説明

ガラス板梱包体の製造方法

【課題】ガラス板梱包体を効率良く製造可能とする。
【解決手段】パレット20の収容部23に、保護シート11とガラス板Gとを縦姿勢で一枚ずつ積み込む積込処理を繰り返し実行することにより、収容部23に、保護シート11とガラス板Gとが縦姿勢で交互に積層されてなる積層体GBを形成しながら収容する積層工程を含むガラス板梱包体GAの製造方法である。上記の積込処理を、パレット20の上方に配置したシート供給手段10から収容部23に向けて保護シート11を垂下供給すると共に、収容部23のうち垂下供給される保護シート11よりも前方側領域にガラス板積込手段3で取得した積み込み対象のガラス板Gを積み込むことにより行う。積み込み対象のガラス板Gを収容部23に積み込むとき、このガラス板Gの下辺Gaとパレット20の基台部21とで垂下供給された保護シート11の下端部11aを挟持するように、ガラス板積込手段3をパレット20に接近移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板梱包体の製造技術の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイなどのフラットパネルディスプレイ(FPD)用のガラス基板、太陽電池用のガラス基板、電磁調理器用のガラス基板、建築構造物用のガラス板(以下、これらを総称して「ガラス板」という)等、所定寸法に切断されて矩形状をなすガラス板は、通常、縦姿勢あるいは横姿勢でパレット上に積層された状態にて輸送される。ただし、ガラス板のみを積層させると、輸送時の振動等により個々のガラス板の表面にキズ等の欠陥が形成され易く、ガラス板が使用不能になるなどの重大問題が生じる可能性が高い。そこで、ガラス板の製造ラインの最終段階等において、ガラス板を順次パレット(パレットの収容部)に積み込むときには、ガラス板を縦姿勢または横姿勢の何れの姿勢でパレットに積み込むかに関わらず、ガラス板相互間に、紙シート(合紙)や発泡樹脂シートなどの保護シートが介設される。
【0003】
ガラス板および保護シートを縦姿勢または横姿勢の何れの姿勢でパレットの収容部に積み込むかは、ガラス板のサイズや板厚等に応じて適宜選択し得るが、特に、基台部およびその後部に立設された背面部を備えるパレットのうち、基台部の上方でかつ背面部の前方に画成される収容部に、保護シートとガラス板とを縦姿勢で交互に積層させた積層体を収容・梱包してなるガラス板梱包体を輸送する際には、輸送時の振動等の影響により、保護シートの姿勢が変化し易い。前方の保護シートの姿勢が変化すると、ガラス板同士の接触を適切に回避することができなくなるおそれが高まる他、保護シートの下端部(保護シートの下辺の近傍領域)が、先行して積み込まれたガラス板(後方のガラス板)とパレットの基台部との間に噛み込まれ、その結果、前方の保護シートの取り出しが困難になるおそれがあり、パレットからのガラス板の取り出し作業性が悪化するおそれがある。また、ガラス板を縦姿勢で積層させたときには、ガラス板の下辺でその自重が支持されることに加え、ガラス板の下辺に輸送時の振動等が繰り返し付加されることから、ガラス板の下辺およびその近傍領域に亀裂や欠け等の欠陥が形成され易い。
【0004】
このような問題は、例えば下記の特許文献1に記載されているような方法でガラス板梱包体(保護シートとガラス板の積層体)を製造することにより、可及的に解消し得る。詳しくは、まず、搬送コンベア上に横姿勢で位置決めされたガラス板を、多関節ロボットのハンドに取り付けたガラス板吸着手段により吸着した後、このガラス板を給紙テーブル上の所定位置に横姿勢で載置されているガラス板よりも上下方向寸法が大きい保護シートとしての合紙上に移動させ、合紙の上端部(合紙の上辺近傍領域であって、ガラス板よりも上側にはみ出すように設けられている部分)を、ハンドに取り付けられた合紙吸着手段により吸着する。二つの吸着手段でガラス板および合紙を一枚ずつ吸着した後、多関節ロボットを回転・旋回・伸縮移動等させることにより、合紙とガラス板とを縦姿勢で同時にパレットの収容部に積み込む。
