説明

ガンの治療のための18,21−ジデスオキシマクベシン誘導体

本発明は、例えば、癌、B-細胞性悪性疾患、マラリア、真菌感染症、中枢神経系疾患及び神経変性疾患、血管新生依存性疾患、自己免疫疾患の治療、並びに/又は癌の予防的前処置において有用であるマクベシン類似体に関する。本発明は、非天然スターターユニットの取り込みを伴うこれらの化合物の製造方法、並びにそれらの医薬品における使用、特に癌又はB-細胞性悪性疾患の治療及び/又は予防における使用も提供する。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
90kDa熱ショックタンパク質(Hsp90)は、タンパク質の折り畳み及び集合に関連した豊富な分子シャペロンであり、その多くはシグナル伝達経路に関与している(総説については、Neckersの論文、2002;Sreedharらの論文、2004a;Wegeleらの論文、2004、及びそれらの中の参考文献を参照されたい)。これまでに、これらのいわゆるクライアントタンパク質のほぼ50種が同定されており、かつこれらは、ステロイド受容体、例えばsrcファミリーなどの非受容体型チロシンキナーゼ、例えばcdk4及びcdk6などのサイクリン依存性キナーゼ、膿疱性膜貫通型制御因子、一酸化窒素合成酵素などを含む(Donze及びPicardの論文、1999;McLaughlinらの論文、2002;Chiosisらの論文、2004;Wegeleらの論文、2004;http://www.picard.ch/downloads/Hsp90interactors.pdf)。更にHsp90は、ストレス反応及び変異の影響に対する細胞の保護において重要な役割を果たす(Bagatell及びWhitesellの論文、2004;Chiosisらの論文、2004)。Hsp90の機能は複雑であり、かつこれは動的多酵素複合体(dynamic multi-enzyme complex)の形成に関与している(Bohenの論文、1998;Liuらの論文、1999;Youngらの論文、2001;Takahashiらの論文、2003;Sreedharらの論文、2004;Wegeleらの論文、2004)。Hsp90は、阻害剤の標的であり(Fangらの論文、1998;Liuらの論文、1999;Blagosklonnyの論文、2002;Neckersの論文、2003;Takahashiらの論文、2003;Beliakoff及びWhitesellの論文、2004;Wegeleらの論文、2004)、結果クライアントタンパク質の分解、細胞周期の異常調節及びアポトーシスを生じる。より最近になって、Hsp90は、腫瘍浸潤の重要な細胞外メディエーターとして同定された(Eustaceらの論文、2004)。Hsp90は癌療法の新たな主要な治療標的として同定され、このことは、Hsp90機能に関する活発で詳細な研究(Blagosklonnyらの論文、1996;Neckersの論文、2002;Workman及びKayeの論文、2002;Beliakoff及びWhitesellの論文、2004;Harrisらの論文、2004;Jezらの論文、2003;Leeらの論文、2004)、及びハイスループットスクリーニングアッセイの開発(Carrerasらの論文、2003;Rowlandsらの論文、2004)において反映されている。Hsp90阻害剤は、アンサマイシン、マクロライド、プリン、ピラゾール、クマリン抗生物質などの、化合物クラスを含む(総説については、Bagatell及びWhitesellの論文、2004;Chiosisらの論文、2004、及びそれらの中の参考文献を参照されたい)。
【0002】
ベンゼノイドアンサマイシンは、芳香族環構造のいずれかの側に連結された長さが変動する脂肪族環を特徴とする化学構造の広範なクラスである。天然のアンサマイシンは、マクベシン及び18,21-ジヒドロマクベシン(各々、マクベシンI及びマクベシンIIとしても公知)(1及び2;Tanidaらの論文、1980)、ゲルダナマイシン(3;DeBoerらの論文、1970;DeBoer及びDietzの論文、1976;WO 03/106653及びそれらの中の参考文献)、並びにハービマイシンファミリー(4;5、6、Omuraらの論文、1979;Iwaiらの論文、1980;及び、Shibataらの論文、1986a、WO 03/106653、及びそれらの中の参考文献)を含む。
【化1】

【0003】
アンサマイシンは、当初それらの抗菌活性及び抗ウイルス活性について同定されたが、最近抗癌剤としてのこれらの潜在的有用性に関心が高まってきている(Beliakoff及びWhitesellの論文、2004)。現在多くのHsp90阻害剤が、臨床試験において評価中である(Csermely及びSotiの論文、2003;Workmanの論文、2003)。特にゲルダナマイシンは、ナノモルでの効能及び異常なプロテインキナーゼ依存型腫瘍細胞に対する明白な特異性を有する(Chiosisらの論文、2003;Workmanの論文、2003)。
【0004】
Hsp90阻害剤による治療は、放射線による腫瘍細胞死滅の誘導を増強することが示されており、並びにHsp90阻害剤の細胞傷害性薬物との組合せによる増大した細胞殺傷能(例えば、乳癌、慢性骨髄性白血病及び非-小細胞肺癌)も示されている(Neckersの論文、2002;Beliakoff及びWhitesellの論文、2004)。抗-血管新生活性の可能性も、関心があり:Hsp90クライアントタンパク質HIF-1αは、固形腫瘍の進行において重要な役割を果たす(Hurらの論文、2002;Workman及びKayeの論文、2002;Kaurらの論文、2004)。
【0005】
Hsp90阻害剤は、免疫抑制薬としても機能し、かつHsp90阻害後のいくつかの腫瘍細胞型の補体誘導性溶解に関与している(Sreedharらの論文、2004)。Hsp90阻害剤による治療は、免疫細胞媒介性溶解(Sreedharらの論文、2004)に関連したスーパーオキシド生成の誘導も生じることができる(Sreedharらの論文、2004a)。潜在的な抗マラリア薬としてのHsp90阻害剤の使用も議論されている(Kumarらの論文、2003)。更にゲルダナマイシンは、複合糖鎖形成された哺乳類のプリオンタンパク質PrPcの形成を妨げることが示されている(Winklhoferらの論文、2003)。
【0006】
前述のように、アンサマイシンは、潜在的な抗癌剤及び抗B細胞性悪性疾患化合物として関心があるが、しかし現在入手可能なアンサマイシンの薬理学的特性又は医薬特性は不良であり、例えばこれらは、水溶解度が低く、代謝安定性が不良であり、生物学的利用能が悪く、又は製剤能が不良である(Goetzらの論文、2003;Workmanの論文、2003;Chiosisの論文、2004)。ハービマイシンA及びゲルダナマイシンは両方共、それらの強力な肝毒性のために臨床試験の候補として不良であることが確定され(総説Workmanの論文、2003)、かつ、ゲルダナマイシンは、肝毒性のために臨床試験第I相から取り下げられた(Supkoらの論文、1995;WO 03/106653)。
【0007】
ゲルダナマイシンは、ストレプトマイセス・ハイグロスコピカス(Streptomyces hygroscopicus)の培養濾液から単離され、インビトロにおいて原虫に対し強力な活性を示し、並びに細菌及び真菌に対し弱い活性を示す。1994年に、ゲルダナマイシンのHsp90との関連が示された(Whitesellらの論文、1994)。ゲルダナマイシン生合成遺伝子クラスターがクローン化され、かつ配列決定された(Allen及びRitchieの論文、1994;Rascherらの論文、2003;WO 03/106653)。そのDNA配列は、NCBI寄託番号AY179507で入手可能である。遺伝子操作されたゲルダナマイシン産生株の単離は、S.ハイグロスコピカス亜種デュアマイセチカスJCM4427に由来し、並びに4,5-ジヒドロ-7-O-デスカルバモイル-7-ヒドロキシゲルダナマイシン及び4,5-ジヒドロ-7-O-デスカルバモイル-7-ヒドロキシ-17-O-デメチルゲルダナマイシンの単離は、最近説明された(Hongらの論文、2004)。ゲルダナマイシンを、ハービマイシン産生株ストレプトマイセス・ハイグロスコピカスAM-3672へ供給することにより、化合物15-ヒドロキシゲルダナマイシン、三環系ゲルダナマイシン類似体KOSN-1633及びメチル-ゲルダナマイシネートが単離された(Huらの論文、2004)。2種の化合物17-ホルミル-17-デメトキシ-18-O-21-O-ジヒドロゲルダナマイシン及び17-ヒドロキシメチル-17-デメトキシゲルダナマイシンは、S.ハイグロスコピカスK279-78から単離された。S.ハイグロスコピカスK279-78は、ハービマイシン産生株ストレプトマイセス・ハイグロスコピカスAM-3672由来の様々な遺伝子を含む44kbp挿入断片を有する、コスミドpKOS279-78を含む、S.ハイグロスコピカスNRRL 3602である(Huらの論文、2004)。アシル基転移酵素ドメインの置換が、ゲルダナマイシン生合成クラスターのポリケチド合成酵素の4種のモジュールにおいて作出されている(Patelらの論文、2004)。AT置換は、モジュール1、4及び5において実行され、完全にプロセシングされた類似体14-デスメチル-ゲルダナマイシン、8-デスメチル-ゲルダナマイシン及び6-デスメトキシ-ゲルダナマイシン、並びに完全にプロセシングされない4,5-ジヒドロ-6-デスメトキシ-ゲルダナマイシンを導く。モジュール7のAT置換は、3種の2-デスメチル化合物KOSN1619、KOSN1558及びKOSN1559の生成を導き、そのひとつ(KOSN1559)であるゲルダナマイシンの2-デメチル-4,5-ジヒドロ-17-デメトキシ-21-デオキシ誘導体は、ゲルダナマイシンよりも4倍大きい結合親和性で、及び17-AAGよりも8倍大きい結合親和性で、Hsp90へ結合する。しかしこのことは、SKBr3を用いるIC50測定値の改善には反映されない。別の類似体である新規非ベンゾキノイドゲルダナマイシンは、KOS-1806と称され、これはモノフェノール構造を有する(Rascherらの論文、2005)。KOS-1806に関する活性データは、示されていない。
【0008】
1979年に、アンサマイシン抗生物質ハービマイシンAが、ストレプトマイセス・ハイグロスコピカス株AM-3672の発酵ブロスから単離され、その強力な除草活性に従い命名された。その抗腫瘍活性は、細胞の形質転換された形態に復帰する薬物のスクリーニングのためにラウス肉腫ウイルス(RSV)の温感性変異体に感染されたラット腎臓系細胞を使用することにより確立された(総説はUeharaの論文、2003を参照されたい)。ハービマイシンAは、保存されたシステイン残基への直接結合ではなく、Hsp90シャペロンタンパク質への結合を介して主に作用するとして仮定され、及び後続のキナーゼ不活化も考察された(Ueharaの論文、2003)。
【0009】
化学誘導体が単離され、並びにベンゾキノン核のC19に変更された置換基を持つ化合物及びアンサ鎖がハロゲン化された化合物は、ハービマイシンAよりもより低い毒性及びより高い抗腫瘍活性を示した(Omuraらの論文、1984;Shibataらの論文、1986b)。ハービマイシン生合成遺伝子クラスターの配列は、WO 03/106653及び最新の論文(Rascherらの論文、2005)において確定された。
【0010】
アンサマイシン化合物マクベシン(1)及び18,21-ジヒドロマクベシン(2)(C-14919E-1及びC-14919E-1)は、それらの抗真菌活性及び抗原虫活性について同定されたが、これらは、ノカルジア種C-14919(アクチノシンネマ・プレチオスム(Actinosynnema pretiosum)亜種プレチオスムATCC 31280)の培養物上清から単離された(Tanidaらの論文、1980;Muroiらの論文、1980;Muroiらの論文、1981;US 4,315,989及びUS 4,187,292)。18,21-ジヒドロマクベシンは、ジヒドロキノン形の核を含むことを特徴としている。マクベシン及び18,21-ジヒドロマクベシンの両方とも、同様の抗菌活性、及びマウス白血病P388細胞株などの癌細胞株に対する抗腫瘍活性を有することが示された(Onoらの論文、1982)。逆転写酵素及びターミナルデオキシヌクレオチジル転移酵素の活性は、マクベシンにより阻害されなかった(Onoらの論文、1982)。マクベシンのHsp90阻害機能が、文献において報告されている(Bohenの論文、1998;Liuらの論文、1999)。微生物培養ブロスへの添加後の、マクベシン及び18,21-ジヒドロマクベシンの、ある位置又は複数の位置でメトキシ基の代わりにヒドロキシ基を伴う化合物への変換は、特許US 4,421,687及びUS 4,512,975に開示されている。
【0011】
多種多様な土壌微生物のスクリーニング時に、化合物TAN-420A〜Eが、ストレプトマイセス属に属する産生株から同定された(7-11, EP 0 110 710)。
【化2】

【0012】
2000年に、ストレプトマイセス種S6699の細胞培養物からのゲルダナマイシンに関連した非-ベンゾキノンアンサマイシン代謝産物レブラスタチンの単離、及び関節リウマチの治療におけるその潜在的治療的価値が説明された(Steadらの論文、2000)。
【0013】
更に化学的に無関係のベンゾキノンアンサマイシンとは異なるHsp90阻害剤は、ラディシコール(モノルデン)であり、これは真菌モノスポリウム・ボノルデン(Monosporium bonorden)からその抗真菌活性について当初発見され(総説については、Ueharaの論文、2003を参照されたい)、並びにその構造は、ネクトリア・ラディシコール(Nectria radicicola)から単離された14員マクロライドと同じであることがわかった。これは、その抗真菌活性、抗菌活性、抗原虫活性及び細胞傷害活性に加え、Hsp90シャペロンタンパク質の阻害剤として引き続き同定された(総説については、Ueharaの論文、2003;Schulteらの論文、1999を参照されたい)。ラディシコールの抗-血管新生活性(Hurらの論文、2002)及びそれらの半合成誘導体(Kurebayashiらの論文、2001)も説明されている。
【0014】
最近の関心は、新規生成アンサマイシン抗癌化合物としてのゲルダナマイシンの17-アミノ誘導体(Bagatell及びWhitesellの論文、2004)、例えば、17-(アリルアミノ)-17-デスメトキシゲルダナマイシン(17-AAG, 12)(Hosteinらの論文、2001;Neckersの論文、2002;Nimmanapalliらの論文、2003;Vasilevskayaらの論文、2003;Smith-Jonesらの論文、2004)及び17-デスメトキシ-17-N,N-ジメチルアミノエチルアミノ-ゲルダナマイシン(17-DMAG, 13)(Egorinらの論文、2002;Jezらの論文、2003)に集まっている。より最近になってゲルダナマイシンは、17-位置で誘導体化され、17-ゲルダナマイシンのアミド、カルバメート、尿素及び17-アリールゲルダナマイシンを作出している(Le Brazidecらの論文、2003)。60種を超える17-アルキルアミノ-17-デメトキシゲルダナマイシン類似体のライブラリーが報告されており、かつそれらのHsp90への親和性及び水溶解度について試験された(Tianらの論文、2004)。ゲルダナマイシンの毒性を低下させる更なるアプローチは、腫瘍標的化モノクローナル抗体との複合による、活性ゲルダナマイシン化合物の悪性細胞への選択的標的化及び送達である(Mandlerらの論文、2000)。
【0015】
【化3】

【0016】
これらの誘導体の多くは低下した肝毒性を示すが、これらは依然限定された水溶解度を有する。例えば17-AAGは、それ自身、一部の患者において副作用を起こし得る可溶化担体(例えば、Cremophore(登録商標)、DMSO-卵レシチン)の使用を必要とする(Huらの論文、2004)。
【0017】
Hsp90阻害剤のアンサマイシンクラスのほとんどは、共通の構造部分:ベンゾキノンを有し、これは、タンパク質、グルタチオンなどの求核物質と容易に共有結合を形成することができるマイケル受容体である。ベンゾキノン部分は、酸素ラジカルが形成される間に、ジヒドロキノンとのレドックス平衡も受け、このことは更なる非特異的毒性を生じる(Dikalovらの論文、2002)。例えばゲルダナマイシンによる治療は、スーパーオキシド生成の誘導を生じ得る(Sreedharらの論文、2004a)。
【0018】
従って癌及び/又はB-細胞性悪性疾患の治療に利用性がある新規アンサマイシン誘導体を同定する必要性が依然存在しており、そのようなアンサマイシンは、改善された水溶解度、投与に関して改善された薬理学的プロファイル及び/又は軽減された副作用プロファイルを有することが好ましい。本発明は、親産生株の生体内変換及び任意の遺伝子操作により作出される新規アンサマイシン類似体を開示している。特に本発明は、新規18,21-ジデスオキシマクベシン類似体及び他のマクベシン類似体を開示しており、これは一般に、現在利用可能なアンサマイシンに比べ改善された医薬特性を有し;特にこれらは、下記の特性の1つ以上に関して改善を示すことが期待される:様々な癌亜型に対する活性、毒性、水溶解度、代謝安定性、生物学的利用能及び製剤能。マクベシン類似体(18,21-ジデスオキシマクベシン類似体など)は、改善された生物学的利用能を示すことが好ましい。
【発明の開示】
【0019】
(発明の要旨)
本発明において、非天然のスターターユニットの取り込みにより形成される新規マクベシン類似体を生成するために、非天然のスターターユニットを、マクベシンのポスト-PKS修飾の原因である遺伝子の標的化された不活化又は欠失と任意に組合せて、かつスターターユニット(スターター酸)生合成の原因である遺伝子の標的化された不活化又は欠失と任意に組合せて、マクベシン産生株に供給する。任意に、スターターユニット生合成の原因である遺伝子又は制御因子は、標的化された不活化若しくは欠失により操作してよく、又は細胞をUV照射に曝すこと、及びスターターユニット生合成が破壊されたことを示す表現型の選択などの他の手段により修飾してもよい。ポスト-PKS遺伝子の任意の標的化は、例えば、ポスト-PKS遺伝子の全て又は一部を含むマクベシンクラスター領域の組込み、標的化された欠失、任意にそれに続く遺伝子(群)の挿入、又はポスト-PKS遺伝子もしくはそれらのコードされた酵素を非機能的にするその他の方法、例えば細胞の化学阻害、部位特異的変異誘発又は例えばUV照射の使用などによる変異誘発などの様々な機序により引き起こすことができる。結果的に本発明は、マクベシン類似体、これらの化合物の製造方法、及び医薬品における又は更なる化合物の生成における中間体としてのこれらの化合物の使用方法を提供する。
【0020】
従って第一の態様において、本発明は、通常のスターターユニットを欠いているマクベシンの類似体を提供する。
【0021】
したがって、本発明の1つの態様において、式(I)の化合物又はその医薬として許容し得る塩を提供する:
【化4】

