説明

ガス濃度測定装置

【課題】マイクロコンピュータを使わずにアナログ回路のみでガス濃度を測定することにより、安価に精度良くガス濃度を測定することができるガス濃度測定装置を提供する。
【解決手段】第1S/H回路502が、赤外線が入射されているときにCO受光器12bから出力されるセンサ出力をホールドし、第2S/H回路503が、赤外線が入射されていないときにCO受光器12bから出力されるセンサ出力をホールドし、第1差動増幅器504が第1S/H回路502のホールド値及び第2S/H回路503のホールド値の差を出力してガス濃度に応じた値を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス濃度測定装置に係り、特に、ガスを充填するセルと、セルにパルス状の赤外線を入射する光源と、セルを通った赤外線のうちガスの吸収波長帯のみを透過する第1フィルタと、第1フィルタを透過した赤外線の強度を検出する第1赤外線センサとを有するガス濃度測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガスは赤外線波長領域において特有の吸収波長帯をもっているものが多いことから、ガスを充填するセルと、セルにパルス状の赤外線を入射する光源と、セルを通った赤外線のうちガスの吸収波長帯のみを透過する第1フィルタと、第1フィルタを透過した赤外線の強度を検出する第1赤外線センサとを設けて、ガスの濃度を測定するガス濃度測定装置が提案されている(たとえば特許文献1)。
【0003】
上述したガス濃度測定装置は、セルにパルス状の赤外線を入射して、赤外線が入射されているときに第1赤外線センサから出力されるセンサ出力、及び、赤外線が入射されていないときに第1赤外線センサから出力されるセンサ出力、の差からガスの濃度を検出することにより、第1赤外線センサのオフセットの影響やノイズなどを除去して精度よく測定することができる。
【0004】
従来では、マイクロコンピュータが、第1赤外線センサのセンサ出力を入力して演算処理することにより、ガスの濃度測定を行っていた。
【特許文献1】特開平10−339698号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来のガス濃度測定装置では、マイクロコンピュータを用いて第1赤外線センサのセンサ出力を演算処理してガスの濃度測定を行っているため、アナログ/デジタル変換器などの精度の良いチップが必要となり、コスト的に問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記のような問題点に着目し、マイクロコンピュータを使わずにアナログ回路のみでガス濃度を測定することにより、安価に精度良くガス濃度を測定することができるガス濃度測定装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた請求項1記載の発明は、ガスが充填されたセルと、前記セルにパルス状の赤外線を入射する光源と、前記セルを通った前記赤外線のうち前記ガスの吸収波長帯のみを透過する第1フィルタと、前記第1フィルタを透過した赤外線の強度を検出する第1赤外線センサとを設けて、前記ガスの濃度を測定するガス濃度測定装置において、前記赤外線が前記セルに入射されているときの前記第1赤外線センサの出力をホールドする第1サンプルホールド回路と、前記赤外線が前記セルに入射されていないときの前記第1赤外線センサの出力をホールドする第2サンプルホールド回路と、前記第1サンプルホールド回路のホールド値及び前記第2サンプルホールド回路のホールド値の差を出力する第1差動増幅器と、が設けられたことを特徴とするガス濃度測定装置に存する。
【0008】
請求項1記載の発明によれば、第1サンプルホールド回路が、赤外線が入射されているときに第1赤外線センサから出力されるセンサ出力をホールドし、第2サンプルホールド回路が、赤外線が入射されていないときに第1赤外線センサから出力されるセンサ出力をホールドし、第1差動増幅器が第1サンプルホールド回路のホールド値及び第2サンプルホールド回路のホールド値の差を出力してガス濃度に応じた値を出力する。従って、マイクロコンピュータを使わずにアナログ回路のみで、第1赤外線センサのオフセットやノイズを除いたガス濃度に応じた出力を第1差動増幅器から出力させることができる。
