説明

ガス透過性積層プラスチックフィルム、及びその製造装置

【課題】十分な強度を有するとともにガス透過性及び易開封性に優れ、良好な外観を有する積層プラスチックフィルム、及びその製造装置を提供する。
【解決手段】ベースフィルム層1aとシーラント層1bとからなるガス透過性積層プラスチックフィルム1であって、シーラント層1b側に形成された第一の微細孔群2はシーラント層1b全面を覆うとともにシーラント層1bと同程度の深さを有し、ベースフィルム層1a側に形成された第二の微細孔群3はベースフィルム層1aを部分的に帯状に覆うとともにベースフィルム層1aと同程度の深さを有し、第一及び第二の微細孔群2,3が重複する領域で微細孔は積層プラスチックフィルム1を貫通し、もってガス透過性を付与するガス透過性積層プラスチックフィルム1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、十分な強度を有するとともにガス透過性及び易開封性に優れ、良好な外観も有するので発酵食品等の容器の蓋体に用いるのに好適な積層プラスチックフィルム、及びその製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
キムチ、納豆等の発酵食品は、保存中にも発酵を進行させて炭酸ガスを放出するので、その容器の蓋体は完全密封ではなく、ガス透過性を有することが要求される。その上、イージーオープンが不可欠であるので、易開封性を有するシーラント層を有する必要がある。シーラント層はある程度厚くないと蓋体として機能できないので、例えば45μm程度の厚さのシーラント層をベースフィルム層に積層したものを用いる。
【0003】
プラスチックフィルムにガス透過性を付与する技術として、特公平7-90568号(特許文献1)は、鋭い角部を有するモース硬度5以上の多数の粒子が表面に付着した第一のロールと表面が平滑なロールとの間に長尺フィルムを通過させ、その際長尺フィルムへの押圧力をフィルム全体にわたって均一に調整することにより、長尺フィルムに50μm以下の径を有する貫通孔を500個/cm2以上の密度で形成する方法を開示している。また特開2002-59487号(特許文献2)は、鋭い角部を有するモース硬度5以上の多数の粒子が表面に付着した第一のロールと、軸線方向に間隔をおいて設けられた複数の大径部を有する第二のロールとが対向して配置されており、一方のロールは固定されており、他方のロールは一方のロールに対して所望の圧力で押圧するように移動自在であり、両ロールの間に長尺フィルムを通過させることにより、長尺フィルムの一面に複数の帯状の微細孔列を形成する装置を開示している。
【0004】
特許文献1の装置は長尺フィルムの一面全体に微細孔を形成し、特許文献2の装置は長尺フィルムの一面に複数の帯状の微細孔列を形成するが、いずれの装置でもフィルムが厚肉になると貫通孔を大きくせざるを得ないので、フィルム強度を十分に確保できないという問題がある。その上、貫通孔が大きくなるとフィルムの外観が劣化し、印刷が施される容器用蓋体として用いるのに適さなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平7-90568号公報
【特許文献2】特開2002-59487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って本発明の目的は、十分な強度を有するとともにガス透過性及び易開封性に優れ、良好な外観も有するので発酵食品等の容器の蓋体に用いるのに好適な積層プラスチックフィルム、及びその製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者等は、ベースフィルム層とシーラント層とからなる積層プラスチックフィルムにおいて、シーラント層側全体に実質的にシーラント層だけを貫通する微細孔を形成するとともに、ベースフィルム層側に実質的にベースフィルム層だけを貫通する微細孔を所定の間隔をおいて帯状に形成し、もって帯状領域で両側の微細孔を連通させることにより貫通孔を形成すると、優れたガス透過性を有しながら十分な強度及び良好な外観を有するガス透過性易開封性積層プラスチックフィルムが得られることを発見し、本発明に想到した。
