説明

ガラス溶融システム用の非同軸酸素バーナー

炉の燃焼室又はフォアハースで使用するためのバーナーは、ガス状酸化体を送達するためのガス送達部材と、燃料を送達するための、ガス送達部材の内部に配置された部分を有する、そしてガス送達部材の長手軸から偏移した燃料送達部材と、ガス及び燃料送達部材と機械的に連合したフランジアセンブリとを含み、前記フランジアセンブリは、燃焼室内の選択位置に火炎のフットプリントを提供するために、ガス及び燃料送達部材を互いに対して着脱式に固定するための回転運動に適応されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、炉及び炉システム用のバーナーに関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]円錐型同軸酸素バーナーは、炉内のバッチを溶融するためにガラス溶融炉のクラウンで使用されている。予め位置決めされた孔が炉のクラウン部にドリルで穿孔され、バーナーブロックがその孔に設置されると、バーナーから吐出される乱流火炎の方向を変化させる能力は、制限されるか又は存在しない。火炎に異なる方向が求められる場合、バーナー、従って火炎の位置を変えるために、代替の(異なる)バーナー孔を穿孔し設置することが必要となる。既存の炉設計は、それらが鉄鋼工作物であること及びクラウン部の伸縮継手のために、バーナーを炉に設置できる場所が制限されることが多く、その結果、最適な火炎のカバー範囲が常に達成されるとは限らない。又はブロックが過度に傾斜しているのでバーナーの火炎の効果が低い。同軸酸素バーナーは、溶融物に対して直角の円錐火炎を生じ、ひいては溶融物の位置で円形の火炎パターンを生じる。間隔をあけた複数のバーナーによって生じた結果の火炎パターンは、溶融物の表面で全体的な火炎のカバー範囲を制限する。同軸バーナーは、溶融物上の燃焼空間で均一に燃焼する。この燃焼の均一性と強度は、クラウン部と溶融物間の自由空間で過度の燃焼を提供しうるので、その結果、最適とは言えない伝熱及び溶融物表面での高い窒素酸化物(NOx)がもたらされる。前述の制限及び不利益は、水平バーナー及び炉のフォアハース(forehearth)で使用されるバーナーでも発生する。
【発明の概要】
【0003】
[0003]酸素バーナーのようなバーナーを炉又はフォアハース用に提供する。該バーナーは、ガス送達部材と、ガス送達部材の内部に配置された部分を有し、ガス送達部材の長手軸から偏移(offset)した燃料送達部材とを含む。
【0004】
[0004]炉又はフォアハース内で製品を燃焼させるための方法も提供する。該方法は、第一の流路に沿ってガス状酸化体の流れを炉又はフォアハースに供給し;第一の流路から偏移した第二の流路に沿ってガス状燃料の流れを炉又はフォアハースに供給し;第一の流路を第二の流路に暴露し;そしてガス状酸化体とガス状燃料を燃焼させて非円形燃焼領域を提供することを含む。
【0005】
[0005]バーナー火炎の放出角及び結果の非円形燃焼領域を制御するために、一つ又は複数のガス及び燃料送達部材をそれらの各長手軸に沿って回転できるバーナーも提供する。
[0006]さらに、ガス送達部材と燃料送達部材を互いに対して配向させ、互いに対して固定された位置で該部材を固定するためのフランジアセンブリも提供する。
【0006】
[0007]本発明のさらに完全な理解のために、詳細な説明と併せて下記図面への参照がなされる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1A】[0008]図1Aは、炉で使用するための本発明のバーナーの部分横断平面図を開示する。
【図1B】[0009]図1Bは、図1Aの線1B−1Bに沿って切ったバーナーの断面図を開示する。
【図2A】[0010]図2Aは、本発明のバーナーの別の態様の線図を開示する。
【図2B】[0011]図2Bは、図2Aの線2B−2Bに沿って切った断面線図を開示する。
【図3A】[0012]図3Aは、本発明のバーナーの別の態様の線図を開示する。
【図3B】[0013]図3Bは、図3Aの線3B−3Bに沿って切った断面線図を開示する。
【図4】[0014]図4は本発明のバーナーによって提供される火炎のフットプリントを開示する。
【図5A】[0015]図5Aは、本発明のバーナーの別の態様の線図を開示する。
【図5B】[0016]図5Bは、図5Aの線5B−5Bに沿って切った断面線図を開示する。
【図6A】[0017]図6Aは、炉で使用するための本発明のバーナーの別の態様の部分横断平面図を開示する。