【0009】
請求項2記載の発明は、前記セルを通った前記赤外線のうち大気中では吸収されない非吸収波長帯のみを透過する第2フィルタと、前記第2フィルタを透過した赤外線の強度を検出する第2赤外線センサと、前記赤外線が入射されているときに前記第2赤外線センサから出力されるセンサ出力をホールドする第3サンプルホールド回路と、前記赤外線が入射されていないときに前記第2赤外線センサから出力されるセンサ出力をホールドする第4サンプルホールド回路と、前記第3サンプルホールド回路のホールド値及び前記第4サンプルホールド回路のホールド値の差を出力する第2差動増幅器と、前記第1差動増幅器からの第1差動出力を対数変換する第1ログアンプと、前記第2差動増幅器からの第2差動出力を対数変換する第2ログアンプと、前記第1ログアンプの対数出力及び前記第2ログアンプの対数出力の差を出力する第3差動増幅器と、が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のガス濃度測定装置に存する。
【0010】
請求項2記載の発明によれば、第3サンプルホールド回路が、赤外線が入射されているときに第2赤外線センサから出力されるセンサ出力をホールドし、第4サンプルホールド回路が、赤外線が入射されていないときに第2赤外線センサから出力されるセンサ出力をホールドし、第2差動増幅器が第3サンプルホールド回路のホールド値及び第4サンプルホールド回路のホールド値の差を出力し、第1ログアンプが第2差動増幅器からの第2差動出力を対数変換し、第2ログアンプが第2差動増幅器からの第2差動出力を対数変換し、第3差動増幅器が第1ログアンプの対数出力及び第2ログアンプの対数出力の差を出力するので、マイクロコンピュータを使わずにアナログ回路のみで、環境的な影響やノイズを除いたガス濃度に応じた出力を第3差動増幅器から出力させることができる。
【0011】
請求項3記載の発明は、前記セル外の雰囲気温度を検出する温度センサと、前記温度センサの出力をデジタル値に変換するアナログ/デジタル変換器と、前記アナログ/デジタル変換器の出力に応じた補正係数のデジタル値を出力するメモリと、前記メモリから出力される前記補正係数をアナログ値に変換するデジタル/アナログ変換器と、前記第3差動増幅器からの第3差動出力及び前記デジタル/アナログ変換器から出力される前記補正係数の差を出力する第4差動増幅器と、が設けられていることを特徴とする請求項2に記載のガス濃度測定装置に存する。
【0012】
請求項3記載の発明によれば、アナログ/デジタル変換器が温度センサの出力をデジタル値に変換し、メモリがアナログ/デジタル変換器の出力に応じた補正係数のデジタル値を出力し、デジタル/アナログ変換器がメモリから出力される補正係数をアナログ値に変換し、第4差動増幅器が第3差動増幅器からの第3差動出力及びデジタル/アナログ変換器から出力される補正係数の差を出力するので、マイクロコンピュータを使わずにアナログ回路のみで、温度の影響を除いたガス濃度に応じた出力を第4差動増幅器から出力させることができる。
【0013】
請求項4記載の発明は、前記第4差動増幅器からの第4差動出力及び警報設定値を比較するコンパレータと、前記コンパレータにより前記第4差動出力が前記警報設定値を超えたとの比較結果が得られたときに警報を発生する警報発生手段と、が設けられていることを特徴とする請求項3に記載のガス濃度測定装置に存する。
【0014】
請求項4記載の発明によれば、コンパレータが第4差動増幅器からの第4差動出力及び警報設定値を比較し、警報発生手段がコンパレータにより第4差動出力が警報設定値を超えたとの比較結果が得られたときに警報を発生するので、マイクロコンピュータを使わずにアナログ回路のみでガス警報を発生することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように請求項1記載の発明によれば、マイクロコンピュータを使わずにアナログ回路のみで、第1赤外線センサのオフセットやノイズを除いたガス濃度に応じた出力を第1差動増幅器から出力させることができるので、安価に精度良くガス濃度を測定することができる。