【0005】
なお、保護シートとしての合紙の下端部(下辺の近傍領域)は、当該合紙が合紙吸着手段で吸着されるよりも前に、適宜の手段を用いて予め折り曲げておく。そして、合紙とガラス板とをパレットの収容部に積み込んだとき、合紙の下端部に形成した折曲げ部がガラス板とパレットの基台部とで挟持されるようにして、ガラス板は合紙の折曲げ部上に載置される。
【0006】
このように、合紙の下端部に形成した折曲げ部が、合紙と同時に積み込まれるガラス板(各合紙の前方側に隣接配置されるガラス板)とパレットの基台部とで挟持されるような梱包形態を採用すれば、ガラス板に対する合紙の相対移動が規制されることとなるので、合紙を所定の位置・姿勢に保持することができる。そのため、ガラス板同士の接触を適切に回避することができることに加え、パレットからのガラス板の取り出し作業を円滑に進めることができる。また、各ガラス板が合紙を介してパレット上に縦姿勢で載置されることとなるので、各ガラス板の下辺およびその周辺部位に亀裂や欠け等の欠陥が形成され難くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001―139138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では次のような問題がある。まず、保護シートとしての合紙の下端部を予め折り曲げるための手段(装置)を設置する必要がある分、ガラス板梱包体(積層体)の製造装置、ひいてはガラス板の製造ラインが複雑・大型化する。また、下端部が予め折り曲げられた合紙を多関節ロボットで移送するようにしているが、下端部を折り曲げたままの状態に維持し得るような保護シートは、実質的に紙に限定されることから、保護シートの選択自由度が低いという問題もある。
【0009】
さらに、特許文献1に記載の方法では、ガラス板吸着手段と合紙吸着手段とを取り付けてなる多関節ロボットでガラス板と合紙とを順次吸着(取得)してから、これらをパレットの収容部に積み込むようにしていることから、高機能な多関節ロボットを用いる必要があるばかりでなく、積み込み1サイクルに比較的多くの時間を要するという問題がある。さらに、保護シートとしての合紙は、その上端部のみが吸着された状態で移送されることから、多関節ロボットが回転・旋回・伸縮移動等するのに伴ってその姿勢が変化し易く、合紙を所定の姿勢・態様でパレットに積み込むことが難しいという問題がある。このような問題は、例えば多関節ロボットの動作速度を落とすことによって可及的に解消し得るが、積み込み1サイクルに要する時間が一層長くなる。
【0010】
以上の実情に鑑み、本発明は、パレットの収容部に、保護シートとガラス板とを縦姿勢で交互に積層した積層体を収容してなり、かつ積層体を構成する各保護シートの下端部が、少なくとも各保護シートの前方側に隣接配置されるガラス板と基台部とで挟持されてなるガラス板梱包体を、簡単な装置構成で効率良く製造可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成すべく創案された本発明に係るガラス板梱包体の製造方法は、パレットの基台部の上方でかつ背面部の前方に画成される収容部に、保護シートとガラス板とを縦姿勢で一枚ずつ積み込む積込処理を繰り返し実行することにより、収容部に、保護シートとガラス板とが縦姿勢で交互に積層されてなる積層体を形成しながら収容する積層工程を含み、積込処理を、収容部へ向けてシート供給手段から保護シートを垂下供給すると共に、収容部のうち垂下供給される保護シートよりも前方側領域にガラス板積込手段で取得したガラス板を積み込むことにより行い、かつこのガラス板の積み込みを、このガラス板と基台部とで垂下供給された保護シートの下端部を挟持するように行うことを特徴とする。
【0012】
