説明

キャパシタ型蓄電池

【課題】静電容量が高く、長時間放置後も充放電効率の高い薄膜キャパシタ型蓄電池を提供する。
【解決手段】本発明のキャパシタ型蓄電池は、複数個の第1導電粒子又は第1半導体粒子が互いに接触して形成してなる第1粒子層と、絶縁膜と、をこの順に積層し、更に前記絶縁膜の上に、互いに平行して形成された第1導電路及び第2導電路を有する。そして、前記複数個の第1導電粒子又は第1半導体粒子は、平面面積による粒度分布において平面面積の大きい側から累積15%を除いたものであり、且つ最大幅が100nm未満である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャパシタ型蓄電池に関し、特に、静電容量が高く、長時間放置後も充放電効率の高い薄膜キャパシタ型蓄電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の蓄電池は、電解質を用いるものが大半である(例えば、許文献1参照。)。しかし、電解質を用いた蓄電池では充電に時間を要し、また電解質の劣化が生じるため寿命が短いという課題を有していた。また、高出力電圧を実現するためには、複数の蓄電池を直列に接続する必要があった。
【0003】
このような電解質を用いた蓄電池に対して、キャパシタを蓄電池として使用した場合、充電時間が短く、寿命が長く、かつ高出力電圧が実現される。しかし、キャパシタを蓄電池として使用する場合、電荷保持いわゆる蓄電性能を維持した上で、その単位体積あたりの容量を大きくする必要がある。
【0004】
このような状況の下、単位体積あたりの容量が大きい電送線型キャパシタ型の蓄電池が発明されている(例えば、特許文献2参照。)。この蓄電池では、単体の耐電圧として100V以上が得られ、電圧・あるいは電流が印加されている状態では、100V以上の電位まで大きな容量で蓄電される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−059955号公報
【特許文献2】国際公開第09/116668号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述の特許文献2に記載のキャパシタ型蓄電池では、電荷保持性能が不充分であり、電圧・あるいは電流の印加を切ると自然放電が起こり急激な電圧降下が生じて、電位は数十ボルトに低下、つまり蓄電量が低下してしまうことが明らかとなった。
そこで本発明は、単位体積あたりの容量が大きく、且つ電圧や電流の印加を切っても、電位の降下の少ない、電荷保持性能の高い薄膜キャパシタ型の蓄電池を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を鑑み、鋭意研究を行った結果、複数個の第1導電粒子又は第1半導体粒子が互いに接触して形成してなる第1粒子層を設け、この粒子の粒度分布を特定のものとして最大幅を特定の範囲内とすることで、静電容量が高く、長時間放置後も充放電効率の高い薄膜キャパシタ型蓄電池が得られることを見出した。
【0008】
すなわち、上記課題を解決するための手段は以下の通りである。
本発明の第一の形態のキャパシタ型蓄電池は、複数個の第1導電粒子又は第1半導体粒子が互いに接触して形成してなる第1粒子層と、前記第1粒子層の一方の面上に第1絶縁膜と、前記第1粒子層の他方の面上に第2絶縁膜と、前記第1絶縁膜上で長尺方向に延在する第1導電路と、前記第2絶縁膜上で長尺方向に延在し、前記第1導電路に平行に設けられた第2導電路と、を有し、前記複数個の第1導電粒子又は第1半導体粒子は、平面面積による粒度分布において平面面積の大きい側から累積15%を除いたものであり、且つ最大幅が100nm未満である。
【0009】
第一の形態のキャパシタ型蓄電池は、第1絶縁膜と第2絶縁膜の比誘電率が異なることが好ましい。
【0010】
また、本発明の第二の形態のキャパシタ型蓄電池は、複数個の第1導電粒子又は第1半導体粒子が互いに接触して形成してなる第1粒子層と、第1絶縁膜と、を積層する第1積層膜と、前記第1積層膜の第1絶縁膜上で該第1積層膜の長尺方向に延在する第1導電路と、前記第1積層膜の第1絶縁膜上で該第1積層膜の長尺方向に延在し、前記第1導電路に平行に設けられた第2導電路と、を有し、前記複数個の第1導電粒子又は第1半導体粒子は、平面面積による粒度分布において平面面積の大きい側から累積15%を除いたものであり、且つ最大幅が100nm未満である。
【0011】
本発明の第二の形態のキャパシタ型蓄電池では、更に、前記第1導電路及び前記第2導電路の外面上に連続して設けられた第2絶縁膜と、該第2絶縁膜の外面上に複数個の第2導電粒子又は第2半導体粒子が互いに接触して形成してなる第2粒子層とを備えてもよく、このとき、前記複数個の第2導電粒子又は第2半導体粒子は、平面面積による粒度分布において平面面積の大きい側から累積15%を除いたものであり、且つ最大幅が100nm未満である。
更に、第二の形態のキャパシタ型蓄電池では、前記第1粒子層の外面上に、第1導電膜又は第1半導体膜からなる第1基材を、前記第2粒子層の外面上に、第2導電膜又は第2半導体膜からなる第2基材を、それぞれ備えてもよい。
【0012】
前記第1導電膜、前記第1導電粒子、前記第2導電膜、及び前記第2導電粒子は、Fe、Al、Co、Cr、Ni、Ag、Mg、Cu、Sn、Au、Pt、Pd、In、Ti、Ta及びCからなる群より選択される少なくとも一つの元素、前記群より選択される少なくとも二種の元素で構成される合金若しくは共析物、又は前記群より選択される少なくとも一つの元素を含み更に周期律表の3族から14族からなる群より選択される少なくとも一つの元素を含んで構成される合金若しくは共析物、を含有することが好ましい。
【0013】
前記第1半導体膜、前記第1半導体粒子、前記第2半導体膜、及び前記第2半導体粒子は、ニッケルナイトライド、アナターゼ構造のチタン酸化物、酸化錫混入の酸化インジウム、酸化錫、ジルコニウム酸化物、ガリウムナイトライド、アルミニウムナイトライド、シリコン及びカーボンからなる群より選択される少なくとも一種の化合物を含有することが好ましい。
更に、これら化合物にp型又はn型の遷移金属、希土類金属又は非磁性金属をドープすることが、常温で不純物準位から50%以上の励起電子を発生させる観点から好適である。
【0014】
前記複数個の第1導電粒子又は第1半導体粒子、及び前記複数個の第2導電粒子又は第2半導体粒子の周囲は、誘電体で充填されていることが好ましい。