【0016】
請求項2記載の発明によれば、マイクロコンピュータを使わずにアナログ回路のみで、環境的な影響やノイズを除いたガス濃度に応じた出力を第3差動増幅器から出力させることができるので、より一層、安価に精度良くガス濃度を測定することができる。
【0017】
請求項3記載の発明によれば、マイクロコンピュータを使わずにアナログ回路のみで、温度の影響を除いたガス濃度に応じた出力を第4差動増幅器から出力させることができるので、より一層、安価に精度良くガス濃度を測定することができる。
【0018】
請求項4記載の発明によれば、マイクロコンピュータを使わずにアナログ回路のみでガス警報を発生することができるので、より一層、安価に精度良くガス濃度を測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の一実施の形態に係るガス濃度測定装置を、図1乃至7を参照して説明する。
【0020】
ガス濃度測定装置1は、図2に示すように、濃度の測定対象となるガスを含んだ雰囲気が充填される気体サンプル室2と、制御回路部3と、濃度算出回路5と、を備えている。
【0021】
気体サンプル室2は、図1に示すように、本体部としてのセル6と、光源7と、受光ユニット8とを備えている。セル6は、筒状に形成されている。図示例では、セル6は、四角筒状に形成されている。セル6には、セル6内に雰囲気を導くガス吸入口9aと、セル6内の雰囲気を外部に導くガス出口9bとが設けられている。即ち、気体サンプル室2は、ガス吸入口9a、ガス出口9bを備えている。ガス吸入口9a、ガス出口9bは、セル6の外壁6aを貫通していて、セル6内の気体を雰囲気と等しくするものである。
【0022】
光源7は、セル6内でかつ当該セル6の一端部に設けられている。光源7は、電圧が印加されることで、光としての赤外線をセル6の他端部に向かって放射する。光源7として、例えば黒体炉、電球等が用いられる。
【0023】
受光ユニット8は、図3及び図4に示すように、ユニット本体11と、複数の受光器12a、12bと、集光部材13と、を備えている。ユニット本体11即ち受光ユニット8は、セル6内でかつ当該セル6の他端部に設けられている。ユニット本体11は、箱状に形成されている。
【0024】
図示例では、受光ユニット8には、基準受光器12a、二酸化炭素(CO)受光器12bの2つが設けられている。受光器12a、12bは、それぞれ、赤外線センサ14と、フィルタ15とを備えている。赤外線センサ14は、ユニット本体11に取り付けられている。受光器12a、12bの赤外線センサ14は、同一平面上に配置されている。赤外線センサ14は、光源7が発しかつフィルタ15を透過した赤外線を受光し、この赤外線の熱を電気エネルギーに変換する。赤外線センサ14は、赤外線の熱を電気エネルギーに変換して、センサ出力として濃度算出回路に出力する。赤外線センサ14として、例えば、焦電型、サーモパイル型のものが用いられる。
【0025】
フィルタ15は、ユニット本体11に取り付けられて、赤外線センサ14と光源7との間に配置されている。受光器12a、12bのフィルタ15は、同一平面上に配置されている。フィルタ15は、それぞれ、光源7からの赤外線のうち予め定められた波長の赤外線のみを透過して、当該透過した波長の赤外線を赤外線センサ14まで導く。受光器12a、12bのフィルタ15は、互いに透過する赤外線の波長が異なる。
【0026】
受光器12bのフィルタ15は、その透過する赤外線の波長は、ガス濃度測定装置1のガスに応じて定められる。つまり、受光器12bのフィルタ15を透過する赤外線の波長は、測定対象ガスに対する透過率が小さくなる吸収波長帯にされる。詳しくは、CO受光器12bは、図7にその透過率が示されたガスとしてのCOの濃度を測定するために用いられ、そのフィルタ15がCOの吸収波長帯である4.3μmの赤外線のみを透過する。
