説明

ガンマおよび中性子放射線検出器

【課題】ガンマおよび中性子放射線検出器を提供すること。
【解決手段】ガンマ放射線によって励起される第1のシンチレータ(12)と、中性子放射線によって励起される第2のシンチレータ(14)を含む中性子検出層(16)とを含む、放射線によって励起される検出素子(10)または検出器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガンマ放射線/中性子放射線検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
テロリストの活動が増加したことにより、放射性の「汚い爆弾」および他の放射線源を検出できる実用的かつ高分解能のガンマおよび中性子放射線検出器に対する必要性が存在する。さらには、例えば、手持型放射性同位体同定装置(HHRIID)を含む手持型またはポータブル装置の需要が高い。性能に対する要求が高まったことにより、米国規格協会N42.33(第I種)および同N42.34などの規格も新たに規定されている。
【0003】
ガンマ放射線分光法に対する典型的な手法は、ヨウ化ナトリウム(NaI)、ヨウ化セシウム(CsI)、テルル化カドミウム亜鉛(CZT)、ビスマスゲルマネート(BGO)、または高純度(HP)ゲルマニウムを直接検出物質またはシンチレータ物質として利用するものである。ガンマ放射線および中性子放射線を同時に検出できる望ましい放射線検出器は、機能および同定性能の向上を実証すべきであり、すなわち、それは、不審な放射線が自然発生放射性物質(NORM)か、特殊核物質(SNM)か、医療用同位体か、工業用同位体か、またはそれらの組合せであるかどうかを区別できるべきであり、容易に配備できるべきであり、かつ総維持費が低水準であるべきである。
【0004】
同定性能の向上はエネルギー分解能に大きく依存しており、その点に関して高純度ゲルマニウム系検出器がほぼ理想的な特徴を有するであろう。しかし、この種の検出器における極低温冷却の必要性、および材料費は、機能、配備、および総維持費にかなりの影響を与える。NaI、CsI(Tl)もしくは(Na)、またはCZTのような他の物質による解決策は、エネルギー分解能が低いか、高価であるか、または十分に大きな体積(これも上述の要件および/またはHHIRIDに対する米国国土安全保障要件を満たす妨げになる)が得られないという欠点を有する。
【0005】
一般には、この問題は、ガンマ線および中性子成分を2つの別個の検出器物質に分離することによって対処されてきた。ガンマ線および中性子を同時に検出する既存の組合せのほとんどは、適切な同定ができず、容易に配備できず、かつ/または総維持費が高い物質の組合せを使用する。
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/0082484号(A1)公報
【特許文献2】PCT特許国際公開第01/60944号(A2)公報
【特許文献3】PCT特許国際公開第01/60945号(A2)公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、以上の問題点の少なくとも幾つかに対処する助けになる高分解能の組合せ中性子およびガンマ放射線検出器が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの実施形態は、ガンマ放射線によって励起される第1のシンチレータと、中性子放射線によって励起される第2のシンチレータを含む中性子検出層とを含む、放射線によって励起される検出素子を備える。
【0008】
また1つの実施形態は、ガンマ放射線を検出する第1のシンチレータおよび中性子放射線を検出する第2のシンチレータを含む放射線検出素子と、光検出器とを具備する、ガンマ線と中性子の両方を検出できる放射線検出器を備える。
【0009】
様々な例示的な実施形態に関する以下の説明は、いかなる点においても限定が意図されておらず、したがって限定であると考えるべきではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は、第1の一体型検出器の手法、すなわち、引き続いて以下に第2の手法の節で論じる分離された検出器を有する第2の手法に比較して、2つのシンチレータを光学結合する手法を代表する第1の実施形態を示す。
【0011】
第1の手法
図1に示す第1の手法の1つの変型では、2つのシンチレータ(12、14)の間を光学結合した単一の検出要素10および2物質方式を使用して、ガンマ放射線と中性子放射線とを同時に検出できる検出器の方法およびシステムを導入する。
【0012】
