説明

ガス濃度測定装置

【課題】水素濃度を測定するガス濃度測定装置において、水素濃度の測定精度の低下を抑制する。
【解決手段】燃料ガスに含まれる水素のガス濃度を測定するガス濃度測定装置であって、燃料ガスの温度を検知する温度検知部として機能する温度補償抵抗体44と、通電されて発熱する発熱部として機能する加温抵抗体43と、加温抵抗体43の温度が温度補償抵抗体44の温度よりも一定温度高くなるように、加温抵抗体43への通電量を制御する測定用制御回路51と、温度補償抵抗体44および加温抵抗体43それぞれを収容する収容室41aが内部に形成された収容部41と、水素流路104aを流れる燃料ガスを収容室41aへと導く細孔部41bと、を備え、細孔部41bは、その流路断面積が水素流路104aの流路断面積および収容室41aの流路断面積よりも小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素濃度を測定するガス濃度測定装置に関するもので、燃料電池のオフガスに含まれる水素の濃度の測定に用いて好適である。
【背景技術】
【0002】
従来、測定対象ガスに含まれる水素濃度(水素のガス濃度)を測定するガス濃度測定装置として、測定対象ガスの熱伝導率と水素濃度との相関関係を利用して、水素濃度を測定する熱伝導式のガスセンサが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この熱伝導式のガスセンサでは、測定対象ガスが流れるガス流路に、通電により発熱する発熱部、および流路内の温度を検知する温度検知部を配置し、発熱部の温度が温度検知部にて検知された温度よりも一定温度高くなるように供給電力を制御する。そして、発熱部に供給する電力の変化を水素濃度の変化として測定する構成が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−242114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の如く、熱伝導式のガスセンサを燃料電池のオフガスに含まれる水素濃度の測定に採用する場合、湿度の高い環境下(高湿度環境下)で使用することとなるので、測定対象ガスが流れるガス流路内に結露等によって水滴等が生じやすい。そして、ガス流路内に生じた水滴が発熱部に付着すると、発熱部の温度が低下し、発熱部へ供給する電力が変化するので、ガス濃度の測定精度が低下する虞がある。
【0006】
本発明は上記点に鑑みて、水素濃度を測定するガス濃度測定装置において、水素濃度の測定精度の低下を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、ガス流路(104a、10b)を流れる水素を含む測定対象ガスの熱伝導率と測定対象ガスに含まれる水素のガス濃度との相関関係を利用して、前記測定対象ガスに含まれる水素のガス濃度を測定するガス濃度測定装置であって、測定対象ガスの温度を検知する温度検知部(44)と、通電されて発熱する発熱部(43)と、発熱部(43)の温度が温度検知部(44)にて検知された温度よりも一定温度高くなるように、発熱部(43)への通電量を制御する通電量制御手段(51)と、温度検知部(44)および発熱部(43)それぞれを収容する収容室(41a)が内部に形成された収容部(41)と、ガス流路(104a、10b)を流れる測定対象ガスを収容室(41a)へと導く導入流路(41b)と、を備え、導入流路(41b)は、その流路断面積がガス流路(104a、10b)の流路断面積および収容室(41a)の流路断面積よりも小さいことを特徴とする。
【0008】
これによると、温度検知部(44)および発熱部(43)を、導入流路(41b)を介してガス流路(104a、10b)と連通する収容室(41a)内に配置すると共に、測定対象ガスを収容室(41a)へと導く導入流路(41b)の流路断面積を、ガス流路(104a、10b)の流路断面積および収容室(41a)の流路断面積よりも小さくしているので、ガス流路(104a、10b)に生じた水滴が導入流路(41b)を介して収容室(41a)内に流入し難くなる。このため、ガス流路(104a、10b)内に生じた水滴が発熱部(43)に付着することを抑制することができる。
【0009】
従って、ガス流路(104a、10b)内の水滴に起因する発熱部(43)の温度低下を抑制することができ、水素濃度の測定精度の低下を抑制することができる。
【0010】
ここで、「流路断面積」とは、測定対象ガスの全体の流れ方向に直交する方向の断面積を意味する。なお、「収容室(41a)内の流路断面積」は、導入流路(41b)を流れる測定対象ガスの全体の流れ方向に直交する方向の断面積を意味する。
【0011】
また、請求項2に記載の発明では、請求項1に記載のガス濃度測定装置において、導入流路(41b)の内壁面には、撥水処理が施されていることを特徴とする。
【0012】
これによると、導入流路(41b)の内壁面に撥水処理が施されているので、ガス流路(104a、10b)内に生じた水滴は、導入流路(41b)にてガス流路(104a、10b)側に弾かれる。この結果、ガス流路(104a、10b)内の水滴が収容室(41b)内に流入することを効果的に抑制することができる。
【0013】
ここで、導入流路(41b)に付着した水滴には、その表面積を小さくするように表面張力が作用するが、この際、水滴に作用する表面張力は、導入流路(41b)における断面積が大きい方向へと作用する。
【0014】
そこで、請求項3に記載の発明では、請求項1または2に記載のガス濃度測定装置において、導入流路(41b)は、ガス流路(104a、10b)側の流路断面積が収容室(41a)側の流路断面積よりも大きいことを特徴とする。
【0015】
これによると、導入流路(41b)に付着した水滴は、導入流路(41b)における流路断面積が大きいガス流路(104a、10b)側へと移動し易くなるので、水滴が収容室(41a)内へ流入することをより効果的に抑制することができる。
【0016】
具体的には、請求項4に記載の発明では、請求項1ないし3のいずれか1つに記載のガス濃度測定装置において、収容部(41)には、収容室(41a)内を断熱する断熱層(45)が設けられていることを特徴とする。
【0017】
これによると、収容部(41)の収容室(41a)内の測定対象ガスが有する熱が、収容部(41)の外部に拡散してしまうことを抑制することができる。さらに、収容部(41)の外部からの熱の影響によって、収容室(41a)内の測定対象ガスの温度変化を抑制することができる。従って、測定対象ガスに含まれる水素のガス濃度の測定精度の低下をより効果的に抑制することができる。