【0027】
また、図示例では、基準受光器12aは、基準として用いられ、そのフィルタ15が大気中で全く吸収されない非吸収波長帯(4.0μm又は1.5μm)の赤外線のみを透過する。以上のことから明らかなように、基準受光器12aのフィルタ15が請求項中の第2フィルタに相当し、赤外線センサ14が第2赤外線センサに相当する。また、CO受光器12bのフィルタ15が第1フィルタに相当し、赤外線センサ14が第1赤外線センサに相当する。
【0028】
なお、図7は、COに対する赤外線の透過率を示しており、図7中の横軸は赤外線の波長(μm)を示し、図7中の縦軸は赤外線の透過率(%)を示している。図7によれば、波長が4.3μmの赤外線の二酸化炭素中の透過率が、略零であることが示されており、波長が4.3μmの赤外線は、二酸化炭素中を殆ど透過しない(殆ど吸収されてしまう)ことが示されている。
【0029】
集光部材13は、例えば300度などの所定の角度の範囲の赤外線を集光して、フィルタ15つまり赤外線センサ14に集中させる。すると、光源7から直接入射する赤外線以外にも、セル6の外壁6aの内面で反射する赤外線も赤外線センサ14に集めることができるので、赤外線の受光効率を良くすることができる。なお、集光部材13として、フレーネルレンズ等を用いることができる。
【0030】
制御回路部3は、図2に示すように、発振器16、クロック分周回路17、定電圧回路18、カウンタ19などを備えており、所定の周波数で光源7を点滅させる。このように光源7を点滅させることにより、セル6にはパルス状の赤外線が入射される。上記発振器16は、パルス信号を出力する。クロック分周回路17は、発振器16からのパルス信号を分周して所望の周波数のパルス信号を出力する。定電圧回路18は、光源7に所望の定電圧を出力する。カウンタ19は、図6に示すように、発振器16からのパルス信号をカウントして光源7に対する電源供給開始からの第1所定時間Ti1後にホールドタイミング信号S1を出力し、第2所定時間Ti2後にホールドタイミング信号S2を出力する。
【0031】
上記第1所定時間Ti1は、光源7に電源が供給されてパルス状の赤外線がセル6に入射されているときにホールドタイミング信号S1がHレベルとなるように設定されている。第1所定時間Ti1は、赤外線の入射に応じて赤外線センサ14のセンサ出力が立ち上がりピーク近くになったときにホールドタイミング信号S1がHレベルとなるように設定されている。
【0032】
また、上記第2所定時間Ti2は、光源7への電源が遮断されてパルス状の赤外線がセル6に入射されていないときにホールドタイミング信号S2がHレベルとなるように設定されている。第2所定時間Ti2は、赤外線の遮断に応じて赤外線センサ14のセンサ出力が下がり最も低くなったときにホールドタイミング信号S2がHレベルとなるように設定されている。
【0033】
次に、濃度算出回路5の構成について以下説明する。濃度算出回路5は、第1増幅器501と、第1サンプルホールド(以下S/H)回路502と、第2S/H回路503と、第1差動増幅器504とを備えている。第1増幅器501は、CO受光器12b内の赤外線センサ14からのセンサ出力を増幅する。第1S/H回路502は、タイミング信号S1がHレベルになったとき、即ち赤外線がセル6に入射されているときにCO受光器12bから出力されるセンサ出力をホールドする回路である。第2S/H回路503は、タイミング信号S2がHレベルになったとき、即ち赤外線がセル6に入射されていないときにCO受光器12bから出力されるセンサ出力をホールドする回路である。第1差動増幅器504は、第1S/H回路502のホールド値と第2S/H回路503のホールド値の差を出力する回路である。
【0034】
また、濃度算出回路5は、第2増幅器505と、第3S/H回路506と、第4S/H回路507と、第2差動増幅器508と、第1ログアンプ509と、第2ログアンプ510と、第3差動増幅器511とを備えている。第2増幅器505は、基準受光器12aからのセンサ出力を増幅する。第3S/H回路506は、タイミング信号S1がHレベルになったとき、即ち赤外線がセル6に入射されているときに基準受光器12aから出力されるセンサ出力をホールドする回路である。第4S/H回路507は、タイミング信号S2がHレベルになったとき、即ち赤外線がセル6に入射されていないときに基準受光器12aから出力されるセンサ出力をホールドする回路である。
