説明

キャリッジ及び記録装置

【課題】移動時の振動の伝達を完全に遮断することができるキャリッジ及びそのキャリッジを備えた記録装置を提供すること。
【解決手段】記録ヘッド152が搭載されているとともに移動手段156が結合され、前記記録ヘッドにより記録するために前記移動手段により記録領域を往復移動するキャリッジ153は、前記記録ヘッドの搭載部31と前記移動手段との結合部32とが分割され、前記搭載部と前記結合部とが線形弾性部材33Aを有する連結手段33により連結されている。これにより、移動手段からの振動が分割部分で遮断されて記録ヘッドの搭載部に伝達しないので、記録ヘッドの記録精度を高精度な状態に維持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録ヘッドが搭載されたキャリッジ及びそのキャリッジを備えた記録装置と液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記録装置の1つであるインクジェット式プリンタや熱転写式プリンタは、記録ヘッドが搭載されたキャリッジを記録媒体である用紙の搬送直交方向(主走査方向)に往復移動させることにより記録するようになっている。このキャリッジにキャリッジモータのコギング等によって生じる強制振動が加わると記録ヘッドも振動するため、良好な記録結果は望めない。そこで、キャリッジにゴム弾性体と錘からなる小振動体(動吸振器)を取り付けることにより、キャリッジの共振周波数を選択して減衰させるプリンタが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−337924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように従来のプリンタのキャリッジに取り付けられている小振動体は、ゴム弾性体と錘から構成されている。このゴム弾性体のバネ定数は一般的に環境や経時によって変化し易いため、ゴム弾性体のバネ定数と錘の質量とによって定まる小振動体の固有振動数をキャリッジの固有振動数と正確に合わせることは困難であり、キャリッジの振動の除去は不完全なものとなっている。
【0005】
本発明は、上記のような種々の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、移動時の振動の伝達を完全に遮断することができるキャリッジ及びそのキャリッジを備えた記録装置と液体噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的達成のため、本発明のキャリッジでは、記録ヘッドが搭載されているとともに移動手段が結合され、前記記録ヘッドにより記録するために前記移動手段により記録領域を往復移動するキャリッジであって、前記記録ヘッドの搭載部と前記移動手段との結合部とを分割し、前記搭載部と前記結合部とを線形弾性部材を有する連結手段により連結したことを特徴としている。これにより、移動手段からの振動が分割部分で遮断されて記録ヘッドの搭載部に伝達しないので、記録ヘッドの記録精度を高精度な状態に維持することができる。
【0007】
また、前記連結手段は、前記線形弾性部材の変位を規制する規制部材を有することを特徴としている。これにより、キャリッジの加減速時に発生する線形弾性部材の大きなたわみを規制部材により規制することができる。また、前記線形弾性部材と前記規制部材の間に隙間を設けたことを特徴としている。これにより、キャリッジの定速時に発生する線形弾性部材の小さなたわみを隙間内で吸収することができる。また、前記線形弾性部材は、板バネであることを特徴としている。また、前記線形弾性部材は、コイルバネであることを特徴としている。これにより、簡易な構成とすることができる。
【0008】
上記目的達成のため、本発明の記録装置では、記録媒体に記録する記録装置であって、上記各キャリッジを備えたことを特徴としている。また、上記目的達成のため、本発明の液体噴射装置では、被噴射媒体に液体を噴射する液体噴射装置であって、上記各キャリッジを備えたことを特徴としている。これにより、上記各作用効果を奏する記録装置または液体噴射装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態に係る記録装置の1つであるインクジェット式プリンタの外観構成例を正面側から見た第1の斜視図である。
