説明

キャリヤ側ベルト蛇行修正装置

【課題】 ベルトコンベヤ全体を縦に小型化し、保守点検の頻度を少なくしてベルトコンベヤの稼働率向上を容易にするキャリヤ側ベルト蛇行修正装置の提供。
【解決手段】 キャリヤ側ベルト1aの幅方向中央部を保持する中部キャリヤローラ21と幅方向両端部を幅方向両端に向け仰角θで傾斜させて保持する一対の端部キャリヤローラ22を共通のローラスタンド23上に一列に設置したキャリヤアイドラ20のローラスタンド23の左右両端部23cを旋回動作可能に支持する一対のスタンド支持部30を備える。一対の各スタンド支持部30で、ローラスタンド23の両端部を逆方向に旋回させて、キャリヤアイドラ20をキャリヤ側ベルト1aの蛇行を修正する方向に旋回させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対向して互いに逆方向に進行するキャリヤ側ベルトとリターン側ベルトを有するベルトコンベヤの蛇行修正装置で、詳しくは、キャリヤ側ベルトの蛇行修正装置に関する。
【背景技術】
【0002】
土砂やセメントなどの所謂バラ物の搬送装置として使用されるベルトコンベヤの概要を図11を例に示す。同図のベルトコンベヤは、長尺な無端の搬送ベルト1を備える。搬送ベルト1は、ホッパー2から投入されたバラ物を積載して水平あるいは傾斜した方向Pに進行するキャリヤ側ベルト1aと、キャリヤ側ベルト1aの進行方向Pと180°逆方向Qに進行するリターン側ベルト1bから成る。キャリヤ側ベルト1aとリターン側ベルト1bは、上下で対向する。上段のキャリヤ側ベルト1aは、その進行方向Pに所望の間隔で並列に並ぶ複数の搬送ローラのキャリヤローラ3で保持されて進行し、進行先のヘッドプーリ4で180°下方に方向転換してリターン側ベルト1bになる。リターン側ベルト1bは、その進行方向Qに所望の間隔で並列に並ぶ複数の搬送ローラのリターンローラ5で保持されて進行し、進行途中でテンションプーリ6でテンションが与えられて、進行先のテールプーリ7で180°上方に方向転換してキャリヤ側ベルト1aになる。テールプーリ7近くのキャリヤ側ベルト1a上にホッパー2からバラ物(図示せず)が投入されて進行方向Pに搬送され、キャリヤ側ベルト1aが進行先のヘッドプーリ4に達するまでにキャリヤ側ベルト1a上から積載物が排出される。
【0003】
キャリヤ側ベルト1aとリターン側ベルト1bは、進行中に進行方向左右いずれかに蛇行する場合がある。キャリヤ側ベルト1aが蛇行すると、その蛇行がリターン側ベルト1bに波及してキャリヤ側ベルト1aの蛇行を更に助長することもある。キャリヤ側ベルト1aの蛇行を放置すると、蛇行量が増大して進行に支障が生じ、キャリヤ側ベルト1aから積載物がこぼれ落ちる落荷が生じたりすることもある。そこで、キャリヤ側ベルト1aとリターン側ベルト1bそれぞれの蛇行量が許容値を超えると、各ベルトそれぞれの蛇行を自動修正する様々な公知のベルトコンベヤ蛇行修正装置がある。
【0004】
上記ベルトコンベヤ蛇行修正装置は、ベルト搬送方向に多数並列に並ぶ搬送ローラ(キャリヤローラまたはリターンローラ)の内の適宜に選択された搬送ローラを蛇行修正用ローラとして使用したものが普及している。この蛇行修正用ローラをベルト蛇行量に応じてベルト進行方向に平行な前後方向に旋回させて、ベルトの蛇行を自動修正する。ベルトの蛇行量を検出して、ベルトの蛇行量が許容値を超えると、蛇行修正用ローラをシリンダやモータで積極的に旋回させて、ベルトの蛇行を自動修正する蛇行修正装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
