説明

ガラス織布、透明ガラス繊維複合樹脂シート、表示体装置および太陽電池

【課題】本発明の課題は、ガラス繊維複合樹脂シートに対して、「縦方向および横方向の線膨張係数の均等性」、および「さらなる透明性」を付与することができるガラス織布を提供することにある。
【解決手段】本発明に係るガラス織布150は、複数の第1ガラス繊維束151aおよび複数の第2ガラス繊維束151bを備える。第1ガラス繊維束は、第1方向に配向する。第2ガラス繊維束は、平面視において第1方向と略直交する方向に沿って第1ガラス繊維束に織り込まれている。そして、このガラス織布において、単位幅当たりの第2ガラス繊維束中のガラス成分の断面積に対する単位幅当たりの第1ガラス繊維束中のガラス成分の断面積の比は、1.04以上1.40以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス織布、透明ガラス繊維複合樹脂シート、表示体装置および太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
過去に、表示素子用基板、太陽電池用基板としてガラス基板の代りに「透明樹脂と、ガラスクロスとを複合化させた透明ガラス繊維複合樹脂シート」を採用することが提案されている(例えば、特開2011−068781号公報等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−068781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、表示素子用基板、太陽電池用基板として採用される透明ガラス繊維複合樹脂シートには、「縦方向および横方向の線膨張係数の均等性」、および「さらなる透明性」が求められている。
【0005】
本発明の課題は、透明ガラス繊維複合樹脂シートに対して、「縦方向および横方向の線膨張係数の均等性」、および「さらなる透明性」を付与することができるガラス織布を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)
本発明に係るガラス織布は、複数の第1ガラス繊維束および複数の第2ガラス繊維束を備える。なお、ここにいう「ガラス繊維束」とは、ガラスヤーンである。第1ガラス繊維束は、第1方向に配向する。第2ガラス繊維束は、平面視において第1方向と略直交する方向(以下「第2方向」と称する)に沿って第1ガラス繊維束に織り込まれている。そして、このガラス織布において、単位幅当たりの第2ガラス繊維束中のガラス成分の断面積に対する単位幅当たりの第1ガラス繊維束中のガラス成分の断面積の比は、1.04以上1.40以下である。ここで、ガラス成分の断面積とは、ガラス繊維束(ガラスヤーン)を構成する各ガラスフィラメントの断面積の総和をいう。
【0007】
ところで、第1方向をMD方向(流れ方向)とし、第2方向をTD方向(垂直方向)としてこのガラス織布を透明ガラス繊維複合樹脂シート製造装置にセットして透明ガラス繊維複合樹脂シートを作製した場合、その透明ガラス繊維複合樹脂シートのヘイズ値を低減することができることが分かった。
【0008】
また、このガラス織布において、単位幅当たりの第2ガラス繊維束中のガラス成分の断面積に対する単位幅当たりの第1ガラス繊維束中のガラス成分の断面積の比は、1.04以上1.40以下である。このため、このガラス織布は、透明ガラス繊維複合樹脂シートに加工された場合に、縦方向と横方向とにおける線膨張係数の差を十分に小さくすることができる。
【0009】
したがって、このガラス織布は、透明ガラス繊維複合樹脂シートに加工された場合に、透明ガラス繊維複合樹脂シートのヘイズ値を低減することができると共にさらに、透明ガラス繊維複合樹脂シートの縦方向と横方向とにおける線膨張係数の差を十分に小さくすることができる。よって、このガラス織布は、透明ガラス繊維複合樹脂シートに対して、「縦方向および横方向の線膨張係数の均等性」および「さらなる透明性」を付与することができる。