【図2】図1のプリンタの外観構成例を正面側から見た第2の斜視図である。
【図3】図1のプリンタを背面側から見た斜視図である。
【図4】図1のプリンタの内部構造を示す斜視図である。
【図5】本発明の特徴的な部分を示すキャリッジの詳細を示す斜視図である。
【図6】図5の平面図である。
【図7】振動形態例と連結手段の他の例を示す図である。
【図8】本発明の特徴的な部分を示すキャリッジの別例の詳細を示す斜視図である。
【図9】図8の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1及び図2は、本発明の実施の形態に係る記録装置の1つであるインクジェット式プリンタの外観構成例を正面側から見た斜視図、図3は、それを背面側から見た斜視図、図4は、それの内部構造を示す斜視図である。このインクジェット式プリンタ100は、例えばJIS規格のA0判やJIS規格のB0判といった比較的大型のサイズのカット紙やそれらの用紙幅を有するロール紙Rにまで記録できる大型のプリンタである。このインクジェット式プリンタ100は、図1〜図4に示すように、直方体状のプリンタ本体部110と、このプリンタ本体部110を支えるプリンタ脚部120を備えている。
【0011】
プリンタ本体部110は、図1〜図4に示すように、上下2層に分かれており、図3に示すように、背面側の上下層の境界部分にはロール紙収納部130が配設されている。そして、図1〜図4に示すように、上層には給排紙部140と本発明の特徴的な部分を含む記録部150が配設されている。さらに、図1〜図4に示すように、下層の中央には用紙吸引部160が配設され、前面側から見て下層の左側にはインク供給部170が配設され、前面側から見て下層の右側にはヘッド特性回復部180と駆動制御部190が上下に配設されている。そして、図1〜図4に示すように、駆動制御部190の下方であってプリンタ脚部120の脇には、廃インク回収部200が配設されている。
【0012】
プリンタ本体部110は、図1〜図3に示すように、給排紙部140と記録部150を覆うプラスチックあるいは板金でなる上部ハウジング111と、用紙吸引部160とインク供給部170とヘッド特性回復部180と駆動制御部190を覆うプラスチックあるいは板金でなる下部ハウジング112を備えている。そして、上部ハウジング111は、図2に示すように、中央前面から中央上面にかけて開放可能なようにプラスチックあるいは板金でなる本体カバー113が配設されている。また、下部ハウジング112は、図2に示すように、インク供給部170の前面が開放可能なようにプラスチックあるいは板金でなるインクカバー114が配設されている。
【0013】
本体カバー113は、図1及び図2に示すように、後部が上部ハウジング111に対して回動可能に支持されており、ユーザが前面に形成されている凹んだ指掛け部113aに指を入れて押し上げ、あるいは押し下げることにより開閉するようになっている。ユーザは、本体カバー113を開けることにより給排紙部140及び記録部150の上方を大きく開放することができるので、記録ヘッド152やキャリッジ153等のメンテナンス作業及び記録中や搬送中における紙ジャム等の用紙搬送エラーの解除作業等を容易に行うことができる。さらに、本体カバー113は、図1及び図3に示すように、上面の一部に透明もしくは半透明のプラスチックでなる窓113bが設けられている。ユーザは、本体カバー113を開けなくても窓113bから内部を覗くことにより、記録状態や搬送状態を視認することができる。
【0014】
インクカバー114は、図1及び図2に示すように、両側部が下部ハウジング112に対してスライド可能に支持されており、ユーザが前面に形成されている凹んだ指掛け部114aに指を入れて押し上げ、あるいは押し下げることにより開閉するようになっている。ユーザは、インクカバー114を開けることによりインク供給部170の前面を大きく開放することができるので、インクカートリッジ10の交換作業等を容易に行うことができる。さらに、インクカバー114は、図1及び図2に示すように、前面の一部に透明もしくは半透明のプラスチックでなる窓114bが設けられている。ユーザは、インクカバー114を開けなくても窓114bから内部を覗くことにより、インクカートリッジ10の状態を視認することができる。
【0015】