上記の方法によれば、シート供給手段から垂下供給された保護シートと、ガラス板積込手段により取得された(積み込み対象の)ガラス板とが縦姿勢でパレットの収容部に積み込まれるのと同時に、垂下供給された保護シートの下端部が、当該保護シートの前方側に隣接配置されるガラス板と基台部とで挟持される。そのため、従来方法のように、保護シートの下端部を予め折り曲げておく必要がなくなる。これにより、保護シートの下端部を折り曲げるための手段を省略することができ、ガラス板梱包体(積層体)の製造装置、ひいてはガラス板の製造ラインを簡略化することが、また、使用する保護シートの選択自由度を高めることができる。具体的には、保護シートとして、例えば、紙シート(合紙)に比べて緩衝性能に優れた発泡樹脂シートを使用することが可能となる。従って、積層体を構成する各ガラス板の下辺や表面にキズや亀裂等の欠陥が形成され難くなり、高品質のガラス板を後工程に供給することができる。
【0013】
また、保護シートを、(ガラス板積込手段とは別に設けた)シート供給手段からパレットの収容部に向けて垂下供給するようにしたので、ガラス板積込手段は、積み込み対象のガラス板を取得する取得位置と、取得したガラス板をパレットの収容部に積み込む積み込み位置との間で往復動可能なものであれば足りる。そのため、ガラス板と保護シートを順次取得してからこれらをパレットの収容部に積み込むように構成された多関節ロボットを用いる従来構成に比べ、積層体の製造装置を簡略化することができることが、また、積込処理1回当たりのサイクルタイムを短縮することができる。さらに、保護シートを保護シート供給手段からパレットの収容部に向けて垂下供給するようにしたので、保護シートをパレットに積み込む過程で保護シートの姿勢等が悪化するような事態を可及的に防止するうえで有利となる。
【0014】
上記構成において、積層体を構成する各保護シートに、この保護シートの前方側に隣接配置されるガラス板よりも前方側にはみ出し、後続のガラス板と基台部とで挟持されるはみ出し部が形成されるように、上記積込処理を実行しても良い。なお、ここでいう「後続のガラス板」とは、後続の積込処理にてパレットの収容部に積み込まれる一又は複数枚のガラス板のことを意味する。
【0015】
このようにすれば、各保護シート(の下端部)を複数枚のガラス板とパレットの基台部とで挟持することが可能となるので、保護シートを所定の位置・姿勢に保持するうえで、すなわちガラス板の表面に欠陥が形成される可能性を減じるうえで一層有利となる。また、ガラス板とパレットの基台部との間に複数枚の保護シートを介在させることが可能となるので、ガラス板の下辺に亀裂などの欠陥が形成される可能性を減じるうえで一層有利となる。なお、このような構成は、例えば、保護シートの垂下供給のタイミングや速度、並びにガラス板積込手段をパレットに対して接近移動させるタイミングや速度などを適宜調整することで実現することができる。
【0016】
上記の積込処理が繰り返し実行される積層工程では、ガラス板積込手段により取得されるガラス板(積み込み対象のガラス板)を縦姿勢で保持しておくのが望ましい。
【0017】
積み込み対象のガラス板を縦姿勢で保持しておけば、ガラス板積込手段により取得したガラス板をパレットの収容部に積み込むまでの間に、当該ガラス板の姿勢を大きく変化させる必要がなくなる。そのため、横姿勢で保持されたガラス板を取得し、これを縦姿勢でパレットの収容部に積み込むようにした従来方法に比べて、ガラス板積込手段の機構を簡略化することができる。また、積込処理のサイクルタイムを減じるうえで有利となる。
【0018】
以上の構成において、基台部を、その後部側が前部側よりも下方に位置した傾斜姿勢に保持した状態で、積込処理を繰り返し実行するようにしても良い。
【0019】
このようにすれば、パレットの収容部に積み込まれたガラス板、ひいては積層体がパレットの前方側に倒れ難くなるので、積層工程(積層処理)を円滑に実行することができる。
【0020】
また、以上の構成において、積込処理が完了する毎に、シート供給手段を、パレットの前方側に向けて所定量相対移動させるようにしても良い。
【0021】
このようにすれば、パレットの収容部の前後方向所定位置に保護シートを垂下供給することができるので、高品質の積層体を形成するうえで有利となる。
【0022】