【図6B】[0018]図6Bは、図6Aの線6B−6Bに沿って切ったバーナーの断面図を開示する。
【図7A】[0019]図7Aは、炉で使用するための本発明のバーナーのさらに別の態様の部分横断平面図を開示する。
【図7B】[0020]図7Bは、図7Aの線7B−7Bに沿って切ったバーナーの断面図を開示する。
【図8A】[0021]図8Aは、炉で使用するための本発明のバーナーの別の態様の部分横断平面図を開示する。
【図8B】[0022]図8Bは、図8Aの線8B−8Bに沿って切ったバーナーの断面図を開示する。
【図9】[0023]図9は、炉のバーナーブロックに搭載された本発明のバーナーの部分横断平面図を開示する。
【図10】[0024]図10は、炉で使用するための別のバーナーの態様の部分横断平面図を開示する。
【図11A】[0025]図11Aは、図10の線11A−11Aに沿って切った図を開示する。
【図11B】[0026]図11Bは、異なる位置に配列された図11Aの構成要素の略図を示す。
【図11C】[0026]図11Cは、異なる位置に配列された図11Aの構成要素の略図を示す。
【図12A】[0027]図12Aは、図11Aのそれに対応する略図を示す。
【図12B】[0027]図12Bは、図11Bのそれに対応する略図を示す。
【図12C】[0027]図12Cは、図11Cのそれに対応する略図を示す。
【図13】[0028]図13は、図10及び16のバーナー態様のためのフランジアセンブリの構成要素を示す。
【図14】[0028]図14は、図10及び16のバーナー態様のためのフランジアセンブリの構成要素を示す。
【図15】[0028]図15は、図10及び16のバーナー態様のためのフランジアセンブリの構成要素を示す。
【図16】[0029]図16は、炉で使用するための別のバーナーの態様の部分横断平面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[0030]図1A及び1Bを参照すると、炉、例えば酸素燃料ガラス溶融炉又は炉のフォアハースで使用するための本発明のバーナー10が示されている。炉でのバーナーの使用と言うときにはフォアハースでのバーナーの使用も含まれる。バーナー10は、炉のバーナーブロックに配置するために構築及び適応(arrange)された外部側壁14を有する、例えばガス状酸素を送達するためのガスパイプ12又は導管からなる。ガスパイプ12に供給され送達されるガスは、例えば純度レベル85%〜100%のガス状酸素などのガス状酸化体(gaseous oxidant)である。100%未満の酸素の場合、残りは窒素及び/又はその他の希ガス、及びそれらの組合せでありうる。ガスパイプ12の内部空間16は、その中に配置される燃料パイプ18又は導管を受容するのに十分なサイズ及び形状の空間である。燃料パイプ18は、外部側壁20及び内部空間22を有する。
【0009】
[0031]ガスパイプ12、又は例えば酸化体パイプは、曲げられていることによってガスパイプ12にエルボー24を提供している。パイプ12はガス供給(図示せず)と流体連結している。ガスパイプ12のネジ式外側端26は、ガス供給への着脱式接続を提供している。ガスパイプ12の反対端又は遠位端28は、炉のバーナーブロック(図示せず)中で終わっており、炉内の製品溶融物の上方の選択位置に配置されている。供給されるガス状酸化体は、単一種類の酸化体、例えば酸素であっても、又はガスの組成物から選ばれてもよい。
【0010】
[0032]ガスパイプ12の内部16は、図1A及び1Bに示されているように、その中に配置される燃料パイプ18を受容するためのサイズ及び形状になっている。燃料パイプ18は、ガスパイプ12内で酸化体に暴露されるのに資する材料で製作されている。燃料パイプ18は、ガスパイプ12のエルボー24の近傍から伸びた端部又は近位端30を有する。一方、燃料パイプ18の反対端又は遠位端32は、ガスパイプ12の端部28とほぼ同じ位置で終わっている。ガスパイプ12と燃料パイプ18は同じ位置で終わっていてもよい。燃料パイプ18は、例えば天然ガス、プロパン、液化石油ガス(LPG)、合成ガス(有機固体、液体及び/又はガス状原料、又はそれらの組合せから誘導された)、及びそれらの組合せのなどのガス状燃料の供給と流体連結している。使用される燃料は、単一のガス状燃料からなるものでも燃料の組合せからなるものでもよい。ガスパイプ12から突き出している燃料パイプ18の端部30も、ガス状燃料源(図示せず)への着脱式接続のためにネジ式31でありうる。
【0011】