【0035】
第2差動増幅器508は、第3S/H回路506のホールド値と第4S/H回路507のホールド値の差を出力する回路である。第1ログアンプ509は、第1差動増幅器504からの第1差動出力V1を対数出力LogV1に対数変換する。第2ログアンプ510は、第2差動増幅器508からの第2差動出力V2を対数出力LogV2に対数変換する。第3差動増幅器511は、第1ログアンプ509の対数出力LogV1と第2ログアンプ510の対数出力LogV2との差を出力する。
【0036】
また、濃度算出回路5は、温度センサ512と、第3増幅器513と、アナログ/デジタル変換器(ADC)514と、メモリとしてのROM515と、デジタル/アナログ変換器(DAC)516と、第5S/H回路517、第6S/H回路518、第4差動増幅器519と、コンパレータ520とを備えている。
【0037】
温度センサ512は、セル6外の雰囲気温度を検出するセンサである。第3増幅器513は、温度センサ512の出力を増幅してADC514に供給する。ADC514は、温度センサ512の出力をデジタル値に変換する。ROM515は、ADC514から出力される温度センサ512により検出された温度のデジタル値に応じた補正係数のデジタル値を出力するメモリである。DAC516は、ROM515から出力される補正係数をアナログ値に変換する。第5S/H回路517は、ホールドタイミング信号S2がHレベルになったときにDAC516から出力される補正係数をホールドする回路である。
【0038】
第6S/H回路518は、ホールドタイミング信号S2がHレベルになったときに第3差動増幅器511の出力をホールドする回路である。第4差動増幅器519は、第6S/H回路518のホールド値と第5S/H回路517のホールド値との差を出力して、CO濃度に応じた値として出力端子T1から出力させる。コンパレータ520は、第4差動増幅器519からの第4差動出力及び警報設定値を比較して、第4差動出力が警報設定値を超えたときHレベルの出力を警報端子T2に出力する。
【0039】
上述した構成のガス濃度測定装置の動作について以下説明する。まず、発振器16が発振してパルス信号を出力すると、クロック分周回路17がパルス信号を分周して所望の周波数のパルス信号を定電圧回路18に出力する。定電圧回路18は、クロック分周回路17からのパルス信号の入力に応じて光源7に定電圧を供給し、パルス信号の遮断に応じて光源7への定電圧の供給を遮断する。これにより、光源7には、図6(A)に示すようにパルス状の定電圧を供給され、光源7が点滅する。
【0040】
光源7に定電圧が供給されると、光源7からの赤外線がセル6に入射され、セル6を通過した後、受光器12a、12bに入射される。この赤外線の入射に応じて基準受光器12aは、大気中で全く吸収されない非吸収波長帯の赤外線の強度をセンサ出力として出力する。CO受光器12bは各々、COの吸収波長帯の赤外線の強度をセンサ出力として出力する。そして、赤外線の入射に応じて受光器12a、12bのセンサ出力は各々、図6(C)に示すように、立ち上がり、赤外線の遮断に応じて立ち下がる。
【0041】
上記セル6を通過した赤外線のうちCOの吸収波長帯である4.3μmの波長は、セル6内のCOによってその濃度に応じた分、吸収される。よって、CO受光器12bのセンサ出力の立ち上がりピークは、CO濃度に応じた値となる。また、基準受光器12aのセンサ出力の立ち上がりピークは、雰囲気に影響されない値となる。
【0042】
上述したように赤外線の入射に応じて受光器12a、12bのセンサ出力が立ち上がりピーク近くになると、カウンタ19からHレベルのホールドタイミング信号S1が出力される。これにより第1S/H回路502が、CO受光器12bのセンサ出力のピーク近くをホールドし、第3S/H回路506が、基準受光器12aのセンサ出力の立ち上がりピーク近くをホールドする。