【0008】
すなわち、本発明のガス透過性積層プラスチックフィルムは、ベースフィルム層とシーラント層とからなり、前記シーラント層側に形成された第一の微細孔群は前記シーラント層全面を覆うとともに前記シーラント層と同程度の深さを有し、前記ベースフィルム層側に形成された第二の微細孔群は前記ベースフィルム層を部分的に帯状に覆うとともに前記ベースフィルム層と同程度の深さを有し、前記第一及び第二の微細孔群が重複する領域で両微細孔は連通することにより前記積層プラスチックフィルムを貫通し、もってガス透過性を付与することを特徴とする。
【0009】
前記ベースフィルム層は10〜30μmの厚さを有し、前記シーラント層は20〜60μmの厚さを有するのが好ましい。
【0010】
上記ガス透過性積層プラスチックフィルムを製造する本発明の装置は、前記積層プラスチックフィルムの移動方向に沿って配置された第一及び第二の穿孔装置を有し、(a) 前記第一の穿孔装置は、鋭い角部を有する多数の硬質粒子が表面に付着しているとともに前記シーラント層側に配置された第一の穿孔ロールと、前記第一の穿孔ロールに対向する位置に配置された第一の表面平滑ロールとを具備し、(b) 前記第二の穿孔装置は、前記シーラント層側において定位置で回転する第二の表面平滑ロールと、鋭い角部を有する多数の硬質粒子が表面に付着しているとともに前記第二の表面平滑ロールと対向するようにその軸線方向に沿って配列された複数の第二の穿孔ロールとを具備し、前記積層プラスチックフィルムが前記第一の穿孔ロールと前記第一の表面平滑ロールとの間隙、及び前記第二の穿孔ロールと前記第二の表面平滑ロールとの間隙を通過すると、前記シーラント層の全面に第一の微細孔群が形成されるとともに、前記ベースフィルム層に部分的に複数の第二の微細孔群が帯状に形成されることを特徴とする。
【0011】
上記装置において、前記第二の穿孔ロールが前記第二の表面平滑ロールに対して可動であり、もって前記第二の微細孔群の幅及び数、並びに前記第二の微細孔群における微細孔の面積率及び深さを調整できるのが好ましい。
【0012】
上記装置において、前記第二の穿孔ロールを駆動する装置は、前記第二の表面平滑ロールの軸線方向に移動自在なテーブルと、前記テーブルのガイドに沿って前記第二の表面平滑ロールの方向に移動自在なキャリアと、前記キャリアに支持されて前記第二の穿孔ロールを回転自在に支持するホルダーとを具備し、前記ホルダーは前記第二の穿孔ロールにかかる負荷を検知する手段を有し、前記負荷に応じて前記第二の穿孔ロールと前記第二の表面平滑ロールとの間隔を制御することにより、前記第二の微細孔群における微細孔の面積率及び深さを調整するのが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明のガス透過性積層プラスチックフィルムは、シーラント層側全体にそれと同程度の深さを有する微細孔を有するとともに、ベースフィルム層側にそれと同程度の深さを有する微細孔を部分的に帯状に有するので、両側の微細孔が連通する領域で貫通孔となる。そのため、(a) 厚肉であってもベースフィルム層側の微細孔を大きくすることなく貫通孔が得られるので、強度を低下させることなく積層プラスチックフィルムに十分なガス透過性を付与することができ、(b) ベースフィルム層側に帯状に形成する微細孔の面積率及び深さ、並びに帯状微細孔群の幅及び数を調節することにより、積層プラスチックフィルムのガス透過性を調整することができ、(c) 容器の蓋体として用いるときに外側にくるベースフィルム層に設けた微細孔は比較的小さいので、ベースフィルム層の外観が劣化しない(ベースフィルム層に設けた印刷に対して微細孔が目立たない)という利点を有する。このようにガス透過性を制御できる本発明のガス透過性積層プラスチックフィルムは、常時炭酸ガスを発生し続けるキムチ等の発酵食品用容器等の蓋体に用いるのに好適である。
【0014】
