説明

ガラス溶融炉の運転方法及びガラス溶融炉

【課題】流下ノズルの構造を変更することなく、溶融ガラスの流下を確実に停止させることができ、且つ1バッチ処理に要する時間をも短縮し得、作業効率向上を図り得るガラス溶融炉の運転方法及びガラス溶融炉を提供する。
【解決手段】溶融炉本体の底部におけるガラス温度を上昇させる炉底加熱工程と、該炉底加熱工程で上昇させたガラス温度を更に設定温度まで上げて前記底部電極の中心部から被処理液が混入された溶融ガラスを抜き出すガラス流下工程と、該ガラス流下工程で設定温度まで上げたガラス温度を低下させる炉底冷却工程とを1バッチ処理として繰り返すようにし、冷却ジャケットの冷却空気流通路に対して、前記炉底加熱工程の途中から冷却空気を供給して流通させ、前記ガラス流下工程を経て、前記炉底冷却工程の途中で前記冷却空気の供給を停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高レベル放射性廃液ガラス固化施設に設置されるガラス溶融炉の運転方法及びガラス溶融炉に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、原子力施設において発生する被処理液としての高レベル放射性廃液は、高レベル放射性廃液ガラス固化施設のガラス溶融炉に送給され、ガラス固化体として処理された後、放射性廃棄物保管施設に保管される。
【0003】
前記ガラス固化施設においては、ガラス溶融炉の内部で原料ガラスを溶融する際に高レベル放射性廃液を混入し、該高レベル放射性廃液が混入された溶融ガラスをキャニスタ(ステンレス製容器)に注入し、溶融ガラスを固化させることにより、ガラス固化体を形成している。
【0004】
従来のガラス溶融炉は、例えば、内部に溶融空間が形成されるよう耐火レンガ等の耐火物で構築され且つ外周が金属のケーシングで覆われた溶融炉本体を備えている。該溶融炉本体の上部天井壁には、被処理液としての高レベル放射性廃液及びガラスビーズのような原料ガラスが投入される投入口を設け、前記溶融炉本体の内壁の上下方向中間部には、相互間での通電により溶融空間内の原料ガラスを加熱し溶融させる主電極を対向配置すると共に、前記溶融炉本体内の下方へ向け窄まる形状とした底部の下端に、前記主電極との間での通電により溶融空間内底部のガラスを加熱し溶融させる底部電極を配置してある。該底部電極に穿設された流下孔には、高レベル放射性廃液が混入された溶融ガラスを抜き出してキャニスタへ注入するための流下ノズルを接続するように設け、該流下ノズルの外周部に、ノズル用高周波誘導加熱コイルを配置してある。更に、前記溶融炉本体の内壁の下方へ向け窄まる形状とした部分の外周には、補助電極を前記主電極と底部電極との間に位置するよう配置してある。
【0005】
前述の如き従来のガラス溶融炉においては、溶融炉本体の投入口から高レベル放射性廃液及び原料ガラスを投入し、先ず、主電極間並びに補助電極間に電流を流すことでその間の溶融ガラスのジュール熱により高レベル放射性廃液及び原料ガラスを充分に溶かし合わせる。続いて、主電極と底部電極との間に電流を流してジュール熱により底部電極上部のガラスを加熱する。この後、前記底部電極の流下孔から延びる流下ノズルを、ノズル用高周波誘導加熱コイルへ通電を行うことにより加熱してその内部に詰まっている固化ガラスを溶かして下方へ抜き出し、これにより、溶融炉本体内の溶融ガラスをその下部にセットしたキャニスタ内に流下させ、ガラス固化体として密閉収容するようになっている。
【0006】
尚、前述の如きガラス溶融炉と関連する一般的技術水準を示すものとしては、例えば、特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−249321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、前記高レベル放射性廃液中にはルテニウム、パラジウム、ロジウム等の白金族元素が1%程度含まれているが、該白金族元素は、溶融炉本体内においてガラスに溶け込まずに分離しており、その粒子が小さければ、ガラスと同じような動きをするものの、粒子が大きくなると、溶融炉本体内の溶融ガラスの動きに比べ溶融炉本体の底部へ沈降し堆積しやすくなる。しかも、前記白金族元素は導電性であるため、溶融炉本体の底部に沈降堆積して該底部におけるガラス中の白金族元素の濃度が高くなると、あたかもそこに金属が存在しているような形となり、ガラスの電気的抵抗が低くなってしまい、主電極と底部電極との間に通電を行ってガラスに電流を流しても充分なジュール熱が得られなくなり、ガラスの粘性が低くならず、溶融炉本体の底部のガラスを流下ノズルから流下させることができなくなる虞があった。