【0018】
具体的には、請求項5に記載の発明では、請求項1ないし4のいずれか1つに記載のガス濃度測定装置において、収容部(41)には、通電により発熱して収容室(41a)内を昇温させるヒータ(46、47)が設けられていることを特徴とする。
【0019】
これによると、収容部(41)の収容室(41a)内に結露が発生してしまうことを抑制することができ、測定対象ガスに含まれる水素のガス濃度の測定精度の向上を図ることができる。
【0020】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1実施形態に係る燃料電池システムの概略構成図である。
【図2】第1実施形態のセルの積層方向断面図である。
【図3】第1実施形態の水素極側セパレータの正面図である。
【図4】図3のA−A断面図である。
【図5】第1実施形態のガス濃度検知部の分解斜視図である。
【図6】第1実施形態の測定用制御回路の回路図である。
【図7】第1実施形態のヒータ用制御回路の回路図である。
【図8】水素濃度とセンサ出力電流との相関関係を説明する説明図である。
【図9】第1実施形態のガス濃度測定装置における効果確認試験の結果を説明する説明図である。
【図10】水素流路内に生成水が滞留していない場合におけるガス濃度測定装置の挙動を説明する説明図である。
【図11】水素流路内に生成水が滞留している場合におけるガス濃度測定装置の挙動を説明する説明図である。
【図12】第2実施形態のガス濃度測定装置における測定異常の制御処理を示すフローチャートである。
【図13】第3実施形態の水素極側セパレータの正面図である。
【図14】図13のB−B断面図である。
【図15】第4実施形態の細孔部の断面形状を示す部分断面図である。
【図16】第4実施形態の細孔部の断面形状の変形例を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0023】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について図1〜図9に基づいて説明する。図1は、本実施形態の燃料電池システムの概略構成図である。燃料電池システムは、電気自動車の一種である、いわゆる燃料電池自動車に適用される。
【0024】
図1に示すように、燃料電池システムは、燃料ガス(測定対象ガス)中の水素と酸化剤ガス(空気)中の酸素との電気化学反応を利用して電気エネルギを出力する燃料電池1を備えている。
【0025】
燃料電池1は、走行用電動モータ、二次電池、各種補機等の電気負荷2に電力を供給するもので、基本単位となる平板状の燃料電池セル10(以下、単にセル10と記載する。)が複数枚積層されて構成されている。これらの複数枚のセル10は、電気的に直列に接続されている。なお、本実施形態では、燃料電池1として固体高分子電解質型燃料電池を採用している。
【0026】
また、直列に接続された複数枚のセル10の両端側、すなわち燃料電池1全体としてのセル10の積層方向両端部には、燃料電池1から出力された電気エネルギを取り出すための一対の集電板11が配置されている。
【0027】
一対の集電板11には、燃料電池1全体として出力される電圧を検出する電圧センサ20等が接続されている。電圧センサ20の検出信号は、後述する制御装置3に入力される。
【0028】
また、一対の集電板11の一方には、水素供給口11a、水素排出口11b、空気供給口11c、および空気排出口11dが設けられる共に、燃料電池1を冷却する冷却水の流入口および流出口(いずれも図示略)が設けられている。なお、冷却水は、燃料電池1の内部を流れており、燃料電池1の発電効率が一定以上となるように、発電中の燃料電池1の温度を所定温度(例えば、80℃程度)に維持している。
【0029】
次に、セル10の詳細構成について図2、図3に基づいて説明する。図2は、本実施形態のセル10の積層方向断面図であり、図3は、本実施形態の水素極側セパレータ104の正面図である。
【0030】
図2に示すように、セル10は、膜電極接合体(MEA:Membrane Electrode assembly)101、膜電極接合体101の両面に配置されるガス拡散層102、103、およびガス拡散層102、103を両外側から挟み込む一対のセパレータ104、105を有して構成されている。
【0031】
膜電極接合体101は、固体高分子膜からなる電解質膜、電解質膜の水素極側の面に密着して配置されたアノード側触媒層、および電解質膜の空気極側の面に密着して配置されたカソード側触媒層によって形成されている。各触媒層は、カーボン担体に電気化学反応を促進する触媒(例えば、白金)を担持させたカーボン担持白金触媒等で形成されている。
【0032】
ガス拡散層(GDL:Gas Diffusion Layer)102、103は、アノード側触媒層の外側に配置されたアノード側拡散層102、およびカソード側触媒層の外側に配置されたカソード側拡散層103で構成されている。各ガス拡散層102、103は、導電体でかつ液体水分保持性能を有するカーボンクロス等で形成されている。
【0033】
セパレータ104、105は、各ガス拡散層102、103を介して膜電極接合体101に電気的に接触した状態で、各セル10同士を区画すると共に、各セル10における空気流れ、水素流れを分離するものである。セパレータ104、105は、導電性に優れ、非磁性の金属(例えば、銅、チタン)にて、セル10の積層方向からみたときに略矩形状に形成されている。
【0034】
本実施形態では、セパレータ104、105として、アノード側拡散層102の外側に配置される水素極側セパレータ104、およびカソード側拡散層103の外側に配置される空気極側セパレータ105が設けられている。
【0035】
水素極側セパレータ104におけるアノード側拡散層102と対向する面には、水素が流れる蛇行状の水素流路104aが形成されている。同様に、空気極側セパレータ105におけるカソード側拡散層103と対向する面には、空気が流れる蛇行状の空気流路105aが形成されている。なお、図2の矢印で示すように、水素流路104aにおける水素の流れ方向と空気流路105aにおける空気の流れ方向は互いに対向している場合が多い。
【0036】
また、図3に示すように、各セル10のセパレータ104、105には、水素供給口11aを介して供給された水素を水素流路104aに流入させる水素入口穴10a、発電時に消費されなかった未反応の余剰水素および水素流路104aに侵出した生成水を水素流路104aから流出させる水素出口穴10bが形成されている。水素入口穴10aおよび水素出口穴10bは、各セル10の表裏を貫通するように設けられている。