図12に示すベルトコンベヤ蛇行修正装置は、キャリヤ側ベルト1aに適用した公知の自動調芯キャリヤアイドラ10の一例である。自動調芯キャリヤアイドラ10は、キャリヤ側ベルト1aの幅方向中央部を保持する中部キャリヤローラ11と、キャリヤ側ベルト1aの幅方向両端部を幅方向両端に向け仰角θで傾斜させて保持する一対の端部キャリヤローラ12を共通のローラスタンド13上に一列に設置して構成される。ローラスタンド13上に突設した複数の軸受14に各キャリヤローラ11,12が回転自在に支持される。ローラスタンド13の下面中央に旋回軸15が連結される。旋回軸15は、固定された水平なフレーム16上に連結される。フレーム16の下方にリターン側ベルト1bとリターンローラ5が設置される。
【0006】
キャリヤ側ベルト1aが自動調芯キャリヤアイドラ10の各キャリヤローラ11,12上を摺動して進行する。進行するキャリヤ側ベルト1aとの摩擦で各キャリヤローラ11,12が従動回転する。キャリヤ側ベルト1aは、幅方向中央部が中部キャリヤローラ11a上でほぼ水平に保たれて進行し、幅方向両端部が仰角θで傾斜して進行することで、ベルト1a上に積載されたバラ物が落下し難いようにしてある。キャリヤ側ベルト1aが進行方向左右いずれかの方向に許容値を超えて蛇行すると、その蛇行量を図示しない機械式センサーあるいは光学式センサーなどで検出する。なお、キャリヤ側ベルト1aの許容量を超える蛇行とは、例えばベルト1aの蛇行方向と反対側にあるベルト側端部で、端部キャリヤローラ12で仰角θで傾斜して保持されているベルト端部の幅が小さくなり、このベルト端部におけるバラ物の落下を防ぐ機能が低下する程度の蛇行である。検出された蛇行量に応じて自動調芯キャリヤアイドラ10を、旋回軸15を中心にしてキャリヤ側ベルト1aの蛇行を修正する正逆いずれかの方向に旋回させて、蛇行したキャリヤ側ベルト1aの蛇行を自動修正する。自動調芯キャリヤアイドラ10の正逆旋回駆動機構は、シリンダやモーターの特別な駆動源を利用した機構と、駆動源を使用せずにベルト自体の蛇行力を利用した機構に大別される。
【特許文献1】特開平09−020415号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記自動調芯キャリヤアイドラ10の場合は、中部キャリヤローラ11の中央に位置する旋回軸15を中心にして両端部を互いに逆方向に旋回させることで、キャリヤ側ベルト1aが左右いずれに許容量を超えて蛇行しても、左右同様にして修正する。このような自動調芯キャリヤアイドラ10は、ローラスタンド13の下方にローラスタンド13を回転自在に支持する旋回軸15や、旋回軸15を定位置に支持するフレーム16などで構成されるスタンド旋回支持機構を必要とする。そのため、自動調芯キャリヤアイドラ10の真下や真下周辺の下方にスタンド旋回支持機構を設置し、このスタンド旋回支持機構の下方にリターン側ベルト1bとリターンローラ5を設置する必要がある。そのため、キャリヤ側ベルト1aからリターン側ベルト1bまでの間隔H’を大きく設定する必要があり、ベルトコンベヤ全体が縦に大型化する不具合があった。
【0008】
また、キャリヤ側ベルト1aの上面はバラ物の積載物で汚れ、ベルト1aが左右いずれかに蛇行してキャリヤ側ベルト1aの仰角θで傾斜する左右いずれかの端部の幅が小さくなると、この端部から落荷が生じ易くなる。また、このときの落荷で自動調芯キャリヤアイドラ10のスタンド旋回支持機構やリターン側ベルト1bの上面が汚れ、スタンド旋回支持機構が動作不良を起こして自動調芯キャリヤアイドラ10の旋回性が低下し、キャリヤ側ベルト1aの速やかな蛇行修正ができなくなることがある。さらに、落荷などでスタンド旋回支持機構が動作不良を起こさないように、ベルトコンベヤの稼働を停止させて自動調芯キャリヤアイドラ10の保守点検を高い頻度で行う必要があり、ベルトコンベヤの稼働率を低下させていた。
【0009】