【0015】
なお、第二の形態のキャパシタ型蓄電池において、前記第1絶縁膜の同一面上に、複数列の前記第1導電路及び前記第2導電路を備える態様も好適である。また、前記複数列の第1導電路に接続する第1端子と、前記複数列の第2導電路に接続する第2端子と、を備え、前記第1端子及び前記第2端子は、前記第1導電路及び前記第2導電路から離れるに従って幅が狭くなる部分を有しており、この部分において、前記第1導電路と同一方向に延伸する2辺は、互いになす角度が30°以下であることが好ましい。
【0016】
また、複数個の導電粒子又は半導体粒子が互いに接触して形成してなる粒子層であって、前記複数個の第1導電粒子又は第1半導体粒子は、平面面積による粒度分布において平面面積の大きい側から累積15%を除いたものであり、且つ最大幅が100nm以下であるものは、キャパシタ型蓄電池用基板として有益である。
このキャパシタ型蓄電池用基板では、前記粒子層が2層以上からなり、該2層の粒子層の間に導電膜又は半導体膜からなる基材を有してもよい。
【0017】
更に、前記キャパシタ型蓄電池用基板の少なくとも一方の面上に絶縁膜を有する積層体は、キャパシタ型蓄電池用蓄電層として有益である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、単位体積あたりの容量が大きく、且つ電圧や電流の印加を切っても、電位の降下の少ない、電荷保持性能の高い薄膜キャパシタ型の蓄電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明における第1の実施形態に係るキャパシタ型蓄電池の一例を示す短尺方向(幅方向)での断面図である。
【図2】本発明における第2の実施形態に係るキャパシタ型蓄電池の一例を示す短尺方向(幅方向)での断面図である。
【図3】本発明における第3の実施形態に係るキャパシタ型蓄電池の一例を示す短尺方向(幅方向)での断面図である。
【図4】本発明における第4の実施形態に係るキャパシタ型蓄電池の一例を示す短尺方向(幅方向)での断面図である。
【図5】実施例1、実施例2、実施例3及び比較例1における、Alの最大粒子幅と電圧降下量の相関図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の第一の形態のキャパシタ型蓄電池は、複数個の第1導電粒子又は第1半導体粒子が互いに接触して形成してなる第1粒子層と、前記第1粒子層の一方の面上に第1絶縁膜と、前記第1粒子層の他方の面上に第2絶縁膜と、前記第1絶縁膜上で長尺方向に延在する第1導電路と、前記第2絶縁膜上で長尺方向に延在し、前記第1導電路に平行に設けられた第2導電路と、を有し、前記複数個の第1導電粒子又は第1半導体粒子は、平面面積による粒度分布において平面面積の大きい側から累積15%を除いたものであり、且つ最大幅が100nm未満である。
【0021】
本発明の第二の形態のキャパシタ型蓄電池は、複数個の第1導電粒子又は第1半導体粒子が互いに接触して形成してなる第1粒子層と、第1絶縁膜と、を積層する第1積層膜と、前記第1積層膜の第1絶縁膜上で該第1積層膜の長尺方向に延在する第1導電路と、前記第1積層膜の第1絶縁膜上で該第1積層膜の長尺方向に延在し、前記第1導電路に平行に設けられた第2導電路と、を有し、前記複数個の第1導電粒子又は第1半導体粒子は、平面面積による粒度分布において平面面積の大きい側から累積15%を除いたものであり、且つ最大幅が100nm未満である。
【0022】
前記第1導電路と第2導電路のペア線を流れる電流によって生じた導電路長さ方向に進行する電磁波は、第1導電路及び第2導電路に隣接する第1絶縁層及び第2絶縁層によって速度の低下が生じ、TE成分やTM成分を持つことになる。これらの成分は、第1導電膜若しくは第1半導体膜内の電子の粗密波、つまり表面プラズモンと干渉しやすくなる。
【0023】
特に第1絶縁層及び第2絶縁層に隣接する導電膜又は半導体膜を構成する要素が粒子の場合に、TM成分と表面プラズモンとの波面の整合確率が高くなることより、TM成分は表面プラズモンと干渉しやすくなる。当然、この現象は可逆的である。
【0024】
この干渉によって粗密波(表面プラズモン)はエネルギーを得るが、電界の影響によって、より強調された電子の粗密な状態を、粒子層内に生じさせる。これにより、電子が密に存在する部分に電子が集まることになる。この電子の集まりは、連続的な導電体や半導体又は接合された導電粒子群や半導体粒子群であれば、電子の移動度の高さと正の電荷との中和の影響、さらに原子格子の熱振動により熱緩和されて、エネルギーを損失させることになる。
【0025】
そこで、本発明では、上記熱振動などによるエネルギー損失を防ぐべく、蓄電層を最大幅が100nm未満、好ましくは80nm未満の導電粒子や半導体粒子で形成する。これにより、固有電子状態を形成し、電子のエネルギーはバルクスケールの連続的なバンド構造ではなく、離散的な複数のエネルギー準位を発生させることができる。つまり量子ドットとなり量子効果が発現する。
【0026】
しかしながら、一般に粒子群は粒度分布を有するものであって、形成時に全ての粒子を100nm以下に揃えることは現実的ではない。また粒子は、形成した後で大きく成長する場合もある。
そこで、更なる鋭意検討を重ねた結果、蓄電層を構成する導電粒子又は半導体粒子は、平面面積による粒度分布において平面面積の小さい側から累積85%のまでの粒子を用い、このときの粒子の最大幅が100nm未満であれば、実質的に量子効果を発現する材料として有効であることが明らかとなった。
【0027】
電磁波と表面プラズモン干渉によりエネルギーを得た粗密状態は、量子ドットの量子効果で得られた離散的エネルギー準位において、基底のエネルギー準位から高いエネルギーバ準位への移動、つまり準位間励起となることができる。バルクスケールの連続的なバンド構造では、バンド内でエネルギーが緩和されてしまい保持が困難であるのに対し、離散的エネルギー準位間の励起では、エネルギーの保持作用を発現できる。さらに言うならば、金属の連続的なエネルギー順位にあっても量子ドット的構造で離散的エネルギー準位となり、エネルギーの保持作用が発現できる。
【0028】