【0037】
従って、各セル10が積層されると、水素入口穴10aは各セル10内の水素流路104aへ水素を分配する分配空間となる水素用の分配マニホールドを形成し、水素出口穴10bは各セル10から流出した余剰水素および生成水を集合させる集合空間となる水素用の集合マニホールドを形成する。
【0038】
さらに、各セル10のセパレータ104、105には、空気供給口11cから供給された空気を空気流路105aに流入させる空気入口穴10c、発電時に消費されなかった酸素および窒素等を含む余剰空気および生成水を空気流路105aから流出させる空気出口穴10dが形成されている。空気入口穴10cおよび空気出口穴10dについても、各セル10の表裏を貫通するように設けられている。従って、各セル10が積層されると、水素入口穴10aおよび水素出口穴10bと同様に、それぞれ空気用の分配マニホールド、空気用の集合マニホールドを形成する。
【0039】
ここで、図3に示すように、水素極側セパレータ104の側面には、水素流路104aにおける水素出口穴10b付近に、後述するガス濃度測定装置4のガス濃度検知部40を収容するための溝部104bが形成されている。この溝部104bは、水素流路104a側に延びる連通路104cを介して水素流路104aと連通しており、溝部104bの内部に水素流路104aを流れる水素が流入可能となっている。
【0040】
次に、本実施形態のガス濃度測定装置4について説明する。図4は、図3のA−A断面図であり、ガス濃度測定装置4の概略構成を示す模式図であり、図5は、ガス濃度検知部40の分解斜視図である。なお、図4には、ガス濃度測定装置4および制御装置3の電気的接続関係についても模式的に図示している。
【0041】
ガス濃度測定装置4は、水素流路104a内の燃料ガス(水素)の熱伝導率と水素濃度との相関関係を利用して、水素濃度を測定する熱伝導式のガスセンサである。本実施形態のガス濃度測定装置4は、図4に示すように、水素極側セパレータ104の溝部104bに収容されたガス濃度検知部40、およびガス濃度検知部40からの出力信号の演算等を行う信号処理回路50を備えている。
【0042】
まず、ガス濃度検知部40について説明する。ガス濃度検知部40は、水素極側セパレータ104の水素流路104aを流れる水素のガス濃度を検知する検知部である。ガス濃度検知部40は、収容部41、加温抵抗体43、温度補償抵抗体44、断熱層45、上部ヒータ46、および下部ヒータ47から構成されている。
【0043】
本実施形態のガス濃度検知部40は、図5に示すように、フィルム基板411〜417を複数積層した積層基板として構成されている。これらフィルム基板411〜417は、絶縁フィルム(例えば、ポリイミドフィルム)で構成することができる。
【0044】
具体的には、ガス濃度検知部40は、上部ヒータフィルム412、測定フィルム414、下部ヒータフィルム416、および、四角形状の貫通穴が形成された4枚のスペーサフィルム411、413、415、417が積層されて構成されている。なお、水素流路104aに近い側から、第1スペーサフィルム411、上部ヒータフィルム412、第2スペーサフィルム413、測定フィルム414、第3スペーサフィルム415、下部ヒータフィルム416、第4スペーサフィルム417の順に積層されている。なお、各スペーサフィルム411、413、415、417は、積層方向からみたときに貫通穴同士が重合するように積層される。
【0045】
これらフィルム基板411〜417は、例えば、絶縁性接着剤を介在させて熱圧着等によって一体化されている。なお、本実施形態では、上部ヒータフィルム412、測定フィルム414、および下部ヒータフィルム416として、例えば、膜厚が25μm〜30μm程度のポリイミドフィルムを用いている。また、各スペーサフィルム411、413、415、417としては、例えば、膜厚が50μm〜100μm程度のポリイミドフィルムを用いている。
【0046】
図4に戻り、ガス濃度検知部40における収容部41は、ガス濃度検知部40の外殻を構成するものであって、各フィルム基板411〜417を積層した積層体の外縁部にて構成されている。収容部41の外形状は、水素流路104aにおける溝部104bに対応した形状に形成されている。
【0047】
収容部41の内部には、加温抵抗体43および温度補償抵抗体44を収容する収容室41aが形成されている。なお、収容室41aは、上部ヒータフィルム412と測定フィルム414の間に介在する第2スペーサフィルム413に形成された貫通穴にて構成される。
【0048】
収容室41a内に配置される加温抵抗体43および温度補償抵抗体44それぞれは、温度変化によって抵抗値が変化する熱線(例えば、白金、ニッケル)により形成されている。本実施形態の加温抵抗体43および温度補償抵抗体44は、同じ温度条件下で同等の抵抗値を有する熱線にて形成されている。
【0049】
加温抵抗体43は、通電により自己発熱する発熱部として機能する抵抗体であって、収容室41a内の温度よりも一定温度高くなるように通電量が制御される。なお、加温抵抗体43には、銅箔等からなるリード線43aを介して、後述する信号処理回路50の測定用制御回路51に接続されている。
【0050】
温度補償用抵抗体44は、その抵抗値の変化を収容室41a内の温度変化として検知する温度検知部として機能する抵抗体であって、加温抵抗体43への通電量よりも少ない電流が印加される。なお、温度補償抵抗体44は、銅箔等からなるリード線44aを介して特定の電流が供給され、後述する信号処理回路50の測定用制御回路51に接続されている。
【0051】
加温抵抗体43および温度補償抵抗体44それぞれは、測定フィルム414における水素流路104a側(上部ヒータフィルム412側)の表面に設けられている。そして、測定フィルム414における加温抵抗体43と温度補償抵抗体44との間には、加温抵抗体43の熱が温度補償抵抗体44に影響しないようにスリット414aが形成されている。
【0052】
本実施形態のスリット414aは、水素流路104a側から、後述する細孔部41bを介して収容室41a内を見たときに、細孔部41bと重合する位置に形成されている。そして、本実施形態の加温抵抗体43および温度補償抵抗体44は、水素流路104a側から細孔部41bを介して収容室41a内を見たときに、細孔部41bと非重合となる位置(重なり合わない位置)に配置されている。
【0053】