本発明の目的は、保守点検の頻度を少なくしてベルトコンベヤの稼働率を向上させるキャリヤ側ベルト蛇行修正装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記目的を達成するため、対向して互いに逆方向に進行するキャリヤ側ベルトとリターン側ベルトを有するベルトコンベヤにおけるキャリヤ側ベルトの蛇行修正装置であって、キャリヤ側ベルトの幅方向中央部を保持する中部キャリヤローラおよびキャリヤ側ベルトの幅方向両端部を幅方向両端に向け仰角で傾斜させて保持する一対の端部キャリヤローラをローラスタンド上に一列に配置したキャリヤアイドラと、ローラスタンドの左右両端部をそれぞれ支持する一対のスタンド支持部と、キャリヤ側ベルトの蛇行量を検出する蛇行検出部と、蛇行検出部の蛇行量検出信号に基づいてキャリヤアイドラをキャリヤ側ベルトの蛇行を修正する方向に旋回させる旋回制御部とを具備し、一対のスタンド支持部それぞれは、ローラスタンドの軸状端部を軸方向に相対移動可能に支持するガイドレール部と、ガイドレール部を固定する回転部および当該回転部を回転可能に支持する基台部を有するターンテーブルと、基台部をキャリヤ側ベルトの進行方向と平行な前後方向に往復移動可能に支持するリニアレール部と、リニアレール部に対してターンテーブルを前後方向に変位させる旋回駆動源を備え、一対のスタンド支持部それぞれの旋回駆動源を蛇行検出部の蛇行量検出信号に基づいて駆動させて、キャリヤアイドラの両端部が互いに逆方向に旋回するようにキャリヤアイドラをキャリヤ側ベルトの蛇行を修正する方向に旋回させる。
【0011】
ここで、キャリヤアイドラの中部キャリヤローラと端部キャリヤローラは、共通のローラスタンド上にそれぞれが軸受を介して回転可能に設置される。中部キャリヤローラはキャリヤ側ベルトの幅に対応させた単数或いは複数で構成される。複数の中部キャリヤローラの場合は、複数が同軸状に直列に設置される。中部キャリヤローラの両端側に各端部ローラが仰角で配置される。このような各ローラとローラスタンドは、既存の自動調芯キャリヤアイドラを適用することができる。ローラスタンドの両端部を旋回可能に保持する一対のスタンド支持部は、同一構造のものが適用できる。一対のスタンド支持部でローラスタンドの両端部を保持することで、ローラスタンドの両端部を除く中央部の下方が空き、この空き空間を利用してキャリヤ側ベルトにリターン側ベルトを近付けるようにすることで、ベルトコンベヤ全体を縦に小型化することができる。また、一対のスタンド支持部でキャリヤアイドラの両端部が互いに逆方向に旋回するように旋回させることで、キャリヤアイドラが中部キャリヤローラの中央部分を仮想中心として旋回し、キャリヤ側ベルトが蛇行しても落荷が生じ難くなる。さらに、キャリヤ側ベルトが蛇行して落荷が生じても、ローラスタンドの左右両端部の各スタンド支持部に落荷してスタンド支持部が汚れる可能性が少なくなり、スタンド旋回支持機構であるスタンド支持部の保守点検の頻度を小さくすることができる。
【0012】
本発明においては、旋回駆動源は、ターンテーブルの基台部に螺合されたボールねじと、このボールねじを正逆回転させるサーボモータを備えた構造とすることができる。この場合、ボールねじの回転量をロータリーエンコーダなどで検出して、ローラスタンドの旋回量を検知し、検知した電気信号を旋回駆動源の駆動制御に使用することができる。
【0013】
また、本発明においては、キャリヤアイドラのローラスタンドは、中部キャリヤローラを保持する水平な中央部と、この中央部の両端からキャリヤ側ベルトの幅方向両端に向け仰角で傾斜する左右両端部を有し、左右両端部の下方で中央部の延長線より上方に形成される左右一対の部所それぞれにスタンド支持部を配設することができる。
【0014】
ここでのローラスタンドの左右両端部は、既存の自動調芯キャリヤアイドラにおける仰角θと同様な角度で傾斜して、左右両端部の下方に空き空間が生じ、この空き空間にスタンド支持部を配設する。このようにすることで、旋回自在なキャリヤアイドラの設置スペースの中にスタンド支持部を格納することができ、キャリヤ側ベルト蛇行修正装置の縦(高さ)方向の小型化が尚一層に容易になる。
【0015】