離散的励起状態では、電子を伝導体に励起することで電子の抜け殻にホールができ、その電子ホールペア状態でエネルギーが保持される。この状態では、外部から見たとき電気的に中性である。すなわち、電磁エネルギーから電子ホールペア励起エネルギーにエネルギーが変換されたことになり、いわゆる静電気的な電界強度で対向電極の一方に電子、他方にホールが保持された状態とは異なるエネルギー保持状態となる。
【0029】
また、電子が一方の電極側に集まっていることにより、カップリングの存在する範囲で正の電荷(ホール)は分極的に、他方に位置することになる。熱緩和的な正の電荷の存在確率が少ないことにより、中和が生じにくくなり、電子の強い粗密状態の保持作用に有効である。
【0030】
上述のように、蓄電層を特定の大きさの粒子で形成することで、熱振動などによるエネルギー損失を抑えることができるようになるものの、一方で、粒子単体では電子の粗密波の増幅に制限があり、粒子を集めても大きな容量を得ることができないことが判明した。そこで、粒子同士を接触して存在させて、容量の増大を図ることとした。
【0031】
ここで、本発明における「粒子」とは、均一な固体相で構成され、その固体相は他相と接している境界で区切られた有限な一単位を意味し、境界においては、バルク体と異なり電子移動の多少の制限を受ける。例えば、本発明における粒子形態は、導電粒子又は半導体粒子(固体相)の周囲が空隙(他相)である場合や、導電粒子又は半導体粒子(固体相)の周囲に絶縁物(他相)が充填されている場合、更には、特定の結晶方位を有する金属相又は半導体相の周囲に他の結晶方位を有する金属相又は半導体相が充填されている場合、極薄酸化膜(他層)が形成されている場合などが挙げられる。つまり、固体相は、単結晶、上記サイズの多結晶、アモルファスでもよい。
【0032】
つまり、本発明に係る粒子では、例え粒子どうしが接触していても、電子の粗密波はその接触部も表面と捉えるため粒子の中に閉じ込められるが、電荷は粒子どうしが接触していることでその接触面を通過できるものも存在している。したがって、粒子どうしを接触させることで、電子が密となっている粒子に電荷が更に移動し、電子の粗密差を更に大きくすることができる。つまり、粒子どうしを接触させることで、電磁波と表面プラズモンのエネルギー交換を大きくでき、かつ交換したエネルギーを保持できる。よって、単位体積あたりの容量が大きく、且つ電圧や電流の印加を切っても、電位の降下、つまりは蓄電量の低下を抑制することが可能となる。
【0033】
上記メカニズムでの蓄電の安定化作用は、第1導電路と第2導電路のペア線の一方の面でだけでなく、他面も活用できることから、第1導電路と第2導電路のペア線の他面上に、連続した第2絶縁層を設け、この第2絶縁膜の外面上に、更に複数個の第2導電粒子又は第2半導体粒子が互いに接触して形成してなる第2粒子層を備えても構わない。この場合であっても、前記複数個の第2導電粒子又は第2半導体粒子は、平面面積による粒度分布において平面面積の大きい側から累積15%を除いたものであり、且つ最大幅が100nm以下である。
【0034】
以下、本発明の好ましい実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0035】
<キャパシタ型蓄電池>
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係るキャパシタ型蓄電池の一例を示す短尺方向(幅方向)での断面図である。
第1の実施形態のキャパシタ型蓄電池は、複数個の第1導電粒子又は第1半導体粒子が互いに接触して形成してなる第1粒子層40の一方の面に第1絶縁膜20を積層し、他方の面に第2絶縁膜22を積層する。第1絶縁膜20上には、第1粒子層40の長尺方向(図1では紙面の手前から奥に向かう方向)に延在する第1導電路30が設けられ、第2絶縁膜22上には、第1粒子層40の長尺方向に延在し、第1導電路30と平行に第2導電路32が設けられる。図1では、第1粒子層40は1層として示しているが、第1粒子層40が2層で構成され、該2層の第1粒子層40の間に、第1導電膜又は第1半導体膜からなる第1基材(図示せず)を備えていてもよい。
第1粒子は、平面面積による粒度分布において平面面積の大きい側から累積15%を除いたものであり、且つ最大幅が100nm未満である。
【0036】
以下、各部材を構成する材料について説明する。
【0037】
(第1粒子層)
第1粒子層40は、複数個の第1導電粒子又は第1半導体粒子(「第1粒子」と総称する)が互いに接触して形成している。第1粒子の最大幅は100nm未満であり、80nm未満であることが更に好ましい。
【0038】
ここで、第1粒子の最大幅とは、第1粒子層40の延在方向、つまり表面プラズモンの進行方向に沿った断面を原子間力顕微鏡(AFM)によって画像を観察し、その画像断面に含まれる50個以上の任意の第1粒子についての最大幅を測定したときの値をいう。
【0039】
また、複数個の第1粒子は、平面面積による粒度分布において平面面積の大きい側から累積15%を除いたものである。このような粒度分布を有する粒子群は、スパッタ、蒸着、めっき、イオンプレーティング、CVD、溶射などの方法によって形成される。
【0040】
なお、本発明において導電性とは、体積抵抗率が10−3Ω・cm以下であることを意味する。半導電性とは、体積抵抗率が10−3Ω・cmを超えて10Ω・cm以下であることを意味する
【0041】
第1導電粒子又は第1半導体粒子は、キャリア密度が高く、電荷の移動度が高い材料であることが好ましい。具体的には例えば以下の材料を例示することができる。
【0042】
第1導電粒子は、導電性を示すものであれば特に限定されないが、例えば、Fe、Al、Co、Cr、Ni、Ag、Mg、Cu、Sn、Au、Pt、Pd、In、Ti、Ta及びCからなる群より選択される少なくとも一種の元素を含むことが好ましく、単一元素で構成されていても、2種以上の元素が含まれていてもよい。2種以上の元素が含まれている場合には、合金若しくは共析物であってもよい。更に前記群より選択される少なくとも一つの元素を含み更に周期律表の3族から14族からなる群より選択される少なくとも一つの元素を含んで構成される合金若しくは共析物あってもよい。なお、合金には固溶限界以下の固溶体も含まれる。また、単独でも導電性を有するFe、Al、Co、Cr、Ni、Ag、Mg、Cu、Sn、Au、Pt、Pd、In、Ti、Ta及びCの場合は単一の元素により形成されていても何ら問題ない。
また、第1導電膜としてSi含有物を用いる場合、SiにB、Al、Pなどに代表される、周期律表の3族から15族からなる群より選択される少なくとも一つの元素を固溶限界以下にまで固溶させ導電性を付与したものを用いることができる。
