説明

ガス遮断装置

【課題】装置内の流路または制御部内に水等が浸入したことを検知し、ガスを遮断できるガス遮断装置を提供することを目的とする。
【解決手段】流路4に沿って配置した振動子6,7間の超音波の伝搬速度で流量検出を行う流量検出手段8の信号増幅度を判定する増幅度判定手段18と、伝搬時間を判定する伝搬時間判定手段20と、計測条件を変更する計測条件設定手段16と、下限判定値以下の増幅度で異常に短い伝搬時間を検出した場合、流路内浸水と推定する流路内異常判定手段22と、上限判定値以上の増幅度と判定時に起動する計時手段23と、計時中に最大の計測条件に設定された比率を求める計測比率演算手段24と、増幅度が上限判定値以上で計測比率が所定値以上と判定時流量検出手段8の端子間インピーダンスが異常と推定するインピーダンス推定手段25と、異常時にガス供給を遮断する遮断手段27で構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス遮断装置内部に何らかの原因により雨水等が浸水したり、或いはガス遮断装置内部の内蔵されている流路内が浸水した場合、電子部品等の誤動作に起因するによる誤計測や誤遮断を防止するガス遮断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のガス遮断装置としては、図5、図6、或いは図7に示すようなものがあった(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
この特許文献1のガス遮断装置について図5を用いて構成を説明する。図5はガスを家庭に供給するためのガス導管の経路とガス遮断装置とを示す。
【0004】
ガス導管の経路は、ガス本管100、分岐管102、分岐管102をガス本管100と連通状態で接続するバルブチー103、及び管継手104、並びにガス供給開閉バルブ105付近で分岐管102と接続されたガス遮断装置106を含んでいる。ガス導管においては、分岐管102は一般に薄肉の材料からなるため、水道管から漏れた流水などが砂を含んだ状態で衝突すると、この分岐管102の管壁はこの砂を含んだ流水の浸食作用(サンドブラスト現象)によって穿孔される場合がある。
【0005】
管継手104は、分岐管102とバルブチー103の枝管部とを外嵌する形で接続されている。従って、管継手104はその内面部に拡径部を形成している。この管継手104の拡径部内には、水膨潤材107が配設されている。水膨潤材107はポリウレタン部と高給水性樹脂としての粉末状のポリアクリル酸塩系高吸水製ボリマーと硬化剤としてのMOCA(メチレン−ビスーオルトクロルアニリン)の水溶液とを混連し球状に整形したものである。
【0006】
図5で、まだ吸水していない状態の水膨潤材107が実線の円で示されており、吸水して体積膨張を起し、管継手104の拡径部内に密接した状態の水膨潤材107を破線の円で示している。破線の状態はガス本管1内に水が浸入した場合、水膨潤材107によってガスと浸入水の流路が遮断されている。水膨潤材107には分岐管102の屈曲部を通過できる程度の可塑性を備えた金属製の線材107aのカギ状に折り曲げられた一端が挿入され、他端107bがガス開閉バルブ5近傍に連結されている。
【0007】
一方、前述の例はガス遮断装置とつながるガス導管内が浸水した場合であるが、ガス遮断装置内部、即ちガス遮断装置の内側で内蔵している流量計測部の外側が雨水等で浸水した場合について図6、図7を用いて説明する。
【0008】
図6はガス遮断装置108とアダプタ109との正面図を示し、図6はその側面から見た断面図である。アダプタ109はガス遮断装置108に制御回路110を搭載しかつガス遮断装置108に着脱可能になっている。
【0009】
ガス遮断装置108は、ガス流入口108aとガスを使用する器具にガスを供給する供給口108bを備えている。ガス遮断装置108内部にはガス流量を計測する計測手段を備えており、流入口108aから流入し供給口108bから供給されるガス流量を計測する。ガス遮断装置108の正面に表示手段108cが設けられ、ガス使用量の積算値等が表示される。又異常検出時ガスの供給を遮断するための遮断弁が設けられ、異常検出しガス供給を停止する遮断状態から復帰するための復帰操作部108dが設けられている。端子蓋108eを取り外すと通信装置を接続可能な通信端子等を有する接続端子108jが現れる。ガス遮断装置108に所定の機能を追加可能な制御回路110を接続すると、種々の機能、例えば通信装置で無線通信を行う機能であったり、所定日時より一定時間毎のガス使用量を記憶する機能等がある。