さらに、プリンタ本体部110は、図1〜図3に示すように、前面側から見て右側の上層の上面には、ユーザが記録制御等を操作するための操作パネル115が配設されている。この操作パネル115は、液晶画面と各種ボタンが配設されており、ユーザが液晶画面を見て確認しながらボタン操作できるようになっている。ユーザは、視認による確実な操作を行うことができるので、動作エラーや動作ミス等を無くすことができる。
【0016】
プリンタ脚部120は、図1〜図4に示すように、逆T字形の2本の支持柱121と、これらの支持柱121間に架け渡された補強柱122を備えている。そして、支持柱121の上部にプリンタ本体部110が載置されネジ止め固定されるようになっている。プリンタ脚部120によりプリンタ本体部110が持ち上げられた状態におかれるため、ユーザは給排紙処理や各種メンテナンス処理等を楽に行うことが可能になる。さらに、プリンタ脚部120の空間に排紙受け部を設置することが可能となり、記録済みの用紙を効率良く回収することができるとともに、記録済みの用紙の汚染等を防止することができる。
【0017】
ロール紙収納部130は、図3に示すように、ロール紙Rの内周部に貫装されてロール紙Rを支持するスピンドル131と、このスピンドル131の両端を回動自在に軸支持する図示しない軸受を備えている。用紙吸引部160の背面は、その両側のインク供給部170の背面とヘッド特性回復部180及び駆動制御部190の背面よりも凹んで形成されており、この凹み部を利用してロール紙収納部130が配設されている。
【0018】
すなわち、インク供給部170とヘッド特性回復部180及び駆動制御部190の対向側面には、スピンドル131を主走査方向に向けてその両端を回動自在に軸支持する図示しない軸受が内蔵されている。そして、これらの軸受間にロール紙Rの内周部を貫装しているスピンドル131を架け渡すことにより、ロール紙Rをプリンタ本体部110の背面側から突出させずにセッティングすることができる。
【0019】
給排紙部140は、図4に示すように、紙送りローラ141とその紙送り従動ローラ142を備えている。紙送りローラ141とその紙送り従動ローラ142は、ロール紙収納部130から直の給紙下流側、すなわちプリンタ本体部110内の後部側において、軸が主走査方向を向いて周面が上下に対向するように配置されている。紙送りローラ141は、1本の長尺のローラとして形成されており、記録可能な最大用紙幅より若干大きい周面部分にはセラミック粉等がコーティングされている。これにより、紙送りの際の滑りを防止することができるので、用紙を高精度に送り出すことができる。この紙送りローラ141は、両端がサイドフレーム116に図示しない軸受を介して軸支持されており、紙送りモータ143からプーリ144及びベルト145を介して伝達される駆動力により正逆回転駆動するようになっている。
【0020】
紙送り従動ローラ142は、複数個の短尺のローラとして形成されており、紙送りローラ141の上方で軸方向に複数並設された従動ローラ支持部材146に回動自在に軸支持されている。この紙送り従動ローラ142は、従動ローラ支持部材146に取り付けられている図示しないバネ等の付勢部材により紙送りローラ141に押圧されており、紙送りローラ141の正逆回転駆動に追従して正逆回転するようになっている。これにより、用紙を両面からしっかりと押さえ込んで送り出すことができるので、高精度な記録を行うことができる。そして、紙送りローラ141とその紙送り従動ローラ142は、図3に示すプリンタ本体部110の上下層間に形成されている給紙口147から給紙されるロール紙Rやカット紙を挟持して、図2及び図4に示す記録部150のプラテン151上に向けて送り出し、図1に示すプリンタ本体部110の上下層間に形成されている排紙口148から排紙するようになっている。
【0021】
記録部150は、図2及び図4に示すように、紙送りローラ141から直の搬送下流側に配設されたプラテン151と、記録ヘッド152を搭載した本発明の特徴的な部分であるキャリッジ153と、キャリッジ153に装着されたカッタ154を備えている。さらに、記録部150は、記録ヘッド152と記録を実行するための駆動制御部190とを電気的に接続する図示しないフレキシブルフラットケーブル(以下、FFCという)、記録ヘッド151とインクが入ったインクカートリッジ10とを繋ぐ図示しないインクチューブ等を備えている。
【0022】