以上に示す本発明に係るガラス板梱包体の製造方法は、ガラス板が、フラットパネルディスプレイ(FPD)用のガラス板であるときに特に好ましく適用することができる。すなわち、FPDは、大型化および薄板化が進展していることに加え、パネルメーカー間でのコスト競争も激化していることから、積層体を構成するガラス板の各部に欠陥が形成され難く、しかもガラス板の生産効率を向上し得る本発明に係る製造方法は特に有益である。もちろん、本発明に係るガラス板梱包体の製造方法は、FPD用のガラス板のみならず、太陽電池用のガラス板、電磁調理器用のガラス板、あるいは建築構造物用のガラス板等を縦姿勢で積層・梱包してなるガラス板梱包体を製造する際にも好ましく適用することができる。
【発明の効果】
【0023】
以上に示すように、本発明によれば、パレットの収容部に、保護シートとガラス板とを縦姿勢で交互に積層させた積層体を収容してなり、かつ積層体を構成する各保護シートの下端部が、少なくとも各保護シートの前方側に隣接配置されるガラス板と基台部とで挟持されてなるガラス板梱包体を、簡単な装置構成で効率良く製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係るガラス板梱包体の製造方法を実施する際に使用する積層体製造装置の概略斜視図である。
【図2】図1に示す積層体製造装置を用いて製造されたガラス板梱包体の概略側面図である。
【図3】図1に示す積層体製造装置の部分概略側面図であり、積層工程の初期段階を模式的に示す図である。
【図4】図1に示す積層体製造装置の部分概略側面図であり、積層工程の初期段階を模式的に示す図である。
【図5】図1に示す積層体製造装置の部分概略側面図であり、積層工程が図3に示す段階から進行した状態を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0026】
図1に、本発明に係るガラス板梱包体の製造方法を実施する際に使用する積層体製造装置1の概略斜視図を示す。この積層体製造装置1は、図2に示すガラス板梱包体GAを製造する工程のうち、パレット20の収容部23に、保護シート11とガラス板Gとが縦姿勢で交互に積層されてなる積層体GBを形成しながら収容する積層工程を実行するために使用されるものであって、積み込み対象のガラス板Gを取得し、取得したガラス板Gをパレット20の収容部23に積み込むガラス板積込手段3と、パレット20の上方に配置され、パレット20の収容部23に向けて保護シート11を垂下供給するシート供給手段10とを主要部として構成される。パレット20は、積層体GBを下方から支持する基台部21と、基台部21の後端部21bに立設され、積層体GBの背面を立て掛け支持する背面部22とを備えるものであり、基台部21の上方でかつ背面部22の前方に、積層体GBを収容する収容部23が画成される。
【0027】
ここで、図2に示すガラス板梱包体GAの詳細な構成を説明しておく。同図に示すガラス板梱包体GAは、パレット20の収容部23に、保護シート11とガラス板Gとを縦姿勢で交互に積層させてなる積層体GBを収容し、図示しない適宜の手段で梱包したものである。ガラス板Gは、所定寸法に切断されて矩形状をなしたフラットパネルディスプレイ(FPD)用のガラス板であり、その四辺と表裏面の境界角部には面取り加工が施されている。一方、保護シート11は、矩形状をなし、その四辺全てが隣接したガラス板Gよりも外側にはみ出すように、縦寸法および横寸法共にガラス板Gのそれよりも所定量大きいものが使用される。保護シート11としては、紙シート(合紙)や発泡樹脂シートなどが使用可能であるが、ここでは紙シートに比べて緩衝性能に優れた発泡樹脂シートを使用している。なお、ガラス板Gの実際の板厚は0.5mm〜2.0mmの範囲内とされ、保護シート11の実際の厚みは0.05〜3.00mm程度であるが、図2〜図5では、ガラス板Gの板厚および保護シート11の厚みの双方を誇張して描いている。また、保護シート11として発泡樹脂シートを使用している関係上、保護シート11のうちでガラス板Gの荷重を支持している部分は実際には圧縮変形しているが、図2及び図5はこの点を無視して描いている。