【0010】
アダプタ109は図7に示すように、ケース部は箱状の形状を有しており、ケース本体部109bと外蓋部109cと中蓋部109dとで構成されている。このケース内に制御回路110を収納され、アダプタ部109を構成する。
【0011】
ケース本体部109bは側面の一部を開口部としており、ここより制御回路110を収納する。中蓋部109dはケース本体部109bの開口部を覆い、脱着可能である。外蓋部109cは中蓋部109dを更に覆い、脱着が可能である。図6に示すように、ケース本体部109bの下部に凹部109eを設け、中蓋部109dの下部に対応した凸部109fを設け、はめ込んでいる。そして固定部材(ネジ等)109aで、固定する。ケース本体部109bと中蓋部109dとの間には密閉部材(Oリング等)109gを用いて密閉し、雨水がケース本体109b内部に浸入するのを抑制する。
【0012】
中蓋部109dには制御回路110の配線108hを引き出す配線孔109h設けられ、配線108hは制御回路110から中蓋部109dの配線孔109hを通り、更にアダプタ上部の配線シール部材109j付の配線孔109kを通ってガス遮断装置108の下部に設けられた配線孔108kを通り、更にガス遮断装置用制御回路108gに設けられた接続端子108jに接続される。制御回路110と接続端子108jとを接続する配線108hは、アダプタ109の上部より引き出されており、端子蓋108eをガス遮断装置108に固定部材108fで取り付けることにより、ガス遮断装置108内に収納されて、外部に露出しない構造としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平9−166263号公報
【0014】
【特許文献2】特開2005−61864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、上記従来の構成では、ガス本管と水道配管とが並行して設置された時、水道配管に何らかの原因でピンホール上の穴ができ、高圧の水が噴出し周辺の土砂と共にガス導管に当たり、ガス導管内にサンドブラスト現象などにより穴が開き水が浸入する場合があるが、分岐管から浸入した場合にはガス遮断装置側に水が簡単に浸入したり、或いは水膨潤材で浸入阻止しようとしても圧力で隙間より浸入してきたりするが、結果ガス遮断装置内迄に水が浸入してきた場合、計測流路内に水がたまったりする場合がある。又、設置する際工事担当者が誤って通信装置や警報器或いは制御装置からの配線を接続する為前面の端子蓋を開け接続した後に、端子蓋を固定部材でとめる際、2箇所を固定すべきところを1箇所のみ固定し、端子蓋とガス遮断装置との間に隙間が生じ、雨水等が浸入し、ガス遮断装置本体内に水がたまり、更に配線孔を通りアダプタ内部に雨水が入り、制御装置が浸水状態になることがある。ガス遮断装置内部、及び内蔵された流路内部が浸水すると誤って流量を計測したり、或いは誤って保安判定しガス通路が遮断されたり等の不具合が発生することがあり、ガス需要家にとって使い勝手が悪く不便であり、万が一の場合に保安確保ができないという安全性の面で課題を有している。
【0016】
本発明は、上記課題を解決するもので、何らかのトラブルによりガス遮断装置内部、更にガス遮断装置に内蔵されている流路内が浸水状態となった場合、早期に検出しガス事業者のセンターに通報したり、ガス供給を停止し保安を確保する安全性の高いガス遮断装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記従来の課題を解決するために、本発明のガス遮断装置は、流路と、前記流路を流れるガスを遮断する遮断手段と、前記流路に沿って配置した振動子対と、前記振動子対間の超音波の伝搬時間をもとにガスの流量を演算すると共に異常時に前記遮断手段でガスを