説明

ガラス板の加工装置

【課題】同期の問題をなくし得ると共に、ねじ軸の回転に起因する撓み振動の虞がなく、高速にかつ正確にガラス板に加工を施し得るガラス板の加工装置を提供する。
【解決手段】ガラス板の加工装置1は、加工されるべきガラス板2を支持する支持手段3と、支持手段3上の水平面内で旋回自在なアーム手段4と、アーム手段4を水平面内で旋回させる旋回手段6と、アーム手段4に、当該アーム手段4の伸びる方向に摺動自在に装着された可動台7と、可動台7をアーム手段4の伸びる方向に沿ってそれぞれ直動させる直動手段9と、支持手段3に支持されたガラス板2に所定の加工を行うべく、可動台7に搭載された加工ヘッド手段11とを具備しており、直動手段9は、可動台7に取り付けられた可動子55と、アーム手段4のアーム本体31に取り付けられた固定子56とを有した電動リニアモータ57を具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板の加工装置、特に、ガラス板に切り線(折り割り線)を形成し、この折り線に沿ってガラス板を所定の形状に折り割る装置に関する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
この種のガラス板の加工装置は、通常、加工されるべきガラス板を支持する支持手段と、支持手段に支持されたガラス板に所定の加工を行う加工ヘッド手段と、加工ヘッド手段をガラス板上でX−Y方向に移動させる移動手段とを具備しており、加工ヘッド手段は、両端でX又はY方向に移動自在に支持されたフレームにY又はX方向に移動自在に搭載されており、移動手段は、多くの場合には、フレームの両端のそれぞれに取り付けられた一対のナット、このナットのそれぞれに螺合して、X又はY方向に伸びて設けられた一対のねじ軸及びこの一対のねじ軸を同期的に回転させる一対の電動モータを有したフレーム移動装置と、加工ヘッド手段に取り付けられたナット、このナットに螺合して、Y又はX方向に伸びて設けられたねじ軸及びこのねじ軸を回転させる電動モータを有したヘッド移動装置とを具備している。
【0003】
ところで、加工ヘッドが搭載されたフレームを移動させるフレーム移動装置では、一対の電動モータにより一対のねじ軸を同期して回転させて、当該フレームをその両端で同期して移動させているため、この同期移動がずれると、フレームの両端の移動を案内しているスライダと案内レールとの間に噛み付きが生じ、フレームの滑らかな移動が行われ難く、したがって、同期移動を精度よく行わせる機構を必要とし、制御が複雑となり、コストアップの原因となる。
【0004】
また、ねじ軸を回転させてフレーム及び加工ヘッド手段の移動を行わせる場合、高速な移動を達成するには、ねじ軸を高速回転させる必要があるが、ねじ軸の高速回転は、ねじ軸に撓み振動を生じさせる虞があり、特に、大判のガラス板を高速加工する装置の場合には、長尺のねじ軸を高速回転させることとなり、したがって、ねじ軸の撓み振動が顕著に生じる虞がある。
【0005】
一方、加工されるべきガラス板を支持する支持手段は、通常、可撓性であって、厚み方向に若干の弾性を有するシート又は無端ベルトと、このシート又は無端ベルトの垂れ下がりを防止する等のために、これを下から支える剛性の支持板とを具備しているが、支持板によりシート又は無端ベルトを支えると、シート又は無端ベルトの可撓性が犠牲となり、切り線形成後のガラス板の押し割りに際して、ガラス板に所望の撓みを生じさせることができず、したがって、ガラス板を折り割ることができない事態が生じ得る。
【0006】
本発明は、前記諸点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、同期の問題をなくし得ると共に、ねじ軸の回転に起因する撓み振動の虞がなく、高速にかつ正確にガラス板に加工を施し得るガラス板の加工装置を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的とするところは、支持手段の剛性の支持板を省き得て、しかも、確実に切り線形成と押し割りとを高速にかつ正確に行い得るガラス板の加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば前記目的は、加工されるべきガラス板を支持する支持手段と、この支持手段上の水平面内で旋回自在なアーム手段と、このアーム手段を水平面内で旋回させる旋回手段と、アーム手段に、当該アーム手段の伸びる方向に摺動自在に装着された可動台と、この可動台をアーム手段の伸びる方向に沿って直動させる直動手段と、支持手段に支持されたガラス板に所定の加工を行うべく、可動台に搭載された加工ヘッド手段とを具備しており、直動手段は、可動台に取り付けられた可動子と、アーム手段に取り付けられた固定子とを有した電動リニアモータを具備しているガラス板の加工装置によって達成される。
