説明

キナーゼ阻害剤としての二座化合物

本発明は、一般構造Aを有する化合物またはその薬学的に許容される塩を提供する:Het-L-P(A)式中、HetはATPを模倣する複素環式構造を含む芳香族部分であり、Pはドッキング部位由来ペプチドまたはドッキング部位ペプチド模倣物質であり、かつLはATP模倣物質をドッキング部位ペプチド部分に連結する連結部分である。一般構造Aを有する化合物は、キナーゼJNK、ErkおよびP38などのキナーゼの阻害剤として役立ちうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景
発明の分野
本発明は、一般にはキナーゼの阻害のために有用な化合物、より具体的にはキナーゼ阻害剤として有用な二座化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
背景情報
タンパク質キナーゼは、タンパク質の特定の残基のリン酸化を触媒する酵素ファミリーで、リン酸化されるアミノ酸に基づきチロシンまたはセリン/トレオニンキナーゼに広く分類しうる。この共有結合による翻訳後修飾は正常な細胞間連絡およびホメオスタシスの維持の中心的要素である。
【0003】
キナーゼの誤調節、調節不全、および突然変異を、癌、糖尿病、眼疾患および他の徴候を含む様々な障害に結びつける一連の証拠がある。不適切なキナーゼ活性は、前述および他の疾患に関係している細胞増殖、細胞分化、生存、アポトーシス、有糸分裂誘発、細胞周期制御、および細胞運動性に関連する様々な生物学的細胞応答を誘発する。
【0004】
したがって、C-Jun N末端キナーゼ(JNK)などのキナーゼを阻害することは、キナーゼに関連する様々な疾患、障害および病状を治療する1つの方法である。以前、特定のキナーゼの阻害剤として有用でありえ、タンパク質のATP結合部位を標的にする、いくつかの化合物が同定され、合成されている。
【0005】
そうすることが可能ないくつかのJNK相互作用ペプチド(JIP)およびJIP模倣物質が以前に記載されているが、基質または足場タンパク質のドッキング部位(JIP部位)およびATP結合部位へのJNKキナーゼの結合を同時に標的とし、かつ阻害することができる化合物は報告されたことがない。
【発明の概要】
【0006】
概要
現在、腫瘍などの様々な疾患、障害および病状を治療するための強力かつ選択的な物質を同定すること、ならびにそのような物質を含む薬学的組成物が必要とされている。そのような物質は、JNKキナーゼなどの特定のキナーゼの阻害を基礎としうる。
【0007】
加えて、JNKを阻害しうる少数のJNK相互作用ペプチド(JIP)およびJIP模倣物質も記載されている。これらのJIP模倣物質は特異的であるが、親和性はあまり高くない傾向にある。本発明において、基質または足場タンパク質のドッキング部位(JIP部位)およびATP部位の両方に結合することによりJNKキナーゼを標的とし、阻害することができる化合物を初めて記載する。したがって、これらの化合物は強力かつ特異的である。
【0008】
本発明の態様に従い、一般構造Aを有する化合物またはその薬学的に許容される塩が提供される:
Het-L-P (A)
式中、Hetは複素環式構造を含む芳香族部分であり、Pはペプチドまたはポリペプチドを含むペプチド部分であり、かつLは芳香族部分をペプチド部分に連結する連結部分である。
【0009】
本発明のいくつかの態様において、上に示した一般構造Aを有する化合物中、芳香族部分Hetはインダゾールの誘導体を含む複素環式構造を含む。例えば、芳香族部分Hetは下記のインダゾールを基本とする部分を含む:

式中、Rは芳香族置換基であり、R1は、水素、または直鎖アルキル、分枝アルキル、およびハロゲンからなる群より選択される置換基であり、かつHet部分は芳香族置換基Rを介して連結部分に接続されている。
【0010】
本発明のいくつかの態様に従い、式I〜VIIIを有する化合物が提供され、それぞれ、化合物I〜VIIは配列番号:1から7を含み、かつ化合物VIIIは配列番号:1を含む:




【0011】
本発明の他の態様に従い、癌、糖尿病、および神経障害などの様々な障害、疾患、および病状を治療するための薬学的組成物であって、一般構造Aを有する化合物、および薬学的に許容される担体を含む組成物が提供される。
【0012】
本発明の他の態様に従い、癌、糖尿病、および神経障害などの様々な障害、疾患、および病状の治療法であって、一般構造Aを有する化合物を含む薬学的組成物の薬理学的に有効な用量をそれを必要としている対象に投与する段階を含む方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1Aは、ペプチドAc-RPTTLNLGG-OH(配列番号:1)によるキナーゼ阻害を例示し、この例示は比較のために提供するものである。図1Bは、本発明の化合物によるキナーゼ阻害を例示する。図1Cは、本発明の化合物とは異なる化合物によるキナーゼ阻害を例示し、この例示は比較のために提供するものである。図1Dは、本発明の化合物によるキナーゼ阻害を例示する。
【図2A】本発明の化合物のATP競合分析に関するデータを提供する。
【図2B】本発明の化合物のATP競合分析に関するさらなるデータを提供する。
【図2C】本発明の化合物のATF2競合分析に関するデータを提供する。
【図2D】本発明の化合物のATF2競合分析に関するさらなるデータを提供する。
【図3】図3Aは、本発明の化合物のp38に対する選択性に関するデータを提供する。図3Bは、本発明の別の化合物のp38に対する選択性に関するデータを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
詳細な説明
