説明

ガス遮断装置

【課題】ガス器具の危険な継続使用を防止し、尚かつ、誤判断によるガス遮断を効果的に回避し、ガス器具使用の利便性を損なわないガス遮断装置を提供する。
【解決手段】ガス流量検出手段11により検出されたガス流量から流量変化態様演算手段12が求めた流量変化態様と、器具特性記憶手段14の記憶内容とから、ガス器具判別手段13が今回使用開始されたガス器具の種別を特定し、その特定されたガス器具に応じて、使用条件変更制御手段15が、当該ガス器具を継続使用するための使用条件を設定し、ガス停止制御手段17が用いる遮断条件を変更させることで、ガス器具が本来の継続使用時間を越えて長時間使用される危険な事態を防ぐと共に、短時間の使用制限が課されているガス器具が稼動していないときであっても他のガス器具まで長時間使用できなくなって利便性を損なうような事もない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ガス供給先のガス器具の使用時間およびガス使用量を監視し、予め設定されている遮断条件が達成されることに基づいて、遮断弁を閉じてガスの供給を遮断するガス停止制御手段を備えたガス遮断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、都市ガスやLPガスの供給システムにおいて、ガス供給先(各家屋)ではマイコンを中心として構成されたマイコンメータが使用され、検知したガス流量やガス圧力等に基づいて、使用開始されたガス器具を特定したり、新器具であるかを判別したり、使用状態を監視するようになっている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許3490064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の発明のように、使用中のガス器具を判別できても、その機器情報を有効に活用して、効率的なガス管理が行われているとは言えない。例えば、4号あるいは5号といった小型の瞬間湯沸器を保有する世帯では、ガス事業者が設置を確認し、設定器等により手動で使用遮断時間を160分から20分に制限する必要が有るが、同じ流量の区分に属するガスふろがま等が設置されている場合、小型瞬間湯沸器の上限使用時間である20分を超えて使用する事も多く、時間制限をすることは困難な場合が多い。このようなとき、稼働中のガス器具毎に使用時間の管理を柔軟に行うことができれば、小型瞬間湯沸器による危険を回避しつつ、ガス利用の利便性を損なうこともないのである。
【0005】
さらに、エネファーム(登録商標)のような家庭用燃料電池コージェネレーションシステムを導入している世帯では、発電のためにガス使用が頻繁であることから、通常は微少漏洩判定日数として設定されている15日では適正な判定ができず、ガス漏れの誤判定をしてしまう可能性がある。
【0006】
また、近来は、学習機能によりガスの使用量や増加量の上限を最適値に調整して行くマイコンメータが普及しているものの、その学習機能のために、マイコンメータに内蔵されたガス遮断装置が誤作動するケースもある。例えば、ガス使用量の少ない夏季から、秋季・冬季へと季節が変化して、急に寒くなると、ガスの使用量が急激に増加するが、このような変化に対してはマイコンメータの増加ロジックが有効に機能せず、ガス遮断されてしまうのである。ガス遮断後は、ガス販売事業者等が設定値を上限値に変更し、ガス遮断が発生しないようにする必要があり、ガス販売業者等にとっては煩雑な作業を強いられることとなる。
【0007】
加えて、特許文献1に記載の発明では、使用中のガス器具を特定できることから、1台のガス器具が使用されていたときにCOが発生すれば(ガス漏れ・CO警報器の警報が有れば)、そのガス器具が原因であると推定できるものの、複数のガス器具が使用中であったときにCOが発生すると、その原因機器を特定することが出来ない。
【0008】
本発明は上記に鑑み提案されたもので、ガス器具の危険な継続使用を防止し、尚かつ、誤判断によるガス遮断を効果的に回避し、ガス器具使用の利便性を損なわないガス遮断装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、ガス供給先のガス器具の使用時間およびガス使用量を監視し、予め設定されている遮断条件が達成されることに基づいて、遮断弁を閉じてガスの供給を遮断するガス停止制御手段を備えたガス遮断装置において、上記ガス器具に供給されるガス流量を検出するガス流量検出手段と、上記ガス流量の変化態様を求める流量変化態様演算手段と、ガスが供給されるガス器具毎に現れる固有の流量変化を当該ガス器具の特性として予め