具体的には、図1に説明するガンマ線および中性子検出器は、2つの異なる発光シンチレータ物質(12、14)(1つはガンマ線検出用12であり、1つは中性子検出用14である)と、光検出器(光電子増倍管(PMT)18を参照)と、電子機器(図示せず)とを利用する。放射線がシンチレータと衝突するとき、光が放射されて光検出器によって検出される。
【0013】
電子機器は、光検出器からの電子信号を処理し、それによって所与の事象がガンマ線を示すものか、または中性子放射線を示すものかを特定する。ガンマ線の場合には、電子機器は、光検出器の中で発生した電荷量に基づいてガンマ線のエネルギーも測定する。シンチレータ(12、14)は、それらが異なる応答時間を有し、パルス波形分析に基づいてガンマ放射線と中性子放射線との間の弁別を可能にするように特定的に選択される。図1では、検出素子10は、特徴的な一次速度τを有してガンマ放射線を検出できる第1のLaX3:Ce(X=Cl、Br、I)シンチレータ物質12を含み得る。さらには、中性子検出複合層16が光電子増倍管(PMT)18に結合されている。中性子検出複合層16は、高度な中性子断面積を有する元素と、第1のシンチレータ12とは異なる一次速度τ’で閃光を放つように設計された第2のシンチレータ14とを含む。
【0014】
したがって、図1に示すように、このシステムは、特徴的な一次速度τを有してγ放射線を検出できる第1のシンチレータ12を含む2物質方式を用いる。中性子検出複合層14も含まれており、両方がPMT18に結合されている。中性子検出複合層14は、選択された特定の1つまたは複数の元素に関連する核反応と、特徴的な一次速度τ’を有する第2のシンチレータ14の分散とにしたがって、アルファ粒子を発生させるように選択されている高度な中性子断面積を有する元素によって形成される。このような中性子検出複合層14は入射するγ放射線に対して事実上透過性であり、この放射線は第1のシンチレータ12によって収集され、かつ同じPTM18(それ自体の特徴的な一次速度τを有する)によって検出される。この2物質方式は、単一の光検出器と電子機器とのパッケージによって、実績のあるパルス弁別方法を用いてシンチレータ間における一次速度の違い(τ≠τ’)を利用して、γ放射線と中性子放射線とを同時に検出する。この実施形態は、新規の類別の混合ランタンハロゲン化物LaX:Ce(X=Br、I)γシンチレータ物質の開発および最適化に助けられているが、その結果として、このような物質は、極低温による冷却を要する高純度ゲルマニウム(HP Ge)のような現在の技術と較べるとき、大幅に低いコストで高性能室温検出器を実現可能にする抜群のエネルギー分解能を有する。
【0015】
重要なことに、本実施形態は、抜群の物理的特性(高シンチレーション効率、高エネルギー分解能)を有し、かつ高純度ゲルマニウム(HP Ge)のような現在の検出技術と較べるとき、大幅に低いコストで高性能検出器を実現可能にする混合ランタンハロゲン化物を使用する。本実施形態は、極低温による冷却を行うことなく室温でも使用可能であり、ポータブルまたは手持型検出器には理想的なものになる。中性子検出複合層16は現在入手可能な物質を使用し、市販品のPMT18および電子部品から構成された光検出システムに組み込まれる。
【0016】
中性子検出
中性子放射線検出は、一般にヘリウム(He)または三フッ化ホウ素(BF)気体比例計数器などの実績のある技術を使用して行われる。気体系検出器は実装および感度の点で限定され、したがってHHRIIDのような応用例には実用的ではない。ここでは、図1に示されているように、γ放射線検出に使用するものと同じ光検出器と電子機器とのパッケージを使用して、検出および弁別が可能な異なる方式が提案されている。中性子の捕獲およびそれに続く検出は、第1のγシンチレータ12と検出器キャップとの間に組み付けられた中性子感受性複合層16の使用によって実現される。前述のように、この層16は、核反応の結果として高エネルギー粒子を発生させ、かつ入射するγ放射線に対して事実上透過性であり得る、高度な中性子断面積を有する1つまたは複数の元素を含むように選択される。さらには、中性子検出複合層16は、得られる高エネルギーアルファ粒子を捕獲し、かつそれらのエネルギーをPMT18によって検出される発光現象に変換する第2のシンチレータ物質14を含む。第2のシンチレータ14は、低密度であるべきであり、PMTの敏感な範囲(300〜500ナノメートル)で発光すべきであり、La(Cl、Br、I)の発光を励起すべきでもなく、またLa(Cl、Br、I)の発光によって励起されるべきでもなく、しかも第1のγシンチレータ12の一次速度とは十分に異なる一次速度を有すべきである。適切なシステムは、Li+nH+α(4.8メガ電子ボルト)という反応を利用する市販のLiF/ZnS:Ag複合物であり、80μs崩壊時間を有する450ナノメートルの発光が得られる(崩壊時間図20も参照されたい)。