【0010】
(2)
上述の(1)に係るガラス織布において、第1ガラス繊維束それぞれのガラス成分の断面積は、第2ガラス繊維束それぞれのガラス成分の断面積と実質的に等しいことが好ましい。また、かかる場合、単位幅当たりの第2ガラス繊維束の本数に対する単位幅当たりの第1ガラス繊維束の本数の比は、1.02以上1.18以下であることが好ましい。
【0011】
これによれば、このガラス織物は、同じ太さのガラス繊維束だけで、上述の(1)に係るガラス織布と同様の効果を得ることができる。このため、ガラス織布、延いては透明ガラス繊維複合樹脂シートの製造コストを低く維持することができる。
【0012】
なお、上記(1)、(2)に記載されるような透明ガラス繊維複合樹脂シートを得るためには、(1)、(2)に記載されるガラス繊維またはガラス繊維束の断面積比または本数比がガラス織布全体の80%以上の領域において成立すればよい。
【0013】
(3)
本発明に係る透明ガラス繊維複合樹脂シートは、上述のガラス織布およびマトリックス樹脂を備える。マトリックス樹脂は、ガラス織布中に含有される。なお、このような透明ガラス繊維複合樹脂シートは、太陽電池用の基板、表示体装置を構成する表示素子用基板として使用することができる。また、マトリックス樹脂は、脂環構造を有する樹脂を主成分とすることが好ましい。また、脂環構造を有する樹脂は、脂環式エポキシ樹脂であることが好ましい。また、脂環式エポキシ樹脂は、下記一般式(A)で表わされるものが好ましく、硬化後におけるガラス織布との屈折率差が波長589nmにおいて0.01以下であることがより好ましい。以下、屈折率に関して記載する場合は、波長589nmにおける屈折率をいう。
【化1】

(上記式中、−X−は、−O−、−S−、−SO−、−SO−、−CH−、−CH(CH)−、−C(CH−または単結合である。)
【0014】
これによれば、このガラス繊維複合樹脂シートは、ヘイズ値を低減することができると共に、縦方向と横方向とにおける線膨張係数の差を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態に係るガラスクロスの平面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る透明ガラス繊維複合樹脂シートの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態に係るガラス織布150は、図1に示されるように、縦方向ガラスヤーン(経糸)151aおよび横方向ガラスヤーン(緯糸)151bから形成されている。なお、ガラス織布150の織組織としては、平織り(図1参照)、ななこ織り、朱子織り、綾織り等が挙げられ、特に均一性等の観点から平織りが好ましい。ガラス織布を構成するガラス繊維の素材としては、Eガラス、Cガラス、Aガラス、Sガラス、Dガラス、Tガラス、NEガラス、石英ガラス、低誘導率ガラス、高誘導率ガラス等が挙げられ、特に光学特性等が優れているという点からEガラス、Sガラス、Tガラス、NEガラスが好ましい。なお、本実施の形態において、透明ガラス繊維複合樹脂シート160が製造される際、ガラス織布150は、縦方向ガラスヤーン151aがMD方向(流れ方向)を向き、横方向ガラスヤーン151bがTD方向(垂直方向)を向くようにして製造装置にセットされる。
【0017】
本実施の形態において、「単位幅当たりの横方向ガラスヤーン151b中のガラス成分の断面積」に対する「単位幅当たりの縦方向ガラスヤーン151a中のガラス成分の断面積」の比は、1.04以上1.40以下である。なお、「縦方向および横方向の線膨張係数の均等性」および「さらなる透明性」のバランスを良好にするという観点から、「単位幅当たりの横方向ガラスヤーン151b中のガラス成分の断面積」に対する「単位幅当たりの縦方向ガラスヤーン151a中のガラス成分の断面積」の比は1.21以上1.39以下であるのがより好ましく、1.25以上1.35以下であることがさらに好ましい。
