範囲(小流量ありレベルから着火流量レベルまでの流量範囲)の判定に好適な判定方法を用いて小流量漏洩判定処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各家庭へのガス供給ライン中に設置されるガスメータなどに利用されるガス漏洩検知装置と方法、およびガス漏洩検知装置用の制御器に関するもので、特に、漏洩判定手法を改良することにより、着火流量レベル以下の小流量のガス漏洩を早期に検知可能とし、それによって保安機能を向上可能とする技術に係る。
【背景技術】
【0002】
各家庭へのガス供給ラインの入り口には、ガス流量計を内蔵したガスメータが取り付けられている。ガスメータは、ガス供給ラインを通過するガス流量を計測し、計測されたガス流量は定期的な請求ガス料金の算出に利用される。かかるガスメータは、ガス流量の計測という基本的な機能に加えて、異常状態発生時にガス供給を遮断するという保安機能を有する。この保安機能は、地震の検出やガス漏れまたは器具の消し忘れなどの異常な使用状態の検出に応答して、ガスメータのガス流路内に設けられた遮断弁によりガスを遮断する機能である。
【0003】
図7は、上記保安機能の一つである安全継続時間オーバ時の遮断機能に利用される安全継続時間設定値を示す図である。この機能は、ガス流量の発生が検出されてから、そのガス流量が継続して使用される場合に、継続時間が過度に長くなる時は、ガス漏れなどの何らかの異常な使用状態が発生したとみなして、ガスを遮断する機能である。
【0004】
図7に示されるとおり、ガス流量が大きい大型の湯沸かし器は、せいぜい30分程度しか継続して使用されず、一方で、ガス流量が小さいストーブは、長時間継続して使用されるであろうとの前提で、ガス流量が大きい時の安全継続時間を短く、ガス流量が小さい時の安全継続時間を長く設定している。
【0005】
そして、ガスメータは、ガス流量が発生した時点や増加側に変化した時点で、何らかのガス器具の使用が開始されたと判断して、その流量が継続する時間を計測し、図7に示す安全継続時間を超えてその流量が継続する場合に、保安上の理由からガス遮断を行っている。すなわち、計測されるガス流量に基づいて、予め設定された複数の流量区分に個別対応するように予め設定された複数の安全継続時間設定値を用いて安全継続時間オーバ遮断を行っている。
【特許文献1】特開2002−156304
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図7に示されるように、使用時間を計測して安全継続時間と比較する手法では、着火流量レベル以下の、例えば50〜100L/h位の小流量のガス漏洩の検出は困難であった。このような小流量のガス漏洩は、例えば、ガス配管を釘で打ってしまった場合などに発生している。
【0007】
これに対して、従来の膜式流量計を用いたガスメータにおいては、一定の時間単位(例えば1時間)で流量パルスの出力の有無を監視して、連続する時間単位毎に少なくとも各1つ以上の流量パルスが出力される状態が連続して30日間続いた場合にガス漏洩発生と判定して警報を発する機能が実用化されている(例えば、特許文献1参照)。このような従来手法によれば、着火流量レベル以下の、例えば50〜100L/h位の小流量のガス漏洩の検出は可能であるが、ガス漏洩の発生から判定に至るまでに30日間を要するため、結果的に30日間の長期に亘ってガス漏洩状態を放置することになってしまう。
【0008】
本発明は、上記のような従来技術の課題を解決するために提案されたものであって、その目的は、漏洩判定手法を改良することにより、着火流量レベル以下の小流量のガス漏洩を早期に検知可能とし、それによって保安機能を向上可能なガス漏洩検知装置と方法、およびガス漏洩検知装置用の制御器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のガス漏洩検知装置は、対象ガス流路を流れるガス流量を計測する計測手段を備え、対象ガス流路におけるガス漏洩の有無を検知するガス漏洩検知装置において、次のような技術的特徴を有するものである。すなわち、前記計測手段により得られるガス流量の計測データに基づき、予め設定された複数の流量区分に個別対応した互いに異なる固有の判定方法でガス漏洩の有無を判定する複数の漏洩判定手段と、前記計測手段により得られるガス流量が前記複数の流量区分のいずれに属するかを判定し、判定された流量区分に応じて前記複数の漏洩判定手段の中から一つの漏洩判定手段を選択する選択手段と、この選択手段で選択された前記一つの漏洩判定手段により得られた判定結果またはそれに基づいて生成される信号を出力する保安手段と、前記計測手段により得られた計測データに基づいて装置内で得られたデータを記憶する記憶手段を備える。そして、前記複数の漏洩判定手段の前記判定方法は、対応付けられた流量区分の流量が大きいほど判定に要する時間が短くなるように設定されている。