(式中、R1は、H、OH、OMeを表し;
R2は、H又はMeを表し;
R3は、H又はCONH2を表し;
R4及びR5は両方ともHを表すか、又はこれらは一緒に結合を表す(すなわち、C4-C5は二重結合である)かのいずれかであり;.
R6は、H、F、OH、OMe、Br、Cl、CF3、CH3、SH、CH2CH3又はNR10aR11aを表し;
R7は、H、F、OH、OMe、Br、Cl、CF3、CH3、SH、CH2CH3又はNR10bR11bを表し;
R8は、H、F、OH、OMe、Br、Cl、CF3、CH3、SH、CH2CH3又はNR10cR11cを表し;
R9は、H、F、OH、OMe、Br、Cl、CF3、CH3、SH、CH2CH3又はNR10dR11dを表し;
R10a、R11a、R10b、R11b、R10c、R11c、R10d、R11dは独立にH、CH3又はCH2CH3を表し;
但し、しかしながら、
R6及びR9がHを表し、次いでR7及びR8の両方ともがOHを表すわけではない場合;及び
R6、R8及びR9がHを表し、次いでR7がOH又はHを表さない場合;を条件とする。)。
【0022】
前記構造は、代表的互変異性体を示し、本発明は、例えばエノール化合物が図示された場合のケト化合物、及びその逆などの式(I)の化合物の互変異性体の全てを包含している。
本発明は、先に示された構造(I)により定義された化合物の立体異性体の全てを包含している。
更なる態様において、本発明は、医薬として使用するために、式(I)の化合物などのマクベシン類似体又はその医薬として許容し得る塩を提供する。
【0023】
(定義)
冠詞「ある(a, an)」は、冠詞の文法上の対象の1つ又は2つ以上(すなわち少なくとも1つ)を意味するように、本明細書において使用される。例として、「ある類似体」は、1つの類似体又は2つ以上の類似体を意味する。
本明細書において使用される用語「類似体(類)」は、別のものに構造的に類似しているが、組成がわずかに異なる(1個の原子の別の原子との交換、又は特定の官能基の存在もしくは非存在において)化合物を意味する。
【0024】
本明細書において使用される用語「相同体(類)」は、異なるマクベシン産生株由来の代替のマクベシン生合成クラスターのいずれか由来の本明細書に開示された遺伝子もしくは遺伝子によりコードされたタンパク質の相同体、又は代替のアンサマイシン生合成遺伝子クラスター由来の、例えばゲルダナマイシン、ハービマイシンもしくはレブラスタチン由来の相同体を意味する。同じ機能を発揮するタンパク質をコードしているこのような相同体(類)はそれ自身、マクベシン又は関連したアンサマイシンポリケチドの合成において前記遺伝子又はタンパク質と同じ機能を発揮できる。好ましくはそのような相同体(類)は、本明細書に開示された特定の遺伝子の配列に、少なくとも40%の配列同一性、好ましくは少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%又は少なくとも95%の配列同一性を有する(表3、配列番号:11、これはクラスターにおける全ての遺伝子の配列であり、これから特定の遺伝子の配列を推定することができる)。%同一性は、NCBIウェブサイトから入手可能なBLASTn又はBLASTpなどの、当業者に公知の任意のプログラムを使用し計算することができる。
【0025】
本明細書において使用される用語「癌」とは、皮膚内の細胞、又は例えば非限定的に乳房、前立腺、肺、腎臓、膵臓、脳、胃もしくは腸などの体内臓器内の細胞の良性又は悪性の新たな増殖をいう。癌は、隣接組織へ浸潤し、かつ例えば骨、肝臓、肺又は脳などの遠位臓器に広がる(転移する)傾向がある。本明細書において使用される用語癌は、非限定的にメラノーマ、リンパ腫、白血病、線維肉腫、横紋筋肉腫及び肥満細胞腫などの転移性腫瘍細胞型、並びに非限定的に結腸直腸癌、前立腺癌、小細胞肺癌及び非小細胞肺癌、乳癌、膵臓癌、膀胱癌、腎臓癌、胃癌、グリア芽細胞腫、原発性肝癌及び卵巣癌などの組織癌型の両方を含む。
【0026】
本明細書において使用される用語「B-細胞性悪性疾患」は、慢性リンパ性白血病(CLL)、多発性骨髄腫、及び非ホジキンリンパ腫(NHL)を含む障害群を含む。これらは、血液及び造血臓器の新生物疾患である。これらは、骨髄及び免疫系の機能障害を引き起こし、このことは宿主を感染症に罹り易く、出血し易くする。
【0027】
本明細書において使用される用語「生物学的利用能」は、薬物又は他の物質が、投与後生物学的に活性のある部位で、吸収されるか、又は利用可能となり始める程度又は割合を意味する。この特性は、化合物の溶解度、消化管の吸収速度、タンパク質結合の程度及び代謝など多くの要因により左右される。当業者にはよく知られている生物学的利用能に関する様々な試験は、例えばEgorinらの論文(2002)に説明されている。
【0028】
本出願において使用される用語「水溶解度」は、例えばpH7.3のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)などの、水性媒体への溶解度を意味する。水溶解度アッセイの例は、下記実施例において記されている。
本出願において使用される用語「マクベシン産生株」は、例えば天然のスターター供給材料3-アミノ-5-ヒドロキシ安息香酸又は他の許容し得る基質を供給した場合など、好適な条件下で培養された場合にマクベシンを産生する、例えばA.プレチオスム(A. pretiosum)及びA.ミルム(A. mirum)により例示される野生型菌株などの菌株を意味する。
【0029】
本明細書において使用される用語「ポスト-PKS遺伝子(類)」は、例えば非限定的にモノオキシゲナーゼ、O-メチル基転移酵素及びカルバモイル基転移酵素などの、ポリケチドのポスト-ポリケチド合成酵素修飾に必要とされる遺伝子を意味する。具体的には、マクベシンシステムにおいて、これらの修飾遺伝子は、mbcM、mbcN、mbcP、mbcMT1、mbcMT2及びmbcP450を含む。
【0030】
本明細書において使用される用語「スターターユニット生合成遺伝子(類)」は、天然に取り込まれたスターターユニットである3-アミノ-5-ヒドロキシ安息香酸(AHBA)の産生に必要とされる遺伝子を意味する。具体的には、マクベシンシステムにおいてこれらのスターターユニット生合成遺伝子は、AHk(AHBAキナーゼ)、Adh(aDHQデヒドロゲナーゼ)、Ahs(AHBA合成酵素)、OX(酸化還元酵素)、PH(ホスファターゼ)を含む。AHBAを産生する他の菌株も、AHBA生合成遺伝子を含む。
【0031】
式(I)の化合物などの本発明の化合物の医薬として許容し得る塩は、医薬として許容し得る無機又は有機の酸又は塩基から形成される通常の塩、更には第4級アンモニウム酸付加塩を含む。好適な酸性塩のより詳細な例は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸、過塩素酸、フマル酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ギ酸、乳酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、パルモン酸(palmoic)、マロン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ヒドロキシナフトエ酸、ヨウ化水素酸、リンゴ酸、ステロイック酸(steroic)、タンニン酸などの塩を含む。シュウ酸などの他の酸は、それら自身医薬として許容し得るものではないが、本発明の化合物及びそれらの医薬として許容し得る塩を得るための中間体として有用な塩の調製において有用なことがある。好適な塩基性塩のより詳細な例は、ナトリウム、リチウム、カリウム、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、亜鉛、N,N'-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、N-メチルグルカミン及びプロカインの塩を含む。以後本発明の化合物の言及は、式(I)の化合物及びそれらの医薬として許容し得る塩の両方を含む。
本明細書において使用される用語「18,21-ジヒドロマクベシン」及び「マクベシンII」(マクベシンのジヒドロキノン型)は、互換的に使用される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】マクベシンへの最初の推定酵素フリー中間体、プレ-マクベシン及びポスト-PKSのプロセシングを示す、マクベシンの代表的生合成。図中のPKSプロセシング工程のリストは、事象の順番を表すことは意図されていない。クラスター内の特定の遺伝子について、下記略号を使用する:AL0−AHBA負荷ドメイン;ACP−アシルキャリヤタンパク質;KS−βケト合成酵素;AT−アシル基転移酵素;DH−脱水酵素;ER−エノイルレダクターゼ;KR−β-ケトレダクターゼ。
【図2】マクベシンを生成するための、プレ-マクベシンのポスト-PKSプロセシング部位の説明。
【図3】プラスミドpLSS308が、mbcM遺伝子破壊を生じる相同組換えにより染色体に組込まれた、操作された菌株BIOT-3806作出の図表示。
【図4】実施例2に説明されたmbcMのインフレーム欠失の構築の図表示。
【図5】Aは、PCR産物PCRwv308の配列を示す。配列番号:16。Bは、PCR産物PCRwv309の配列を示す。配列番号:19。
【図6】Aは、実施例3に説明されたような、mbcMの502個のアミノ酸のインフレーム欠失から得られるDNA配列を示す。(配列番号:20及び21)。キー:1-21bpは、3-アミノ-5-ヒドロキシ安息香酸生合成のホスファターゼの3'末端をコードし、136-68bpは、mbcM欠失タンパク質をコードし、161-141bpは、mbcFの3'末端をコードしている。Bは、このタンパク質のアミノ酸配列を示す(配列番号:22)。このタンパク質配列は、図6Aに示された相補鎖から作出される。
【図7】mbcP、mbcP450、mbcMT1及びmbcMT2遺伝子がインフレームで欠失されている、アクチノシンネマ・プレチオスム株の作出の図表示。
【図8】増幅されたPCR産物1+2aの配列(配列番号:25)。
【図9】増幅されたPCR産物3b+4の配列(配列番号:28)。
【図10】実施例に記載した化合物(14-20)の構造。
【図11】実施例2に記載したAhs不活化の構築物の図示。
【図12】実施例に記載した化合物(21-27)の構造。
【図13】実施例に記載した化合物(28-35)の構造。
【図14】実施例に記載した化合物(36-42)の構造。
【発明を実施するための形態】
【0033】
(発明の説明)
本発明は、前述のようなマクベシン類似体、これらの化合物の製造方法、医薬品中のこれらの化合物の使用方法、並びに更なる半合成誘導体化もしくは生体内変換法による誘導体化のための中間体又は鋳型としてのこれらの化合物の使用を提供する。
好適には、R9は水素を表す。
好適な化合物の1つのセットにおいて、R6、R7及びR8はそれぞれ水素を表す。
あるいはR6、R7及びR8は独立に水素又はフッ素から選択されるが、それらは全てが水素を表すわけではない。
好適には、R1はHを表す。
あるいは、R1はOHを表す。
好適には、R2はHを表す。
好適には、R3はCONH2を表す。
好適には、R4及びR5が一緒に結合を表す。
あるいは、R4及びR5がそれぞれ水素を表す。
【0034】
好適には、R6は、H、F、Me、Br、Cl、OH、OMe、NH2を表し、より好適にはH、F、Me、Br、Cl、OH又はOMeを表し、さらにより好適にはH又はFを表す。
好適には、R7は、H、F、OH、OMe、Br、Cl又はNH2を表し、より好適にはH、F、OH 、OMe、Br又はClを表し、さらにより好適にはH、F、OH又はOMeを表し、特別にはOHを表す。
好適には、R8は、H、F、Me、Cl、Br、OH又はNH2を表し、より好適にはH、F、Me、Cl、Br又はOHを表し、さらにより好適にはH又はFを表す。
好適には、R9は、H、F、Me、Cl、Br、OH又はNH2を表し、より好適にはH、F、Me、Cl、Br又はOHを表し、さらにより好適にはH又はFを表し、特別にはHを表す。
好適には、R10a、R11a、R10b、R11b、R10c、R11c、R10d、R11dはHを表す。
【0035】
ひとつの実施態様において、R1はHを表し、R2はHを表し、R3はCONH2を表し、並びにR4及びR5は各々Hを表す。
別の実施態様において、R1はOHを表し、R2はHを表し、R3はCONH2を表し、並びにR4及びR5は各々Hを表す。
本発明のひとつの好適な実施態様において、R1はHを表し、R2はHを表し、R3はCONH2を表し、R4及びR5は各々Hを表し、R6はFを表し、並びにR7及びR8は各々Hを表す。
本発明の別の好適な実施態様において、R1はOHを表し、R2はHを表し、R3はCONH2を表し、R4及びR5は各々Hを表し、R6はFを表し、並びにR7及びR8は各々Hを表す。
【0036】
本発明の別の好適な実施態様において、R1はHを表し、R2はHを表し、R3はCONH2を表し、R4及びR5は各々Hを表し、R6はHを表し、R7はFを表し、並びにR8はHを表す。
本発明の別の好適な実施態様において、R1はOHを表し、R2はHを表し、R3はCONH2を表し、R4及びR5は各々Hを表し、R6はHを表し、R7はFを表し、並びにR8はHを表す。
【0037】
本発明の別の好適な実施態様において、例えば下記の構造に表すように、R1はHを表し、R2はHを表し、R3はCONH2を表し、R4及びR5は各々Hを表し、R6及びR7は各々Fを表し、並びにR8はHを表す:
【化5】