「アルキル」なる用語は、明記した数の炭素原子を有する、置換または無置換C1〜C10直鎖飽和脂肪族炭化水素基、置換および無置換C2〜C10直鎖不飽和脂肪族炭化水素基、置換および無置換C4〜C10分枝飽和脂肪族炭化水素基、置換および無置換C4〜C10分枝不飽和脂肪族炭化水素基、置換および無置換C3〜C8環式飽和脂肪族炭化水素基、置換および無置換C5〜C8環式不飽和脂肪族炭化水素基を意味する。例えば、「アルキル」の定義は下記を含むことになるが、それらに限定されるわけではない:メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペネンチル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、イソプロピル、イソブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、イソペンチル、ネオペンチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、シクロオクテニル、メチルシクロプロピル、エチルシクロヘキセニル、ブテニルシクロペンチル、アダマンチル、ノルボニルなど。
【0015】
アルキル置換基は、ハロゲン、-OH、-SH、-NH2、-CN、-NO2、=O、=CH2、トリハロメチル、カルバモイル、アリールC0-10アルキル、ヘテロアリールC0-10アルキル、C1-10アルキルオキシ、アリールC0-10アルキルオキシ、C1-10アルキルチオ、アリールC0-10アルキルチオ、C1-10アルキルアミノ、アリールC0-10アルキルアミノ、N-アリール-N-C0-10アルキルアミノ、C1-10アルキルカルボニル、アリールC0-10アルキルカルボニル、C1-10アルキルカルボキシ、アリールC0-10アルキルカルボキシ、C1-10アルキルカルボニルアミノ、 アリールC0-10アルキルカルボニルアミノ、テトラヒドロフリル、モルホリニル、ピペラジニル、ヒドロキシピロニル、-C0-10アルキルCOORaおよび-C0-10アルキルCONRbRcからなる群より独立に選択され、ここでRa、RbおよびRcは水素、アルキル、アリールから独立に選択されるか、またはRbおよびRcはそれらが結合している窒素と一緒になって、3から8個の炭素原子を含み、少なくとも1つの置換基を有する飽和環式もしくは不飽和環式系を形成する。
【0016】
「アリール」なる用語は、安定な共有結合を形成可能な任意の環の位置で共有結合した、無置換、一、二または三置換単環式、多環式、ビアリール芳香族基を意味し、特定の好ましい結合点は当業者には明白である(例えば、3-フェニル、4-ナフチルなど)。アリール置換基は、ハロゲン、-OH、-SH、-CN、-NO2、トリハロメチル、ヒドロキシピロニル、C1-10アルキル、アリールC0-10アルキル、C0-10アルキルオキシC0-10アルキル、アリールC0-10アルキルオキシC0-10アルキル、C0-10アルキルチオC0-10アルキル、アリールC0-10アルキルチオC0-10アルキル、C0-10アルキルアミノC0-10アルキル、アリールC0-10アルキルアミノC0-10アルキル、N-アリール-N-C0-10アルキルアミノC0-10アルキル、C1-10アルキルカルボニルC0-10アルキル、アリールC0-10アルキルカルボニルC0-10アルキル、C1-10アルキルカルボキシC0-10アルキル、アリールC0-10アルキルカルボキシC0-10アルキル、C1-10アルキルカルボニルアミノC0-10アルキル、アリールC0-10アルキルカルボニルアミノC0-10アルキル、-C0-10アルキルCOORa、および-C0-10アルキルCONRbRcからなる群より独立に選択され、ここでRa、RbおよびRcは水素、アルキル、アリールから独立に選択されるか、またはRbおよびRcはそれらが結合している窒素と一緒になって、3から8個の炭素原子を含み、少なくとも1つの置換基を有する飽和環式もしくは不飽和環式系を形成する。
【0017】
「アリール」の定義は、フェニル、ビフェニル、ナフチル、ジヒドロナフチル、テトラヒドロナフチル、インデニル、インダニル、アズレニル、アントリル、フェナントリル、フルオレニル、ピレニルなどの特定の基を含むが、それらに限定されるわけではない。
【0018】
「ヘテロアリール」、「複素環」または「複素環式」なる用語は、環内に1から8個の炭素原子および窒素、硫黄または酸素から選択される1から4個のヘテロ原子を有し、単環または縮合(condensed)(「縮合(fused)」としても公知)多環を有する、一価不飽和基を意味する。本発明におけるヘテロアリール基は、下記からなる群より選択される1つから3つの置換基で置換されていてもよい:ハロゲン、-OH、-SH、-CN、-NO2、トリハロメチル、ヒドロキシピロニル、C1-10アルキル、アリールC0-10アルキル、C0-10アルキルオキシC0-10アルキル、アリールC0-10アルキルオキシC0-10アルキル、C0-10アルキルチオC0-10アルキル、アリールC0-10アルキルチオC0-10アルキル、C0-10アルキルアミノC0-10アルキル、アリールC0-10アルキルアミノC0-10アルキル、N-アリール-N-C0-10アルキルアミノC0-10アルキル、C1-10アルキルカルボニルC0-10アルキル、アリールC0-10アルキルカルボニルC0-10アルキル、C1-10アルキルカルボキシC0-10アルキル、アリールC0-10アルキルカルボキシC0-10アルキル、C1-10アルキルカルボニルアミノC0-10アルキル、アリールC0-10アルキルカルボニルアミノC0-10アルキル、-C0-10アルキルCOORa、および-C0-10アルキルCONRbRc、ここでRa、RbおよびRcは水素、アルキル、アリールから独立に選択されるか、またはRbおよびRcはそれらが結合している窒素と一緒になって、3から8個の炭素原子を含み、少なくとも1つの置換基を有する飽和環式もしくは不飽和環式系を形成する。
【0019】