【0018】
横方向ガラスヤーン151bが縦方向ガラスヤーン151aと同一のガラスヤーンである場合、「単位幅当たりの横方向ガラスヤーン151bの本数」に対する「単位幅当たりの縦方向ガラスヤーン151aの本数」の比は1.02以上1.18以下であるのが好ましい。なお、「縦方向および横方向の線膨張係数の均等性」および「さらなる透明性」のバランスを良好にするという観点から、「単位幅当たりの横方向ガラスヤーン151bの本数」に対する「単位幅当たりの縦方向ガラスヤーン151aの本数」の比は1.10以上1.18以下であるのがより好ましく、1.12以上1.16以下であることがさらに好ましい。
【0019】
本発明の実施の形態に係る透明ガラス繊維複合樹脂シート160は、図2に示されるように、上述のガラス織布150、およびマトリックス樹脂161を備える。なお、高い透明性を備える透明ガラス繊維複合樹脂シート160を得るためには、ガラス織布150とマトリックス樹脂161との屈折率の差の絶対値が0.01以下であることが好ましい。この条件を満たせば、透明ガラス繊維複合樹脂シート160を表示素子用の基板として用いた場合に、良好な透明性を備えるといえる。
【0020】
透明ガラス繊維複合樹脂シート160が表示素子用基板、照明装置用基板、太陽電池用基板として利用される場合、マトリックス樹脂161には、耐熱性、透明性等が求められる。そのようなマトリックス樹脂161としては、具体的には、例えば、ガラス転移温度が180度C以上のもの、熱変形温度が200度C以上のもの、熱膨張率が100ppm/K以下のものが望ましい。ここで、耐熱性、透明性等を兼ね備えるマトリックス樹脂としては、例えば、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、フェノール樹脂、シアネート樹脂およびこれらのブレンド樹脂が挙げられる。エポキシ系樹脂としては、例えば、脂環式エポキシ樹脂が挙げられる。この脂環式エポキシ樹脂の中でも、下記一般式(A)で示される脂環式エポキシ樹脂が好ましい。
【化2】

(上記式中、−X−は、−O−、−S−、−SO−、−SO−、−CH−、−CH(CH)−、−C(CH−または単結合である。)
【0021】
また、アクリル系樹脂としては、例えば、熱硬化性または光硬化性のアクリル系樹脂などが挙げられる。
【0022】
また、上述以外のマトリックス樹脂としては、脂環構造を有するエポキシ系樹脂、脂環構造を有するアクリル系樹脂等の脂環構造を有する樹脂を主成分とするものであることが好ましい。
【0023】
マトリックス樹脂161とガラス織布150とを複合化させる方法としては、例えば、マトリックス樹脂161をガラス織布150に塗布して含浸させる方法、または、マトリックス樹脂161を充填させた容器にガラス織布150を投入する方法などが挙げられる。なお、この際、雰囲気を減圧状態にすることで含浸性を向上させても良い。
【0024】
以上、上述の透明ガラス繊維複合樹脂シート160を表示素子用基板、照明装置用基板、太陽電池用基板として使用することにより、透明性、均一性に優れた高品質な表示装置、照明装置または太陽電池を作製することが可能となる。
【0025】
<実施例>
以下、実施例および比較例を示して本発明をより詳細に説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されることはない。
【実施例1】
【0026】
1.透明ガラス繊維複合樹脂シートの作製
下記化学式(1)を有する水添ビフェニル型脂環式エポキシ樹脂E−BP(ダイセル化学工業株式会社製,硬化(架橋)後の屈折率1.522)95重量部と、グリシジル型脂環構造エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製YX−8000,硬化(架橋)後の屈折率1.51)5重量部と、芳香族スルホニウム系熱カチオン硬化剤(三新化学工業株式会社製SI−100L)1重量部とを混合して、樹脂組成物を調製した。