【0009】
このため、前記溶融炉本体内の下方へ向け窄まる形状とした部分の傾斜角度を、従来、およそ45°だったものを60°程度に大きくすることにより、白金族元素の抜き出し性を向上させることが、本発明者等によって提案されているが、炉底を加熱してガラスを流下させた後に炉底を冷却する1バッチ処理で、前記被処理液が混入された溶融ガラスを一定重量(例えば、400[kg])抜き出す際、該溶融ガラスの流下の後半(トータル400[kg]のうち、例えば、後半の200[kg]の抜き出し時)において、温度の高い溶融炉本体上部のガラスが流下ノズルに達する傾向にあることが解析の結果判明した。
【0010】
ここで、前記流下ノズルには、溶融ガラスの流下を停止する機能があるが、該流下ノズルにある一定温度(およそ1000[℃]程度)以上のガラスが達すると、流下を停止することができなくなる。
【0011】
しかしながら、前記溶融ガラスの流下を停止可能とするために流下ノズルの構造を大幅に変更することは非常に難しいため、該流下ノズル以外にその解決策を見い出す必要が生じていた。
【0012】
又、前述の如き従来のガラス溶融炉においては、炉底を冷却する工程が長くなるため、1バッチ処理に要する時間も非常に長くなっており、改善が望まれていた。
【0013】
本発明は、斯かる実情に鑑み、流下ノズルの構造を変更することなく、溶融ガラスの流下を確実に停止させることができ、且つ1バッチ処理に要する時間をも短縮し得、作業効率向上を図り得るガラス溶融炉の運転方法及びガラス溶融炉を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、白金族元素を含む被処理液及び原料ガラスが投入される耐火物製の溶融炉本体と、該溶融炉本体の内壁の上下方向中間部に対向配置されて相互間での通電により溶融炉本体内の原料ガラスを加熱し溶融させる主電極と、前記溶融炉本体内の下方へ向け窄まる形状とした底部の下端に配置されて前記主電極との間での通電により溶融炉本体内底部のガラスを加熱し溶融させる底部電極と、該底部電極の下端から垂下し且つ前記被処理液が混入された溶融ガラスを抜き出してキャニスタへ注入するための流下ノズルとを備え、
前記溶融炉本体の底部におけるガラス温度を上昇させる炉底加熱工程と、該炉底加熱工程で上昇させたガラス温度を更に設定温度まで上げて前記流下ノズルから前記被処理液が混入された溶融ガラスを抜き出すガラス流下工程と、該ガラス流下工程で設定温度まで上げたガラス温度を低下させる炉底冷却工程とを1バッチ処理とするようにしたガラス溶融炉の運転方法であって、
前記溶融炉本体内の下方へ向け窄まる形状とした部分の外周に、内部に冷却空気流通路が形成された冷却ジャケットを配置し、該冷却ジャケットの冷却空気流通路に対し、前記炉底加熱工程の途中から冷却空気を供給して流通させ、前記ガラス流下工程を経て、前記炉底冷却工程の途中で前記冷却空気の供給を停止することを特徴とするガラス溶融炉の運転方法にかかるものである。
【0015】
上記手段によれば、以下のような作用が得られる。
【0016】
前述の如く冷却ジャケットの冷却空気流通路に対し、前記炉底加熱工程の途中から冷却空気を供給して流通させ、前記ガラス流下工程を経て、前記炉底冷却工程の途中で前記冷却空気の供給を停止すると、白金族元素の抜き出し性を向上させるために前記溶融炉本体内の下方へ向け窄まる形状とした部分の傾斜角度を従来のものより大きくしたとしても、前記炉底加熱工程とガラス流下工程と炉底冷却工程とからなる1バッチ処理で、前記被処理液が混入された溶融ガラスを一定重量抜き出す際、該溶融ガラスの流下の後半において、温度の高い溶融炉本体上部のガラスは、前記冷却ジャケットの冷却空気流通路に供給される冷却空気により効率良く冷却されるため、流下ノズルにある一定温度以上のガラスが達してしまうようなことが避けられ、現行の流下ノズルであってもガラスの流下を確実に停止することが可能となる。
【0017】
又、従来のガラス溶融炉と比べ、炉底冷却工程が短くなるため、1バッチ処理に要する時間も短縮することが可能となる。
【0018】