プラテン151は、記録可能な最大用紙幅より若干大きい長さの矩形平板状に形成されて紙送りローラ141に沿って配設されている。このプラテン151は、表面から裏面にかけては用紙吸引部160に繋がる図示しない複数の孔が穿設され、表面には吸湿によって生じる用紙のコックリング等を吸収する図示しない複数の凹凸部が形成されている。これにより、記録中の用紙を略平面状に保持することができるので、高精度な記録を行うことができる。
【0023】
さらに、プラテン151の表面には、主走査方向に延びるカッタ溝151aが形成されている。このカッタ溝151aは、カッタ154がロール紙Rを幅方向にカッティングする際にプラテン151の表面を傷付けないように、ロール紙Rの下面から突出したカッタ154の刃先が入り込むことができる大きさに形成されている。これにより、ロール紙Rの記録部分と未記録部分とを確実に切り離すことができる。
【0024】
記録ヘッド152は、キャリッジ153の下部においてプラテン151の上面に供給されるカット紙やロール紙Rと所定間隔を空けて対向するように配設されており、2種類のブラックインクを吐出するブラックインク用記録ヘッドと、シアン、マゼンタ、イエロー、レッド、ブルー、グロスオプティマイザ等の各色のインクを吐出する複数のカラーインク用記録ヘッドとを備えている。そして、記録ヘッド152は、圧力発生室とそれに繋がるノズル開口が設けられており、圧力発生室内にインクを貯留して所定圧で加圧することにより、ノズル開口からプラテン151の上面に供給されるカット紙やロール紙Rに向けてコントロールされた大きさのインク滴を吐出するようになっている。
【0025】
キャリッジ153は、主走査方向に設けられているキャリッジガイド軸155に図示しないベアリングを介して載置され、ベルト156に結合されている。そして、キャリッジ153は、図示しない移動手段を構成するキャリッジモータによって移動手段を構成するプーリ157が回転して移動手段を構成するベルト156が回動すると、ベルト156の動きに連行され、キャリッジガイド軸155に案内されて主走査方向に往復移動するようになっている。これにより、キャリッジ153を高精度に移動させることができるので、高精度な記録を行うことができる。
【0026】
カッタ154は、刃先が下方を向くようにして、上下方向に昇降可能であって主走査方向に移動可能に配設されている。このカッタ154は、例えばソレノイド等により上下方向に昇降され、キャリッジ153とともに主走査方向に移動されるようになっている。したがって、カッタ154を移動させるための手段を別途設ける必要は無いので、省スペースを図ることができるとともに、コストを抑えることができる。なお、カッタ154をキャリッジ153から分離して独自のベルト機構やモータ等により主走査方向に移動するように構成しても良い。
【0027】
FFCは、一端が駆動制御部190のコネクタに接続され、他端が記録ヘッド152のコネクタに接続されており、記録信号を駆動制御部190から記録ヘッド152に送るようになっている。インクチューブは、上記各色のインク用が配設されており、図示しないインク加圧供給手段を介して各一端が対応する各色のインクカートリッジ10に繋がれ、各他端が対応する各色の記録ヘッド152に繋がれている。そして、インクチューブは、インク加圧供給手段によって加圧された各色のインクをインクカートリッジ10から記録ヘッド152に送るようになっている。
【0028】
用紙吸引部160は、図4に示すように、プラテン151の下部に配設された圧力室161と、圧力室161の下部に配設された図示しないファンを備えている。圧力室161は、上面と底面の一部が開放された箱状に形成されており、上面の開放部にプラテン151が取り付けられ、底面の開放部にファンが取り付けられている。ファンを回転させることにより、プラテン151に穿設されている孔から圧力室161内に吸気され、ファンを通って外部に排気される。したがって、プラテン151の上面にカット紙やロール紙Rが供給されると、カット紙やロール紙Rの下面側に負圧が発生するので、カット紙やロール紙Rをプラテン151の上面に吸着させてカット紙やロール紙Rの浮き上がりを防止することができ、記録精度を高精度に維持することができる。
【0029】