[0033]間隔あけ(spacing)部材又は支持部材34、36、38は、ガスパイプ12内で燃料パイプ18を支持するために提供され、それらの間にガスパイプ12を通るガス流を妨害することのない離隔した関係を提供する。燃料パイプ18が挿入されるガスパイプ12の入口42の周囲を封止するために、溶接又はシール40が提供される。
【0012】
[0034]図1Bを参照すると、ガスパイプ12の内部16における燃料パイプ18の配置がより明らかに示されている。ガスパイプ12と燃料パイプ18は、ガスパイプ12がエルボー24を通り過ぎた点から線形配列の部分まで互いに実質的に平行である。しかしながら、ガスパイプ12内の燃料パイプ18の配置は非同軸である、すなわちガスパイプ12と燃料パイプ18は共通の長手軸を共有していないことが分かる。むしろ、ガスパイプ12の長手軸44は、燃料パイプ18の長手軸46に対して偏移している。これについては以下でさらに解説する通り、特定の炉及び炉内で溶融される製品にふさわしいバーナー火炎及び火炎のフットプリント領域を提供するためである。バーナーは、火炎のフットプリントを変更するために調整できる。これが達成されるのは、ガスパイプと燃料パイプが、それらの構成要素の構築及び配列によって、それぞれの長手軸44、46の周りを回転するように適応されているからである。
【0013】
[0035]図1A及び1Bのバーナー10は一体型ユニットとして構築することもでき、それによって一体化ガスパイプ及び燃料パイプユニットをバーナーブロック中で回転させることが可能となり、バーナー10から炉に吐出される火炎のフットプリント領域の配置を選択的に制御することができる。
【0014】
[0036]本発明に従って構築されたバーナーの他の例示的態様を図2A、2B;3A、3B;6A、5B;7A、7B;及び8A、8Bにそれぞれ示す。これらの図面に示された、図1A、1Bに関する上記構成要素に対応する構成要素は、それぞれ100、200、300、400等々加算された対応参照番号が付与されている。
【0015】
[0037]図2A及び2Bは、図1A、1Bの別の態様のバーナー110の略図を示す。図2A及び2Bでは、燃料パイプ118は、ガスパイプ112中に傾斜した関係性、すなわち非平行に配置されている。その結果、バーナーから炉に吐出される火炎も炉内の溶融物の位置で非円形のフットプリントを提供する。バーナー110は、一体型ユニットとして形成されたガスパイプ112及び燃料パイプ118を有していてもよい。それによって、矢印60によって示されるようにユニットを回転させれば、炉内の溶融物上の選択位置に火炎のフットプリントを提供することができる。バーナーユニットの回転は360°を通して実施することができる。図2Aは、炉への例えばガス状酸化体の流れ及びガス状燃料の流れを示す。
【0016】
[0038]燃料パイプ218は、ガスパイプ212中で、燃料パイプの遠位端232がガスパイプ212の遠位端228と接触するように十分傾斜させることもできる。そのような配置を図3A及び3Bに示す。
【0017】
[0039]図4に、図面のバーナー10(110、210など)の態様によって提供される複数の火炎フットプリント62を示す。それぞれの非円形フットプリント62又は燃焼領域は、そのそれぞれのバーナーからのフットプリントを表す。
【0018】
[0040]図5A及び5Bを参照すると、ガスパイプ312の内部316に燃料パイプ318が配置されたバーナー310が示されている。ガスパイプ312に対する燃料パイプ318の偏移を図5Bに示す。
【0019】
[0041]図6A及び6Bで、バーナー410は、図2A及び2Bに示されたバーナー110の線図と類似している。特に、燃料パイプ418は、ガスパイプ412に角度48で導入されている結果、ガスパイプ412と燃料パイプ418の直線又は線形部分は非平行であり非同軸である。ガスパイプ412に対する燃料パイプ418の偏移を図6Bに示す。
【0020】
[0042]図7A及び7Bは、ガスパイプ512に配置された複数の燃料パイプ518を開示している。複数の燃料パイプ518は、図7Bに示されているように、分離された別個のパイプとして配置されても、あるいは燃料パイプの入れ子式アレイ(nested array)又は一体型ユニットとして形成又は配列されてもよい。図7Aにおける燃料パイプ518の配列は、互いに対しても燃料パイプ518がその中に配置されているガスパイプ512の線形部分に対しても平行である。本発明の他の態様と同様、複数の燃料パイプ518及びガスパイプ512は、バーナーブロックに搭載するため、及び炉内の溶融物の位置で火炎のフットプリント領域562を制御するためのバーナーブロック内でのその後の回転のために、一体型ユニットとして形成することもできる。ガスパイプ512に対する燃料パイプ518の偏移を図7Bに示す。燃料パイプ518のアレイは、燃料パイプ518を燃料源に着脱式に接続するために共通のネジ部531を共有しうる。