一方、本発明は、白金族元素を含む被処理液及び原料ガラスが投入される耐火物製の溶融炉本体と、該溶融炉本体の内壁の上下方向中間部に対向配置されて相互間での通電により溶融炉本体内の原料ガラスを加熱し溶融させる主電極と、前記溶融炉本体内の下方へ向け窄まる形状とした底部の下端に配置されて前記主電極との間での通電により溶融炉本体内底部のガラスを加熱し溶融させる底部電極と、前記溶融炉本体内の下方へ向け窄まる形状とした部分の外周に前記主電極と底部電極との間に位置するよう配置され且つ内部に冷却空気流通路が形成された冷却ジャケットと、前記底部電極の下端から垂下し且つ前記被処理液が混入された溶融ガラスを抜き出してキャニスタへ注入するための流下ノズルとを備え、前記溶融炉本体の底部におけるガラス温度を上昇させる炉底加熱工程と、該炉底加熱工程で上昇させたガラス温度を更に設定温度まで上げて前記流下ノズルから前記被処理液が混入された溶融ガラスを抜き出すガラス流下工程と、該ガラス流下工程で設定温度まで上げたガラス温度を低下させる炉底冷却工程とを1バッチ処理とするよう構成すると共に、前記冷却ジャケットの冷却空気流通路に対し、前記炉底加熱工程の途中から冷却空気を供給して流通させ、前記ガラス流下工程を経て、前記炉底冷却工程の途中で前記冷却空気の供給を停止するよう構成したことを特徴とするガラス溶融炉にかかるものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明のガラス溶融炉の運転方法及びガラス溶融炉によれば、流下ノズルの構造を変更することなく、溶融ガラスの流下を確実に停止させることができ、且つ1バッチ処理に要する時間をも短縮し得、作業効率向上を図り得るという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明のガラス溶融炉の実施例を示す全体概要構成図である。
【図2】(a)は本発明のガラス溶融炉の実施例における冷却ジャケットを示す側断面図であり、(b)は本発明のガラス溶融炉の実施例における冷却ジャケットを示す平断面図であって、(a)のIIb−IIb断面相当図である。
【図3】本発明のガラス溶融炉の実施例における各工程を示すタイムチャートである。
【図4】本発明者等が以前に開発したガラス溶融炉の一例を示す全体概要構成図である。
【図5】本発明者等が以前に開発したガラス溶融炉の一例における各工程を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0022】
図1〜図3は本発明のガラス溶融炉の実施例であって、該ガラス溶融炉は、内部に溶融空間1が形成されるよう耐火レンガ等の耐火物2で構築され且つ外周が金属のケーシング3で覆われた溶融炉本体4を備え、該溶融炉本体4の上部天井壁に、被処理液としての高レベル放射性廃液5及びガラスビーズのような原料ガラス6が投入される投入口7を設け、前記溶融炉本体4の内壁の上下方向中間部に、相互間での通電により溶融空間1内の原料ガラス6を加熱し溶融させる主電極8を対向配置すると共に、前記溶融炉本体4内の円錐状に窄まる形状とした底部の下端に、前記主電極8との間での通電により溶融空間1内底部のガラスを加熱し溶融させる底部電極9を配置し、前記溶融炉本体4の底部に、脱落した耐火物屑を受けるストレーナ10を配置し、前記底部電極9の中心部から前記高レベル放射性廃液5が混入された溶融ガラスを抜き出すようにしてある。
【0023】
前記底部電極9は、図1に示す如く、円板部9bの中心部に、内部に円錐状空間9cが形成される円錐状電極部9dと、該円錐状電極部9dの下端から垂下し且つ高レベル放射性廃液5が混入された溶融ガラスを抜き出してキャニスタ11へ注入するための流下ノズル12とを一体成形してなる構成を有している。
【0024】
前記底部電極9における円錐状電極部9dの外周には、図1に示す如く、加熱手段としての高周波誘導加熱コイル14を配置すると共に、前記流下ノズル12の外周部には、加熱手段としてのノズル用高周波誘導加熱コイル15を配置してある。
【0025】
尚、前記溶融炉本体4上部には、溶融空間1内部を常時加熱する間接加熱装置16を配置し、前記溶融炉本体4内の円錐状に窄まる形状とした部分には、中段補助電極17と、下段補助電極18とを、前記主電極8と底部電極9との間に位置するよう配置してある。前記主電極8と中段補助電極17の内部には夫々、冷却空気が流通される冷却空気流通路8a,17aを形成してある。
【0026】
本実施例の場合、図2(a)及び図2(b)に示す如く、前記溶融炉本体4内の下方へ向け円錐状に窄まる形状とした部分の外周には、内部に冷却空気流通路19aが形成された冷却ジャケット19を、前記主電極8と底部電極9との間における前記中段補助電極17と下段補助電極18との間に位置するよう配置してある。