【0028】
積層体GBを構成する各保護シート11には、各保護シート11の前方側(背面部22の反対側)に配置された複数枚のガラス板Gと基台部21との間に介設され、これらガラス板Gと基台部21とで挟持された下敷き部12が一体的に設けられている。すなわち、この下敷き部12は、各保護シート11の前方側に隣接配置されるガラス板Gよりも前方側にはみ出し、後続のガラス板Gと基台部21とで挟持されるはみ出し部13を含んで構成されている。なお、ここでいう「下敷き部12」は、特許文献1に記載の「折曲げ部」と同一の機能を奏する部位であるが、「下敷き部12」と称するようにしたのは、以下に詳述する方法で積層体GBを形成する関係上、使用する保護シート11の種類やガラス板Gの積み込み態様によっては、保護シート11が完全に折れ曲がらない(保護シート11に折り曲げ線が形成されない)場合があるからである。
【0029】
各保護シート11に設けられている下敷き部12の基台部21の前後方向に沿った寸法は、2〜30枚程度、好ましくは2〜5枚程度のガラス板Gを載置し得るような寸法に設定され、図示例では3枚のガラス板Gを載置し得る寸法としている。さらに言えば、各保護シート11のはみ出し部13の基台部21の前後方向に沿った寸法は、1〜4枚程度のガラス板Gを載置し得るような寸法とすることができる。このようにすれば、各保護シート11(の下敷き部12)を複数枚のガラス板Gと基台部21とで挟持することが可能となるので、保護シート11を所定の位置・姿勢で保持するうえで有利となり、各ガラス板Gの表面および裏面にキズ等の欠陥が形成され難くなる。また、ガラス板Gと基台部21との間に複数枚の保護シート11を介在させることが可能となるので、ガラス板Gの下辺Gaおよびその近傍領域に亀裂などの欠陥が形成され難くなる。
【0030】
なお、各保護シート11のはみ出し部13の寸法は、全ての保護シート11で同寸に設定する必要はなく、互いに異ならせることも可能である。例えば、パレット20の収容部23に最初に積み込まれる保護シート11(背面部22に近接配置される保護シート11)のはみ出し部13の寸法を最長とし、以後、保護シート11のはみ出し部13の寸法を段階的に短くすることもできる。なお、上記したはみ出し部13の機能を考慮すると、パレット20の収容部23に最後に積み込まれる保護シート11には、必ずしもはみ出し部13を形成しなくても良い。
【0031】
積層体製造装置1の説明に戻り、ガラス板積込手段3は、搬送コンベア2に沿って順次下流側に搬送され、搬送コンベア2の終端部にて縦姿勢で保持されたガラス板G(積み込み対象のガラス板G)を取得する取得位置と、取得したガラス板Gをパレット20の収容部23に積み込む積み込み位置との間を往復動するように構成されている。このガラス板積込手段3は、詳細な図示は省略しているが、例えば多関節ロボットとされ、図3〜図5に示すように、積み込み対象のガラス板Gを吸着するための吸着部材5と、アームの先端に取り付けられ、吸着部材5を保持した保持部材4とを備える。
【0032】
シート供給手段10は、パレット20の上方に配置され、パレット20の収容部23に向けて保護シート11を垂下供給するものであり、例えば、長尺の保護シート11がロール状に巻き取られたシートロールから保護シート11を順次巻き出して垂下供給し、その供給量が所定値に達した時点でシートロールを幅方向に切断するように構成されたものとされる。このような構成としておけば、上記したはみ出し部13の寸法を、保護シート11相互間で異ならせることも容易に実現し得る。また、パレット20に積み込むべきガラス板Gのサイズ変更にも容易に対応し得る。なお、シート供給手段10としては、予め所定寸法に切断された保護シート11を順次垂下供給するように構成されたものを使用することもできる。
【0033】
パレット20は、上面が水平面に対して所定角度傾斜した支持部材30上に載置されており、当該パレット20の収容部23への保護シート11およびガラス板Gの積み込み作業中、基台部21の後端部21bの側が基台部21の前端部21aの側よりも下方に位置するような傾斜姿勢で保持される。
