説明

ガス発生器

【課題】複数のガス排出口を形成したディフューザ部を有するガス発生器であり、ガス排出口に到達するまでのガス排出経路の一部に形成されたチョーク部となる空間部が、ガス発生器の作動状態に拘わらず安定したガス排出量の調整機能を発揮できるガス発生器を提供することを課題とする。
【解決手段】ガス発生器のディフューザ部100は、開口部103とガス排出口105を有する周壁部102aを有し、第1筒状空間部110と第2筒状空間部111からなる。ハウジング本体部22とディフューザ部100の間は仕切板120で閉塞されている。第1筒状空間部110の内径d1と第2筒状空間部111の内径d2はd1>d2の関係を満たすように段差115を形成して連通され、内径d2の第2筒状空間部111の断面積a1が、複数のガス排出口105の総開口面積a2よりも小さくなるように設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の人員拘束システム用として適したガス発生器に関する。
【背景技術】
【0002】
エアバッグ装置用のガス発生器は、作動時に所定量のガスをエアバッグに供給するものであり、使用されるエアバッグの目的や仕様に合わせて、供給されるガス量も決まっている。そのためガス発生器としては安定した出力を発現するものであることが好ましい。
【0003】
ガス発生器からの単位時間当たりのガス排出量は、ガス排出経路においてチョーク部によって調整される。チョーク部は、ガス排出口までの排出経路において、断面積や開口面積の最も小さい部分(最小面積部分)である。このため、この最小面積部分が常に安定して確保される必要がある。
【0004】
特許文献1には、ハウジング14の端部にディフューザ12が取り付けられたガス発生器の部分図が開示されている。ディフューザ12は天井部24と側壁22および底壁26からなり、天井部24は閉塞され、側壁22には複数の開口(スロット40)が形成されている。さらに底壁26には中央に1つの孔28が形成され、バーストディスク34によって閉塞されている。
このガス発生器は、複数の開口40によって形成される総開口面積が、ディフューザ12の底壁26に形成される孔28の開口面積より大きくなるように形成されているため、孔28がチョーク部となる。
【0005】
特許文献2には、内部にフィルターを有する長尺円筒状ハウジングと、ガスを発生するガス発生剤が装填されている燃焼室と、ガス発生剤点火手段と、前記ハウジングにおける前記フィルター側の端部に装着されているガス放出筒とを備えており、ガス放出筒が、ガス流路の開口部の断面積が、ガス流路の途中の断面積よりも大きいガス発生器が開示されている(請求項1)。
前記ガス放出筒の断面積についての詳細は段落〔0017〕に記載されているが、複数のガス放出口の総開口面積との関係は全く記載されていない。さらに段落〔0017〕に記載の断面積の関係は、〔0021〕に記載のとおり、フィルター4のガス放出筒12側の角部付近も有効に利用できるようにするためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許公報第5,941,563号
【特許文献2】実用新案登録第3129859号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の発明は、チョーク部分となる孔28によって、排出されるガスの量を調整する構造になっている。しかし、孔28にバーストディスク34が取り付けられており、バーストディスク34の開裂の仕方によっては、孔28の開口面積が変化することも考えられる。そのため、出力性能にばらつきが発生しやすく、安定な出力を呈するガス発生器という点で、更に改良の余地がある。
【0008】
本発明は、複数のガス排出口を形成したディフューザ部を有するガス発生器であり、ガス排出口に到達するまでのガス排出経路の一部に形成されたチョーク部となる空間部が、ガス発生器の作動状態に拘わらず安定したガス排出量の調整機能を発揮できるガス発生器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、課題の解決手段として、