【0009】
本発明では、支持手段は、全体として可撓性を有すると共に厚み方向に若干の弾性を有した無端ベルトと、この無端ベルトのガラス板支持側を下面から支える支持板とを具備していてもよいが、これに代えて、可撓性のシートと、この可撓性のシートをその周縁において支える支持枠とを具備していてもよい。
【0010】
本発明では、アーム手段は、アーム本体と、このアーム本体に取り付けられた案内レールとを具備し、可動台は、案内レールに嵌合するスライダを具備していてもよい。旋回手段は、電動モータを具備し、電動モータの出力回転軸にアーム手段が連結されていてもよく、加工ヘッド手段は、切り線形成用のカッタホイールを有したカッタヘッドを具備していても、また、これと共に又はこれに代えて、ガラス板に形成された切り線に沿って当該ガラス板を押し割るための押し棒を有した押し割りヘッドを具備していてもよい。
【0011】
本発明のガラス板の加工装置は、更に、支持手段上の水平面内で旋回自在であって、水平面内で前記アームに対して逆方向に伸び、旋回手段に連結されて当該旋回手段により前記アーム手段と共に水平面内で旋回させられる他のアーム手段と、この他のアーム手段に、当該他のアーム手段の伸びる方向に摺動自在に装着された他の可動台と、この他の可動台を他のアーム手段の伸びる方向に沿って直動させる他の直動手段と、前記加工ヘッド手段と共に、支持手段に支持されたガラス板に所定の加工を行うべく、他の可動台に搭載された他の加工ヘッド手段とを更に具備しており、他の直動手段は、他の可動台に取り付けられた他の可動子と、他のアーム手段に取り付けられた他の固定子とを有した他の電動リニアモータを具備していてもよい。
【0012】
上記の他のアーム手段は、他のアーム本体と、この他のアーム本体に取り付けられた他の案内レールとを具備し、他の可動台は、他の案内レールに嵌合する他のスライダを具備し、他の加工ヘッド手段は、切り線形成用の他のカッタホイールを有した他のカッタヘッドを具備し、また、ガラス板に形成された切り線に沿って当該ガラス板を押し割るための他の押し棒を有した他の押し割りヘッドを具備していてもよい。
【0013】
本発明では、加工ヘッド手段及び他の加工ヘッド手段のうちの少なくとも一方によるガラス板に対する加工点及び加工点の近傍のうちの少なくとも一方での支持手段の撓みを阻止するように、支持手段を支える支え手段を更に具備していてもよい。この支え手段は、ガラス板下の水平面内で旋回自在な少なくとも一つの第三のアーム手段と、この第三のアーム手段を水平面内で旋回させる第三の旋回手段と、第三のアーム手段に、当該第三のアーム手段の伸びる方向に摺動自在に装着された第三の可動台と、この第三の可動台を第三のアーム手段の伸びる方向に沿って直動させる第三の直動手段と、加工ヘッド手段及び他の加工ヘッド手段のうちの少なくとも一方によるガラス板に対する加工点及び加工点の近傍のうちの少なくとも一方での支持手段の撓みを阻止すべく、第三の可動台に搭載された支えヘッド手段とを具備していてもよい。
【0014】
第三の直動手段は、第三の可動台に取り付けられた第三の可動子と、第三のアーム手段に取り付けられた第三の固定子とを有した第三の電動リニアモータを具備しており、第三のアーム手段は、第三のアーム本体と、この第三のアーム本体に取り付けられた第三の案内レールとを具備しており、第三の可動台は、第三の案内レールに嵌合する第三のスライダを具備しており、第三の旋回手段は、第三の電動モータを具備しており、第三の電動モータの出力回転軸に第三のアーム手段が連結されていてもよい。
【0015】
支えヘッド手段は、加工ヘッド手段の加工点での支持手段の撓みを阻止する回転自在なローラと、ローラの回転可能方向を第三の可動台の移動方向に配向させる配向手段を具備していても、これに加えて、ローラを支持手段に対して進退させる進退手段を具備していてもよい。また、支えヘッド手段は、他の加工ヘッド手段の加工点の近傍での支持手段の撓みを阻止する受け台と、この受け台を支持手段に対して進退させる進退手段とを具備していてもよい。
【0016】