【化3】

【0027】
次いで、上述の樹脂組成物をTガラス系ガラスクロス(厚さ95μm)に含浸させて樹脂含浸ガラスクロスを調製した後、その樹脂含浸ガラスクロスに対して脱泡処理を行った。なお、このガラスクロスにおいて、MD方向の1インチ幅当たりのガラスヤーンの本数は58本であり、TD方向の1インチ幅当たりのガラスヤーンの本数は50本であった。すなわち、「TD方向の1インチ幅当たりのガラスヤーンの本数」に対する「MD方向の1インチ幅当たりのガラスヤーンの本数」の比は1.16であった。つまり、このガラスクロスにおいて、「TD方向の1インチ幅当たりのガラスヤーン中のガラス成分の断面積」に対する「MD方向の1インチ幅当たりのガラスヤーン中のガラス成分の断面積」の比は1.35であった。そして、この樹脂含浸ガラスクロスを「離型処理された2枚のガラス板」に挟み込んだ状態で、80度Cで2時間加熱した後、さらに250度Cで2時間加熱して、厚さ97μmの透明ガラス繊維複合樹脂シートを得た。
【0028】
2.各種物性の測定
(1)ガラスクロスの屈折率の測定
100mm四方のガラスクロスをベンジルアルコール(屈折率1.54)に浸漬した。さらに、アセトキシエトキシエタン(屈折率1.406)をベンジルアルコールで浸漬したガラスクロスへ少量添加し、JIS K 7136に準拠した条件で濁度計(日本電色工業株式会社製、NDH2000)を用いて5点のヘイズを測定した。その後、ベンジルアルコールで浸漬したガラスクロスへ再度アセトキシエトキシエタンを少量添加し、ヘイズを測定する作業をヘイズ値が最小を示すまで繰り返した。最小のヘイズ値を示した比率で混合液を再度調整した後、アッベ屈折計(株式会社アタゴ製DR−A1)を用いてこの混合液の屈折率を測定し、得られた値をガラスクロスの屈折率とした。この結果、本実施例に係るガラスクロスの屈折率は1.520であった。
【0029】
(2)マトリックス樹脂の屈折率の測定
離型処理されたガラス板に硬化前のマトリックス樹脂を塗布し、マトリックス樹脂の液膜を形成した。その後、液膜の4辺に厚み200μmのスペーサを配置し、同じく離型処理されたガラス板をスペーサを介して液膜の上に乗せ、液膜をガラス板で挟み込んだ。この液膜を挟み込んだガラス板を、80度Cで2時間加熱した後、さらに250度Cで2時間加熱することにより、厚み200μmの樹脂フィルムを得た。得られた樹脂フィルムの屈折率をアッベ屈折計(株式会社アタゴ製DR−A1)を用いて測定し、硬化後のマトリックス樹脂の屈折率とした。この結果、本実施例に係るマトリックス樹脂の屈折率は1.521であった。
【0030】
(3)線膨張係数の測定
上述の透明ガラス繊維複合樹脂シートから試験片を切り出し、その試験片を熱応力歪測定装置(セイコー電子株式会社製TMA/SS120C型)にセットした。次に、窒素雰囲気下、無荷重で雰囲気温度を30度Cから150度Cまで5度C/分の昇温速度で上昇させた後、一旦0度Cまで冷却した。そして、試験片に5gの荷重をかけて試験片を引っ張りながら、雰囲気温度を30度Cから150度Cまで5度C/分の昇温速度で上昇させ、線膨張係数の測定を行った。この結果、本実施例に係る透明ガラス繊維複合樹脂シートのMD方向の線膨張係数は9.5ppm/Kであり、TD方向の線膨張係数は10.2ppm/Kであった(表1参照)。つまり、この透明ガラス繊維複合樹脂シートでは、MD方向の線膨張係数とTD方向の線膨張係数との差が僅か0.7ppm/Kであった。
【0031】
(4)透明ガラス繊維複合樹脂シートのヘイズの測定
透明ガラス繊維複合樹脂シートのヘイズを、日本電色工業株式会社製のNDH2000を用いて測定した。なお、測定条件は、JIS K7136の規定に従った。この結果、上述の透明ガラス繊維複合樹脂シートのヘイズは僅か2.1%であった(表1参照)。
【0032】
3.総評