遮断する制御手段とからなり、前記制御手段は、流量を検出する流量検出手段と、前記流量検出手段の検出値より瞬時流量値を換算する流量演算手段と、前記流量検出手段で調整した信号増幅度を判定する増幅度判定手段と、前記流量検出手段で調整した増幅度の上限判定値及び下限判定値を設定する増幅度設定手段と、前記流量検出手段で検出した伝搬時間を判定する伝搬時間判定手段と、前記流量演算手段で求めた流量が変動しているのを検出すると安定した流量値を求める計測条件に設定変更する計測条件設定手段と、前記増幅度判定手段で下限判定値以下の増幅度で前記伝搬時間判定手段で異常に短い伝搬時間と判定された場合流路内浸水と推定する流路内異常判定手段と、前記増幅度判定手段で上限判定値以上と判定した時に起動する計時手段と、前記計時手段で計時中に流量変動を安定化させる最大の計測条件に設定された計測条件比率を求める計測比率演算手段と、前記増幅度判定手段で上限判定値以上で前記計測比率が所定値以上の場合前記流量検出手段の端子間インピーダンスが異常と推定するインピーダンス推定手段と、前記流量演算手段で求めた瞬時流量より平均流量を求める平均流量演算手段と、求めた平均流量から異常の有無を判定する異常判定手段とを備え、前記流路内異常判定手段或いは前記インピーダンス推定手段或いは前記異常判定手段で異常判定成立時、前記遮断手段によりガスの供給を遮断する構成としたものである。
【0018】
上記発明によれば、ガス遮断装置内部、或いはガス遮断装置内蔵の流路内がなんらかの原因で浸水した場合、まず流路内部が浸水すると流量検出時の超音波信号の伝搬時間が短くなり、又浸水中の流路を信号計測する為増幅度判定手段で判定する増幅度が小さいのを検出すると流路内異常と判定し遮断信号を出力するが、一方ガス遮断装置内部で流路外部が雨水等で浸水状態になった場合流量検出信号の振幅が小さいため増幅度が高くなり、更に流量検出手段が検出した流量値が変動していると流量を安定的に計測するために変動対応の計測条件に変更するが、この所定増幅度以上で変動対応の計測条件への設定比率が所定以上と判定すると何らかの原因で流量検出手段の端子間インピーダンスが低下異常と推定し遮断信号を出力するが、ガス遮断装置の内部、及び内臓の流量計測手段内部が浸水状態と判定でき、異常な流量計測状態が継続するのを防止でき、かつ安全性が高い。
【発明の効果】
【0019】
本発明のガス遮断装置は、何らかの原因で内蔵の流量計測部内に水等が入り浸水状態になった場合、或いはガス遮断装置内に雨水等が浸水した場合、その異常状態を正しく検出し、器具へのガス供給を停止するので、ガス需要家が器具使用する際にガス遮断装置が安全かつ正常な状態で監視できなくなったのに監視され続けるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態1におけるガス遮断装置の概略構造図
【図2】同ガス遮断装置の制御ブロック図
【図3】同ガス遮断装置での実験データ1を示すグラフ
【図4】同ガス遮断装置での実験データ2を示すグラフ
【図5】従来の第1のガス遮断装置の断面図
【図6】従来の第2のガス遮断装置の正面図
【図7】従来の同ガス遮断装置の断面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、流路と、前記流路を流れるガスを遮断する遮断手段と、前記流路に沿って配置した振動子対と、前記振動子対間の超音波の伝搬時間をもとにガスの流量を演算すると共に異常時に前記遮断手段でガスを遮断する制御手段とからなり、前記演算部は、流量を検出する流量検出手段と、前記流量検出手段の検出値より瞬時流量値を換算する流量演算手段と、前記流量検出手段で調整した信号増幅度を判定する増幅度判定手段と、前記流量検出手段で調整した増幅度の上限判定値及び下限判定値を設定する増幅度設定手段と、前記流量検出手段で検出した伝搬時間を判定する伝搬時間判定手段と、前記流量演算手段で求めた流量が変動しているのを検出すると安定した流量値を求める計測条件に設定変更する計測条件設定手段と、前記増幅度判定手段で下限判定値以下の増幅度で前記伝搬時間判定手段で異常に短い伝搬時間と判定された場合流路内浸水と推定する流路内異常判定手段と、前記増幅度判定手段で上限判定