本発明のガス透過性積層プラスチックフィルムの製造装置は、シーラント層側の微細孔を形成する第一の穿孔装置と、ベースフィルム層側の微細孔を形成する第二の穿孔装置とを具備し、第二の穿孔装置における穿孔ロールの特性(硬質粒子の面積率及び大きさ、穿孔ロールの幅、間隔及び数、並びに穿孔ロールの押圧力等)を調節することにより、ベースフィルム層側の微細孔を調整できるので、所望のガス透過性を有する各種の積層プラスチックフィルムを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】ガス透過性積層プラスチックフィルムの製造装置を示す部分断面側面図である。
【図2】図1のガス透過性積層プラスチックフィルムの製造装置を示す部分平面図である。
【図3】図1のガス透過性積層プラスチックフィルムの製造装置を示す部分正面図である。
【図4】各第二の穿孔装置の詳細を示す平面図である
【図5】各第二の穿孔装置の詳細を示す正面図である。
【図6】第二の穿孔装置におけるホルダーの詳細を示す平面図である。
【図7】本発明の装置の作動状態を示す部分断面側面図である。
【図8】長尺積層プラスチックフィルムのベースフィルム層側に形成された複数の帯状の第二の微細孔群を示す平面図である。
【図9】図8のA-A断面図である。
【図10】図8のガス透過性長尺積層プラスチックフィルムを第二の微細孔群ごとに等間隔にスリットしてなるガス透過性積層プラスチックフィルムリボンを示す平面図である。
【図11】図10のガス透過性積層プラスチックフィルムリボンから容器の蓋体を作製する状態を示す拡大平面図である。
【図12】本発明のガス透過性積層プラスチックフィルムからなる蓋体を容器のフランジに熱シールしてなる密封容器の一例を示し、(a) は平面図で、(b) は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[1] 製造装置
図1〜図3に示すように、本発明のガス透過性積層プラスチックフィルムの製造装置は、長尺の積層プラスチックフィルム1の移動方向に沿って上流側から、(a) 第一の穿孔ロール11と、第一の穿孔ロール11に対向する位置に配置された第一の表面平滑ロール12とを具備する第一の穿孔装置10と、(b) 第二の表面平滑ロール22と、第二の表面平滑ロール22と対向するようにその軸線方向に沿って配列された複数の第二の穿孔ロール21とを具備する第二の穿孔装置20と、長尺の積層プラスチックフィルム1の移動を支える複数のガイドレール30(1つだけ図示)とを具備する。
【0017】
第一の穿孔装置10において、第一の穿孔ロール11の全面には鋭い角部を有するモース硬度が5以上の多数の硬質粒子が付着している。このような硬質粒子としてはダイヤモンド微粒子が好ましい。ダイヤモンド微粒子は、金属製ロール本体の表面にニッケルめっき等により付着している。硬質粒子の平均粒径は、微細孔を形成するシーラント層の厚さに応じて適宜決める。例えば厚さ45μmのシーラント層と同程度の深さの微細孔を形成するには、硬質粒子の平均粒径は50〜200μmが好ましい。第一の穿孔ロール11の表面における硬質粒子の割合(面積率)は、積層プラスチックフィルムに付与するガス透過性の程度に応じて適宜設定することができるが、一般に10〜50%であり、好ましくは15〜30%である。一方、第一の表面平滑ロール12としては、表面が平滑な金属ロールを使用することができる。十分な微細孔を形成するために、第一の穿孔ロール11及び第一の表面平滑ロール12の両方とも駆動されているのが好ましい。
【0018】
第二の穿孔装置20において、第二の表面平滑ロール22は第一の穿孔装置10の下流で装置の垂直フレーム41に回転自在に支持されている。図示の例では、5つの第二の穿孔ロール21が第二の表面平滑ロール22と対向するようにその軸線方向に沿って配列されているが、勿論第二の穿孔ロール21の数は限定的ではなく、必要に応じて適宜選択することができる。各第二の穿孔ロール21が第二の表面平滑ロール22の軸線方向及び半径方向(両ロールの間隙方向)に移動自在となるように、第二の穿孔ロール21を駆動する装置50は、第二の表面平滑ロール22の軸線方向に移動自在なテーブル60と、テーブル60のガイドレール62に沿って第二の表面平滑ロール22に向かって移動自在なキャリア70と、キャリア70に支持されており、第二の穿孔ロール21を回転自在に支持するとともに第二の表面平滑ロール22が受ける負荷を測定するホルダー80とを具備する。