【0021】
[0043]図8A及び8Bに、同軸配列されたガスパイプ中に配置された燃料パイプ631が示されている。すなわち、第一の外側ガスパイプ612は、その中に第二の内側ガスパイプ50を受容するためのサイズ及び形状をした内部を有する。内側ガスパイプ50は、その中に燃料パイプ618を受容するためのサイズ及び形状をした内部52を有する。内側ガスパイプ50は、燃料パイプ618を内側ガスパイプ50に挿入できるように、外側ガスパイプ612の入口642と位置合わせされた入口54を有する。図8A、8Bにおいて、内側ガスパイプ50と燃料パイプ618は、それぞれの後方部に沿って共通の長手軸646を有し、故に同軸である。燃料パイプ618とガスパイプ612、50の配列は図8Bにも示されている。本発明の他の態様と同様、図8Aのバーナー610は、炉のバーナーブロックに搭載するために一体型ユニットとして形成されてもよい。ガスパイプ612、50に対する燃料パイプ618の偏移を図8Bに示す。
【0022】
[0044]図9を参照すると、バーナーブロック58が搭載される炉57のクラウン部56が示されている。図1Aのバーナー10は、バーナーブロック58内に配置される。当然のことながら、本明細書中に開示された他のバーナーの態様(110、210、310、410、510、610)も同様にバーナーブロック58に搭載できる。バーナー10などは、矢印66、68の方向に動くように適応されている。矢印66に関して、バーナー10は、バーナーブロック58で起こることが所望されている燃焼の量に応じて、選択位置に動かすことができる。燃料パイプ18(一つ又は複数)及びガスパイプ12(一つ又は複数)の遠位端は、示されているようにバーナーブロック58内で終わっている。さもなければ、バーナーブロック58から露出されていると炉雰囲気の熱でパイプが溶けてしまう。バーナーブロック58におけるバーナー10の位置決めは、ブロック58での燃焼をもたらし、ひいてはバーナー10によって提供される火炎の運動量及びスラスト(thrust)に影響を及ぼす。高運動量の火炎は小さいフットプリント62領域を生じるが、低運動量の火炎は大きいフットプリント62領域を生じる。領域70では酸化体濃度が低く、例えばガス状燃料は燃焼して酸化体を使い果たすと、燃焼するための酸化体濃度が高い領域72を求めて行く傾向にある。
【0023】
[0045]図9に示されているように、燃料豊富火炎(濃火炎)は、燃料パイプがガスパイプの側壁に最も近いバーナーの遠位端でバーナーから提供される。酸化された燃料希薄火炎(淡火炎)は、燃料パイプがガスパイプの側壁から離れているバーナーの遠位端から提供される。後者は、燃焼のための増大した又はより拡大した酸素ゾーンを提供し、それによって炉の溶融物にぶつかる火炎の燃焼領域62又はフットプリントに、円形とは対照的な比較的長円形をもたらす。図4も参照。
【0024】
[0046]図4に示されている非円形フットプリントは、図面のバーナーの態様のいずれか一つ又は組合せによっても提供されうる。
[0047]本発明のバーナーは、ガラス溶融、精製、及び分配に使用できる。燃料パイプの吐出点は酸素パイプに対して同軸でなく、ずらされている(staggered)又は偏移している。この偏移及び/又はバーナーの回転は、火炎の方向のほか、得られる火炎のフットプリントも変えることを可能にする。ずれ又は偏移の程度又は量は、達成できる火炎の方向の量を増大する。偏移は、燃料導管を酸素導管に対して傾斜させることによってさらに増強できる。例えば、ガス及び燃料パイプは円形の断面を有しているが、バーナー設計は、異なる断面形状、例えばこれらに限定されないが、楕円形、四角形、三角形、六角形などの断面形状を有するガス及び燃料パイプを含んでいてもよい。燃料パイプはガスパイプとは異なる断面形状を有することもできる。多重又は段階パイプも利用できる。
【0025】
[0048]矢印66、68は、本発明のすべてのバーナー10などの態様に関するもので、それ自体ブロック58内で回転できる。そのような回転は、ガスパイプ及び燃料パイプの個別の構成要素によって起こすことも、又はガスパイプ(一つ又は複数)及び燃料パイプ(一つ又は複数)で形成された一体型ユニットによって起こすこともできる。