【0010】
また、本発明のガス漏洩検知方法およびガス漏洩検知装置用の制御器は、上記のガス漏洩検知装置の特徴を、方法の観点および装置に使用される制御器の観点からそれぞれ把握したものである。
【0011】
以上のような特徴を有する本発明によれば、ガス流量の流量区分に応じてその流量区分に特化した適切な判定方法を選択してガス漏洩の有無を判定することができるため、着火流量レベル以下の小流量のガス漏洩であっても早期に検知可能となり、その結果、ガス漏洩を長期に亘って放置することなく、ガス漏洩発生後の比較的早期における警報発生やガス遮断が実現可能である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、漏洩判定手法を改良することにより、着火流量レベル以下の小流量のガス漏洩を早期に検知可能とし、それによって保安機能を向上可能なガス漏洩検知装置と方法、およびガス漏洩検知装置用の制御器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
[構成]
図1は、本発明のガス漏洩検知装置を適用した一つの実施形態に係るガスメータの構成を示す機能ブロック図である。この図1に示すように、本実施形態のガスメータ100は、本発明のガス漏洩検知装置の特徴的な機能を実現するコントローラ(制御器)110、対象ガス流路を流れるガスに関する物理量を計測する計測部120、ガスを遮断する遮断弁130、警報を発生する警報器140、各種のデータを表示する表示部150、外部とのデータ通信を行う通信装置160、から構成されている。
【0014】
計測部120は、対象ガス流路を流れるガス流量Qを計測するガス流量センサ121と、他の各種の物理量として、例えば、供給圧力、ガス温度、加速度などを計測する各種センサ122を備えている。ここで、ガス流量センサ121としては、各種の流量計を使用可能であるが、本実施形態では超音波流量計を使用するものとする。
【0015】
コントローラ110は、選択部111、大流量漏洩判定部112、小流量漏洩判定部113、保安部114、記憶部115、口火器具判定116、および、口火フラグ登録部117、を備えている。
【0016】
ここで、本実施形態における複数の流量区分としては、100L/hを超える大流量区分と5.5L/h〜100L/hの小流量区分という2つの流量区分が予め設定されている。そして、大流量漏洩判定部112と小流量漏洩判定部113は、それらの大流量区分と小流量区分に個別対応して設けられた複数の漏洩判定手段であり、計測部120のガス流量センサ121により得られるガス流量の計測データに基づき、各流量区分に固有の判定方法でガス漏洩の有無を判定する手段である。
【0017】
すなわち、大流量漏洩判定部112は、100L/hを超える大流量区分に固有の判定方法でガス漏洩の有無を判定する手段である。このような100L/hを超える大流量区分用の判定方法としては、既存の各種のガス漏洩判定方法を適宜選択可能である。
【0018】
また、小流量漏洩判定部113は、大流量漏洩判定部112の判定方法とは異なる、5.5L/h〜100L/hの小流量区分に固有の判定方法でガス漏洩の有無を判定する手段である。本実施形態においては、このような5.5L/h〜100L/hの小流量区分用の判定方法として、本発明に基づく特徴的な判定方法を用いるが、その判定方法の詳細については後述する。
【0019】
なお、本発明に従って、大流量漏洩判定部112の判定方法と小流量漏洩判定部113の判定方法は、大流量漏洩判定部112の判定に要する時間が小流量漏洩判定部113より短くなるように設定されている。
【0020】
選択部111は、計測部120のガス流量センサ121により得られるガス流量が大流量区分と小流量区分のいずれに属するかを判定し、判定された流量区分に応じて大流量漏洩判定部112と小流量漏洩判定部113のいずれか一方を選択する手段である。
【0021】
保安部114は、選択部111で選択された大流量漏洩判定部112と小流量漏洩判定部113のいずれか一方により得られた判定結果またはそれに基づいて生成される信号を出力する手段である。