「ヘテロアリール」の定義は、チエニル、ベンゾチエニル、イソベンゾチエニル、2,3-ジヒドロベンゾチエニル、フリル、ピラニル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、2,3-ジヒドロベンゾフラニル、ピロリル、ピロリル-2,5-ジオン、3-ピロリニル、インドリル、イソインドリル、3H-インドリル、インドリニル、インドリジニル、インダゾリル、フタルイミジル(またはイソインドリ-1,3-ジオン)、イミダゾリル、2H-イミダゾリニル、ベンズイミダゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピラダジニル、ピリミジニル、トリアジニル、キノリル、イソキノリル、4H-キノリジニル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、キノキサリニル、1,8-ナフチリジニル、プテリジニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、クロマニル、ベンゾジオキソリル、ピペロニル、プリニル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、ベンズチアゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、ベンゾキサゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、ピロリジニル-2,5-ジオン、イミダゾリジニル-2,4-ジオン、2-チオキソ-イミダゾリジニル-4-オン、イミダゾリジニル-2,4-ジチオン、チアゾリジニル-2,4-ジオン、4-チオキソ-チアゾリジニル-2-オン、ピペラジニル-2,5-ジオン、テトラヒドロ-ピリダジニル-3,6-ジオン、1,2-ジヒドロ-[1,2,4,5]テトラジニル-3,6-ジオン、[1,2,4,5]テトラジナニル-3,6-ジオン、ジヒドロ-ピリミジニル-2,4-ジオン、ピリミジニル-2,4,6-トリオンなどの特定の基を含むが、それらに限定されるわけではない。
【0020】
「インダゾール」なる用語は、下記の式を有する二環式ヘテロアリールを意味する

【0021】
「ハロゲン」、「ハロゲン化物」または「ハロ」なる用語は、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素を意味する。
【0022】
「ペプチド」および「ポリペプチド」なる用語は、複数のアミノ酸によって生成される分子鎖を意味し、これらは1つの酸のアミノ基ともう1つの酸のカルボキシル基との縮合によって生成される。
【0023】
ペプチド部分に関連する「誘導体」なる用語は、化合物の1つまたは複数の反応基が置換基で誘導体化されているペプチドの形を意味する。
【0024】
ペプチド部分に関連する「類縁体」なる用語は、機能活性のために必要な化学構造を保持し、さらに親ペプチドとは異なる特定の化学構造も含む化合物を意味する。
【0025】
「キナーゼ」なる用語は、リン酸基のタンパク質残基への付加を触媒する任意の酵素を意味し;例えば、セリンおよびトレオニンキナーゼはリン酸基のセリンおよびトレオニン残基への付加を触媒する。
【0026】
「JNKキナーゼ」なる用語は、c-Junにその転写活性化ドメイン内のSer63およびSer73で結合してリン酸化するキナーゼであり、かつサイトカイン紫外線照射、熱ショック、および浸透圧ショックなどのストレス刺激に反応性で、T細胞の分化およびアポトーシスに関与する、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼである、C-Jun N末端キナーゼとしても公知のJNKを意味する。
【0027】
化合物に関連する「模倣物質」なる用語は、機能活性のために必要な化合物の化学構造が、その化合物またはペプチドの配座を模倣する他の化学構造で置換されている化合物を意味する。
【0028】
「試料」または「生体試料」なる用語は、本発明によって提供される方法に適した任意の試料を意味する。一つの態様において、本発明の生体試料は組織試料、例えば、針生検からの試料などの生検検体である。他の態様において、本発明の生体試料は体液、例えば、血清、血漿、尿、および射精液の試料である。
【0029】
化合物の「有効量」なる用語は、所望の効果を提供する、化合物の非毒性であるが十分な量を意味する。この量は、対象の種、年齢、および身体状態、治療中の疾患の重症度、用いる特定の化合物、その投与様式などに依存して、対象ごとに変動しうる。したがって、正確な「有効量」を一般化することは難しいが、それでも当業者であれば適当な有効量をもとめうる。
【0030】
「薬学的に許容される」なる用語は、生物学的またはそれ以外に有害でない、化合物、添加物または組成物を意味する。例えば、いかなる望まれない生物効果も起こすことなく、またはそれが含まれる薬学的組成物の任意の他の成分と望まれない様式で相互作用することなく、添加物または組成物を対象に本発明の化合物と共に投与しうる。
【0031】
「薬学的に許容される塩」なる用語には、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、フッ化水素酸塩、硫酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、ニコチン酸塩、コハク酸塩、シュウ酸塩、リン酸塩、マロン酸塩、サリチル酸塩、フェニル酢酸塩、ステアリン酸塩、ピリジン塩、アンモニウム塩、ピペラジン塩、ジエチルアミン塩、ニコチンアミド塩、ギ酸塩、尿素塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩、リチウム塩、桂皮酸塩、メチルアミノ塩、メタンスルホン酸塩、ピクリン酸塩、酒石酸塩、トリエチルアミノ塩、ジメチルアミノ塩、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩などが含まれる。さらなる薬学的に許容される塩は当業者には公知である。
【0032】
本明細書において用いられる「患者」なる用語は、本発明の方法によって治療する生物を意味する。そのような生物には、ヒトが含まれるが、それらに限定されるわけではない。本発明の文脈において、「対象」なる用語は一般に、疾患、障害または病状の治療のために治療を受ける、または治療を受けた個体を意味する。
【0033】