【0019】
図1〜図4から明らかなように、テーブル60の下面には、装置の水平フレーム42の上面に設けられた一対のガイドレール43,44に係合する一対のガイド63,64が設けられている。ガイド63,64としては、直線運動(LM)ガイドを用いるのが好ましい。テーブル60にはまた、ガイドレール44と係合してテーブル60の軸線方向位置を固定するリニアクランプ55が設けられており、リニアクランプ55にはクランプアーム55aが設けられている。ガイドレール43,44に沿ってガイド63,64を所望の位置まで移動させた後、クランプアーム55aを回転させるとリニアクランプ55はガイドレール44に強固に係合するので、第二の穿孔ロールの駆動装置50を正確に位置決めできる。さらにテーブル60の下面にはフレームを介してキャリア70の駆動用モータ65が固定されている。なおテーブル60の上下位置を調整するために、水平フレーム42に上下動機構を設けても良い。
【0020】
テーブル60のガイドレール62に沿って移動自在なキャリア70は、テーブル60の垂直フレーム66に回転自在に支持されたネジ軸71と、ネジ軸71に螺合してネジ軸71の回転運動を直線運動に変換するナット部材72と、ナット部材72に固定されたキャリア本体73と、テーブル60のガイドレール62と係合するようにキャリア本体73の下面に設けられたガイド74とを有する。ネジ軸71とナット部材72はいわゆるボールネジを形成している。ネジ軸71の後端部には、駆動ベルトを介してモータ65に接続されたプーリ76が設けられている。ガイド74もLMガイドであるのが好ましい。
【0021】
図6に示すように、第二の穿孔ロール21のホルダー80は、第二の穿孔ロール21を回転自在に支持するようにホルダー本体82内に摺動自在に設けられた支持体81と、ホルダー本体82内に設けられたロードセル83と、コイルバネ84を介してキャリア70の垂直フレーム77に固定されたロッド85とを具備する。ホルダー本体82に支持体81の回転を防止する係止部材(図示せず)を設けても良い。支持体81の先端部は二股になっており、第二の穿孔ロール21のシャフト21aを受承してネジ又はピンにより固定する。支持体81の後端はロードセル83に当接し、ロードセル83は第二の穿孔ロール21が受ける負荷を測定する。第二の穿孔ロール21が受ける負荷が所定のレベルを超えるとコイルバネ84が圧縮され、第二の表面平滑ロール22に対する第二の穿孔ロール21の押圧力は低減し、長尺積層プラスチックフィルム1や装置の損傷を防止することができる。
【0022】
この装置により長尺積層プラスチックフィルム1に微細孔を加工する場合、まずシーラント層を上にして(シーラント層を第一の穿孔ロール11側にして)、長尺積層プラスチックフィルム1を第一の穿孔装置10、第二の表面平滑ロール22及びガイドレール30に掛ける。第一の穿孔ロール11と第一の表面平滑ロール12との間隙を調節して、第一の穿孔ロール11の硬質粒子がシーラント層を十分に貫通するがベースフィルム層をほとんど穿孔しないようにする。
【0023】
次にテーブル60のガイド63,64をフレーム42上のガイドレール43,44に沿って第二の表面平滑ロール22の軸線方向所望の位置まで移動させた後、リニアクランプ55によりテーブル60の位置を固定する。さらにモータ65を作動させ、ベルト75を介してネジ軸71を回転させることにより、図7に示すように、各第二の穿孔ロール21を第二の表面平滑ロール22に対して所望の間隙が得られるまで前進させる。所望の間隙は第二の穿孔ロール21にかかる負荷により判定できるので、ロードセル83から得られる信号に従って第二の穿孔ロール21の前進位置を決める。図7に示すように、第二の穿孔ロール21の中心と第二の表面平滑ロール22の中心とを連結する直線は水平であるのが好ましい。この状態で長尺積層プラスチックフィルム1が第一及び第二の穿孔装置10,20を通過すると、シーラント層全面に第一の微細孔群が形成されるとともに、ベースフィルム層に帯状の第二の微細孔群が形成される。