【0017】
第2の方式
第2の方式は2つのシンチレータ(12、14)の分離を含むが、それらの光学結合を含むことはなく、それは検出器を相互から効果的に分離するものである。この方式は、2つのシンチレータが必要な検出システムにおいて、一方のシンチレータからのシンチレーション光子が他方のシンチレータの中に光学吸収されることによって生じる問題を回避するための方法および幾何学配置を説明する。光学吸収に関して予想される問題は、2つのシンチレータを相互に光学結合させる必要性を排除することによって回避される。企図されている実施形態の幾つかでは、信号を単一の光検出器(これも光子を第2のシンチレータから直接受け取る)に搬送する波長シフトファイバにシンチレータの一方を結合することによって、またはフォトダイオードなどの第2の光検出素子を組み込むことによって検出を実現することができる。
【0018】
この第2の方式は、2つのシンチレータの発光および吸収スペクトルに対する要件を大幅に軽減し、それによってそれぞれの機能(ガンマ線検出および中性子検出)に使用できることが見込まれるシンチレータの数を増やす利点を有する。
【0019】
この方式は、2つのシンチレータ(12、14)を使用し、これらのシンチレータを光学結合するか、または検出素子10全体の中で組み合わせてガンマ放射線と中性子放射線の両方の検出を実現する図1に示した第1の方式とは異なる。2つのシンチレータは、相互に光学結合され、かつ光検出要素18に光学結合される。このような(第1の)方式は、シンチレータのどちらか一方が他方のシンチレータからの発光の波長域内で光学吸収性を有する場合には性能上の制約を受ける恐れがある。これが起きると、シンチレータの一方または両方からのシンチレーション光子が吸収されることによって、検出される光子の数が減少し、かつそれぞれの事象(ガンマ線または中性子の吸収)に対して検出される光子の数が、シンチレータ内部における放射線の相互作用位置により大きく依存するようになる恐れがある。さらには、検出されるシンチレーション光子の数が減少すると、信号対雑音比が減少して、エネルギー分解能(ガンマ線に関して)が損なわれ、したがってガンマ放射線と中性子放射線との間の弁別能力を低下させることになる。相互作用位置の関数としての検出信号のばらつきが増大すると、検出器(ガンマ線に関する)のエネルギー分解能も損なわれることになり、したがって弁別機能が損なわれる恐れがある。したがって、上で論じたように、第1の方式は非常に有効に機能するが、適切なシンチレータを使用する必要がある。
【0020】
したがって、第2の方式は、新規の設計概念を使用して、2つのシンチレータ間の光学結合の必要性を克服するものである。
【0021】
設計上の変更に関する2つの一般的な類別は下に次のように説明される。すなわち、1)波長シフトファイバを使用してシンチレータの一方を光検出器に結合し、他方では第2のシンチレータを光検出器に直接結合するか、または2)フォトダイオードなどの第2の光検出器を使用して第2のシンチレータを読み取る。
【0022】
2つの設計類別(類別1および類別2)関する変更点を以下に説明する。
【0023】
類別1
図2および3の実施形態で最初に示すように、類別1の設計では、一方のシンチレータ(この場合では第1のシンチレータ12)が光検出器(例えば、光電子増倍管(PMT)18)に直接に結合され、シンチレータ12の残りの表面が適切な反射物質22(光収集効率の向上のために)によって被覆されている。第2のシンチレータ14は、この場合には径方向に配置され、(少なくとも1つの表面上で)波長シフトファイバ24に結合される(残りの表面は適切な反射体物質によって被覆されている)。第2のシンチレータ14から放射された光学光子は、波長シフトファイバ24によって吸収される。次いで、このエネルギーがファイバ内部でより長い波長で再放射される(波長シフトは吸収および再放射過程の自然な結果であり、波長の変化は本発明に関する必要条件ではないことに留意されたい)。再放射された光子のごく一部はファイバの開口数の範囲内で放射され、これらの光子はファイバによって光検出器に案内される。この設計の幾つかの可能な実施形態が下で詳細に説明する図に示されている。
【0024】