【0038】
本発明の別の好適な実施態様において、R1はOHを表し、R2はHを表し、R3はCONH2を表し、R4及びR5は各々Hを表し、R6及びR7は各々Fを表し、並びにR8はHを表す。
本発明の別の好適な実施態様において、R1はHを表し、R2はHを表し、R3はCONH2を表し、R4及びR5は各々Hを表し、R6、R7及びR8は各々Fを表す。
本発明の別の好適な実施態様において、R1はHを表し、R2はHを表し、R3はCONH2を表し、R4及びR5は各々Hを表し、R6はHを表し、R7はOMeを表し、R8はHを表し、並びにR9はHを表す。
さらなる実施態様を図10並びに図12〜14に示す。
【0039】
アンサ環への非-水素側鎖の好ましい立体化学を、下記図1及び2に示す(すなわち、好ましい立体化学は、マクベシンのそれに従う)。
本発明は、生体内変換又は合成化学のいずれかによる更なる修飾のための基質としてのマクベシン類似体の使用も提供する。例えば、R6、R7、R8及び/又はR9がOMeを表す化合物は、対応する位置がOHを表す化合物のメチル化により調製できる。
【0040】
ひとつの態様において、本発明は、医薬品として使用するためのマクベシン類似体を提供する。更なる実施態様において、本発明は、癌、B-細胞性悪性疾患、マラリア、真菌感染症、中枢神経系疾患及び神経変性疾患、血管新生依存性疾患、自己免疫疾患の治療、並びに/又は癌の予防的前処置に使用するための、マクベシン類似体を提供する。
別の態様において、本発明は、医薬品の製造におけるマクベシン類似体の使用を提供する。更なる実施態様において、本発明は、癌、B-細胞性悪性疾患、マラリア、真菌感染症、中枢神経系疾患及び神経変性疾患、血管新生依存性疾患、自己免疫疾患の治療、並びに/又は癌の予防的前処置のための医薬品の製造におけるマクベシン類似体の使用を提供する。
【0041】
更なる実施態様において、本発明は、癌、B-細胞性悪性疾患、マラリア、真菌感染症、中枢神経系疾患及び神経変性疾患、血管新生依存性疾患、自己免疫疾患の治療、並びに/又は癌の予防的前処置の方法を提供し、該方法は、マクベシン類似体の治療的有効量をそれを必要とする患者へ投与することを含む。
前述のように、本発明の化合物は、癌及び/又はB-細胞性悪性疾患の治療に有用であると予想することができる。本発明の化合物は、例えば、マラリア、真菌感染症、中枢神経系疾患及び神経変性疾患、血管新生依存性疾患、関節リウマチなどの自己免疫疾患などであるが、これらに限定されるものではない他の適応症の治療において、又は癌の予防的前処置としても有効であることができる。
【0042】
中枢神経系疾患及び神経変性疾患は、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、プリオン病、球脊髄性筋萎縮症(SBMA)及び筋萎縮性側索硬化症(ALS)を含むが、これらに限定されるものではない。
血管新生依存性疾患は、加齢黄斑変性症、糖尿病性網膜症及び様々な他の眼科疾患、アテローム硬化症及び関節リウマチを含むが、これらに限定されるものではない。
自己免疫疾患は、関節リウマチ、多発性硬化症、1型糖尿病、全身性紅斑性狼瘡及び乾癬を含むが、これらに限定されるものではない。
【0043】
「患者」は、ヒト対象及び他の動物(特に哺乳類)対象を、好ましくはヒト対象を包含している。従って、本発明のマクベシン類似体の方法及び使用は、ヒト用医薬品及び獣医学用医薬品、好ましくはヒト用医薬品で使用される。
前述の本発明の化合物又はそれらの製剤は、いずれかの通常の方法により投与することができ、例えばこれらは、非経口的(静脈内投与を含む)、経口、局所的(口腔内、舌下又は経皮を含む)、医療用具を介して(例えばステント)、吸入によるか、又は注射により(皮下又は筋肉内)投与されるが、これらに限定されるものではない。本治療は、単回投与又はある期間に渡った反復投与によりなることができる。
【0044】
本発明の化合物は単独で投与することが可能であるが、これは、1種以上の許容し得る希釈剤又は担体と一緒に医薬製剤として存在することが好ましい。従って、本発明の化合物を、1種以上の医薬として許容し得る希釈剤又は担体と一緒に含有する医薬組成物が提供される。希釈剤(類)又は担体(類)は、本発明の化合物と相溶性がありかつそれらのレシピエントに有害でないという意味で、「許容でき」なければならない。好適な担体の例は、以下により詳細に説明される。
【0045】
本発明の化合物は、単独で又は他の治療薬と組合せて投与されてよい。2種(又はそれよりも多い)薬剤の同時投与は、使用される各々の投与量を著しく低くすることができ、これにより認められる副作用を軽減する。癌などの疾患が抵抗性となり始めている先行する療法の作用に対するその疾患の再感作も可能である。1種以上の医薬として許容し得る希釈剤又は担体と一緒に、本発明の化合物及び更なる治療薬を含有する医薬組成物も提供される。
更なる態様において、本発明は、細胞傷害性薬物又は細胞増殖抑制薬などの、癌又はB-細胞性悪性疾患の治療のための第二の薬剤などの、第二の薬剤との併用における本発明の化合物の使用を提供する。
【0046】
ひとつの実施態様において、本発明の化合物は、別の治療薬、例えば、癌又はB-細胞性悪性疾患の治療のための細胞傷害性薬物又は細胞増殖抑制薬などの治療薬と同時投与される。更なる薬剤の例は、細胞傷害性薬物、例えばアルキル化剤及び有糸分裂阻害剤(トポイソメラーゼII阻害剤及びチューブリン阻害剤を含む)である。更なる薬剤のその他の例は、DNA結合剤、代謝拮抗薬及び細胞増殖抑制薬、例えばプロテインキナーゼ阻害剤及びチロシンキナーゼ受容体遮断薬がある。好適な薬剤は、メトトレキセート、ロイコボリン、プレニゾン、ブレオマイシン、シクロホスファミド、5-フルオロウラシル、パクリタキセル、ドセタキセル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、タモキシフェン、トレミフェン、酢酸メゲストロール、アナストロゾール、ゴセレリン、抗-HER2モノクローナル抗体(例えばトラスツズマブ、商品名ハーセプチン(Herceptin)(商標))、カペシタビン、塩酸ラロキシフェン、EGFR阻害剤(例えば、ゲフィチニブ、商品名イレッサ(Iressa)(登録商標)、エルロチニブ、商品名Tarceva(商標)、セツキシマブ、商品名エルビタックス(Erbitax)(商標))、VEGF阻害剤(例えば、ベバシズマブ、商品名アバスチン(Avastin)(商標))、並びにプロテアソーム阻害剤(例えば、ボルテゾミブ、商品名ベルケード(Velcade)(商標))を含むが、これらに限定されるものではない。更に好適な薬剤は、通常の化学療法薬、例えば、シスプラチン、シタラビン、シクロヘキシルクロロエチルニトロソ尿素(nitrosurea)、ゲムシタビン、イホスファミド、ロイコボリン、マイトマイシン、ミトキサントン、オキサリプラチン、タキソールを含むタキサン、及びビンデシンなど;ホルモン療法;モノクローナル抗体療法、例えばセツキシマブ(抗-EGFR)など;プロテインキナーゼ阻害剤、例えばダサチニブ、ラパチニブなど;ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、例えばボリノスタットなど;血管新生阻害剤、例えばスニチニブ、ソラフェニブ、レナリドマイドなど;mTOR阻害剤、例えばテムシロリムスなど;並びに、イマチニブ、商品名Glivec(登録商標)を含むが、これらに限定されるものではない。加えて本発明の化合物は、非限定的に放射線治療又は手術を含む、他の療法と組合せて投与されてよい。
【0047】
本製剤は好都合なことに、単位剤形で示され、及び調剤技術分野において周知の任意の方法により調製されてよい。このような方法は、活性成分(本発明の化合物)の、1種以上の補助成分を構成する担体との会合をもたらす工程を含む。一般に本製剤は、活性成分の液体担体又は微細化された固形担体又は両方との会合を均質かつ密接にし、その後必要ならば生成物を造形することで、調製される。
【0048】
本発明の化合物は、任意に医薬として許容し得る剤形中の無毒の有機もしくは無機の酸もしくは塩基、付加塩の形で、活性成分を含有する医薬製剤の形で通常経口又は任意に非経口経路により投与される。治療される障害及び患者に加え、投与経路に応じて、本組成物は変動する投与量で投与することができる。
【0049】
例えば、本発明の化合物は、即時-、遅延-又は制御された放出の適用のために、矯味矯臭剤又は着色剤を含有してよい、錠剤、カプセル剤、卵形剤(ovule)、エリキシル剤、液剤又は懸濁剤の形で、経口、口腔内、又は舌下へ投与することができる。
このような錠剤は、微晶質セルロース、ラクトース、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、リン酸水素カルシウム及びグリシンなどの賦形剤、デンプン(好ましくはトウモロコシ、ジャガイモ又はタピオカデンプン)、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム及びある種の複合シリカなどの崩壊剤、並びにポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシ-プロピルセルロース(HPC)、ショ糖、ゼラチン及びアカシアゴムなどの造粒結合剤を含んでよい。加えて、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ベヘン酸グリセリル及びタルクなどの滑沢剤を含んでよい。
【0050】
同様の型の固形組成物も、ゼラチンカプセル剤中の充填剤として利用することができる。これに関する好ましい賦形剤は、ラクトース、デンプン、セルロース、乳糖又は高分子量ポリエチレングリコールを含む。水性懸濁剤及び/又はエリキシル剤に関して、本発明の化合物は、様々な甘味剤又は矯味矯臭剤、着色物質又は染料と一緒に、乳化剤及び/又は懸濁化剤と一緒に、並びに水、エタノール、プロピレングリコール及びグリセリンなどの希釈剤と一緒に、並びにそれらの組合せと一緒にすることができる。
【0051】
錠剤は、任意に1種以上の補助成分と共に、圧縮又は成形により作製することができる。圧縮錠は、任意に結合剤(例えば、ポビドン、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、滑沢剤、不活性希釈剤、保存剤、崩壊剤(例えば、デンプングリコール酸ナトリウム、架橋したポビドン、架橋したカルボキシメチルセルロースナトリウム)、表面活性化剤又は分散剤と混合された、粉末又は顆粒などの自在流動形の活性成分を、好適な装置において圧縮することにより調製することができる。成形錠は、不活性液体希釈剤で湿潤された粉末化された化合物の混合物を好適な装置において成形することにより作製することができる。これらの錠剤は、任意にコートされるか又は刻み目を入れることができ、かつ所望の放出プロファイルを提供するために例えば変動する割合でヒドロキシプロピルメチルセルロースを使用し、活性成分の遅延放出又は制御放出を提供するために製剤することができる。
【0052】
経口投与に適した本発明の製剤は、各々予め決定された量の活性成分を含有する、カプセル剤、カシェ剤又は錠剤などの個別の単位として;散剤又は顆粒剤として;水性液体又は非水性液体中の液剤又は懸濁剤として;もしくは、水中油型液体乳剤又は油中水型液体乳剤として、提供されてよい。本活性成分は、ボーラス、舐剤又はペースト剤としても提供されてよい。
【0053】
口内の局所投与に好適な製剤は、通常ショ糖及びアカシアゴム又はトラガカントガムの香料基剤中に活性成分を含有する、トローチ剤;ゼラチン及びグリセリン、又はショ糖及びアカシアゴムのような不活性基剤中に活性成分を含有する、香錠;並びに、好適な液体担体中に活性成分を含有する、含嗽剤を含む。
本発明の製剤は、前述の特定の構成成分に加え、問題の剤型に関する当該技術分野において通常の他の作用物質を含有することができることは理解されなければならず、例えば、経口投与に適したものは、矯味矯臭剤を含有してよい。
【0054】
局所投与に適合された医薬組成物は、軟膏剤、クリーム剤、懸濁剤、ローション剤、散剤、液剤、ペースト剤、ゲル剤、含浸包帯、スプレー剤、エアロゾル剤又は油剤、経皮デバイス、粉剤などとして製剤されてよい。これらの組成物は、活性物質を含む通常の方法により調製されてよい。従ってこれらは、相溶性のある通常の担体及び添加剤、例えばクリーム剤又は軟膏剤中の保存剤、薬物の透過を補助する溶媒、緩和剤など、並びにローション剤中のエタノール又はオレイルアルコールなどを含有することもできる。このような担体は、組成物の約1%から最大約98%で存在してよい。より一般的には、これらは組成物の最大約80%を形成する。単なる例証として、クリーム剤又は軟膏剤は、所望の稠度を有するクリーム剤又は軟膏剤を作製するのに十分な量で、化合物を約5〜10重量%含有する、親水性物質及び水の十分な量を混合することにより調製される。
【0055】
経皮投与に適合された医薬組成物は、長時間、レシピエントの表皮と密接に接触し続けることが意図された個別の貼付剤として提供されてよい。例えば、活性物質は、イオン導入法により貼付剤から送達されてよい。
例えば口及び皮膚などの外部組織への適用に関して、本組成物は、局所用軟膏剤又はクリーム剤として適用されることが好ましい。軟膏剤として製剤される場合、活性物質は、パラフィン系又は水混和性のいずれかの軟膏基剤と共に使用することができる。
あるいは、この活性物質は、水中油型クリーム基剤又は油中水型基剤と共に、クリーム剤に製剤されてもよい。
【0056】
非経口的投与に関して、活性成分、並びに無菌ビヒクル、例えば水、アルコール、ポリオール、グリセリン及び植物油など(水が好ましい)であるが、これらに限定されないものを用いて、流体単位剤形が調製される。この活性成分は、使用されるビヒクル及び濃度に応じて、ビヒクル中に懸濁されるか又は溶解されるかのいずれかであることができる。溶液の調製において、活性成分は、注射用水に溶解され、濾過滅菌され、その後好適なバイアル又はアンプルに充填され、密封される。
【0057】
有利なことに、局所麻酔薬、保存剤及び緩衝剤などの作用物質を、このビヒクルに溶解することができる。安定性を増強するために、本組成物は、バイアルへの充填後に凍結し、かつ真空下で水を除去することができる。次に無水の凍結乾燥された粉末は、バイアル中で密封され、使用前に液体を再構成するように、注射用水のバイアルを伴って供給されてよい。
【0058】
非経口懸濁剤は、活性成分が、溶解される代わりにビヒクル中に懸濁されること及び滅菌を濾過により実現できないこと以外は、液剤と実質的に同じ様式で調製される。本活性成分は、無菌ビヒクル中へ懸濁される前に、エチレンオキシドへ曝露することにより滅菌することができる。有利なことに、活性成分の均質な分布を促進するために、本組成物中に界面活性剤又は湿潤剤が含まれる。
【0059】
本発明の化合物は、当該技術分野において公知の医療用具を用いて投与されてもよい。例えばひとつの実施態様において、本発明の医薬組成物は、US 5,399,163;US 5,383,851;US 5,312,335;US 5,064,413;US 4,941,880;US 4,790,824;又は、US 4,596,556に開示された装置などの、無針皮下注射装置により投与することができる。本発明において有用な周知のインプラント及びモジュールの例は、以下のものを含む:US 4,487,603は、制御された速度で投薬するための、植え込み可能な微量注入ポンプを開示している;US 4,486,194は、皮膚を通る医薬品の投与のための治療装置を開示している;US 4,447,233は、正確な注入速度で投薬を送達するための投薬用注入ポンプを開示している;US 4,447,224は、連続薬物送達のための可変流量の植え込み可能な注入器具を開示している;US 4,439,196は、マルチ-チャンバーコンパートメントを備える浸透圧式薬物送達システムを開示している;並びに、US 4,475,196は、浸透圧式薬物送達システムを開示している。多くの他のインプラント、送達システム、及びモジュールが、当業者に公知である。
【0060】
本発明の化合物の投与される用量は、特定の化合物、関連する疾患、対象、並びに疾患の性質及び重症度、並びに対象の生理的状態、並びに選択された投与経路に従い変動する。適量は、当業者により容易に決定され得る。
本組成物は、投与方法に応じて、本発明の化合物を0.1重量%以上、好ましくは5〜60%、より好ましくは10〜30重量%含有する。
【0061】
当業者により、本発明の化合物の最適量及び個々の投薬の間隔は、治療される状態の性質及び程度、剤型、投与経路及び部位、並びに治療される特定の対象の年齢及び状態により決定されること、並びに医師が使用されるべき適量を最終的に決定することは認められるであろう。この投薬は、適当なだけ繰り返すことができる。副作用が出現した場合には、通常の臨床の実践に従い、投薬の量及び/又は頻度を変更又は減少することができる。
【0062】
更なる態様において、本発明は、マクベシン類似体の製造方法を提供する。
マクベシンは、2段階で生合成されると考えることができる。第一段階において、コア-PKS遺伝子は、単純なカルボン酸前駆体の反復された構築により、マクロライドコアを集成し、ポリケチド鎖を生じ、これを次に環化し、第一の酵素-フリー中間体「プレ-マクベシン」を形成する(図1参照)。第二段階において、一連の「ポスト-PKS」を仕立てる酵素(例えば、P450モノオキシゲナーゼ、メチル基転移酵素、FAD-依存型オキシゲナーゼ及びカルバモイル基転移酵素)は、様々な追加の基をプレ-マクベシン鋳型に付加するように作用し、最終の親化合物構造を生じる(図2参照)。マクベシン類似体は、同様の様式で生合成することができる。
【0063】
この生合成的生成は、新規化合物の生成を生じるのに適した産生株の遺伝子操作と任意に組合せられた、生体内変換により活用されてよい。
驚くべきことに、本発明者らは、マクベシン産生株に非天然スターターユニット(スターター酸、又はエステルなどのその類似体)を供給することにより、これらスターターユニットがアンサマイシン構造に取り込まれ、新規マクベシン類似体を産生し得ることを見出した。
したがって、本発明によると:
a)適切な条件下で培養した場合に、マクベシン又はその類似体を生成する菌株を提供する工程;
b)AHBAでないスターターユニットを、前記菌株へ、該スターターユニットが前記マクベシン又はその類似体に取り込まれるように供給する工程;
c)前記菌株を、アンサマイシン又はその類似体の生成に適切な条件下で培養する工程;及び、
d)任意に、生成された化合物を単離する工程;
を含む、マクベシン類似体の製造方法が提供される。
【0064】
好適には、工程b)で供給されるスターターユニットは3-アミノ安息香酸ではない。
好適には、a)の菌株は、1種以上のAHBA生合成遺伝子を欠失又は不活化された菌株によって特徴づけられる。これは、収率を低下させ得るAHBAによる、非天然スターターユニットの取り込みに対する競合を回避し得る。あるいは、a)の菌株は、AHBA生合成の効率を低下させるように変異されていてもよい。好適には、工程c)の条件は、AHBA生合成の効率が次善であるような条件である。したがって望ましくは、AHBAは、該菌株によって、それでもなお供給した非天然のスターターユニットの取り込みを可能にするレベルまで生成される。典型的には、供給した非天然のスターターユニットの取り込み量は、スターターユニット取り込み全量の20%を上回る、好ましくは50%を上回る。
【0065】
好適には、スターターユニットは
【化6】

(式中、R6、R7、R8及びR9は、先に定義したものである)、又は酸部分がエステル(例えばメチルエステル又はエチルエステル)などの誘導体であるその類似体から選択される。
【0066】
別の実施態様において、スターターユニットは式(II)の化合物
【化7】