また、本発明においては、蛇行検出部は、キャリヤ側ベルトが複数の段階的に異なる蛇行量で蛇行したことを検出して複数の段階的な蛇行量毎に電気信号を出力するセンサー部を備え、旋回制御部は、センサー部からの電気信号に基づいて段階的な蛇行量に応じた駆動制御信号で旋回駆動源を駆動させる駆動制御回路を備えた構造とすることができる。この場合、蛇行検出部に、前述したロータリーエンコーダなどの旋回駆動源の駆動量を検出してローラスタンドの旋回量を検知する駆動量検出手段を設け、この駆動量検出手段の検出信号をも使用して旋回駆動源を制御することができる。
【0016】
ここでのセンサー部は、キャリヤ側ベルトの側端との接触角度がキャリヤ側ベルトの蛇行量に応じて変化する機械式センサーを備えたものや、キャリヤ側ベルトの側端の位置を段階的に非接触で検知する光学式センサーを備えたものが適用できる。キャリヤ側ベルトの蛇行を段階的に検出することで、蛇行量が小さい場合は蛇行修正を緩やかに行い、蛇行量が大きい場合は蛇行修正を速やかに行うことができ、蛇行修正の信頼性が増す。
【0017】
また、センサー部は、キャリヤ側ベルトの幅方向両端それぞれの蛇行量を独自に検出する一対を備えた構造とすることができる。キャリヤ側ベルトの幅方向両端のそれぞれの位置を左右一対の光学式センサーで同時に検知し確認することで、ベルト端部(耳部)にささくれがあっても精度よく蛇行が検知でき、より蛇行修正の信頼性が増す。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、キャリヤ側ベルトの蛇行修正用キャリヤアイドラの左右両端部を一対のスタンド支持部で保持することで、ローラスタンドの両端部を除く中央部分の下方にスタンド旋回支持機構を構築する必要がなくなり、ベルトコンベヤ全体を縦に小型化することが容易になる。また、一対のスタンド支持部でキャリヤアイドラの両端部が互いに逆方向に旋回するように旋回させることで、キャリヤ側ベルトが蛇行してもベルト幅方向両端からの落荷が生じ難くなり、かつ、落荷が生じても左右一対の各スタンド支持部に落荷してスタンド支持部が汚れる可能性が少なくなり、スタンド旋回支持機構の保守点検の頻度を低減させてベルトコンベヤの稼働率を上げることが容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図10を参照して説明する。
【0020】
図1および図2は、図11のベルトコンベヤに適用したキャリヤ側ベルト蛇行修正装置で、図11と同一または相当部分には同一符号を付して説明の重複を避ける。図1および図2に示すキャリヤアイドラ20は、キャリヤ側ベルト1aの幅方向中央部を保持する中部キャリヤローラ21と、キャリヤ側ベルト1aの幅方向両端部を幅方向両端に向け仰角θで傾斜させて保持する一対の端部キャリヤローラ22を共通のローラスタンド23上に一列に設置して構成される。ローラスタンド23上に突設した複数の軸受24に各キャリヤローラ21,22が回転自在に支持される。ローラスタンド23は、水平な直線状の中央部23aと、中央部23aの左右両端から仰角θ’で延在する左右一対の傾斜端部23bと、各傾斜端部23bの上端から水平方向に延在する水平端部23cを有する。
【0021】
図1と図2に示すキャリヤ側ベルト蛇行修正装置は、ローラスタンド23の左右両端部23cを旋回動作可能に支持する一対のスタンド支持部30と、キャリヤ側ベルト1aの蛇行量を検出する蛇行検出部50と、蛇行検出部50の蛇行量検出信号に基づいてキャリヤアイドラ20をキャリヤ側ベルト1aの蛇行を修正する方向に旋回させる旋回制御部60を備える。
【0022】