値以上と判定した時に起動する計時手段と、前記計時手段で計時中に流量変動を安定化させる最大の計測条件に設定された計測条件比率を求める計測比率演算手段と、前記増幅度判定手段で上限判定値以上で前記計測比率が所定値以上の場合前記流量検出手段の端子間インピーダンスが異常と推定するインピーダンス推定手段と、前記流量演算手段で求めた瞬時流量より平均流量を求める平均流量演算手段と、求めた平均流量から異常の有無を判定する異常判定手段とを備え、前記流路内異常判定手段或いは前記インピーダンス推定手段或いは前記異常判定手段で異常判定成立時、前記遮断手段によりガスの供給を遮断する構成としたものである。
【0022】
そして、流量検出手段で流量信号を検出する場合信号が小さいと増幅すると共に、流量値が変動すると安定計測する為に変動対応の計測条件に変更するが、このような状態を検出すると流量検出手段の端子間インピーダンスが何らかの原因で低下したと推定し、流量検出手段外部が雨水等の浸入で浸水状態となったと判定するが、一方ガス配管内流路内に浸入した水が流量計測する流量検出手段のある流路に浸入し始めると、流量検出手段の信号が更に不安定となり増幅度が高くなり、又浸水量が増大すると逆に小さくなり、更に流量計測信号である伝搬時間が通常の気体中と異なり短くなり流量検出手段で異常な流量変動を検出し始めるが、このような変化を流路内異常判定手段で検出すると流路内異常と判定し、ガス器具へのガス供給を停止するので、異常な流量計測状態が継続するのを停止することで不安全になるのを防止でき、かつ信頼性が高い。
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0024】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1におけるガス遮断装置の概略構造図を示す図、図2は同ガス遮断装置に搭載される制御装置の制御ブロック図、図3及び図4は実験結果である。
【0025】
図1で、ガス遮断装置1は各家庭等に設置され、このガス遮断装置1を経由した後各家庭で使用する種々のガス器具が設置された場所まで配管され、ガスが供給される。そのガス遮断装置1の内部構成は流路4と制御装置5とがある。流路4はガス遮断装置1の流入口1aより入口側流路4aを介し、底部の流路4bを経て、出口側流路4cを介し、供給口1bにつながっている。流路4には超音波信号を送受信する上流側振動子6と下流側振動子7とが流れ方向に対抗して取り付けられている。各々の上流側振動子6、下流側振動子7は制御装置5と接続する端子6a、7aがある。
【0026】
図2は制御装置の制御ブロック図である。流量検出手段8は上流側振動子6、下流側振動子7、切替手段9、送信手段10、受信手段11、伝搬時間計測手段12、振幅判定手段13、及び増幅度調整手段14とからなる。超音波を送信または受信する上流側振動子6と受信または送信する下流側振動子7が切替手段9によって送受信の切り換えが可能になっている。この上流側振動子6或いは下流側振動子7に超音波信号を出力する送信手段10が接続され、切替手段9によって上流側振動子6或いは下流側振動子7を介して超音波信号を受信手段11で受信する。まず上流から下流に超音波を送信する。送信手段10で超音波信号を送信し、下流側振動子7で受信し、受信手段11からの受信信号を伝搬時間計測手段12で伝搬時間を計測する。
【0027】
次に、切換手段9で下流から上流に向かって超音波信号を送信し、伝搬時間を計測する。そして、上流側振動子6と下流側振動子7との超音波の伝搬時間差は予め定めた周期毎(例えば2秒)に求められる。受信手段11で受信した超音波信号は振幅判定手段13で適正な大きさの振幅レベルかを判定するが、適正な範囲を逸脱した場合適正な大きさの範囲になるように増幅度調整手段14で調整する。調整された増幅度で次回計測時送信手段10より超音波信号を送信する。増幅度調整手段14は例えば受信波のピーク電圧が例えば500mV程度になるように利得値1から100の範囲で増幅度の制御が可能である。
【0028】
