説明

ガルシニア抽出物のカプセル化のためのプロセス

【課題】ガルシニア抽出物のカプセル化のための新規なプロセスを開発すること。
【解決手段】本発明は、ガルシニア抽出物粉末のカプセル化のための新規なプロセスであって、(a)ガルシニアの種から果実を採集すること、(b)果実の外皮を手動により刻むこと、(c)1:4の体積比の脱イオン水により、110〜130℃において15〜35分間にわたって抽出すること、(d)濾過布を用いて抽出物を濾過すること、(e)ガルシニア抽出物を5〜20%(w/w)のホエータンパク質と混合すること、および(f)上記の混合物を噴霧乾燥して粉末形状の製品を得ること、を含むプロセスに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガルシニア(Garcinia、フクギ属)抽出物のカプセル化のためのプロセスに関する。本発明は特に、ホエータンパク質を用いたカプセル化により、粉末形状のガルシニア抽出物を取得するプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
ダイエタリーサプリメントとして、(-)ヒドロキシクエン酸(hydroxcitic acid)(HCA)は、いかなる体重管理プログラムにも有効な付加物質である。アリソン(Allison)ら(クリティカル・リビューズ・イン・フード・サイエンス&ニュートリション(Crit. Rev. Food Sci. Nutr. )2001年、第41巻、p.1-28)は、HCAの使用を、減量のための代替療法の一つとして総説した。HCAの誘導体は、減量、心臓保護、脂質異常症状の修正、および持久力を増強する目的のため、他の成分と組合せて多くの製剤に取入れられてきた(ジェイナ(Jena)ら著、ジャーナル・オブ・アグリカルチュラル・アンド・フード・ケミストリー(J. Agric. Food Chemistry)、2002年、第50巻、p.10-22)。これまでのところ、HCAは、G・カンボギア(G. cambogia)、G・インディカ(G. indica)、G・アトロウィリディス(G. atroviridis)、およびG・コワ(G. cowa)を含む、ガルシニアのいくつかの種の果実中に見出されている(ルイス(Lewis, Y. S. )著、メソッズ・イン・エンザイモロジー(Methods in enzymology)、1969年、第13巻、p.613-623:ジェイナ(Jena)ら著、ジャーナル・オブ・アグリカルチュラル・アンド・フード・ケミストリー(J. Agric. Food Chemistry)、2002年、第50巻、p.10-22)。HCAの化学および生化学は、最近議論された(ジェイナ(Jena)ら著、ジャーナル・オブ・アグリカルチュラル・アンド・フード・ケミストリー(J. Agric. Food Chemistry)、2002年、第50巻、p.10-22)。広範囲な動物研究を通じて、HCAは効果的に食欲を抑えること、食事摂取量を抑制すること、肝臓のグリコーゲン合成の速度を増大すること、脂肪酸合成および脂質生成を低減すること、および体重増加量を減少させることが証明されている。
【0003】
ガルシニア(オトギリソウ科(Guttiferae))は、熱帯アジア、アフリカ、およびポリネシアに分布する、雌雄混株の高木または低木の大きな属である。それは180の種からなり、その約30種はインドで見つかっている。G・ペドゥンクラータ(G. pedunculata)およびG・コワは、インド北東部およびアンダマナン諸島で栽培されている。アッサムでは、G・コワはしばしば農家において酸味のある果実用に栽培されている(「ザ・ウェルス・オブ・インディア(The Wealth of India)」、1956年)。この双方のガルシニア種からの果実は、その強烈な酸味ゆえに味のよいものではない。アッサムでは、日干しされた果実の薄切りが、料理用の目的のため、および民間薬として使用されている。
【0004】
HCAがそのカルシウム塩として存在する、ガルシニア・カンボギア抽出物の市販のサンプルが参照されるであろう(サワダ(Sawada)ら著、1997年、日本(yukagaka)会誌、第 巻、p.1467-1474)。しかしながら、過剰のカルシウムは溶解性を低減し、その結果として、液体抽出物との比較時にはバイオアベイラビリティを低減する。
【0005】
もう一つは、アショク・クマール(Ashok kumar)、ラビンドラナート(Ravindranath, B. )、およびバラスブラママンバム(Balasubramamanvam)(米国特許第656314号、1996年)が参照されるであろう。このプロセスは、水抽出と、それに続きイオン交換樹脂を通すこと、および活性炭の使用による脱色、および濃縮を含む。この方法の主な欠点は、このプロセスが最終産物を得るためにあまりにも多くの単位操作を含むことである。