左右一対のスタンド支持部30は同一構造で、具体的構造を図3〜図6に示す。同図のスタンド支持部30は、ローラスタンド23の軸状端部を軸方向に相対移動可能に支持するガイドレール部31と、ガイドレール部31を固定する回転部32bおよび回転部32bを回転可能に支持する基台部32aを有するターンテーブル32と、基台部32aをキャリヤ側ベルト1aの進行方向と平行な前後方向Yに往復移動可能に支持するリニアレール部33と、リニアレール部33に対してターンテーブル32を前後方向Yに変位させる旋回駆動源35を備える。前後方向Yに平行な固定フレーム36上にリニアレール部33が固定され、リニアレール部33に旋回駆動源35が連結される。図1と図2の鎖線で示される43はカバーで、左右一対のスタンド支持部30それぞれに設置される。カバー43は、スタンド支持部30を覆うように固定フレーム36に設置される。左右一対のスタンド支持部30それぞれの旋回駆動源35を蛇行検出部50の蛇行量検出信号に基づいて駆動させると、キャリヤアイドラ20の両端部が互いに逆方向に旋回するようにキャリヤアイドラ20がキャリヤ側ベルト1aの蛇行を修正する方向に旋回する。
【0023】
図4の場合、ローラスタンド23は断面逆V形の剛体を示す。ローラスタンド23は、丸パイプやH鋼パイプなどの剛体も適用可能である。ローラスタンド23の左右両端部23cの下端に補強板40を固定し、補強板40の下面にガイド棒41を固定する。ガイド棒41は前後方向Yと直交する左右方向Xに延在する直線状の角棒である。リニアレール部33はU字溝形で、固定フレーム36上に前後方向Yに平行に固定される。リニアレール部33の中にターンテーブル32の基台部32aが前後方向Yに前後移動可能に嵌合され、基台部32a上に円形で水平な回転部32bが回転可能に連結される。この円形回転部32上に直径方向にガイドレール部31が固定される。ガイドレール部31はU字溝形のリニアレールで、ガイド棒41が軸方向に相対摺動可能に嵌合される。図1および図2の鎖線で示すキャリヤ側ベルト1aが蛇行しない中立位置にあるとき、図5に示すようにローラスタンド23とガイド棒41が左右方向Xに平行で、ガイド棒41がガイドレール部31に左右方向Xに摺動可能に支持される。
【0024】
旋回駆動源35は、リニアレール部33内に前後方向Yに平行に設置されたボールねじ35aと、ボールねじ35aを正逆回転させるサーボモータ35bを備える。サーボモータ35bの駆動軸が減速装置35cを介してボールねじ35aに連結される。ボールねじ35aがターンテーブル32の基台部32aに螺合されて基台部32aを貫通する。サーボモータ35bでボールねじ35aを正逆回転させると、基台部32aが前後方向Yに前後動し、基台部32aと一体的にターンテーブル32とガイドレール部31が前後動する。図5に示すローラスタンド23の片端側のスタンド支持20のガイドレール部31が前後動するとき、このガイドレール部31と一体にガイド棒41が前後動する。このとき、ローラスタンド23の他端側が前後動しないとすると、この他端側を支点に図6に示すようにローラスタンド23が前後方向Yに旋回する。この旋回で前後動するガイドレール部31に対してガイド棒41が摺動し、ターンテーブル32の回転部32bが回転して、ローラスタンド23の旋回を安定した円滑なものにする。
【0025】
左右一対のスタンド支持部30の旋回駆動源35それぞれに駆動量検出手段例えばロータリーエンコーダ38を設置する。ロータリーエンコーダ38は、旋回駆動源35のボールねじ35aの回転量を検出する。ロータリーエンコーダ38は、固定フレーム36上に設置され、ボールねじ35aの先端に連接される。左右一対のスタンド支持部30の各ロータリーエンコーダ38で対応するボールねじ35aの回転量を検出することで、ローラスタンド23の旋回量が検知される。このような旋回量情報を左右一対の旋回駆動源35の駆動に利用することで、後述するキャリヤアイドラ20の旋回によるキャリヤ側ベルト1aの蛇行修正がより精度よく行うことができる。
【0026】