そして、所定周期毎計測し求めた伝搬時間は流量演算手段15で瞬時流量値に換算される。計測条件設定手段16は求めた瞬時流量の変動状態より流路4内の流れ状態を判定し、計測回数や計測周期等の計測条件を変えて常に安定した流量を計測できるように流量検出手段8を制御する。例えば圧力変動等により流路を流れるガス気体の流速が変化し流量値が変化するが、流量変化周期全般を流量計測できるような計測条件を複数有し、圧力変動レベルに応じた流量変化を安定的に計測できるように計測条件を段階的に変更可能である。又瞬時流量値は平均流量演算手段17に入力され、所定個数の瞬時流量値を集合して平均流量値として算出される。
【0029】
流量検出手段8の受信手段11で検出した超音波信号の振幅レベルは増幅度調整手段14で調節され、調節された増幅度は増幅度判定手段18で監視される。増幅度判定手段18は、増幅度設定手段19で設定された増幅度の上限判定値と下限判定値とを元に判定される。例えば流量が大きくなると超音波信号受信感度が低下し振幅レベルが小さくなるので増幅度を大きく制御する傾向がある。流量が低い状態では、増幅度は大流量に比較し小さくてすむが、低流量で増幅度判定手段18の増幅度が所定値以上の場合、流量検出手段8の異常監視を行う。
【0030】
流量検出手段8の伝搬時間計測手段12で計測された伝搬時間は伝搬時間判定手段20で判定される。予め伝搬時間監視値設定手段21には使用する流体中での伝搬速度から求めた伝搬時間の上限値或いは下限値設定されており、伝搬時間計測手段12で計測した伝搬時間値が使用される流体中の計測値か否かを判定する。更に増幅度判定手段18の増幅度や伝搬時間判定手段20の伝搬時間値は流路内異常判定手段22で判定される。
【0031】
ガス遮断装置1の配管流路(図示せず)に何らかの原因、例えばガス配管のそばに水道配管等が併設され、継ぎ手等の漏水がガス配管にあたり、いわゆるサンドブラスト現象がおきガス配管内に浸入する場合がある。その浸入水がガス遮断装置1の流量検出手段8の上流側振動子6や下流側振動子7が対向して設置されている流路に浸入してきた場合、超音波信号が水面等に反射したり、乱反射をおこしたりするので受信感度が変化し、流量検出手段8の検出信号レベルは変動する。
【0032】
例えば、流路が次第に浸水してくると、水中を通るルートや気体中を通るルートができ、超音波信号の伝搬速度が異なり受信側の上流側振動子6或いは下流側振動子7への到達時間がばらばらとなり、受信信号レベルが小さくなり、結果増幅度調整手段14は信号レベルを大きくしようとして増幅度が高くなる。又流路が大分浸水すると水中伝搬による受信信号レベルで検出できるようになり、流量検出手段8の上流側振動子6或いは下流側振動子7が水中下にあると受信感度が逆に高くなり、信号振幅レベルが大きくなり、増幅度調整手段14は逆に増幅度を小さく制御し、結果増幅度判定手段18が増幅度下限判定値より小さい状態と判定するので、流路内異常判定手段22では流路内浸水と推定し遮断信号を出力する。
【0033】
次に、ガス遮断装置1内部の制御装置5や流量検出手段8の上流側振動子6や下流側振動子7の設置されている流路4、特に底部の流路4bの外側が浸水すると、上流側振動子6及び下流側振動子が水没するため端子間インピーダンスが低下し受信手段11の受信検出信号レベルが小さくなり、増幅度調整手段14により増幅度を大きく制御される。増幅度判定手段18が増幅度設定手段19で設定された増幅度上限判定値を超えると計時手段23が起動開始する。上流側振動子6や下流側振動子7の端子間インピーダンスが低下するとノイズの影響を受けやすく受信信号レベルが変動し、結果瞬時流量が変動する。計測条件設定手段16は流量変動レベルに応じて、複数の計測条件を設定変更する。計測回数や計測周期等の計測条件を変えて流速信号の変動周期全体を計測し、常に安定して流速で流量計測できるように、いわゆる圧力変動を引き起こすGHP(ガスヒートポンプ式冷暖房機)等を使用した場合と同じ状態となり、計測条件が変化する。計時手段23で所定時間を計時する間、計測比率演算手段24は、計測条件設定手段16が最大の設定値で計測する回数とそれ以外の設定値で計測する回数を計数し、最大の設定値での計測回数の比率を演算する。インピーダンス推定手段25は、この比率が所定値以上であることを検出すると流路4が何らかの原因で水没し、異常状態(インピーダンスが異常である)と判定し、遮断信号を出力する。