【0006】
ガルシニア果実からのヒドロキシクエン酸カリウムの調製が報告された、マジード(Majeed )ら(マジード(Majeed, M. )、バドマエフ(Badmaev, V.)、およびラジェンドラン(Rajendran, R. )、米国特許第5,783,603号、1998年)が参照されるであろう。それは、アルキルアルコールを使用したガルシニア果実の抽出を含んでおり、抽出物は水酸化カリウムで処理され、ヒドロキシクエン酸カリウムの沈殿を形成するべく灌流された。この方法の主な欠点は、カリウム塩が吸湿性であることである。さらに、HCAは天然の状態では入手されず、そのバイオアベイラビリティおよび製薬目的のための多方面の適用性を制限している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これらの参考文献がすべて上記のHCA誘導体の調製について記述されていることに注目されるであろう。しかしながら、HCAの天然の(誘導体としてではない)形状におけるカプセル化については、何ら報告がない。
【0008】
本発明の主要な目的は、ガルシニア抽出物のカプセル化のための新規なプロセスを開発することである。
【0009】
本発明のもう一つの目的は、安定性および非吸湿性を得るため、ホエータンパク質を用いて、粉末形状でHCAをカプセル化するためのプロセスを開発することである。
【0010】
本発明のさらにもう一つの目的は、カプセル化されたHCA粉末を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって、本発明はガルシニア抽出物粉末のカプセル化のための新規なプロセスであって、(a)ガルシニアの種から果実を採集すること、(b)果実の外皮を手動により刻むこと、(c)1:4の体積比の脱イオン水により、110〜130℃において15〜35分間にわたって抽出すること、(d)濾過布を用いて抽出物を濾過すること、(e)ガルシニア抽出物を5〜20%(w/w)のホエータンパク質と混合すること、および(f)上記の混合物を噴霧乾燥して粉末形状の製品を得ること、を含むプロセスを提供する。
【0012】
本発明によれば、ガルシニア抽出物のカプセル化のプロセスは、
a)ガルシニア・ペドゥンクラータ(Garcinia pedunculata)/ガルシニア・コワ(Garcinia cowa)の果実を採集すること、
b)段階(a)の植物の果実外皮を刻むこと、
c)段階(b)の刻まれた果実外皮を、脱イオン水を用いて、100〜135℃の温度
範囲において20〜30分間にわたり抽出すること、
d)段階(c)の水抽出物を、濾過布を通して濾過して水抽出物を得ること、
e)段階(d)の水抽出物をホエータンパク質と混合すること、および
f)段階(e)の混合物を噴霧乾燥して、カプセル化されたガルシニア抽出物粉末を得
ること、
の段階を含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明の主な利点は:
1.これは、カプセル化されたガルシニア粉末を得るための単純なプロセスである。
2.このカプセル化されたガルシニア粉末は、天然の形状にあり、なんらそのナトリウム、カリウム、およびカルシウム塩のような誘導体であることはない。したがって、それはより良好なバイオアベイラビリティを有するであろう。
3.その吸湿性が低いことから、最終産物の回収率が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の一つの態様においては、段階(b)において、刻まれた果実外皮のサイズが5x7mm〜9x11mmの間の範囲にあるプロセスを提供する。
【0015】
もう一つの態様は、使用される脱イオン水に対する植物の比が、1:4の範囲内にあり、抽出は115℃〜125℃の範囲内の温度において行なわれる。
【0016】
もう一つの態様は、段階(e)において、ガルシニアの水抽出物:ホエータンパク質の重量/重量比が、85:15〜90:10の範囲内にある。
【0017】
さらにもう一つの態様は、水抽出物の噴霧乾燥が、140〜150℃の範囲内の入口温度および、90〜95℃の範囲内の出口温度を維持して行なわれる。
【0018】
さらにもう一つの態様は、水抽出物の送り速度が1分間あたり80〜90mlの範囲内である。
【0019】
なおもう一つの態様は、ヒドロキシクエン酸がガルシニア・ペドゥンクラータまたはガルシニア・コワの水性抽出物から得られる。
【0020】
なおもう一つの態様は、抽出物のカプセル化された粉末のヒドロキシクエン酸含量が、乾燥量基準で53〜62%の範囲内にある。