以上より、本実施例に係る透明ガラス繊維複合樹脂シートは、ヘイズが小さいのみならずMD方向およびTD方向の線膨張係数の差が十分に小さく、樹脂とガラスクロスの屈折率の差の絶対値も0.001と小さいことから、表示素子用基板、太陽電池用基板として好ましかった。
【実施例2】
【0033】
1.透明ガラス繊維複合樹脂シートの作製
「E−BP95重量部」を「下記化学式(2)を有する脂環式エポキシ樹脂E−DOA(ダイセル化学工業株式会社製,硬化(架橋)後の屈折率1.513)85重量部と、オキセタニル基含有シルキセスキオキサン(以下「OX−SQH」と略する)(東亜合成株式会社,硬化(架橋)後の屈折率1.470)10重量部との混合物」に代え、ガラスクロスを「MD方向の1インチ幅当たりのガラスヤーンの本数が52本であり、TD方向の1インチ幅当たりのガラスヤーンの本数が50本であるNEガラス系ガラスクロス(厚さ95μm,「TD方向の1インチ幅当たりのガラスヤーンの本数」に対する「MD方向の1インチ幅当たりのガラスヤーンの本数」の比1.04,TD方向の1インチ幅当たりのガラスヤーン中のガラス成分の断面積」に対する「MD方向の1インチ幅当たりのガラスヤーン中のガラス成分の断面積」の比1.08」)」に代えた以外は、実施例1と同様にして透明ガラス繊維複合樹脂シートを作製した。
【化4】

【0034】
2.各種物性の測定
実施例1と同様にして実施例2に係るガラスクロスおよび硬化後のマトリックス樹脂の屈折率、透明ガラス繊維複合樹脂シートの線膨張係数およびヘイズの測定を行った。この結果、ガラスクロスの屈折率は1.510、硬化後のマトリックス樹脂の屈折率は1.507、実施例2に係る透明ガラス繊維複合樹脂シートのMD方向の線膨張係数は12.1ppm/K、TD方向の線膨張係数は12.8ppm/K、ヘイズは1.8%であった(表1参照)。
【0035】
3.総評
以上より、本実施例に係る透明ガラス繊維複合樹脂シートは、ヘイズが小さいのみならずMD方向およびTD方向の線膨張係数の差が僅か0.7ppm/Kと十分に小さく、樹脂とガラスクロスの屈折率の差の絶対値も0.003と小さいことから、表示素子用基板、太陽電池用基板として好ましかった。
【実施例3】
【0036】
1.透明ガラス繊維複合樹脂シートの作製
マトリックス樹脂を、「下記化学式(3)を有するジシクロペンタジエン骨格型ジアクリレート(ダイセル・サイテック株式会社製IRR−214K,硬化(架橋)後の屈折率1.529)100重量部と、光ラジカル重合開始剤(チバスペシャリティケミカル製イルガキュア184)0.5重量とを混合して調製した」こと、ガラスクロスを、「MD方向の1インチ幅当たりのガラスヤーンの本数が55本でありTD方向の1インチ幅当たりのガラスヤーンの本数が50本であるSガラス系ガラスクロス(厚さ95μm,「TD方向の1インチ幅当たりのガラスヤーンの本数」に対する「MD方向の1インチ幅当たりのガラスヤーンの本数」の比1.10,「TD方向の1インチ幅当たりのガラスヤーン中のガラス成分の断面積」に対する「MD方向の1インチ幅当たりのガラスヤーン中のガラス成分の断面積」の比1.21」)」に代えたこと、「樹脂含浸ガラスクロスを「離型処理された2枚のガラス板」に挟み込んだ状態で、その両面に約500mJ/cmの紫外光線を照射してマトリックス樹脂を硬化させた後に、その硬化後の樹脂含浸ガラスクロスを真空オーブンにて100度Cで3時間加熱した後、さらに250度Cで2時間加熱して、厚さ98μmの透明ガラス繊維複合樹脂シートを得た」こと以外は、実施例1と同様にして透明ガラス繊維複合樹脂シートを作製した。
【化5】

【0037】
2.各種物性の測定