本明細書において用いられる「癌」なる用語は、癌腫、肉腫が含まれるが、それらに限定されるわけではない、任意の悪性腫瘍を含む。癌は無制御および/または異常な細胞の分裂から生じ、これらは次いで周囲の組織に浸潤し、破壊する。本明細書において用いられる「増殖する」および「増殖」とは、有糸分裂を起こしている細胞を意味する。本明細書において用いられる「転移」とは、悪性腫瘍の起始部位から遠隔への伝播を意味する。癌細胞は血流を通じて、リンパ系を通じて、体腔を通過して、またはその任意の組み合わせにより転移しうる。
【0034】
本明細書において用いられる「癌性細胞」なる用語は、本明細書において提示する癌性状態の任意の1つに冒されている細胞を含む。したがって、本発明の方法は、メラニン細胞、グリア、前立腺肥大、および多嚢胞腎の良性過成長の治療を含む。「癌腫」なる用語は、周囲の組織に浸潤し、転移を生じる傾向にある上皮細胞からなる悪性の新しい成長を意味する。
【0035】
「改善する」または「治療する」なる用語は、癌などの疾患に関連する臨床徴候および/または症状が、行った行動の結果として低減されることを意味する。
【0036】
本発明の態様に従い、一般構造Aを有する化合物またはその薬学的に許容される塩が提供される:
Het-L-P (A)
式中、Hetは複素環式構造を含む芳香族部分であり、Pはペプチドまたはポリペプチドを含むペプチド部分であり、かつLは芳香族部分をペプチド部分に連結する連結部分である。
【0037】
いくつかの態様において、芳香族部分Hetは下記の部分を含むインダゾールの誘導体を含む:

式中、Rは芳香族置換基、例えば、無置換または置換フェニレン基であり、R1は、水素、または直鎖アルキル、分枝アルキル、およびハロゲンからなる群より選択される置換基であり、かつHet部分は芳香族置換基Rを介して連結部分に接続されている。
【0038】
本発明のいくつかの態様において、一般構造Aの化合物中、連結部分Lはジアミド構造であり、すなわち連結部分Lは炭化水素架橋で接続された2つの末端アミド基を含み、下記の構造を有する、

式中、架橋は2つから8つの連続して配置されたメチレン基を含みうる。他の態様において、用いうる連結部分Lの例には-(CH2)n-、-O-(CH2)n-O-、-(CH2)-フェニレン-、-NHSO2-(CH2)n-CONH-、および-CONH-(CH2)n-CONH-なる構造が含まれ、ここでnは2から8の値を有する整数である。
【0039】
上に示した一般構造Aを有する化合物はペプチド部分Pを含む。化合物をキナーゼと接触させると、ペプチド部分Pはキナーゼドッキング部位に結合することができる。当業者であれば、どのような特定のペプチドを化合物A中で用いうるかを決めることができる。そのように用いうるいくつかの特定のペプチドの典型的な非限定例には、Xaa(0-8)LNLGGXaa(0-8)(配列番号:8)、Xaa(0-8)LNLXaa(0-8)(配列番号:9)、RPTTLNLGG(配列番号:1)、PTTLNLGG(配列番号:2)、LNLGG(配列番号:3)、RPTTLNL(配列番号:4)、PTTLNL(配列番号:10)、もしくはLNLのいずれかのL光学異性体(望まれる場合には、任意にN-ミリストイル化されうる)、またはそれらの小分子模倣物質、GGLNLTTPR(配列番号:11)、GGLNLTTP(配列番号:12)、GGLNL(配列番号:13)、LNLTTPR(配列番号:14)、LNLTTP(配列番号:15)、もしくはLNLのいずれかのD光学異性体(望まれる場合には、任意にC-ミリストイル化されうる)、またはそれらの小分子模倣物質が含まれる。ペプチド部分は1つまたは複数のアミノ酸誘導体、類縁体、模倣物質、または非天然アミノ酸を含んでいてもよい。
【0040】
ペプチド誘導体の例には、アミノ酸側鎖、ペプチド主鎖、またはアミノ末端もしくはカルボキシ末端が誘導体化されているペプチドが含まれる。天然ペプチドの類縁体の例は、1つまたは複数の非天然アミノ酸を含むペプチドである。
【0041】
本発明の範囲内であり、一般構造Aによって記載される、いくつかの特定の化合物の例には化合物I〜VIIIが含まれる:




【0042】
上の式から明白であるとおり、化合物I〜VIIIはそれぞれ、ベンズアミドとそれぞれのペプチド、すなわちペプチドRPTTLNLGG(配列番号:1)、PTTLNLGG(配列番号:2)、LNLGG(配列番号:3)、またはRPTTLNL(配列番号:4)との結合生成物である、付加物であり;例えば、化合物I〜IIIについては、ベンズアミドはN-(アミノプロピル)-4-(1-H-インダゾル-3-イル)ベンズアミドである。
【0043】
本発明の別の局面において、本化合物を癌の治療法の一部として用いることができる。いくつかの場合には、癌の治療には固形腫瘍の治療または転移の治療が含まれることもある。転移は、形質転換または悪性細胞が1つの部位から別の部位へと移動して、癌を伝播している癌の形である。そのような癌には、皮膚、乳房、脳、子宮頸、精巣などの癌が含まれる。特に、癌には下記の臓器または系が含まれるが、それらに限定されるわけではない:噴門、肺、胃腸、尿生殖路、肝臓、骨、神経系、婦人科領域、血液、皮膚、および副腎。特に、本明細書における方法は、神経膠腫(シュワン細胞種、神経膠芽腫、星状細胞腫)、神経芽細胞腫、クロム親和細胞種、傍神経節腫、髄膜腫、副腎皮質癌、腎臓癌、様々な型の血管癌、骨芽細胞性骨癌、前立腺癌、卵巣癌、子宮平滑筋腫、唾液腺癌、脈絡叢癌、乳癌、膵臓癌、結腸癌、および巨核芽球性白血病を治療するために用いることができる。皮膚癌には、悪性黒色腫、基底細胞癌、扁平上皮癌、カポジ肉腫、異形成性母斑(moles dysplastic nevi)、脂肪腫、血管腫、皮膚線維腫、ケロイド、および乾癬が含まれる。したがって、本発明の化合物で治療しうる例示的癌には、脳、尿生殖路、リンパ系、胃、喉頭および肺の癌が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0044】
別の局面において、化合物は、例えば、JNK、p38、ERK、SRC、またはJAKなどのキナーゼの抑制、活性の減弱、および/または阻害が望ましいと思われる疾患の治療において有用である。これらには、糖尿病(I型およびII型の両方)、脳虚血および卒中、神経障害性疼痛、神経障害および神経変性、肝損傷、ウイルス感染の治療、肺虚血/再灌流損傷、音響外傷、黄斑変性、網膜血管新生、糖尿病性網膜症、癌、および炎症が含まれるが、それらに限定されるわけではない。さらに、本発明に記載の化合物は膵島b細胞の臨床移植において有用でありうる。