【0024】
[2] ガス透過性積層プラスチックフィルム
図8及び図9はこのようにして得られた長尺のガス透過性積層プラスチックフィルムの一例を示す。積層プラスチックフィルム1は比較的薄いベースフィルム層1aと、比較的厚いシーラント層1bとからなり、シーラント層1bの側には第一の穿孔装置10により形成された深い微細孔2a,2b・・・からなる第一の微細孔群2があり、ベースフィルム層1aの側には第二の穿孔装置20により形成された浅い微細孔3a,3b・・・からなる第二の微細孔群3が帯状にある。
【0025】
(a) ベースフィルム層
ベースフィルム層1aは、容器用蓋体に用いられたときに蓋体の表面にくる層であり、通常種々の印刷が施されているので綺麗な外観を保持する必要がある。そのため、薄くても高強度で良好な印刷性を有する樹脂により形成されている。このような樹脂としてポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステルフィルムが好適である。PETフィルムはエチレングリコールとテレフタル酸とからなる飽和ポリエステルフィルムである。ベースフィルム層1aの厚さは10〜30μmであるのが好ましく、12〜25μmであるのがより好ましく、12〜20μmであるのが最も好ましい。
【0026】
ベースフィルム層1aに設ける微細孔3a,3b・・・はベースフィルム層1aと同程度の深さを有する必要がある。ここで「同程度の深さ」とは、微細孔3a,3b・・・の平均深さがベースフィルム層1aの厚さの1〜1.3倍であることを意味する。好ましくは1〜1.2倍であり、より好ましくは1〜1.1倍である。第二の微細孔群(帯状領域)3における微細孔3a,3b・・・の面積率(第二の微細孔群3の面積に対する微細孔3a,3b・・・の開口面積の合計の割合)は10〜50%であるのが好ましく、15〜30%であるのがより好ましい。第二の微細孔群(多数の微細孔により形成された帯状領域)3の幅は、第二の穿孔ロール21のロール幅により決まる。従って、積層プラスチックフィルム1全体に対する第二の微細孔群(帯状領域)3の面積率は広い範囲で調整可能であり、例えば5〜30%、好ましくは5〜20%とする。
【0027】
(b) シーラント層
容器本体に熱シールするのに用いるシーラント層1bは、例えば低分子量ポリエチレン、無延伸ポリプロピレン、アイオノマー樹脂等により形成することができる。また蓋体を容器本体から容易に剥離できるように、シーラント層1bはイージーピール性を有するのが好ましい。そのために、シーラント層1bは比較的弱い熱接着性を有するのが好ましい。またシーラント層1bを、例えばエチレンと炭素数3〜18のα−オレフィンとを共重合して得られる直鎖状エチレン・α−オレフィン共重合体[密度:0.870〜0.910 g/cm(JIS K6922)、MFR(JIS K6921、190℃、2.16 kg荷重):1〜100 g/10分]及びポリスチレンを含む樹脂組成物により形成しても良い。これにより容器本体のシール面がポリエチレン又はポリスチレンのいずれであっても、蓋体の熱シールにより密封性と易開封性を両立できる。
【0028】
十分な熱シールを確保するために、シーラント層1bは20〜60μmとベースフィルム層1aより厚いのが好ましい。シーラント層1bのより好ましい厚さは30〜50μmである。シーラント層1bとベースフィルム層1aとの厚さ比が1.5/1〜5/1の範囲内にあると、シーラント層1b側の微細孔を大きくし、ベースフィルム層1a側の微細孔を小さくすることによりベースフィルム層1aの外観を劣化させずにガス透過性を確保するという本発明の効果が十分に得られる。シーラント層1bとベースフィルム層1aとの好ましい厚さ比は2/1〜4/1である。
【0029】