断熱層45は、加温抵抗体43を断熱する空隙であって、第3スペーサフィルム415および第4スペーサフィルム417に形成された貫通孔にて構成されている。このように、収容部41に断熱層45を設けることで、収容室41a内の熱が、収容部41の外部に拡散してしまうことを抑制することができ、加温抵抗体43が発する熱の大部分を、気体を通して拡散させることで、気体の熱伝導率変化を敏感に検出することができる。
【0054】
また、上部ヒータ46および下部ヒータ47は、所定の抵抗値を有する金属箔(例えば、銅箔)で構成されており、リード線46a、47aを介して、電力が供給されることで発熱して収容室41a内を昇温させる。上部ヒータ46は、上部ヒータフィルム412に設けられ、下部ヒータ47は、下部ヒータフィルム416に設けられている。
【0055】
ここで、上部ヒータフィルム412には、水素流路104aを流れる水素を収容室41aへと導くためガス導入流路として、細孔部41bが形成されている。この細孔部41bは、水素流路104aの水素流れ方向に対して傾斜した方向(本実施形態では直交方向)に延びる円筒状の孔で形成されている。
【0056】
また、細孔部41bは、その流路断面積(細孔部41bの水素流れ方向に直交する方向の断面積)が、水素流路104aの流路断面積(水素流路104aの水素流れ方向に直交する方向の断面積)、および収容室41aの流路断面積(細孔部41bの水素流れ方向に直行する方向の断面積)よりも小さくなるように形成されている。例えば、水素流路104aの流路断面積を2mm×2mmとしたときに、細孔部41bは、直径1mm以下の細孔部とすればよい。
【0057】
さらに、本実施形態では、細孔部41bの内壁面、および上部ヒータフィルム412における水素流路104a側に露出する面の一部に、撥水剤42にて撥水処理が施されている。撥水処理としては、例えば、パラフィンワックス系の撥水剤(例えば、青木油脂工業社製の商品名PA−1)を上述した箇所に被覆すればよい。なお、撥水処理では、撥水作用のある材料であればパラフィンワックス系の撥水剤以外を用いてもよい。
【0058】
次に、信号処理回路50について図4、図6、図7に基づいて説明する。図6は、測定用制御回路51の回路図であり、図7は、ヒータ用制御回路52の回路図である。なお、図6では、測定フィルム414に係る電気的構成の等価回路についても図示し、図7では、各ヒータフィルム412、416に係る電気的構成の等価回路についても図示している。
【0059】
信号処理回路50は、図4に示すように、加温抵抗体43および温度補償抵抗体44への通電量を制御する測定用制御回路51と、各ヒータ46、47への通電量を制御するヒータ用制御回路52とを備えて構成されている。なお、図6に示すように、測定用制御回路51は、コネクタ50aを介して加温抵抗体43のリード線43aおよび温度補償抵抗体44のリード線44aに接続され、ヒータ用制御回路52は、図7に示すように、コネクタ50bを介して各ヒータ46、47の各リード線46a、47aに接続されている。
【0060】
測定用制御回路51は、温度補償抵抗体44に一定の電流を印加する電流印加手段、加温抵抗体43の温度が温度補償抵抗体44にて検知された温度より一定温度高くなるように加温抵抗体43への通電量を制御する通電量制御手段、加温抵抗体43を流れ電流を検出する電流検出手段としての機能を備えている。
【0061】
これら機能を備える測定用制御回路51は、例えば、図6に示すように、加温抵抗体43に供給する電流よりも少ない定電流を温度補償抵抗体44に印加する定電流印加部511、加温抵抗体43の両端の電圧を増幅して出力する第1差動増幅回路512、温度補償抵抗体44および可変抵抗44aの両端の電圧を増幅して出力する第2差動増幅回路513、第1差動増幅回路512からの出力電圧と第2差動増幅回路513からの出力電圧の電圧差に基づいて、加温抵抗体43への通電量を制御するオペアンプ514、加温抵抗体43への通電量を検出する電流検出部515等によって構成することができる。
【0062】
測定用制御回路51における電流検出部515は、後述する制御装置3に接続されており、加温抵抗体43に流れる電流を制御装置3に出力する。なお、定電流印加部511は、電流検出部515で検出したセンサ出力電流に基づいて、加温抵抗体43に供給される電流よりも少ない電流(例えば、加温抵抗体43に供給する電流の20分の1)を温度補償抵抗体44に印加するように構成されている。また、第1、第2差動増幅回路512、513としては、例えば、微弱な出力信号を検出するのに適した周知のインスツルメンテーションアンプを採用することができる。
【0063】
ヒータ用制御回路52は、図7に示すように、各ヒータ46、47の電圧を検出する電圧検出部521、各ヒータ46、47に所定の電流を印加する定電流印加部522を備えて構成することができる。電圧検出部521は、後述する制御装置3に接続されており、各ヒータ46、47の電圧を制御装置3に出力する。
【0064】
次に、本実施形態の電気制御部について説明する。図1に示す制御装置(ECU)3は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成されている。そして、制御装置3は、そのROM内に記憶された制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、出力側に接続される各種制御機器の作動を制御するとともに、ガス濃度測定装置4にて測定された水素濃度に基づいて、燃料電池1の作動状態を検知する。
【0065】
出力側に接続される各種制御機器としては、燃料電池1へ供給される水素流量を調整する水素流量調整手段、燃料電池1へ供給される空気流量を調整する空気流量調整手段を構成する各種アクチュエータ(いずれも図示せず)、およびガス濃度測定装置4の作動状態を表示する表示パネル31等がある。
【0066】
もちろん、水素流量調整手段、空気流量調整手段および加湿量調整手段として、いずれも電気的に制御されるものを採用する必要はなく、純機械的機構によって構成される調整手段を採用してもよい。さらに、このように純機械的機構によって構成される調整手段については、制御装置3の出力側へ接続する必要もない。
【0067】
次に、上記構成における本実施形態の燃料電池1およびガス濃度測定装置4の作動について説明する。
【0068】
制御装置3が、水素流量調整用アクチュエータ、空気流量調整用アクチュエータおよび加湿量調整用アクチュエータの作動を制御して、燃料電池1に水素および空気が供給されると、各セル10では、以下に示すように、水素と酸素とを電気化学反応させて、電気エネルギを出力する。
【0069】
(負極側)H→2H+2e
