説明

ガラス板切断方法及びガラス板切断機

【課題】ニュー入れが深くきれいに進行した切り線をガラス板に形成することができるガラス板切断方法及びガラス板切断機を提供すること。
【解決手段】ガラス板切断機1は、ガラス板2に切り線3を形成するカッタホイール4と、カッタホイール4をガラス板2に対して予め設定された形成すべき切り線3aに沿って移動させる移動手段5と、カッタホイール4をガラス板2に対して弾性的に押圧する弾性押圧装置6と、移動手段5によるカッタホイール4の移動において当該カッタホイール4のガラス板2に対する弾性押圧力の強弱を交互に切り替えるように弾性押圧装置6を制御する制御装置7とを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の窓ガラス用ガラス板、ビル、一般住宅等、建築用ガラス板、また、キッチン用ガラス板としての結晶化ガラス板等を切断するガラス板切断方法及びガラス板切断機に関する。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特開2002−274875号公報
【0003】
例えば特許文献1に示すように、ガラス板を切断するためガラス板に切り線を入れるガラス板切断機は、移動装置により切り刃としてのカッタホイールをガラス板に対して移動させると共にエアシリンダ装置によりカッタホイールをガラス板に対して押圧する構造となっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、キッチン用ガラス板(IHガラス)は結晶化ガラス板が使用されているが、この結晶化ガラスは材質的に硬く、普通のガラス切断法をもって直線部を切断(切り線入れ)してもニュー(割れ目進行)が十分にかつきれいに入りにくい。また、特に、自動車用窓ガラス、キッチン用ガラス板(IHガラス)はアール(円弧状)形状となったコーナー部を備えている。このようなアール形状のコーナーを備えたガラス板を切断生産するときに、コーナーのアール形状部の切り線部にはニュー割れ目が十分にかつきれいに確実に入らないし、その進行が十分に行われない。ガラス厚が5mm、6mmと厚くなればなる程、またアールの径が小さくなればなる程、十分なニュー入れは困難である。この対処として従来の切断機は、コーナーのアール部を切断(切り線入れ)するときに、直線部からコーナー部に至るとカッターをガラス板に押し付ける押圧力を強くし、かつカッターの移動スピードを極端に落として切断する。にもかかわらず、コーナー部の切り線に十分に深くしてきれいなニューが入らず、折り割ったとき、その断面はギザギザのハマ欠面となり良質なきれいな面を得難い。
【0005】
本発明は、前記諸点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、結晶化ガラス板等においても、直線部はもとよりコーナーのアール形状においても、ニュー入れが深く、きれいに進行した切り線をガラス板に形成することができるガラス板切断方法及びガラス板切断機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のガラス板切断方法は、切り刃をガラス板に対して予め設定された形成すべき切り線に沿って移動させ、この移動中において、切り刃のガラス板に対する弾性押圧力を強弱に交互に切り替えながら当該切り刃をガラス板に対して弾性的に押圧して、ガラス板に切り線を形成する。
【0007】
本発明のガラス板切断方法によれば、特に切り刃のガラス板に対する弾性押圧力を強弱に交互に切り替えるために、ニュー(割れ目)入れがより深くかつきれいに進行した切り線をガラス板に形成することができる。
【0008】
本発明のガラス板切断方法の好ましい例では、切り刃の移動において当該切り刃のガラス板に対する弾性押圧力の強弱を、一定の時間間隔置きに交互に切り替える。
【0009】
本発明のガラス板切断方法の好ましい例では、空気圧によって切り刃をガラス板に対して弾性的に押圧する。
【0010】