【0043】
第1半導体粒子は、半導電性を示すものであれば特に限定されないが、ニッケルナイトライド、アナターゼ構造のチタン酸化物、酸化錫混入の酸化インジウム、酸化錫、ジルコニウム酸化物、ガリウムナイトライド、アルミニウムナイトライド、シリコン、カーボンからなる群より選択される少なくとも一種の化合物を含有して形成されていることが好ましく、二種以上の化合物を併用してもよい。
【0044】
特に半導体粒子においては、常温で不純物準位から50%以上の励起電子が発生するよう、前記群より選択される化合物にp型又はn型の遷移金属、希土類金属又は非磁性金属をドープすることが有効である。
【0045】
第1粒子の周囲は、誘電体で充填されていることが好ましい。第1粒子の周囲を誘電体で充填することで、表面プラズモンの発生が安定化する。第1粒子の周囲を充填する誘電体としては、後述の第1絶縁膜20及び第2絶縁膜22で説明する絶縁物を適用することができる。なお、第1粒子の周囲を充填する誘電体は、後述の第1絶縁膜20又は第2絶縁膜22を構成する絶縁物とは異なるものを適用しても、同じものを適用してもよい。
【0046】
第1粒子層40は1層で構成されていても、2層以上で構成されていてもよい。
第1粒子層40の厚み(2層以上で構成される場合は総厚)は、20nm以上10000nm以下であることが好ましく、電荷量の確保の観点及び軽量化の観点から0.1μm〜5μm以下であることが好ましい。
【0047】
(第1絶縁膜、第2絶縁膜)
第1絶縁膜20及び第2絶縁膜22としては、有機絶縁物、無機絶縁物、又は有機絶縁物と無機絶縁物の複合体のいずれから形成されていてもよい。
有機絶縁物としては、ポリエステル、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PPC(ポリエステルポリカーボネート)、ビニリデン、ポリイミド、ポリスチレン、ゴム、アクリル、エポキシなどを挙げることができる。
無機絶縁物としては、ほう珪酸ガラス、ソーダライムガラス、チタン酸バリウムやチタン酸ストロンチウムなどの金属酸化物などを挙げることができる。
【0048】
特に、第1絶縁膜20及び第2絶縁膜22には、実効的に誘電率の高い材料を用いることが、TE成分やTM成分の発生、及び空間電荷分布による容量成分の追加に有利であるため好ましい。
また、第1絶縁膜20と記第2絶縁膜22は、比誘電率が異なることがTE成分やTM成分の発生の観点から好ましい。
【0049】
第1絶縁膜20及び第2絶縁膜22は、それぞれ単層であっても、2層以上の複層であってもよい。
第1絶縁膜20及び第2絶縁膜22の厚みは、電磁波と表面プラズモンのエネルギー交換の効率化の観点から、各々20nm以上10000nm以下が好ましい。この膜厚は耐電圧の配慮もなされ、用途に適した電圧に耐えうる最低の厚みを確保することが好ましい。
【0050】
(第1導電路、第2導電路)
第1導電路30及び第2導電路32の組成としては、前記第1導電粒子で説明したものを適用することができ、好適に用いられる材料についても同様である。第1導電路30と第2導電路32は同じ材質で形成してもよいし、異なる材質で形成されていてもよい。
【0051】
第1導電路30及び第2導電路32の短尺方向の長さ(幅)wは、例えば各々1μm以上100mm以下であり、第1導電路と第2導電路との間隔d(つまり第1粒子層40と第1絶縁膜20と第2絶縁膜22の総厚み)は、例えば各々1μm以上100mm以下である。また第1導電路及び第2導電路の厚み(高さ)tは、例えば各々0.5μm以上10μm以下である。また、幅wと間隔dの関係は、w/d≧1.5が望ましい。また幅wと高さtの関係は、t/w≦1が好ましく、より好ましくはt/w≦0.5である。
【0052】
(第1基材)
第1基材の設置は任意であるが、設置してもよい。例えば、前記第1粒子層40が2層から構成されて、その2層の間に第1基材(図示せず)を有していてもよい。
第1基材は、第1導電膜又は第1半導体膜からなり、導電物質、半導体物質のいずれで構成されていてもよい。
【0053】
第1導電膜の組成としては、前記第1導電粒子で説明したものを適用することができ、好適に用いられる材料についても同様である。
第1半導体膜の組成としては、前記第1半導体粒子で説明したものを適用することができ、好適に用いられる材料についても同様である。
【0054】
特に、第1半導体膜においては、常温で不純物準位から50%以上の励起電子が発生するよう、前記群より選択される化合物にn型又はp型の遷移金属、希土類金属又は非磁性金属をドープすることが有効である。
第1粒子は、キャリア密度が高く、表面プラズモンを発生しやすく、また、粒子を形成しやすい材料で構成されることが好ましい。
【0055】
第1基材は、第1導電膜又は第1半導体膜、のいずれか1層で構成される単層であっても、異なる材料で構成される第1導電膜を2層以上積層する複層であっても、異なる材料で構成される第1半導体膜を2層以上積層する複層であっても、更には第1導電膜及び第1半導体膜から選択される2層以上を積層してもよい。
【0056】
第1基材の厚みは、20nm以上10000nm以下であることが好ましく、電荷量の確保の観点からと軽量化の観点から0.1μm〜5μm以下であることが好ましい。
【0057】
(作製方法)
本発明の第1の実施形態のキャパシタ型蓄電池の製造方法は、上記構成のキャパシタ型蓄電池を形成し得る方法であれば特に限定されるものではない。以下に製造方法の一例について説明する。
【0058】
基材シートの上に、例えばスパッタ、蒸着、めっき、イオンプレーティング、CVD、溶射などの手法で、上記サイズの複数個の第1粒子が互いに接触して第1粒子層40が形成される。第1粒子の大きさを調整して最大幅100nmとするのは、膜形成速度の制御により行うことができる。
【0059】
なお、第1導電膜又は第1半導体膜からなる第1基材を用いる場合には、第1基材の形成と第1粒子の形成は一連の同一プロセスで行われるのが一般的であるが、各々異なる条件、異なる手法を用いて、それぞれ別個に形成されてもよい。また、市販の金属箔や半導体膜を第1基材として用い、その上にスパッタ、蒸着、めっき、イオンプレーティング、CVD、溶射などの手法で第1粒子層40を形成してもよい。
【0060】