記憶している器具特性記憶手段と、上記流量変化態様演算手段により演算された流量変化態様と、上記器具特性記憶手段に記憶されている器具特性とに基づいて、使用されているガス器具を判別するガス器具判別手段と、上記ガス器具判別手段により判別されたガス器具の種類に基づいて、当該ガス器具を継続使用するための使用条件を設定し、上記ガス停止制御手段が用いる遮断条件を変更させる使用条件変更制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、請求項2に係る発明は、上記請求項1に記載のガス遮断装置において、上記使用条件変更制御手段は、ガス器具判別手段により判別されたガス器具が、小型瞬間湯沸器であった場合、継続使用時間を通常の上限時間よりも短く定めた危険回避時間に変更するようにしたことを特徴とする。
【0011】
また、請求項3に係るの発明は、上記請求項1又は請求項2に記載のガス遮断装置において、上記使用条件変更制御手段は、ガス器具判別手段により判別されたガス器具が、家庭用燃料電池コージェネレーションシステムであった場合、微少漏洩判定日数を通常の上限日数よりも長く定めた誤判定防止日数に変更するようにしたことを特徴とする。
【0012】
また、請求項4に係る発明は、上記請求項1〜請求項3の何れか1項に記載のガス遮断装置において、上記使用条件変更制御手段は、ガス器具判別手段により判別されたガス器具が、長らく使用されていなかった季節性ガス消費機器であった場合、現在設定されているガス使用上限値およびガス増加上限値を共に本来の最上限値へ戻すようにしたことを特徴とする。
【0013】
また、請求項5に係る発明は、上記請求項4に記載のガス遮断装置において、上記使用条件変更制御手段は、新たに検知された季節性ガス消費機器の使用状況を監視して、その平均的なガス使用量および増加量を学習することで、当該季節性ガス消費機器に対応させて最上限値へ変更したガス使用上限値およびガス増加上限値を本来の使用状況に応じた各上限値へ随時変更するようにしたことを特徴とする。
【0014】
また、請求項6に係る発明は、上記請求項1〜請求項5の何れか1項に記載のガス遮断装置において、上記ガス器具判別手段により判別されたガス器具毎の稼動履歴を個別に監視し、宅内に配置されたガス漏れ・CO警報器から供給されたCO発生量が予め定めた危険域に達する前段階である予防基準域に達したとき、危険状態の前段階にあることを報らせる予防報知制御を行う稼動器具監視手段を設けたことを特徴とする。
【0015】
また、請求項7に係る発明は、上記請求項6に記載のガス遮断装置において、上記稼動器具監視手段は、CO発生量が予防基準域に達したときに稼動していたガス器具に対して、危険要因機器と疑われることを示す発生要因履歴を残すようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係るガス遮断装置によれば、ガス供給先のガス器具の使用時間およびガス使用量を監視し、予め設定されている遮断条件が達成されることに基づいて、遮断弁を閉じてガスの供給を遮断するガス停止制御手段を備えたガス遮断装置において、上記ガス器具に供給されるガス流量を検出するガス流量検出手段と、上記ガス流量の変化態様を求める流量変化態様演算手段と、ガスが供給されるガス器具毎に現れる固有の流量変化を当該ガス器具の特性として予め記憶している器具特性記憶手段と、上記流量変化態様演算手段により演算された流量変化態様と、上記器具特性記憶手段に記憶されている器具特性とに基づいて、使用されているガス器具を判別するガス器具判別手段と、上記ガス器具判別手段により判別されたガス器具の種類に基づいて、当該ガス器具を継続使用するための使用条件を設定し、上記ガス停止制御手段が用いる遮断条件を変更させる使用条件変更制御手段と、を備えるので、使用されているガス器具に応じて柔軟な使用条件の変更が行われることとなり、ガス器具の危険な継続使用を防止しつつ、誤判断によるガス遮断を効果的に回避して、ガス器具使用の利便性を損なうことがない。
【0017】
また、請求項2に係るガス遮断装置によれば、上記使用条件変更制御手段は、ガス器具判別手段により判別されたガス器具が、小型瞬間湯沸器であった場合、継続使用時間を通常の上限時間よりも短く定めた危険回避時間に変更するようにしたので、使用しているガス器具が小型瞬間湯沸器であれば、それに最適な使用時間へ設定変更することにより、不適切な使用状態でのCO事故発生が懸念される小型瞬間湯沸器を安全に使用することができる。
【0018】