(正極側)2H+1/2O+2e→H
そして、燃料電池1から出力された電気エネルギは、集電板11から各種電気負荷2へ供給される。
【0070】
この際、制御装置3では、各種電気負荷2に要求される電力を出力できるように、水素流量調整手段、空気流量調整手段、および加湿量調整手段を構成する各種アクチュエータの作動を制御する。
【0071】
また、燃料電池1が作動すると、ガス濃度測定装置4では、加温抵抗体43、温度補償抵抗体44、各ヒータ46、47に所定電流を供給して、収容室41a内の水素濃度を測定する。
【0072】
ここで、本実施形態のガス濃度測定装置4による水素濃度の測定方法について説明すると、収容室41a内に配置された加温抵抗体43に供給される電力と、加温抵抗体43が収容室41a内に放熱する熱量とは、次に示す数式F1の関係が成立する。
【0073】
V・I=K・A・(T−T) ・・・(F1)
なお、数式F1におけるVが加温抵抗体43の両端の電圧、Iが加温抵抗体43を流れる電流(センサ出力電流)、Kが収容室41a内の熱伝導率、Aが加温抵抗体43の放熱面積、Tが加温抵抗体43の温度、Tが収容室41a内の温度を示している。
【0074】
測定用制御回路51では、加温抵抗体43と収容室41a内の温度差(=T−T)を加温抵抗体43および温度補償抵抗体44との抵抗値の変化として検出し、加温抵抗体43と収容室41a内の温度差(=T−T)が一定に維持されるように電流Iを制御する。
【0075】
加温抵抗体43と収容室41a内の温度差(=T−T)が一定であれば、加温抵抗体43に供給される電力と収容室41a内の熱伝導率Kとは、次に示す数式F2の関係が成立する。
【0076】
V・I∝K ・・・(F2)
加温抵抗体43の両端の電圧Vは、加温抵抗体43を流れる電流Iとその抵抗値Rとを乗じた値(=I・R)となるので、加温抵抗体43を流れる電流Iと収容室41a内の熱伝導率Kとは、次に示す数式F3の関係が成立する。
【0077】
I∝K1/2 ・・・(F3)
このため、加温抵抗体43を流れる電流Iは、収容室41a内の熱伝導率Kの関数となるので、加温抵抗体43を流れる電流Iを検出することで、収容室41a内の熱伝導率Kの変化を検出することができる。そして、燃料ガス中の水素は、収容室41a内の熱伝導率に相関関係があるので、収容室41a内の熱伝導率Kの変化を収容室41a内の水素濃度の変化として測定することができる。なお、加温抵抗体43を流れる電流(センサ出力電流)Iは、図8に示すように、収容室41a内の水素濃度に比例し、水素濃度の上昇に伴って増加する。
【0078】
このように、本実施形態のガス濃度測定装置4では、加温抵抗体43を流れる電流Iを検出することで、収容室41a内の水素濃度(水素出口穴10b付近の水素濃度)を測定することができる。
【0079】
この際、ガス濃度検知部40の加温抵抗体43および温度補償抵抗体44を、細孔部41bを介して、水素流路104aと連通する収容室41a内に配置しているので、水素流路104a内に生じた水滴が加温抵抗体43および温度補償抵抗体44に付着することを抑制することができる。
【0080】
また、水素流路104aを流れる水素を収容室41aへと導く細孔部の流路断面積を、水素流路104aの流路断面積および収容室41aの流路断面積よりも小さくしているので、水素流路104aに生じた水滴が細孔部41bを介して収容室41a内に流入し難くなる。このため、水素流路104a内に生じた水滴が収容室41a内の加温抵抗体43および温度補償抵抗体44に付着することを抑制することができる。
【0081】
さらにまた、細孔部41bの内壁面、および上部ヒータフィルム412における水素流路104aに露出した部位に撥水処理を施しているので、水素流路104a内に生じた水滴が、細孔部41bにて水素流路104a側に弾かれる。これにより、水素流路104a内に生じた水滴が収容室41a内の加温抵抗体43および温度補償抵抗体44に付着することをより効果的に抑制することができる。なお、細孔部41bの内壁面への撥水処理によって、充分に水滴の流入を抑制することができる場合には、上部ヒータフィルム412における水素流路104aに露出した部位への撥水処理を行わなくともよい。
【0082】
しかも、本実施形態の加温抵抗体43および温度補償抵抗体44は、水素流路104a側から細孔部41bを介して収容室41a内を見たときに、細孔部41bと重合しない位置に配置している。このため、仮に収容室41aに水滴が流入した場合であっても、流入した水滴が加温抵抗体43および温度補償抵抗体44に付着し難くなる。
【0083】
従って、本実施形態のガス濃度測定装置4では、水素流路104aを流れる水素の流量変化や水素流路104a内に水滴が流入することによる加温抵抗体43の温度低下を抑制することができるので、水素濃度の測定精度の低下を充分に抑制することができる。
【0084】
また、本実施形態では、収容部41に断熱層45を設けているので、収容室41a内の熱が、収容部41の外部に拡散してしまうことを抑制することができる。これにより、加温抵抗体43の通電量が不必要に増加してしまうことを抑制することができる。さらに、収容部41の断熱層45によって、収容部41の外部からの熱の影響による収容室41a内の温度変化を抑制することができる。
【0085】
しかも、本実施形態では、収容部41に各ヒータ46、47を設けているので、収容室41a内の温度を上昇させることができるので、収容室41a内に結露が生じてしまうことを抑制することができる。さらに、仮に収容室41a内に水滴が流入したとしても、流入した水滴を速やかに蒸発させることができる。
【0086】
また、本実施形態では、ガス濃度検知部40をフィルム基板411〜417を複数積層した積層基板で構成しているため、ガス濃度検知部40の体格を小型化することができる。これにより、水素極側セパレータ104の水素流路104aに形成した溝部104bといった小さい空間にガス濃度検知部40を配置することができる。
【0087】
ここで、加温抵抗体43および温度補償抵抗体44を収容室41a内に配置したガス濃度測定装置4のセンサ出力電流(本例でのセンサ出力電流)と、加温抵抗体43および温度補償抵抗体44を水素流路104aに配置したガス濃度測定装置のセンサ出力電流(比較例でのセンサ出力電流)とを比較する試験(効果確認試験)を行った。
【0088】