【0043】
その後、赤外線が遮断され受光器12a、12bのセンサ出力が下がり最も低くなると、カウンタ19からHレベルのホールドタイミング信号S2が出力される。これにより、第2S/H回路503が、CO受光器12bのセンサ出力の最も低い値である0出力をホールドし、第4S/H回路507が、基準受光器12aのセンサ出力の最も低い値である0出力をホールドする。
【0044】
そして、第1差動増幅器504からは、CO受光器12bのセンサ出力のピーク近くと0出力との差分が出力され、第2差動増幅器508からは、基準受光器12aのセンサ出力のピーク近くと0出力との差分が出力される。このように差分を出力することにより、第1差動増幅器504からの第1差動出力V1は、CO受光器12bのセンサ出力のオフセットやノイズの影響を除去した出力となる。また、第2差動増幅器508からの第2差動出力は、基準受光器12aのセンサ出力のオフセットやノイズの影響を除去した第2差動出力V2となる。
【0045】
上記第1差動出力V1は第1ログアンプ509により対数出力LogV1に変換された後に、第3差動増幅器511に出力される。また、上記第2差動出力V2は第2ログアンプ510により対数出力LogV2に変換された後に、第3差動増幅器511に出力される。
【0046】
第3差動増幅器511は、第1ログアンプ509の対数出力LogV1と第2ログアンプ510の対数出力LogV2との差を出力する。このように対数出力LogV1、LogV2の差を求めることにより、下記の式(1)に示すように第1差動出力V1を第2差動出力V2で除した値を求めることができ、環境的な影響及びノイズを除去した出力を第3差動増幅器511から出力させることができる。
LogV1−LogV2=Log(V1/V2) …(1)
【0047】
上記第3差動増幅器511の出力は、第6S/H回路518によりホールドタイミング信号S2がHレベルとなるタイミングでホールドされる。また、ホールドタイミング信号S2がHレベルとなるタイミングで、第5S/H回路517によって温度センサ512によって検出した雰囲気温度に応じた補正係数のアナログ値がホールドされている。
【0048】
そして、第4差動増幅器519は、第6S/H回路518によってホールドされたCO濃度に応じた第3差動増幅器511の出力と第5S/H回路517によってホールドされた補正係数との差を出力して、CO濃度に応じた値として出力端子T1から出力させる。受光器12a、12bのセンサ出力は、セル6内の雰囲気が赤外線により温められ変動することがある。そこで、上述したようにCO濃度に応じた第3差動増幅器511の出力と補正係数との差をとることにより、上記温度の影響による変動分を除去した出力を第4差動増幅器519から出力させることができる。
【0049】
また、コンパレータ520が、第4差動増幅器519からの第4差動出力及び警報設定値を比較して、第4差動出力が警報設定値を超えたときHレベルの出力を警報端子T2に出力する。警報端子T2からHレベルが出力されると、図示しない警報発生手段が警報を発生する。
【0050】
上述したガス濃度測定装置によれば、第1S/H回路502がパルス状の赤外線がセル6に入射されているときのCO受光器12bのセンサ出力をホールドし、第2S/H回路503がパルス状の赤外線がセル6に入射されていないときのCO受光器12bのセンサ出力をホールドし、第1差動増幅器504が第1S/H回路502のホールド値及び第2S/H回路503のホールド値の差を出力してガス濃度に応じた値を出力するので、マイクロコンピュータを使わずにアナログ回路のみで、CO受光器12bのセンサ出力のオフセットやノイズを除いたガス濃度に応じた出力を第1差動増幅器504から出力させることができ、安価に精度良くガス濃度を測定することができる。
【0051】