シーラント層1bに設ける微細孔2a,2b・・・はシーラント層1bと同程度の深さを有する必要がある。ここで「同程度の深さ」とは、微細孔2a,2b・・・の平均深さがシーラント層1bの厚さの0.95〜1.1倍であることを意味する。好ましくは1〜1.05倍であり、より好ましくは1倍である。シーラント層1bはベースフィルム層1aより著しく柔軟であるので、シーラント層1bだけに微細孔を形成するのは比較的容易である。微細孔2a,2b・・・の面積率(フィルム全体の面積に対する微細孔2a,2b・・・の開口面積の合計の割合)は10〜50%であるのが好ましく、15〜30%であるのがより好ましい。
【0030】
(c) 貫通孔
ベースフィルム層1aに設けた第二の微細孔群(帯状領域)3における微細孔の一部は、シーラント層1bに帯状に設けた第一の微細孔群2における微細孔と連通し、貫通孔となる。図9では第一の微細孔群2における微細孔2a・・・と第二の微細孔群(帯状領域)3における微細孔3a・・・とが連通している。貫通孔が形成される程度は、第二の微細孔群(帯状領域)3における微細孔の面積率及び深さ、並びに第二の微細孔群(帯状領域)3の幅及び数により調整することができる。
【0031】
(d) ガス透過性
ガス透過性積層プラスチックフィルム1のガス透過性として例えば酸素ガス透過量は、1,000〜2,000,000 cc/m2/24時間の範囲で制御することができる。酸素ガス透過量は、ガス透過性積層プラスチックフィルム1の袋を形成し、内部を100%窒素ガス(1気圧)で充満させ、25℃の大気中に放置したあと、袋内の酸素ガス濃度を測定するパウチ法により測定する。酸素ガス透過量は単位面積(1m2)当たり24時間で透過する酸素ガスの量(cc)で表す。炭酸ガス透過量は酸素ガス透過量の約2〜3倍である。
【0032】
(e) 容器用蓋体
図8に示すように複数の帯状の第二の微細孔群3を有する長尺のガス透過性積層プラスチックフィルム1をスリットし、例えば図10に示すように一本の第二の微細孔群3だけを有するリボン4を形成する。このリボン4は、蓋体用の図案及び文字が繰り返し印刷されたパターンを一列に有するので、図11に示すようにパターンと整合する位置で熱シール加工及び打ち抜きを同時に行い、蓋体5が熱シールされた容器を得る。この例では各蓋体5に一本の第二の微細孔群3を有するが、勿論二本以上の第二の微細孔群3を有しても良い。図11から明らかなように、蓋体5はガス透過性積層プラスチックフィルム1をスリットしてなるリボン4の一部(特に幅方向において)から形成するので、蓋体5における第二の微細孔群(帯状領域)3の面積率は大きくなり、一般に10〜50%であり、好ましくは15〜40%である。
【0033】
図12は蓋体5を容器6のフランジに熱シールしてなる密封容器の一例を示し、(a) は平面図で、(b) は側面図である。蓋体5の裏面側のシーラント層1bには全面に微細孔が形成されているが、問題なくプラスチック製容器6のフランジ6aに熱シールすることができる。5aは蓋体5の熱シール部を示す。この例では第二の微細孔群3は蓋体5のタブ5bを通っているが、第二の微細孔群3の位置及び数は限定的でない。プラスチック製容器6に蓋体5を熱シールしてなる容器は、第二の微細孔群3によりガス透過性を調整できるので、キムチ等の発酵食品用に好適である。
【0034】
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0035】
実施例1
図1に示す装置を用いて、厚さ12μmのPETフィルム層と厚さ50μmのポリエチレンシーラント層とからなる積層プラスチックフィルム1に対して、シーラント層側に第一の微細孔群2を形成するとともに、PETフィルム層側に第二の微細孔群3を形成した。第一の微細孔群2における微細孔の平均開口径は20μmであり、深さは50μmであり、面積率は30%であった。第二の微細孔群(帯状領域)3における微細孔の平均開口径は5μmであり、深さは12μmであり、面積率は30%であり、また第二の微細孔群(帯状領域)3の幅は15 mmであり、フィルム1の全面積に対する第二の微細孔群(帯状領域)3の面積率は7.5%であった。
【0036】