インク供給部170は、図4に示すように、箱状のカートリッジ収納部171と、カートリッジ収納部171の前面側に取り付けられたカートリッジ押さえ部172を備えている。カートリッジ収納部171は、図示左側から順に2種類のブラック、シアン、マゼンタ、イエロー、レッド、ブルー、グロスオプティマイザの計8色のインクカートリッジ10が前面側から個々に引き出し、押し入れ可能なように仕切られている。カートリッジ押さえ部172は、カートリッジ収納部171の各仕切り部毎に開閉自在に取り付けられており、閉動作に連動して仕切り部内のインクカートリッジ10を押さえ込み、開動作に連動して仕切り部内のインクカートリッジ10を飛び出させるようになっている。
【0030】
ここで、インクカートリッジ10は、例えば硬質プラスチック材料で直方体状に形成された外装ケース内に、例えば可撓性材料で袋状に形成されて内部にインクが充填されたインクタンクが密閉されている。そして、カートリッジ収納部171への挿入側の面には、インクタンクに繋がるインク供給口と、カートリッジ収納部171での位置決め穴が形成されている。一方、カートリッジ収納部171の内側後面には、インクカートリッジ10のインク供給口内に挿入されるインク供給針と、インクカートリッジ10の位置決め穴内に挿入される位置決め針が、インクカートリッジ10の引き出し、押し入れ方向に突き出るように配設されている。
【0031】
したがって、カートリッジ収納部171内に収納されたインクカートリッジ10は、カートリッジ押さえ部172が閉じられると、自動的に位置決め針が位置決め穴内に侵入して位置決めされると同時に、自動的にインク供給針がインク供給口内に侵入して記録ヘッド152へのインク供給が可能となる。また、カートリッジ押さえ部172が開かれると、自動的に位置決め針が位置決め穴から抜き出されると同時に、自動的にインク供給針がインク供給口から抜き出される。
【0032】
ヘッド特性回復部180は、図4に示すホームポジションに位置したキャリッジ153の下方に配設されており、ワイピング手段とキャッピング手段及び吸引手段とこれらの駆動手段を備えている。ワイピング手段は、ゴム、フェルトあるいはプラスチック等により略矩形平板状に形成されたワイパーを備えており、記録ヘッド152のノズル形成面に対して擦れてノズル形成面に付着しているインクを払拭するようになっている。
【0033】
キャッピング手段は、ゴムにより略直方体状に形成されたキャップを備えており、上部に設けられている窪みが記録ヘッド152のノズル形成面に押し付けられてノズル開口を封止するようになっている。吸引手段は、ノズル開口の目詰まりや混入した気泡を除去するためにインクを強制的に吸引排出するようになっている。したがって、キャリッジ153がホームポジションに位置している状態のときに記録ヘッド152のインク吐出特性を一定な状態に維持する処理を行うことができる。
【0034】
廃インク回収部200は、着脱自在な廃液カートリッジ201を備えている。廃液カートリッジ201は、記録ヘッド152に至るインク供給系に初期充填する際に使用されるインク、あるいは記録ヘッド152に至るインク供給系を洗浄する際に使用される洗浄液等の廃液を貯留するようになっている。これにより、廃液カートリッジ201を交換するのみで廃液の処理を完了することができるので、作業工数を低減させることができるとともに、プリンタ周辺部の汚染を防止することができる。
【0035】
図5は、本発明の特徴的な部分を示すキャリッジ153の詳細を示す斜視図、図6は、その平面図である。このキャリッジ153は、記録ヘッド152等が搭載される搭載部31と、ベルト156に結合される結合部32と、搭載部31と結合部32とを連結する連結手段33等を備えている。搭載部31は、底面に記録ヘッド152のノズル形成面を露呈させる穴31aが形成されており、この穴31aに合わせて記録ヘッド152が搭載され、さらにその上にダンパ等が搭載されるようになっている。結合部32は、背面にベルト156を挟み込む挟持部32aが形成されており、この挟持部32aとベルト156が結合されるようになっている。
【0036】
連結手段33は、略C字状に形成された線形弾性部材33Aの1つである板バネを備えており、一対の自由端部33aが突き出るように結合部32に取り付けられている。そして、一対の自由端部33aは、主走査方向に向いた一対のネジ33bにより搭載部31に取り付けられている。したがって、連結手段33は、結合部32の取付部33cに対して搭載部31の取付部33dが主走査方向に揺動自在となっている。
【0037】