【0026】
[0049]燃焼プロセスで、燃料は酸化体と反応する。パイプ12、18を偏移させることによって、パイプが最接近している点では燃料豊富火炎、パイプが最も離れている点では燃料希薄領域が作り出される。火炎の燃料豊富部分は、燃料希薄側で酸化体と反応する。このステージング(段階燃焼)は、低い窒素酸化物(NOx)の利益も提供し、伝熱も増大する。ステージングは、バーナーブロック58での予燃焼の量を減少し、バーナーブロックから現れる火炎の運動量を削減する。火炎は乱流であるが、低運動量火炎は、バッチ表面上で速度を減じ、バッチ成分、例えばこれらに限定されないが、ホウ素及び鉛の揮発を低減する。
【0027】
[0050]炉に対して低運動量の火炎は、燃料中の炭素の滞留時間を増大するので、煤化による輻射によって輝度及び伝熱を増大する。本発明の主な利益は、ガスパイプ12及び燃料パイプ18の偏移、従ってガス流及び燃料流の偏移が、ガス状燃料とガス状酸化体の混合を、火炎が原料バッチ表面64にぶつかるまで遅らせることである。火炎の(燃料)希薄部分からの過剰酸素は、その主たる方向を、残留する燃料成分から離れる方向に取り続ける。得られる火炎のフットプリント62又は燃焼領域は、図4及び9に示されているように非円形となる。この非円形の火炎燃焼領域は、より多くのエネルギーを溶融領域に向けることを可能にする。
【0028】
[0051]フォアハース又は炉のディストリビューターに対して低運動量の火炎は、溶融物の表面にぶつかるのではなく、むしろ“カール”するか又は方向を変えて、溶融物の表面に実質的に平行になる火炎を提供する。
【0029】
[0052]図10〜16に、炉又は炉のフォアハース用の非同軸酸素バーナーの他の態様を開示する。
[0053]図10を参照すると、炉(図示せず)又は炉のフォアハース(図示せず)で使用するためのバーナーが一般的に700として示されている。バーナー700は、酸化体送達パイプ702及び燃料送達パイプ704(燃料パイプ704とも呼ばれる)を含む。酸化体送達パイプ702は、本態様では、“T字形”を有するように構築されている。図10に示されている酸化体パイプ702の端部706は、パイプ702を遠方の酸化体供給源(図示せず)に着脱式に接続するためにネジ式となっている。使用される酸化体は、図1〜9の態様で使用されたものと同様でよい。本態様では、酸化体パイプ702は708で分岐し、レセプター部710を提供している。ここに燃料送達パイプ704が酸化体パイプ702の内部712に沿って挿入される。燃料パイプ704の端部714も、遠方の燃料源(図示せず)への着脱式接続のためにネジ式になっている。使用される燃料は、図1〜9の態様で使用されたものと同様でよい。燃料パイプ704の部分は、図10に示されているように、フランジアセンブリ(以下で解説)の上流かつ酸化体パイプ702の内部712に沿った挿入の前に、曲げられている又は角度が付けてある。
【0030】
[0054]酸化体パイプ702の中心長手軸716及び燃料パイプ704の中心長手軸718は、平行ではあるが互いに対して偏移している。すなわち、図10に例として示されているように、燃料パイプ704は酸化体パイプ702内に、それぞれの長手軸が互いから偏移し、非同軸となるように配置されている。スペーサー720が、例えば溶接によって燃料パイプ704の外表面に接続されて酸化体パイプ702の内部712に伸び、燃料パイプ704が酸化体送達パイプ内で偏移して配置されるための支持及び整列(alignment)を提供している。従って、酸化体パイプ702の長手軸716は、可動式フランジ722及び固定フランジ730のそれぞれの中心を通って伸びている。燃料パイプ704の長手軸718は、スペーサー720のため、長手軸716に対して偏移している又は非同軸である。
【0031】
[0055]図11A〜11Cを参照すると、酸化体パイプ702及び燃料パイプ704と使用するためのフランジアセンブリが示されている。燃料パイプ704を参照すると、フランジアセンブリは、燃料パイプの外部724に取り付けられた燃料側可動式フランジ722を含む。フランジ722は、それを貫通する複数の孔726を有し、その孔に、例えばナット及びボルトなどの機械的締結具728を、フランジ722を以下で解説するように着脱式に固定するために配置することができる。燃料パイプ704を酸化体パイプ702の長手軸716の周りで回転させると、燃料側フランジ722も燃料パイプの回転と同時に回転を起こす。燃料パイプ704は偏移している又は非同軸である、すなわち燃料側フランジ722の中心にないので、燃料フランジが解放されて回転する場合、フランジ722及び燃料パイプ704は、酸化体パイプ702の長手軸716の周りを回転する。この長手軸716は、燃料側フランジ722及び酸化体側フランジ730の両方の中心にある。これについては、さらに図11A〜11C及び12A〜12Cに示されている。