図3は、シンチレータ間の光学結合を排除する設計の1つの実施例である。これは「類別1」設計である。第1のシンチレータ12はガンマ線シンチレータ(この場合ではLaX3:Ce)であり、光検出器(PMT18として示す)に直接結合される。中性子シンチレータ[この場合ではZnS(Ag)−LiF]である第2のシンチレータ14からの放射は波長シフトファイバ24(交互配置らせんの多重ファイバ)の中に吸収され、次いで、再放射光子が光検出器に案内される。別法として、中性子検出シンチレータからの光がファイバの中へ散乱され、ファイバの中をある一定の距離だけ伝搬され、ファイバの中に吸収され、さらに再放射されて光検出器に案内される。交互配置らせん以外のファイバの他の幾何学配置、すなわち、当業者なら理解するような光を光検出器に案内するファイバの他の幾何学配置も使用可能である。
【0025】
図4は、入射中性子を検出前に熱化するために減速体26を具備する設計(「類別1」)の1つの実施例である。第1のシンチレータ12(この場合ではLaX3:Ce)の1つの表面は、低エネルギーのガンマ線がそれほど減衰することなく検出可能であるように、減速体26によって被覆されずに残されている。減速体は本開示におけるいずれの設計にも使用可能である。
【0026】
図5は、図1の設計(「類別1」)の1つの変型である。この場合では、らせん状に構成される単一の波長シフトファイバ24が使用されている。
【0027】
図6は、第2のシンチレータ14が検出器要素10全体の放射線進入端に配置されており、これは波長シフトファイバ24を使用する設計(「類別1」)に対する別の変型である。
【0028】
図7は、波長シフトファイバを使用する設計(「類別1」)に対する別の変型であり、波長シフトファイバがZnS(Ag)LiFの表面上にジグザグに配置され、両端がPMT18に結合されている。
【0029】
図8は、図7における設計(「類別1」)に対する1つの変型である。この場合では、多重波長シフトファイバ24が使用される。合計光路長を短縮し(多重ファイバの使用によって)、かつファイバ中の窮屈な曲がりをいずれも排除することによって、光子を中性子シンチレータすなわち検出層16[この場合ではZnS(Ag)−LiF]から光検出器(この場合ではPMT18)まで移送する効率が向上する。
【0030】
これらの図では、LaX:Ceがガンマ線シンチレータ12として使用され、ZnS(Ag)−LiFが中性子シンチレータ14として使用されている。しかし、これらの選択は、同じ設計が広範なシンチレータ物質と共に使用可能であるので、実施例としてのみ使用されている。波長シフトファイバは顕著な光学吸収性を有する傾向があるために、多重ファイバを使用する設計は、一般的に、(シンチレータと波長シフトファイバとの間の固定結合域に関して)ファイバ中の合計光路長を最小化するので好ましい。類別1の設計は、図9に示すように、両方のシンチレータを相互から光学的に隔離し(適切な反射物質によって)、光検出器に直接結合される設計も包含し得る。
【0031】
別の実施例では、ガンマ放射線によって励起される第1のシンチレータは、Ce3+励起組成物、CsLnO(Cl、Br、I)(Ln=希土類、Y、La)、NaBaLaBr、BaGdCl、(Cs、Rb)BaBr;エルパソライト類物質を構成するもの、LnCl−LnBr−LnI固溶体(Ln=LaおよびY)、CeCl−CeBr−CeI固溶体、ALnX:Ce3+(A=K、Rb、Cs;Ln=La、Y;X=Cl、Br、I)類物質;MCl−MBr固溶体(M=Ca、Sr、Br)、およびABX(A=Cs、Rb、K;B=Ca、Sr、Ba、Mg、Cd;X=Cl、Br、I)から成る群から選択可能である。
【0032】
別の実施例では、第2のシンチレータは、濃縮リチウム含有物質、例えば、LiI、LiYSiO4、LiBaF3、およびLi系ガラスを含み得る。第2のシンチレータは、リチウム含有物質も含み得る。第2のシンチレータはホウケイ酸ガラスも含み得る。
【0033】
波長シフトファイバを使用する設計は、比較的乏しい光学特性を有する中性子シンチレータの使用を可能にする。すべての設計は、中性子を検出前に熱化するための中性子減速体(パラフィンまたはポリエチレンのような)を追加することが大抵の場合に有益である(熱中性子は、ほとんどの物質において、速い中性子よりも大幅に高度な相互作用断面積を有する)。
【0034】
すべての図および説明では、中性子シンチレータは、検出器の外側にあり、かつ波長シフトファイバによって(波長シフトファイバを使用する設計では)光検出器に結合されることが想定されていた。これらの想定は、下で列挙する幾つかの理由のためになされたものである。
【0035】