ここで、キャリッジ153にキャリッジモータのコギング等によって生じる次式(1)で表される強制振動P0cosωtが作用する場合を考える。なお、P0は強制振動の大きさ、ωは強制振動の振動数、tは時間、mはキャリッジ153の搭載部31の質量、aはキャリッジ153の移動時の加速度、kは連結手段33のバネ定数、xは連結手段33の変位である。
0cosωt=ma+kx…(1)
この場合、キャリッジ153の搭載部31の固有振動数p=√(k/m)を強制振動の振動数ωから遠ざけるように設定、例えばω/p=2以上となるように設定することにより、キャリッジモータのコギング等によって生じる強制振動P0cosωtは、連結手段33で吸収されるので、キャリッジ153の搭載部31への伝搬を防止することができる(図7参照)。したがって、キャリッジ153の搭載部31に搭載されている記録ヘッド152は、キャリッジモータのコギング等によって生じる強制振動P0cosωtによる影響を受けないので、良好な記録結果を得ることができる。なお、振動数比ω/pを大きく(pを小さく)していった場合、連結が弱くなり過ぎ、キャリッジ移動の制御が難しくなってくる。実験によれば、ω/pの値は2〜6に設定するのが好適であった。
【0038】
図7(b)に示す如く、連結にダンピング要素を付加することも可能である。この場合、並列に付加する(図7(b)(2))よりも、直列に付加する方が効果的である。これは具体的には、例えばキャリッジ153のガイド部分に、バネ等の付勢により固定部材であるキャリッジ軸155に押し付け摩擦によるダンピングを得る構成としたガイド部材を用いる、等の方法で実現可能である。
【0039】
なお、上述した実施形態では、連結手段33の線形弾性部材33Aとして板バネを用いたが、荷重と変位の関係が線形な特性を有すれば特に限定されるものではなく、例えばコイルバネを用いても同様の効果を奏する。この場合、変位方向が主走査方向を向くようにして直列に配置した一対のコイルバネの各一端を結合部32の両側にそれぞれ取り付け、この一対のコイルバネの各他端を搭載部に取り付けるようにする。すなわち、一対のコイルバネで結合部32を挟み込むように配設する。これにより、搭載部31は結合部32に対して主走査方向に揺動自在となるので、キャリッジモータのコギング等によって生じる強制振動P0cosωtを連結手段33で吸収することができる。
【0040】
図8は、本発明の特徴的な部分を示すキャリッジ153の別例の詳細を図5に対応させて示す斜視図、図9は、図6に対応させて示す平面図であり、同一構成個所は同一番号を付して説明を省略する。このキャリッジ153の連結手段33は、上記線形弾性部材33Aに加えて線形弾性部材33Aの変位を規制する規制部材33Bを備えている。
【0041】
規制部材33Bは、図8及び図9に示すように、円柱状の2本のピンであり、搭載部31の取付部33dの両外側であって、結合部32の取付部33c近傍に配設されている。そして、これらの規制部材33Bは、静止状態の搭載部31の取付部33dに対して所定の隙間、例えば数十μmをあけて搭載部31上に取り付けられている。これにより、キャリッジ153の加減速時に発生する線形弾性部材33Aの大きなたわみ、すなわちキャリッジ153の遅れを物理的な規制部材33Bにより規制することができ、キャリッジ153の位置制御性を向上させることができる。
【0042】
なお、上述した実施形態では、規制部材33B(ピン)を別部材としたが、搭載部31と一体的に形成しても良い。また、規制部材33B(ピン)を搭載部31の取付部33dの両外側であって、結合部32の取付部33c近傍に配設するようにしたが、搭載部31の取付部33dの両内側であっても同様の効果を奏する。また、結合部32の取付部33cと自由端部33aの間に配設するようにしても良い。これにより、線形弾性部材33A(板バネ)が規制部材33B(ピン)と当接したときに、上記実施形態のような線形弾性部材33A(板バネ)の変位の急変を防止することができる。
【0043】
以上のように、本実施形態のキャリッジ153によれば、記録ヘッド152の搭載部31とベルト156との結合部32とを分割し、搭載部31と結合部32とを線形弾性部材33Aを有する連結手段33により連結しているので、ベルト156からの振動が分割部分で遮断されて記録ヘッド152の搭載部31に伝達せず、記録ヘッド152の記録精度を高精度な状態に維持することができる。
【0044】