ガス及びガスを発生させるためのガス発生手段の少なくとも一方が収容されたハウジング本体部と、
前記ハウジング本体部に接続されており、前記ハウジング本体部内のガス又は前記ハウジング本体部内で発生したガスを排出するためのディフューザ部とを備えたガス発生器であって、
前記ディフューザ部がカップ状であり、前記ハウジング本体部と接合された開口部と、複数のガス排出口を有する周壁部を有するものであり、
前記ハウジング本体部と前記ディフューザ部との間が、前記環状部の開口部側に固着された仕切板で閉塞されており、
前記ディフューザ部の内部が、互いに連通された第1筒状空間部と第2筒状空間部からなるものであり、
前記第1筒状空間部が前記仕切板に面し、前記第2筒状空間部が前記ガス排出口と連通しており、
前記第1筒状空間部と前記第2筒状空間部が、前記第1筒状空間部の内径d1と前記第2筒状空間部の内径d2がd1>d2の関係を満たすように段差を形成して連通されているものであり、
前記内径d2の第2筒状空間部の断面積a1が、前記複数のガス排出口の総開口面積a2よりも小さくなるように設定されているガス発生器を提供する。
【0010】
本発明のガス発生器は、本発明の課題を解決できる範囲内であれば、ディフューザ部を除いた残りは公知の各種タイプのガス発生器と同じ構造にすることができる。
また、本発明のガス発生器におけるディフューザ部を公知のガス発生器のディフューザ機能を有する部品と置換することもできる。
【0011】
本発明のガス発生器は、
ハウジング本体部内に充填されたガスを利用するストアードガス型インフレータ(但し、少なくとも圧力により仕切板を破壊するための手段又は直接仕切板に作用して破壊させる部材(矢尻、ピストン等)を駆動させる手段として点火器等を備えている)、
ハウジング本体部内に充填されたガスとガス発生剤を利用するハイブリッド型インフレータ(ガス発生剤を着火燃焼させるための点火器等のガス発生手段を備えている)、
ハウジング本体部内に充填されたガス発生剤を利用するパイロ型インフレータのいずれかの型のガス発生器にすることができる。
【0012】
ハウジング本体部は、内部空間内にガス及びガスを発生させるためのガス発生手段の少なくとも一方が収容されたものである。
ガスは、ストアードガス型インフレータやハイブリッド型インフレータで使用するもので、公知の不活性ガス、窒素ガス等である。
ガス発生手段は、パイロ型インフレータのほか、ハイブリッド型インフレータでも使用するものであり、インフレータの型に応じて、ガス発生剤、それを着火燃焼させるための点火器、ガス発生剤の着火燃焼を促進するための伝火薬(他のガス発生剤も含む)等から選択したものを組み合わせて使用することができるものであり、公知のガス発生器におけるガス発生手段を使用することができる。
【0013】
ハウジング本体部とディフューザ部との間は仕切板で閉塞されている。
ストアードガス型インフレータやハイブリッド型インフレータの仕切板は、ハウジング本体部に高圧で充填されたガスが漏れないようにするためのものである。高い圧力を受けた状態で固着されているものであるから、その圧力に耐えるような厚みや材質のものとなり、金属が好ましい。
パイロ型のインフレータの仕切板は、ハウジング本体部内に充填されたガス発生剤(例えば、円柱状、ディスク状、ペレット状又はそれらに貫通孔や凹部が形成された形状のもの)の充填空間と外部雰囲気を分離して湿気の侵入を防止するためのものである。このため、ストアードガス型インフレータやハイブリッド型インフレータの場合と比べると、強度は小さくてもよい。
【0014】
ディフューザ部の内部には、第1筒状空間部と第2筒状空間部がディフューザ部の軸方向に並んで形成されており、第1筒状空間部が仕切板に面し、第2筒状空間部がガス排出口に連通されている。
よって、作動時に仕切板が破壊されたとき、ハウジング本体部内のガス(又はハウジング本体部内で発生したガス)は、第1筒状空間部、第2筒状空間部の順に通過して、ガス排出口から排出されることになる。