この効果確認試験では、収容室41a内の温度を70℃に維持した条件で、水素濃度100%の燃料ガスを所定時間(約300秒)水素流路104aに供給した後、水素濃度100%の燃料ガスを加湿バブラによって露点85℃まで加湿して水素流路104aに供給し、その際のガス濃度検知部40の電流検出部515で検出したセンサ出力電流それぞれを比較した。なお、加温抵抗体43に水滴が付着すると、加温抵抗体43の抵抗値が低下して、加温抵抗体43に流れる電流が、規定電流値(測定用制御回路51におけるオペアンプ514の上限電圧時に出力可能な電流量)付近まで急激に増加するので、加温抵抗体43に流れる電流の変化を検出することで、加温抵抗体43への水滴の付着の有無を判断することが可能となる。
【0089】
図9は、ガス濃度測定装置4の効果確認試験の結果を説明する説明図である。ここで、図9における実線が本例でのセンサ出力電流を示し、破線が比較例でのセンサ出力電流を示している。なお、図9における横軸は、評価開始からの経過時間を示し、縦軸は電流測定部でのセンサ出力電流を示している。
【0090】
図9に示すように、水素濃度100%の燃料ガスを露点85℃の加湿バブラで加湿して水素流路104aに供給すると、本例でのセンサ出力電流(実線)は、若干低下(約2A)するのに対して、比較例でのセンサ出力電流(破線)は、加湿直後から規定電流値付近まで急激に増大(約6A)する結果となった。
【0091】
この結果を分析すると、比較例については、水素流路104aに加温抵抗体43を配置しており、水素流路104aに生じた水滴が加温抵抗体43等に付着しやすい構成であることから、加温抵抗体43に水滴が付着して加温抵抗体43の温度が低下したことによって、センサ出力電流が増大したものと判断できる。このため、比較例でのセンサ出力電流は、実際の水素濃度の変化に対応した結果となっておらず、比較例の構成では、高湿度の燃料ガスに含まれる水素のガス濃度を適切に測定できないことが分かる。
【0092】
これに対して、本例については、比較例の如く、センサ出力電流が加湿直後から規定電流値付近まで急激に増加することなく、センサ出力電流の変化が安定する結果となった。なお、本例では、加湿後に、センサ出力電流が若干低下しているが、これは、加湿によって燃料ガス中の水素濃度が低下しことが原因と考えられる。すなわち、本例でのセンサ出力電流は、実際の水素濃度の変化に対応した結果となっている。
【0093】
このように、本例の構成(加温抵抗体43および温度補償抵抗体44を収容室41a内に配置したガス濃度測定装置4)によれば、水素流路104aを流れる燃料ガスが高湿度であっても、測定精度の低下を招くことなく適切に水素濃度を測定することができる。このため、本実施形態のガス濃度測定装置4は、燃料電池1の如く、高湿度条件においてガス濃度を測定する必要がある環境に適用した際に極めて有効である。
【0094】
また、上述した効果確認試験と同様の試験を、収容部41の細孔部41bの流路断面積を、水素流路104aの流路断面積よりも小さい範囲で変更して行った。この試験では、細孔部41bの流路断面積が水素流路104aの流路断面積および収容室41aの流路断面積に比べて大きい場合には、上述の比較例でのセンサ出力電流と同様に、加湿直後からセンサ出力電流の増加する結果となった。
【0095】
一方、細孔部41bの流路断面積が水素流路104aの流路断面積および収容室41aの流路断面積よりも小さい場合には、加湿した後もセンサ出力電流の増加は見られず、上述した本例の構成と同様にセンサ出力電流が安定する結果となった。
【0096】
これらの結果から、水素流路104aを流れる水素を収容室41aへと導く細孔部41bの流路断面積を、水素流路104aの流路断面積および収容室41aの流路断面積よりも小さくする場合には、細孔部41bの流路断面積が水素流路104aの流路断面積および収容室41aの流路断面積に比べて大きい場合に比べて、測定精度の低下を招くことなく適切に水素濃度を測定することができることが確認できた。
【0097】
さらに、上述した効果確認試験と同様の試験を、細孔部41bの内壁面に撥水処理を施した構成、および撥水処理を施していない構成に分けて行った。この試験では、細孔部41bの内壁面に撥水処理を施した構成の方が、ガス濃度検知部40におけるセンサ出力電流の変化が少ない結果となった。
【0098】
この結果から、細孔部41bの内壁面に撥水処理を施すことで、水素流路104a内に生じた水滴が収容室41a内の加温抵抗体43および温度補償抵抗体44に付着することをより効果的に抑制することができることが確認できた。
【0099】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図10〜図12に基づいて説明する。本実施形態では、第1実施形態と同様または均等な部分についての説明を省略、または簡略化して説明する。
【0100】
第1実施形態にて説明したガス濃度測定装置4では、水素濃度の測定精度の低下を抑制することが可能であるが、例えば、水素流路104a内に空気流路105aから透過した生成水が過剰に滞留する場合には、水素流路104a内の生成水が細孔部41bを介して収容室41a内に浸水することがある。この場合には、加温抵抗体43や温度補償抵抗体44に水が付着することで、ガス濃度測定装置4における水素濃度の適切に測定することができなくなる虞がある。
【0101】
そこで、本実施形態では、水素流路104a内に生成水が滞留することによる水素濃度の測定異常を検知可能なガス濃度測定装置4について説明する。
【0102】
まず、水素流路104a内に生成水が滞留していない場合におけるガス濃度測定装置4の挙動、および水素流路104a内に生成水が滞留している場合におけるガス濃度測定装置4の挙動について説明する。
【0103】
図11は、水素流路104a内に生成水が滞留していない場合におけるガス濃度測定装置4の挙動を説明する説明図であり、図12は、水素流路104a内に生成水が滞留している場合におけるガス濃度測定装置4の挙動を説明する説明図である。なお、図11および図12では、水素濃度の測定開始からの水素流量の変化、出力電圧(セル電圧)の変化、センサ出力電流の変化、上部ヒータ46の温度変化を示している。
【0104】
水素流路104a内に生成水が滞留していない場合には、図11に示すように、水素流量の減少に伴い、出力電圧、センサ出力電圧が減少する。水素流路104a内の水素濃度は、水素流量の減少に伴い減少する。従って、当該出力電圧、センサ出力電圧の挙動は、水素濃度の変化を適切に反映している。また、上部ヒータ46には、水素濃度に関係なく、一定の電力が供給されるので、上部ヒータ46の温度は略一定の温度に維持されている。
【0105】