本発明によれば前記目的はまた、加工されるべきガラス板を支持する支持手段と、支持手段に支持されたガラス板に所定の加工を行う加工ヘッド手段と、加工ヘッド手段を移動させる移動手段と、加工ヘッド手段によるガラス板に対する加工点での支持手段の撓みを阻止するように、支持手段を支える支え手段と具備しており、支え手段は、加工ヘッド手段によるガラス板に対する加工点での支持手段の撓みを阻止する支えヘッド手段と、支えヘッド手段を加工ヘッド手段の移動に対応させて移動させる移動手段とを具備しており、支えヘッド手段は、加工ヘッド手段の加工点での支持手段の撓みを阻止する回転自在なローラと、ローラの回転可能方向を支えヘッド手段の移動方向に配向させる配向手段を具備しているガラス板の加工装置によっても達成される。このガラス板の加工装置において、支えヘッド手段は、ローラを支持手段に対して進退させる進退手段を更に具備して構成されてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、同期の問題をなくし得ると共に、ねじ軸の回転に起因する撓み振動の虞がなく、高速にかつ正確にガラス板に加工を施し得るガラス板の加工装置を提供でき、しかも、支持手段の剛性の支持板を省き得るガラス板の加工装置をも提供することができる。
【発明の実施の形態】
【0018】
次に本発明及びその実施の形態を、図に示す好ましい実施例に基づいて更に詳細に説明する。なお、本発明はこれら実施例に何等限定されないのである。
【実施例】
【0019】
図1及び図2において、本例のガラス板の加工装置1は、加工されるべきガラス板2を支持する支持手段3と、支持手段3上の水平面内で旋回自在な一対のアーム手段4及び5と、アーム手段4及び5を水平面内で旋回させる旋回手段6と、アーム手段4及び5のそれぞれに、当該アーム手段4及び5の伸びる方向に摺動自在に装着された一対の可動台7及び8と、可動台7及び8のそれぞれを対応のアーム手段4及び5の伸びる方向に沿ってそれぞれ直動させる一対の直動手段9及び10と、支持手段3に支持されたガラス板2に所定の加工を行うべく、可動台7及び8のそれぞれに搭載された一対の加工ヘッド手段11及び12とを具備している。
【0020】
支持手段3は、全体として可撓性を有すると共に厚み方向に若干の弾性を有した無端ベルト21と、無端ベルト21のガラス板支持側のほぼ全面を下面から支える支持板22と、無端ベルト21を走行させる走行手段23とを具備しており、走行手段23は、基台24に回転自在に支持された駆動ドラム25及び従動ドラム26と、駆動ドラム25を回転させるべく、出力回転軸がベルト、プーリ等を介して駆動ドラム25に連結されて基台24に取り付けられた電動モータ27とを具備しており、無端ベルト21は、駆動ドラム25及び従動ドラム26間に掛け渡されている。
【0021】
走行手段23は、折り割り後にガラス板2が持ち上げられ際に、電動モータ27の作動による駆動ドラム25の回転により無端ベルト21をX方向に走行させて、無端ベルト21上に残存した折り割り屑(カレット)を下流側に排出する。
【0022】
アーム手段4は、アーム本体31と、アーム本体31に取り付けられた案内レール32とを具備しており、アーム手段5もまた、アーム本体33と、アーム本体33に取り付けられた案内レール34とを具備している。アーム本体31と33とは、水平面内において実質的に互いに逆方向に伸びている。
【0023】
旋回手段6は、上フレーム41に取り付けられた電動モータ42を具備しており、電動モータ42の出力回転軸にブラケット43を介してアーム手段4及び5のアーム本体31及び33の一端側が連結されている。旋回手段6は、電動モータ42の作動により、アーム本体31及び33を水平面内においてθ方向に旋回させる。
【0024】
本例では、上フレーム41から垂下しかつ電動モータ42及びブラケット43を貫通して上下(Z)方向に移動自在に中空部材45が設けられており、中空部材45の下端には真空吸盤装置46が取り付けられており、中空部材45の上端は、上フレーム41に設けられた空気圧シリンダなどからなる昇降装置(図示せず)に連結されている。昇降装置の作動により中空部材45が下降されると、真空吸盤装置46のパッド47は、ガラス板2に押しつけられ、ガラス板2を無端ベルト21と協同して無端ベルト21から浮き上がらないように保持し、昇降装置の作動により中空部材45が上昇されると、真空吸盤装置46のパッド47は、吸着したガラス板2を無端ベルト21の上方に持ち上げる。
【0025】
可動台7は、案内レール32にR方向に摺動自在に嵌合したスライダ(図示せず)を具備しており、可動台8もまた、案内レール34にR方向に摺動自在に嵌合したスライダ(図示せず)を具備している。
【0026】
直動手段9は、可動台7に取り付けられた可動子55と、アーム手段4のアーム本体31に取り付けられた固定子56とを有した電動リニアモータ57を具備しており、直動手段10は、可動台8に取り付けられた可動子58と、アーム手段5のアーム本体33に取り付けられた固定子59とを有した電動リニアモータ60を具備している。直動手段9及び10は、電動リニアモータ57及び60の作動により可動台7及び8をそれぞれアーム本体31及び33に沿ってR方向に直動させる。
【0027】