【0015】
第1筒状空間部と第2筒状空間部は、第1筒状空間部の内径d1と第2筒状空間部の内径d2は、d1>d2の関係を満たすように段差を形成して連通されている。このとき、第1筒状空間部と第2筒状空間部の中心軸が一致していることが望ましい。
【0016】
内径d2の第2筒状空間部の断面積a1は、複数のガス排出口の総開口面積a2よりも小さくなるように設定されている。第1筒状空間部の内径d1と第2筒状空間部の内径d2はd1>d2の関係を満たしているから、作動時においては、内径d2の第2筒状空間部が単位時間当たりのガス排出量を調整するためのチョーク部となる。
【0017】
第1筒状空間部の長さ(第1筒状空間部の前記仕切板に面した開口部から段差部までの長さ)L1と第1筒状空間部の内径d1は、L1>0.5d1の関係を満たしていることが好ましい。ここで、第1筒状空間部に面した仕切板の直径は、開口部103に対する取り付け状態によるが、第1筒状空間部の内径d1とほぼ一致する。
ストアードガス型インフレータやハイブリッド型インフレータの場合には、ハウジング本体部内に不活性ガス等が高圧で充填されているため、仕切板はディフューザ部側に椀状に付き出したように変形している。この場合には、仕切板の中心部に最も高い圧力が掛かっている。このため、仕切板が破壊されたときには、周縁部が固着されたままで、中心部から放射状に亀裂が拡がって花弁状に破壊されることになる。
このとき、花弁状に拡がった仕切板の先端部が第2筒状空間部にまで到達すると、第2筒状空間部の断面積が小さくなってしまい、インフレータの出力性能に変化が生じるおそれがある。
しかし、上記のとおり、L1>0.5d1の関係を満たしていると、花弁状に拡がった仕切板の先端部は第2筒状空間部に到達することが防止されるため、設計どおりの断面積を有するチョーク部としての機能が発現される。
【0018】
仕切板として、中心部から放射状に形成された複数の脆弱部を有するものを使用すると、花弁状に開裂し易くなるとともに、破壊片が生じ難くなるため、第2筒状空間部のチョーク部としての機能がより安定して発揮できるので好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明のガス発生器は、ガス排出経路において単位時間当たりのガス排出量を調整するチョーク部が、それぞれ径の異なる第1筒状空間部と第2筒状空間部を有するディフューザ部内の第2筒状空間部に形成されており、仕切板が第1筒状空間部の開口部側に固定されている。このため、作動時において開裂した仕切板がチョーク部である第2筒状空間部に入り込まず、安定したガス排出量の調整機能が発揮される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明のガス発生器の組立方法を説明するための軸方向の断面図。
【図2】図1のガス発生器に接続できるディフューザ部の軸方向断面図。
【図3】本発明のガス発生器の動作を説明するための図。
【図4】本発明の他実施形態であるガス発生器の軸方向断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(1)ハイブリッド型インフレータ
図1〜図3により、本発明のガス発生器をハイブリッド型のインフレータにした場合の実施形態を説明する。
図1は、特開2008−137475号公報の図1に示されたインフレータ10においてディフューザ部50を除いたものと同じものに対して、新たにディフューザ部100を取り付ける前の状態を示している。
【0022】
インフレータ10は、加圧ガス室20と、ガス発生器30、ディフュザー部50とを有している。
【0023】
加圧ガス室20は、筒状の加圧ガス室ハウジング(ハウジング本体部)22により外殻が形成されており、アルゴン、ヘリウムの混合物からなる加圧ガスが充填されている。加圧ガス室ハウジング22は、軸方向及び半径方向に対して対称形となっているので、組み立て時に軸方向及び半径方向への向きを調整する必要がない。
【0024】