マトリックス樹脂の屈折率を測定する際、「液膜を挟み込んだガラス板を、80度Cで2時間加熱した後、さらに250度Cで2時間加熱することにより、厚み200μmの樹脂フィルムを得た」ことに代えて、「液膜を挟み込んだガラス板の両面に約500mJ/cmの紫外光線を照射して樹脂組成物を硬化させ、硬化した樹脂組成物を100度Cで3時間、その後250度Cで2時間、それぞれ真空オーブンを用いて加熱することにより、厚み200μmの樹脂フィルムを得た」こと以外は、実施例1と同様にして実施例3に係るガラスクロスおよび硬化後のマトリックス樹脂の屈折率、透明ガラス繊維複合樹脂シートの線膨張係数およびヘイズの測定を行った。この結果、ガラスクロスの屈折率は1.530、硬化後のマトリックス樹脂の屈折率は1.529、実施例2に係る透明ガラス繊維複合樹脂シートのMD方向の線膨張係数は10.3ppm/K、TD方向の線膨張係数は11.1ppm/K、ヘイズは2.4%であった(表1参照)。
【0038】
以上より、本実施例に係る透明ガラス繊維複合樹脂シートは、ヘイズが小さいのみならずMD方向およびTD方向の線膨張係数の差が僅か0.8ppm/Kと十分に小さく、マトリックス樹脂とガラスクロスの屈折率の差の絶対値も0.001と小さいことから、表示素子用基板、太陽電池用基板として好ましかった。
(比較例1)
【0039】
1.透明ガラス繊維複合樹脂シートの作製
ガラスクロスを「MD方向の1インチ幅当たりのガラスヤーンの本数が60本であり、TD方向の1インチ幅当たりのガラスヤーンの本数が50本であるTガラス系ガラスクロス(厚さ95μm,「TD方向の1インチ幅当たりのガラスヤーンの本数」に対する「MD方向の1インチ幅当たりのガラスヤーンの本数」の比1.20,「TD方向の1インチ幅当たりのガラスヤーン中のガラス成分の断面積」に対する「MD方向の1インチ幅当たりのガラスヤーン中のガラス成分の断面積の比1.44」)」に代えたこと以外は、実施例1と同様にして透明ガラス繊維複合樹脂シートを作製した
【0040】
2.各種物性の測定
実施例1と同様にして比較例1に係るガラスクロスの屈折率、透明ガラス繊維複合樹脂シートの線膨張係数およびヘイズの測定を行った。この結果、ガラスクロスの屈折率は1.521、MD方向の線膨張係数は8.3ppm/K、TD方向の線膨張係数は12.5ppm/K、ヘイズは2.1%であった(表1参照)。
【0041】
3.総評
以上より、本実施例に係る透明ガラス繊維複合樹脂シートは、硬化後のマトリックス樹脂とガラスクロスの屈折率の差の絶対値は0.001と小さいが、MD方向およびTD方向の線膨張係数の差が4.2ppm/Kと大きく、表示素子用基板、太陽電池用基板として好ましくなかった。
(比較例2)
【0042】
1.透明ガラス繊維複合樹脂シートの作製
ガラスクロスを「MD方向の1インチ幅当たりのガラスヤーンの本数が50本であり、TD方向の1インチ幅当たりのガラスヤーンの本数が50本であるNEガラス系ガラスクロス(厚さ95μm,「TD方向の1インチ幅当たりのガラスヤーンの本数」に対する「MD方向の1インチ幅当たりのガラスヤーンの本数」の比1.00,「TD方向の1インチ幅当たりのガラスヤーン中のガラス成分の断面積」に対する「MD方向の1インチ幅当たりのガラスヤーン中のガラス成分の断面積」の比1.00)」に代えた以外は、実施例2と同様にして透明ガラス繊維複合樹脂シートを作製した。
【0043】
2.各種物性の測定
実施例1と同様にして比較例2に係るガラスクロスの屈折率、透明ガラス繊維複合樹脂シートの線膨張係数およびヘイズの測定を行った。この結果、ガラスクロスの屈折率は1.510、MD方向の線膨張係数は12.3ppm/K、TD方向の線膨張係数は13.1ppm/K、ヘイズは4.1%であった(表1参照)。
【0044】
以上より、本実施例に係る透明ガラス繊維複合樹脂シートは、MD方向およびTD方向の線膨張係数の差は僅か0.8ppm/Kと小さく、硬化後のマトリックス樹脂とガラスクロスの屈折率の差の絶対値も0.003と小さい。しかし、ヘイズが4.1%と大きいことから、表示素子用基板、太陽電池用基板として好ましくなかった。
(比較例3)
【0045】
1.透明ガラス繊維複合樹脂シートの作製
「E−DOA85重量部」を「E−DOA50重量部」に代えたこと、および「OX−SQH10重量部」を「OX−SQH50重量部」に代えたこと以外は、比較例2と同様にして透明ガラス繊維複合樹脂シートを作製した。
【0046】
2.各種物性の測定