(式中、R7はOHを表し、かつR6、R8及びR9はそれぞれHを表す)、又は酸部分がエステル(例えばメチルエステル又はエチルエステル)などの誘導体であるその類似体から選択される。
【0067】
別の実施態様において、スターターユニットは、R6、R7、R8及びR9の全てがHを表すわけではない式(II)の化合物である。
一実施態様において、菌株はマクベシン産生株であり、かつスターターユニットは該菌株が18,21-ジデスオキシマクベシン類似体を生成するように選択されている。
一実施態様において、スターターユニットは、菌株が、フッ素で置換された18,21-ジデスオキシマクベシン類似体を生成するように選択されている。
さらなる例示的スターターユニットには、これらに限定されないが、下記の表13、14、15及び16の第2列に示すそれらの化合物、並びにその適切な誘導体(例えば、塩及びエステルなど)を含む。
別の実施態様において、菌株はマクベシン生成菌株であり、かつスターターユニットは、該菌株がベンゼン環の18又は21位で置換されていないマクベシン類似体を生成するように選択されている。
【0068】
好適には、本方法は、(i)工程(d)の生成物を、化学修飾若しくは生体内変換のプロセスに供する工程と、次いで任意に結果的生成物を単離する工程とをさらに含む、又は(ii)工程(c)の生成物を、工程(d)の前に、化学修飾若しくは生体内変換のプロセスに供する工程をさらに含む。
本発明の他の態様は、18,21-ジデスオキシマクベシン類似体の製造方法を含み、前記製造方法は、
a)任意に1種以上のポスト-PKS遺伝子が欠失若しくは不活化されており、かつ/又は1種以上のスターターユニット生合成遺伝子が欠失若しくは不活化されている好適な条件下で培養した場合に、マクベシンを生成する第1の宿主菌株を提供する工程;
b)非天然のスターターユニットを、前記菌株に供給する工程;
c)前記修飾宿主菌株を、18,21-ジデスオキシマクベシン類似体の生成に適切な条件下で培養する工程;及び、
d)任意に、生成された化合物を単離する工程;
を含む。
【0069】
本発明は、マクベシン類似体の製造方法も提供し、前記製造方法は:
a)好適な条件下で培養した場合に、マクベシン又は類似体を生成する第一の宿主菌株を提供する工程;
b)前記菌株へ非天然のスターター酸を供給する工程;
c)前記菌株をマクベシン類似体の生成に適した条件下で培養する工程;及び、
d)任意に、生成された化合物を単離する工程;
を含む。
本方法は更に、下記の工程を含んでもよい:
e)1種以上のスターターユニット生合成遺伝子、もしくはそれらの相同体を欠失又は不活化する工程であり、前記工程は通常、工程c)の前に行われ、及び/又はこの方法は更に:
f)1種以上のポスト-PKS遺伝子を欠失又は不活化する工程であり、該工程は通常、工程c)の前に行われる工程。
【0070】
工程(a)において、「マクベシン又はその類似体を生成する宿主菌株」は、マクベシン又はマクベシン類似体、特に好適な条件下で培養された場合に、R1-R11の定義を受け入れたマクベシン類似体を生成する菌株を意味する。好適な条件(及び工程(c)に適した条件)は、好適なスターター供給材料及び好適な組成の増殖培地(これは当業者に公知であるか、又はそれ自身公知の方法により決定される)の提供を含む。
好適には、非天然のスターター供給材料は、置換された安息香酸(天然のスターター酸である3-アミノ-5-ヒドロキシ-安息香酸ではない)である。
適切には、供給されるスターターユニットはスターター酸である。しかし、当業者は、宿主菌株へ供給して同じ化合物を生成することができる代替的な非天然スターターユニット、すなわち該酸の誘導体が存在し、それは例えば非限定的に、置換された安息香酸のメチルエステル、エチルエステル、N-アセチル-システアミンチオエステル、並びに例えばN-アセチル-システアミンチオエステルなどの、取り込みのために適宜活性化された生合成中間体のジケチド類似体などであることを理解するであろう。一般的には、そのような誘導体は、取り込み前に酸に変換される。酸化合物は対応する塩形態として供給されてもよい。
【0071】
第一の本発明の実施態様において、宿主菌株は、マクベシン産生株である。
別の実施態様において、宿主菌株は、1種以上のスターターユニット生合成遺伝子が欠失又は不活化されているマクベシン産生株を基にした操作された菌株である。
更なる実施態様において、宿主菌株は、1種以上のポスト-PKS遺伝子が欠失又は不活化されているマクベシン産生株を基にした操作された菌株である。例えば、宿主菌株は、mbcM及び任意に更にポスト-PKS遺伝子が欠失又は不活化されているマクベシン産生株を基にした操作された菌株であってよい。具体的には、宿主菌株は、mbcMが欠失又は不活化されているマクベシン産生株を基にした操作された菌株であってよい。あるいは、宿主菌株は、mbcM、mbcMT1、mbcMT2、mbcP及びmbcP450が欠失又は不活化されているマクベシン産生株を基にした操作された菌株であってよい。
先に記載した欠失は組み合わされていてよく、例えば、宿主菌株は、mbcM及び1種以上のスターターユニット生合成遺伝子並びに任意にさらにポスト-PKS遺伝子を欠失したマクベシン産生株に基づいて操作された菌株であってよい。例えば、Ahsが欠失又は不活化されていてよい。
好適には、1種以上のスターターユニット生合成遺伝子及び/又はポスト-PKS遺伝子は、選択的に欠失又は不活化されている。
【0072】
更なる実施態様において、1種以上のスターターユニット生合成遺伝子又はポスト-PKS遺伝子は、機能タンパク質が生成されないようにDNAをその遺伝子(類)に組込むことにより、前述の操作された菌株において不活化される。別の実施態様において、1種以上の該スターターユニット生合成遺伝子又はポスト-PKS遺伝子は、標的化された欠失又は欠失類を作製することにより、該操作された菌株において欠失される。更なる実施態様において、1種以上のスターターユニット生合成遺伝子又はポスト-PKS遺伝子は、部位特異的変異誘発により、該操作された菌株において不活化される。更なる実施態様において、マクベシン産生宿主菌株は、変異誘発性の化学物質又はUVに供され、並びに1種以上のスターターユニット生合成酵素又はポスト-PKS酵素が機能しないように修飾された菌株が選択される。本発明は、1種以上のスターターユニット生合成遺伝子又はポスト-PKS遺伝子の発現を制御する制御因子の変異も包含しており、当業者は、制御因子の欠失又は不活化は、その遺伝子の欠失又は不活化と同じ結果を有することを理解するであろう。
【0073】
更なる実施態様において、1種以上のポスト-PKS遺伝子が前述のように欠失又は不活化されている操作された菌株は、これに、別のマクベシン産生株由来の1種以上の同じポスト-PKS遺伝子又はそれらの相同体を再導入する。
更なる実施態様において、1種以上の遺伝子が欠失又は不活化されている操作された菌株は、リファマイシン、アンサマイトシン、ゲルダナマイシン又はハービマイシンの生合成を指示するクラスターを含むが、これらに限定されるものではない、異種PKSクラスターに由来する1種以上のポストPKS遺伝子により、補完される。
【0074】
ポストPKS遺伝子の選択的欠失又は不活化の方法は:
(i)関心対象の遺伝子(例えば、リファマイシン、ゲルダナマイシン又はハービマイシン生合成クラスター及び/又は他の利用可能な配列に由来)の相同体(類)を基にした縮重オリゴをデザインし、並びにPCR反応においてこれらのプライマーを使用することにより、好適なマクベシン産生株からの関心対象の遺伝子の内部断片を単離する工程;
(ii)この断片を含むプラスミドを、同じ又は異なるのいずれかのマクベシン産生株へ組込み、引き続き相同組換えし、これが標的化された遺伝子の破壊を生じる工程;
(iii)こうして作出された菌株を、マクベシン類似体の生成に適した条件下で培養する工程:を含む。
具体的な実施態様において、工程(i)のマクベシン産生菌株は、アクチノシンネマ・ミルム(A. mirum)である。更に具体的な実施態様において、工程(ii)のマクベシン産生菌株は、アクチノシンネマ・プレチオスム(A. pretiosum)である。
【0075】
当業者は、同等の菌株は、例えば以下のような、先に説明された方法の代替方法を用い実現され得ることを理解するであろう:
・縮重オリゴは、例えばA.プレチオスム又はA.ミルムなどであるか、これらに限定されない任意のマクベシン産生株からの関心対象の遺伝子を増幅するために使用することができる、
・マクベシン産生株又はそれらの相同体を産生する菌株から、ポスト-PKS遺伝子又はそれらの相同体の適当な領域をうまく増幅する様々な縮重オリゴをデザインすることができる
・A.プレチオスム株の遺伝子の配列を使用し、A.プレチオスムの遺伝子に特異的であるオリゴを作出し、その後この内部断片を、任意のマクベシン産生株、例えばA.プレチオスム又はA.ミルムから増幅することができる、
・A.プレチオスム株の遺伝子の配列を、相同遺伝子の配列と共に使用し、A.プレチオスム遺伝子への縮重オリゴを作出し、その後その内部断片を、任意のマクベシン産生株、例えばA.プレチオスム又はA.ミルムから増幅することができる。
図2は、マクベシン生合成クラスターにおけるポスト-PKS遺伝子の活性を示す。従って当業者は、関心対象の化合物(類)を生成する菌株に達するために、どの追加のポスト-PKS遺伝子が欠失又は不活化されることが必要かを、同定することができるであろう。
【0076】
これらのシステムにおいて、不活化又は欠失を含む説明された方法の一つの結果として、1種以上のポスト-PKS遺伝子が機能しない菌株が作出される場合に、2種以上のマクベシン類似体が産生され得ることが観察される。これに関して、当業者に理解される可能性のある理由が数多く存在する。例えば、ポスト-PKS工程の好ましい順番があり、並びにひとつの活性の除去は、全ての後続の工程が関連した酵素にとって天然でない基質上で実行されることにつながる。これは、ポスト-PKS酵素に提示された新規基質に対する効率が低下したために、中間体が培養ブロス中で構築されること、又は恐らく工程の順番が変更されたために、残りの酵素にとってもはや基質でない生成物へ短絡することにつながり得る。
【0077】
当業者は、混合物中に観察された化合物の比は、増殖条件の変化量を使用することにより操作することができることを理解するであろう。
当業者は、生合成クラスターにおいて、一部の遺伝子は、オペロン内で組織化され、及びひとつの遺伝子の破壊は、同じオペロンの後続遺伝子の発現に対し作用を有することが多いことを理解するであろう。
化合物の混合物が認められる場合に、これらは、その一部は下記実施例において説明されているような標準技術を用い、容易に分離することができる。
【0078】
AHBA合成に関与する遺伝子の選択的欠失又は不活化の方法は:
(i)関心対象の遺伝子(例えば、リファマイシン、ゲルダナマイシン又はハービマイシン生合成クラスター及び/又は他の利用可能な配列に由来)の相同体(類)を基にした縮重オリゴをデザインし、並びにPCR反応においてこれらのプライマーを使用することにより、好適なマクベシン産生株からの関心対象の遺伝子の内部断片を単離する工程;
(ii)この断片を含むプラスミドを、同じ又は異なるのいずれかのマクベシン産生株へ組込み、引き続き相同組換えし、これが標的化された遺伝子の破壊を生じる工程;
(iii)こうして作出された菌株を、マクベシン類似体の生成に適した条件下で培養する工程:を含む。
具体的な実施態様において、工程(i)のマクベシン産生菌株は、アクチノシンネマ・ミルム(A. mirum)である、更に具体的な実施態様において、工程(ii)のマクベシン産生菌株は、アクチノシンネマ・プレチオスム(A. pretiosum)である。
【0079】
当業者は、同等の菌株は、例えば以下のような、先に説明された方法の代替方法を用い実現され得ることを理解するであろう:
・縮重オリゴは、例えばA.プレチオスム又はA.ミルムなどであるか、これらに限定されない任意のマクベシン産生株からの関心対象の遺伝子を増幅するために使用することができる、
・マクベシン産生株又はそれらの相同体を産生する菌株から、AHBA合成遺伝子又はその相同体の適切な領域を成功的に増幅する様々な縮重オリゴをデザインすることができる
・A.プレチオスム株の遺伝子の配列を使用し、A.プレチオスムの遺伝子に特異的であるオリゴを作出し、その後この内部断片を、任意のマクベシン産生株、例えばA.プレチオスム又はA.ミルムから増幅することができる、
・A.プレチオスム株の遺伝子の配列を、相同遺伝子の配列と共に使用し、A.プレチオスム遺伝子への縮重オリゴを作出し、その後その内部断片を、任意のマクベシン産生株、例えばA.プレチオスム又はA.ミルムから増幅することができる。
【0080】
当業者は、生物がしばしば代謝遺伝子及び酵素活性において縮重を有するので、2種以上のAHBA合成遺伝子を不活化させる必要があってよく、それゆえ1種の遺伝子又は活性が不活化される場合、他の活性はそれらも不活化されるまで補完し得ることを理解するであろう。
当業者は、生合成クラスターにおいて、いくつかの遺伝子がオペロン内に組織化され、1つの遺伝子の破壊がしばしば、同オペロン内の後続遺伝子の発現に影響を有するであろうことを認識するであろう。
化合物の混合物を観察する場合、それらは標準的技術を使用して容易に分離することができ、そのうちのいくつかは下記の実施例に記載している。
【0081】
マクベシン類似体は、本明細書に説明された多くの方法によりスクリーニングされてよく、並びに単独の化合物が良好なプロファイルを示す状況において、菌株は、好ましくはこの化合物を生成するように操作することができる。これが不可能である通常でない状況においては中間体が生成され、これは次に所望の化合物を生成するように生体内変換される。
【0082】
本発明は、マクベシンPKS遺伝子クラスターからの1種以上のポスト-PKS遺伝子の選択された欠失又は不活化により生成された新規マクベシン類似体を提供する。特に本発明は、マクベシンPKS遺伝子クラスターからの、1種以上のポスト-PKS遺伝子の選択された欠失又は不活化と任意に組合せた、非天然のスターターユニットのマクベシン産生株への供給により生成された新規マクベシン類似体に関する。
【0083】
当業者は、遺伝子は遺伝子産物が非-機能性とされるために完全に欠失されることは必要ではないこと、結果的に本明細書において使用される用語「欠失又は不活化された」は、以下を含むが、これらに限定されるものではない、それにより遺伝子産物が非-機能性とされる任意の方法を包含することを理解するであろう:遺伝子のそれ全体の欠失、遺伝子の一部の欠失、標的遺伝子への挿入による不活化、発現されないか又は不活性タンパク質を生じるように発現されるかのいずれかの遺伝子を生じる部位特異的変異誘発、発現されないか又は不活性タンパク質を生じるように発現されるかのいずれかの遺伝子を生じる宿主菌株の変異誘発(例えば、放射線又は変異誘発性化学物質への曝露、プロトプラスト融合又はトランスポゾン変異誘発による)。あるいは活性遺伝子産物の機能は、阻害剤により化学的に損なうことができ、例えばメタピロン(metapyrone)(2-メチル-1,2-ジ(3-ピリジル-1-プロパノン)の別名、EP 0 627 009)及びアンシミドールは、オキシゲナーゼの阻害剤であり、並びにこれらの化合物は、類似体を生成するために生産培地に添加することができる。加えてシネフンギンは、同様にしかしメチル基転移酵素活性の阻害のためにはインビボで使用することができる、メチル基転移酵素阻害剤である(McCammon及びParksの論文, 1981)。
【0084】
別の実施態様において、全てのポスト-PKS遺伝子は、欠失又は不活化されてよく、その後1種以上のこれらの遺伝子は、補完により(例えば、自己-複製プラスミド上の結合部位で、又は染色体の相同領域への挿入により)再度導入されてよい。従って特定の実施態様において、本発明は:
a)好適な条件下で培養した場合に、マクベシンを生成する第一の宿主菌株を提供する工程;
b)任意に全てのポスト-PKS遺伝子を選択的に欠失又は不活化する工程、
c)前記菌株へ非天然のスターターユニットを供給する工程;
d)前記修飾された宿主菌株を、マクベシン類似体の生成に適した条件下で培養する工程;及び
e)任意に生成された化合物を単離する工程:
を含む、マクベシン類似体の製造方法に関する。
【0085】
代替的実施態様において、1種以上の欠失されたポスト-PKS遺伝子が再導入される。更なる実施態様において、mbcM、mbcN、mbcP、mbcMT1、mbcMT2及びmbcP450からなる群から選択される1種以上のポスト-PKS遺伝子が再導入される。更なる実施態様において、mbcM、mbcN、mbcP、mbcMT1、mbcMT2及びmbcP450からなる群から選択される2種以上のポスト-PKS遺伝子が、再導入される。更なる実施態様において、mbcM、mbcN、mbcP、mbcMT1、mbcMT2及びmbcP450からなる群から選択される3種以上のポスト-PKS遺伝子が、再導入される。更なる実施態様において、mbcM、mbcN、mbcP、mbcMT1、mbcMT2及びmbcP450からなる群から選択される4種以上のポスト-PKS遺伝子が、再導入される。更に別の実施態様において、mbcM、mbcN、mbcP、mbcMT1、mbcMT2及びmbcP450からなる群から選択される5種以上のポスト-PKS遺伝子が、再導入される。非限定的にゲルダナマイシン又はハービマイシン経路などの他のPKS生合成クラスター由来の遺伝子は、任意に適宜導入することができる。
加えて、ポスト-PKS遺伝子の部分集合は、欠失又は不活化されてよく、並びに任意に前記ポスト-PKS遺伝子のより小さい部分集合は、非天然のスターターユニットが供給された場合に、マクベシン類似体を生成する菌株に達するように再導入されてよいことは当業者に明らかである。
【0086】
従って好ましい実施態様において、本発明は:
a)好適な条件下で培養した場合に、マクベシンを生成する第一の宿主菌株を提供する工程;
b)mbcMを選択的に欠失又は不活化させる工程;
c)該菌株へ非天然のスターターユニットを供給する工程;
d)該修飾された宿主菌株を、マクベシン類似体の生成に適した条件下で培養する工程;及び
e)任意に生成された化合物を単離する工程:
を含む、マクベシン類似体の製造方法に関する。
【0087】
更に好ましい実施態様において、本発明は:
a)好適な条件下で培養した場合に、マクベシンを生成する第一の宿主菌株を提供する工程;
b)mbcM及びmbcP450を選択的に欠失又は不活化する工程;
c)任意に、更にポスト-PKS遺伝子を選択的に欠失又は不活化する工程;
d)前記菌株へ非天然のスターターユニットを供給する工程;
e)前記修飾された宿主菌株を、マクベシン類似体の生成に適した条件下で培養する工程;及び
f)任意に生成された化合物を単離する工程:
を含む、マクベシン類似体の製造方法に関する。
【0088】
更に好ましい実施態様において、本発明は:
a)好適な条件下で培養した場合に、マクベシンを生成する第一の宿主菌株を提供する工程;
b)mbcM、mbcMT1、mbcMT2、mbcP及びmbcP450を選択的に欠失又は不活化する工程;
c)任意に、更にポスト-PKS遺伝子又はスターターユニット生合成遺伝子を選択的に欠失又は不活化する工程;
d)前記菌株へ非天然のスターターユニットを供給する工程;
e)前記修飾された宿主菌株を、マクベシン類似体の生成に適した条件下で培養する工程;及び
f)任意に生成された化合物を単離する工程:
を含む、マクベシン類似体の製造方法に関する。
【0089】
ポリケチド遺伝子クラスターは、異種宿主において発現され得ることは当業者に周知である(Pfeifer及びKhoslaの論文, 2001)。従って本発明は、耐性遺伝子及び制御遺伝子を伴う又は伴わない、マクベシン生合成遺伝子クラスターの異種宿主への移入、そうでなければ完全欠失又は包含欠失の異種宿主への移入を含む。あるいは完全なマクベシン生合成クラスターは、耐性遺伝子及び制御遺伝子を伴う又は伴わずに、異種宿主へ移入することができ、その後これは、1種以上のポスト-PKS遺伝子又はスターターユニット生合成遺伝子を欠失又は不活化するために本明細書に説明された方法により操作することができる。そのようなDNAの大きい断片の先に定義されたような移入のための方法及びベクターは、当該技術分野において周知であるか(Rawlingsの論文, 2001;Staunton及びWeissmanの論文, 2001)、又は開示された方法で本明細書において提示される。この状況において、好ましい宿主細胞株は、原核細胞であり、より好ましくは放線菌又は大腸菌であり、更により好ましくは、アクチノシンネマ・ミルム(A. mirum)、アクチノシンネマ・プレチオスム亜種プレチオスム(A. pretiosum)、S.ハイグロスコピカス、S.ハイグロスコピカス種、S.ハイグロスコピカス変種(var.)アスコマイセチカス、ストレプトマイセス・ツクバエンシス、ストレプトマイセス・コエリカラー、ストレプトマイセス・リビダンス、サッカロポリスポラ・エリスラエラ、ストレプトマイセス・フラディアエ、ストレプトマイセス・アベルミティリス、ストレプトマイセス・シンナモネンシス、ストレプトマイセス・リモーサス、ストレプトマイセス・アルブス、ストレプトマイセス・グリセオフュスカス、ストレプトマイセス・ロンギスポロフラバス、ストレプトマイセス・ベネズエラエ、ストレプトマイセス・アルブス、ミクロモノスポラ(Micromonospora)種、ミクロモノスポラ・グリセオルビダ、アミコラトプシス・メディテラネイ(Amycolatopsis mediterranei)、又はアクチノプラネス種N902-109を含むが、これらに限定されるものではない。更なる例は、ストレプトマイセス・ハイグロスコピカス亜種ゲルダナス及びストレプトマイセス・ビオラセウスニガー(streptomyces violaceusniger)である。
【0090】
ひとつの実施態様において、生合成クラスター全体が移入される。別の実施態様において、PKS全体が、関連したスターターユニット生合成遺伝子及び/又はポスト-PKS遺伝子のいずれかを伴わずに、移入される。
更なる実施態様において、マクベシン生合成クラスターの全体が、移入され、その後本明細書の説明に従い操作される。
【0091】
別の本発明の態様において、本発明のマクベシン類似体(類)は、更に好適な菌株との生体内変換によりプロセシングされる。好適な菌株は、例えばアクチノシンネマ・ミルム、アクチノシンネマ・プレチオスム亜種プレチオスム、S.ハイグロスコピカス、S.ハイグロスコピカス種などであるが、これらに限定されるものではない利用可能な野生型菌株のいずれかである。あるいは好適な菌株は、特定のポスト-PKS酵素、例えば非限定的に、mbcM、mbcN、mbcP、mbcMT2、mbcP450(本明細書で定義される)、gdmN、gdmM、gdmL、gdmPによりコードされた酵素(Rascherらの論文、2003)、ゲルダナマイシンO-メチル基転移酵素、hbmN、hbmL、hbmPによりコードされた酵素(Rascherらの論文、2005)、ハービマイシンO-メチル基転移酵素及び更にハービマイシンモノ-オキシゲナーゼ、asm7、asm10、asm11、asm12、asm19及びasm21によりコードされた酵素(Cassadyらの論文、2004;Spitellerらの論文、2003)などにより、生体内変換が可能なように操作されてよい。遺伝子が依然同定されていないか又は配列がパブリックドメインにない場合は、そのような配列を常法により獲得することは当業者にとって慣習である。例えば、ゲルダナマイシンO-メチル基転移酵素をコードしている遺伝子の配列は、パブリックドメインにはないが、当業者は、同様のO-メチル基転移酵素を使用する異種プローブ、又は入手可能な相同遺伝子から縮重プライマーをデザインすることによる相同プローブのいずれかのプローブを作出し、ゲルダナマイシン産生株においてサザンブロットを実行し、その結果生体内変換システムを生じるためにこの遺伝子を獲得することができる。
【0092】
特定の実施態様において、本菌株は、その未変性のポリケチドクラスターにより産生されたポリケチド産生を妨害するために、全体的もしくは一部のいずれかが欠失された、又はそうでなければ不活化された、前記未変性のポリケチドクラスターを1種以上有することができる。前記操作された菌株は、例えば、アクチノシンネマ・ミルム、アクチノシンネマ・プレチオスム亜種プレチオスム、S.ハイグロスコピカス、S.ハイグロスコピカス種、S.ハイグロスコピカス変種アスコマイセチカス、ストレプトマイセス・ツクバエンシス、ストレプトマイセス・コエリカラー、ストレプトマイセス・リビダンス、サッカロポリスポラ・エリスラエラ、ストレプトマイセス・フラディアエ、ストレプトマイセス・アベルミティリス、ストレプトマイセス・シンナモネンシス、ストレプトマイセス・リモーサス、ストレプトマイセス・アルブス、ストレプトマイセス・グリセオフュスカス、ストレプトマイセス・ロンギスポロフラバス、ストレプトマイセス・ベネズエラエ、ミクロモノスポラ種、ミクロモノスポラ・グリセオルビダ、アミコラトプシス・メディテラネイ、又はアクチノプラネス種N902-109を含むが、これらに限定されるものではない群から選択されてよい。更に可能性のある菌株は、ストレプトマイセス・ハイグロスコピカス亜種ゲルダナス及びストレプトマイセス・ビオラセウスニガーである。
【0093】
先に説明されたような本発明のマクベシン類似体の調製プロセスは、実質的に又は全体が生合成によるが、標準の合成化学法を含むプロセスにより、本発明のマクベシン類似体を生成又は相互変換することを排除するものではない。
マクベシンPKS遺伝子クラスターの遺伝子操作を可能にするために、最初に遺伝子クラスターが、アクチノシンネマ・プレチオスム亜種プレチオスムから配列決定されるが、当業者は、例えば非限定的にアクチノシンネマ・ミルムなどの、マクベシンを生成する代替の菌株が存在することを理解するであろう。これらの菌株由来のマクベシン生合成遺伝子クラスターは、アクチノシンネマ・プレチオスム亜種プレチオスムについて本明細書において説明されたように配列決定されてよく、その情報を使用し、同等の菌株を作出する。
【0094】
また、本発明の態様として、以下が提供される:
−先に記載したプロセスにより得ることができる又は得られるマクベシン類似体;
−1種以上のスターターユニット生合成遺伝子が欠失又は不活化されたマクベシン産生株に基づく操作された菌株;
−アクチノシンネマ・プレチオスム亜種プレチオスムATCC 31280(又は他の菌株における相同体)におけるAHk、Adh、Ahs, OX及びPHから選択される1種以上の遺伝子が欠失又は不活化されているそのような菌株;
−mbcMが欠失又は不活化されていない、操作されたそのような菌株;
−mbcM、mbcMT1、mbcMT2、mbcP及びmbcP450が欠失もしくは不活化されていない、操作されたそのような菌株;
−mbcM、並びに1種以上のスターターユニット生合成遺伝子、及び任意にさらにポスト-PKS遺伝子が欠失しているマクベシン産生株、例えばAhsが欠失又は不活化している菌株に基づく、操作された菌株。
−マクベシン産生株がA.プレチオスム又はA.ミルムである、そのような菌株。
【0095】
本発明の化合物は、下記の特性の1種以上を有することを期待することができる点が利点である:Hsp90への堅い結合、Hsp90への結合の迅速なオンレイト(on-rate)、親化合物と比べ1種以上の異なる癌亜型に対する良好な活性;良好な毒性プロファイル、例えば良好な肝毒性プロファイル、良好な腎毒性、良好な心臓安全性;良好な水溶解度;良好な代謝安定性;良好な製剤能;良好な生物学的利用能;良好な薬物動態特性又は薬力学特性、例えばHsp90への堅い結合、Hsp90への結合の迅速なオンレイト、及び/又は良好な脳内薬物動態;良好な細胞取り込み;並びに、赤血球への低い結合。
【実施例】
【0096】
(実施例)
(全般的方法)
(培養物の発酵)
細菌株アクチノシンネマ・プレチオスム亜種プレチオスムATCC 31280 (US 4,315,989)及びアクチノシンネマ・ミルムDSM 43827(KCC A-0225, Watanabeらの論文、1982)の増殖に使用される条件は、特許US 4,315,989及びUS 4,187,292に開示されている。本明細書において使用した方法は、これらの特許から応用し、かつ振盪インキュベーター内のチューブ又はフラスコ内のブロスの培養に関して次のようであり、公開されたプロトコールに対する変更は、実施例に示している。菌株は、ISP2寒天(培地3, Shirling, E.B.及びGottlieb, D.の論文、1966)上で、28℃で2〜3日間増殖し、種培地(培地1、下記及びUS 4,315,989及びUS 4,187,292を参照のこと)へ接種するために使用した。その後接種された種培地を、5又は2.5cmの振り(throw)で200〜300rpmの間で振盪しながら、28℃で48時間インキュベーションした。実施例において別に指摘しない限りは、マクベシン、18,21-ジヒドロマクベシン及びマクベシン類似体のなどのマクベシン類似体の生成に関しては、発酵培地(培地2、下記及びUS 4,315,989及びUS 4,187,292を参照のこと)を、種培養物の2.5%〜10%で接種し、5又は2.5cmの振りで200〜300rpmの間で振盪しながら、26℃で6日間インキュベーションした。その後培養物を、抽出のために収集した。
【0097】
(培地)
(培地1−種培地)
蒸留水1L中:
【表1】