【0022】
記憶部115は、計測部120により得られた計測データに基づいて装置内で得られたデータを記憶する手段である。
【0023】
口火器具判定部116は、計測部120のガス流量センサ121により得られるガス流量の口火流量範囲の流量変化を監視して口火器具流量パターンを検出し、この口火器具流量パターンを予め設定された所定回数検出した場合に、対象ガス流路に口火器具が存在すると判定する手段である。本実施形態においては、一例として、1.5L/h〜51.82L/hの口火流量範囲が設定されている。
【0024】
口火フラグ登録部117は、口火器具判定部116により口火器具が存在すると判定された場合に、対象ガス流路からガス供給を受ける口火器具の存在を示す口火フラグを記憶部115に登録する手段である。この口火フラグ登録部117は、保安部114の機能の一つとして実現される。
【0025】
以上のようなコントローラ110のうち、選択部111、大流量漏洩判定部112、小流量漏洩判定部113、保安部114、口火器具判定116、および、保安部114に含まれる口火フラグ登録部117は、これらの各部の機能を実現するために特化されたプログラムとそれを組み込んだ電子回路またはコンピュータにより実現される。また、記憶部115は、各種のメモリまたは記憶装置により実現される。
【0026】
[作用]
図2は、以上のような構成を有する本実施形態のガスメータ100のコントローラ110によるガス漏洩検知処理の一例を示すフローチャートである。以下には、図1と図2を参照しながら、ガス漏洩検知処理の流れについて説明する。
【0027】
[ガス漏洩検知処理]
コントローラ110は、計測部120のガス流量センサ121から対象ガス流路を流れるガス流量(の計測データ)Qを取得すると(S110のYES)、選択部111により、このガス流量Qが大流量区分と小流量区分のいずれに属するかを判定する(S120)。
【0028】
選択部111により判定された流量区分が大流量区分である場合(S120のYES)には、選択部111により大流量漏洩判定部112を選択する(S210)。そして、選択された大流量漏洩判定部112により大流量漏洩判定処理を行い(S220)、判定結果が「大流量漏洩あり」であれば(S230のYES)、保安部114によりガス遮断信号および警報信号を出力することによって、遮断弁130にガス遮断を行わせると共に、警報器140に警報を発生させる(S240)。
【0029】
選択部111により判定された流量区分が小流量区分である場合(S120のNO)には、選択部111により小流量漏洩判定部113を選択する(S310)。そして、選択された小流量漏洩判定部113により小流量漏洩判定処理を行い(S320)、判定結果が「小流量漏洩あり」であれば(S330のYES)、保安部114によりガス遮断信号および警報信号を出力することによって、遮断弁130にガス遮断を行わせると共に、警報器140に警報を発生させる(S340)。
【0030】
一方で、コントローラ110は、口火器具判定部116により、対象ガス流路に口火器具が存在するか否かを判定する口火器具判定処理を行い(S410)、判定結果が「口火器具あり」であれば(S420のYES)、保安部114の口火フラグ登録部117により、口火フラグを記憶部115に登録(口火フラグON)する(S430)。
【0031】
[個別の判定処理]
以下には、図2に示すガス漏洩検知処理における、大流量漏洩判定処理(S220)、小流量漏洩判定処理(S320)、および、口火器具判定処理(S410)について順次説明する。
【0032】
[大流量漏洩判定処理]
図2に示すガス漏洩検知処理における大流量漏洩判定処理(S220)において、大流量漏洩判定部112は、100L/hを超える大流量区分の流量範囲を対象としてガス漏洩判定を行う。そのため、100L/hを超える大流量区分の流量範囲の判定に好適であれば、大流量漏洩判定部112が使用する判定方法としては、既存の各種のガス漏洩判定方法を適宜選択可能である。
【0033】
このような大流量区分用の既存のガス漏洩判定方法としては、例えば、流量帯と流量の安定性からガス漏洩の可能性が考えられる状態が所定時間継続した場合にガス漏洩と判定する方法、流量と圧力の相関がある状態が所定時間継続した場合にガス漏洩と判定する方法などの採用が考えられる。
【0034】