【0045】
したがって、本発明は、対象の癌の治療法を提供する。そのような方法は、個体または細胞に、本発明の化合物の治療上有効な量を投与する段階を含む。一般に、対象はヒトであるが、当業者であれば理解するであろうとおり、対象は動物であってもよい。したがって、齧歯類(マウス、ラット、ハムスターおよびモルモットを含む)、ネコ、イヌ、ウサギ;ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ブタなどを含む家畜、および霊長類(サル、チンパンジー、オランウータンおよびゴリラを含む)などの哺乳動物を含む他の動物も、対象の定義の範囲内に含まれる。しかし、この方法は鳥類の種(例えば、ニワトリ)などの他の種においても実施することができる。
【0046】
別の局面において、本発明は、本発明の化合物により対象の腫瘍を改善または治療する方法を提供する。モニターすべき徴候または症状は特定の癌または黒色腫に特徴的であり、徴候および状態をモニターする方法と同様、熟練した医師には周知であろう。例えば、熟練した医師は、腫瘍のサイズまたは成長速度を、特定の腫瘍のために典型的に用いられる画像診断法を用いて(例えば、腫瘍をモニターするための超音波または磁気共鳴画像(MRI)を用いて)モニターしうることを知っているであろう。
【0047】
したがって、本発明の方法は、対象の癌細胞の特徴に基づいて治療を対象に合わせて調整する、個人化した医療を実施する手段を提供するために有用である。一つの態様において、方法は、対象からの細胞の試料を本発明の化合物の少なくとも1つと接触させ、JNKとL-JIPペプチドとの間の結合を置換する化合物の能力を測定することにより、実施することができる。別の態様において、方法は、対象からの細胞の試料を少なくとも1つの本発明の化合物と接触させ、基質のJNK仲介性リン酸化を阻害する化合物の能力を測定することにより、実施することができる。さらに別の態様において、方法は、化合物の選択性を示し、癌の治療において有用であると同定するために、関連するキナーゼ、例えば、p38に対して化合物を試験する段階をさらに含むこともできる。
【0048】
本発明の方法に従って検査する細胞の試料は、治療する対象から得ることもでき、または対象のものと同じ型の樹立癌細胞株の細胞であってもよい。一つの局面において、樹立癌細胞株はそのような細胞株群の1つでありえ、ここでこの群は同じ型の癌の異なる細胞株および/または異なる癌の異なる細胞株を含みうる。そのような細胞株群は、例えば、治療する対象から少数の癌細胞しか得られない場合に本発明の方法を実施するのに有用でありえ、したがって対象の癌の代理試料を提供し、また本発明を実施する際の対照試料として含めるのにも有用でありうる。
【0049】
本発明における使用のために好ましい細胞型には、動物(マウス、ラット、ハムスターおよびアレチネズミを含む齧歯類)、霊長類、およびヒトの細胞を含む哺乳動物細胞、特に乳房、皮膚、肺、子宮頸、精巣、結腸直腸、白血病、脳などを含むすべての型の癌細胞が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0050】
いったん疾患が確立され、治療プロトコルが開始されれば、本発明の方法を定期的に繰り返して、対象におけるJNKとL-JIPペプチドとの間の結合の置換および/またはJNK仲介性リン酸化の阻害が始まるかどうかを評価して、健常な対象のものに近づけてもよい。連続検定から得た結果を用いて、数日から数ヶ月の範囲の期間にわたる治療の有効性を示してもよい。したがって、本発明は、癌を有する対象を治療するための治療法をモニターする方法も目的とする。JNKとL-JIPペプチドとの間の結合の置換および/またはJNK仲介性リン酸化の阻害のレベルを治療前と治療中とで比較することにより、治療法の有効性が示される。したがって、当業者であれば必要に応じて治療アプローチを理解し、調節することができるであろう。
【0051】
したがって、特定の化合物I〜VIIIを含む、構造Aを有する化合物、またはその薬学的に許容される塩を、例えば、これらの化合物を薬学的に許容される担体と混合することにより薬学的組成物を調製するために用いることができる。次いで、薬学的組成物を、癌、糖尿病(糖尿病性網膜症を含む)、神経障害、血管形成が関係する疾患(例えば、眼疾患)、および網膜血管新生などの様々な障害、疾患、および病状の治療のための薬理学的に有効な用量で用いることができる。
【0052】
癌の治療のために薬学的組成物を用いる場合、そのように治療しうる癌の種類には、例えば、脳、尿生殖路、リンパ系(例えば、組織球性リンパ腫)、胃、喉頭、肺(例えば、肺腺癌または小細胞肺癌)の癌、膵臓癌、神経膠芽腫、乳癌(breast cancer)(例えば、乳癌(breast carcinoma))、結腸直腸癌、および前立腺癌が含まれる。
【0053】
特定の化合物I〜VIIIを含む、構造Aを有する生成物を製造するために、様々な合成スキームを設計することができる。本発明を例示するためであるが、限定するわけではなく、一つの態様において、化合物Iを調製するために、本出願の以下の「実施例」部分に示す反応スキーム(A)を用いることができる。望まれる場合には、当業者であれば他の合成法を設計することもできる。
【0054】
本発明の化合物の薬学的に許容される塩は、当技術分野において周知の標準的方法を用いて、例えば、アミンなどの十分に塩基性の化合物を適当な酸と反応させて生理的に許容されるアニオンを生じることにより得てもよい。カルボン酸のアルカリ金属(例えば、ナトリウム、カリウムまたはリチウム)塩またはアルカリ土類金属(例えば、カルシウム)塩を調製することもできる。
【0055】
亜属I〜VIIIを含む、前述の化合物Aは、薬学的組成物として製剤し、ヒト患者などの哺乳動物ホストに、選択した投与経路、例えば、経口、または静脈内、腹腔内、筋肉内、局所もしくは皮下経路による非経口に適合させた様々な剤形で投与することができる。