また、上述したガス濃度測定装置によれば、第3S/H回路506がパルス状の赤外線がセル6に入射されているときの基準受光器12aのセンサ出力をホールドし、第4S/H回路507がパルス状の赤外線がセル6に入射されていないときの基準受光器12aセンサ出力をホールドし、第2差動増幅器508が第3S/H回路506のホールド値及び第4S/H回路507のホールド値の差を出力し、第1ログアンプ509が第1差動増幅器504からの第1差動出力を対数変換し、第2ログアンプ510が第2差動増幅器508からの第2差動出力を対数変換し、第3差動増幅器511が第1ログアンプ509の対数出力及び第2ログアンプ510の対数出力の差を出力するので、マイクロコンピュータを使わずにアナログ回路のみで、環境的な影響やノイズを除いたガス濃度に応じた出力を第3差動増幅器511から出力させることができ、より一層安価に精度良くガス濃度を測定することができる。
【0052】
また、上述したガス濃度測定装置によれば、ADC514が温度センサ512の出力をデジタル値に変換し、ROM515がADC514の出力に応じた補正係数のデジタル値を出力し、DAC516がROM515から出力される補正係数をアナログ値に変換し、第4差動増幅器519が第3差動増幅器511からの第3差動出力及びDAC516から出力される補正係数の差を出力するので、マイクロコンピュータを使わずにアナログ回路のみで、温度の影響を除いたガス濃度に応じた出力を第4差動増幅器519から出力させることができ、より一層安価に精度良くガス濃度を測定することができる。
【0053】
また、上述したガス濃度測定装置によれば、コンパレータ520が第4差動増幅器519からの第4差動出力及び警報設定値を比較し、警報発生手段がコンパレータ520により第4差動出力が警報設定値を超えたとの比較結果が得られたときに警報を発生するので、マイクロコンピュータを使わずにアナログ回路のみでガス警報を発生することができ、より一層安価に精度良くガス濃度を測定することができる。
【0054】
なお、上述した実施形態によれば、第4差動増幅器519の出力をCO濃度に応じた値として出力端子T1から出力させていたが、本発明はこれに限ったものではない。例えば、温度センサ512が設けられていなければ、第3差動増幅器511の出力をCO濃度に応じた値として出力端子T1から出力させてもよいし、温度センサ512も基準受光器12aも設けられていなければ、第1差動増幅器504の出力をCO濃度に応じた値として出力端子T1から出力させてもよい。
【0055】
また、上述した実施形態によれば、CO濃度を測定していたが、本発明はこれに限ったものではない。例えば、HOの吸収波長帯である1.9μmの赤外線のみを透過するHOフィルタと、このHOフィルタを透過した赤外線を受光する赤外線センサとから構成されるHO受光器を設けて、HO濃度を測定できるようにしてもよい。また、COの吸収波長帯である4.64μmの赤外線のみを透過するCOフィルタと、このCOフィルタを透過した赤外線を受光する赤外線センサとから構成されるCO受光器を設けて、CO濃度を測定できるようにしてもよい。同様に、NO、SO、HS、O、CH、NOなどのガス濃度を測定できるようにしてもよい。
【0056】
また、上述した実施形態によれば、COの一種類のみのガス濃度を測定していたが、本発明はこれに限ったものではない。例えば、HO、CO、NO、SO、HS、O、CH、NOなどの他のガスの吸収波長帯のみを透過するフィルタを設けた受光器を受光ユニット8内にさらに設けると共に、上記他のガスに対応する受光器のセンサ出力からガス濃度に応じた出力を算出する上述した実施形態と同様の濃度算出回路を設けて、複数のガスのガス濃度を測定するようにしてもよい。
【0057】
また、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の一実施形態にかかるガス濃度測定装置の気体サンプル室の構成を模式的に示す斜視図である。
【図2】図1に示されたガス濃度測定装置の構成を示す説明図である。
【図3】図1に示された気体サンプル室の受光ユニットの正面を模式的に示す説明図である。
【図4】図3中のVI−VI線の断面を模式的に示す説明図である。
【図5】図2に示された濃度算出回路の構成を示す電気回路図である。