また、請求項3に係るガス遮断装置によれば、上記使用条件変更制御手段は、ガス器具判別手段により判別されたガス器具が、家庭用燃料電池コージェネレーションシステムであった場合、微少漏洩判定日数を通常の上限日数よりも長く定めた誤判定防止日数に変更するようにしたので、家庭用燃料電池コージェネレーションシステムを利用している世帯で、頻繁に微少漏洩が誤検知されて、ガス販売事業者等が解除作業に煩わされることを抑制できる。
【0019】
また、請求項4に係るガス遮断装置によれば、上記使用条件変更制御手段は、ガス器具判別手段により判別されたガス器具が、長らく使用されていなかった季節性ガス消費機器であった場合、現在設定されているガス使用上限値およびガス増加上限値を共に本来の最上限値へ戻すようにしたので、季節性ガス消費機器の使用開始時に誤遮断が起きることを効果的に回避できる。
【0020】
また、請求項5に係るガス遮断装置によれば、上記使用条件変更制御手段は、新たに検知された季節性ガス消費機器の使用状況を監視して、その平均的なガス使用量および増加量を学習することで、当該季節性ガス消費機器に対応させて最上限値へ変更したガス使用上限値およびガス増加上限値を本来の使用状況に応じた各上限値へ随時変更するようにしたので、季節性ガス消費機器の使用に応じた安全な管理を実現できる。
【0021】
また、請求項6に係るガス遮断装置によれば、上記ガス器具判別手段により判別されたガス器具毎の稼動履歴を個別に監視し、宅内に配置されたガス漏れ・CO警報器から供給されたCO発生量が予め定めた危険域に達する前段階である予防基準域に達したとき、危険状態の前段階にあることを報らせる予防報知制御を行う稼動器具監視手段を設けたので、CO発生状況が危険状態になる前段階で、ガス器具使用者等に対して注意喚起することが可能になる。
【0022】
また、請求項7に係るガス遮断装置によれば、上記稼動器具監視手段は、CO発生量が予防基準域に達したときに稼動していたガス器具に対して、危険要因機器と疑われることを示す発生要因履歴を残すようにしたので、CO発生量が予防基準域に達したときに必ず稼動しているガス器具を発生要因履歴から確認することで、CO発生源であるガス器具を容易に特定できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係るガス遮断装置が適用されるガス供給システムの概略構成図である。
【図2】本発明に係るガス遮断装置の実施形態を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面に基づき、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0025】
図1は、本発明に係るガス遮断装置を適用可能なガス供給システムの概略構成を示す図である。図1において、この発明が適用されるガス供給システムは、ガス配管20と、そのガス配管20によってガスが供給されるガス供給先30と、ガス供給先30の手前でガス配管20の途中に設けられたマイコンメータ1とを備えている。ガス供給先30は、例えば一般家屋や集合住宅である。
【0026】
ガス配管20は分岐してガス供給先30で使用する種々のガス器具まで配管されている。例えば、ガス配管20は分岐して、屋外に設置された家庭用燃料電池コージェネレーションシステム31、屋内に配置された小型瞬間湯沸器32、ガスコンロ33およびガスファンヒータ34に接続されている。
【0027】
マイコンメータ1は、検知したガス流量等に基づいてガス供給先30でのガス使用状態を管理する装置であり、制御部10、流量センサ2、遮断弁3、およびLCD表示部4を有している。このマイコンメータ1にて、本発明に係るガス遮断装置が実現される。
【0028】
上記マイコンメータ1は、ガス供給先30毎に設けられ、その各個のマイコンメータ1は、集中監視センタ5に電話回線等で接続されており、制御部10で異常発生等の判定や情報が集中監視センタ5に伝達され、集中監視センタ5ではその情報に基づいてガス供給先30に対して適切な対応を行う。
【0029】
上記制御部10はマイクロコンピュータ(マイコン)を中心に構成され、流量センサ2で検知したガス流量、また圧力センサ(図示省略)で検知したガス圧力等に基づいて、ガス供給先30でのガス使用状態を推定し、ガス供給先30において適正にガスが使用されているか否かの判定を行う。
【0030】
例えば制御部10は、流量センサ2を用いて、マイコンメータ1内のガス配管20を通過する都市ガス或いはLPG等のガスの流量を検出する。ここで、流量センサ2は、例えばマイコンメータ1を貫通するガス配管20内に設置された超音波センサからなり、超音波を送信または受信する第1送受信器と、受信または送信する第2送受信器とが流れ方向に対抗して配置され、予め定めた周期毎に上流から下流へ、又下流から上流に向かって超音波信号を送信し、制御部10は、その信号を受けて伝搬時間を計測し、第1送受信器と第2送受信器との超音波の伝搬時間差から流路の断面積や流体の流れ状態を考慮して、瞬時流量値を求め、また積算流量値を求める。