1.ほとんど場合において、ガンマ線減衰長は大抵の場合に中性子減衰長よりも大幅に長いので、ガンマ線シンチレータは、中性子シンチレータよりも大きな体積が必要である。したがって、ガンマ線シンチレータの外側に結合された薄い層として、中性子シンチレータを作製することが好都合である。
【0036】
2.ガンマ線は比較的長い減衰長を有するので、それらのほとんどは、中性子シンチレータの中で相互作用することなく、それを通過することになる。したがって、中性子シンチレータを外側層として含んでも、大幅なガンマ線減衰につながることはない。
【0037】
3.中性子シンチレータの中に蓄積されるエネルギー(リチウム反応が使用されるとき4.8メガ電子ボルト)は、ガンマ線シンチレータの中に蓄積されるエネルギーに較べて大きい。したがって、波長シフトファイバによってガンマ線シンチレータを光検出器に結合する場合よりも、波長シフトファイバを介して中性子シンチレータを光検出器に結合するときの方が、ほとんどの場合に適切な信号対雑音比を実現することができる。また、ガンマ線シンチレータでは、十分なエネルギー分解能を有することが望ましいが、中性子シンチレータでは、十分なエネルギー分解能を必要としない。したがって、中性子検出過程の方が、光輸送システムにおける損失の許容量が大きい。
【0038】
上の議論にもかかわらず、本開示は、波長シフトファイバを介してガンマ線シンチレータを光検出器に結合する設計ばかりでなく、2つのシンチレータの幾何学配置を変更する設計も包含するものである。
【0039】
類別2
類別2:この類別の設計では、2つのシンチレータが使用され(1つは中性子検出用であり、1つはガンマ線検出用である)、かつ2つの別個の光検出器が使用される。それぞれのシンチレータは1つの光検出器に直接結合され、それぞれのシンチレータの残りの表面は反射物質によって被覆される(光収集効率を高めるために)。このような2つの設計が図10および11に示されている。図10に示す設計はフォトダイオード28が具備されていることを示すが、このフォトダイオードは、中性子シンチレータを読み取るために使用され、検出器全体の外表面上に配置され、低エネルギー(約25キロ電子ボルト未満)のガンマ線用の直接変換検出器としてフォトダイオード28を追加的に使用する可能性を提供する。パルス波形弁別を使用すると、ダイオードの中に吸収されたガンマ線からの直接変換事象が、中性子シンチレータにおける中性子相互作用からの信号から弁別可能になる。フォトダイオードの使用を示す実施形態が図12および13にさらに示されている。
【0040】
上の説明では、光検出器には、(限定するものではないが)光電子増倍管、フォトダイオード、アバランシェフォトダイオード、およびガイガーモードダイオードが含まれ得る。
【0041】
この第2の方式は、新規の設計概念を用いることによって、2つのシンチレータ間を光学結合する必要を克服する。この方式は次の利点を提供する。
【0042】
1.2つのシンチレータが光学結合されていないので、一方のシンチレータにおける放射と他方のシンチレータにおける吸収との間の相互作用を考慮することなく、シンチレータ物質を選択することができる。これはシンチレータ物質の選択を簡素化し、かつ2つのシンチレータが光学結合されていなければ効果的ではないような組合せを可能にする。それはさらに、2つのシンチレータが区別可能な崩壊時間を有するという制約を排除する。
【0043】
2.中性子をガンマ線から弁別するための電子的ハードウェアおよびソフトウェアの簡素化。この方式では、中性子およびガンマ線事象は、2つのシンチレータ物質間の崩壊時間の違いによるのではなく、どの光検出器が光子信号を受信するかによって区別可能である。これは、ケース1における単一の光検出器で発生した単一信号のより精巧な時間領域分析に対する必要性を排除する。
【0044】
検出器の外表面上にフォトダイオードまたはアバランシェフォトダイオード(APD)を使用する設計(図7に示した設計のような)では、この方式は、フォトダイオードまたはAPDにおける直接変換によって、低エネルギーガンマ線(約25キロ電子ボルト未満)を高いエネルギー分解能で検出する追加的な利点を有する。
【0045】
この第2の方式は、2つのシンチレータが光学結合される設計に較べて、ガンマ線シンチレータ内部における光収集の均一性を最大化することによって、ガンマ線を検出するためのエネルギー分解能を向上させることができる。中性子検出層の中で発生した光がガンマ線シンチレータの中で相互作用する必要性を排除すると、ガンマ線シンチレータをさらに柔軟に設計することが可能になり、それは、ガンマ線シンチレータ放射波長においてより均一でかつより低い光学吸収性を有する物質の選択幅を最大化する。これによって、より高い光収集均一性およびより高いエネルギー分解能が得られる。