第1粒子層40を形成した後、塗工、貼合、蒸着、めっき、イオンプレーティング、CVD、溶射などの手法で、第1絶縁膜20が形成され、更にその第1絶縁膜の上に第1導電路30が形成される。
【0061】
他方、基材シートが第1粒子層40又は第1基材から剥がされ、その剥がされた面の上に、第1絶縁膜の形成方法と同様の方法により第2絶縁膜22が形成される。更に第2絶縁膜22の上に、第2導電路32が形成される。
【0062】
<使用>
図示しないが、蓄電池の長尺方向の一方の端部では第1導電路30及び第2導電路32が露出している。この露出している部分に、第1導電路30及び第2導電路32に電圧を与えるための第1端子及び第2端子がそれぞれ接続している。第1端子及び第2端子に所定の電位差を与えると、第1粒子層40と、第1導電路30及び第2導電路32との間に広がった電磁界すなわちフォトンとの間で、フォトン−表面プラズモンのエネルギー交換が行われ、大きな容量で蓄電される。以下の実施形態においても同様である。
【0063】
〔第2の実施形態〕
図2は、第2の実施形態に係るキャパシタ型蓄電池の一例を示す短尺方向(幅方向)での断面図である。
第2の実施形態のキャパシタ型蓄電池は、複数個の第1導電粒子又は第1半導体粒子(「第1粒子」と称する)が互いに接触して形成してなる第1粒子層40の上に第1絶縁膜20を積層する第1積層膜50を有する。第1積層膜50の第1絶縁膜20上には、第1積層膜50の長尺方向(図2では紙面の手前から奥に向かう方向)に延在する第1導電路30と、第1導電路30に平行する第2導電路32とが設けられる。更に図2では、第1粒子層40の外側表面には基材シート60が設けられているが、基材シート60の設置は任意である。また、第1粒子層40の外面上、或いは第1粒子層40と基材シート60の間には、第1導電膜又は第1半導体膜からなる第1基材(図示せず)を設けてもよい。
更に、図2に示すように、第1導電路30及び第2導電路32の外面上に、第2絶縁膜22が連続して設けられていてもよいが、第2絶縁膜22の設置は任意である。
【0064】
複数個の第1粒子は、平面面積による粒度分布において平面面積の大きい側から累積15%を除いたものであり、且つ最大幅が100nm未満である。
【0065】
以下、各部材を構成する材料について説明する。
【0066】
(第1粒子層)
第2の実施形態のキャパシタ型蓄電池における第1粒子層40は、前記第1の実施形態のキャパシタ型蓄電池における第1粒子層で説明したものをそれぞれ適用することができ、好適に用いられる材料についても同様である。
【0067】
(第1絶縁膜、第2絶縁膜)
第2の実施形態のキャパシタ型蓄電池における第1絶縁膜20及び第2絶縁膜22は、前記第1の実施形態のキャパシタ型蓄電池における第1絶縁膜20及び第2絶縁膜22で説明したものをそれぞれ適用することができ、好適に用いられる材料についても同様である。
また、第1絶縁膜20と第2絶縁膜22は、比誘電率が異なることがTE成分やTM成分の発生の観点から好ましい場合もある。
【0068】
第2の実施形態のキャパシタ型蓄電池における第1絶縁膜20及び第2絶縁膜22の厚みは、電磁波と表面プラズモンのエネルギー交換の効率化の観点から、各々20nm以上10000nm以下が好ましい。
この膜厚は耐電圧の配慮もなされ、用途に適した電圧に耐えうる最低の厚みを確保することが好ましい。
なお、図2では、第2絶縁膜22は、第1導電路30及び第2導電路32による凹凸に沿って設けられているが、このような形状に限定されず、図3の第2絶縁膜22のように平板状であってもよい。第2の実施形態において第2絶縁膜22の設置は任意であり、設けなくともよい。
【0069】
(第1導電路、第2導電路)
第2の実施形態のキャパシタ型蓄電池における第1導電路30及び第2導電路32は、前記第1の実施形態のキャパシタ型蓄電池における第1導電路及び第2導電路で説明したものをそれぞれ適用することができ、好適に用いられる材料についても同様である。
【0070】
(第1基材)
第1基材の設置は任意であり、設けなくともよい。
第1基材(図示せず)は、第1導電膜又は第1半導体膜からなり、導電物質、半導体物質のいずれで構成されていてもよい。
第2の実施形態のキャパシタ型蓄電池における第1基材は、前記第1の実施形態のキャパシタ型蓄電池における第1基材で説明したものを適用することができ、好適に用いられる材料についても同様である。
【0071】
第2の実施形態のキャパシタ型蓄電池における第1基材の厚みは、20nm以上10000nm以下であることが好ましく、電荷量の確保の観点からと軽量化の観点から0.1μm〜5μm以下であることが好ましい。
【0072】
(基材シート)
基材シート60の設置は任意であり、設けなくともよいが、図2に示すキャパシタ型蓄電池では、基材シート60の上に前記第1粒子層40を積層する。基材シート60の組成としては、前記第1粒子層40を積層できるものであれば、導電性、半導電性、及び絶縁性のいずれであってもよい。
絶縁性であれば、本キャパシタ型蓄電池を巻いて使用する場合に。基材シートは導電性のある第1基材と第1導電路及び第2導電路の間を絶縁する役割を果たせる。
導電性のシートとしては、前記第1導電膜で説明したものと適用することができ、半導電性のシートとしては、前記第1半導体膜で説明したものと適用することができ、絶縁性のシートとしては、前記第1絶縁膜で説明したものを適用することができる。好適に用いられる材料についても同様である。
基材シート60の厚みは、1μm〜25μmが好ましい。
【0073】
(作製方法)
本発明の第2の実施形態のキャパシタ型蓄電池の製造方法は、上記構成のキャパシタ型蓄電池を形成し得る方法であれば特に限定されるものではない。以下に製造方法の一例について説明する。
【0074】
基材シート60の上に、例えばスパッタ、蒸着、めっき、イオンプレーティング、CVD、溶射などの手法で、上記サイズの第1粒子を形成する。第1粒子の大きさを調整して最大幅100nm未満とするのは、膜形成速度の制御により行うことができる。
なお、第1導電膜又は第1半導体膜からなる第1基材を用いる場合には、第1基材の形成と、第1粒子の形成は、一連の同一プロセスによって行われるのが一般的であるが、各々異なる条件、異なる手法を用いて、それぞれを別個に形成してもよい。また、市販の金属箔や半導体膜を第1基材として用い、その上にスパッタ、蒸着、めっき、イオンプレーティング、CVD、溶射などの手法で第1粒子層40を形成してもよい。