加圧ガス室ハウジング22の側面には、加圧ガスの充填孔24が形成されており、加圧ガスを充填した後にピン26により閉塞されている。ピン26の先端部26aは加圧ガス室20内に突出されており、突出部はガス発生剤成型体36の燃焼ガス流が衝突される長さを有している。このピン26の突出部の長さを調整することで、ピン26自体に燃焼ガスを衝突させて、燃焼残渣を付着させることができる。図1においては、ピン26の先端部26aが対向する壁面22aに当接するまで延長することができる。
【0025】
ガス発生器30は、ガス発生器ハウジング32内に収容された点火手段(電気式点火器)34とガス発生剤成型体36とを含んでおり、加圧ガス室20の一端側に接続されている。ガス発生剤成型体36が充填された空間が燃焼室35となる。ガス発生器ハウジング32と加圧ガス室ハウジング22は、接合部49において抵抗溶接されている。インフレータ10をエアバッグシステムに組み込むとき、点火手段34は、コネクタ、導線を介して、外部電源に接続される。
【0026】
ガス発生剤成型体36は、公知のものを用いることができる。図示したガス発生剤成型体36は円柱状であるから、最小径(Dmin)は端面の直径となる。
【0027】
加圧ガス室20とガス発生器30との間の第1連通路38は、加圧ガスの圧力を受けて椀状に変形した第1破裂板40で閉塞されており、ガス発生器30内は常圧に保持されている。第1破裂板40は、周縁部40aにおいてガス発生器ハウジング32に抵抗溶接されている。
【0028】
第1破裂板40には、キャップ44が加圧ガス室20側から被せられている。このキャップ44は、第1破裂板40(即ち、第1連通路38)を覆うことにより、ガス発生剤成型体36の燃焼により生じた燃焼ガスが必ずキャップ44を経由してガス孔42から噴出されるように取り付けられている。
【0029】
キャップ44は、断面が円形のものであり、周面44aにのみ複数のガス孔42が形成されており、底面44bは第1破裂板40(即ち、第1連通路38)に正対している。
【0030】
周面44aに形成されたガス孔42は円形であり、直径dminはガス発生剤成形体36の最小径(Dmin)と同等以下の大きさであり、好ましくはガス発生剤成形体36の最小径(Dmin)よりも小さいものである。
【0031】
キャップ底面44bと、キャップ底面44bに最も近接した位置にあるガス孔42a(図2(b)参照)端部までの間隔(W)と、ガス発生剤成型体36の最小径(Dmin)との関係は、Dmin/2<Wであることが好ましい。
【0032】
キャップ44は、開口周縁部が外側に折り曲げられたフランジ部46を有しており、フランジ部46においてガス発生器ハウジング32の一部(かしめ部)48をかしめることで固定されている。
【0033】
加圧ガス室20の他端側には、図2に示すように加圧ガス及び燃焼ガスを排出するガス排出口105を有するディフュザー部100が接続されており、ディフュザー部100と加圧ガス室ハウジング(ハウジング本体部)22は、接合部54において抵抗溶接されている。
【0034】
ディフューザ部100は、開口部103と周壁部102aを有するカップ状であればよいが、加圧ガス室ハウジング22との接合性の観点から、図2に示すように、ハウジング本体部22と接合部54側において接合された、開口部103を有する環状部101と、環状部101の内周縁から突き出され、複数のガス排出口105が形成された周壁部102aと底面部102bからなるガス排出部102を有するものが好ましい。
ガス排出口105は、カップ状のガス排出部102の周壁部102aに形成されているが、底面部102bに形成されていてもよい。
ガス排出口105の数は特に制限されるものではないが、所定寸法のものが好ましくは4個以上である。
【0035】
ハウジング本体部22とディフューザ部100との間は、環状部101の開口部103側に固着された、ステンレス製で、円形の仕切板(第2破裂板)120で閉塞されている。仕切板120は、取り付け前には円板状であるが、ハウジング本体部22内部の高圧ガスの圧力を受けて、ディフューザ部100側に椀状に突き出すように変形している。