【0034】
図示は省略しているが、シート供給手段10は、支持部材30上に載置されたパレット20の前方側に向けて相対移動可能に構成しておく。より詳しくは、例えば、シート供給手段10から垂下供給された保護シート11、およびガラス板積込手段3により取得されたガラス板Gを一枚ずつパレット20の収容部23に積み込む積込処理が完了する毎に、保護シート11の厚みとガラス板Gの板厚の合計量に概ね相当する分だけ、シート供給手段10がパレット20の前方側に向けて相対移動するように構成しておく。このようにしておけば、保護シート11を、常にパレット20の前後方向所定位置に供給することができるという利点がある。
【0035】
積層体製造装置1は、主に以上の構成を具備し、以下のようにして、パレット20の収容部23に保護シート11とガラス板Gとを縦姿勢で一枚ずつ積み込む積込処理を繰り返し実行することにより、収容部23に、保護シート11とガラス板Gとが縦姿勢で交互に積層されてなる積層体GBを形成しながら収容する積層工程を実行する。
【0036】
まず、搬送コンベア2の終端部に縦姿勢で載置・保持されている積み込み対象のガラス板Gを、取得位置に移動させたガラス板積込手段3で取得(ガラス板積込手段3に設けられた吸着部材5で吸着)し、その後、ガラス板積込手段3を積み込み位置に移動させる。これとほぼ同時に、シート供給手段10からパレット20の収容部23へ向けての保護シート11の垂下供給を開始する。但し、保護シート11として極めて軽量な発泡樹脂シートを用いる関係上、保護シート11の姿勢が気流の影響を受けて変化し易い。そのため、ガラス板積込手段3が積み込み位置に到達するよりも前に、シート供給手段10から収容部23へ向けての保護シート11の垂下供給を開始すると、保護シート11の姿勢に狂いが生じ、保護シート11を収容部23の前後方向所定位置に供給することが(積み込むことが)できなくなるおそれがある。従って、図3に示すように、積み込み対象のガラス板Gを吸着したガラス板積込手段3が積み込み位置に到達する直前に、あるいは積み込み対象のガラス板Gを吸着したガラス板積込手段3が積み込み位置に到達した後に、シート供給手段10からの保護シート11の垂下供給を開始する。このようにすれば、積み込み対象のガラス板Gおよびパレット20の背面部22に案内されるようにして、保護シート11を垂下させることができるので、保護シート11を所定の姿勢・態様でパレット20に積み込むことができる。
【0037】
そして、図4に示すように、シート供給手段10からの保護シート11の垂下供給が進行し、この保護シート11の下端部11aが、積み込み位置にあるガラス板Gの下辺Gaよりも所定量下方にはみ出した時点で、積み込み対象のガラス板Gの下辺Gaで垂下供給されている保護シート11の下端部11aを踏み付けるようにして、ガラス板積込手段3をパレット20に対してさらに接近移動させる。これにより、シート供給手段10から垂下供給された保護シート11および積み込み対象のガラス板Gの縦姿勢でのパレット20の収容部23への積み込みが完了するのと同時に、垂下供給された保護シート11の下端部11aが、積み込み対象のガラス板Gの下辺Gaと基台部21とで挟持される(積込処理)。ガラス板Gがパレット20に積み込まれると、ガラス板Gの吸着が解除される。
【0038】
なお、シート供給手段10から収容部23に向けて垂下供給された保護シート11は、上記の積込処理が完了するのと同時に、あるいは完了した後、その上端部が、収容部23に積み込まれたガラス板Gの上辺よりも上側にはみ出すようにして切断される。
【0039】
そして、上記した積込処理の第1サイクルが完了すると、ガラス板積込手段3は、再度取得位置まで移動してから、搬送コンベア2の終端部に縦姿勢で保持された後続の積み込み対象のガラス板Gを取得し、積込処理の第2サイクルを実行する(図5参照)。なお、後続のガラス板G(パレット20に積み込むべき2枚目のガラス板G)を吸着したガラス板積込手段3が再度積み込み位置に到達するまでの間に、シート供給手段11をパレット20の前方側に向けて相対移動させておき、ガラス板積込手段3に吸着された後続のガラス板Gを、上記と同様の態様でパレット20に積み込めるようにする。以降、パレット20の収容部23に、所定枚数の保護シート11とガラス板Gとが縦姿勢で交互に積み込まれるまで(所定枚数の保護シート11とガラス板Gとが縦姿勢で交互に積層されてなる積層体GBが形成されるまで)、積込処理が繰り返し実行される。