【0075】
第1粒子層40を形成した後、塗工、貼合、蒸着、めっき、イオンプレーティング、CVD、溶射などの手法で、第1絶縁膜20を形成し、更にその第1絶縁膜20の上に第1導電路30と第2導電路32とを、互いが平行するように形成する。
【0076】
更に、第2絶縁膜22を設ける場合には、第1導電路30と第2導電路32を含む第1絶縁膜20上に、蒸着、めっき、イオンプレーティング、CVD、溶射などの手法で、第2絶縁膜22を形成する。
【0077】
〔第3の実施形態〕
図3は、第3の実施形態に係るキャパシタ型蓄電池の一例を示す短尺方向(幅方向)での断面図である。
第3の実施形態のキャパシタ型蓄電池は、第2の実施形態のキャパシタ型蓄電池において、更に、第1導電路30及び第2導電路32の外面上に、第2絶縁膜22を連続して設け、そして更に第2絶縁膜22の外面上に、数個の第2導電粒子又は第2半導体粒子(「第2粒子」と称する)が互いに接触して形成してなる第2粒子層42を設ける。この複数個の第2粒子は、平面面積による粒度分布において平面面積の大きい側から累積15%を除いたものであり、且つ最大幅が100nm未満ある。更に図3では、第2粒子層42の外側表面には基材シート60が設けられているが、基材シート60の設置は任意である。また、第2粒子層42と基材シート60の間には、第2導電膜又は第2半導体膜からなる第2基材(図示せず)を設けてもよいが、第2基材の設置は任意である。
【0078】
第3の実施形態に係るキャパシタ型蓄電池において、第1基材、第1粒子層40、第1絶縁膜20、第2絶縁膜22、第1導電路30、第2導電路32、及び基材シート60は、第2の実施形態に係るキャパシタ型蓄電池における第1基材、第1粒子層、第1絶縁膜、第2絶縁膜、第1導電路、第2導電路及び基材シートで説明したものをそれぞれ適用することができ、好適に用いられる材料についても同様であるため、説明を省略する。
なお、図3では、第2絶縁膜22及び第2基材12は平板状のものとして示しているが、このような形状に限定されず、図2の第2絶縁膜22のように導電路30及び第2導電路32による凹凸に沿って設けられていてもよい。
【0079】
(第2粒子層)
第2粒子層42は、前記第1粒子層で説明したものを適用することができ、好適に用いられる材料についても同様である。
【0080】
(第2基材)
第2導電膜又は第2半導体膜からなる第2基材(図示せず)は、前記第1基材で説明したものを適用することができ、好適に用いられる材料についても同様である。
【0081】
(作製方法)
本発明の第3の実施形態のキャパシタ型蓄電池の製造方法は、上記構成のキャパシタ型蓄電池を形成し得る方法であれば特に限定されるものではない。以下に製造方法の一例について説明する。
【0082】
基材シート60の上に、例えばスパッタ、蒸着、めっき、イオンプレーティング、CVD、溶射などの手法で、上記サイズの第1粒子を形成する。第1粒子の大きさを調整して最大幅100nm未満とするのは、膜形成速度の制御により行うことができる。
なお、第1導電膜又は第1半導体膜からなる第1基材を用いる場合には、第1基材の形成と、第1粒子の形成は、一連の同一プロセスによって行われるのが一般的であるが、各々異なる条件、異なる手法を用いて、それぞれを別個に形成してもよい。また、市販の金属箔や半導体膜を第1基材として用い、その上にスパッタ、蒸着、めっき、イオンプレーティング、CVD、溶射などの手法で第1粒子層40を形成してもよい。
【0083】
第1粒子層40を形成した後、塗工、貼合、蒸着、めっき、イオンプレーティング、CVD、溶射などの手法で、第1絶縁膜20を形成して、基材シート60、(第1基材)、第1粒子層40、及び第1絶縁膜20がこの順に積層した積層体1を得る。
【0084】
他方、基材シート60の上に、例えばスパッタ、蒸着、めっき、イオンプレーティング、CVD、溶射などの手法で、上記サイズの第2粒子が形成される。第2粒子の大きさを調整して最大幅100nmとするのは、膜形成速度の制御により行うことができる。
なお、第2導電膜又は第2半導体膜からなる第2基材を用いる場合には、第2基材の形成と、第2粒子の形成は、一連の同一プロセスによって行われるのが一般的であるが、各々異なる条件、異なる手法を用いて、それぞれを別個に形成してもよい。また、市販の金属箔や半導体膜を第1基材として用い、その上にスパッタ、蒸着、めっき、イオンプレーティング、CVD、溶射などの手法で第2粒子層42を形成してもよい。
【0085】
第2粒子層42を形成した後、塗工、貼合、蒸着、めっき、イオンプレーティング、CVD、溶射などの手法で第2絶縁膜22を形成して、基材シート60、(第2基材)、第2粒子層42、及び第2絶縁膜22がこの順に積層した積層体2を得る。
【0086】
前記準備した積層体1及び積層体2を、積層体1の第1絶縁膜20と積層体2の第2絶縁膜22が対向するようにして、その第1絶縁膜20と第2絶縁膜22の間に、第1導電路30と第2導電路32とが平行するように配置して挟持させ、第3の実施形態のキャパシタ型蓄電池を得る。
【0087】
〔第4の実施形態〕
図4は、第4の実施形態に係るキャパシタ型蓄電池の一例を示す短尺方向(幅方向)での断面図である。
図4に示すキャパシタ型蓄電池は、第1絶縁膜20の同一面上に、第1導電路30及び第2導電路32を複数交互に設けた点、更に図示しないが複数の第1導電路30が同一の第1端子に接続しており、複数の第2導電路32が同一の第2端子に接続している点を除いて、第3の実施形態にかかる蓄電池と同様である。
【0088】
対を形成している第1導電路30及び第2導電路32の幅wとその間の距離dとは、w/d≧1.5の関係を満たすことが望ましい。対を形成していない第1導電路30と第2導電路32との距離をsとした場合、s/d≧1を満たすことが望ましい。以下、第1の実施形態と同一の構成については同一の符号を付して、説明を省略する。
【0089】
第1端子及び第2端子は、第1導電路30及び第2導電路32から離れるに従って幅が狭くなる部分を有しており、かつこの部分において、第1導電路30及び第2導電路32が延伸する2辺が互いになす角度θが30°以下である。これにより、第1端子及び第2端子における電力の抵抗損失を少なくすることができる。
【0090】
また、第1端子は、直接第1導電路30に接続しているが、第2端子は貫通電極(図示せず)を介して第2導電路32に接続している。貫通電極は、第1端子上及び第1導電路30及び第2導電路32上に設けられた絶縁層を貫通している。第2端子は、絶縁層上に位置している。