【0032】
[0056]同様に図13〜14を参照すると、酸化体パイプ702は、フランジアセンブリの一部として、酸化体パイプに搭載された酸化体側固定フランジ730を備えている。固定フランジ730は、数が燃料側可動式フランジ722の複数の孔726のそれに対応する複数の孔732を有している。固定フランジ730の孔732も、その中に機械的締結具728を受容するように構築及び配置されている。機械的締結具728は、フランジ722、730を互いに着脱式に固定するための締結具アセンブリとして機能する。
【0033】
[0057]バーナー700の一部は、図10に示されているように、バーナーブロック734に搭載されている。バーナーブロック734は、図10に示されているように、バーナーブロックハウジング736を含み、そして酸化体パイプ702を配置できる空間738をその中に有している。バーナーブロック734用のハウジング736は、ハウジング736をバーナーブロック734に固定するための、止めネジ(set screw)などの少なくとも一つの機械的締結具746を含む。ネジなどの機械的締結具742を備えたストップカラー(stop collar)740を酸化体パイプ702に固定することによって、酸化体パイプが所定の位置からバーナーブロック734の中に滑り落ちないようにしてある。
【0034】
[0058]バーナーブロック734自体はスリーブ744に搭載され、そのスリーブは炉又は炉のフォアハースのクラウン部(図示せず)に配置されている。ブッシュ(bushing)748又はアダプターカラーが酸化体パイプ702の外表面750の周り、バーナーブロックハウジング736と前記表面750との間に配置されている。ブッシュ748は、バーナー700をバーナーブロックハウジング736に対して所定の位置に着脱式に固定するための機械的締結具752も備えている。機械的締結具754が、バーナーブロックハウジングをブッシュ748に着脱式に固定するためにバーナーブロックハウジング736に設けられている。
【0035】
[0059]スリーブ744とバーナーブロック734は、炉の燃焼雰囲気に直接暴露されるが、酸化体パイプ702と燃料パイプ704の各端部は、炉の雰囲気に直接接触しないように、バーナーブロック734内に引っ込んでいる。
【0036】
[0060]機械的締結具728、742、752、754及び746は、バーナー700全体がバーナーブロック734及びスリーブ744内で回転できるように着脱式に係合可能である。
【0037】
[0061]酸化体側固定フランジ730は、例えば溶接によってバーナー700に取り付けられている。燃料パイプ704は酸化体パイプ702に対して回転できるが、酸化体パイプは、以下に解説するように、バーナーブロック734に対して回転できる。
【0038】
[0062] 図11A〜11C及び12A〜12Cを参照すると、燃料側可動式フランジ722及び酸化体側固定フランジ730の両方によって規定される燃料パイプ704の酸化体パイプ702に対する配向が示されている。機械的締結具728は取り外せるので、燃料パイプ704は酸化体パイプ702の長手軸716の周りを回転することが可能となる。燃料側フランジ722も燃料パイプと同時に動き、図12A〜12Cに示されているように、燃料パイプ704は酸化体パイプ702の中心長手軸716の周囲に軌跡を描く。燃料パイプ704が、例えば図11B又は11Cによって表されているような所望の位置に回転してくると、各フランジ722、730のそれぞれの孔726、732も移動して互いに位置合わせされ、次いで機械的締結具728が燃料パイプ704のフランジ722を酸化体パイプ702のフランジ730に対して固定するために係合又は作動する。燃料パイプ704に許される回転の範囲及び前記パイプが酸化体パイプ702に対して取りうる異なる位置は、フランジ722、730に設けられた対応孔726、732の数によってのみ制限される。すなわち、可動式及び固定フランジ722、730の両方に設けられた、互いに位置合わせできる孔の数が多いほど、燃料パイプ704が酸化体パイプ702に対して取りうる位置の範囲も大きくなる。スペーサー720は、燃料パイプ704の外表面724に接続されているか又は外表面から突き出していてもよいので、図12A〜12Cを見ると、それらが燃料パイプを酸化体パイプ702に対して偏移又は非同軸の位置に維持している様式が分かる。