得られたガス透過性積層プラスチックフィルム1のベースフィルム1aの側(蓋体としたときに表面となる側)は微細孔が目立たず、綺麗な外観を保持していた。このガス透過性積層プラスチックフィルムの酸素ガス透過量をパウチ法により測定した結果、30万cc/m2/24時間であった。またこのガス透過性積層プラスチックフィルムからなる複数の蓋体をPET製容器にそれぞれ熱シールした後、タブを持ち上げたところ、いずれも破断することなく綺麗に容器から剥離できた。
【0037】
実施例2
第二の穿孔ロール21を交換して第二の微細孔群(帯状領域)3の幅を20 mmに変更した以外実施例1と同様にしてガス透過性積層プラスチックフィルム1を製造した。フィルム1の全面積に対する第二の微細孔群(帯状領域)3の面積率は10%であり、パウチ法により測定した酸素ガス透過量は40万cc/m2/24時間であった。
【0038】
実施例3
第二の穿孔ロール21を交換して第二の微細孔群(帯状領域)3における微細孔の面積率を40%に変更した以外実施例1と同様にしてガス透過性積層プラスチックフィルム1を製造した。パウチ法により測定した酸素ガス透過量は40万cc/m2/24時間であった。
【0039】
比較例1
図1に示す装置において第一の穿孔装置10だけを使用し、シーラント層1bの側から積層プラスチックフィルム1を貫通する微細孔を形成した。積層プラスチックフィルム1全面に微細孔を形成したにもかかわらず、実施例1と同じ方法により測定した酸素ガス透過量は10万cc/m2/24時間と少なかった。これは、微細孔の多くが積層プラスチックフィルム1を貫通していないためであると考えられる。またベースフィルム側1aは微細孔が目立ち、綺麗な外観を保持していなかった。その上、このガス透過性積層プラスチックフィルムからなる複数の蓋体をPET製容器にそれぞれ熱シールした後、タブを持ち上げたところ、破断するものがあった。
【0040】
比較例2
図1に示す装置において第二の穿孔装置20だけを使用し、ベースフィルム層1aの側から積層プラスチックフィルム1を貫通する微細孔からなる帯状の第二の微細孔群3を形成した。第二の微細孔群(帯状領域)3における微細孔の平均開口径は30μmであり、面積率は30%であり、また第二の微細孔群(帯状領域)3の幅は15 mmであり、フィルム1の全面積に対する第二の微細孔群(帯状領域)3の面積率は7.5%であった。実施例1と同じ方法により測定した酸素ガス透過量は1万cc/m2/24時間と少なかった。またベースフィルム側1aは微細孔が目立ち、綺麗な外観を保持していなかった。その上、このガス透過性積層プラスチックフィルムからなる複数の蓋体をPET製容器にそれぞれ熱シールした後、タブを持ち上げたところ、第二の微細孔群3に沿って破断するものがあった。
【符号の説明】
【0041】
1・・・積層プラスチックフィルム
1a・・・ベースフィルム層
1b・・・シーラント層
2・・・第一の微細孔群
2a、2b・・・第一の微細孔群における微細孔
3・・・第二の微細孔群
3a、3b・・・第二の微細孔群における微細孔
5・・・蓋体
5a・・・熱シール部
5b・・・タブ
6・・・容器
6a・・・フランジ
10・・・第一の穿孔装置
11・・・第一の穿孔ロール
12・・・第一の表面平滑ロール
20・・・第二の穿孔装置
21・・・第二の穿孔ロール
22・・・第二の表面平滑ロール
30・・・ガイドレール
41・・・垂直フレーム
42・・・水平フレーム
43,44・・・水平フレームのガイドレール
50・・・第二の穿孔ロールの駆動装置
55・・・リニアクランプ
60・・・テーブル
62・・・テーブルのガイドレール
63,64・・・テーブルのガイド
65・・・キャリア駆動用のモータ
66・・・垂直フレーム
70・・・キャリア
71・・・ネジ軸
72・・・ナット部材
73・・・キャリア本体
74・・・キャリアのガイド
75・・・駆動ベルト
76・・・プーリ
77・・・垂直フレーム
80・・・第二の穿孔ロールのホルダー
81・・・支持体
82・・・ホルダー本体
83・・・ロードセル
84・・・コイルバネ