【0091】
第4の実施形態によっても、第1〜第3の実施形態と同様の効果を得ることができる。更に、第1導電路30及び第2導電路32の数を多くしたため、蓄電池の容量がより大きくなる。
なお、図4では、第3の実施形態のキャパシタ型蓄電池の構成で、第1導電路30及び第2導電路32を複数交互に設けたものを示したが、図1の第1の実施形態のキャパシタ型蓄電池の構成や、図2の第2の実施形態のキャパシタ型蓄電池の構成で、第1導電路30及び第2導電路32を複数交互に設けたものであってもよい。
【0092】
〔その他の実施形態〕
図1〜図4に示したキャパシタ型蓄電池はシート状であるが、このシートを長尺方向においてロール状に巻いて使用してもよい。
【0093】
<キャパシタ型蓄電池用基板>
上述の第1粒子層40、つまり、複数個の導電粒子又は半導体粒子が互いに接触して形成してなる粒子層であり、前記複数個の第1導電粒子又は第1半導体粒子が、平面面積による粒度分布において平面面積の大きい側から累積15%を除いたものであり、且つ最大幅が100nm以下であるものは、キャパシタ型蓄電池用基板として有益である。
【0094】
このキャパシタ型蓄電池用基板では、粒子層40が2層からなり、この2層の粒子層の間に導電膜又は半導体膜からなる第1基材を有してもよい。更には、この第1基材の両面に粒子層40を設け、この粒子層が基材の各面において単層或いは2層以上を積層するものであってもよい。粒子層40が2層以上から構成される場合には、各粒子層40を構成する粒子は、異なる材質で形成されるものであってもよい。
【0095】
キャパシタ型蓄電池用基板の層構成の例を以下に示すが、これらに限定されない。
(1)第1粒子層の単層
(2)第1粒子層と第2粒子層の複層
(3)第1粒子層、第1基材、第2粒子層をこの順で積層する積層体
(4)第1粒子層、第1基材、第2粒子層、第3粒子層、をこの順で積層する積層体
(5)第1粒子層、第2粒子層、第1基材、第3粒子層、第4粒子層、をこの順で積層する積層体
【0096】
<キャパシタ型蓄電池用蓄電層>
前記キャパシタ型蓄電池用基板の少なくとも一方の面上に前記第1絶縁膜を有する積層体は、キャパシタ型蓄電池用蓄電層として有益である。絶縁膜は単層でも2層を積層して用いてもよい。
【0097】
キャパシタ型蓄電池用蓄電層の層構成の例を以下に示すが、これらに限定されない。
(1)前記キャパシタ型蓄電池用基板と第1絶縁膜の積層体
(2)第1絶縁膜、キャパシタ型蓄電池用基板、第2絶縁膜をこの順で積層する積層体
(3)第1絶縁膜、第2絶縁膜、キャパシタ型蓄電池用基板、第3絶縁膜をこの順で積層する積層体
(4)第1絶縁膜、第2絶縁膜、キャパシタ型蓄電池用基板、第3絶縁膜、第4絶縁膜をこの順で積層する積層体
【実施例】
【0098】
以下、本発明の実施例について比較例と共に説明する。尚、本発明は下記実施例に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能である。
【0099】
[実施例1]
25μm厚さのPET(ポリエチレンテレフタレート)シート上に、スパッタリングによりAl薄膜状のAl粒子層を形成した。Al薄膜の厚みは0.1μmであった。これをAFMで観察し、上記以方法によりAl粒子の最大幅を測定すると、51nmであった。
【0100】
Al粒子層上に、アクリル樹脂で構成される厚さ10μmの粘着層を形成し、このような幅45mm、長さ1000mmのシート(積層体1)を2枚作製した。これをSEMで観察すると、Al粒子間に粘着層が入り込んでいた。但し、粒子どうしは接触していた。
他方、幅20mm、長さ1050mm、厚さ50μmの銅箔を2枚準備し、この銅箔が1mm間隔で平行になるように、前記2枚のシートで挟み込み、試験用キャパシタ蓄電池1を作製した。
【0101】
[実施例2]
実施例1と同様にして、但し膜形成の速度の条件を変えて、Al粒子の最大幅が75nmの積層体2を作製した。更に、実施例1と同様にして、但し積層体1を積層体2に変えて、試験用キャパシタ蓄電池2を作製した。
【0102】
[実施例3]
実施例1と同様にして、但し膜形成の速度の条件を変えて、Al粒子の最大幅が98nmの積層体3を作製した。更に、実施例1と同様にして、但し積層体1を積層体3に変えて、試験用キャパシタ蓄電池3を作製した。
【0103】
[比較例1]
実施例1と同様にして、但し膜形成の速度の条件を変えて、Al粒子の最大幅が120nmの積層体4を作製した。更に、実施例1と同様にして、但し積層体1を積層体4に変えて、試験用キャパシタ蓄電池4を作製した。
【0104】
[比較例2]
最大幅が100nmのAl粒子をアクリル樹脂に分散させ、粒子どうしの接触を抑制した塗剤を調製した。この塗剤を厚さ25μmのPETフィルムに塗布し、幅45mm、長さ1000mmのシートを2枚作製した。
幅20mm、長さ1050mm、厚さ50μmの銅箔を2枚準備し、この銅箔が1mm間隔で平行になるように、前記2枚のシートで挟み込み、試験用キャパシタ蓄電池1を作製した。
【0105】
<評価方法>
充放電効率(%)は、充電時の電気容量(Ahr)に対する放電時の電気容量(Ahr)の百分率を示す。本実施例では、充放電効率は、一定電流量充電を100Vまで行い、5時間放置したのち、放電させたときの充放電カーブから充放電効率を求めた。表1に、静電容量及び充放電効率を示す。図5に、Al粒子の最大幅に対する充放電効率のグラフを示す。
なお、充放電効率が小さいものは、充電終了後の電位の降下による蓄電量の損失が生じていることを示す。一般に実用上は、90%以上の充放電効率が必要とされている。
【0106】
【表1】

【0107】
表1及び図5から明らかなように、金属粒の最大粒子幅が100nm未満で著しく充放電効率が向上しており、充放電効率90%を満たすことができる。
【符号の説明】
【0108】
20 第1絶縁膜
22 第2絶縁膜
30 第1導電路
32 第2導電路
40 第1粒子層
42 第2粒子層
50 第1積層膜
60 基材シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個の第1導電粒子又は第1半導体粒子が互いに接触して形成してなる第1粒子層と、
前記第1粒子層の一方の面上に第1絶縁膜と、
前記第1粒子層の他方の面上に第2絶縁膜と、