仕切板120は、その周縁部120aが環状部101の開口部103の周縁(ハウジング本体部22に面した環状部101の表面)に溶接で固定されている。
環状部101の開口部103に面した角部104は、図示するように曲面であることが好ましい。角部104が曲面である場合には、作動時における仕切板120の花弁状の開裂を補助し、仕切板120が千切れて破片が生じることが防止される。
【0036】
ディフューザ部100の内部は、仕切板120に面した第1筒状空間部110と、ガス排出口105と連通された第2筒状空間部111からなり、2つの空間部はディフューザ部100の軸方向に並んで互いに連通されている。
第1筒状空間部110の中心軸Xと第2筒状空間部111の中心軸Xは一致している。
【0037】
第1筒状空間部110と第2筒状空間部111は、第1筒状空間部110の内径d1と第2筒状空間部111の内径d2がd1>d2の関係を満たすように段差115を形成して連通されている。
d1とd2の比率(d1/d2)は、段差115の幅を調整する観点から、1.5〜8の範囲が好ましく、1.8〜5の範囲がより好ましい。
段差115の幅は、(d1−d2)/2から求めることができるものであり、d1が7mmのときは1.4〜1.8mmの範囲が好ましい。
【0038】
内径d2の第2筒状空間部111の断面積(直径方向の断面積)a1は、複数のガス排出口105の総開口面積a2よりも小さくなるように設定されている。
内径d2の第2筒状空間部111の断面積と内径d1の第1筒状空間部110の断面積(直径方向の断面積)は、d1>d2であるから、第2筒状空間部111の断面積の方が小さくなる。
ハウジング本体部22内の加圧ガスは、仕切板120が破壊されたとき、第1筒状空間110、第2筒状空間111を通って、ガス排出口105から排出される。このため、第2筒状空間部111がガス流の流出経路におけるチョーク部となる。
a1とa2の比率(a1/a2)は0.3〜0.9の範囲が好ましく、0.4〜0.8の範囲が好ましい。
【0039】
また、第2筒状空間部111の内径d2は、1つのガス排出口105の内径と比べると充分に大きなものであるため(本実施形態では約1.4倍)、小さなガス排出口105を穿孔する場合と比べると加工公差の割合が小さくなる。さらに第2筒状空間部111は1つであるため、複数(好ましくは4個以上)のガス排出口105を穿孔した場合の合計の加工公差と比べると、第2筒状空間部111の加工公差を小さくすることができる。
このため、1つの第2筒状空間部111をチョーク部とした方が、複数のガス排出口105をチョーク部とした場合と比べると、ガス排出量の調整機能をより設計数値に近くすること(即ち、ガス発生器の出力性能のばらつきを小さくすること)ができる。
【0040】
第1筒状空間部110の長さ(第1筒状空間部110の仕切板120に面した開口部103から段差部115までの長さ)L1と、第1筒状空間部110の内径d1は、L1>0.5d1の関係を満たしている。
このような関係を満たしていることにより、作動時において仕切板120が花弁状に開裂したとき、その開裂した先端部が第2筒状空間部111にまで至ることが防止される。
仕切板120は、前記のように花弁状に開裂され易くするため、中心部から放射状に形成された複数の脆弱部を有するものを用いることができる。
なお、仕切板120が、その周縁部120aにおいて環状部101の開口部103の周縁に溶接で固定されており、かつ開口部103に面した角部104が図示するように曲面であることから、仕切板120のうちの第1筒状空間部110に面した部分の直径(d3)は、第1筒状空間部110の内径d1とは完全に同一ではないが、上記作用がなされる程度に実質的に同一である。
【0041】
次に、図1に示すインフレータ10に図2に示すディフューザ部100を溶接固定したインフレータを自動車に搭載したエアバッグシステムに組み込んだ場合の動作を説明する。
【0042】
自動車が衝突して衝撃を受けたとき、作動信号出力手段により、点火器34が作動点火して、燃焼室35内のガス発生剤成型体36を燃焼させ、高温の燃焼ガスを発生させる。