これに対して、水素流路104a内に生成水が滞留している場合には、図12に示すように、水素流量の減少に伴い、センサ出力電圧が一旦減少した後、急激に増加する。これは、水素流量の減少に伴い、水素流路104a内の生成水を水素出口穴10bから適切に排出することができなくなり、水素流路104a内の生成水が収容室41a内に流入したことが原因と考えられる。さらに、水素流路104a内の生成水が収容室41a内に流入する際には、流入した生成水によって上部ヒータ46の温度が低下する。
【0106】
次に、本実施形態では、上述のガス濃度測定装置4の挙動に基づいて、水素流路104a内に生成水が滞留することによる水素濃度の測定異常を検知する構成について説明する。
【0107】
本実施形態では、上部ヒータフィルム412に、上部ヒータ46の温度を検出するための温度検出手段(図示略)として温度センサを設けると共に、測定用制御回路51にてガス濃度測定装置4の測定異常を検知する構成とする。
【0108】
測定用制御回路51におけるガス濃度測定装置4の測定異常の検知について、図12のガス濃度測定装置4における測定異常の制御処理を示すフローチャートに基づいて説明する。
【0109】
まず、ガス濃度測定装置4の電流測定部515の検出信号(センサ出力電流)、上部ヒータ46の温度センサの検出信号(上部ヒータ温度)を読み込む(S10)。
【0110】
次に、S10にて検出したセンサ出力電流が規定電流値付近に設定された上限電流値よりも大きいか否かを判定する(S20)。この結果、センサ出力電流が上限電流値よりも大きいと判定された場合(S20:YES)には、図11に示すセンサ出力電流の挙動と同様の挙動を示していることとなり、ガス濃度測定装置4にて水素濃度を適切に測定できない測定異常状態と判断できる。このため、ガス濃度測定装置4では、センサ出力電流が上限電流値よりも大きいと判定された場合に、制御装置3に対して、測定異常状態であることを示す信号を出力(報知)する。そして、制御装置3では、表示パネル31にガス濃度測定装置4の測定異常を表示する(S30)。
【0111】
一方、S20の判定処理の結果、センサ出力電流が上限電流値以下と判定された場合(S20:NO)には、さらに、S10にて検出した上部ヒータ温度が基準温度(例えば)から所定温度αを減算した閾値温度よりも大きいか否かを判定する(S40)。
【0112】
この結果、上部ヒータ温度が閾値温度以下と判定された場合(S40:NO)には、図11に示す上部ヒータ温度の挙動と同様の挙動を示していることとなり、ガス濃度測定装置4にて水素濃度を適切に測定できない測定異常状態と判断できる。このため、ガス濃度測定装置4では、上部ヒータ温度が閾値温度以下と判定された場合に、制御装置3に対して、測定異常状態であることを示す信号を出力(報知)する。そして、制御装置3では、表示パネル31にガス濃度測定装置4の測定異常を表示する(S30)。
【0113】
一方、S40の判定処理の結果、上部ヒータ温度が閾値温度よりも大きいと判定された場合(S40:YES)には、ガス濃度測定装置4にて水素濃度を適切に測定できる正常状態と判断できる。このため、ガス濃度測定装置4の電流測定部515にて検出したセンサ出力電流に基づいて水素濃度を測定する処理を行う。
【0114】
このように、本実施形態では、センサ出力電流および上部ヒータ温度に基づいて、ガス濃度測定装置4の水素濃度の測定異常を検知することができるので、ガス濃度測定装置4の信頼性を向上させることができる。
【0115】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について図13および図14に基づいて説明する。図13は、本実施形態の水素極側セパレータ104の正面図であり、図14は、図13のB−B断面図である。本実施形態では、第1、第2実施形態と同様または均等な部分についての説明を省略、または簡略化して説明する。
【0116】
上述の第1、第2実施形態では、ガス濃度測定装置4のガス濃度検知部40を水素極側セパレータ104の水素流路104aに形成した溝部104bに配置する構成を採用する例を説明した。これに対して、本実施形態では、ガス濃度検知部40を水素極側セパレータ104の水素出口穴10bに配置する構成を採用している。
【0117】
具体的には、燃料ガスが流れるガス流路である水素出口穴10bの内壁面に、断面コの字状の支持具48を介してガス濃度検知部40を固定する構成としている。なお、ガス濃度検知部40における第4スペーサフィルム417に相当する部位にて支持具48を固定し、収容部41の細孔部41bが、水素出口穴10b側に露出する構成としている。
【0118】
このように、ガス濃度検知部40を水素極側セパレータ104の水素出口穴10bに配置する構成を採用しても、第1、第2実施形態のガス濃度測定装置4と同様の作用効果を奏することができる。
【0119】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について図15および図16に基づいて説明する。図15は、本実施形態の細孔部41bの断面形状を示す部分断面図であり、図16は、細孔部41bの断面形状の変形例を示す部分断面図である。本実施形態では、第1〜第3実施形態と同様または均等な部分についての説明を省略、または簡略化して説明する。
【0120】
上述の第1〜第3実施形態では、細孔部41bとして、断面形状が円筒状の孔で構成する例を説明したが、本実施形態では、細孔部41bとして、断面形状が水素流路104a側(ガス流路側)の流路断面積が収容室41a側(収容室側)の流路断面積よりも大きい孔で構成している点が第1〜第3実施形態と相違している。
【0121】
具体的には、本実施形態の細孔部41bは、水素流路104a側の流路断面積が収容室41a側の流路断面積よりも大きいテーパ(円錐)状の孔で構成している。これによれば、細孔部41bに付着した水滴に作用する表面張力によって、細孔部41bに付着した水滴を細孔部41bにおける流路断面積が大きい水素流路104a側へと移動させることができる。このため、細孔部41bに付着した水滴が収容室41a内へ流入することをより効果的に抑制することができる。
【0122】
なお、本実施形態では細孔部41bをテーパ状の孔で構成したが、これに限定されず、例えば、図16に示すように、水素流路104a側の流路断面積が収容室41a側の流路断面積よりも大きくなるように階段状の孔を採用してもよい。
【0123】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各請求項に記載した範囲を逸脱しない限り、各請求項の記載文言に限定されず、当業者がそれらから容易に置き換えられる範囲にも及び、かつ、当業者が通常有する知識に基づく改良を適宜付加することができる。例えば、以下のように種々変形可能である。