また、器具使用が想定される大流量区分の流量範囲においては、ガス漏洩が実際に発生している場合であっても、器具使用に基づく流量変化の影響でガス漏洩の判定が遅れる場合がある。例えば、夏季においてファンヒータやストーブが使用される場合に、このような状況の発生が想定される。そのため、夏季などの特定期間を予め登録しておき、この登録期間中において所定時間以内に流量が大流量区分の流量範囲(本実施形態では、100L/h以上の流量範囲)内に留まっている場合にガス漏洩と判定する方法などの採用が考えられる。
【0035】
[小流量漏洩判定処理]
図2に示すガス漏洩検知処理における小流量漏洩判定処理(S320)において、小流量漏洩判定部113は、図3と図4に示す判定方法を用いて図5に示す手順により、5.5L/h〜100L/hの小流量区分の流量範囲を対象としたガス漏洩判定を行う。以下には、図3〜図5を参照しながら、小流量漏洩判定処理(S320)におけるガス漏洩判定方法について説明する。
【0036】
図3〜図5中で使用している符号の定義は次の通りである。
Q1:小流量ありと判定するしきい値となる「小流量ありレベル値」であり、小流量区分の流量範囲下限(5.5L/h)に相当する。
Q2:小流量ありと判定する上限値となる「(口火以外の器具の)着火流量レベル値」であり、小流量区分の流量範囲上限(100L/h)に相当する。
t1:小流量すら存在しないと判定される「小流量なしレベル」(小流量ありレベル値Q1未満のレベル)であることを判定するための判定時間となる「小流量なし判定時間」である。
t2:流量の立上り時間であると判定する上限値となる「流量立上り時間」である。
t3:流量の立上りを検知してから、器具使用ではなく遮断・警報が必要なガス漏洩であると判定するためのしきい値となる「遮断・警報時間」である。
t4:流量の立上りの検知に関係なく、小流量区分の流量範囲内の流量がt3よりも長時間に亘って連続的に検知された場合に、遮断・警報が必要なガス漏洩であると判定するためのしきい値となる「遮断・警報時間」である。
【0037】
これらの値のうち、t1〜t4の具体的な設定時間は適宜選択可能であるが、ここでは例えば、t1=99分、t2=999秒、t3=99分、t4=100時間、とする。
【0038】
図5に示すように、小流量漏洩判定処理(S320)において、小流量漏洩判定部113は、まず、小流量ありレベル値Q1未満の小流量なしレベルが小流量なし判定時間t1以上続いた(S321のYES)後、流量立上り時間t2内に、小流量ありレベル値Q1以上でかつ着火流量レベル値Q2以下の流量変化ΔQ(Q1≦ΔQ≦Q2)を検知した場合(S322のYES)に、流量の立上りを判定する(S323)。
【0039】
流量の立上りを判定してから、遮断・警報時間t3に亘って小流量区分の流量範囲5.5L/h〜100L/h内の流量Q(Q1≦Q≦Q2)が連続的に検知された場合(S324のYES)に、小流量漏洩ありと判定する(S325)。これは、図3に示す判定方法による判定結果に相当する。
【0040】
また、流量の立上りを検知した後、遮断・警報時間t3の間にQ2を超える流量Q(Q>Q2)を検知した場合(S326のYES)には、ガス漏洩ではなく器具使用であると判定する(S327)。
【0041】
また、流量の立上りを判定できない場合(S322のNO)、あるいは、流量の立上りを判定した後、小流量区分の流量範囲5.5L/h〜100L/h内の流量Q(Q1≦Q≦Q2)が遮断・警報時間t3に亘って連続的に検知されず、遮断・警報時間t3の間にQ2を超える流量Q(Q>Q2)を検知することもない場合(S324のNO、S326のNO)には、図4に示す判定方法による判定を行う。すなわち、遮断・警報時間t4に亘って流量区分の流量範囲5.5L/h〜100L/h内の流量Q(Q1≦Q≦Q2)が連続的に検知されたか否かを判定し、検知された場合(S328のYES)に、小流量漏洩ありと判定する(S329)。
【0042】
なお、口火フラグが記憶部115に登録されている場合には、S324,S328の判定に使用する流量範囲の下限を51.82L/hに切り換え、流量範囲51.82L/h〜100L/h内の流量Qについて判定を行う。すなわち、口火フラグが登録されている場合には、51.82L/h未満の流量は、口火器具使用の可能性があるため、誤判定を回避する観点から、51.82L/h未満の流量については判定対象としない。
【0043】
一方、以上のような図5に示す小流量漏洩判定処理(S320)において、脈動(流量のばらつき)がある場合や、S322で流量変化を検知した後に流量が再び小流量なしレベルまで低下した場合にも、誤判定を回避する観点から判定を中止する。