本発明のガラス板切断方法の好ましい例では、切り刃のガラス板に対する弾性押圧力の強弱を、30msから70msの時間間隔置きに交互に切り替える。
【0011】
本発明のガラス板切断方法は、切り刃のガラス板に対する弾性押圧力の強弱を一定の時間間隔置きに交互に切り替えながら、コーナー部、尖端部等のアール部に沿って切り刃を移動させる移動速度は、直線部に沿って切り刃を移動させる移動速度よりも低速度とする。また、本発明のガラス板切断方法の例では、コーナー部、尖端部等のアール部に沿って移動させる移動速度は、当該アール部の曲率に応じて速度調整されてもよい。
【0012】
本発明のガラス板切断機は、ガラス板に切り線を形成する切り刃と、この切り刃をガラス板に対して予め設定された形成すべき切り線に沿って移動させる移動手段と、この切り刃をガラス板に対して弾性的に押圧する弾性押圧装置と、移動手段による切り刃の移動において当該切り刃のガラス板に対する弾性押圧力の強弱を交互に切り替えるように弾性押圧装置を制御する制御装置とを具備している。
【0013】
本発明のガラス板切断機によれば、特に移動手段による切り刃の移動において当該切り刃のガラス板に対する弾性押圧力の強弱を交互に切り替えるように弾性押圧装置を制御する制御装置を具備しているために、ニュー(割れ目)入れが深くきれいに進行した切り線をガラス板に形成することができる。
【0014】
本発明のガラス板切断機の好ましい例では、制御装置は、切り刃の移動において当該切り刃のガラス板に対する弾性押圧力の強弱を、一定の時間間隔置きに交互に切り替えるように弾性押圧装置を制御するようになっている。
【0015】
本発明のガラス板切断機の好ましい例では、弾性押圧装置は、空気圧によって切り刃をガラス板に対して弾性的に押圧するようになっている。
【0016】
本発明のガラス板切断機の好ましい例では、制御装置は、切り刃のガラス板に対する弾性押圧力の強弱を、30msから70msの時間間隔置きに交互に切り替えるように弾性押圧装置を制御するようになっている。
【0017】
本発明のガラス板切断機の例では、制御装置は、コーナー部、尖端部等のアール部における切り刃のガラス板に対する弾性押圧力の強弱を交互に切り替える時間間隔を、直線部における切り刃のガラス板に対する弾性押圧力の強弱を交互に切り替える時間間隔よりも短くなるように弾性押圧装置を制御するようになっていてもよい。
【0018】
本発明のガラス板切断機の例では、制御装置は、切り刃のガラス板に対する弾性押圧力の強弱を、一定の時間間隔置きに交互に切り替えるように弾性押圧装置を制御するようになり、かつ、移動手段により切り刃をコーナー部、尖端部のアール部を移動させる移動速度は、移動手段により切り刃を直線部を移動させる移動速度よりも低速度とする。また、本発明のガラス板切断機の例では、移動手段により切り刃を予め設定された形成すべき切り線のアール部を移動させる移動速度は、当該アール部の曲率に応じて速度調整されてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、自動車用窓ガラスの形状のように尖端部あるいはコーナー部のアール径の小さいガラス板、また、キッチンガラス(IHガラス)のように結晶化ガラスにして、アール形状をしたコーナーを備えるガラス板等において、直線形状部はもとより、尖端部あるいはコーナー部アール形状において、十分に深くきれいなニュー入れが進行した切り線が形成できるガラス板切断方法及びガラス板切断機を提供し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、本発明の実施の形態の例を、図に示す例に基づいて更に詳細に説明する。尚、本発明はこれら例に何等限定されないのである。
【実施例】
【0021】