【0043】
その後、高温の燃焼ガスによるガス発生器30内の圧力上昇により、第1破裂板40が破壊され、第1連通路38が開放されるため、燃焼ガスはキャップ44内に流入し、ガス孔42から噴出され、加圧ガス室20に流入する。
【0044】
その後、加圧ガス室20内の圧力上昇により、仕切板(第2破裂板)120が破壊され、花弁状に開裂してガス排出経路が開放される。それにより、加圧ガス及び燃焼ガスは、第1筒状空間部110、第2筒状空間部111を経て、複数のガス排出口105から排出され、エアバッグを膨張させる。
【0045】
上記の動作において、図2に示す状態の仕切板120が図3に示すように花弁状に開裂したとき、仕切板120の開口部103の周縁(ハウジング本体部22に面した環状部101の表面)に固着された周縁部120aはそのまま残るが、花弁状の開裂部分の先端部120bは第2筒状空間部111方向に拡がる。
【0046】
しかし、L1>0.5d1の関係を満たしていることから、先端部120bは段差部115を超えて第2筒状空間部111にまで至ることはない。さらにd1/d2の比率(段差部115の幅)を調整することにより、花弁状の開裂部分の先端部120bが環状平板101の内壁面101aに近接乃至は接触するようにできるため、第1筒状空間部110の中心軸X方向に開裂部分が突き出して実質的に第2筒状空間部111の断面積a1を変化させることが防止される。
このため、a1<a2が維持され、第2筒状空間部111がチョーク部として機能することで、設計どおりのガス流量の調整機能が得られる。
【0047】
また上記の動作において、燃焼室35内に燃焼途中又は未燃焼状態のガス発生剤成形体36が存在したとき、ガス流に乗り、開放された第1連通路38を通ってキャップ44内に排出される。そして、燃焼途中又は未燃焼状態のガス発生剤成形体36はキャップ底面44bに衝突し、そこで捕捉される。
【0048】
このように燃焼途中又は未燃焼状態のガス発生剤成形体36がキャップ44のガス孔42から排出されることが防止され、ガス発生剤36が加圧ガス室20内に到達する前に焼尽する。よって、設計どおりの出力が安定に得られることになる。
【0049】
(2)パイロ型のインフレータ
次に、図4に示すパイロ型のインフレータ150を説明する。
パイロ型のインフレータ150は、ガス発生室ハウジング160で囲まれたガス発生室164、第1ディフューザ部200、第2ディフューザ部170を有している。
【0050】
ガス発生室164内には、所要量のガス発生剤162が充填されており、ガス発生室ハウジング160には、ガス発生剤162を着火燃焼させるための点火器161が取り付けられている。
ガス発生室164と第1ディフューザ部200との間は、ガス発生剤164が第1ディフューザ部200側に移動しないようにするためのスクリーン(金網)163が配置されている。
【0051】
ガス発生室164には、第1ディフューザ部200が接続されており、第1ディフュザー部200とガス発生室ハウジング160は、接合部154において抵抗溶接されている。
【0052】
第1ディフューザ部200は、ガス発生室ハウジング160と接合部154において接合された環状部201と、環状部201の内周縁から突き出された、複数の第1ガス排出口205を有する周壁部202aと底面部202bからなるガス排出部202を有するものである。
【0053】
第1ディフューザ部200とガス発生室ハウジング160の間は、環状部201の開口部203側に固着された、ステンレス製で、円形の仕切板(破裂板)220で閉塞されている。
仕切板220は、その周縁部220aが環状部201の開口部203の周縁(ガス発生室164に面した環状部201の表面)に溶接で固定されている。
仕切板220は、ガス発生剤160の防湿を目的とするものであるため、図1〜図3の仕切板120よりも強度の低いものでよく、前記目的が達成できるのであれば、ステンレス以外の材質からなるものでもよい。
【0054】