左右一対のスタンド支持部30は、図8に示すように、ローラスタンド23の左右一対の両水平端部23cと固定フレーム36の間の部所nに設置する。この部所nは、ローラスタンド23の中央部23aの左右両端の延長線より上方にあり、ローラスタンド23の左右両端部である傾斜端部23bと水平端部23cの下方にある空間である。この部所nを利用してスタンド支持部30を配設することで、キャリヤアイドラ20の旋回を見込んだ左右両端側のアイドラ設置スペースの中に一対の各スタンド支持部30を格納することができる。また、ローラスタンド23の真下にリターン側ベルト1bを十分近づけて設置することが容易になり、キャリヤ側ベルト蛇行修正装置の縦(高さ)方向の小型化が容易に図れる。
【0027】
蛇行検出部50は、キャリヤ側ベルト1aの片側あるいは両側の側端位置を検出して、キャリヤ側ベルト1aの蛇行量を検出する。図1及び図2の鎖線で示す左右一対の蛇行検出部50は、キャリヤ側ベルト1aの幅方向両端部それぞれの側端位置を独自に検出する。この左右一対の蛇行検出部50は同一で、以下、一方の具体例を説明する。蛇行検出部50は、例えば図9および図10に示すように複数の光学センサー51を左右方向Xに一列に並べたセンサー部52を備える。キャリヤ側ベルト1aの幅方向に複数の光学センサー51を互いに離隔させて一列に配置する。センサー部52は、キャリヤ側ベルト1aの片側端の上方定位置に設置される。各光学センサー51は反射型で、センサー部52の下面に下向きに設置される。
【0028】
センサー部52の光学センサー51の数は、例えば5個である。キャリヤ側ベルト1aがほとんど蛇行しない中立位置にあるときに、ベルト側端を検出する中立検知用光学センサー51aと、中立検知用光学センサー51aの左右両側方に2個ずつ配置されてキャリヤ側ベルト1aの蛇行量を大小二段階で検知する内側2個の蛇行検知用光学センサー51b、51cと外側2個の蛇行検知用光学センサー51d、51eを備える。キャリヤ側ベルト1aが左右いずれか方向に予め設定された小段階の蛇行量まで蛇行すると、これを内外の蛇行検知用光学センサー51bまたは51dが検出し、蛇行が小段階と検知される。キャリヤ側ベルト1aが左右いずれか方向に前述の小段階の蛇行量を超えて予め設定された大段階の蛇行量まで蛇行すると、これを内外の蛇行検知用光学センサー51cまたは51eが検出し、蛇行が大段階と検知される。
【0029】
5個の各光学センサー51で検出されたベルト有無検知による蛇行量検知信号が旋回制御部60で演算処理されて、キャリヤ側ベルト1aがほとんど蛇行しない中立位置にあるか、大小二段階のいずれの段階まで蛇行しているかが検出される。この演算処理結果に基づいて旋回制御部60が左右一対のスタンド支持部30の各サーボモータ35bを駆動制御して、蛇行修正用キャリヤアイドラ20の段階的な旋回駆動が行われる。同時に左右一対のスタンド支持部30の各ロータリーエンコーダ38から得られたローラスタンド23の旋回量情報からキャリヤアイドラ20の位置を監視し、確認することができる。
【0030】
旋回制御部60は、蛇行検出部50の蛇行検知用光学センサー51からの段階的な蛇行量検知信号を演算処理してキャリヤ側ベルト1aの左右いずれかの蛇行方向と蛇行量を検出する演算処理回路61と、演算処理回路61で検出された蛇行方向と蛇行量およびキャリヤ側ベルト1aの進行速度に基づいて左右一対のスタンド支持部30の各旋回駆動源35を駆動させる駆動制御回路62を備える。駆動制御回路62は、演算処理回路61で検出されたキャリヤ側ベルト1aの段階的な蛇行量と進行速度に基づいて左右一対の各サーボモータ35bの駆動速度や駆動時間を制御する。駆動制御回路62は、キャリヤ側ベルト1aの蛇行量が小段階であり進行速度が高速である場合に、蛇行修正用キャリヤアイドラ20を緩やかに所定の旋回角度まで旋回させる制御を行う。また、駆動制御回路62は、キャリヤ側ベルト1aの蛇行量が大段階で進行速度が低速の場合に、蛇行修正用キャリヤアイドラ20を速やかに所定の旋回角度まで旋回させる制御を行う。
【0031】
図2に示すように、左右一対のスタンド支持部30は互いにY方向の向きを180°反対にして設置される。この左右一対のスタンド支持部30の各サーボモータ35bは共通の駆動制御回路62からの駆動制御信号にて同期して同速で駆動することで、蛇行修正用キャリヤアイドラ20をその左右両端部が互いに逆方向に旋回するようにして旋回させる。その動作例を図7および図8を参照して説明する。