さらに、流量の立上り前後(t1,t3)で脈動がある場合や、流量立上り時間t2内に着火流量レベル値Q2以上の流量変化があった場合には、誤判定を回避する観点から、これらの流量変化については判定対象としない。
【0044】
[口火器具判定処理]
図2に示すガス漏洩検知処理における口火器具判定処理(S410)において、口火器具判定部116は、図6に示す判定方法を用いて対象ガス流路に口火器具が存在するか否かを判定する。以下には、図6を参照しながら、口火器具判定処理(S410)の手順について説明する。
【0045】
図6中で使用している符号の定義は次の通りである。
Q11:口火器具の口火流量範囲の下限値である。
Q12:口火器具の口火流量範囲の上限値である。
Q13:想定される口火器具の使用流量範囲の下限値である。
Q14:想定される口火器具の使用流量範囲の上限値である。
【0046】
口火器具判定処理(S410)において、口火器具判定部116は、計測部120のガス流量センサ121により得られるガス流量の口火流量範囲の流量変化を監視して、図6に示すような口火器具流量パターンを検出する。この口火器具流量パターンは、次のような一連の流量検知(1)〜(4)により検出される。
【0047】
(1)口火流量範囲の下限値Q11に満たない口火流量なしレベルの流量Q(<Q11)から口火流量範囲内のレベルの流量Q(Q11≦Q≦Q12)を検知。
(2)前記(1)の後、想定される口火器具の使用流量範囲内のレベルの流量Q(Q13≦Q≦Q14)を検知。
(3)前記(2)の後、口火流量範囲内のレベルの流量Q(Q11≦Q≦Q12)を再び検知。
(4)前記(3)の後、口火流量なしレベルの流量Q(<Q11)を再び検知。
【0048】
口火器具判定部116は、この一連の流量検知(1)〜(4)により図6の口火器具流量パターンが検出された場合に、これを1回の流量パターン検出とし、予め設定された複数回(例えば2回)の流量パターン検出が達成された時点で、「口火器具あり」、すなわち、対象ガス流路に口火器具が存在すると判定する。なお、一連の流量検知(1)〜(4)の間に、口火を持たない他の器具の燃焼等が発生した場合には、流量パターン検出としてカウントしない。
【0049】
以上のような口火器具判定部116による口火器具判定処理(S410)の結果、判定結果が「口火器具あり」であれば(S420のYES)、前述したとおり、保安部114の口火フラグ登録部117は、口火フラグを記憶部115に登録(口火フラグON)する(S430)。
【0050】
なお、口火フラグの登録期間は、所定期間(例えば、登録開始から1ヶ月)内とし、登録期間内に口火器具判定処理(S410)による「口火器具あり」の判定がなければ、登録を抹消する。これに対して、登録期間内に「口火器具あり」の判定があれば、その判定の時点を起点として登録期間を延長する。このように口火フラグの登録を管理することにより、口火器具が使用されなくなった場合に、ガス漏洩判定用の流量範囲を無駄に狭めることによる小流量漏洩判定の確度の低下を防止できる。
【0051】
さらに、本実施形態において、口火フラグの登録は、口火器具判定部116による口火器具判定処理(S410)の結果として口火フラグ登録部117により自動登録可能であるが、この自動登録機能に加えて、ガスメータ100の管理担当者等により手動登録可能としてもよい。
【0052】
[効果]
以上のような構成および作用を有する本実施形態のガスメータ100によれば、次のような効果が得られる。
【0053】
すなわち、ガス流量の流量区分に応じてその流量区分に特化した適切な判定方法を選択してガス漏洩の有無を判定することができるため、着火流量レベル以下の小流量のガス漏洩であっても早期に検知可能となり、その結果、ガス漏洩を長期に亘って放置することなく、ガス漏洩発生後の比較的早期における警報発生やガス遮断が実現可能である。
【0054】
また、口火フラグを登録して小流量漏洩判定に使用し、口火器具の有無に応じて判定対象とする流量範囲を切り換えることにより、口火器具使用時における誤判定を防止できるため、小流量漏洩判定の確度を向上できる。
【0055】
[他の実施形態]