85・・・ロッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースフィルム層とシーラント層とからなるガス透過性積層プラスチックフィルムであって、前記シーラント層側に形成された第一の微細孔群は前記シーラント層全面を覆うとともに前記シーラント層と同程度の深さを有し、前記ベースフィルム層側に形成された第二の微細孔群は前記ベースフィルム層を部分的に帯状に覆うとともに前記ベースフィルム層と同程度の深さを有し、前記第一及び第二の微細孔群が重複する領域で両微細孔は連通することにより前記積層プラスチックフィルムを貫通し、もってガス透過性を付与することを特徴とするガス透過性積層プラスチックフィルム。
【請求項2】
請求項1に記載のガス透過性積層プラスチックフィルムにおいて、前記ベースフィルム層は10〜30μmの厚さを有し、前記シーラント層は20〜60μmの厚さを有することを特徴とするガス透過性積層プラスチックフィルム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のガス透過性積層プラスチックフィルムにおいて、前記ガス透過性は、前記第二の微細孔群における微細孔の面積率及び深さ、並びに前記第二の微細孔群の幅及び数により調整されていることを特徴とするガス透過性積層プラスチックフィルム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のガス透過性積層プラスチックフィルムを製造する装置であって、前記積層プラスチックフィルムの移動方向に沿って配置された第一及び第二の穿孔装置を有し、(a) 前記第一の穿孔装置は、鋭い角部を有する多数の硬質粒子が表面に付着しているとともに前記シーラント層側に配置された第一の穿孔ロールと、前記第一の穿孔ロールに対向する位置に配置された第一の表面平滑ロールとを具備し、(b) 前記第二の穿孔装置は、前記シーラント層側において定位置で回転する第二の表面平滑ロールと、鋭い角部を有する多数の硬質粒子が表面に付着しているとともに前記第二の表面平滑ロールと対向するようにその軸線方向に沿って配列された複数の第二の穿孔ロールとを具備し、前記積層プラスチックフィルムが前記第一の穿孔ロールと前記第一の表面平滑ロールとの間隙、及び前記第二の穿孔ロールと前記第二の表面平滑ロールとの間隙を通過すると、前記シーラント層の全面に第一の微細孔群が形成されるとともに、前記ベースフィルム層に部分的に複数の第二の微細孔群が帯状に形成されることを特徴とするガス透過性積層プラスチックフィルムの製造装置。
【請求項5】
請求項4に記載のガス透過性積層プラスチックフィルムの製造装置において、前記第二の穿孔ロールが前記第二の表面平滑ロールに対して可動であり、もって前記第二の微細孔群の幅及び数、並びに前記第二の微細孔群における微細孔の面積率及び深さを調整できることを特徴とするガス透過性積層プラスチックフィルムの製造装置。
【請求項6】
請求項5に記載のガス透過性積層プラスチックフィルムの製造装置において、前記第二の穿孔ロールを駆動する装置は、前記第二の表面平滑ロールの軸線方向に移動自在なテーブルと、前記テーブルのガイドに沿って前記第二の表面平滑ロールの方向に移動自在なキャリアと、前記キャリアに支持されて前記第二の穿孔ロールを回転自在に支持するホルダーとを具備し、前記ホルダーは前記第二の穿孔ロールにかかる負荷を検知する手段を有し、前記負荷に応じて前記第二の穿孔ロールと前記第二の表面平滑ロールとの間隔を制御することにより、前記第二の微細孔群における微細孔の面積率及び深さを調整することを特徴とするガス透過性積層プラスチックフィルムの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−35479(P2012−35479A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−176731(P2010−176731)
【出願日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(391009408)
【Fターム(参考)】