【0040】
以上で示したように、本発明に係るガラス板梱包体GAの製造方法では、垂下供給された保護シート11と、ガラス板積込手段3により取得された積み込み対象のガラス板Gとが縦姿勢でパレット20の収容部23に積み込まれるのと同時に、垂下供給された保護シート11の下端部11aが、積み込み対象のガラス板Gと基台部21とで挟持される。そのため、従来方法のように、保護シート11の下端部11aを予め折り曲げておく必要がなくなる。これにより、保護シート11の下端部11aを折り曲げるための手段を省略することができ、ガラス板梱包体GAの積層体製造装置1、ひいてはガラス板Gの製造ラインを簡略化することが、また、保護シート11の選択自由度を高めることができる。具体的には、保護シート11として、紙シート(合紙)に比べて緩衝性能に優れた発泡樹脂シートを使用することが可能となる。従って、ガラス板梱包体GAの輸送中等に、積層体GBを構成する各ガラス板Gの下辺Gaや表面にキズや亀裂等の欠陥が形成され難くなる。
【0041】
特に本実施形態では、積層体GBを構成する各保護シート11に、この保護シート11の前方側に隣接配置されるガラス板Gよりも前方側にはみ出し、後続のガラス板Gと基台部21とで挟持されるはみ出し部13が形成されるように、上記の積込処理を実行するようにした。そのため、各保護シート11を複数枚のガラス板Gとパレット20の基台部21とで挟持することが可能となるので、保護シート11を所定の位置・姿勢で保持するうえで、すなわちガラス板Gの表面に欠陥が形成される可能性を減じるうえで一層有利となる。また、ガラス板Gとパレット20の基台部21との間に複数枚の保護シート11を介在させることが可能となるので、ガラス板Gの下辺Gaに亀裂などの欠陥が形成される可能性を減じるうえで一層有利となる。これらのことから、極めて高品質のガラス板Gを後工程に供給することができる。
【0042】
また、保護シート11を、パレット20の上方に配置した(ガラス板積込手段3とは別に設けた)シート供給手段10から収容部23に向けて垂下供給するようにしたので、ガラス板積込手段3は、積み込み対象のガラス板Gを取得する取得位置と、取得したガラス板Gを収容部23に積み込む積み込み位置との間で往復動可能なものであれば足りる。そのため、ガラス板と保護シートを順次取得してからこれらをパレットに積み込むように構成された多関節ロボットを用いる従来構成に比べ、ガラス板梱包体GAの積層体製造装置1を簡略化することが、また積込処理のサイクルタイムを大幅に短縮することができる。
【0043】
特に上記の実施形態では、ガラス板積込手段3により取得(吸着)される積み込み対象のガラス板Gを縦姿勢で保持していることから、ガラス板積込手段3により吸着したガラス板Gを収容部23に積み込むまでの間に、当該ガラス板Gの姿勢を大幅に変化させる必要がなくなる。そのため、横姿勢で保持されたガラス板Gを取得し、これを縦姿勢でパレット20に積み込む従来構成に比べ、ガラス板積込手段3の機構を簡略化することができる。また、積込処理のサイクルタイムを一層短縮することができる。
【0044】
以上、本発明の一実施形態について説明を行ったが、本発明は、ガラス板積込手段3により取得(吸着)される積み込み対象のガラス板Gを横姿勢で保持しておく形態を排除するわけではない。すなわち、積み込み対象のガラス板Gを横姿勢で保持しておいても、保護シート11をパレット20の上方に配置したシート供給手段10から収容部23に向けて垂下供給するようにした構成や、垂下供給された保護シート11の下端部11aを積み込み対象のガラス板Gで踏み付けるようにガラス板積込手段3をパレット20に対して接近移動させるようにした構成などから、従来方法に比べれば、簡単コンパクトな設備構成でガラス板梱包体GAを効率良く製造することができる。