【0027】
そして、本実施例におけるガラス溶融炉では、図3に示す如く、前記溶融炉本体4の底部におけるガラス温度を上昇させる炉底加熱工程と、該炉底加熱工程で上昇させたガラス温度を更に設定温度まで上げて前記流下ノズル12から前記被処理液としての高レベル放射性廃液5が混入された溶融ガラスを抜き出すガラス流下工程と、該ガラス流下工程で設定温度まで上げたガラス温度を低下させる炉底冷却工程とを1バッチ処理として繰り返すようにし、前記冷却ジャケット19の冷却空気流通路19aに対しては、前記炉底加熱工程の途中から冷却空気を供給して流通させ、前記ガラス流下工程を経て、前記炉底冷却工程の途中で前記冷却空気の供給を停止するようにしてある。
【0028】
因みに、図3に示す如く、前記間接加熱装置16は常時作動させると共に、主電極8間通電、並びに中段補助電極17間通電も常時行い、溶融空間1内部を常時加熱することにより、溶融ガラス温度は、1000[℃]を越える温度に保持されるようにしてある。
【0029】
又、前記高周波誘導加熱コイル14への通電も常時行う一方、前記主電極8と底部電極9との間の通電は、前記炉底加熱工程の途中からガラス流下工程の途中まで行い、前記ノズル用高周波誘導加熱コイル15への通電は、前記ガラス流下工程中に行い、これにより、炉底ガラス温度が、炉底加熱工程において緩やかに上昇し、ガラス流下工程において引き続き上昇し、炉底冷却工程において低下するようにしてある。
【0030】
前述の如く冷却ジャケット19の冷却空気流通路19aに対し、前記炉底加熱工程の途中から冷却空気を供給して流通させ、前記ガラス流下工程を経て、前記炉底冷却工程の途中で前記冷却空気の供給を停止すると、白金族元素の抜き出し性を向上させるために前記溶融炉本体4内の下方へ向け窄まる形状とした部分の傾斜角度を、従来、およそ45°だったものを60°程度に大きくしたとしても、前記炉底加熱工程とガラス流下工程と炉底冷却工程とからなる1バッチ処理で、前記被処理液としての高レベル放射性廃液5が混入された溶融ガラスを一定重量(例えば、400[kg])抜き出す際、該溶融ガラスの流下の後半(トータル400[kg]のうち、後半の200[kg]の抜き出し時)において、温度の高い溶融炉本体4上部のガラスは、前記冷却ジャケット19の冷却空気流通路19aに供給される冷却空気により効率良く冷却されるため、流下ノズル12にある一定温度(例えば、1000[℃]程度)以上のガラスが達してしまうようなことが避けられ、現行の流下ノズル12であってもガラスの流下を確実に停止することが可能となる。
【0031】
参考までに、図4は本発明者等が以前に開発したガラス溶融炉の一例を示す全体概要構成図であって、図中、図1と同一の符号を付した部分は同一物を表わしており、基本的な構成は図1に示すものと同様であるが、溶融炉本体4内の円錐状に窄まる形状とした部分に、補助電極17´を前記主電極8と底部電極9との間に位置するよう配置し、該補助電極17´の内部に、冷却空気が流通される冷却空気流通路17a´を形成すると共に、底部電極9の内部に、冷却空気が流通される冷却空気流通路9hを形成してある。
【0032】
そして、図4に示される本発明者等が以前に開発したガラス溶融炉では、図5に示される如く、前記溶融炉本体4の底部におけるガラス温度を上昇させる炉底加熱工程と、該炉底加熱工程で上昇させたガラス温度を更に設定温度まで上げて前記流下ノズル12から前記被処理液としての高レベル放射性廃液5が混入された溶融ガラスを抜き出すガラス流下工程と、該ガラス流下工程で設定温度まで上げたガラス温度を低下させる炉底冷却工程とを1バッチ処理として繰り返すようにし、前記底部電極9の冷却空気流通路9hに対しては、炉底冷却工程の初めから冷却空気を供給して流通させ、該炉底冷却工程の途中で前記冷却空気の供給を停止するようにしてある。
【0033】
因みに、図5に示される如く、前記間接加熱装置16は常時作動させると共に、主電極8間通電、並びに補助電極17´間通電も常時行い、溶融空間1内部を常時加熱することにより、溶融ガラス温度は、1000[℃]を越える温度に保持されるようにしてあり、この点は、図3に示すタイムチャートと同様である。
【0034】