121℃のオートクレーブで20分間滅菌。
オートクレーブ処理後適宜、アプラマイシンを添加し、最終濃度50mg/Lとした。
【0098】
(培地2−発酵培地)
蒸留水1L中:
【表2】

121℃のオートクレーブで20分間滅菌。
【0099】
(培地3−ISP2培地)
蒸留水1L中:
【表3】

121℃のオートクレーブで20分間滅菌。
【0100】
(培地4−MAM)
蒸留水1L中:
【表4】

121℃のオートクレーブで20分間滅菌。
【0101】
(LCMS分析のための培養ブロスの抽出)
培養ブロス(1mL)及び酢酸エチル(1mL)を、15〜30分間激しく混合し、引き続き10分間遠心分離した。有機層0.5mLを収集し、蒸発乾固させ、その後メタノール0.23mL及び1%塩化鉄(III)0.02mLに再溶解した。
【0102】
(LCMS分析手順)
分析的LCMSを、陽イオン及び/又は陰イオンモードで操作するBruker Daltonics Esquire 3000+エレクトロスプレー式質量分析計と組み合わせたAgilent HP1100 HPLCシステム上で、LCMS法1を用いて行った。LCMS法1:クロマトグラフィーは、Phenomenex Hypercloneカラム(C18 BDS、粒子サイズ3μm、150×4.6mm)上で、下記勾配溶出プロセスを使用し、流量1mL/分で溶出し、実行した:T=0、10%B;T=2、10%B;T=20、100%B;T=22、100%B;T=22.05、10%B;T=25、10%B。移動相A=水+0.1%ギ酸;移動相B=アセトニトリル+0.1%ギ酸。UVスペクトルは、190と400nmの間で記録し、抽出されたクロマトグラムは、210、254及び276nmで採取した。質量スペクトルは、100及び1500amuの間で記録した。
【0103】
(NMR構造解析法)
NMRスペクトルは、Bruker Advance 500分光計において、1H及び13Cについて各々、500MHz及び125MHzで操作し、298Kで記録した。標準Brukerパルス配列を用い、1H-1H COSY、APT、HMBC及びHMQCスペクトルを獲得した。NMRスペクトルを、その中にそれらが溶かされた(run)溶媒の残存プロトン又は標準カーボンシグナルに対し参照した。
【0104】
(化合物純度の評価)
精製した化合物を、説明したLCMS法2を用いて分析した。LCMS法2:クロマトグラフィーは、Phenomenex Hyperclone C18-BDSカラム(4.6×150mm、粒子サイズ3μm)上で、水+0.1%ギ酸:アセトニトリル+0.1%ギ酸、(90:10)〜(0:100)の勾配で、1mL/分で20分間かけて溶出し、実行した。純度は、MSにより、複数の波長(210、254及び276nm)で評価した。全ての化合物は、全ての波長で純度>95%であった。純度は、1H及び13C NMRスペクトルの検証により最終的に確認した。
【0105】
(水溶解度の評価)
水溶解度は、以下のように試験した:該マクベシン類似体の10mMストック液を、室温で、100%DMSO中に調製した。3つ組の0.01mLアリコートを、琥珀色バイアル内で、0.1M PBS(pH7.3)溶液又は100%DMSOのいずれかで、最大0.5mLとした。得られた0.2mM溶液を、暗所、室温において、IKA(登録商標)vibrax VXR振盪機上で6時間振盪し、その後得られた溶液又は懸濁液を、2mLエッペンドルフチューブへ移し、13200rpmで30分間遠心分離した。その後上清液のアリコートを、前述のLCMS法1により分析した。
【0106】
(抗癌活性のインビトロバイオアッセイ)
単層増殖アッセイでのヒト腫瘍細胞株のパネルにおける抗癌活性について、化合物のインビトロ評価を、Oncotest社のInstitute for Experimental OncologyのOncotest Testing Facility(Freiburg)において行った。選択された細胞株の特徴を、表1にまとめた。
【0107】
【表5】

【0108】
Oncotest細胞株は、Rothらの論文(1999)に説明されたように、ヒト腫瘍異種移植片から確立した。ドナー異種移植片の起源は、Fiebigらの論文(1999)に説明されている。他の細胞株は、NCI(DU145、MCF-7)から入手したか、又はDSMZ(Braunschweig, 独国)から購入したかのいずれかであった。
別に指定しない限りは、全ての細胞株は、RPMI 1640培地、10%ウシ胎仔血清、及び0.1mg/mLゲンタマイシン(PAA, Colbe, 独国)を含有する「ready-mix」培地において、加湿した大気(95%空気、5%CO2)中で、37℃で増殖した。
【0109】
改変ヨウ化プロピジウムアッセイを用い、被験化合物(類)のヒト腫瘍細胞株の増殖に対する作用を評価した(Denglerらの論文、(1995))。
簡単に述べると、細胞を、トリプシン処理により対数期培養物から収穫し、カウントし、96ウェル平底マイクロタイタープレートに細胞株に応じた細胞密度(5〜10,000個生存細胞/ウェル)で播種した。24時間後、細胞を対数増殖を再開するために回収し、培養培地(6対照ウェル/プレート)又は該マクベシン類似体含有する培養培地の0.010mLを、これらのウェルに添加した。各濃度は、3つ組で播種した。化合物を、5種の濃度(100;10;1;0.1及び0.01μg/ml)で適用した。4日間連続曝露後、被験化合物を伴う又は伴わない、細胞培養培地を、ヨウ化プロピジウム(PI)水溶液(7mg/L)0.2mLにより交換した。生存細胞の割合を測定するために、これらのプレートを凍結することにより、細胞を透過性とすることができる。これらのプレートを解凍後、Cytofluor 4000マイクロプレートリーダー(励起530nm、発光620nm)を用い蛍光を測定し、生存細胞の総数に対する直接相関を得た。増殖阻害は、処置/対照×100(%T/C)として表した。これは、適用された被験化合物の濃度に対する%T/Cのグラフとしてプロットし、その後これを用い、細胞増殖を70%阻害するのに必要な濃度(IC70)を計算することができる。
【0110】
(実施例1 マクベシンPKS遺伝子クラスターの配列決定)
ゲノムDNAを、Kieser らの論文(2000)に説明された標準プロトコールを用い、アクチノシンネマ・プレチオスム(ATCC 31280)及びアクチノシンネマ・ミルム(DSM 43827, ATCC 29888)から単離した。DNA配列決定を、標準手順を用い、ケンブリッジ大学の生化学部門(Tennis Court Road, Cambridge CB2 1QW)のシークエンシング施設により行った。
【0111】
プライマー
【化8】

を利用し、標準技術を用い、ストレプトマイセス・ハイグロスコピカスNRRL 3602 (配列の寄託番号:AY179507)のゲルダナマイシン生合成遺伝子クラスターからのカルバモイル基転移酵素をコードしている遺伝子gdmNを増幅した。サザンブロット実験を、DIG試薬及び「非放射性核酸標識及び検出キット」を製造業者(Roche)の指示に従って用いて行った。DIG-標識したgdmN DNA断片を、異種プローブとして使用した。gdmN作出されたプローブ及びA.プレチオスム2112から単離されたゲノムDNAを用い、サザンブロット分析において、およそ8kb EcoRI断片を同定した。この断片を、標準手順を適用し、Litmus 28へクローニングし、並びに形質転換体を、コロニーハイブリダイゼーションにより同定した。クローンp3を単離し、およそ7.7kb挿入断片を、配列決定した。クローンp3から単離されたDNAは、EcoRI及びEcoRI/SacIで消化し、各々およそ7.7kb及び約1.2kbのバンドを単離した。標識反応を、製造業者のプロトコールに従い行った。先に名前を挙げた2種の菌株のコスミドライブラリーを、ベクターSuperCos 1及びGigapack III XLパッケージングキット(Stratagene)を製造業者の指示に従い用いて作製した。これら2種のライブラリーは、標準プロトコールを用いてスクリーニングし、及びプローブとして、クローンp3由来の7.7kb EcoRI断片のDIG-標識断片を使用した。コスミド52は、A.プレチオスムのコスミドライブラリーから同定し、配列決定のためにケンブリッジ大学の生化学部門のシークエンシング施設へ送付した。同様に、コスミド43及びコスミド46を、A.ミルムのコスミドライブラリーから同定した。サザンブロット分析により示されるように、3種のコスミド全てが、7.7kb EcoRI断片を含む。
【0112】
標準プロトコールを適用し、コスミド43のPKS領域のおよそ0.7kbp断片を、プライマー
【化9】

を用いて増幅し、クローニングし、重複クローンに関するA.プレチオスムコスミドライブラリーのスクリーニングのためのプローブとして使用した。コスミド52の配列情報も、プライマー
【化10】

により増幅されたDNA断片由来のプローブの作製のために使用し、これをA.プレチオスムのコスミドライブラリーのスクリーニングのために使用した。コスミド311及び352は単離し、並びにコスミド352は、配列決定のために送付した。コスミド352は、コスミド52とのほぼ2.7kbの重複を含む。更なるコスミドのスクリーニングのために、ほぼ0.6kb PCR断片を、標準プロトコールを適用し、プライマー
【化11】

及び鋳型としてコスミド311を用いて増幅した。A.プレチオスムのコスミドライブラリーをスクリーニングし、かつコスミド410を単離した。これは、コスミド352とほぼ17kb重複し、配列決定のために送付した。これら3種の重複コスミド(コスミド52、コスミド352及びコスミド410)の配列をまとめた。配列決定された領域は、約100kbpに広がり、マクベシン生合成遺伝子クラスターを構築する可能性のある23個のオープンリーディングフレームが同定された。配列番号:11における各オープンリーディングフレームの位置は、表3に示している。
【0113】
【表6】

【0114】
【表7】

【0115】
[注記1:cは、遺伝子がDNA相補鎖によりコードされていることを示す;注記2:時々、2種以上の可能性のある開始コドンの候補が同定される場合がある。当業者は、これを認め、かつ別の可能性のある開始コドンを同定することができるであろう。本発明者らは、2種以上の可能性のある開始コドンを有する遺伝子を同定し、印「*」を付けた。本発明者らが開始コドンであると考えるものを全て示したが、当業者は、別の開始コドンを用い、活性タンパク質を作出することが可能であることを理解するであろう。]
【0116】
(実施例2 菌株BIOT-3806:gdmM相同体mcbMがプラスミドの挿入により中断されているアクチノシンネマ・プレチオスム株の作出)
pLSS308の構築の概要を、図3に示している。
(2.1. プラスミドpLSS308の構築)
ストレプトマイセス・ハイグロスコピカス株NRRL 3602 (AY179507)のゲルダナマイシン生合成遺伝子クラスター由来のgdmM遺伝子及びアミコラトプシス・メディテラネイ(AF040570 AF040571)のリファマイシン生合成遺伝子クラスター由来のorf19のDNA配列を、VectorNTI配列アラインメントプログラムを用いて並置した。このアラインメントは、アクチノシンネマ・ミルム(BIOT-3134;DSM43827;ATCC29888)由来の相同遺伝子の断片を増幅するために使用した縮重オリゴのデザインに適している相同領域を同定した。縮重オリゴは以下である:
【化12】

ここで、N=G、A、T又はC;Y=C又はT;S=G又はCである。
【0117】
PCR増幅の鋳型は、アクチノシンネマ・ミルムコスミド43であった。コスミド43の作出は、先に実施例1に説明されている。
オリゴFPLS1及びFPLS3を使用し、鋳型としてコスミド43を及びTaq DNAポリメラーゼを使用し、標準PCR反応において、アクチノシンネマ・ミルム由来のgdmM相同体の内部断片を増幅した。得られた793bp PCR産物を、SmaIで線状としたpUC19へクローニングし、プラスミドpLSS301を得た。増幅された配列は、A.ミルムのマクベシンクラスターのmcbM遺伝子に由来すると仮定した。プラスミドpLSS301を、EcoRI/HindIIIで消化し、この断片を、EcoRI/HindIIIで消化されたプラスミドpKC1132(Biermanらの論文、1992)へクローニングした。得られたプラスミドを、pLSS308と命名し、これはアプラマイシン耐性であり、かつA.ミルムmbcM遺伝子の内部断片を含む。
【0118】
(2.2 アクチノシンネマ・プレチオスム亜種プレチオスムの形質転換)
プラスミドpUZ8002を抱えている大腸菌ET12567を、電気穿孔法により、pLSS308で形質転換し、接合のための大腸菌ドナー株を作出した。この菌株を使用し、栄養接合により、アクチノシンネマ・プレチオスム亜種プレチオスムを形質転換した(Matsushimaらの論文、1994)。接合完了体(exconjugant)を、培地4上に播種し、28℃でインキュベーションした。24時間後プレートに、50mg/Lアプラマイシン及び25mg/Lナリジクス酸を積層した。pLSS308は、アクチノシンネマ・プレチオスム亜種プレチオスムにおいて複製することができないので、アプラマイシン抵抗性コロニーは、プラスミド媒介性mcbM内部断片を介した相同組換えにより、染色体のmbcM遺伝子に組込まれたプラスミドを含んだ形質転換体であると予想された(図3)。これは、染色体上のmbcM遺伝子の2種の切断型コピーを生じた。形質転換体は、PCR分析により確認し、増幅された断片を配列決定した。
【0119】
コロニーを、培地4(50mg/Lアプラマイシン及び25mg/Lナリジクス酸を含む)の上にパッチした(patched)。各パッチからの6mmの円形プラグを用い、10mL種培地(培地1の変種−2%グルコース、3%可溶性デンプン、0.5%トウモロコシ浸漬固形物、1%大豆粉、0.5%ペプトン、0.3%塩化ナトリウム、0.5%炭酸カルシウム)に加え50mg/Lアプラマイシンを含む、個別の50mLファルコンチューブに接種した。これらの種培養物を、振り5cmの200rpmで、28℃で2日間インキュベーションした。その後これらを用い、(5%v/v)発酵培地(培地2)を接種し、28℃で24時間増殖し、その後26℃で更に5日間増殖した。これらから、前述の標準プロトコールに従い、代謝産物を抽出した。試料を、前述の標準プロトコールを使用し、HPLCにより、マクベシン類似体の生成について評価した。
選択された生産的単離体は、BIOT-3806と命名した。
【0120】
(2.3 BIOT-3806からの化合物の同定)
試料は、LCMS法1を用い、「全般的方法」に説明されたように分析した。
【0121】
【表8】

【0122】
(実施例3 BIOT-3870:gdmM相同体mbcMがインフレーム欠失されたアクチノシンネマ・プレチオスム株の作出)
(3.1 mbcMの下流フランキング領域に相同なDNAのクローニング)
オリゴBV145 (配列番号:14)及びBV146(配列番号:15)を用い、標準PCR反応において、鋳型としてコスミド52(実施例1由来)及びPfu DNAポリメラーゼを使用し、アクチノシンネマ・プレチオスム(ATCC 31280)由来のDNAの1421bp領域を増幅した。5'伸長を、各オリゴにおいてデザインし、増幅断片のクローニングを補助するために制限部位を導入した(図4)。増幅されたPCR産物(PCRwv308, 配列番号:16, 図5A)は、mbcMの3'末端の33bp及び更に下流相同領域(downstream homology)の1368bpをコードしていた。この1421bp断片を、SmaIで直線化したpUC19へクローニングし、プラスミドpWV308を生じた。
【0123】
【化13】

【0124】
(3.2 mbcMの上流フランキング領域に相同なDNAのクローニング)
オリゴBV147(配列番号:17)及びBV148(配列番号:18)を用い、標準PCR反応において、鋳型としてコスミド52(実施例1由来)及びPfu DNAポリメラーゼを使用し、アクチノシンネマ・プレチオスム(ATCC 31280)由来のDNAの1423bp領域を増幅した。5'伸長を、各オリゴにおいてデザインし、増幅断片のクローニングを補助するために制限部位を導入した(図4)。増幅されたPCR産物(PCRwv309, 配列番号:19, 図5B)は、mbcMの5'末端の30bp及び更に上流相同領域の1373bpをコードしていた。この1423bp断片を、SmaIで直線化したpUC19へクローニングし、プラスミドpWV309を生じた。
【0125】
【化14】