加工ヘッド手段11は、主切り線65及び端切り線66からなる切り線67形成用の回転自在なカッタホイール68を有したカッタヘッド69と、ガラス板2に形成された切り線67に沿って当該ガラス板2を押し割るための押し棒70を有した押し割りヘッド71とを具備している。
【0028】
カッタヘッド69は、可動台7に取り付けられた空気圧シリンダ75と、シリンダ75のピストンロッドの先端にZ軸を中心として回転自在に取り付けられたカッタブロック76とを具備しており、カッタホイール68は、カッタブロック76に回転自在に装着されている。カッタヘッド69は、シリンダ75の作動によりカッタホイール68をガラス板2に押しつけ、可動台7の水平面内での移動と共に、ガラス板2に切り線67を形成する。なお、可動台7の水平面内での移動において、カッタホイール68の刃先は、カッタブロック76の回転自在性により自動的に切り線67の形成方向に向けられる。
【0029】
押し割りヘッド71は、可動台7に取り付けられた空気圧シリンダ77を具備しており、押し棒70は、シリンダ77のピストンロッドの先端に取り付けられている。押し割りヘッド71は、可動台7の水平面内での移動における所定位置でのシリンダ77の作動により押し棒70をガラス板2の押しつけ、ガラス板2に撓みを生じさせて、ガラス板2を切り線67に沿って折り割る。
【0030】
加工ヘッド手段12は、加工ヘッド手段11と同様に構成されており、主切り線65及び端切り線66からなる切り線67形成用のカッタホイール81を有したカッタヘッド82と、ガラス板2に形成された切り線67に沿って当該ガラス板2を押し割るための押し棒83を有した押し割りヘッド84とを具備している。カッタヘッド82は、可動台8に取り付けられた空気圧シリンダ85と、シリンダ85のピストンロッドの先端に回転自在に取り付けられたカッタブロック86とを具備しており、カッタホイール81は、カッタブロック86に回転自在に装着されている。カッタヘッド82は、シリンダ85の作動によりカッタホイール81をガラス板2に押しつけ、可動台8の水平面内での移動と共に、ガラス板2に切り線67を形成する。押し割りヘッド84は、可動台8に取り付けられた空気圧シリンダ87を具備しており、押し棒83は、シリンダ87のピストンロッドの先端に取り付けられている。押し割りヘッド84は、可動台8の水平面内での移動における所定位置でのシリンダ87の作動により押し棒83をガラス板2の押しつけ、ガラス板2に撓みを生じさせて、ガラス板2を切り線67に沿って折り割る。なお、カッタヘッド69は、水平面内の半分の領域、すなわち水平面内の一方の180度の領域を、カッタヘッド82は、残る半分の180度の領域をそれぞれ分担して、切り線67の形成を行い、同じく、押し割りヘッド71は、水平面内の一方の180度の領域を、押し割りヘッド84は、残る半分の180度の領域をそれぞれ分担して、押し割りを行う。
【0031】
ガラス板の加工装置1は、以上の構成のほかに、更に、予め作成された制御プログラムが記憶された制御装置を具備しており、この制御装置によって上記の作動及び以下述べる作動を行うようになっている。
【0032】
ガラス板の加工装置1において、まず、折割られるべきガラス板2が無端ベルト21上に載置される。次に、電動モータ42並びに電動リニアモータ57及び60が作動され、アーム本体31及び33が水平面内でθ方向に旋回され、可動台7及び8がそれぞれR方向に移動されて、而して、可動台7及び8は、水平面内の所定の初期位置に移動設定される。その後、シリンダ75及び85が作動されて、カッタホイール68及び81がそれぞれガラス板2に空気弾性的に押しつけられると共に、電動モータ42並びに電動リニアモータ57及び60の更なる作動により、可動台7及び8がそれぞれR及びθ方向に移動されて、これによりガラス板2に主切り線65が形成される。主切り線65の形成後、同様にして端切り線66がカッタホイール68及び81により形成される。
【0033】
切り線67の形成後、シリンダ75及び85が作動されて、カッタホイール68及び81がガラス板2から離れるように上昇される一方、可動台7及び8のR及びθ方向の移動による押し棒70又は83の所定位置への配置において、シリンダ77又は87の作動により、押し棒70又は83が主切り線65で囲まれる範囲の外側であって主切り線65の近傍のガラス板2に押し付けられる。この押し付けにより、ガラス板2に若干の撓みが発生し、而して、ガラス板2は、主切り線65及び端切り線66に沿って折割られる。この押し割りを各所定位置で行うことにより、最後に、所定形状のガラス板が形成される。
【0034】