又、前記主電極8と底部電極9との間の通電は、前記炉底加熱工程の初めからガラス流下工程の途中まで行い、前記ノズル用高周波誘導加熱コイル15への通電は、前記ガラス流下工程中に行い、これにより、炉底ガラス温度が、炉底加熱工程において緩やかに上昇し、ガラス流下工程において引き続き上昇し、炉底冷却工程において低下するようにし、この点も、基本的には、図3に示すタイムチャートと同様である。
【0035】
しかしながら、図5と図3を比較すると明らかなように、図5に示すタイムチャートでは、炉底冷却工程が非常に長くなり、その分、1バッチ処理に要する時間も長くなってしまうのに対し、図3に示すタイムチャートでは、炉底冷却工程が短くなるため、1バッチ処理に要する時間も短縮することが可能となる。
【0036】
こうして、流下ノズル12の構造を変更することなく、溶融ガラスの流下を確実に停止させることができ、且つ1バッチ処理に要する時間をも短縮し得、作業効率向上を図り得る。
【0037】
尚、本発明のガラス溶融炉の運転方法及びガラス溶融炉は、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0038】
1 溶融空間
2 耐火物
3 ケーシング
4 溶融炉本体
5 高レベル放射性廃液(被処理液)
6 原料ガラス
7 投入口
8 主電極
9 底部電極
12 流下ノズル
19 冷却ジャケット
19a 冷却空気流通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
白金族元素を含む被処理液及び原料ガラスが投入される耐火物製の溶融炉本体と、該溶融炉本体の内壁の上下方向中間部に対向配置されて相互間での通電により溶融炉本体内の原料ガラスを加熱し溶融させる主電極と、前記溶融炉本体内の下方へ向け窄まる形状とした底部の下端に配置されて前記主電極との間での通電により溶融炉本体内底部のガラスを加熱し溶融させる底部電極と、該底部電極の下端から垂下し且つ前記被処理液が混入された溶融ガラスを抜き出してキャニスタへ注入するための流下ノズルとを備え、
前記溶融炉本体の底部におけるガラス温度を上昇させる炉底加熱工程と、該炉底加熱工程で上昇させたガラス温度を更に設定温度まで上げて前記流下ノズルから前記被処理液が混入された溶融ガラスを抜き出すガラス流下工程と、該ガラス流下工程で設定温度まで上げたガラス温度を低下させる炉底冷却工程とを1バッチ処理とするようにしたガラス溶融炉の運転方法であって、
前記溶融炉本体内の下方へ向け窄まる形状とした部分の外周に、内部に冷却空気流通路が形成された冷却ジャケットを配置し、該冷却ジャケットの冷却空気流通路に対し、前記炉底加熱工程の途中から冷却空気を供給して流通させ、前記ガラス流下工程を経て、前記炉底冷却工程の途中で前記冷却空気の供給を停止することを特徴とするガラス溶融炉の運転方法。
【請求項2】
白金族元素を含む被処理液及び原料ガラスが投入される耐火物製の溶融炉本体と、該溶融炉本体の内壁の上下方向中間部に対向配置されて相互間での通電により溶融炉本体内の原料ガラスを加熱し溶融させる主電極と、前記溶融炉本体内の下方へ向け窄まる形状とした底部の下端に配置されて前記主電極との間での通電により溶融炉本体内底部のガラスを加熱し溶融させる底部電極と、前記溶融炉本体内の下方へ向け窄まる形状とした部分の外周に前記主電極と底部電極との間に位置するよう配置され且つ内部に冷却空気流通路が形成された冷却ジャケットと、前記底部電極の下端から垂下し且つ前記被処理液が混入された溶融ガラスを抜き出してキャニスタへ注入するための流下ノズルとを備え、前記溶融炉本体の底部におけるガラス温度を上昇させる炉底加熱工程と、該炉底加熱工程で上昇させたガラス温度を更に設定温度まで上げて前記流下ノズルから前記被処理液が混入された溶融ガラスを抜き出すガラス流下工程と、該ガラス流下工程で設定温度まで上げたガラス温度を低下させる炉底冷却工程とを1バッチ処理とするよう構成すると共に、前記冷却ジャケットの冷却空気流通路に対し、前記炉底加熱工程の途中から冷却空気を供給して流通させ、前記ガラス流下工程を経て、前記炉底冷却工程の途中で前記冷却空気の供給を停止するよう構成したことを特徴とするガラス溶融炉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−28482(P2013−28482A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165027(P2011−165027)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】