実施例1と同様にして本実施例に係る硬化後のマトリックス樹脂の屈折率、および透明ガラス繊維複合樹脂シートの線膨張係数およびヘイズの測定を行った。硬化後のマトリックス樹脂の屈折率は1.492、MD方向の線膨張係数は12.3ppm/K、TD方向の線膨張係数は13.1ppm/K、ヘイズは8.2%であった(表1参照)。
【0047】
以上より、本実施例に係る透明ガラス繊維複合樹脂シートは、MD方向およびTD方向の線膨張係数の差は僅か0.8ppm/Kと小さいが、硬化後のマトリックス樹脂とガラスクロスの屈折率の差の絶対値が0.018と大きく、また、ヘイズも8.2%と大きいことから、表示素子用基板、太陽電池用基板として好ましくなかった。
【表1】

【符号の説明】
【0048】
150 ガラスクロス(ガラス織布)
151a 縦方向ガラスヤーン(第1ガラス繊維束)
151b 横方向ガラスヤーン(第2ガラス繊維束)
160 透明ガラス繊維複合樹脂シート(ガラス繊維複合樹脂シート)
161 マトリックス樹脂
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明に係るガラス織布は、ガラス繊維複合樹脂シートに加工された場合に、ガラス繊維複合樹脂シートのヘイズ値を低減することができ、ガラス繊維複合樹脂シートに高い透明性を付与できる。さらに、ガラス繊維複合樹脂シートの縦方向と横方向とにおける線膨張係数の差を小さくすることができるという特徴を有するので、特に表示装置用、照明装置用、太陽電池用の樹脂基板として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に配向する複数の第1ガラス繊維束と、
平面視において前記第1方向と略直交する方向に沿って前記第1ガラス繊維束に織り込まれる複数の第2ガラス繊維束と
を備え、
単位幅当たりの前記第2ガラス繊維束中のガラス成分の断面積に対する前記単位幅当たりの前記第1ガラス繊維束中のガラス成分の断面積の比は、1.04以上1.40以下である
ガラス織布。
【請求項2】
前記第1ガラス繊維束それぞれのガラス成分の断面積は、前記第2ガラス繊維束それぞれのガラス成分の断面積と実質的に等しく、
前記単位幅当たりの前記第2ガラス繊維束の本数に対する前記単位幅当たりの前記第1ガラス繊維束の本数の比は、1.02以上1.18以下である
請求項1に記載のガラス織布。
【請求項3】
請求項1および2に記載のいずれかひとつのガラス織布と、
前記織布中に含有されるマトリックス樹脂と
を備える、透明ガラス繊維複合樹脂シート。
【請求項4】
ガラス織布の屈折率とマトリックス樹脂の屈折率との差が0.01以下である
請求項3に記載の透明ガラス繊維複合樹脂シート。
【請求項5】
前記マトリックス樹脂は、脂環構造を有する樹脂を主成分とする
請求項3または4のいずれかに記載の透明ガラス繊維複合樹脂シート。
【請求項6】
前記脂環構造を有する樹脂は、脂環式エポキシ樹脂である
請求項5に記載の透明ガラス繊維複合樹脂シート。
【請求項7】
前記脂環式エポキシ樹脂は、下記一般式(A)で表わされる
請求項6に記載の透明ガラス繊維複合樹脂シート。
【化1】

(上記式中−X−は、−O−、−S−、−SO−、−SO−、−CH−、−CH(CH)−、−C(CH−または単結合である。)
【請求項8】
請求項3から7のいずれか一つに記載される透明ガラス繊維複合樹脂シートを備える表示体装置。
【請求項9】
請求項3から7のいずれか一つに記載される透明ガラス繊維複合樹脂シートを備える太陽電池。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−14744(P2013−14744A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−118132(P2012−118132)
【出願日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】