押し割り後、吸盤装置46のパッド47が、下降されてガラス板2に当接され、ガラス板2を真空吸引して、その後、上昇されることにより、ガラス板2を無端ベルト21から離れるように持ち上げる。この持ち上げ後、電動モータ27が作動されて、無端ベルト21の走行により無端ベルト21上に残存した折割り屑は、下流側に搬出される。パッド47に吸着されたガラス板2は、人手又は上フレーム41のY方向の移動により自動的に搬出される。そして、新たな折割りされるべきガラス板2が無端ベルト21上に人手又は吸盤装置46のパッド47を介して自動的に搬入される。
【0035】
なお、切り線形成中及び押し割り中に、ガラス板2が動かないように、パッド47を下降させてガラス板2を押しつけるようにしておいてもよい。
【0036】
以上のようにガラス板の加工装置1では、アーム本体31及び33のθ方向の旋回と、可動台7及び8のR方向の直動とにより、可動台7及び8を水平面内の任意の位置に移動させるようにしているため、同期の問題が生じなく、また、電動リニアモータ57及び60により可動台7及び8を移動させているため、ねじ軸を用いた場合に生じる撓み振動の虞がなく、高速にかつ正確にガラス板2に切り線を形成し得る。更に、ガラス板の加工装置1では、加工ヘッド手段等が一対設けられているため、ほぼ180度のアーム手段の旋回により一つの加工を完了することができ、作業時間を大巾に短縮することができる。
【0037】
次に、図3に示す本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の説明において、先の実施例と同一の符号をもって示すものは、同様の構成を有して、実質的に同様に動作するため、その詳細な説明を省略する。
【0038】
図3において本例のガラス板の加工装置101は、加工されるべきガラス板2を支持する支持手段103と、支持手段103上の水平面内で旋回自在なアーム手段4と、アーム手段4を水平面内で旋回させる旋回手段6と、アーム手段4に、当該アーム手段4の伸びる方向に摺動自在に装着された可動台7と、可動台7をアーム手段4の伸びる方向に沿って直動させる直動手段9と、支持手段103に支持されたガラス板2に所定の加工を行うべく、可動台7に搭載された加工ヘッド手段111と、加工ヘッド手段111によるガラス板2に対する加工点又は加工点の近傍での支持手段103の撓みを阻止するように、支持手段103を支える支え手段112とを具備している。
【0039】
本例では、アーム手段4、旋回手段6、可動台7及び直動手段9のそれぞれは、前記の例と同様に構成されている。
【0040】
支持手段103は、可撓性のシート121と、シート121をその周縁において支える支持枠122とを具備している。
【0041】
加工ヘッド手段111は、主切り線65及び端切り線66からなる切り線67形成用のカッタホイール68を有したカッタヘッド131と、ガラス板2に形成された切り線67に沿って当該ガラス板2を押し割るための押し棒70を有した押し割りヘッド132とを具備している。
【0042】
カッタヘッド131は、可動台7に取り付けられた空気圧シリンダ75と、シリンダ75のピストンロッドの先端にZ軸を中心として微小範囲内だけ回転自在となるように取り付けられたカッタブロック76と、カッタホイール68の刃先を切り線形成方向に強制的に向ける刃先配向手段141とを具備しており、カッタホイール68は、カッタブロック76に回転自在に装着されている。刃先配向手段141は、電動モータ142と、電動モータ142の出力回転軸に固着されたプーリ143と、シリンダ75のピストンロッドにスプライン結合されたプーリ144と、プーリ143及び144に掛け渡されたタイミングベルト145とを具備しており、電動モータ142の作動によりその出力回転軸の回転がプーリ143、タイミングベルト145及びプーリ144を介してシリンダ75のピストンロッドに伝達され、これによりカッタホイール68の刃先が切り線形成方向に向けられるようになっている。
【0043】
支え手段112は、ガラス板2下の水平面内で旋回自在なアーム手段151と、アーム手段151を水平面内で旋回させる旋回手段152と、アーム手段151に、当該アーム手段151の伸びる方向に摺動自在に装着された可動台153と、可動台153をアーム手段151の伸びる方向に沿って直動させる直動手段154と、加工ヘッド手段111によるガラス板2に対する加工点及び加工点近傍での支持手段103の撓みを阻止すべく、可動台153に搭載された支えヘッド手段155とを具備している。
【0044】
アーム手段151は、アーム本体161と、アーム本体161に取り付けられた案内レール162とを具備しており、可動台153は、案内レール162にR方向に摺動自在に嵌合するスライダ(図示せず)を具備している。
【0045】
旋回手段152は、下フレーム165に取り付けられた電動モータ166を具備しており、電動モータ166の出力回転軸にブラケット167を介してアーム手段151のアーム本体161の一端側が連結されている。旋回手段152は、電動モータ166の作動により、アーム本体161を水平面内においてθ方向に旋回させる。