【0039】
[0063]また、図13〜15を参照すると、燃料側可動式フランジ722と酸化体側固定フランジ730との間の封止装置(sealing arrangement)が示されている。該装置は、燃料側可動式フランジ722の対応部分と共作用するために酸化体側固定フランジ730に形成された窪み758に搭載された、例えばOリングなどのシール756を含む。この窪み758は、燃料側フランジ722との接触のために、シール756を所定の位置に“収容”している。シール756は、フランジ722、730の互いに対する着脱式係合を考慮した場合に起こりうる何らかの漏洩を効果的に封止する。
【0040】
[0064]図16には、バーナーの別の態様が一般的に800として示されている。図16の態様と図10のそれとの唯一の相違は、燃料送達パイプ804が、図10に示された態様の曲線状又は角度付き部分とは対照的に、酸化体送達パイプ802に入る前、フランジアセンブリの上流で直線形状を有していることである。他のすべての特徴及び機能は、図10の態様に関して記載したのと同様である。
【0041】
[0065]図10及び16に示され提供されているのと同様の特徴を有するバーナーのさらに別の態様は、図2A〜2B及び図3A〜3Bの態様に関して示されているような傾斜した燃料送達パイプ704、804を含む。すなわち、燃料送達パイプ704、804は、酸化体送達パイプ702、802と平行でも同軸でもない。それらの他のすべての特徴及び機能は、他の点では図10及び16の態様に関して上記したのと同様である。
【0042】
[0066]図10〜16の態様で使用されるガス状燃料及びガス状酸化体は、図1〜9の態様で使用されるものと同様である。
[0067]図1〜16に関する上記のすべての態様について、燃料及び酸化体パイプの端部は、燃料及び酸化体供給源に接続するためにネジ式端部以外の端部を有していてもよい。例えば、そのような端部は、パイプをそのような燃料及び酸化体供給源に接続するための接続フランジ、クランプ又は溶接を有しうる。
【0043】
[0068]当然のことながら、本明細書中に記載された態様は単に例示であること、及び当業者は本発明の精神及び範囲から逸脱することなく多数の変形及び修正をなしうることは理解されるであろう。すべてのそのような変形及び修正は、本明細書中に記載された特許請求の範囲内に含まれるものとする。上記態様は、代替の態様というだけでなく、組み合わせられることも理解されるべきである。
【符号の説明】
【0044】
10 バーナー
12 ガスパイプ
14 外部側壁
16 内部空間
18 燃料パイプ
20 外部側壁
22 内部空間
24 エルボー
26 ネジ式外側端
28 ガスパイプの遠位端
30 燃料パイプの近位端
31 ネジ式
32 燃料パイプの遠位端
34 支持部材
36 支持部材
38 支持部材
40 溶接又はシール
42 入口
44 ガスパイプの長手軸
46 燃料パイプの長手軸
48 角度
50 内側ガスパイプ
52 内部
54 入口
56 クラウン部
57 炉
58 バーナーブロック
60 矢印
62 フットプリント
64 原料バッチ表面
66 矢印
68 矢印
70 酸化体濃度が低い領域
72 酸化体濃度が高い領域
700 バーナー
702 酸化体送達パイプ
704 燃料送達パイプ
706 酸化体パイプの端部
708 分岐点
710 レセプター部
712 内部
714 燃料パイプの端部
716 酸化体パイプの中心長手軸
718 燃料パイプの中心長手軸
720 スペーサー
722 可動式フランジ
724 燃料パイプの外部
726 可動式フランジの孔
728 機械的締結具
730 固定フランジ
732 固定フランジの孔
734 バーナーブロック
736 バーナーブロックハウジング
738 空間
740 ストップカラー
742 機械的締結具
744 スリーブ
746 機械的締結具
748 ブッシュ又はアダプターカラー
750 外表面
752 機械的締結具
754 機械的締結具
756 シール