また、連結手段33は、線形弾性部材33Aの変位を規制する規制部材33Bを有するので、キャリッジ153の加減速時に発生する線形弾性部材33Aの大きなたわみを規制部材33Bにより規制することができる。また、線形弾性部材33Aと規制部材33Bの間に隙間を設けているので、キャリッジ153の定速時に発生する線形弾性部材33Aの小さなたわみを隙間内で吸収することができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
キャリッジを備えた記録装置であれば、例えばファクシミリ装置、コピー装置等であっても適用可能である。また、記録装置に限らず、インクに代えてその用途に対応する液体を液体噴射ヘッドから被噴射媒体に噴射して液体を被噴射媒体に付着させる液体噴射装置の意味として、例えば、液晶ディスプレイ等のカラーフィルタ製造に用いる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイや面発光ディスプレイ(FED)等の電極形成に用いられる電極材(導電ペースト)噴射ヘッド、バイオチップ製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド、精密ピペットとしての試料噴射ヘッド等を備えた装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0046】
10 インクカートリッジ、31 搭載部、32 結合部、33 連結手段、33A 線形弾性部材、33B 規制部材、100 インクジェット式プリンタ、110 プリンタ本体部、111 上部ハウジング、112 下部ハウジング、113 本体カバー、114 インクカバー、115 操作パネル、120 プリンタ脚部、130 ロール紙収納部、140 給排紙部、141 紙送りローラ、142 紙送り従動ローラ、143 紙送りモータ、150 記録部、151 プラテン、152 記録ヘッド、153 キャリッジ、154 カッタ、155 キャリッジガイド軸、156 ベルト、157 プーリ、160 用紙吸引部、161 圧力室、170 インク供給部、171 カートリッジ収納部、172 カートリッジ押さえ部、180 ヘッド特性回復部、190 駆動制御部、200 廃インク回収部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録ヘッドが搭載されているとともに移動手段が結合され、前記記録ヘッドにより記録するために前記移動手段により記録領域を往復移動するキャリッジであって、
前記記録ヘッドの搭載部と前記移動手段との結合部とを分割し、前記搭載部と前記結合部とを線形弾性部材を有する連結手段により連結したことを特徴とするキャリッジ。
【請求項2】
前記連結手段は、前記線形弾性部材の変位を規制する規制部材を有することを特徴とする請求項1に記載のキャリッジ。
【請求項3】
前記線形弾性部材と前記規制部材の間に隙間を設けたことを特徴とする請求項2に記載のキャリッジ。
【請求項4】
前記線形弾性部材は、板バネであることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のキャリッジ。
【請求項5】
前記線形弾性部材は、コイルバネであることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のキャリッジ。
【請求項6】
記録媒体に記録する記録装置であって、
請求項1〜5の何れか一項に記載のキャリッジを備えたことを特徴とする記録装置。
【請求項7】
被噴射媒体に液体を噴射する液体噴射装置であって、
請求項1〜5の何れか一項に記載のキャリッジを備えたことを特徴とする液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−208340(P2010−208340A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−111810(P2010−111810)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【分割の表示】特願2004−264923(P2004−264923)の分割
【原出願日】平成16年9月13日(2004.9.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】