【0124】
(1)上述の各実施形態では、収容部41に収容室41a内を昇温させる上部ヒータ46、および下部ヒータ47を設ける構成としているが、加温抵抗体43等の発熱によって収容室41a内が充分に昇温する場合には、ガス濃度検知部40から上部ヒータ46、下部ヒータ47を省略してもよい。なお、第2実施形態では、上部ヒータ46の温度を検出し、検出した検出値に基づいてガス濃度測定装置4の測定異常を判定するようにしているが、上部ヒータ46を省略する場合、収容部41における水素流路104a側に露出する部位の表面温度を検出し、検出した検出値に基づいて、ガス濃度測定装置4の測定異常であるか否かを判定すればよい。
【0125】
(2)上述の各実施形態では、収容部41に設ける断熱層45を空隙で構成しているが、これに限らず、例えば、断熱層45を断熱部材等で構成してもよい。なお、例えば、収容部41を充分に断熱性のある部材で構成する場合には、断熱層45を省略してもよい。
【0126】
(3)上述の各実施形態では、収容部41の細孔部41bの内壁に撥水処理を施しているが、収容部41における細孔部41bの流路断面積、流路断面の形状等によって、水素流路104aから収容室41a内への水滴の流入を抑制することができる場合には、細孔部41bへの撥水処理を省略してもよい。
【0127】
(4)上述の各実施形態では、加温抵抗体43と温度補償抵抗体44とを同じ収容室41a内に収容する構成を例として説明したが、加温抵抗体43と温度補償抵抗体44は、同じ収容室41a内に配置する構成に限らず、例えば、水素流路104aを流れる水素が流入する2つの収容室41aに別個に配置してもよい。
【0128】
(5)上述の各実施形態では、測定用制御回路51の回路構成として、図6の回路図で示す構成を採用する例を説明したが、これに限らず、例えば、測定用制御回路51の回路構成として、ブリッジ回路等で構成してもよい。
【0129】
(6)上述の各実施形態では、ガス濃度検知部40を水素出口穴10b付近に配置する構成を例として説明したが、ガス濃度検知部40の配置は、水素出口穴10b付近に限定されない。ガス濃度検知部40の配置は、水素が流れる流路であれば、例えば、集電板11における水素排出口11bや水素入口穴10a付近としてもよい。
【0130】
(7)上述の各実施形態では、ガス濃度測定装置4を、複数のフィルム基板411〜417を積層した積層体で構成しているが、これに限定されず、他の構成としてもよい。
【0131】
(8)上述の第2実施形態では、ガス濃度測定装置4で水素流路104a内に生成水が滞留することによる水素濃度の測定異常を検知した際に、制御装置3では、表示パネル31にガス濃度測定装置4の測定異常を表示するようにしているが、制御装置3では、他の制御を行ってもよい。例えば、水素濃度の測定異常を検知した場合は、制御装置3が燃料ガスの供給量を増加させるように各種アクチュエータの作動を制御してもよい。
【0132】
(9)上述の各実施形態では、燃料電池1として固体高分子電解質型燃料電池(PEMFC)を採用した例を説明したが、本発明の適用はこれに限定されず、高湿度環境下で作動する他の形式の燃料電池1に用いてもよい。
【0133】
(10)上述の各実施形態では、車両に搭載された燃料電池1に本発明を適用した例を説明したが、本発明の適用はこれに限定されない。例えば、船舶や飛行機等の移動体に搭載される燃料電池に適用してもよいし、定置型発電装置に搭載された燃料電池に適用してもよい。さらに、燃料電池1に限らず、高湿度環境下で作動する装置に本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0134】
10b 水素出口穴(ガス流路)
104a 水素流路(ガス流路)
4 ガス濃度測定装置
41 収容部
41a 収容室
41b 細孔部(導入流路)
43 加温抵抗体(発熱部)
44 温度補償抵抗体(温度検知部)
45 断熱層
46 上部ヒータ(ヒータ)
47 下部ヒータ(ヒータ)
51 測定用制御回路(通電量制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス流路(104a、10b)を流れる水素を含む測定対象ガスの熱伝導率と前記測定対象ガスに含まれる水素のガス濃度との相関関係を利用して、前記測定対象ガスに含まれる水素のガス濃度を測定するガス濃度測定装置であって、
前記測定対象ガスの温度を検知する温度検知部(44)と、
前記通電されて発熱する発熱部(43)と、
前記発熱部(43)の温度が前記温度検知部(44)にて検知された温度よりも一定温度高くなるように、前記発熱部(43)への通電量を制御する通電量制御手段(51)と、
前記温度検知部(44)および前記発熱部(43)それぞれを収容する収容室(41a)が内部に形成された収容部(41)と、
前記ガス流路(104a、10b)を流れる前記測定対象ガスを前記収容室(41a)へと導く導入流路(41b)と、
を備え、
前記導入流路(41b)は、その流路断面積が前記ガス流路(104a、10b)の流路断面積および前記収容室(41a)の流路断面積よりも小さいことを特徴とするガス濃度測定装置。
【請求項2】
前記導入流路(41b)の内壁面には、撥水処理が施されていることを特徴とする請求項1に記載のガス濃度測定装置。
【請求項3】
前記導入流路(41b)は、前記ガス流路(104a、10b)側の流路断面積が前記収容室(41a)側の流路断面積よりも大きいことを特徴とする請求項1または2に記載のガス濃度測定装置。
【請求項4】
前記収容部(41)には、前記収容室(41a)内を断熱する断熱層(45)が設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載のガス濃度測定装置。
【請求項5】
前記収容部(41)には、通電により発熱して前記収容室(41a)内を昇温させるヒータ(46、47)が設けられていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載のガス濃度測定装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2012−58180(P2012−58180A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−204216(P2010−204216)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】