【0056】
したがって、本発明の化合物は、不活性希釈剤または同化可能な食用担体などの薬学的に許容される媒体との組み合わせで、全身投与、例えば、経口投与してもよい。本発明の化合物はゼラチン硬もしくは軟カプセルに封入してもよく、圧縮して錠剤としてもよく、または患者の食事の食物と共に直接取り込んでもよい。治療的経口投与のために、活性化合物を1つまたは複数の賦形剤と混合し、摂取可能な錠剤、口腔錠、トローチ、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、カシェ剤などの剤形で用いてもよい。そのような組成物および製剤は少なくとも0.1%の活性化合物を含むべきである。組成物および製剤のパーセンテージは、当然のことながら変動することもあり、好都合には所与の単位投与剤形の重量の約2から約60%の間でありうる。そのような治療上有用な組成物中の活性化合物の量は、有効な用量レベルが得られるようなものである。
【0057】
錠剤、トローチ、丸剤、カプセル剤などは下記を含んでいてもよい:トラガカントゴム、アカシア、トウモロコシデンプンまたはゼラチンなどの結合剤;リン酸2カルシウムなどの賦形剤;トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、アルギン酸などの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤;およびショ糖、果糖、乳糖もしくはアスパルテームなどの甘味料またはペパーミント、冬緑油、もしくはサクランボ香料などの着香剤を加えてもよい。単位投与剤形がカプセル剤である場合、前述の型の材料に加えて、植物油またはポリエチレングリコールなどの液体担体を含んでいてもよい。様々な他の材料も、コーティングとして、またはそうではなく固体単位投与剤形の物理的形状を改変するために存在してもよい。例えば、錠剤、丸剤、またはカプセル剤をゼラチン、ワックス、シェラックまたは糖などでコーティングしてもよい。シロップ剤またはエリキシル剤は、活性化合物、甘味料としてのショ糖または果糖、保存剤としてのメチルおよびプロピルパラベン、色素ならびにサクランボまたはオレンジ香料などの着香剤を含みうる。当然のことながら、任意の単位投与剤形を調製する際に用いる任意の材料は薬学的に許容され、用いる量で実質的に非毒性であるべきである。加えて、活性化合物を徐放性製剤および装置に組み込んでもよい。
【0058】
活性化合物は、注入または注射により静脈内または腹腔内投与してもよい。活性化合物またはその塩の溶液を水中で、任意に非毒性界面活性剤と混合して調製することができる。分散剤も、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、トリアセチン、およびその混合物中、ならびに油中で調製することができる。通常の保存および使用条件下で、これらの製剤は微生物の成長を防ぐために保存剤を含む。
【0059】
注射または注入に適した薬学的剤形には、任意にリポソーム中にカプセル封入された、無菌注射用または注入用液剤または分散剤の即時製剤のために適合させた、活性成分を含む無菌水性液剤もしくは分散剤または無菌散剤が含まれうる。すべての場合に、最終剤形は製造および保存の条件下で、無菌、流動性かつ安定であるべきである。液体担体または媒体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、植物油、非毒性グリセリルエステル、およびその適当な混合物を含む溶媒または液体分散媒でありうる。適当な流動性を、例えば、リポソームの形成により、分散剤の場合には要求される粒径の維持により、または界面活性剤の使用により、維持することができる。微生物の作用の防止は、様々な抗菌および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサルなどによって行うことができる。多くの場合に、等張剤、例えば、糖、緩衝剤または塩化ナトリウムを含むことが好ましいであろう。注射用組成物の吸収延長は、組成物中の吸収を遅延させる物質、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンの使用によって行うことができる。
【0060】
無菌注射用液剤は、適当な溶媒中の必要な量の活性化合物を上に列挙した様々な他の成分と共に組み込み、続いて必要に応じてろ過滅菌することにより調製する。無菌注射用液剤の調製用の無菌粉末の場合、好ましい調製法は真空乾燥および凍結乾燥技術で、これは事前に無菌ろ過した溶液中に存在する活性成分および任意の追加の所望の成分の粉末を生じる。
【0061】
局所投与のために、本発明の化合物を、それらが液体の場合には、純粋な形で適用してもよい。しかし、本発明の化合物は一般には、固体または液体でありうる、皮膚科的に許容される担体との組み合わせで、組成物または製剤として皮膚に投与することが望ましいであろう。
【0062】
有用な固体担体には、タルク、クレー、微結晶セルロース、シリカ、アルミナなどの微粒子固体が含まれる。有用な液体担体には、水、アルコールもしくはグリコールまたは水-アルコール/グリコール混合物が含まれ、この中に本発明の化合物を、任意に非毒性界面活性剤を利用して、有効なレベルで溶解または分散することができる。芳香剤および追加の抗菌剤などの補助剤を加えて、所与の使用のために特性を最適化することもできる。得られる液体組成物を、包帯および他のドレッシングを含浸させるために用いる吸収パッドから適用するか、またはポンプ型もしくはエアロゾル噴霧器を用いて患部に噴霧することができる。
【0063】
合成ポリマー、脂肪酸、脂肪酸塩およびエステル、脂肪アルコール、加工セルロースまたは加工ミネラル材料などの増粘剤を液体担体と共に用いて、使用者の皮膚に直接適用するための、塗布可能なペースト、ゲル、軟膏、セッケンなどを生成することもできる。
【0064】
種I〜VIIIを含む、化合物Aの有用な用量は、それらのインビトロ活性、および動物モデルにおけるインビボ活性を比較することにより決定することができる。マウスおよび他の動物における有効な用量の、ヒトに対する外挿の方法は、例えば、米国特許第4,938,949号に記載の方法によって誘導されうる当業者には公知である。