【0021】
なおもう一つの態様は、抽出物のカプセル化された粉末のホエータンパク質含量が、ブラッドフォート(Bradfort)法により測定される、30〜44%の範囲内にある。
【0022】
本発明の一つの態様は、ガルシニア抽出物のカプセル化された粉末がヒドロキシクエン酸を天然の形状で含有し、安定かつ非吸湿性であるプロセスを提供する。
【0023】
もう一つの態様は、ガルシニアのカプセル化された粉末がより良好なバイオアベイラビリティを有する。それはまた、必須アミノ酸も提供する。
【0024】
本発明においては、G・ペドゥンクラータ/G・コワの外皮は小片に刻まれ、脱イオン水により抽出された。上記の抽出物は濾過布を通して濾過された。全抽出物はホエータンパク質と混合され、既知の送り速度で噴霧乾燥機へ送られた。噴霧乾燥機は所望の入口および出口温度に維持された。粉末は乾燥機の底からアルミニウムパック内へ集められ、直ちに密封された。
【0025】
標品の純度は、ジャヤプラカーシャ(Jayaprakasha, G. K. )およびサーカライア(Sakariah, K. K. )により記述されたHPLCによって分析された(ジャーナル・オブ・リキド・クロマトグラフィー&リレイテッド・テクノロジーズ(J. Liquid Chromatography & Related Technologies)、2000年、第23巻、p.915-923)。カプセル化されたヒドロキシクエン酸パウダーの(0.1g)量は、5mlの水に溶解され、水で100mlとされ、濾過された。高速液体クロマトグラフィーシステムは、ウォーターズのμ-ボンダパック(Waters μ-Bonadapack TM)(ウォーターズ・コーポレーション(Waters Corporation)、米国、マサチューセッツ州、ミルフォード)C18カラム(250x内径4.6mm)を備えたヒューレット・パッカード(Hewlett-Packard)HPLCモデルHP 1100シリーズ(ヒューレット・パッカード、米国、カリフォルニア州)で構成された。使用された注入システム(レオダイン(Rheodyne))は、20μlのサンプルループであった。検出は、HP 1100シリーズ可変波長検出器により、210nmの波長において行なわれた。溶出は8mM硫酸を用いて行なわれ、流速はアイソクラティックな条件下に1.0ml/分であった。既知の体積(10μl)の試料がHPLCへ注入され、HCAの濃度はピーク領域から直接的に、かつ希釈比の適用によって得られた。試料のHCA濃度は、g/試料100gとして表された。ヒドロキシクエン酸の純度は20〜23%であり、HCAラクトンは30〜39%(w/w)であった。タンパク質濃度は、ブラッドフォード法(1976年)により、ウシ血清アルブミンを標準として用いるクーマシーブリリアントブルーG-250を使用して測定された。タンパク質濃度は30〜44%と判定された。
【0026】
製品規格
(a)色 - 乳白色
(b)含水率 - 8〜15%
(c)遊離のHCA - 20〜23%
(d)HCAラクトン - 30〜39%
(e)ホエータンパク質含量 - 30〜44%
(f)可溶性 - 水およびメタノールに非常に溶けやすい
(g)貯蔵安定性 - 湿気のない状態で貯蔵する
【0027】
本発明の新規性は:
1.HCAのカプセル化が、その天然の形状で、かつ誘導体(塩)としてではなく達成される。
2.得られるHCA粉末は貯蔵性があり、非吸湿性である。
3.ヒドロキシクエン酸含量は、53〜62%(w/w)である。
4.本プロセスから得られるガルシニア抽出物粉末は、水に非常に溶けやすい。
5.ホエータンパク質を用いた最終産物は、必須アミノ酸含量という角度から、付加的な健康上の利点がある。
【0028】
以下の実施例は、本発明の単なる実例として示されたものであり、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【実施例】
【0029】
実施例1
500g量のG・ペドゥンクラータの果実外皮は小片に刻まれ、1.5リットルの脱イオン水で、120℃において20分間にわたり抽出された。上記の抽出物は濾過布を通して濾過された。濾液(1.5kg)は150gのホエータンパク質と混合され、75ml/分の送り速度で噴霧乾燥機の中へ送られた。噴霧乾燥機の入口および出口温度は、135℃および95℃に維持された。HCAパウダーは、乾燥機の底からアルミニウムパック内へ集められ、直ちに密封された。HCA含量はHPLC法により測定され、ヒドロキシクエン酸含量は61%(w/w)であった。タンパク質含量は30%であると判定された。
【0030】
実施例2