図1から図4において、本例のガラス板切断機1は、ガラス板2に切り線3を形成する切り刃、本例ではガラス板2上を転動するカッタチップとしてのカッタホイール4と、カッタホイール4をガラス板2に対して予め設定された形成すべき図5の(a)及び(b)に示す切り線3aに沿って移動させる移動手段5と、カッタホイール4をガラス板2に対して弾性的に押圧する弾性押圧装置6と、移動手段5によるカッタホイール4の移動において当該カッタホイール4のガラス板2に対する弾性押圧力の強弱を交互に切り替えるように弾性押圧装置6を制御する制御装置7と、切り線3が形成されるべきガラス板2を支持する支持台8とを具備している。
【0022】
支持台8は、基台10上に設置された支持台本体11と、支持台本体11の上面に張着されている防傷シート12とを具備しており、ガラス板2が防傷シート12に載置されることによって当該ガラス板2を支持するようになっている。
【0023】
移動手段5は、カッタホイール4を支持台8に載置されたガラス板2に対してX−Y平面座標移動させるX−Y方向移動装置21と、カッタホイール4をガラス板2に対してR方向に回動させる回動装置(角度制御装置)22とを具備している。
【0024】
X−Y方向移動装置21は、カッタホイール4をガラス板2に対してX方向に移動させるX方向移動装置25と、カッタホイール4をガラス板2に対してX方向に直交するY方向に移動させるY方向移動装置26とを具備している。
【0025】
X方向移動装置25は、支持台本体11の両側においてX方向に沿って平行に並設した案内レール33及び34と、案内レール33及び34にX方向に移動自在となるように夫々嵌合されているスライドブロック35及び36を夫々有したX方向可動体37及び38と、支持台8よりも上方に配されていると共にX方向可動体37及び38に架設されたY方向に伸びた可動フレーム39と、X方向可動体37にステー等40を介して固着されたX軸サーボモータ41と、X方向可動体37に回転自在に支持されていると共にX軸サーボモータ41にプーリ、ベルト等42を介して連結されたピニオン43と、Y方向に伸びてX方向可動体37及び38に回転自在に支持されていると共に一端でX軸サーボモータ41に連結されているY方向に伸びた回転軸44と、X方向可動体38に回転自在に支持されていると共に回転軸44の他端にプーリ、ベルト等45を介して連結されているピニオン46と、ピニオン43及び46に夫々歯合していると共に支持台本体11の両縁部31及び32であって当該支持台本体11の下面47に夫々固着されたX方向に伸びたラック歯48及び49とを具備している。可動フレーム39には、Y方向移動装置26等を介してカッタホイール4が装着されている。カッタホイール4、弾性押圧装置6、回動装置22等を有したカッタヘッドは、可動フレーム39上をY方向に移動するように装置される。
【0026】
X方向移動装置25は、X軸サーボモータ41の作動によりプーリ、ベルト等42を介してピニオン43を回転させると共に、回転軸44及びプーリ、ベルト等45を介してピニオン46を回転させ、ピニオン43及び46の回転によりラック歯48及び49に沿ってX方向可動体37及び38並びに可動フレーム39をX方向に移動させ、而して、カッタホイール4をX方向に移動させるようになっている。可動フレーム39のX方向の移動においては、X方向可動体37及び38は、案内レール33及び34によってX方向に案内される。ピニオン43及び46は、ラインシャフト44により互いに連結され、X軸サーボモータ41の作動により互いに機械的に同期して回転される。斯かるX方向移動装置25は、カッタホイール4をX方向に往復直動させるようになっている。
【0027】
Y方向移動装置26は、可動フレーム39に固着されたY方向に伸びた一対の案内レール51及び52と、案内レール51にY方向に移動自在となるように嵌合されているスライドブロック53及び54を有したY方向可動体55と、Y方向可動体に固着されたY軸サーボモータ56と、Y軸サーボモータ56に装着されたピニオン57と、案内レール51を介して可動フレーム39に固着されたY方向に伸びたラック歯58とを具備している。図4において略L字状に示されるY方向可動体55には、カッタヘッドが取り付けられ、このカッタヘッドは上述の通り弾性押圧装置6及び回動装置(角度制御装置)22、カッタホイール4を有している。