第1ディフューザ部200の内部は、仕切板220に面した第1筒状空間部210と、第1ガス排出口205と連通された第2筒状空間部211からなり、2つの空間部は互いに中心軸X方向に連通されている。
第1筒状空間部210の中心軸Xと第2筒状空間部211の中心軸Xは一致している。
【0055】
第1筒状空間部210と第2筒状空間部211は、第1筒状空間部210の内径d1と第2筒状空間部211の内径d2がd1>d2の関係を満たすように段差215を形成して連通されている。
d1とd2の比率(d1/d2)は、段差215の幅を調整する観点から、1.5〜8の範囲が好ましく、1.8〜5の範囲がより好ましい。
段差215の幅は、(d1−d2)/2から求めることができるものであり、d1が7mmのときは1.4〜1.8mmの範囲が好ましい。
【0056】
内径d2の第2筒状空間部211の断面積(直径方向の断面積)a1は、複数の第1ガス排出口205の総開口面積a2よりも小さくなるように設定されている。
内径d2の第2筒状空間部211の断面積と内径d1の第1筒状空間部210の断面積は、d1>d2であるから、第2筒状空間部211の断面積の方が小さくなる。
ガス発生室164で発生した燃焼ガスは、圧力の増加により仕切板220が破壊されたとき、第1筒状空間210、第2筒状空間211を通って、第1ガス排出口205から排出される。このため、第2筒状空間部211がガス流の流出経路におけるチョーク部となる。
a1とa2の比率(a1/a2)は0.3〜0.9の範囲が好ましく、0.4〜0.8の範囲が好ましい。
【0057】
なお、第2筒状空間部211の内径d1は、第1ガス排出口205の内径と比べると充分に大きなものであるため(本実施形態では約1.4倍)、小さな第1ガス排出口205を穿孔する場合と比べると加工公差の割合は小さくなる。さらに第2筒状空間部211は1つであるため、複数(好ましくは4個以上)のガス排出口205を穿孔した場合の合計の加工公差と比べると、第2筒状空間部211の加工公差を小さくすることができる。
このため、1つの第2筒状空間部211をチョーク部とした方が、複数のガス排出口205をチョーク部とした場合と比べると、ガス排出量の調整機能をより設計数値に近くすることができる。
【0058】
第1筒状空間部210の長さ(第1筒状空間部210の仕切板220に面した開口部203から段差部215までの長さ)L1と、第1筒状空間部210の内径d1は、L1>0.5d1の関係を満たしている。
このような関係を満たしていることにより、作動時において仕切板220が花弁状に開裂したとき、その開裂した先端部が第2筒状空間211にまで至ることが防止される。
仕切板220は、前記のように花弁状に開裂され易くするため、中心部から放射状に形成された複数の脆弱部を有するものを用いることができる。
なお、図2で示す仕切板120と同様に、仕切板220の環状部201の開口部203の周縁に対する取り付け状態により、仕切板120のうちの第1筒状空間部210に面した部分の直径(d3)は、第1筒状空間部210の内径d1とは完全に同一ではないが、上記作用がなされる程度に実質的に同一である。
【0059】
第1ディフューザ200には、さらに第2ディフューザ部170が接続されている。
第2ディフューザ部170は、周面に複数の第2ガス排出口173を有している。複数の第2ガス排出口173の総開口面積は、複数の第1ガス排出口205の総開口面積a2よりも大きい。
第2ディフューザ部170の内部には、燃焼ガスを冷却・濾過するための筒状のクーラント・フィルタ171が配置されている。
【0060】
図4に示すパイロ型のインフレータ150を自動車に搭載したエアバッグシステムに組み込んだ場合の動作を説明する。
【0061】
自動車が衝突して衝撃を受けたとき、作動信号出力手段により、点火器161が作動点火して、ガス発生室164内のガス発生剤162を燃焼させ、高温の燃焼ガスを発生させる。
【0062】