【図6】(A)〜(C)はそれぞれ、光源への供給電圧、ホールドタイミング信号S1、S2、センサ出力のタイムチャートである。
【図7】二酸化炭素に対する赤外線の透過率を示したグラフである。
【符号の説明】
【0059】
6 セル
7 光源
15 フィルタ(第1フィルタ、第2フィルタ)
14 赤外線センサ(第1赤外線センサ、第2赤外線センサ)
502 第1サンプルホールド回路
503 第2サンプルホールド回路
504 第1差動増幅器
506 第3サンプルホールド回路
507 第4サンプルホールド回路
508 第2差動増幅器
509 第1ログアンプ
510 第2ログアンプ
511 第3差動増幅器
512 温度センサ
514 アナログ/デジタル変換器
515 ROM(メモリ)
516 デジタル/アナログ変換器
519 第4差動増幅器
520 コンパレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスを充填するセルと、前記セルにパルス状の赤外線を入射する光源と、前記セルを通った前記赤外線のうち前記ガスの吸収波長帯のみを透過する第1フィルタと、前記第1フィルタを透過した赤外線の強度を検出する第1赤外線センサとを有するガス濃度測定装置において、
前記赤外線が前記セルに入射されているときに前記第1赤外線センサから出力されるセンサ出力をホールドする第1サンプルホールド回路と、
前記赤外線が前記セルに入射されていないときに前記第1赤外線センサから出力されるセンサ出力をホールドする第2サンプルホールド回路と、
前記第1サンプルホールド回路のホールド値及び前記第2サンプルホールド回路のホールド値の差を出力する第1差動増幅器と、
が設けられていることを特徴とするガス濃度測定装置。
【請求項2】
前記セルを通った前記赤外線のうち大気中では吸収されない非吸収波長帯のみを透過する第2フィルタと、
前記第2フィルタを透過した赤外線の強度を検出する第2赤外線センサと、
前記赤外線が入射されているときに前記第2赤外線センサから出力されるセンサ出力をホールドする第3サンプルホールド回路と、
前記赤外線が入射されていないときに前記第2赤外線センサから出力されるセンサ出力をホールドする第4サンプルホールド回路と、
前記第3サンプルホールド回路のホールド値及び前記第4サンプルホールド回路のホールド値の差を出力する第2差動増幅器と、
前記第1差動増幅器からの第1差動出力を対数変換する第1ログアンプと、
前記第2差動増幅器からの第2差動出力を対数変換する第2ログアンプと、
前記第1ログアンプの対数出力及び前記第2ログアンプの対数出力の差を出力する第3差動増幅器と、
が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のガス濃度測定装置。
【請求項3】
前記セル外の雰囲気温度を検出する温度センサと、
前記温度センサの出力をデジタル値に変換するアナログ/デジタル変換器と、
前記アナログ/デジタル変換器の出力に応じた補正係数のデジタル値を出力するメモリと、
前記メモリから出力される前記補正係数をアナログ値に変換するデジタル/アナログ変換器と、
前記第3差動増幅器からの第3差動出力及び前記デジタル/アナログ変換器から出力される前記補正係数の差を出力する第4差動増幅器と、
が設けられていることを特徴とする請求項2に記載のガス濃度測定装置。
【請求項4】
前記第4差動増幅器からの第4差動出力及び警報設定値を比較するコンパレータと、前記コンパレータにより前記第4差動出力が前記警報設定値を超えたとの比較結果が得られたときに警報を発生する警報発生手段と、が設けられていることを特徴とする請求項3に記載のガス濃度測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−292321(P2008−292321A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−138368(P2007−138368)
【出願日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】