【0028】
Y方向移動装置26は、Y軸サーボモータ56の作動によりピニオン57を回転させ、この回転によりラック歯58に沿ってY方向可動体55をY方向に移動させ、而して、カッタホイール4をY方向に移動させるようになっている。Y方向可動体55は、ピニオン57が回転された際に案内レール51及び52によってY方向に案内される。斯かるY方向移動装置26は、カッタホイール4をY方向に往復直動させるようになっている。
【0029】
回動装置(角度制御装置)22は、Y方向可動体55に固着された角度制御モータ61と、角度制御モータ61に取り付けられていると共に角度制御モータ61の作動により回転される回転ギヤ62と、ギヤ62に歯合している回転ギヤ63と、回転ギヤ63が固着されていると共に内周面66aにおいてボールスプライン機構64及びX及びY方向に直交するZ方向に伸びたロッド65等を介してカッタホイール4に連結されている回転筒体66とを具備している。
【0030】
回転筒体66は、本例では、下端にフランジが一体的に形成されていると共に内周面66aにおいてボールスプライン機構64及びロッド65が配される挿通孔を規定している筒状本体67と、環状上面で筒状本体67のフランジ部に固着されていると共に環状下面に回転ギヤ63が固着されている円環状の環状板68と、筒状本体67の外周面67bに装着されているフランジ付きブッシュ69とを具備している。斯かる回転筒体66は、Y方向可動体55に固着されている支持体70に軸受71を介して回転自在に支持されている。尚、筒状本体67は、支持体70から脱落しないように当該支持体70に支持されている。
【0031】
ボールスプライン機構64は、ロッド65の軸心Oを中心とした回転筒体66のR方向の回転をロッド65に伝達すると共にロッド65が昇降自在となるように当該ロッド65自体のZ方向の上下動を許容している。
【0032】
回動装置(角度制御装置)22は、角度制御モータ61の作動により回転ギヤ62及び63を介して筒状本体67をR方向に回転させ、この回転をボールスプライン機構64、ロッド65等を介してカッタホイール4に伝達し、而して、カッタホイール4をR方向において角度制御させるようになっている。カッタホイール4の刃先は、回動装置(角度制御装置)22により角度制御されることによって切り線形成方向に配向される。
【0033】
弾性押圧装置6は、カッタホイール4を下降させるための電気−空気圧レギュレータ81及びバルブ装置82と、電気−空気圧レギュレータ81及びバルブ装置82によりカッタホイール4を下降させるための空気圧よりも高い空気圧をもってカッタホイール4を下降させるための電気−空気圧レギュレータ83及びバルブ装置84と、カッタホイール4を上昇させるための電気−空気圧レギュレータ85及びバルブ装置86と、バルブ装置82、84及び86に接続されていると共にY方向可動体55に固着されたエアシリンダ装置87と、上端でエアシリンダ装置87のピストンロッド88の外部先端に保持体89を介して回転自在に取り付けられていると共に、下端にカッタブロック90を介してカッタホイール4が回転自在に取り付けられているロッド65とを具備している。
【0034】
制御装置7に夫々接続された電気−空気圧レギュレータ81、83及び普通レギュレータ85は、制御装置7からの信号に基づく所定の空気圧をバルブ装置82、84及び86に付与している。電気−空気圧レギュレータ81、83及び普通レギュレータ85は、NO形の3ポートバルブ装置82、84及び86を夫々介してエアシリンダ装置87に接続されている。尚、電気−空気圧レギュレータ81、83及びレギュレータ85は、もちろんコンプレッサー(図示せず)に夫々接続されており、電気−空気圧レギュレータ81及び83は制御装置7からの信号に基づいて、レギュレータ85は手動で、コンプレッサーからの空気圧を所定の空気圧に調整してバルブ装置82、84及び86の夫々に付与している。電気−空気圧レギュレータ81は、バルブ装置82に対して、弱圧を付与しており、電気−空気圧レギュレータ83は、バルブ装置84に対して、バルブ装置82に付与される空気圧よりも高い強圧を付与している。レギュレータ85は、エアシリンダ装置87に保持体89、ロッド65、カッタブロック90を介してカッタホイール4を上昇させるのに必要とされる空気圧をバルブ装置86に付与している。