なお、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で、他にも多種多様な変形例が可能である。例えば、小流量漏洩判定に使用する具体的な流量レベル値や所定時間等は、適宜変更可能である。また、図1に示した機能ブロック図の構成は、本発明を実施するための機能構成例を示すものであり、具体的なハードウェア構成およびソフトウェア構成は適宜選択可能である。同様に、図2や図5に示したフローチャートも本発明を実現するための処理の一例を示すものであり、具体的な処理手順は適宜変更可能である。
【0056】
また、前記実施形態においては、本発明のガス漏洩検知装置をガスメータに組み込んだ場合について説明したが、本発明のガス漏洩検知装置はガスメータとは別の装置として構成してもよい。さらに、本発明の実施態様は、ガス漏洩検知装置に限らず、ガス漏洩検知方法や、図1にコントローラとして示すような本発明のガス漏洩検知装置の制御器単体もまた、本発明の一つの実施態様である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明のガス漏洩検知装置を適用した一つの実施形態に係るガスメータの構成を示す機能ブロック図。
【図2】図1のガスメータのコントローラによるガス漏洩検知処理の一例を示すフローチャート。
【図3】図2に示すガス漏洩検知処理における小流量漏洩判定処理において使用する判定方法の一例を示す図。
【図4】図2に示すガス漏洩検知処理における小流量漏洩判定処理において使用する判定方法の別の一例を示す図。
【図5】図2に示すガス漏洩検知処理における小流量漏洩判定処理の一例を示すフローチャート。
【図6】図2に示すガス漏洩検知処理における口火器具判定処理において使用する判定方法の一例を示す図。
【図7】従来の安全継続時間オーバ時の判定に使用される安全継続時間設定値を示す図。
【符号の説明】
【0058】
100…ガスメータ
110…コントローラ
111…選択部
112…大流量漏洩判定部
113…小流量漏洩判定部
114…保安部
115…記憶部
116…口火器具判定部
117…口火フラグ登録部
120…計測部
121…ガス流量センサ
122…各種センサ
130…遮断弁
140…警報器
150…表示部
160…通信装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象ガス流路を流れるガス流量を計測する計測手段を備え、対象ガス流路におけるガス漏洩の有無を検知するガス漏洩検知装置において、
前記計測手段により得られるガス流量の計測データに基づき、予め設定された複数の流量区分に個別対応した互いに異なる固有の判定方法でガス漏洩の有無を判定する複数の漏洩判定手段と、
前記計測手段により得られるガス流量が前記複数の流量区分のいずれに属するかを判定し、判定された流量区分に応じて前記複数の漏洩判定手段の中から一つの漏洩判定手段を選択する選択手段と、
この選択手段で選択された前記一つの漏洩判定手段により得られた判定結果またはそれに基づいて生成される信号を出力する保安手段と、
前記計測手段により得られた計測データに基づいて装置内で得られたデータを記憶する記憶手段を備え、
前記複数の漏洩判定手段の前記判定方法は、対応付けられた流量区分の流量が大きいほど判定に要する時間が短くなるように設定されている
ことを特徴とするガス漏洩検知装置。
【請求項2】
前記複数の流量区分は、他の区分より流量が小さい小流量区分を含み、
前記複数の漏洩判定手段は、前記小流量区分に対応付けられた小流量漏洩判定手段を含み、この小流量漏洩判定手段の前記判定方法は、小流量すら存在しないと判定される小流量なしレベルから、予め設定された所定時間内に、口火以外の器具の着火流量レベルより小さい小流量の立上りを検知した場合に、小流量漏洩と判定するように設定され、
前記保安手段は、前記小流量漏洩判定手段により小流量漏洩と判定された場合に、警報信号または遮断信号を出力するように構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のガス漏洩検知装置。
【請求項3】
前記小流量漏洩判定手段の前記判定方法は、前記小流量なしレベルから、前記所定時間内に小流量ありと判定される小流量ありレベル以上でかつ前記着火流量レベルより小さい小流量の流量変化を検知した場合に、小流量漏洩と判定するように設定されている
ことを特徴とする請求項2に記載のガス漏洩検知装置。
【請求項4】
前記小流量漏洩判定手段の前記判定方法は、小流量ありと判定される小流量ありレベル以上の流量から前記小流量なしレベルに流量が減少した場合、または、脈動がある場合に判定を中止するように設定されている