【0126】
生成物PCRwv308及びPCRwv309を、次のクローニング工程でpUC19ポリリンカーにおけるPstI部位を利用するために、pUC19へ同じ配向でクローニングした。
pWV309由来の1443bp AvrII/PstI断片を、pWV308の4073bp AvrII/PstI断片へクローニングし、pWV310を作出した。その結果pWV310は、AvrII部位で融合されたmbcMのフランキング領域に相同なDNAをコードしているSpeI/XbaI断片を含んだ。この2816bp SpeI/XbaI断片を、SpeIで直線化されたpKC1132(Biermanらの論文、1992)へクローニングし、pWV320を作出した。
【0127】
(3.3 アクチノシンネマ・プレチオスム亜種プレチオスムの形質転換)
プラスミドpUZ8002を抱えている大腸菌ET12567を、電気穿孔法により、pWV320で形質転換し、接合のための大腸菌ドナー株を作出した。この菌株を使用し、栄養接合により、アクチノシンネマ・プレチオスム亜種プレチオスムを形質転換した(Matsushimaらの論文、1994)。接合完了体を、培地4上に播種し、28℃でインキュベーションした。24時間後プレートに、50mg/Lアプラマイシン及び25mg/Lナリジクス酸を積層した。pWV320は、アクチノシンネマ・プレチオスム亜種プレチオスムにおいて複製することができないので、アプラマイシン抵抗性コロニーは、プラスミド媒介性mbcMフランキング相同領域のひとつを介した相同組換えにより、染色体に組込まれたプラスミドpWV320を含んだ形質転換体であると予想された。
【0128】
ゲノムDNAを、6種の接合完了体から単離し、消化し、かつサザンブロットで分析した。このブロットは、6種の単離体組込みのうちの4種は、相同領域の上流領域で生じ、6種の単離体相同組込みのうちの2種は、下流領域で生じたことを示した。上流領域の相同組込みから生じる1種の菌株(BIOT-3831と称す)を、二次交雑のスクリーニングのために選択した。下流領域の相同組込みから生じる1種の菌株(BIOT-3832)を、二次交雑のスクリーニングのために選択した。
【0129】
(3.4 二次交雑のスクリーニング)
菌株を、培地4(50mg/Lアプラマイシンを補充)の上にパッチし、28℃で4日間増殖した。各パッチの1cm2切片を使用し、50mLファルコンチューブ内で、抗生物質を含まない、改変ISP2(蒸留水1L中0.4%酵母エキス、1%麦芽エキス、0.4%デキストロース)7mLへ接種した。培養物を2〜3日間増殖し、その後50mLファルコンチューブ中で、別の改変ISP2(前記参照)7mLへ(5%接種菌液)継代培養した。4〜5世代継代培養した後、培養物を音波処理し、連続希釈し、培地4上に播種し、28℃で4日間培養した。その後1個のコロニーを、アプラマイシンを含有する培地4上及び抗生物質を含有しない培地4上に2つ組でパッチし、これらのプレートを、28℃で4日間インキュベーションした。抗生物質非含有プレート上で増殖したがアプラマイシン含有プレート上では増殖しなかったパッチを、+/−アプラマイシンプレート上に再度パッチし、これらが抗生物質マーカーを喪失していたことを確認した。この変異株は、502個のアミノ酸のインフレーム欠失を伴う、mbcMタンパク質をコードしている(図6A, 配列番号:20及び21;図6Bは、コードされたタンパク質配列を示す、配列番号:22)。
【0130】
mbcM欠失変異体を、培地4上にパッチし、28℃で4日間増殖した。各パッチからの6mmの円形プラグを用い、10mL種培地(1〜2%グルコース、3%可溶性デンプン、0.5%トウモロコシ浸漬固形物、1%大豆粉、0.5%ペプトン、0.3%塩化ナトリウム、0.5%炭酸カルシウムの培地から適合)を含む個別の50mLファルコンチューブへ接種した。これらの種培養物を、振り2インチの200rpmで、28℃で2日間インキュベーションした。その後これらを使用し、生産培地(培地2の応用−5%グリセロール、1%トウモロコシ浸漬固形物、2%酵母エキス、2%リン酸二水素カリウム、0.5%塩化マグネシウム、0.1%炭酸カルシウム)へ接種し(10mLへ0.5mL)、28℃で24時間増殖し、その後26℃で更に5日間増殖した。二次代謝産物を抽出し、マクベシン類似体の生成に関して「全般的方法」に説明されたようにLCMSにより分析した。
【0131】
(3.5 BIOT-3872からの化合物14及び15の同定)
実施例3.4に説明された発酵物の抽出物を作製し、LCMS法1を用い、「全般的方法」に説明されたようにLCMSによりアッセイした。マクベシンは認められず、及び2種の新規の主要な成分が認められた。これらの化合物は、下記表5に記したような物理化学的特徴を示した。
【0132】
【表9】

【0133】
化合物14及び15は、先に説明されたマクベシン類似体7-O-カルバモイルプレ-マクベシン及び7-O-カルバモイル-15-ヒドロキシプレ-マクベシンと同一であることが示された
【化15】

【0134】
mbcMへの組込み(実施例2)又はmbcM遺伝子の欠失のいずれかによる、MbcMの機能の除去は、同じ化合物14及び15を生じることに注意。観察された構造と生合成経路の間の関係の分析は、MbcMに加えて多くの酵素が機能しないことを示している。化合物15の場合、これらは、MbcP、MbcMT1及びMbcMT2であり、化合物14の場合、MbcP450の機能は同じく認められない。前述のように、これらのタンパク質が、このシステムにおいて機能しないことについては、多くの理由が存在し、例えば化合物14及び15は、これらの酵素の新規構造を表し、これらは基質として不良であるか又は全く基質ではない。
【0135】
(3.6 BIOT-3872プロトプラストの作出による個別のコロニーの選択)
プロトプラストは、培地を下記のように変更した、Weber及びLosickの論文(1988)から適合された方法を用い、BIOT-3872から作出した;アクチノシンネマ・プレチオスム培養物は、ISP2プレート(培地3)上で28℃で3日間増殖し、5mm2の掻取を使用し、滅菌した10%(w/v)グリシン水溶液2mlを補充したISP2ブロス40mlに接種した。プロトプラストを、Weber及びLosickの論文(1988)に説明されたように作出し、その後R2プレート上で再生した(R2レシピ−ショ糖103g、K2SO4 0.25g、MgCl2・6H2O 10.12g、グルコース10g、Difcoカザミノ酸0.1g、Difcoバクトアガー22g、蒸留水で800mLとし、この混合液を121℃で20分間オートクレーブ処理し、滅菌した。オートクレーブ後、下記のオートクレーブ処理した溶液を添加した;0.5%KH2PO4 10ml、3.68%CaCl2・2H2O 80mL、20%L-プロリン15mL、5.73%TES緩衝液(pH7.2)100mL、微量元素溶液(ZnCl2 40mg、FeCl3・6H2O 200mg、CuCl2・2H2O 10mg、MnCl2・4H2O 10mg、Na2B4O7・10H2O 10mg、(NH4)6Mo7O24・4H2O 10mg、蒸留水で1Lとする)2mL、NaOH(1N)(非滅菌処置)5mL)。
【0136】
個別のコロニー80個を、MAMプレート(培地4)上にパッチし、前述のように、マクベシン類似体の生成について分析した。プロトプラストが生成したパッチの大半は、親株と同様の低レベルで生成した。試験した80種の試料中15種が、親株よりも有意に多い化合物14及び15を生成した。最良の産生株BIOT-3870(WV4a-33とも称す)は、化合物14及び15を親株よりも有意に高いレベルで生成することが認められ、これをその後の実験において使用するために選択した。さらに、BIOT-3970を同株の代替的単離物として単離した。BIOT-3870及びBIOT-3970は互換的に使用できる。
【0137】
(実施例4 4,5-ジヒドロ-11-O-デスメチル-15-デスメトキシ-18,21-ジデスオキシマクベシンを作出するためのWV4a-33への供給)
(4.1 3-アミノ-安息香酸のWV4a-33(BIOT-3870)による生体内変換)
WV4a-33を、MAMプレート(培地4)上にパッチし、28℃で3日間増殖させた。6mm円形プラグを使用し、10mL種培地(培地1の応用−2%グルコース、3%可溶性デンプン、0.5%トウモロコシ浸漬固形物、1%大豆粉、0.5%ペプトン、0.3%塩化ナトリウム、0.5%炭酸カルシウム)を含む個別の50mLファルコンチューブへ接種した。これらの種培養物を、振り2インチの200rpmで、28℃で65時間インキュベーションした。その後これらを使用し、改変生産培地(培地2の応用−5%グリセロール、1%トウモロコシ浸漬固形物、2%酵母エキス、2%リン酸二水素カリウム、0.5%塩化マグネシウム、0.1%炭酸カルシウムの培地を、沈降するよう2〜60日間静置し、表面層を生産培地として取り出した)へ接種し(10mLへ1mL)、26℃で24時間増殖した。200mM供給材料ストック液(メタノールに溶解した3-アミノ安息香酸)0.1mLを、各ファルコンチューブへ添加し、最終供給材料濃度2mMとした。チューブを、26℃で更に6日間インキュベーションした。平行して、種培養物を用い、培地2へ接種した。これらの培養物の分析(下記参照)は、両種の生産培地において同じ化合物が生成されたが、改変培地を用いる場合に、より高い力価が認められたことを示した。
【0138】
(4.2 3-アミノ安息香酸と共に供給されたWV4a-33の培養物からの4,5-ジヒドロ-11-O-デスメチル-15-デスメトキシ-18,21-ジデスオキシマクベシンの同定)
実施例2.7に説明された発酵物の抽出物を作製し、「全般的方法」に説明されたようにLCMSによりアッセイした。予想されたように、化合物14及び15が生成された。加えて新規化合物16が明確に認められたが、これは3-アミノ安息香酸が供給されないあらゆる発酵物の抽出物において認められなかった。化合物16は、14又は15のいずれかよりも遅れて溶出し、下記表6に記したような物理化学的特徴を示した。
入手可能なデータを基に、化合物16は、4,5-ジヒドロ-11-O-デスメチル-15-デスメトキシ-18,21-ジデスオキシマクベシンとして同定した。
【0139】
【表10】

【0140】
(実施例5 4,5-ジヒドロ-11-O-デスメチル-15-デスメトキシ-18,21-ジデスオキシマクベシンの生成及び単離(変法))
(5.1 3-アミノ安息香酸と共に供給されたWV4a-33の培養物からの4,5-ジヒドロ-11-O-デスメチル-15-デスメトキシ-18,21-ジデスオキシマクベシンの発酵)
WV4a-33を、MAMプレート(培地4)上にパッチし、28℃で3日間増殖させた。2個の6mmの円形プラグを使用し、30mL種培地(培地1の応用−2%グルコース、3%可溶性デンプン、0.5%トウモロコシ浸漬固形物、1%大豆粉、0.5%ペプトン、0.3%塩化ナトリウム、0.5%炭酸カルシウム)を含む250mlのコニカル振盪フラスコを接種した。6個のフラスコを、接種した。これらの種培養物を、振り1インチの200rpmで、28℃で65時間インキュベーションした。その後これらを用い、各々改変生産培地(培地2の応用−5%グリセロール、1%トウモロコシ浸漬固形物、2%酵母エキス、2%リン酸二水素カリウム、0.5%塩化マグネシウム、0.1%炭酸カルシウムの培地を、沈降するよう2〜60日間静置し、表面層を生産培地として取り出した)10mlを含む170ファルコンチューブへ接種し(10mLへ1mL)、26℃で24時間増殖した。200mM供給材料ストック液(メタノールに溶解した3-アミノ安息香酸)0.1mLを、各ファルコンチューブへ添加し、最終供給材料濃度2mMとした。チューブを、26℃で更に6日間インキュベーションした。これらの培養物をプールし(約1.4L)、ファルコンチューブを洗浄した(各々水7mlで)。洗浄液をプールした(約1.4L)。プールした培養物及び洗浄液を用い、4,5-ジヒドロ-11-O-デスメチル-15-デスメトキシ-18,21-ジデスオキシマクベシン(合計約3L)を単離した。平行して、種培養物を用い、改変生産培地30mlへ接種し(3ml)、引き続き先に説明されたものと同じインキュベーション及び供給方式を行った(最終供給材料濃度2mM)。フラスコは、振り2インチの振盪機においてインキュベーションした。生成レベルは、ファルコンチューブ生成培養物について測定されたもののほぼ50%〜90%の間であることが、LCMSにより概算された。
【0141】
(5.2 4,5-ジヒドロ-11-O-デスメチル-15-デスメトキシ-18,21-ジデスオキシマクベシンの単離及び特徴決定)
発酵ブロス(3L)を、等量の酢酸エチル(EtOAc)で2回抽出した。これらの有機抽出液を一緒にし、溶媒を真空中40℃で除去し、油状残渣1.2gを得た。その後この残渣を、100%CHCl3からCHCl3:MeOH(97:3)までの段階勾配の、シリカゲル60カラム(30×2.5cm)上でクロマトグラフィーにかけ、約250mLの画分を収集した。これらの画分を、分析的HPLCによりモニタリングした。化合物16を含有する画分を一緒にし、溶媒を真空中40℃で除去し、半純粋な化合物16を435mg得た。この半純粋な物質を、水:アセトニトリル(77:23)から(20:80)の勾配で25分間にわたり流量21ml/分で溶出する、Phenomenex-Luna C18-BDSカラム(21.2×250mm、5μm粒子サイズ)上の逆相HPLCにより更に精製した。17分に溶出した化合物16及び関連画分を一緒にし、溶媒を減圧下で除去し、化合物16を白色粉末(125mg)として得た。
【0142】
化合物16の純度は、「全般的方法」に説明された方法1を用いるLCMSにより確認した。LCMS:16、RT=12.9分([M+Na]+, m/z=509.4;[M-H]-, m/z=485.5)。
400MHzで収集したプロトンNMRデータは、示された構造と一致した。
【化16】

【0143】
(実施例6 5-アミノ-2-フルオロ安息香酸のBIOT-3870への供給による4,5-ジヒドロ-11-O-デスメチル-15-デスメトキシ-17-フルオロ-18,21-ジデスオキシマクベシンの生成)
(6.1 5-アミノ-2-フルオロ安息香酸のBIOT-3870による生体内変換)
BIOT-3870を、MAMプレート(培地4)上にパッチし、28℃で3日間増殖させた。6mm円形プラグを使用し、10mL種培地(培地1の応用−2%グルコース、3%可溶性デンプン、0.5%トウモロコシ浸漬固形物、1%大豆粉、0.5%ペプトン、0.3%塩化ナトリウム、0.5%炭酸カルシウム)を含む個別の50mLファルコンチューブへ接種した。これらの種培養物を、振り2インチの200rpmで、28℃で65時間インキュベーションした。その後これらを使用し、改変生産培地(培地2の応用−5%グリセロール、1%トウモロコシ浸漬固形物、2%酵母エキス、2%リン酸二水素カリウム、0.5%塩化マグネシウム、0.1%炭酸カルシウムの培地を、沈降するよう2〜60日間静置し、表面層を生産培地として取り出した)へ接種し(10mLへ1mL)、26℃で24時間増殖した。200mM供給材料ストック液(メタノールに溶解した5-アミノ-2-フルオロ安息香酸)0.1mLを、各ファルコンチューブへ添加し、最終供給材料濃度2mMとした。チューブを、26℃で更に6日間インキュベーションした。
【0144】
(6.2 4,5-ジヒドロ-11-O-デスメチル-15-デスメトキシ-17-フルオロ-18,21-ジデスオキシマクベシン、化合物17の同定)
LCMS法1を用い、「全般的方法」に説明されたように分析を行った。化合物14及び15に加え、表7に説明されたLCMS特徴を伴う新規化合物が認められた。これらのデータは、標題化合物と一致した。
【0145】
【表11】

【0146】
(6.3 4,5-ジヒドロ-11-O-デスメチル-15-デスメトキシ-17-フルオロ-18,21-ジデスオキシマクベシン、化合物17の生成及び抽出)
BIOT-3870を、MAMプレート(培地4)上にパッチし、28℃で3日間増殖させた。2個の6mm円形プラグを用い、30mL種培地(培地1の応用−2%グルコース、3%可溶性デンプン、0.5%トウモロコシ浸漬固形物、1%大豆粉、0.5%ペプトン、0.3%塩化ナトリウム、0.5%炭酸カルシウム)を含む250mlのコニカル振盪フラスコを接種した。6個のフラスコを、接種した。これらの種培養物を、振り1インチの200rpmで、28℃で65時間インキュベーションした。その後これらを用い、各々改変生産培地(培地2の応用−5%グリセロール、1%トウモロコシ浸漬固形物、2%酵母エキス、2%リン酸二水素カリウム、0.5%塩化マグネシウム、0.1%炭酸カルシウムの培地を、沈降するよう2〜60日間静置し、表面層を生産培地として取り出した)10mlを含む、170ファルコンチューブへ接種し(10mLへ1mL)、26℃で24時間増殖した。200mM供給材料ストック液(メタノールに溶解した5-アミノ-2-フルオロ安息香酸)0.1mLを、各ファルコンチューブへ添加し、最終供給材料濃度2mMとした。チューブを、26℃で更に6日間インキュベーションした。これらの培養物をプールし(約1.4L)、ファルコンチューブを洗浄した(各々水7mlで)。洗浄液をプールした(約1.4L)。プールした培養物及び洗浄液を用い、下記参照する4,5-ジヒドロ-11-O-デスメチル-15-デスメトキシ-17-フルオロ-18,21-ジデスオキシマクベシンを単離した。
【0147】
(6.4 4,5-ジヒドロ-11-O-デスメチル-15-デスメトキシ-17-フルオロ-18,21-ジデスオキシマクベシン、化合物17の精製及び特徴決定)
発酵ブロス(〜3L)を、等量の酢酸エチル(EtOAc)で2回抽出した。これらの有機抽出液を一緒にし、溶媒を真空中40℃で除去し、油状残渣3.0gを得た。その後この残渣を、CHCl3中2%メタノールで溶出する、シリカゲル60カラム上でクロマトグラフィーにかけ、約250mLの画分を収集した。これらの画分を、分析的HPLCによりモニタリングした。含有する画分を一緒にし、溶媒を真空中40℃で除去した。この半純粋な物質を、水:アセトニトリル(77:23)から(20:80)の勾配で25分間にわたり流量21ml/分で溶出する、Phenomenex-Luna C18-BDSカラム(21.2×250mm、粒子サイズ5μm)上の逆相HPLCにより更に精製した。18分に溶出した化合物17及び関連画分を一緒にし、溶媒を減圧下で除去し、白色粉末(54mg)として得た。d6-アセトンで得たNMRデータは、報告された構造と全体的に一致している。
【0148】
化合物17の純度は、LCMS法2を用い「全般的方法」に説明されたように確認した。複数の波長で、並びに陽性及び陰性の両モードでMS分析を用い、測定を行った。LCMS:化合物17、RT=11.3分([M-H]-, m/z=503.3;[M+Na]+, m/z=527.3;[2M+Na]+, m/z=1032.0)。
【化17】

【0149】
(実施例7 5-アミノ-3-フルオロ安息香酸のBIOT-3870への供給による4,5-ジヒドロ-11-O-デスメチル-15-デスメトキシ-18-フルオロ-18,21-ジデスオキシマクベシンの生成)
(7.1 5-アミノ-3-フルオロ安息香酸のBIOT-3870による生体内変換)
BIOT-3870を、MAMプレート(培地4)上にパッチし、28℃で3日間増殖させた。6mm円形プラグを使用し、10mL種培地(培地1の応用−2%グルコース、3%可溶性デンプン、0.5%トウモロコシ浸漬固形物、1%大豆粉、0.5%ペプトン、0.3%塩化ナトリウム、0.5%炭酸カルシウム)を含む個別の50mLファルコンチューブへ接種した。これらの種培養物を、振り2インチの200rpmで、28℃で65時間インキュベーションした。その後これらを使用し、改変生産培地(培地2の応用−5%グリセロール、1%トウモロコシ浸漬固形物、2%酵母エキス、2%リン酸二水素カリウム、0.5%塩化マグネシウム、0.1%炭酸カルシウムの培地を、沈降するよう2〜60日間静置し、表面層を生産培地として取り出した)へ接種し(10mLへ1mL)、26℃で24時間増殖した。200mM供給材料ストック液(メタノールに溶解した5-アミノ-3-フルオロ安息香酸)0.1mLを、各ファルコンチューブへ添加し、最終供給材料濃度2mMとした。チューブを、26℃で更に6日間インキュベーションした。
【0150】
(7.2 4,5-ジヒドロ-11-O-デスメチル-15-デスメトキシ-18-フルオロ-18,21-ジデスオキシマクベシン、化合物18の同定)
LCMS法1を用い、「全般的方法」に説明されたように分析を行った。化合物14及び15に加え、表8に説明されたLCMS特徴を伴う新規化合物2種類が認められた。これらのデータは、標題化合物18及びそのC15-ヒドロキシル化された類似体19と一致した。
【0151】
【表12】