【0046】
本例では、電動モータ166及びブラケット167を貫通して下フレーム165に立設された柱状部材171が設けられており、柱状部材171の上端には、支持円板172が取り付けられており、支持円板172は、シート121の下面に当接してシート121が垂れ下がらないようにしている。
【0047】
直動手段154は、可動台153に取り付けられた可動子(図示せず)と、アーム手段151のアーム本体161に取り付けられた固定子176とを有した電動リニアモータ177を具備している。直動手段154は、電動リニアモータ177の作動により、可動台153をアーム本体161に沿ってR方向に直動させる。
【0048】
支えヘッド手段112は、加工ヘッド手段111のカッタヘッド131の加工点、すなわち切り線67形成点での支持手段103のシート121の撓みを阻止する回転自在なローラ181と、ローラ181を支持手段103のシート121に対して進退させる進退手段182と、ローラ181の回転可能方向を可動台7の移動方向に配向させる配向手段183と、加工ヘッド手段111の押し割りヘッド71の加工点、すなわち押し棒70の押し付け点近傍での支持手段103のシート121の撓みを阻止する受け台184と、受け台184を支持手段103のシート121に対して進退させる進退手段185とを具備している。
【0049】
進退手段182は、可動台153に取り付けられた空気圧シリンダ191を具備しており、シリンダ191のピストンロッド192の二股先端にローラ181が回転自在に取り付けられている。進退手段182は、カッタホイール68による切り線67の形成時に、シリンダ191の作動によりローラ181を上昇させて、切り線67の形成位置でのカッタホイール68からのガラス板2を介する押し付け力によりシート121が撓まないように、ローラ181により当該押し付け力を受けさせる。
【0050】
配向手段183は、可動台153に取り付けられた電動モータ201と、電動モータ201の出力回転軸に固着されたプーリ202と、シリンダ191のピストンロッドにスプライン結合されたプーリ203と、プーリ202及び203間に掛け渡されたタイミングベルト204とを具備しており、電動モータ201の作動によりその出力回転軸の回転がプーリ202、タイミングベルト204及びプーリ203を介してシリンダ191のピストンロッドに伝達され、これによりローラ181の回転可能方向が可動台153の移動方向に向けられるようになっている。
【0051】
進退手段185は、可動台153に取り付けられた空気圧シリンダ211を具備しており、シリンダ211のピストンロッドに受け台184が取り付けられており、押し棒70による切り線67に沿うガラス板2の押し割りの際に、シリンダ211の作動により受け台184を上昇させて、主切り線65によって囲まれる範囲内において押し棒70のガラス板2への押し付け位置近傍のシート121及びガラス板2が下方に撓まないように、受け台184によってシート121を介してガラス板2を下から支持する。
【0052】
以上のガラス板加工装置101では、折割られるべきガラス板2がシート121上に載置される。次に、電動モータ42及び166並びに電動リニアモータ57及び177が作動され、アーム本体31及び161が水平面内でθ方向に旋回され、可動台7及び153がそれぞれR方向に移動されて、水平面に所定初期位置に設定される。その後、シリンダ75及び191が作動されて、カッタホイール68がガラス板2に空気弾性的に押しつけられる一方、このカッタホイール68のガラス板2への押し付け位置でローラ181がシート121を下から支えると共に、電動モータ42及び166並びに電動リニアモータ57及び177の更なる作動により、可動台7及び153がそれぞれR及びθ方向に移動されて、これによりガラス板2に主切り線65が形成される。主切り線65の形成後、同様にして端切り線66がカッタホイール68により形成される。なお、カッタホイール68とローラ181とが水平面内方向において同一位置に配されるように、可動台7と153とは同期して移動されるようになっている。また、可動台7のR及びθの移動と共に電動モータ142が作動されて、カッタホイール68の刃先が切り線67の形成方向に向けられると共に、同じく可動台153のR及びθの移動と共に電動モータ201が作動されて、ローラ181の回転可能方向が可動台153の移動方向に向けられる。
【0053】