【0035】
本例ではバルブ装置84は、OFF(非通電)で空気室97に接続されており、バルブ装置82は、ON(通電)でバルブ装置84を介して空気室97に接続されている。バルブ装置86は、OFFで空気室98に接続されている。バルブ装置82、84及び86は、制御装置7からの信号電圧を受けて作動することにより、空気室97及び/又は空気室98に対する空気圧の付与及び/又は当該付与の解除を夫々行うようになっている。
【0036】
保持体89は、ピストンロッド88の外部先端が固着された保持体本体101と、保持体本体101に装着された軸受102と、軸受102を介して保持体本体101に回転自在に保持されていると共にロッド65の上端が取り付けられている回転体103とを具備している。尚、回転体103、ロッド65及びカッタブロック90には、カッタホイール4によるガラス板2に対する切り線形成においてカッタホール4とガラス板2との当接部にカッターオイルを供給するための孔104が形成されている。
【0037】
弾性押圧装置6によりカッタホイール4のガラス板2に対する弾性押圧力の強弱のうちの弱い弾性押圧力をもって当該カッタホイール4をガラス板2に弾性的に押圧させる動作は、次の通りである。バルブ装置82により、電気−空気圧レギュレータ81からの空気圧を、当該バルブ装置82を介してOFF状態にあるバルブ装置84に付与され、このOFF状態(非通電状態)にあるバルブ装置84を介して電気−空気圧レギュレータ81の弱圧がエアシリンダ装置87の空気室97に付与され、この弱圧をもって保持体89、ロッド65等を介してカッタホイール4をガラス板2に押圧する。一方、電気−空気圧レギュレータ83の強圧はOFF状態にあるバルブ装置84に付与されているが、このバルブ装置84により閉止されている。さらに、カッタホイール4を上昇させるところのレギュレータ85からの空気圧は、OFF状態にあるバルブ装置86に付与されているが、このバルブ装置86により閉止され、エアシリンダ装置87の空気室98に通じていない。このようにして、カッタホイール4は弱圧をもってガラス板2を押圧している。尚、始期、弾性押圧装置6によりカッタホイール4をガラス板2に当接させるべく下降させる動作も上記同様である。また、上記弱い弾性押圧力は、従来、直線部を切断(切り線を入れる)するときの押圧力に相当する押圧力である。
【0038】
弾性押圧装置6によりカッタホイール4のガラス板2に対する弾性押圧力の強弱のうちの強い弾性押圧力をもって当該カッタホイール4をガラス板2に弾性的に押圧させる動作は、次の通りである。バルブ装置82はON状態のそのままで、バルブ装置84がON状態に変わり、バルブ装置82からの弱圧はこのバルブ装置84で閉止され、代わりに、電気−空気圧レギュレータ83からの強圧がこのバルブ装置84を通ってエアシリンダ装置87の空気室97に付与され、カッタホイール4はガラス板2に強い弾性押圧力をもって押圧される。このときも、もちろんバルブ装置86はOFF状態にあり、レギュレータ85から空気圧は止められ、エアシリンダ装置87の空気室98に通じない。尚、上記強い弾性押圧力は、従来、小さいアール部を切断するときの押圧力に相当する押圧力である。
【0039】