【0152】
(7.3 4,5-ジヒドロ-11-O-デスメチル-15-デスメトキシ-18-フルオロ-18,21-ジデスオキシマクベシン、化合物18の生成及び抽出)
BIOT-3870を、MAMプレート(培地4)上にパッチし、28℃で3日間増殖させた。2個の6mm円形プラグを用い、30mL種培地(培地1の応用−2%グルコース、3%可溶性デンプン、0.5%トウモロコシ浸漬固形物、1%大豆粉、0.5%ペプトン、0.3%塩化ナトリウム、0.5%炭酸カルシウム)を含む250mlのコニカル振盪フラスコを接種した。6個のフラスコを、接種した。これらの種培養物を、振り1インチの200rpmで、28℃で65時間インキュベーションした。その後これらを用い、各々改変生産培地(培地2の応用−5%グリセロール、1%トウモロコシ浸漬固形物、2%酵母エキス、2%リン酸二水素カリウム、0.5%塩化マグネシウム、0.1%炭酸カルシウムの培地を、沈降するよう2〜60日間静置し、表面層を生産培地として取り出した)10mlを含む、170ファルコンチューブへ接種し(10mLへ1mL)、26℃で24時間増殖した。200mM供給材料ストック液(メタノールに溶解した5-アミノ-3-フルオロ安息香酸)0.1mLを、各ファルコンチューブへ添加し、最終供給材料濃度2mMとした。チューブを、26℃で更に6日間インキュベーションした。これらの培養物をプールし(約1.4L)、ファルコンチューブを洗浄した(各々水7mlで)。洗浄液をプールした(約1.4L)。プールした培養物及び洗浄液を用い、下記参照する4,5-ジヒドロ-11-O-デスメチル-15-デスメトキシ-18-フルオロ-18,21-ジデスオキシマクベシンを単離した。
【0153】
(7.4 4,5-ジヒドロ-11-O-デスメチル-15-デスメトキシ-18-フルオロ-18,21-ジデスオキシマクベシン、化合物18の単離及び特徴決定)
発酵ブロス(〜3L)を、等量のEtOAcで2回抽出した。これらの有機抽出液を一緒にし、溶媒を真空中40℃で除去し、油状残渣3.4gを得た。その後この残渣を、100% CHCl3 からCHCl3:MeOH(96:4)の段階勾配による、シリカゲル60カラム(30×2.5cmカラム)上でクロマトグラフィーにかけ、約250mLの画分を収集した。これらの画分を、分析的HPLCによりモニタリングした。化合物18を含有する画分を一緒にし、溶媒を真空中40℃で除去し、半純粋な化合物18を528mg得た。この半純粋な物質を、水:アセトニトリル(77:23)から(20:80)の勾配で25分間にわたり流量21ml/分で溶出する、Phenomenex-Luna C18-BDSカラム(21.2×250mm、粒子サイズ5μm)上の逆相HPLCにより更に精製した。20分に溶出した化合物18及び関連画分を一緒にし、溶媒を減圧下で除去し、白色粉末(224mg)として化合物18を得た。d6-アセトンで得たNMRデータは、報告された構造と全体的に一致していた。
【0154】
化合物18の純度は、LCMS法2を用い「全般的方法」に説明されたように確認した。複数の波長で、並びに陽性及び陰性の両モードでMS分析を用い、測定を行った。LCMS:化合物18、RT=11.9分([M-H]-, m/z=503.1;[M+Na]+, m/z=527.2;[2M+Na]+, 1031.5)。
【化18】

【0155】
(実施例8 5-アミノ-2,3,6-トリ-フルオロ安息香酸のBIOT-3870への供給による4,5-ジヒドロ-11-O-デスメチル-15-デスメトキシ-18,21-ジデスオキシ-17,18,21-トリフルオロマクベシンの生成)
(8.1 5-アミノ-2,3,6-トリ-フルオロ安息香酸のBIOT-3870による生体内変換)
BIOT-3870を、MAMプレート(培地4)上にパッチし、28℃で3日間増殖させた。6mm円形プラグを使用し、10mL種培地(培地1の応用−2%グルコース、3%可溶性デンプン、0.5%トウモロコシ浸漬固形物、1%大豆粉、0.5%ペプトン、0.3%塩化ナトリウム、0.5%炭酸カルシウム)を含む個別の50mLファルコンチューブへ接種した。これらの種培養物を、振り2インチの200rpmで、28℃で65時間インキュベーションした。その後これらを使用し、改変生産培地(培地2の応用−5%グリセロール、1%トウモロコシ浸漬固形物、2%酵母エキス、2%リン酸二水素カリウム、0.5%塩化マグネシウム、0.1%炭酸カルシウムの培地を、沈降するよう2〜60日間静置し、表面層を生産培地として取り出した)へ接種し(10mLへ1mL)、26℃で24時間増殖した。200mM供給材料ストック液(メタノールに溶解した5-アミノ-2,3,6-トリ-フルオロ安息香酸)0.1mLを、各ファルコンチューブへ添加し、最終供給材料濃度2mMとした。チューブを、26℃で更に6日間インキュベーションした。
【0156】
(8.2 4,5-ジヒドロ-11-O-デスメチル-15-デスメトキシ-18,21-ジデスオキシ-17,18,21-トリフルオロマクベシン、化合物20の同定)
LCMS法1を用い、「全般的方法」に説明されたように分析を行った。化合物14及び15に加え、表9に説明されたLCMS特徴を伴う新規化合物が認められた。これらのデータは、標題化合物と一致した。
【0157】
【表13】

【0158】
【化19】

【0159】
(実施例9 mbcMがインフレーム欠失を有し、並びにmbcMT1、mbcMT2、mbcP及びmbcP450が更に欠失されているアクチノシンネマ・プレチオスム株の作出)
(9.1 mbcMT2の下流フランキング領域に相同なDNAのクローニング)
オリゴls4del1(配列番号:23)及びls4del2a(配列番号:24)を用い、標準PCR反応において、鋳型としてコスミド52(実施例1由来)及びPfu DNAポリメラーゼを使用し、アクチノシンネマ・プレチオスム(ATCC 31280)由来のDNAの1595bp領域を増幅した。5'伸長を、オリゴls4del2aにおいてデザインし、増幅断片のクローニングを補助するためにAvrII部位を導入した(図7)。増幅されたPCR産物(1+2a、図8、配列番号:25)は、mbcMT2の3'末端の196bp及び更に下流相同領域の1393bpをコードしていた。この1595bp断片を、SmaIで直線化したpUC19へクローニングし、プラスミドpLSS1+2aを生じた。
【0160】
【化20】

【0161】
(9.2 mbcMの上流フランキング領域に相同なDNAのクローニング)
オリゴls4del3b(配列番号:26)及びls4del4(配列番号:27)を用い、標準PCR反応において、鋳型としてコスミド52(実施例1由来)及びPfu DNAポリメラーゼを使用し、アクチノシンネマ・プレチオスム(ATCC 31280)由来のDNAの1541bp領域を増幅した。5'伸長を、オリゴls4del3bにおいてデザインし、増幅断片のクローニングを補助するためにAvrII部位を導入した(図7)。増幅されたPCR産物(3b+4、図9、配列番号:28)は、mbcPの5'末端の〜100bp及び更に上流相同領域の〜1450bpをコードしていた。この〜1550bp断片を、SmaIで直線化したpUC19へクローニングし、プラスミドpLSS3b+4を生じた。
【0162】
【化21】

【0163】
生成物1+2a及び3b+4を、次のクローニング工程でpUC19ポリリンカーにおけるHindIII及びBamHI部位を利用するために、pUC19へクローニングした。
pLSS1+2a由来の1621bp AvrII/HindIII断片及びpLSS3b+4由来の1543bp AvrII/BamHI断片を、pKC1132の3556bp HindIII/BamHI断片へクローニングし、pLSS315を作出した。その結果pLSS315は、AvrII部位で融合された所望の4個のORF欠失領域のフランキング領域に相同なDNAをコードしているHindIII/BamHI断片を含んだ(図7)。
【0164】
(9.3 pLSS315によるBIOT-3870の形質転換)
プラスミドpUZ8002を抱えている大腸菌ET12567を、電気穿孔法により、pLSS315で形質転換し、接合のための大腸菌ドナー株を作出した。この菌株を使用し、栄養接合により、BIOT-3870を形質転換した(Matsushimaらの論文、1994)。接合完了体を、MAM培地(1%コムギデンプン、0.25%トウモロコシ浸漬固形物、0.3%酵母エキス、0.3%炭酸カルシウム、0.03%硫酸鉄、2%寒天)上に播種し、28℃でインキュベーションした。24時間後プレートに、50mg/Lアプラマイシン及び25mg/Lナリジクス酸を積層した。pLSS315は、BIOT-3870において複製することができないので、アプラマイシン抵抗性コロニーは、プラスミド媒介性相同領域を介した相同組換えにより、染色体に組込まれたプラスミドを含んだ形質転換体であると予想された。
【0165】
(9.4 二次交雑のスクリーニング)
BIOT-3870:pLSS315の3種の初代形質転換体を、二次交雑のスクリーニングのための継代培養に選択した。
菌株を、MAM培地(50mg/Lアプラマイシンを補充)の上にパッチし、28℃で4日間増殖した。2個の6mm円形プラグを使用し、250 mlコニカルフラスコ中のISP2(0.4%酵母エキス、1%麦芽エキス、0.4%デキストロース、抗生物質は補充せず)30mLへ接種した。培養物は、2〜3日増殖し、250mLコニカルフラスコ内のISP2の30mLへ継代した(5%接種)。4〜5世代継代培養した後、実施例3.6に説明したようにプロトプラスト処理し、プロトプラストを段階希釈し、再生培地(実施例3.6参照)上に播種し、28℃で4日間インキュベーションした。その後単独のコロニーを、アプラマイシンを含有するMAM培地上及び抗生物質を含有しないMAM培地上に2つ組でパッチし、これらのプレートを、28℃で4日間インキュベーションした。7個のパッチは、クローンno1(no32-37)に由来し、4個のパッチは、クローンno3(no38-41)に由来し、これは抗生物質非含有プレート上で増殖したが、アプラマイシンプレート上では増殖せず、これを、+/−アプラマイシンプレート上に再度パッチし、これらが抗生物質マーカーを喪失していたことを確認した。
【0166】
マクベシン類似体の生成は、「全般的方法」に説明されたように実行した。LCMS法1を用い「全般的方法」に説明されたように、分析を行った。化合物14は、親株BIOT-3870と同等の収率で生成され、並びに化合物15の生成は、パッチ33、34、35、37、39及び41について認められなかった。この結果は、所望の変異株は、当初のmbcMの欠失に加え、遺伝子mbcP、mbcP450、mbcMT1及びmbcMT2を含むマクベシンクラスターの3892bpの欠失を有することを示している。該株をBIOT-3982と命名した。
【0167】
(実施例10 Hsp90への結合)
(等温滴定熱量測定及びKd決定)
酵母Hsp90を、1mM EDTA及び5mM NaClを含有する20mMトリス(pH7.5)に対して透析し、その後2%DMSOを含有する以外は同じ緩衝液中に0.008mMとなるよう希釈した。本被験化合物を、100%DMSO中に濃度50mMに希釈し、引き続き同じ緩衝液で0.1mMまで希釈し、Hsp90については2%DMSOであった。相互作用の発熱を、セル容積1.458mLのMSCシステム(Microcal)上で30℃で測定した。0.100mMの各被験化合物の0.027mLアリコート10種を、0.008mM酵母Hsp90へ注入した。希釈物の発熱を、被験化合物の2%DMSOを含有する緩衝液への注入により、個別の実験において測定し、補正したデータを、下記の3種の浮動変量により、非線形最小二乗曲線-フィッティングアルゴリズム(nonlinear least square curve-fitting algorithm)(Microcal Origin)を用いてフィットさせた:化学量論、結合定数、及び相互作用のエンタルピーの変化。結果を下記表10にまとめる。
【0168】
【表14】

【0169】
(実施例11−生物学的データ−18,21-ジデスオキシマクベシン類似体の抗癌活性のインビトロ評価)
単層増殖アッセイのヒト腫瘍細胞株パネルにおける抗癌活性に関する本被験化合物のインビトロ評価を、改変ヨウ化ポピジウムアッセイを使用し「全般的方法」に説明されたように行った。
結果を、下記表11に示し、全ての処置値/対照値(%T/C)は、少なくとも3回の個別の実験の平均で示した。表12は、試験した細胞株パネルにわたる本化合物の平均IC70を示し、参照としてマクベシンを示した(平均は、全ての反復の幾何平均として算出する)。
【0170】
【表15】

【0171】
【表16】

【0172】
(実施例12 新規マクベシン類似体を生成するためのBIOT-3970に対する外因性酸の供給)
(12.1 BIOT-3970を使用する生体内変換)
BIOT-3970を、MAMプレート(培地4)上にパッチし、28℃で3日間増殖させた。6mm円形プラグを使用し、10mL種培地(培地1の応用−2%グルコース、3%可溶性デンプン、0.5%トウモロコシ浸漬固形物、1%大豆粉、0.5%ペプトン、0.3%塩化ナトリウム、0.5%炭酸カルシウム)を含む個別の50mLファルコンチューブへ接種した。これらの種培養物を、振り1インチの300rpmで、28℃で68時間インキュベーションした。その後これらを使用し、改変生産培地(培地2の応用−5%グリセロール、1%トウモロコシ浸漬固形物、2%酵母エキス、2%リン酸二水素カリウム、0.5%塩化マグネシウム、0.1%炭酸カルシウムの培地を、沈降するよう7日間静置し、表面層を生産培地として取り出した)へ接種し(0.5mLへ7mL)、26℃で24時間増殖した。0.05mLの280mM供給材料ストック液(メタノール中、表13のリストを参照されたい)を、各ファルコンチューブへ添加し、最終供給材料濃度2mMとした。チューブを、26℃で更に6日間インキュベーションした。
【0173】
(12.2 LCMSによる培養抽出物中の新規マクベシンの同定)
実施例12.1に説明された発酵物の抽出物を作製し、「全般的方法」に説明されたようにLCMSによりアッセイした。全ての場合において、化合物14及び15は予想されたように生成された。さらに、新規化合物は、表13に記載したように観測され、これらは供給しなかった全ての発酵物の抽出物には見出すことができなかった。表は、株に供給された置換安息香酸類似体、該類似体の保持時間、見出されたLCMS質量、及び生成された化合物の質量を記載する。生成された化合物の予測された構造を図12に示す。12Dの場合、供給されたAHBA類似体は、ベンゼノイド環の未知の位置の炭素に直接結合したフッ素置換物を含んだ。
【表17】

【0174】
(実施例13 新規マクベシン類似体を産生するためのBIOT-3982への供給)
(13.1 BIOT-3982を使用する生体内変換)
実施例9に記載した産生物であるBIOT-3982を、MAMプレート(培地4)上にパッチし、28℃で3日間増殖させた。6mm円形プラグを使用し、10mL種培地(培地1の応用−2%グルコース、3%可溶性デンプン、0.5%トウモロコシ浸漬固形物、1%大豆粉、0.5%ペプトン、0.3%塩化ナトリウム、0.5%炭酸カルシウム)を含む個別の50mLファルコンチューブへ接種した。これらの種培養物を、振り1インチの300rpmで、28℃で68時間インキュベーションした。その後これらを使用し、改変生産培地(培地2の応用−5%グリセロール、1%トウモロコシ浸漬固形物、2%酵母エキス、2%リン酸二水素カリウム、0.5%塩化マグネシウム、0.1%炭酸カルシウムの培地を、沈降するよう7日間静置し、表面層を生産培地として取り出した)へ接種し(7mLへ0.5mL)、26℃で24時間増殖した。0.05mLの280mM供給材料ストック液(メタノール中、表13のリストを参照されたい)を、各ファルコンチューブへ添加し、最終供給材料濃度2mMとした。チューブを、26℃で更に6日間インキュベーションした。
【0175】
(13.2 LCMSによる培養抽出物中の新規マクベシンの同定)
実施例13.1に説明された発酵物の抽出物を作製し、「全般的方法」に説明されたようにLCMSによりアッセイした。全ての場合において、化合物14は予想されたように生成された。さらに、新規化合物は、表14に記載したように明確に観測され、これらは供給しなかった全ての発酵物の抽出物には見出すことができなかった。表は、株に供給された置換安息香酸類似体、該類似体の保持時間、見出されたLCMS質量、及び生成された化合物の質量を記載する。生成された化合物の予測された構造を図12に示す。13Dの場合、供給されたAHBA類似体は、ベンゼノイド環の未知の位置の炭素に直接結合したフッ素置換物を含んだ。
【表18】

【0176】
(実施例14 更なる新規マクベシン類似体を産生するためのBIOT-3982への供給)
(14.1 BIOT-3982を使用する生体内変換)
実施例9に記載した産生物であるBIOT-3982を、MAMプレート(培地4)上にパッチし、28℃で3日間増殖させた。6mm円形プラグを使用し、10mL種培地(培地1の応用−2%グルコース、3%可溶性デンプン、0.5%トウモロコシ浸漬固形物、1%大豆粉、0.5%ペプトン、0.3%塩化ナトリウム、0.5%炭酸カルシウム)を含む個別の50mLファルコンチューブへ接種した。これらの種培養物を、振り1インチの300rpmで、28℃で65時間インキュベーションした。その後これらを使用し、改変生産培地(培地2の応用−5%グリセロール、1%トウモロコシ浸漬固形物、2%酵母エキス、2%リン酸二水素カリウム、0.5%塩化マグネシウム、0.1%炭酸カルシウムの培地を、沈降するよう2〜60日間静置し、表面層を生産培地として取り出した)へ接種し(10mLへ1mL)、26℃で24時間増殖した。0.05mLの供給材料ストック液(メタノール中、表14のリストを参照されたい)を、各ファルコンチューブへ添加し、最終供給材料濃度2mMとした。チューブを、26℃で更に6日間インキュベーションした。
【0177】
(14.2 LCMSによる培養抽出物中の新規マクベシンの同定)
実施例14.1に説明された発酵物の抽出物を作製し、「全般的方法」に説明されたようにLCMSによりアッセイした。全ての場合において、化合物14は予想されたように生成された。さらに、新規化合物は、表15に記載したように予測されたように観測され、これらは供給しなかった全ての発酵物の抽出物には見出されるべきではない。表は、株に供給された類似体、見出されることが予測されるLCMS質量、及び化合物の予測された質量を記載する。生成されることが予測された化合物の構造を図13及び14に示す。
【表19】