【0032】
図7と図9の一点鎖線で示すキャリヤ側ベルト1aは、ほとんど蛇行していない中立位置にある。このとき、センサー部52の内側2個の蛇行検知用光学センサー51c、51bがベルト有り信号を出力し、外側2個の蛇行検知用光学センサー51e、51dがベルト無し信号を出力し、中央の中立検知用光学センサー51aがベルト有りまたは無し信号を出力する。これらのセンサー検出信号を演算処理回路61で演算処理することで、キャリヤ側ベルト1aが蛇行修正する必要のない中立位置にあると判別され、駆動制御回路62にモータ駆動制御信号は出力されない。図2の状態で左右一対のサーボモータ35bは駆動せず、蛇行修正用キャリヤアイドラ20は旋回せずにキャリヤ側ベルト1aの搬送動作のみを行う。
【0033】
図7の一点鎖線のキャリヤ側ベルト1aが、例えば図7の二点鎖線に示すように進行方向Pに対して右方向に許容量を超えて蛇行したとする。この蛇行が蛇行検出部50で検出され、旋回制御部60から左右一対のスタンド支持部30の各サーボモータ35b,35bに駆動制御信号が出力されて、各サーボモータ35b,35bが同時に同速で駆動する。この駆動で各ボールねじ35a、35aが同時に同速で正逆いずれかに回転して、キャリヤアイドラ20を中部キャリヤローラ21の中央部を仮想中心Sにして図7で反時計方向に旋回させ、キャリヤ側ベルト1aの蛇行を修正する。このようなキャリヤアイドラ20の旋回は、図12の自動調芯キャリヤアイドラ10の旋回と同様である。
【0034】
上記蛇行修正の動作において、左右一対のスタンド支持部30の各サーボモータ35b、35bを同時に同速で駆動させているが、図7で右側のサーボモータ35bのみを駆動させても、キャリヤアイドラ20が反時計方向に旋回してキャリヤ側ベルト1aの蛇行が修正できる。このような蛇行修正の場合は、キャリヤアイドラ20が図7で左側の端部を仮想中心として旋回することになる。ベルトの左右両端部を端部ローラ22,22で仰角θで傾斜させて落荷し難いようにしたキャリヤ側ベルト1aにおいては、キャリヤアイドラ20を仮想中心Sを中心に旋回させることが、ベルト左右両端部の変位による落荷をより低減させる上で望ましい。また、キャリヤ側ベルト1aが多少蛇行しても、ベルト1aの左右両側端の真下から左右一対のスタンド支持部30が少し離れた定位置にあるので、落荷が生じてもスタンド支持部30へと落下することが少なく、落荷でスタンド支持部30が汚される可能性が少ない。そのため、スタンド支持部30の保守点検の頻度を少なくして、ベルトコンベヤの稼働率を上げることが容易になる。
【0035】
なお、本発明のキャリヤ側ベルト蛇行修正装置は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施の形態を示す正面図である。
【図2】図1蛇行修正装置の平面図である。
【図3】図1蛇行修正装置の部分側面図である。
【図4】図3蛇行修正装置の一部分解斜視図である。
【図5】図3蛇行修正装置の一部省略部分を含む平面図である。
【図6】図5蛇行修正装置の動作時の平面図である。
【図7】図2蛇行修正装置の蛇行修正動作時の平面図である。
【図8】図7蛇行修正装置の正面図である。
【図9】図2蛇行修正装置における蛇行検出部の概要を示す平面図である。
【図10】図9蛇行検出部の正面図である。
【図11】一般的なベルトコンベヤの概要を示す側面図である。
【図12】従来のキャリヤ側ベルト蛇行修正装置の概要を示す正面図である。
【符号の説明】
【0037】
1a キャリヤ側ベルト
1b リターン側ベルト
3 キャリヤローラ
5 リターンローラ
20 キャリヤアイドラ
21 中部キャリヤローラ
22 端部キャリヤローラ
23 ローラスタンド
24 軸受
30 スタンド支持部