ことを特徴とする請求項3に記載のガス漏洩検知装置
【請求項5】
前記小流量漏洩判定手段の前記判定方法は、対応付けられた前記小流量区分の範囲内の流量を、予め設定された所定継続時間以上に亘って継続的に検知した場合に、小流量漏洩と判定するように設定されている
ことを特徴とする請求項2に記載のガス漏洩検知装置。
【請求項6】
前記対象ガス流路からガス供給を受ける口火器具の存在を示す口火フラグを前記記憶手段に登録する口火フラグ登録手段を備え、
前記小流量漏洩判定手段の前記判定方法は、前記口火フラグ登録手段に口火フラグが登録されている場合に、判定する流量範囲を切り換えるように設定されている
ことを特徴とする請求項2に記載のガス漏洩検知装置。
【請求項7】
前記計測手段により得られるガス流量の流量変化を監視して、口火流量すら存在しないと判定される口火流量なしレベルから口火流量範囲内に移行し、次に、想定される口火器具の使用流量範囲内に移行した後、再び前記口火流量範囲内に移行し、この後、前記口火流量なしレベルに戻る、という口火器具流量パターンを検出し、この口火器具流量パターンを予め設定された所定回数検出した場合に、前記対象ガス流路に口火器具が存在すると判定する口火器具判定手段を備え、
前記口火フラグ登録手段は、前記口火器具判定手段により口火器具が存在すると判定された場合に前記口火フラグを前記記憶手段に登録するように構成されている
ことを特徴とする請求項6に記載のガス漏洩検知装置。
【請求項8】
対象ガス流路を流れるガス流量を計測する計測手段を用いて、対象ガス流路におけるガス漏洩の有無を検知するガス漏洩検知方法において、
前記計測手段により得られるガス流量の計測データに基づき、予め設定された複数の流量区分に個別対応した異なる判定方法でガス漏洩の有無を判定する複数の漏洩判定手段と、前記計測手段により得られた計測データに基づいて装置内で得られたデータを記憶する記憶手段を用いて、
前記計測手段により得られるガス流量が前記複数の流量区分のいずれに属するかを判定し、判定された流量区分に応じて前記複数の漏洩判定手段の中から一つの漏洩判定手段を選択する選択ステップと、
この選択ステップで選択された前記一つの漏洩判定手段により、この手段に固有の前記判定方法でガス漏洩の有無を判定する漏洩判定ステップと、
この漏洩判定ステップにより得られた判定結果またはそれに基づいて生成される信号を出力する保安ステップを行い、
前記複数の漏洩判定手段の前記判定方法は、対応付けられた流量区分の流量が大きいほど判定に要する時間が短くなるように設定されている
ことを特徴とするガス漏洩検知方法。
【請求項9】
対象ガス流路を流れるガス流量を計測する計測手段を備え、対象ガス流路におけるガス漏洩の有無を検知するガス漏洩検知装置に使用される制御器において、
前記計測手段により得られるガス流量の計測データに基づき、予め設定された複数の流量区分に個別対応した互いに異なる固有の判定方法でガス漏洩の有無を判定する複数の漏洩判定手段と、
前記計測手段により得られるガス流量が前記複数の流量区分のいずれに属するかを判定し、判定された流量区分に応じて前記複数の漏洩判定手段の中から一つの漏洩判定手段を選択する選択手段と、
この選択手段で選択された前記一つの漏洩判定手段により得られた判定結果またはそれに基づいて生成される信号を出力する保安手段と、
前記計測手段により得られた計測データに基づいて装置内で得られたデータを記憶する記憶手段を備え、
前記複数の漏洩判定手段の前記判定方法は、対応付けられた流量区分の流量が大きいほど判定に要する時間が短くなるように設定されている
ことを特徴とするガス漏洩検知装置用の制御器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−300113(P2009−300113A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−152096(P2008−152096)
【出願日】平成20年6月10日(2008.6.10)
【出願人】(000220262)東京瓦斯株式会社 (1,166)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【出願人】(000221834)東邦瓦斯株式会社 (440)
【出願人】(000168643)高圧ガス保安協会 (92)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】