【0031】
また、制御部10は、ガス供給先30でのガス使用状態を推定し、ガス供給先30においてガス漏れ等の異常が発生していると判定した場合、遮断弁3に制御信号を出力して遮断弁3を閉じガス供給を遮断する。
【0032】
LCD表示部4は、制御部10で求められたガス流量の積算値を表示したり、制御部10でなされた各種判定結果を表示し、ガスユーザに通知する。
【0033】
本発明のガス遮断装置は、制御部10のマイコンを中心に構成され、ROMに記憶された本発明に係るプログラムに従ってCPUが動作するソフトウェアの機能を含むものとなっている。
【0034】
図2は本発明に係るガス遮断装置の一実施形態を示す機能ブロック図である。図2に示すように、ガス遮断装置100は、ガス漏れやCO発生などの発生に伴って遮断弁3を作動させてガス供給を停止するものであり、ガス流量検出手段11、流量変化態様演算手段12、ガス器具判別手段13、器具特性記憶手段14、器具情報入力手段14a、使用条件変更制御手段15、稼動器具監視手段16、ガス停止制御手段17、使用流量監視手段18および報知用通信手段19から構成されている。
【0035】
ガス供給先30のガス器具が点火され等して、その使用が開始されると、ガス流量検出手段11は、流量センサ2からの信号に基づいて、そのガス器具に供給されるガスの流量を検出する。
【0036】
流量変化態様演算手段12は、今回使用開始されたガス器具に供給され、ガス流量検出手段11によって検出されたガス流量から、供給されたガスの流量変化態様を求める。この流量変化態様は、ガス器具毎に固有の特性を呈していることから、ガス器具判別手段13は、ガス器具毎に現れる固有の流量変化を当該ガス器具の特性として予め記憶している器具特性記憶手段14よりガス器具特性を読み出し、その変化パターンと流量変化態様演算手段12から供給された変化パターンのマッチングを判断し、今回使用開始されたガス器具の種別を特定するのである。
【0037】
なお、器具特定記憶手段14に予め記憶させた流量変化パターンに該当する器具が無かった場合は、新たなガス器具として登録し、学習して行くようにしても良いが、通信回線やネット回線を介して、外部のデータベースにアクセスすることにより、不明であったガス器具を特定できるようにすれば、新たなガス器具の安全な使用条件を速やかに特定できるので、ガス遮断装置100による安全管理の信頼性を高めることができる。
【0038】
また、図2に示すガス遮断装置100においては、バーコード読取などの簡易な手法でガス器具の情報を入力できる器具情報入力手段14aを設け、器具情報入力手段14aから入力された器具情報を器具特性記憶手段14に記憶させることができるので、新たにガス器具を導入したとき、器具情報入力手段14aを用いて必ず器具情報を入力しておく運用とすれば、ガス器具の具体的なメーカ名・型番や使用開始日等を器具特性記憶手段14にて管理することができ、ガス供給先30で同一種類のガス器具が複数台使用されていた場合でも、不具合の生じたガス器具を特定し易くなるし、耐用年数を超えて使用している危険なガス器具の事前確認やリコール対象製品のサーチにも活用できる。
【0039】
上記のように、ガス器具判別手段13により判別されたガス器具の情報は、使用条件変更制御手段15および稼動器具監視手段16へ供給される。
【0040】
先ず、使用条件変更制御手段15においては、ガス器具判別手段13により判別されたガス器具の種類に基づいて、当該ガス器具を継続使用するための使用条件を設定し、ガス停止制御手段17が用いる遮断条件を変更させる。従って、ガス遮断装置100においては、使用されているガス器具に応じて柔軟な使用条件の変更が行われることとなり、ガス器具の危険な継続使用を防止しつつ、誤判断によるガス遮断を効果的に回避して、ガス器具使用の利便性を損なうことがない。
【0041】
なお、予め定められた遮断条件が成立したときに遮断弁3を閉じる制御を行うガス停止制御手段17には、使用流量監視手段18より、ガスの合計流量や増加流量といった情報が供給されており、この情報に基づいて、複数設定されている遮断条件全ての成否をガス停止制御手段17が自律的に判断するものであり、使用条件変更制御手段15は、あくまでもガス停止制御手段17が用いている遮断条件となっているガス器具の使用条件の一部または全部を変更するものである。
【0042】