【0034】
更に異常判定手段26は、求められた平均流量で使用器具の監視を行う。異常判定手段26には、流量域毎に対応した使用時間の制限時間値、あるいは使用最大流量の監視判定値等が記憶されている。例えばストーブ等へガスを供給するホースが何らかの原因で外れた時、異常な大流量が発生するが、そのような状態を監視するための合計流量遮断値や、器具の通常使用する最大使用時間よりはるかに長く使用された場合に対応して使用時間の制限時間を規定した安全継続時間遮断の制限時間等が記憶されている。この設定値と平均流量値とを異常判定手段26で比較判定することで、流量値が使用最大流量値を超えていないか、或いは器具の使用時間が登録流量に対応した連続使用の制限時間を超えていないか等監視する。
【0035】
この異常判定手段26で異常成立と判定した時、或いは流路内異常判定手段22が異常と判定時、或いはインピーダンス推定手段25で流量検出手段8が何らかの原因で浸水等の異常と判定時、遮断手段27に遮断信号を送ってガス供給を停止する。また、報知手段28は、遮断状態や遮断内容を液晶表示素子等に表示すると共にガスの安全監視を行っているガス事業者のセンターに電話回線等の通信により通報する。
【0036】
次に、以上のガス遮断装置1の構成の動作を説明する。ガス需要家宅にガス事業者がガス遮断装置1を設置し、端子蓋1eを開けて、通信装置や警報器(図示せず)等を接続した後、端子蓋1eを固定部材1f(ビス等)で固定される。又ガス遮断装置1へのガス配管(図示せず)が、水道配管等のそばに併設されることがある。何らかの原因で継ぎ手等から高圧の漏水が地中内でガス配管に長期間周辺の土砂と共にあたり、いわゆるサンドブラスト現象がおき、ガス配管に穴が生じガス配管内に水が浸入する場合がある。その浸入水がガス遮断装置1の流量検出手段8の上流側振動子6や下流側振動子7が対向して設置されている流路に浸入してきた場合、浸水状態で流量を流量検出手段8により検出する。
【0037】
或いは警報器の配線や通信線を接続した後、端子蓋1eの固定があまく隙間が発生した状態となり、その後隙間より雨水がガス遮断装置内部に浸入し、流路4特に底部の流路4bが水没してしまう場合がある。
【0038】
サンドブラスト現象等により配管内の水が蒸発結露の繰返し等によりガス遮断装置1迄到達し底部の流路4内部にたまり浸水状態となった場合、上流側振動子6や下流側振動子7間の流路内がある程度水没した状態の場合、流量計測時超音波信号が水中を通るルートや気体中を通るルートができる。水が少ない場合、超音波が伝搬する際反射等により信号レベルが乱れ、受信手段11で検出した信号レベルが小さくなり、その信号レベルを振幅判定手段13で判定し、振幅レベルを最適レベルにする為に増幅度調整手段14は信号レベルを大きくする方向に増幅度を高くする。増幅度設定手段19の上限値を超える状態が継続すると流路内異常判定手段22で異常判定し、遮断手段27に遮断信号を出力し、報知手段28で異常表示する。しかし上限値を超える状態が継続しなかったり、上限値未満の増幅度で継続しその間に次第に浸水量が増えると、流路4内の水中伝搬による超音波信号で流量検出するようになる。流量検出手段8で計測した超音波信号の伝搬時間は通るルートにより検出値が異なる。超音波信号の伝搬速度はガス中に比較し水中では約1500m/sと速いため気体中伝搬に比べ早期に受信し伝搬時間が短くなる。流路4の水中ルートで超音波を受信するようになると、受信側の上流側振動子6あるいは下流側振動子7の受信感度が上がり信号振幅が大きくなる為、増幅度調整手段14は逆に増幅度を小さくなる方向に制御する。かつ伝搬時間計測手段12で計測した伝搬時間は水中を通る為、伝搬時間監視値設定手段21の下限値を下回り、即ち短くなるので、流路内異常判定手段22では増幅度が小さくかつ伝搬時間が短いため流路内が何等かの原因で浸水状態になったと判定し遮断信号を遮断手段26に出力する。流路に水を注入して流量計測の実験を行い、その時の伝搬時間の変化データが図3で、増幅度(ゲイン)の変化データが図4であり、浸水と伝搬時間及び増幅度(ゲイン)との関係がわかる。
【0039】