その後、高温の燃焼ガスによるガス発生室164内の圧力上昇により、仕切板220が破壊され、花弁状に開裂してガス排出経路が開放される。それにより、燃焼ガスは、第1筒状空間部210、第2筒状空間部211を経て、複数のガス排出孔205から第2ディフューザ部170に排出され、クーラント・フィルタ171で冷却・濾過された後、第2ガス排出口173から排出されてエアバッグを膨張させる。
【0063】
上記の動作において、仕切板220が花弁状に開裂したとき、仕切板220の開口部203の周縁(ガス発生室164に面した環状部201の表面)に固着された周縁部220aはそのまま残るが、花弁状の開裂部分の先端部は第2筒状空間211方向に拡がる。
【0064】
しかし、L1>0.5d1の関係を満たしていることから、先端部は段差部215を超えて第2筒状空間211にまで至ることはない。さらにd1/d2の比率(段差部215の幅)を調整することにより、花弁状の開裂部分の先端部が第1筒状空間部210の内壁面に近接乃至は接触するようにできるため、第2筒状空間210の中心軸X方向に開裂部分が突き出して実質的に第2筒状空間211の断面積a1を変化させることが防止される。
このため、a1<a2が維持され、第2筒状空間211がチョーク部として機能することで、設計どおりのガス流量の調整機能が得られる。
【符号の説明】
【0065】
100 ディフューザ部
101 環状部
102 ガス排出部
105 ガス排出口
110 第1筒状空間部
111 第2筒状空間部
115 段差部
120 仕切板(第2破裂板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス及びガスを発生させるためのガス発生手段の少なくとも一方が収容されたハウジング本体部と、
前記ハウジング本体部に接続されており、前記ハウジング本体部内のガス又は前記ハウジング本体部内で発生したガスを排出するためのディフューザ部とを備えたガス発生器であって、
前記ディフューザ部がカップ状であり、前記ハウジング本体部と接合された開口部と、複数のガス排出口を有する周壁部を有するものであり、
前記ハウジング本体部と前記ディフューザ部との間が、前記環状部の開口部側に固着された仕切板で閉塞されており、
前記ディフューザ部の内部が、互いに連通された第1筒状空間部と第2筒状空間部からなるものであり、
前記第1筒状空間部が前記仕切板に面し、前記第2筒状空間部が前記ガス排出口と連通しており、
前記第1筒状空間部と前記第2筒状空間部が、前記第1筒状空間部の内径d1と前記第2筒状空間部の内径d2がd1>d2の関係を満たすように段差を形成して連通されているものであり、
前記内径d2の第2筒状空間部の断面積a1が、前記複数のガス排出口の総開口面積a2よりも小さくなるように設定されているガス発生器。
【請求項2】
前記第1筒状空間部の長さ(前記第1筒状空間部の前記仕切板に面した開口部から前記段差部までの長さ)L1と前記第1筒状空間部の内径d1が、L1>0.5d1の関係を満たしている請求項1記載のガス発生器。
【請求項3】
前記仕切板が、中心部から放射状に形成された複数の脆弱部を有するものである請求項1又は2記載のガス発生器。
【請求項4】
ガス発生器が、ハウジング本体部内に充填されたガスを利用するストアードガス型インフレータである請求項1〜3のいずれか1項記載のガス発生器。
【請求項5】
ガス発生器が、ハウジング本体部内に充填されたガスとガス発生剤を利用するハイブリッド型インフレータである請求項1〜3のいずれか1項記載のガス発生器。
【請求項6】
ガス発生器が、ハウジング本体部内に充填されたガス発生剤を利用するパイロ型インフレータである請求項1〜3のいずれか1項記載のガス発生器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−76608(P2012−76608A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−223851(P2010−223851)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【出願人】(000002901)株式会社ダイセル (1,236)
【Fターム(参考)】