より具体的に説明すると、ガス器具判別手段13により判別されたガス器具が、4号あるいは5号といった小型瞬間湯沸器32であった場合、継続使用時間を通常の上限時間(例えば、160分)よりも短く定めた危険回避時間(例えば、20分)に変更するように、ガス停止制御手段17へ指示する。これにより、使用しているガス器具が小型瞬間湯沸器32であれば、それに最適な使用時間へ設定変更して、ガス停止制御手段17による監視(小型瞬間湯沸器32の連続使用時間の監視)が行われるので、不適切な使用状態でのCO事故発生が懸念される小型瞬間湯沸器32を安全に使用することができる。なお、ガス停止制御手段17が遮断条件の成立に基づき遮断弁3を閉じた場合には、ガス遮断が生じた旨を報知用通信手段19を介して、宅内の表示器へガス遮断の発生を表示させたり、遠方の集中監視センタ5へガス遮断の発生を知らせたりする。
【0043】
また、ガス器具判別手段13により判別されたガス器具が、家庭用燃料電池コージェネレーションシステム31であった場合、微少漏洩判定日数を通常の上限日数(例えば、15日)よりも長く定めた誤判定防止日数(例えば、30日)に変更するように、ガス停止制御手段17へ指示する。これにより、家庭用燃料電池コージェネレーションシステム31を利用している世帯で、頻繁に微少漏洩が誤検知されて、ガス販売事業者等が解除作業に煩わされることを抑制できる。
【0044】
また、ガス器具判別手段13により判別されたガス器具が、長らく使用されていなかった季節性ガス消費機器であるガスファンヒータ34あった場合、現在設定されているガス使用上限値(合計流量の上限値)およびガス増加上限値(増加流量の上限値)を共に本来の最上限値へ戻すように、ガス停止制御手段17へ指示する。これにより、半年程度の不使用期間をおいてガスファンヒータ34を使い始めたときに、誤遮断が起きて遮断弁3が閉じるような事態を効果的に回避できる。
【0045】
なお、ガスファンヒータ34が使用開始されたことに伴って、ガス停止制御手段17が用いている遮断条件の合計流量値と増加流量値を上限に変更させた場合、ガスファンヒータ34の適正なガス消費量を上回る上限値で遮断条件の判断を行い続けることは、ガスの安全管理上、好ましくないから、既存のマイコンメータが採用している学習機能を使用条件変更制御手段15に持たせるようにしても良い。例えば、新たなガス器具として検知されたガスファンヒータ34の使用状況を監視して、その平均的なガス使用量および増加量を学習することで、このガスファンヒータ34に対応した合計流量および増加流量の増減値を新たに設定し、これをガス停止制御手段17へ指示する。これにより、ガスファンヒータ34の実際の使用状況に応じた各上限値へ随時変更できるので、ガスファンヒータ34等の季節性ガス消費機器の使用に応じた安全な管理を実現できる。なお、このような学習機能は、ガス停止制御手段17に持たせるようにしても構わない。
【0046】
一方、ガス器具判別手段13により判別されたガス器具の情報が供給される稼動器具監視手段16は、ガス器具毎の稼動履歴を個別に監視し、ガス供給先30でのCO発生量が予め定めた危険域(例えば、250〜550ppm)に達すると、危険状態を報知するために報知用通信手段19へ報知信号を出力し、宅内表示器に換気を促す表示を行ったり、警告音を発したりすることに加え、CO発生量が危険域に達する前段階である予防基準域(例えば、30〜249ppmの任意の数値)に達したときにも、注意を喚起するために報知用通信手段19へ報知信号を出力し、宅内表示器にて予防報知を行う。よって、CO発生状況が危険状態になる前段階で、ガス器具使用者等に対して注意喚起することが可能になる。
【0047】
また、稼動器具監視手段16は、宅内に配置されたガス漏れ・CO警報器35からの警報信号を受けたときに稼動していたガス器具に対して、ガスまたはCOの発生要因である危険要因機器と疑われることを示す発生要因履歴として残すようにしたので、発生要因履歴からガス漏れあるいはCO発生源のガス器具を容易に特定することができる。加えて、ガス供給先30でのCO発生量が予防基準域に達したときに稼動していたガス器具についても発生要因履歴を残しておくことにより、CO発生量が予防基準域に達したときに必ず稼動しているガス器具を発生要因履歴から確認することで、CO発生源であるガス器具を容易に特定できる。なお、ガス漏れ・CO警報器35からの警報は、稼動機器監視手段16を介してガス停止制御手段17にも供給され、これを受けたガス停止制御手段17が遮断弁3を閉じ、ガスの漏洩を速やかに断つ。
【0048】
以上、本発明のガス遮断装置を実施形態に基づいて説明したが、本発明の包摂範囲は、この実施形態に限定されるものではなく、公知既存の手法を適宜転用することで実現しても構わない。