切り線67の形成後、シリンダ75及び191が作動されて、カッタホイール68及びローラ181がガラス板2及びシート121からそれぞれ離れるように上昇、下降される一方、可動台7及び153のR及びθ方向の移動による押し棒70及び受け台184の所定位置への配置において、シリンダ77及び211の作動により、押し棒70が主切り線65で囲まれる範囲の外側であって主切り線65の近傍のガラス板2に押し付けられ、受け台184が主切り線65で囲まれる範囲の内側であって主切り線65の近傍でかつ押し棒70の押し付け位置の近傍でシート121を介してガラス板2を支持する。この押し付け及び支持により、主切り線65で囲まれる範囲の外側でガラス板2に若干の撓みが発生し、而して、ガラス板2は、主切り線65及び端切り線66に沿って折割られる。この押し割りを各所定位置で行うことにより、最後に、所定形状のガラス板が形成される。
【0054】
押し割り後、吸盤装置46のパッド47が、下降されてガラス板2に当接され、ガラス板2を真空吸引して、その後、上昇されることにより、ガラス板2をシート121から離れるように持ち上げる。この持ち上げ後、シート121上に残存した折割り屑は、人手又はロボットなどにより自動的に除去される一方、パッド47に吸着されたガラス板板2は、同じく人手又は自動的に搬出される。そして、新たな折割りされるべきガラス板2がシート121上に人手又は自動的に搬入される。
【0055】
なお、切り線形成中及び押し割り中に、ガラス板2が動かないように、パッド47を下降させてガラス板2を、シート121を介して支持円板172に押しつけるようにしておいてもよい。
【0056】
本ガラス板の加工装置101では、上記のガラス板の加工装置1と同様の効果を得ることができる上に、更に、支え手段112が設けられているため、支持手段3の剛性の支持板22を省き得て、しかも、確実に切り線形成と押し割りとを高速にかつ正確に行い得る。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の好ましい一実施例の側面図である。
【図2】図1に示す実施例の平面図である。
【図3】本発明の好ましい他の実施例の側面図である。
【符号の説明】
【0058】
1 ガラス板の加工装置
2 ガラス板
3 支持手段
4 アーム手段
6 旋回手段
7 可動台
9 直動手段
11 加工ヘッド手段
55 可動子
56 固定子
57 電動リニアモータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工されるべきガラス板を支持する支持手段と、この支持手段上の水平面内で旋回自在なアーム手段と、このアーム手段を水平面内で旋回させる旋回手段と、アーム手段に、当該アーム手段の伸びる方向に摺動自在に装着された可動台と、この可動台をアーム手段の伸びる方向に沿って直動させる直動手段と、支持手段に支持されたガラス板に所定の加工を行うべく、可動台に搭載された加工ヘッド手段とを具備しており、直動手段は、可動台に取り付けられた可動子と、アーム手段に取り付けられた固定子とを有した電動リニアモータを具備しているガラス板の加工装置。
【請求項2】
支持手段は、全体として可撓性を有すると共に厚み方向に若干の弾性を有した無端ベルトと、この無端ベルトのガラス板支持側を下面から支える支持板とを具備している請求項1に記載のガラス板の加工装置。
【請求項3】
支持手段は、可撓性のシートと、この可撓性のシートをその周縁において支える支持枠とを具備している請求項1に記載のガラス板の加工装置。
【請求項4】
アーム手段は、アーム本体と、このアーム本体に取り付けられた案内レールとを具備しており、可動台は、案内レールに嵌合するスライダを具備している請求項1から3のいずれか一項に記載のガラス板の加工装置。
【請求項5】
旋回手段は、電動モータを具備しており、電動モータの出力回転軸にアーム手段が連結されている請求項1から4のいずれか一項に記載のガラス板の加工装置。
【請求項6】
加工ヘッド手段は、切り線形成用のカッタホイールを有したカッタヘッドを具備している請求項1から5のいずれか一項に記載のガラス板の加工装置。
【請求項7】
加工ヘッド手段は、ガラス板に形成された切り線に沿って当該ガラス板を押し割るための押し棒を有した押し割りヘッドを具備している請求項1から6のいずれか一項に記載のガラス板の加工装置。
【請求項8】
支持手段上の水平面内で旋回自在であって、水平面内で前記アームに対して逆方向に伸び、旋回手段に連結されて当該旋回手段により前記アーム手段と共に水平面内で旋回させられる他のアーム手段と、この他のアーム手段に、当該他のアーム手段の伸びる方向に摺動自在に装着された他の可動台と、この他の可動台を他のアーム手段の伸びる方向に沿って直動させる他の直動手段と、前記加工ヘッド手段と共に、支持手段に支持されたガラス板に所定の加工を行うべく、他の可動台に搭載された他の加工ヘッド手段とを具備しており、他の直動手段は、他の可動台に取り付けられた他の可動子と、他のアーム手段に取り付けられた他の固定子とを有した他の電動リニアモータを具備している請求項1から7のいずれか一項に記載のガラス板の加工装置。