31 ガイドレール部
32 ターンテーブル
32a 基台部
32b 回転部
33 リニアレール部
35 旋回駆動源
35a ボールねじ
35b サーボモータ
36 固定フレーム
38 ロータリーエンコーダ
40 補強板
41 ガイド棒
43 カバー
50 蛇行検出部
51 光学センサー
52 センサー部
60 旋回制御部
61 演算処理回路
62 駆動制御回路
S 仮想中心
X 左右方向
Y 前後方向
θ 仰角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向して互いに逆方向に進行するキャリヤ側ベルトとリターン側ベルトを有するベルトコンベヤにおける前記キャリヤ側ベルトの蛇行修正装置であって、
前記キャリヤ側ベルトの幅方向中央部を保持する中部キャリヤローラおよび前記ベルトの幅方向両端部を幅方向両端に向け仰角で傾斜させて保持する左右一対の端部キャリヤローラをローラスタンド上に一列に配置したキャリヤアイドラと、前記ローラスタンドの左右両端部をそれぞれ支持する一対のスタンド支持部と、前記キャリヤ側ベルトの蛇行量を検出する蛇行検出部と、前記蛇行検出部の蛇行量検出信号に基づいて前記キャリヤアイドラを前記キャリヤ側ベルトの蛇行を修正する方向に旋回させる旋回制御部とを具備し、
前記一対のスタンド支持部それぞれは、前記ローラスタンドの軸状端部を軸方向に相対移動可能に支持するガイドレール部と、前記ガイドレール部を固定する回転部および当該回転部を回転可能に支持する基台部を有するターンテーブルと、前記基台部を前記キャリヤ側ベルトの進行方向と平行な前後方向に往復移動可能に支持するリニアレール部と、前記リニアレール部に対して前記ターンテーブルを前記前後方向に変位させる旋回駆動源を備え、
前記一対のスタンド支持部それぞれの前記旋回駆動源を前記蛇行検出部の蛇行量検出信号に基づいて駆動させて、前記キャリヤアイドラの両端部が互いに逆方向に旋回するようにキャリヤアイドラを前記キャリヤ側ベルトの蛇行を修正する方向に旋回させることを特徴とするキャリヤ側ベルト蛇行修正装置。
【請求項2】
前記旋回駆動源は、前記ターンテーブルの基台部に螺合されたボールねじと、当該ボールねじを正逆回転させるサーボモータを備えたことを特徴とする請求項1に記載のキャリヤ側ベルト蛇行修正装置。
【請求項3】
前記ローラスタンドは、前記中部キャリヤローラを保持する水平な中央部と、この中央部の両端から前記キャリヤ側ベルトの幅方向両端に向け仰角で傾斜する左右両端部を有し、前記左右両端部の下方で前記中央部の延長線より上方に形成される左右一対の部所それぞれに前記スタンド支持部を配設したことを特徴とする請求項1または2に記載のキャリヤ側ベルト蛇行修正装置。
【請求項4】
前記蛇行検出部は、前記キャリヤ側ベルトが複数の段階的に異なる蛇行量で蛇行したことを検出して複数の段階的な蛇行量毎に電気信号を出力するセンサー部を備え、
前記旋回制御部は、前記センサー部からの電気信号に基づいて前記段階的な蛇行量に応じた駆動制御信号で前記旋回駆動源を駆動させる駆動制御回路を備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一記載のキャリヤ側ベルト蛇行修正装置。
【請求項5】
前記センサー部は、前記キャリヤ側ベルトの幅方向両端それぞれの蛇行量を独自に検出する一対を備えたことを特徴とする請求項4に記載のキャリヤ側ベルト蛇行修正装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−154997(P2009−154997A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−332621(P2007−332621)
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【出願人】(504385982)株式会社JRC (17)
【Fターム(参考)】