切断中における弾性押圧力の強弱の切り替えは、バルブ装置84のON、OFFの切り替えによって行う。もちろん、バルブ装置84のON、OFFの切り替えは制御装置7から一定の時間間隔(30ms〜70ms)をもって、信号電圧によって行う。バルブ装置84をOFF状態に戻し、電気−空気圧レギュレータ83からエアシリンダ装置87に通じる強圧回路をこのバルブ装置84内で閉じ、代わりに、このバルブ装置84を介してエアシリンダ装置87の空気室97とバルブ装置82を通じさせ、このバルブ装置82をOFF状態として、エアシリンダ装置87の空気室97の空気室を大気中に排出する。同時に電気−空気圧レギュレータ81からの弱圧をこのバルブ装置82で閉止する。同時に、バルブ装置86をON装置として、レギュレータ85からのシリンダ上昇用の空気圧をこのバルブ装置86内で開通させてエアシリンダ装置87の空気室98に付与する。すると、このレギュレータ85からの空気圧をもって保持体89、ロッド65を介してカッタホイール4が上昇し、ガラス板2から離れる。
【0040】
制御装置7は、操作盤111が操作されることにより切り線3a、弾性押圧装置6による弾性押圧力の強弱の切り替え、移動手段5によるカッタホイール4の移動等に関して種々設定され、斯かる設定に基づいて弾性押圧装置6及び移動手段5に制御に関する電気的な信号を与えるコンピュータ112によって具体化される。制御装置7は、弾性押圧装置6及び移動手段5をCNC制御するようになっていてもよい。斯かる制御装置7は、上述及び後述の動作を制御するようになっている。
【0041】
以下、本例のガラス板切断機1によるガラス板2に対する切り線3の形成に関する動作について詳細に説明する。まず、防傷シート12上に切り線3を形成すべきガラス板2を載置することによって支持台8に当該ガラス板2を支持させる。次に、X−Y方向移動装置21により、支持台8に支持されたガラス板2に対して予め設定された切り線形成開始位置の上方までカッタホイール4をX−Y平面座標移動させると共に、回動装置(角度制御装置)22によりカッタホイール4を切り線形成方向に配向し、弾性押圧装置6により、切り線形成開始位置の上方まで移動され且つ切り線形成方向に配向されたカッタホイール4に、電気−空気圧レギュレータ81からの空気圧を空気室97に付与することにより、ガラス板2に向かって下方に向かう弱い弾性押圧力(直線切り用)を付与し、而してカッタホイール4をZ方向において下降させ、ガラス板2の上面2aに当接させ、当該弾性押圧力をもってガラス板2を弾性的に押圧する。尚、切り線形成開始位置は、本例では、ガラス板2に対して予め設定された形成すべき切り線3aのうちの直線部15とする。
【0042】
切り線形成開始位置においてガラス板2を弾性的に押圧するカッタホイール4は、図5の(a)に示すように、X−Y方向移動装置21によりX−Y平面座標移動され、直線部15に沿って移動される。このように移動されるカッタホイール4は、ガラス板2上を転動する。斯かるカッタホイール4の移動において、バルブ装置84が一定の時間間隔置きに「ON」、「OFF」の繰り返しをし、電気−空気圧レギュレータ81の弱圧と電気−空気圧レギュレータ83の強圧とが弾性押圧装置6としてのエアシリンダ装置87の空気室97に交互に付与され、弾性押圧力の強弱として交互に切り替わりながらカッタホイール4を押圧する。弾性押圧装置6による弾性押圧力の強弱を切り替える一定の時間間隔は、30msから70msの範囲で設定されてもよく、例えば50msであってもよい。上述のようにして、カッタホイール4は、移動手段5及び弾性押圧装置6によりガラス板2に対して脈動押しされることによって直線部15に沿ってガラス板2にニュー(割れ目)を深くかつきれいに進行させながら切り線3を形成する。
【0043】
カッタホイール4により切り線3aのうちのアール部16に沿ってガラス板2に切り線3を形成する場合には、図5の(b)に示すように、X−Y方向移動装置21及び回動装置22によりカッタホイール4をX−Y平面座標移動及び回動させながらアール部16に沿って移動させ、且つ、弾性押圧装置6により一定の時間間隔置きに間欠的に弾性押圧力の強弱を交互に切り替えながらカッタホイール4を弾性的に押圧する。ここで、X−Y方向移動装置21によりカッタホイール4をガラス板2のコーナー部17のアール部16に沿って移動させる際の移動速度は、X−Y方向移動装置21によりカッタホイール4を直線部15に沿って移動させる際の移動速度よりも低速度であり、このために、アール部においてはカッタホイール4の移動距離に対して押圧力の強弱の切り替えが密となり、強圧の押圧力の割合が多くなった状態で切り線が入れられる。このため、アール部におけるニュー入れをより深くかつきれいに入れられる。このように、切り線3が形成されたガラス板2を切り線3に沿って折り割ると、その折割面は、ハマ欠けのないきれいな面となる。