【0178】
(実施例15−AHBA生合成の不活化を有する株の作成)
不活化されたAHBA合成に関与する遺伝子(群)を有する株を作成する利点は、該株内に天然のAHBAからの競合が少ないことである。置換安息香酸類似体を有する変異合成は、それゆえより効率的であり得、より簡易な精製ももたらす。
(15.1. プラスミドpKC1132Ahscloneno8の構築)
オリゴCM453(配列番号29)及びCM452(配列番号30)を使用して、鋳型としてコスミド52(実施例1由来)及びKOD DNAポリメラーゼを使用する標準的PCR反応で、アクチノシンネマ・プレチオスム(ATCC 31280)由来のDNAの〜0.8kb塩基対領域を増幅した。5'伸長を、各オリゴにおいてデザインし、増幅断片のクローニングを潜在的に補助するために制限部位を導入したが、実際には平滑末端クローニングを使用した。増幅されたPCR産物(PCR52/53)は、Ahs遺伝子の内部断片をコードしていた。この〜0.8kb断片を、EcoRVで直線化したpKC1132へクローニングし、プラスミドpKC1132Ahscloneno8を生じた。
【化22】

【0179】
(15.2 アクチノシンネマ・プレチオスム亜種プレチオスムBIOT-3982の形質転換)
プラスミドpUZ8002を抱えている大腸菌ET12567を、電気穿孔法により、pKC1132Ahscloneno8で形質転換し、接合のための大腸菌ドナー株を作出した。この菌株を使用し、栄養接合により、アクチノシンネマ・プレチオスム亜種プレチオスムBIOT-3982を形質転換した(Matsushimaらの論文、1994)。接合完了体を、培地4上に播種し、28℃でインキュベーションした。24時間後、プレートを、50mg/Lアプラマイシン及び25mg/Lナリジクス酸で積層した。pKC1132Ahscloneno8は、アクチノシンネマ・プレチオスム亜種プレチオスムBIOT-3982において複製することができないので、アプラマイシン抵抗性コロニーは、mbcAhs遺伝子内での相同組換えを介して染色体に組込まれたプラスミドpKC1132Ahscloneno8を含んだ形質転換体であると予想された(図11)。正確な相同組換えの確認を、サザンブロット及びPCRで確認できる。該株をアクチノシンネマ・プレチオスム亜種プレチオスムBIOT-3982AhsXと命名する。標準条件下でかつAHBAの補給なしで生育させる場合、該株は化合物14を全く生成しないか又は非常に低いレベルで生成することが見出される。
【0180】
(実施例16 新規マクベシン類似体を産生するためのアクチノシンネマ・プレチオスム亜種プレチオスムBIOT-3982AhsXへの供給)
(16.1 アクチノシンネマ・プレチオスム亜種プレチオスムBIOT-3982AhsXを使用する生体内変換)
実施例15に記載した産生物であるアクチノシンネマ・プレチオスム亜種プレチオスムBIOT-3982AhsXを、MAMプレート(培地4)上にパッチし、28℃で3日間増殖させた。6mm円形プラグを使用し、10mL種培地(培地1の応用−2%グルコース、3%可溶性デンプン、0.5%トウモロコシ浸漬固形物、1%大豆粉、0.5%ペプトン、0.3%塩化ナトリウム、0.5%炭酸カルシウム)を含む個別の50mLファルコンチューブへ接種した。これらの種培養物を、振り2インチの200rpmで、28℃で65時間インキュベーションした。その後これらを使用し、改変生産培地(培地2の応用−5%グリセロール、1%トウモロコシ浸漬固形物、2%酵母エキス、2%リン酸二水素カリウム、0.5%塩化マグネシウム、0.1%炭酸カルシウムの培地を、沈降するよう2〜60日間静置し、表面層を生産培地として取り出した)へ接種し(10mLへ1mL)、26℃で24時間増殖した。0.1mLの280mM供給材料ストック液(メタノール中、表16のリストを参照されたい)を、各ファルコンチューブへ添加し、最終供給材料濃度2mMとした。チューブを、26℃で更に6日間インキュベーションした。
【0181】
(16.2 LCMSによる培養抽出物中の新規マクベシンの同定)
実施例16.1に説明された発酵物の抽出物を作製し、「全般的方法」に説明されたようにLCMSによりアッセイした。全ての場合において、観測が予測される主要なアンサマイシンを表16に記載し、かつこれらのアンサマイシンは、供給しなかった発酵物の抽出物には見出されるべきではない。表は、株に供給された置換安息香酸類似体、LCMS質量、及び産生される化合物の質量を記載する。
【表20】

【0182】
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【0193】
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Young, J.C.; Moarefi, I.及びHartl, U.の論文、(2001) 「Hsp90:特定されるが本質的タンパク質折り畳み道具(Hsp90: a specialized but essential protein folding tool)」J. Cell. Biol. 154:267-273.
【0194】
本出願にて参照される特許及び特許出願を含む全ての引用文献は、可能な最も広い範囲で引用により本明細書に組み込まれる。後続の本明細書及び特許請求の範囲を通じて、その文脈が他に必要としない限り、用語「含む(comprise)」、並びに「含む(comprises)」及び「含む(comprising)」などの変形は、規定の整数又は工程又は整数群を含むことを意図するが、いかなる他の整数もしくは工程又は整数群もしくは工程群の排除も意味しないことは理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物又はその医薬として許容し得る塩:
【化1】

(式中、R1は、H、OH、OMeを表し;
R2は、H又はMeを表し;
R3は、H又はCONH2を表し;
R4及びR5は両方ともHを表すか、又はこれらは一緒に結合を表す(すなわち、C4-C5は二重結合である)かのいずれかであり;.
R6は、H、F、OH、OMe、Br、Cl、CF3、CH3、SH、CH2CH3又はNR10aR11aを表し;
R7は、H、F、OH、OMe、Br、Cl、CF3、CH3、SH、CH2CH3又はNR10bR11bを表し;
R8は、H、F、OH、OMe、Br、Cl、CF3、CH3、SH、CH2CH3又はNR10cR11cを表し;
R9は、H、F、OH、OMe、Br、Cl、CF3、CH3、SH、CH2CH3又はNR10dR11dを表し;
R10a、R11a、R10b、R11b、R10c、R11c、R10d、R11dは独立にH、CH3又はCH2CH3を表し;
但し、しかしながら、
(a)R6及びR9がHを表し、次いでR7及びR8の両方ともがOHを表すわけではない;かつ
(b)R6、R8及びR9がHを表し、次いでR7がOH又はHを表さない;ことを条件とする。)。
【請求項2】
R9が水素を表す、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
R6、R7及びR8がそれぞれ水素を表す、請求項1又は2記載の化合物。
【請求項4】
R6、R7及びR8が独立に水素又はフッ素から選択されるが、それらは全てが水素を表すわけではない、請求項1又は2記載の化合物。
【請求項5】
R1がHを表す、請求項1〜4のいずれか1項記載の化合物。
【請求項6】
R1がOHを表す、請求項1〜4のいずれか1項記載の化合物。
【請求項7】
R2がHを表す、請求項1〜6のいずれか1項記載の化合物。
【請求項8】
R3がCONH2を表す、請求項1〜7のいずれか1項記載の化合物。
【請求項9】
R4及びR5が一緒に結合を表す、請求項1〜8のいずれか1項記載の化合物。
【請求項10】
R4及びR5がそれぞれ水素を表す、請求項1〜8のいずれか1項記載の化合物。
【請求項11】
R7がOHを表す、請求項1〜10のいずれか1項記載の化合物。
【請求項12】
R8がHを表す、請求項1〜11のいずれか1項記載の化合物。
【請求項13】
図12〜14に示される化合物22〜42のいずれか1項に定義される請求項1記載の化合物、又はそのいずれか1つの医薬として許容し得る塩。
【請求項14】
マクベシン類似体の製造方法であって:
a)好適な条件下で培養した場合に、マクベシン又はその類似体を生成する菌株を提供する工程;
b)AHBAでないスターターユニットを、前記菌株へ、該スターターユニットが前記マクベシン又はその類似体に取り込まれるように供給する工程;
c)前記菌株を、アンサマイシン又はその類似体の生成に適切な条件下で培養する工程;及び、
d)任意に、生成された化合物を単離する工程:
を含む、前記製造方法。
【請求項15】
前記工程(b)で供給されるスターターユニットが3-アミノ安息香酸ではない、請求項14記載の製造方法。
【請求項16】
前記工程(a)の菌株が、1種以上のAHBA生合成遺伝子が欠失又は不活化された菌株であることによって特徴づけられる、請求項14又は15記載の製造方法。
【請求項17】
前記工程(a)の菌株が、AHBA生合成の効率を低下させるように変異されている、請求項14又は15記載の製造方法。
【請求項18】
前記工程(c)の条件が、AHBA生合成の効率が次善であるような条件である、請求項14、15又は17記載の製造方法。
【請求項19】
AHBAが、前記菌株によって、それでもなお供給した非天然のスターターユニットの取り込みを可能にするレベルまで生成される、請求項18記載の製造方法。
【請求項20】
供給した非天然のスターターユニットの取り込み量が、スターターユニット取り込み全量の20%を上回る、好ましくは50%を上回る、請求項19記載の製造方法。
【請求項21】
前記スターターユニットが、
【化2】

から選択される(式中、R6、R7、R8及びR9は請求項1〜13のいずれか1項に定義したものである。);又は、該酸部分が誘導体化されているその類似体である、請求項14〜20のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項22】
R6、R7、R8及びR9の全てがHを表すわけではない、請求項21記載の製造方法。
【請求項23】
R6、R7、R8及びR9が、表13、14、15及び16の第2列に示されるスターター酸の構造によって定義される、請求項21記載の製造方法。
【請求項24】
前記菌株がマクベシン生成菌株であり、かつ前記スターターユニットが18,21-ジデスオキシマクベシン類似体を生成するように選択される、請求項14〜23のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項25】
前記スターターユニットは、前記菌株がフッ素で置換された18,21-ジデスオキシマクベシン類似体を生成するように選択される、請求項24記載の製造方法。
【請求項26】
前記菌株がマクベシン生成菌株であり、かつ前記スターターユニットは、該菌株がベンゼン環の18又は21位で置換されていないマクベシン類似体を生成するように選択されている、請求項14〜25のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項27】
請求項14〜26のいずれか1項記載の製造方法であって、(i)工程(d)の生成物を、化学修飾若しくは生体内変換のプロセスに供する工程と、次いで任意に結果的生成物を単離する工程とをさらに含む、又は(ii)工程(c)の生成物を、工程(d)の前に、化学修飾若しくは生体内変換のプロセスに供する工程をさらに含む、前記製造方法。
【請求項28】
18,21-ジデスオキシマクベシン類似体の製造方法であって:
a)任意に1種以上のポスト-PKS遺伝子が欠失若しくは不活化されており、かつ/又は1種以上のスターターユニット生合成遺伝子が欠失若しくは不活化されている好適な条件下で培養した場合に、マクベシンを生成する第1の宿主菌株を提供する工程;
b)非天然のスターターユニットを、前記菌株に供給する工程;
c)前記修飾宿主菌株を、18,21-ジデスオキシマクベシン類似体の生成に適切な条件下で培養する工程;及び、
d)任意に、生成された化合物を単離する工程:
を含む、前記製造方法。
【請求項29】
前記供給されるスターターユニットがスターター酸である、請求項14〜28のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項30】
請求項14〜29のいずれか1項記載の製造方法によって得られるマクベシン類似体。
【請求項31】
請求項1〜13若しくは30のいずれか1項記載のマクベシン類似体又はそれらの医薬として許容し得る塩を、1種以上の医薬として許容し得る希釈剤又は担体と共に含有する、医薬組成物。
【請求項32】
医薬品として使用するための、請求項1〜13若しくは30のいずれか1項記載のマクベシン類似体又はそれらの医薬として許容し得る塩。
【請求項33】
癌、B-細胞性悪性疾患、マラリア、真菌感染症、中枢神経系疾患及び神経変性疾患、血管新生依存性疾患、自己免疫疾患の治療、並びに/又は癌の予防的前処置のための医薬品の製造における、請求項1〜13若しくは30のいずれか1項記載のマクベシン類似体又はその医薬として許容し得る塩の使用。
【請求項34】
癌、B-細胞性悪性疾患、マラリア、真菌感染症、中枢神経系疾患及び神経変性疾患、血管新生依存性疾患、自己免疫疾患の治療、並びに/又は癌の予防的前処置のための医薬品として使用するための、請求項1〜13若しくは30のいずれか1項記載のマクベシン類似体又はその医薬として許容し得る塩。
【請求項35】
癌、B-細胞性悪性疾患、マラリア、真菌感染症、中枢神経系疾患及び神経変性疾患、血管新生依存性疾患、自己免疫疾患の治療、並びに/又は癌の予防的前処置の方法であって、それを必要とする患者に、請求項1〜13若しくは30のいずれか1項記載のマクベシン類似体又はその医薬として許容し得る塩の有効量を投与することを含む、前記方法。
【請求項36】
マクベシン類似体又はその医薬として許容し得る塩が、他の治療と組合せて投与される、請求項1〜13若しくは30〜35のいずれか1項記載のマクベシン類似体又はその医薬として許容し得る塩、組成物、使用又は方法。
【請求項37】
前記他の治療が、メトトレキセート、ロイコボリン、プレニゾン、ブレオマイシン、シクロホスファミド、5-フルオロウラシル、パクリタキセル、ドセタキセル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、ドキソルビシン、タモキシフェン、トレミフェン、酢酸メゲストロール、アナストロゾール、ゴセレリン、抗-HER2モノクローナル抗体(例えばハーセプチン(商標))、カペシタビン、塩酸ラロキシフェン、EGFR阻害剤、VEGF阻害剤、プロテアソーム阻害剤(例えばベルケード(商標))、放射線治療及び手術からなる群から選択される、請求項36記載のマクベシン類似体又はその医薬として許容し得る塩、組成物、使用又は方法。
【請求項38】
前記他の治療が、ブレオマイシン、カペシタビン、シスプラチン、シタラビン、シクロホスファミド、ドキソルビシン、5-フルオロウラシル、ゲムシタビン、ロイコボリン、メトトレキセート、ミトキサントン、パクリタキセル及びドセタキセルを含むタキサン類、ビンクリスチン、ビンブラスチン及びビノレルビン;ホルモン療法、アナストロゾール、ゴセレリン、酢酸メゲストロール、プレニゾン、タモキシフェン及びトレミフェン;モノクローナル抗体療法、例えばトラスツズマブ(抗-Her2)、セツキシマブ(抗-EGFR)及びベバシズマブ(抗-VEGF)など;並びに、プロテインキナーゼ阻害剤、例えばイマチニブ、ダサチニブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ、ラパチニブなど;テムシロリムス;プロテアソーム阻害剤、例えばボルテゾミブなど;ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、例えばボリノスタットなど;血管新生阻害剤、例えばスニチニブ、ソラフェニブ、レナリドマイドなど、放射線治療及び手術からなる群から選択される、請求項36記載のマクベシン類似体又はその医薬として許容し得る塩、組成物、使用又は方法。
【請求項39】
前記他の治療が、通常の化学療法薬、例えばシスプラチン、シタラビン、シクロヘキシルクロロエチルニトロソ尿素、シクロホスファミド、ゲムシタビン、イホスファミド、ロイコボリン、マイトマイシン、ミトキサントン、オキサリプラチン並びにタキソールを含むタキサン、及びビンデシンなど;ホルモン療法、例えばアナストロゾール、ゴセレリン、酢酸メゲストロール及びプレニゾンなど;モノクローナル抗体療法、例えばセツキシマブ(抗-EGFR)など;プロテインキナーゼ阻害剤、例えばダサチニブ、ラパチニブなど;ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、例えばボリノスタットなど;血管新生阻害剤、例えばスニチニブ、ソラフェニブ、レナリドマイドなど;mTOR阻害剤、例えばテムシロリムスなど;並びに、イマチニブからなる群から選択される、請求項36記載のマクベシン類似体又はその医薬として許容し得る塩、組成物、使用又は方法。
【請求項40】
請求項1〜13のいずれか1項記載のマクベシン類似体又はその医薬として許容し得る塩の製造方法であって:
a)適切な条件下で培養した場合に、マクベシン又はその類似体を生成する第一の宿主菌株を提供する工程;
b)前記菌株へ非天然のスターターユニットを供給する工程;
c)前記宿主菌株を、マクベシン類似体の生成に適した条件下で培養する工程;及び、
d)任意に、生成された化合物を単離する工程:
を含む、前記製造方法。
【請求項41】
更に、e)1種以上のスターターユニット生合成遺伝子、又はそれらの相同体を欠失又は不活化させる工程を含み、前記工程が通常、工程c)の前に行われる、請求項40記載の製造方法。
【請求項42】
更に、f)1種以上のポスト-PKS遺伝子を欠失又は不活化させる工程を含み、前記工程が通常、工程c)の前に行われる、請求項40又は41記載の製造方法。
【請求項43】
工程b)の非天然のスターターユニットが、置換された安息香酸(3-アミノ5-ヒドロキシ安息香酸ではない)である、請求項40〜42のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項44】
工程(a)において、前記菌株がマクベシン産生株である、請求項40〜43のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項45】
工程(a)において、前記菌株が、1種以上のスターターユニット生合成遺伝子が欠失又は不活化されているマクベシン産生株を基にして操作された菌株である、請求項40〜44のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項46】
工程(a)において、前記菌株が、1種以上のポスト-PKS遺伝子が欠失又は不活化されているマクベシン産生株を基にして操作された菌株である、請求項40〜45のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項47】
工程(a)において、前記菌株が、mbcM及び任意に更にポスト-PKS遺伝子が欠失又は不活化されているマクベシン産生株を基にして操作された菌株である、請求項46記載の製造方法。
【請求項48】
工程(a)において、前記菌株が、mbcMが欠失又は不活化されているマクベシン産生株を基にして操作された菌株である、請求項47記載の製造方法。
【請求項49】
工程(a)において、前記菌株が、mbcM、mbcMT1、mbcMT2、mbcP及びmbcP450が欠失又は不活化されているマクベシン産生株を基にして操作された菌株である、請求項48記載の製造方法。
【請求項50】
前記1種以上のスターターユニット生合成遺伝子が欠失又は不活化されているマクベシン産生株を基にして操作された菌株。
【請求項51】
AHk、Adh、Ahs、OX及びPHから選択される1種以上の遺伝子が欠失又は不活化されている、請求項50記載の菌株。
【請求項52】
mbcMが欠失又は不活化されていない、請求項50又は51記載の菌株。
【請求項53】
mbcM、mbcMT1、mbcMT2、mbcP及びmbcP450が欠失又は不活化されていない、請求項50又は51記載の菌株。
【請求項54】
mbcM、及び前記1種以上のスターターユニット生合成遺伝子、並びに任意にさらにポスト-PKS遺伝子が欠失しているマクベシン産生株を基にして操作された菌株。
【請求項55】
Ahsが欠失又は不活化されている、請求項54記載の操作された菌株。
【請求項56】
前記マクベシン産生株が、A.プレチオスム(A. pretiosum)又はA.ミルム(A. mirum)である、請求項50〜55のいずれか1項記載の菌株。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2010−509307(P2010−509307A)
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−535816(P2009−535816)
【出願日】平成19年11月9日(2007.11.9)
【国際出願番号】PCT/GB2007/050680
【国際公開番号】WO2008/056189
【国際公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(505012977)バイオチカ テクノロジー リミテッド (14)
【Fターム(参考)】