前記第1絶縁膜上で長尺方向に延在する第1導電路と、
前記第2絶縁膜上で長尺方向に延在し、前記第1導電路に平行に設けられた第2導電路と、を有し、
前記複数個の第1導電粒子又は第1半導体粒子は、平面面積による粒度分布において平面面積の大きい側から累積15%を除いたものであり、且つ最大幅が100nm未満であるキャパシタ型蓄電池。
【請求項2】
前記第1粒子層が2層からなり、該2層の第1粒子層の間に導電膜又は半導体膜からなる第1基材を有する請求項1に記載のキャパシタ型蓄電池。
【請求項3】
前記第1絶縁膜と前記第2絶縁膜の比誘電率が異なる請求項1又は請求項2に記載のキャパシタ型蓄電池。
【請求項4】
複数個の第1導電粒子又は第1半導体粒子が互いに接触して形成してなる第1粒子層と、第1絶縁膜と、を積層する第1積層膜と、
前記第1積層膜の第1絶縁膜上で該第1積層膜の長尺方向に延在する第1導電路と、
前記第1積層膜の第1絶縁膜上で該第1積層膜の長尺方向に延在し、前記第1導電路に平行に設けられた第2導電路と、を有し、
前記複数個の第1導電粒子又は第1半導体粒子は、平面面積による粒度分布において平面面積の大きい側から累積15%を除いたものであり、且つ最大幅が100nm未満であるキャパシタ型蓄電池。
【請求項5】
更に、前記第1導電路及び前記第2導電路の外面上に連続して設けられた第2絶縁膜と、該第2絶縁膜の外面上に複数個の第2導電粒子又は第2半導体粒子が互いに接触して形成してなる第2粒子層と、を有し、
前記複数個の第2導電粒子又は第2半導体粒子は、平面面積による粒度分布において平面面積の大きい側から累積15%を除いたものであり、且つ最大幅が100nm未満である請求項4に記載のキャパシタ型蓄電池。
【請求項6】
更に、前記第1粒子層の外面上に、第1導電膜又は第1半導体膜からなる第1基材を備える請求項4又は請求項5に記載のキャパシタ型蓄電池。
【請求項7】
更に、前記第2粒子層の外面上に、第2導電膜又は第2半導体膜からなる第2基材を備える請求項5又は請求項6に記載のキャパシタ型蓄電池。
【請求項8】
前記第1導電粒子が、Fe、Al、Co、Cr、Ni、Ag、Mg、Cu、Sn、Au、Pt、Pd、In、Ti、Ta及びCからなる群より選択される少なくとも一つの元素、前記群より選択される少なくとも二種の元素で構成される合金若しくは共析物、又は前記群より選択される少なくとも一つの元素を含み更に周期律表の3族から14族からなる群より選択される少なくとも一つの元素を含んで構成される合金若しくは共析物を含む請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載のキャパシタ型蓄電池。
【請求項9】
前記第2導電粒子が、Fe、Al、Co、Cr、Ni、Ag、Mg、Cu、Sn、Au、Pt、Pd、In、Ti、Ta及びCからなる群より選択される少なくとも一つの元素、前記群より選択される少なくとも二種の元素で構成される合金若しくは共析物、又は前記群より選択される少なくとも一つの元素を含み更に周期律表の3族から14族からなる群より選択される少なくとも一つの元素を含んで構成される合金若しくは共析物を含む請求項5〜請求項8のいずれか1項に記載のキャパシタ型蓄電池。
【請求項10】
前記第1半導体粒子が、ニッケルナイトライド、アナターゼ構造のチタン酸化物、酸化錫混入の酸化インジウム、酸化錫、ジルコニウム酸化物、ガリウムナイトライド、アルミニウムナイトライド、シリコン、及びカーボンからなる群より選択される少なくとも一種の化合物を含有する請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載のキャパシタ型蓄電池。
【請求項11】
前記第2半導体粒子が、ニッケルナイトライド、アナターゼ構造のチタン酸化物、酸化錫混入の酸化インジウム、酸化錫、ジルコニウム酸化物、ガリウムナイトライド、アルミニウムナイトライド、シリコン、及びカーボンからなる群より選択される少なくとも一種の化合物を含有する請求項5〜請求項10のいずれか1項に記載のキャパシタ型蓄電池
【請求項12】
常温で不純物準位から50%以上の励起電子が発生するよう、前記化合物にn型またはp型の遷移金属、希土類金属又は非磁性金属をドープしてなる請求項10又は請求項11に記載のキャパシタ型蓄電池。
【請求項13】
前記複数個の第1導電粒子又は第1半導体粒子の周囲が、誘電体で充填されてなる請求項1〜請求項12のいずれか1項に記載のキャパシタ型蓄電池。
【請求項14】
前記複数個の第2導電粒子又は第2半導体粒子の周囲が、誘電体で充填されてなる請求項5〜請求項13のいずれか1項に記載のキャパシタ型蓄電池。
【請求項15】
前記第1絶縁膜の同一面上に、複数列の前記第1導電路及び前記第2導電路を備える請求項4〜請求項14のいずれか1項に記載のキャパシタ型蓄電池。
【請求項16】
前記複数列の第1導電路に接続する第1端子と、
前記複数列の第2導電路に接続する第2端子と、
を備え、
前記第1端子及び前記第2端子は、前記第1導電路及び前記第2導電路から離れるに従って幅が狭くなる部分を有しており、この部分において、前記第1導電路と同一方向に延伸する2辺は、互いになす角度が30°以下である請求項15に記載のキャパシタ型蓄電池。
【請求項17】
複数個の導電粒子又は半導体粒子が互いに接触して形成してなる粒子層であり、前記複数個の導電粒子又は半導体粒子は、平面面積による粒度分布において平面面積の大きい側から累積15%を除いたものであり、且つ最大幅が100nm未満である、キャパシタ型蓄電池用基板。
【請求項18】
前記粒子層が2層以上からなり、該2層の粒子層の間に導電膜又は半導体膜からなる基材を有する請求項17に記載のキャパシタ型蓄電池用基板。
【請求項19】
請求項17又は請求項18に記載のキャパシタ型蓄電池用基板と、
前記キャパシタ型蓄電池用基板の少なくとも一方の面上に設けた絶縁膜と、を有するキャパシタ型蓄電池用蓄電層。

【図5】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−211118(P2011−211118A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−79861(P2010−79861)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(500132214)学校法人明星学苑 (23)
【Fターム(参考)】