【請求項9】
他のアーム手段は、他のアーム本体と、この他のアーム本体に取り付けられた他の案内レールとを具備しており、他の可動台は、他の案内レールに嵌合する他のスライダを具備している請求項8に記載のガラス板の加工装置。
【請求項10】
他の加工ヘッド手段は、切り線形成用の他のカッタホイールを有した他のカッタヘッドを具備している請求項8又は9に記載のガラス板の加工装置。
【請求項11】
他の加工ヘッド手段は、ガラス板に形成された切り線に沿って当該ガラス板を押し割るための他の押し棒を有した他の押し割りヘッドを具備している請求項8から10のいずれか一項に記載のガラス板の加工装置。
【請求項12】
加工ヘッド手段及び他の加工ヘッド手段のうちの少なくとも一方によるガラス板に対する加工点及び加工点の近傍のうちの少なくとも一方での支持手段の撓みを阻止するように、支持手段を支える支え手段を更に具備している請求項1から11のいずれか一項に記載のガラス板の加工装置。
【請求項13】
支え手段は、ガラス板下の水平面内で旋回自在な少なくとも一つの第三のアーム手段と、この第三のアーム手段を水平面内で旋回させる第三の旋回手段と、第三のアーム手段に、当該第三のアーム手段の伸びる方向に摺動自在に装着された第三の可動台と、この第三の可動台を第三のアーム手段の伸びる方向に沿って直動させる第三の直動手段と、加工ヘッド手段及び他の加工ヘッド手段のうちの少なくとも一方によるガラス板に対する加工点及び加工点の近傍のうちの少なくとも一方での支持手段の撓みを阻止すべく、第三の可動台に搭載された支えヘッド手段とを具備している請求項12に記載のガラス板の加工装置。
【請求項14】
第三の直動手段は、第三の可動台に取り付けられた第三の可動子と、第三のアーム手段に取り付けられた第三の固定子とを有した第三の電動リニアモータを具備している請求項13に記載のガラス板の加工装置。
【請求項15】
第三のアーム手段は、第三のアーム本体と、この第三のアーム本体に取り付けられた第三の案内レールとを具備しており、第三の可動台は、第三の案内レールに嵌合する第三のスライダを具備している請求項13又は14に記載のガラス板の加工装置。
【請求項16】
第三の旋回手段は、第三の電動モータを具備しており、第三の電動モータの出力回転軸に第三のアーム手段が連結されている請求項13から15のいずれか一項に記載のガラス板の加工装置。
【請求項17】
支えヘッド手段は、加工ヘッド手段及び他の加工ヘッド手段のうちの少なくと一方の加工点での支持手段の撓みを阻止する回転自在なローラと、ローラの回転可能方向を第三の可動台の移動方向に配向させる配向手段とを具備している請求項13から16のいずれか一項に記載のガラス板の加工装置。
【請求項18】
支えヘッド手段は、ローラを支持手段に対して進退させる進退手段を具備している請求項17に記載のガラス板の加工装置。
【請求項19】
支えヘッド手段は、加工ヘッド手段及び他の加工ヘッド手段のうちの少なくとも一方の加工点の近傍での支持手段の撓みを阻止する受け台と、この受け台を支持手段に対して進退させる進退手段とを具備している請求項13から18のいずれか一項に記載のガラス板の加工装置。
【請求項20】
加工されるべきガラス板を支持する支持手段と、支持手段に支持されたガラス板に所定の加工を行う加工ヘッド手段と、加工ヘッド手段を移動させる移動手段と、加工ヘッド手段によるガラス板に対する加工点での支持手段の撓みを阻止するように、支持手段を支える支え手段と具備しており、支え手段は、加工ヘッド手段によるガラス板に対する加工点での支持手段の撓みを阻止する支えヘッド手段と、支えヘッド手段を加工ヘッド手段の移動に対応させて移動させる移動手段とを具備しており、支えヘッド手段は、加工ヘッド手段の加工点での支持手段の撓みを阻止する回転自在なローラと、ローラの回転可能方向を支えヘッド手段の移動方向に配向させる配向手段とを具備しているガラス板の加工装置。
【請求項21】
支えヘッド手段は、ローラを支持手段に対して進退させる進退手段を更に具備している請求項20に記載のガラス板の加工装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2007−63125(P2007−63125A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−285797(P2006−285797)
【出願日】平成18年10月20日(2006.10.20)
【分割の表示】特願平8−277257の分割
【原出願日】平成8年9月27日(1996.9.27)
【出願人】(000174220)坂東機工株式会社 (51)
【Fターム(参考)】