【0045】
また、以上の実施形態では、保護シート11として発泡樹脂シートを使用するようにしたが、保護シート11として紙シート(合紙)を使用することももちろん可能である。特に、積層体GBを構成する各保護シート11に上記のはみ出し部13を設けるようにすれば、ガラス板Gと基台部21との間に複数枚の保護シート11を介在させることができるので、ガラス板Gの下辺Gaを十分に保護することができる。
【0046】
また、以上の実施形態では、FPD用のガラス板Gを積層・梱包してなるガラス板梱包体GAを製造するに際して本発明を適用したが、本発明は、FPD用のガラス板Gのみならず、太陽電池用のガラス板、電磁調理器用のガラス板、あるいは建築構造物用のガラス板などを積層・梱包してなるガラス板梱包体GAを製造する際にも好ましく適用することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 積層体製造装置
2 搬送コンベア
3 ガラス板積込手段
10 シート供給手段
11 保護シート
11a 下端部
12 挟持部
13 はみ出し部
20 パレット
21 基台部
22 背面部
23 収容部
G ガラス板
Ga 下辺
GA ガラス板梱包体
GB 積層体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パレットの基台部の上方でかつ背面部の前方に画成される収容部に、保護シートとガラス板とを縦姿勢で一枚ずつ積み込む積込処理を繰り返し実行することにより、前記収容部に、前記保護シートと前記ガラス板とが縦姿勢で交互に積層されてなる積層体を形成しながら収容する積層工程を含むガラス板梱包体の製造方法において、
前記積込処理を、前記収容部へ向けてシート供給手段から保護シートを垂下供給すると共に、前記収容部のうち前記垂下供給される保護シートよりも前方側領域にガラス板積込手段で取得したガラス板を積み込むことにより行い、かつこのガラス板の積み込みを、該ガラス板と前記基台部とで前記垂下供給された保護シートの下端部を挟持するように行うことを特徴とするガラス板梱包体の製造方法。
【請求項2】
前記積層体を構成する各保護シートに、該保護シートの前方側に隣接配置されるガラス板よりも前方側にはみ出し、後続のガラス板と前記基台部とで挟持されるはみ出し部が形成されるように、前記積込処理を実行することを特徴とする請求項1に記載のガラス板梱包体の製造方法。
【請求項3】
前記積層工程では、前記ガラス板積込手段により取得されるガラス板を、縦姿勢で保持しておくことを特徴とする請求項1又は2に記載のガラス板梱包体の製造方法。
【請求項4】
前記基台部を、その後部側が前部側よりも下方に位置した傾斜姿勢に保持した状態で、前記積込処理を繰り返し実行することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のガラス板梱包体の製造方法。
【請求項5】
前記積込処理が完了する毎に、前記シート供給手段を、前記パレットの前方側に向けて所定量相対移動させることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載のガラス板梱包体の製造方法。
【請求項6】
前記ガラス板が、フラットパネルディスプレイ用のガラス板であることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載のガラス板梱包体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−52895(P2013−52895A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191731(P2011−191731)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(000232243)日本電気硝子株式会社 (1,447)
【Fターム(参考)】