758 窪み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉の燃焼室又はフォアハースで使用するためのバーナーであって、ガス状酸化体を送達するためのガス送達部材と、燃料を送達するための、ガス送達部材の内部に配置された部分を有する、そしてガス送達部材の長手軸から偏移した燃料送達部材と、ガス及び燃料送達部材と機械的に連合したフランジアセンブリとを含み、前記フランジアセンブリは、燃焼室内の選択位置に火炎のフットプリントを提供するために、ガス及び燃料送達部材を互いに対して着脱式に固定するための回転運動に適応されているバーナー。
【請求項2】
ガス送達部材の部分と燃料送達部材の部分が互いに平行である、請求項1に記載のバーナー。
【請求項3】
燃料送達部材の部分がガス送達部材の内部に傾斜して配置されている、請求項1に記載のバーナー。
【請求項4】
燃料送達部材のみがフランジアセンブリの位置で回転可能である、請求項1に記載のバーナー。
【請求項5】
ガス送達部材がガスパイプを含む、請求項1に記載のバーナー。
【請求項6】
燃料送達部材が燃料パイプを含む、請求項1に記載のバーナー。
【請求項7】
燃料送達部材が複数の燃料パイプを含む、請求項1に記載のバーナー。
【請求項8】
複数の燃料パイプが一体型ユニットである、請求項7に記載のバーナー。
【請求項9】
複数の燃料パイプがガス送達部材の内部に傾斜して配置されている、請求項7に記載のバーナー。
【請求項10】
燃料送達部材を、ガス送達部材に対して離隔した関係で支持するため、そしてガス及び燃料送達部材を着脱式に固定する方式の回転運動中にガス送達部材の長手軸から偏移させて支持するために、ガス送達部材に配置された少なくとも一つの支持部材をさらに含む、請求項1に記載のバーナー。
【請求項11】
フランジアセンブリが、ガス送達部材に搭載された第一のフランジ(第一のフランジはそれを貫通する第一の複数の孔を有する)と;燃料送達部材に搭載された第二のフランジ(第二のフランジはそれを貫通する第二の複数の孔を有する)と;第一のフランジの第一の複数の孔と第二のフランジの第二の複数の孔は、第一及び第二のフランジが互いに対して選択位置に回転運動をすると、互いに位置合わせされるように配列されており;そして第一及び第二のフランジを選択位置で互いに着脱式に固定するための締結具アセンブリとを含む、請求項1に記載のバーナー。
【請求項12】
第二のフランジが、燃料送達部材に取り付けられてそれと一緒に回転する、請求項11に記載のバーナー。
【請求項13】
燃料送達部材が、ガス送達部材の中心長手軸の周囲に軌跡を描くように回転可能である、請求項12に記載のバーナー。
【請求項14】
第一のフランジ又は第二のフランジの少なくとも一つに搭載され、第一及び第二のフランジの封止係合を提供するためのシールをさらに含む、請求項11に記載のバーナー。
【請求項15】
ガス送達部材の外表面に搭載されたカラーをさらに含み、カラーは、ガス送達部材が炉又はフォアハースに入り込まないように、カラーをガス送達部材の外表面に着脱式に固定するための、それに付随する機械的締結具を有する、請求項11に記載のバーナー。
【請求項16】
燃料送達部材が、フランジアセンブリの上流に角度の付いた部分を含む、請求項1に記載のバーナー。
【請求項17】
ガス状酸化体が、酸素、酸素と窒素、酸素と他の希ガス、及びそれらの組合せからなる群から選ばれ、燃料が、天然ガス、プロパン、液化石油ガス、合成ガス、及びそれらの組合せからなる群から選ばれる、請求項1に記載のバーナー。
【請求項18】
締結具アセンブリが、第一及び第二のフランジと共作用するための機械的締結具を含む、請求項11に記載のバーナー。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2013−516385(P2013−516385A)
【公表日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−548029(P2012−548029)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【国際出願番号】PCT/US2010/061785
【国際公開番号】WO2011/082062
【国際公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(391009659)リンデ アクチエンゲゼルシャフト (106)
【氏名又は名称原語表記】Linde Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Klosterhofstrasse 1, D−80331 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】