1000g量のG・コワの果実外皮は小片に刻まれ、3リットルの脱イオン水により、オートクレーブ処理を用いて130psi(ポンド/平方インチ)において30分間にわたり抽出された。抽出物は濾過布を通して濾過された。全濾液(3kg)は300gのホエータンパク質と混合され、80ml/分の送り速度で噴霧乾燥機の中へ送られた。噴霧乾燥機の入口および出口温度は、各々150℃および90℃に維持された。HCA粉末は、乾燥機の底からアルミニウムパック内へ集められ、直ちに密封された。HCA含量はHPLC法により測定され、ヒドロキシクエン酸含量は53%(w/w)であった。タンパク質含量は34%であると判定された。
【0031】
実施例3
100g量のG・ペドゥンクラータの果実外皮は小片に刻まれ、1リットルの脱イオン水により、オートクレーブ処理を用いて120℃において50分間にわたり抽出された。抽出物は濾過布を通して濾過された。全濾液(1kg)は15gのホエータンパク質と混合され、95ml/分の送り速度で噴霧乾燥機の中へ送られた。噴霧乾燥機の入口および出口温度は、各々155℃および94℃に維持された。粉末は、乾燥機の底からアルミニウムパック内へ集められ、直ちに密封された。HCA含量はHPLC法により測定され、ヒドロキシクエン酸含量は62%(w/w)であった。タンパク質含量は31%であると判定された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガルシニア抽出物のカプセル化のためのプロセスであって、
a)ガルシニア・ペドゥンクラータ(Garcinia pedunculata)/ガルシニア・コワ(Garcinia cowa)の果実を採集すること、
b)段階(a)の植物の果実外皮を刻むこと、
c)段階(b)の刻まれた果実外皮を、脱イオン水を用いて、100〜135℃の温度範囲において20〜30分間にわたり抽出すること、
d)段階(c)の水抽出物を、濾過布を通して濾過して水抽出物を得ること、
e)段階(d)の水抽出物をホエータンパク質と混合すること、および
f)段階(e)の混合物を噴霧乾燥して、カプセル化されたガルシニア抽出物粉末を得ること、
の段階を含むプロセス。
【請求項2】
段階(b)において、刻まれた果実外皮のサイズが5x7mm〜9x11mmの間の範囲にある、請求項1のプロセス。
【請求項3】
段階(c)において、使用される脱イオン水に対する植物の比が、1:4の範囲内にある請求項1のプロセス。
【請求項4】
段階(c)において、抽出が115℃〜125℃の範囲内の温度において行なわれる、請求項1のプロセス。
【請求項5】
段階(e)において、ガルシニアの水抽出物:ホエータンパク質の重量/重量比が、85:15〜90:10の範囲内にある、請求項1のプロセス。
【請求項6】
段階(f)において、水抽出物の噴霧乾燥が、140〜150℃の範囲内の入口温度および、90〜95℃の範囲内の出口温度を維持して行なわれる、請求項1のプロセス。
【請求項7】
段階(f)において、水抽出物の送り速度が1分間あたり80〜90mlの範囲内である、請求項1のプロセス。
【請求項8】
ヒドロキシクエン酸がガルシニア・ペドゥンクラータまたはガルシニア・コワの水性抽出物から得られる、請求項1のプロセス。
【請求項9】
抽出物のカプセル化された粉末のヒドロキシクエン酸含量が、乾燥量基準で53〜62%の範囲内にある、請求項1のプロセス。
【請求項10】
抽出物のカプセル化された粉末のホエータンパク質含量が、ブラッドフォート(Bradfort)法により測定される、30〜44%の範囲内にある、請求項1のプロセス。
【請求項11】
ガルシニア抽出物のカプセル化された粉末がヒドロキシクエン酸を天然の形状で含有する、請求項1のプロセス。
【請求項12】
ガルシニア抽出物のカプセル化された粉末が安定かつ非吸湿性である、請求項1のプロセス。
【請求項13】
ガルシニアのカプセル化された粉末がより良好なバイオアベイラビリティを有する、請求項1のプロセス。
【請求項14】
ガルシニアのカプセル化された粉末が必須アミノ酸を提供する、請求項1のプロセス。

【公表番号】特表2006−521087(P2006−521087A)
【公表日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−569896(P2004−569896)
【出願日】平成15年3月26日(2003.3.26)
【国際出願番号】PCT/IN2003/000086
【国際公開番号】WO2004/084654
【国際公開日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【出願人】(505185709)カウンシル オブ サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ (35)
【Fターム(参考)】