【0065】
一般に、ローションなどの液体組成物中の、種I〜VIIIを含む、化合物Aの濃度は、約0.5から10質量%などの約0.1から25質量%の間でありうる。ゲルまたは散剤などの半固体または固体組成物中の濃度は、約0.5から2.5質量%などの約0.1から25質量%の間でありうる。
【0066】
治療において用いるのに必要とされる、種I〜VIIIを含む、化合物A、またはその活性塩もしくは誘導体の量は、選択する特定の塩のみならず、投与経路、治療中の状態の特性ならびに患者の年齢および状態によっても変動することになり、最終的には主治医または臨床医の自由裁量となる。
【0067】
しかし、一般には、適当な用量は約0.5〜100mg/kgの範囲、例えば、約15〜60mg/kg/日などの、1日に体重1kgあたり約10〜75mgでありうる。種I〜VIIIを含む、化合物Aは、単位投与剤形で都合よく投与することができ;例えば、単位投与剤形1つあたり10から750mgなどの5から1000mg、例えば、50から500mgの活性成分を含む。所望の用量は1回用量で、または適当な間隔で投与する分割用量として、例えば、1日に2、3、4、またはそれ以上の下位用量として、都合よく提示してもよい。下位用量自体をさらに、例えば、別々の粗く間隔を取った数回の投与に分割してもよい。
【0068】
任意に、本発明の組成物をそれを必要としている患者に、他の治療上有益な薬剤との組み合わせで投与することもできる。そのような追加の治療上有益な薬剤には、エストロゲン受容体調節剤、アンドロゲン受容体調節剤、レチノイド受容体調節剤、細胞毒性剤、抗増殖剤、プレニルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、HMG-CoAレダクターゼ阻害剤、HIVプロテアーゼ阻害剤、逆転写酵素阻害剤、血管形成阻害剤、またはPPAR-ガンマアゴニストが含まれうる。
【0069】
追加の血管形成阻害剤を本発明の組成物との組み合わせで用いる場合、そのように用いることができる特定の血管形成阻害剤の例には、チロシンキナーゼ阻害剤、上皮由来成長因子の阻害剤、線維芽細胞由来成長因子の阻害剤、血小板由来成長因子の阻害剤、MMP阻害剤、インテグリン遮断剤、インターフェロン-アルファ、インターロイキン-12、ポリ硫酸ペントサン、シクロオキシゲナーゼ阻害剤、カルボキシアミドトリアゾール、コンブレタスタチンA-4、スクアラミン、6-O-(クロロアセチル-カルボニル)-フマギロール、サリドマイド、アンギオスタチン、トロポニン-1、またはVEGFに対する抗体が含まれる。
【0070】
加えて、任意に、本発明の組成物をそれを必要としている患者に、ステロイド性抗炎症化合物または降圧化合物との組み合わせで投与することもできる。
【0071】
実施例
以下の実施例はさらなる例示を意図しているが、本発明の範囲を限定するものではない。
【0072】
実施例1. 化合物Iの合成
上に示す配列番号:1を含む化合物Iを、反応スキーム(A)に従って合成した。

【0073】
実施例2. 本発明の化合物の特性
本発明の化合物を、Delfia検定およびキナーゼ検定を用いて試験し、IC50についてのデータを得た。結果を表1(両方の検定)および2(キナーゼ検定のみ)に示す。比較のために、本発明のいかなる化合物にも結合していない様々なペプチドのデータを表1に示す。
【0074】
(表1)化合物を用いた阻害に関する比較結果



*)ND:Delfia検定において、100μMまで置換なし;キナーゼ検定において、25μMで活性なし。
【0075】
表2. 本発明の化合物を用いての阻害に関する比較結果


【0076】
図1A〜1D、2A〜2D、3A、および3Bは、本発明の態様をさらに例示している。図1Aおよび1Bは、ペプチドAc-RPTTLNLGG-OH(配列番号:1)(図1A)および本発明の化合物I(図1B)のDelfia検定で得られたキナーゼ阻害を例示している。図1Cおよび1Dは、生成物8(図1C)および本発明の化合物I(図1D)のDelfia検定で得られたキナーゼ阻害を例示している。図より明らかであるとおり、化合物Iは両方の比較において阻害剤として実質的により活性である。
【0077】
図2Aおよび2Bは、化合物IのATP競合分析に関するデータを示し、図2Cおよび2Dは、化合物IのATF2競合分析に関するデータを示している。これらのデータは、化合物Iが両方の実験において、少なくともある程度までは競合的であることを示している。図3Aおよび3Bは、化合物I(図3A)および化合物IV(図3B)がいずれもp38aに対して良好な選択性を有することをさらに示している。
【0078】
本発明を前述の実施例に関して記載してきたが、改変および変更も本発明の精神および範囲内に含まれることが理解されるであろう。したがって、本発明は以下の特許請求の範囲によってのみ限定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般構造Aを有する化合物またはその薬学的に許容される塩:
Het-L-P (A)
式中、Hetは複素環式構造を含む芳香族部分であり、Pはペプチドまたはポリペプチドを含むペプチド部分であり、かつLは芳香族部分をペプチド部分に連結する連結部分である。
【請求項2】
芳香族部分がインダゾールの誘導体を含む、請求項1記載の化合物。
【請求項3】

であり、式中、Rは芳香族置換基であり、R1は、水素、または直鎖アルキル、分枝アルキル、およびハロゲンからなる群より選択される置換基であり、かつHet部分は芳香族置換基Rを介して連結部分に接続されている、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
芳香族置換基Rがフェニレン基を含む、請求項3記載の化合物。
【請求項5】
ペプチド部分がキナーゼドッキング部位に結合する、請求項1記載の化合物。
【請求項6】
キナーゼがJNK、p38、ERK、SRC、およびJAKからなる群より選択される、請求項5記載の化合物。
【請求項7】