【0044】
本例のガラス板切断機1によれば、ガラス板2に切り線3を形成するカッタホイール4と、カッタホイール4をガラス板2に対して予め設定された形成すべき切り線3aに沿って移動させる移動手段5と、カッタホイール4をガラス板2に対して弾性的に押圧する弾性押圧装置6と、移動手段5によるカッタホイール4の移動において当該カッタホイール4のガラス板2に対する弾性押圧力の強弱を交互に切り替えるように弾性押圧装置6を制御する制御装置7とを具備しているために、ニュー(割れ目)入れがより深く、均一に、きれいに進行した切り線3をガラス板2に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施の形態の例の平面説明図である。
【図2】図1に示す例の正面説明図である。
【図3】図1に示す例の概念説明図である。
【図4】図1に示す例の一部拡大説明図である。
【図5】(a)及び(b)は、図1に示す例の主にカッタホイールに関する説明図である。
【符号の説明】
【0046】
1 ガラス板切断機
2 ガラス板
3、3a 切り線
4 カッタホイール
5 移動手段
6 弾性押圧装置
7 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
切り刃をガラス板に対して予め設定された形成すべき切り線に沿って移動させ、この移動中において、切り刃のガラス板に対する弾性押圧力を強弱に交互に切り替えながら当該切り刃をガラス板に対して弾性的に押圧して、ガラス板に切り線を形成するガラス板切断方法。
【請求項2】
切り刃の移動において当該切り刃のガラス板に対する弾性押圧力の強弱を、一定の時間間隔置きに交互に切り替える請求項1に記載のガラス板切断方法。
【請求項3】
空気圧によって切り刃をガラス板に対して弾性的に押圧する請求項1又は2に記載のガラス板切断方法。
【請求項4】
切り刃のガラス板に対する弾性押圧力の強弱を、30msから70msの時間間隔置きに交互に切り替える請求項1から3のいずれか一項に記載のガラス板切断方法。
【請求項5】
ガラス板に切り線を形成する切り刃と、この切り刃をガラス板に対して予め設定された形成すべき切り線に沿って移動させる移動手段と、この切り刃をガラス板に対して弾性的に押圧する弾性押圧装置と、移動手段による切り刃の移動において当該切り刃のガラス板に対する弾性押圧力の強弱を交互に切り替えるように弾性押圧装置を制御する制御装置とを具備しているガラス板切断機。
【請求項6】
制御装置は、切り刃の移動において当該切り刃のガラス板に対する弾性押圧力の強弱を、一定の時間間隔置きに交互に切り替えるように弾性押圧装置を制御するようになっている請求項5に記載のガラス板切断機。
【請求項7】
弾性押圧装置は、空気圧によって切り刃をガラス板に対して弾性的に押圧するようになっている請求項5又は6に記載のガラス板切断機。
【請求項8】
制御装置は、切り刃のガラス板に対する弾性押圧力の強弱を、30msから70msの時間間隔置きに交互に切り替えるように弾性押圧装置を制御するようになっている請求項5から7のいずれか一項に記載のガラス板切断機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−297244(P2007−297244A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−126995(P2006−126995)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(000174220)坂東機工株式会社 (51)
【Fターム(参考)】