次に施工時に端子蓋1eの固定があまかった為に、隙間が生じ雨水がガス遮断装置1内部に浸入し、流路4特に底部の流路4bが水没してしまった場合、即ち流量検出手段8の上流側振動子6や下流側振動子7の端子が水没した場合、端子間のインピーダンスが低下する。結果超音波の受信信号レベルが小さくなり、増幅度調整手段14は信号レベルを大きくするために増幅度を高くする。増幅度判定手段18は増幅度が大きくなり、上限値以上になったのを検出すると、計時手段23は計時開始する。浸水により流量検出手段8の上流側振動子6や下流側振動子7の端子間インピーダンスが低下すると、ノイズ等の影響を受けやすく受信信号レベルが変動し、結果流量演算手段15で求めた瞬時流量が変動することになり、計測条件設定手段16は流量変動に対応し安定した流量値になるように計測条件を変更する。計測条件設定手段16は瞬時流量の変化に応じて、計測回数や計測周期等の計測条件を変えて、即ち流速変化周期全般にわたって細かく広域にわたって計測できるように計測条件(計測間隔等)を変更する。そして常に流速変化があろうとも安定した流量値になるように、計測条件を変化させる。例えば流量検出手段8は通常2秒毎定期的に計測開始するが、更にその間短時間(数ms)で超音波を送信し伝搬時間計測し流速変動の大きい部分、小さい部分、中間部分等全てタイミングを網羅するように多くのポイントで計測するように計測回数を増加させる条件に変更し、流速変動があっても一定の流量値になるようにして計測する。又一定時間安定流量状態が継続すれば、計測条件設定値をもとの条件に変更する。
【0040】
しかしガス遮断装置1内部で流路4の外側に雨水等が浸入すると常時流量変動が発生し続け、計時手段23が計時している期間の流量計測の計測条件設定手段16で設定された計測条件は、最大の流速変化に対応した計測条件で計測されており、この最大の計測条件の設定比率を、計時手段23が計時終了時計測比率演算手段24で求める。計時手段23が計時終了時、求めた計測比率をインピーダンス推定手段25で判定するが、増幅度判定手段18が所定増幅度以上で計測比率演算手段24で求めた計測比率が所定比率以上かを判定し所定比率以上と判定すると、流路4の流量検出手段8が水没等による端子間インピーダンスが低下状態と推定し遮断手段27に遮断信号を出力する共に、報知手段28で異常表示し、ガス事業者のセンターに異常状態の発呼通信を行う。
【0041】
更に並行して、平均流量検出手段17で求めた平均流量を異常判定手段26で監視し、長時間使用していないか、求めた流量が器具流量以上の異常な流量に達していないか等の監視を常時行い異常の有無判定を行う。異常判定手段26には、流量域毎に対応した使用時間の制限時間値、あるいは使用最大流量の監視判定値等が記憶されている。例えばストーブ等へガスを供給するホースが何らかの原因で外れた時、異常な大流量が発生するが、そのような状態を監視するための合計流量遮断値や、器具の通常使用する最大使用時間よりはるかに長く使用された場合に対応して安全継続使用時間の制限時間を規定した安全継続時間遮断の制限時間等が記憶されている。この設定値と平均流量値とを異常判定手段26で比較判定することで、流量値が使用最大流量値を超えていないか、或いは器具の使用時間が登録流量に対応した連続使用の制限時間を超えていないか等監視し、超えた場合遮断信号を出力する。また、報知手段28は、遮断状態や遮断内容を液晶表示素子等に表示すると共にガスの安全監視を行っているガス事業者のセンターに電話回線等の通信により通報する。ガス事業者は直ちにガス遮断装置1を交換する等の対応措置を実施でき、速やかに異常状態を回避することが可能である。
【0042】
なお、本実施の形態に使用した構成は一例であり、又使用形態も本実施の形態に限定されるものではない。
【0043】