キナーゼがJNKである、請求項6記載の化合物。
【請求項8】
ペプチドがXaa(0-8)LNLGGXaa(0-8)(配列番号:8)およびXaa(0-8)LNLXaa(0-8)(配列番号:9)からなる群より選択される、請求項7記載の化合物。
【請求項9】
ペプチドが、RPTTLNLGG(配列番号:1)、PTTLNLGG(配列番号:2)、LNLGG(配列番号:3)、RPTTLNL(配列番号:4)、PTTLNL(配列番号:10)、LNL、およびそれらの小分子模倣物質からなる群より選択される任意のペプチドのL光学異性体を含む、請求項7記載の化合物。
【請求項10】
ペプチドがN-ミリストイル化されている、請求項9記載の化合物。
【請求項11】
ペプチドが、GGLNLTTPR(配列番号:11)、GGLNLTTP(配列番号:12)、GGLNL(配列番号:13)、LNLTTPR(配列番号:14)、LNLTTP(配列番号:15)、LNL、およびそれらの小分子模倣物質からなる群より選択される任意のペプチドのD光学異性体を含む、請求項7記載の化合物。
【請求項12】
ペプチドがC-ミリストイル化されている、請求項11記載の化合物。
【請求項13】
連結部分が、炭化水素架橋で接続された2つの末端アミド基を含む、請求項1記載の化合物。
【請求項14】
炭化水素架橋が、2つから8つの間の連続して配置されたメチレン基を含む、請求項8記載の化合物。
【請求項15】
連結部分が、一般構造II:

を有する部分、-(CH2)n-、-O-(CH2)n-O-、-(CH2)-フェニレン-、-NHSO2-(CH2)n-CONH-、および-CONH-(CH2)n-CONH-からなる群より選択され、nが2から8の値を有する整数である、請求項1記載の化合物。
【請求項16】
化合物I〜VIIIからなる群より選択され、それぞれ化合物I〜VIIが配列番号:1から7を含み、かつ化合物VIIIが配列番号:1を含む、請求項1記載の化合物:




【請求項17】
請求項1〜16のいずれか一項記載の化合物およびそれらの薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物。
【請求項18】
(1)エストロゲン受容体調節剤、
(2)アンドロゲン受容体調節剤、
(3)レチノイド受容体調節剤、
(4)細胞毒性剤、
(5)抗増殖剤、
(6)プレニルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、
(7)HMG-CoAレダクターゼ阻害剤、
(8)HIVプロテアーゼ阻害剤、
(9)逆転写酵素阻害剤、
(10)別の血管形成阻害剤、および
(11)PPAR-ガンマアゴニスト
からなる群より選択される追加の化合物をさらに含む、請求項17記載の組成物。
【請求項19】
追加の化合物が、チロシンキナーゼ阻害剤、上皮由来成長因子の阻害剤、線維芽細胞由来成長因子の阻害剤、血小板由来成長因子の阻害剤、MMP阻害剤、インテグリン遮断剤、インターフェロン-アルファ、インターロイキン-12、ポリ硫酸ペントサン、シクロオキシゲナーゼ阻害剤、カルボキシアミドトリアゾール、コンブレタスタチンA-4、スクアラミン、6-O-(クロロアセチル-カルボニル)-フマギロール、サリドマイド、アンギオスタチン、トロポニン-1、およびVEGFに対する抗体からなる群より選択される血管形成阻害剤である、請求項18記載の組成物。
【請求項20】
追加の化合物がタモキシフェンおよびラロキシフェンからなる群より選択されるエストロゲン受容体調節剤である、請求項18記載の組成物。
【請求項21】
ステロイド性抗炎症化合物をさらに含む、請求項18記載の組成物。
【請求項22】
降圧化合物をさらに含む、請求項18記載の組成物。
【請求項23】
請求項17記載の組成物の治療上有効な量を哺乳動物に投与する段階を含む、そのような治療を必要としている哺乳動物の癌の治療法。
【請求項24】
癌が脳、尿生殖路、リンパ系、胃、喉頭および肺の癌から選択される、請求項23記載の方法。
【請求項25】
請求項17記載の組成物の治療上有効な量を哺乳動物に投与する段階を含む、そのような治療を必要としている哺乳動物の癌の治療法であって、癌が組織球性リンパ腫、肺腺癌、膵臓癌、神経膠芽腫、結腸直腸癌、前立腺癌、および乳癌から選択される、方法。
【請求項26】
血管形成が関係する疾患の治療法であって、請求項17記載の組成物の治療上有効な量を哺乳動物に投与する段階を含む、方法。
【請求項27】
網膜血管新生の治療法であって、請求項17記載の組成物の治療上有効な量を対象に投与する段階を含む、方法。
【請求項28】
糖尿病性網膜症の治療法であって、請求項17記載の組成物の治療上有効な量を対象に投与する段階を含む、方法。
【請求項29】
障害、疾患、または病状の治療法であって、請求項17記載の薬学的組成物の薬理学的に有効な用量をそれを必要としている対象に投与し、それにより障害、疾患、または病状を治療する段階を含む、方法。
【請求項30】
請求項1記載の化合物がJNKキナーゼの阻害剤である、請求項29記載の方法。
【請求項31】
包装材料および該包装材料内に含まれる請求項17記載の薬学的組成物を含むキットであって、包装材料が、該組成物を、それを必要としている対象の障害、疾患、または病状を治療するために用いうることを示すラベルを含む、キット。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−535245(P2010−535245A)
【公表日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−520203(P2010−520203)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際出願番号】PCT/US2008/071835
【国際公開番号】WO2009/018490
【国際公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(510027043)バーンハム インスティテュート フォー メディカル リサーチ (6)
【Fターム(参考)】