【符号の説明】
【0049】
1 マイコンメータ
2 流量センサ
3 遮断弁
4 LCD表示部
5 集中監視センタ
10 制御部
11 ガス流量検出手段
12 流量変化態様演算手段
13 ガス器具判別手段
14 器具特性記憶手段
14a器具情報入力手段
15 使用条件変更制御手段
16 稼動器具監視手段
17 ガス停止制御手段
18 使用流量監視手段
19 報知用通信手段
20 ガス配管
30 ガス供給先
31 家庭用燃料電池コージェネレーションシステム
32 小型瞬間湯沸器
33 ガスコンロ
34 ガスファンヒータ
35 ガス漏れ・CO警報器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス供給先のガス器具の使用時間およびガス使用量を監視し、予め設定されている遮断条件が達成されることに基づいて、遮断弁を閉じてガスの供給を遮断するガス停止制御手段を備えたガス遮断装置において、
上記ガス器具に供給されるガス流量を検出するガス流量検出手段と、
上記ガス流量の変化態様を求める流量変化態様演算手段と、
ガスが供給されるガス器具毎に現れる固有の流量変化を当該ガス器具の特性として予め記憶している器具特性記憶手段と、
上記流量変化態様演算手段により演算された流量変化態様と、上記器具特性記憶手段に記憶されている器具特性とに基づいて、使用されているガス器具を判別するガス器具判別手段と、
上記ガス器具判別手段により判別されたガス器具の種類に基づいて、当該ガス器具を継続使用するための使用条件を設定し、上記ガス停止制御手段が用いる遮断条件を変更させる使用条件変更制御手段と、
を備えることを特徴とするガス遮断装置。
【請求項2】
上記使用条件変更制御手段は、ガス器具判別手段により判別されたガス器具が、小型瞬間湯沸器であった場合、継続使用時間を通常の上限時間よりも短く定めた危険回避時間に変更するようにしたことを特徴とする請求項1に記載のガス遮断装置。
【請求項3】
上記使用条件変更制御手段は、ガス器具判別手段により判別されたガス器具が、家庭用燃料電池コージェネレーションシステムであった場合、微少漏洩判定日数を通常の上限日数よりも長く定めた誤判定防止日数に変更するようにしたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のガス遮断装置。
【請求項4】
上記使用条件変更制御手段は、ガス器具判別手段により判別されたガス器具が、長らく使用されていなかった季節性ガス消費機器であった場合、現在設定されているガス使用上限値およびガス増加上限値を共に本来の最上限値へ戻すようにしたことを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1項に記載のガス遮断装置。
【請求項5】
上記使用条件変更制御手段は、新たに検知された季節性ガス消費機器の使用状況を監視して、その平均的なガス使用量および増加量を学習することで、当該季節性ガス消費機器に対応させて最上限値へ変更したガス使用上限値およびガス増加上限値を本来の使用状況に応じた各上限値へ随時変更するようにしたことを特徴とする請求項4に記載のガス遮断装置。
【請求項6】
上記ガス器具判別手段により判別されたガス器具毎の稼動履歴を個別に監視し、宅内に配置されたガス漏れ・CO警報器から供給されたCO発生量が予め定めた危険域に達する前段階である予防基準域に達したとき、危険状態の前段階にあることを報らせる予防報知制御を行う稼動器具監視手段を設けたことを特徴とする請求項1〜請求項5の何れか1項に記載のガス遮断装置。
【請求項7】
上記稼動器具監視手段は、CO発生量が予防基準域に達したときに稼動していたガス器具に対して、危険要因機器と疑われることを示す発生要因履歴を残すようにしたことを特徴とする請求項6に記載のガス遮断装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−132632(P2012−132632A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286180(P2010−286180)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成22年度、経済産業省原子力安全・保安院、石油ガス供給事業安全管理技術開発等事業(集中監視による液化石油ガス燃焼器自動識別システムの開発)に関する委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受けるもの)
【出願人】(000168643)高圧ガス保安協会 (92)
【Fターム(参考)】