以上のように、何らかの原因でガス配管内に浸入した水が、ガス遮断装置1の下部に位置する流路4内にはいり浸水状態になった時、即ち流量検出手段8の上流側振動子6や下流側振動子7が設置された流路内部迄浸入してきた場合、或いはガス遮断装置1の筺体と筺体底部の流路4の外側との間が浸水した時、流量検出手段8からの検出した流量値の変化や信号レベルを制御する増幅度調整手段14の増幅度や検出した伝搬時間値を監視して流量検出手段8に異常の有無がないかを監視し、流量検出手段での信号増幅度が高くなり、瞬時流量の変動が生じ安定化するための計測条件に変化した状態を検出することにより、ガス遮断装置1内部で浸水等の異常を早期に検出できるので、浸水することにより器具を全く使用していないのに流量有と誤検出し、誤計測することにより異常なガス使用量を積算したり、異常な流量が検出されたとして保安遮断の機能が誤作動するという異常動作を起すのを防止し、ガス器具を使用するガス需要家を安全に監視するためのガス遮断装置が異常であることを早期に判定し通報するので、安全性や信頼性が極めて高く、かつ使い勝手が高い効果がある。
【0044】
なお、本発明は上記の実施形態において示されたものに限定されるものではなく、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
以上のように、本発明に係るガス遮断装置は、何らかの原因により流路内部及び外部が浸水された時異常状態を検出し保安監視や流量計測継続が困難と判定する高信頼性を確保することができるものであり、誤って生じた気体混合の水道メータ等の計測監視装置全般に適用できるものである。
【符号の説明】
【0046】
4 流路
5 制御装置(制御手段)
8 流量検出手段
15 流量演算手段
16 計測条件設定手段
17 平均流量演算手段
18 増幅度判定手段
19 増幅度設定手段
20 伝搬時間判定手段
22 流路内異常判定手段
23 計時手段
24 計測比率演算手段
25 インピーダンス推定手段
26 異常判定手段
27 遮断手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路と、前記流路を流れるガスを遮断する遮断手段と、前記流路に沿って配置した振動子対と、前記振動子対間の超音波の伝搬時間をもとにガスの流量を演算すると共に異常時に前記遮断手段でガスを遮断する制御手段とからなり、
前記制御手段は、流量を検出する流量検出手段と、前記流量検出手段の検出値より瞬時流量値を換算する流量演算手段と、前記流量検出手段で調整した信号増幅度を判定する増幅度判定手段と、前記流量検出手段で調整した増幅度の上限判定値及び下限判定値を設定する増幅度設定手段と、前記流量検出手段で検出した伝搬時間を判定する伝搬時間判定手段と、前記流量演算手段で求めた流量が変動しているのを検出すると安定した流量値を求める計測条件に設定変更する計測条件設定手段と、前記増幅度判定手段で下限判定値以下の増幅度で前記伝搬時間判定手段で異常に短い伝搬時間と判定された場合流路内浸水と推定する流路内異常判定手段と、前記増幅度判定手段で上限判定値以上と判定した時に起動する計時手段と、前記計時手段で計時中に流量変動を安定化させる最大の計測条件に設定された計測条件比率を求める計測比率演算手段と、前記増幅度判定手段で上限判定値以上で前記計測比率が所定値以上の場合前記流量検出手段の端子間インピーダンスが異常と推定するインピーダンス推定手段と、前記流量演算手段で求めた瞬時流量より平均流量を求める平均流量演算手段と、求めた平均流量から異常の有無を判定する異常判定手段とを備え、前記流路内異常判定手段或いは前記インピーダンス推定手段或いは前記異常判定手段で異常判定成立時、前記遮断手段によりガスの供給を遮断する構成としたガス遮断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−261746(P2010−261746A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−110902(P2009−110902)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【出願人】(000220262)東京瓦斯株式会社 (1,166)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【出願人】(000221834)東邦瓦斯株式会社 (440)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【出願人】(000222211)東洋ガスメーター株式会社 (34)
【Fターム(参考)】