【0046】
本明細書で以上に説明されかつ/または特許請求の範囲に請求されている方法および装置を好ましい実施形態および図面に関連して説明してきたが、以上に説明されかつ/または本明細書の特許請求の範囲で請求されている方法および装置の同じ機能を実施するために、特許請求の範囲から逸脱することなく、他の同様な実施形態を使用することが可能であるし、または説明した実施形態に対する変更および追加も可能であることを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】第1の一体型検出器方式、すなわち、2つのシンチレータを光学結合する方式を代表する第1の実施形態を示す斜視図である。
【図2】波長シフトファイバを有する別の実施形態を示す斜視図である。
【図3】2つのシンチレータが光結合されていない設計の1つの実施例を示す図である。
【図4】中性子を検出前に熱化するために減速体が使用される設計の1つの実施例を示す図である。
【図5】単一の波長シフトファイバが使用される設計の1つの実施例を示す図である。
【図6】波長シフトファイバを有する別の実施形態を示す斜視図である。
【図7】波長シフトファイバを使用する別の変型を示す図である。
【図8】多重波長シフトファイバが使用される設計の1つの実施例を示す図である。
【図9】波長シフトファイバを具備しない1つの実施例を示す図である。
【図10】シンチレータ間の光学結合を排除する設計の1つの実施例を示す図である。
【図11】シンチレータ間の光学結合を排除する設計の1つの実施例を示す図である。
【図12】波長シフトファイバと、検出器の放射線進入側に配置された第2の光検出器とを具備しない別の実施形態を示す斜視図である。
【図13】波長シフトファイバと、2つのシンチレータ間に配置された第2の光検出器とを具備しない別の実施形態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0048】
10 検出素子
12 第1のシンチレータ
14 第2のシンチレータ
16 中性子検出層
18 光電子増倍管
20 崩壊時間図
22 反射体
24 波長シフトファイバ
26 中性子減速体
28 フォトダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線によって励起される検出素子(10)であって、
ガンマ放射線よって励起される第1のシンチレータ(12)と、
中性子放射線によって励起される第2のシンチレータ(14)を含む中性子検出層(16)と
を含む検出素子。
【請求項2】
ガンマ放射線よって励起される前記第1のシンチレータ(12)はCe3+励起[La(Cl、Br、I)]を含む、請求項1記載の検出素子(10)。
【請求項3】
ガンマ放射線よって励起される前記第1のシンチレータ(12)はランタンハロゲン化物系物質を含む、請求項1記載の検出素子(10)。
【請求項4】
前記ランタンハロゲン化物系物質はセリウムドープランタンハロゲン化物である、請求項3記載の検出素子(10)。
【請求項5】
前記第2のシンチレータ(14)はZnS(Ag)−LiFを含む、請求項1記載の検出素子(10)。
【請求項6】
前記第2のシンチレータ(14)はZnS(Ag)−LiFを含み、前記第1のシンチレータ(12)はセリウムドープランタンハロゲン化物を含む、請求項1記載の検出素子(10)。
【請求項7】
ガンマ線と中性子の両方を検出できる放射線検出器であって、
ガンマ放射線を検出する第1のシンチレータ(12)および中性子を検出する第2のシンチレータ(14)を含む放射線検出素子(10)と、
光検出器と
を備える放射線検出器。
【請求項8】
前記第1のシンチレータ(12)はランタンハロゲン化物系物質である、請求項7記載の放射線検出器。
【請求項9】
前記第2のシンチレータ(14)は300〜500ナノメートルの範囲内の光を放射する、請求項7記載の放射線検出器。
【請求項10】
前記第2のシンチレータ(14)は、前記第1のシンチレータ(12)を励起しないように構成され、かつ前記第1のシンチレータ(12)によっても励起されない、請求項7記載の放射線検出器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−24875(P2007−24875A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−175215(P2006−175215)
【出願日】平成18年6月26日(2006.6.26)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】