説明

キーライト機能を備えた鍵

本発明は、少なくとも1つの光源(5)と、少なくとも1つのコード列を2進の形態で記憶するための記憶回路(20)と、記憶されているコード列を光源(5)のための駆動出力に変換するドライバユニット(10)とを有するキーライト機能を備えた鍵に関する。コード列は光源から人間の目に見える波長で光束の時間的または色的な変化を介して放射され、また光源(5)はガイド光としても使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの光源と、少なくとも1つのコード列を記憶するための記憶回路と、記憶されているコード列を光源のための駆動出力に変換するドライバユニットとを有する、キーライト機能を備えた鍵に関する。
【0002】
キーライトとは小さい照明と解される。そのようなキーライトは小型であることから通常はキーリングに取り付けられ、またユーザ自身のガイドのためにユーザによって必要に応じて短時間スイッチオンされるものである。鍵とは、その鍵に対応する少なくとも1つの錠を施錠することができるよう構成されている鍵を意味する。
【背景技術】
【0003】
従来のキーライトの構造は非常に単純なものであり、通常の場合は、バッテリ、スイッチまたはボタン、また光源しか設けられていない。それらのキーライトは単にガイド用の照明器具として使用できるものに過ぎず、その他の機能は備えていない。
【0004】
EP954665A1からは、光学的な鍵を用いる盗難防止装置が公知であり、この光学的な鍵は赤外線放射を介してコード列を自動車の錠に送信し、自動車の錠はコードを検査し、コードが適切であればエンジンの始動を許可する。この光学的な鍵は、付加的に光学的な鍵機能が実装されている機械的な鍵として構成されている。
【0005】
しかしながらこのような鍵は、コード列を含む光が可視ではないことから、ユーザは自身の鍵から送信されたコード列が実際に自動車の錠内の赤外線受光部によって受信されたか否かを目で見て確認できないという欠点を有する。したがって大抵の場合は、解錠されるまで、またはエンジンが始動されるまで、コード列の送信を何度も試みなければならない。また可視光が送出されないので、そのような鍵をキーライトとして使用することができない。
【0006】
発明が解決しようとする課題
本発明の課題は、ユーザとのインタラクションおよび機能性が改善されている、少なくとも1つの光源と、少なくとも1つのコード列を記憶するための記憶回路と、記憶されているコード列を光源のための駆動出力に変換するドライバユニットとを有するキーライト機能を備えた鍵を提供することである。
【0007】
発明の概要
本発明によれば、この課題は、コード列を光源から人間の目に見える波長で光束の時間的または色的な変化を介して放射することができ、また、光源をガイド光としても使用することができる、少なくとも1つの光源と、少なくとも1つのコード列を記憶するための記憶回路と、記憶されているコード列を光源のための駆動出力に変換するドライバユニットとを有するキーライト機能を備えた鍵によって解決される。
【0008】
コード列を送信するために使用することができるデータレートを高めるために、光源は有利には半導体光源である。コード列が連続的に放射される場合には、それにより生じる光をガイド光として利用することができる。択一的に、光源は可視光によるコード列を放射することができるか、ガイド光としての可視光を連続的に放射することができる。
【0009】
鍵は有利には光源を起動させるための第1のスイッチを有する。殊に有利には第2のスイッチを有し、その場合、第1のスイッチによって光源の連続的な放射が行われ、第2のスイッチによってコード列の放射が作動される。鍵は自身の光源を用いて複数の色の光を放射することができる。有利には、鍵が連続的に放射される光の色とは異なる色の光でコード列を放射する。これによって、ユーザは何時コード列が送出されたかを識別することができる。
【0010】
鍵は複数のコード列を記憶することができる。これによって1つの鍵で複数の錠を開くことができる。つまり鍵をより汎用的に使用することができる。有利には、鍵が種々のコード列を異なる色の光もしくは異なる波長で放射する。これによってコード列と種々の錠との対応付けをユーザは容易に識別することができる。
【0011】
鍵は有利には、種々のコード列ならびに連続的な光を選択するための複数のスイッチまたはボタンと、予め選択された機能を起動させるための少なくとも1つのスイッチまたはボタンとを有する。このことはユーザにとっての論理的で明快な操作ガイドとなる。この操作ガイドをさらに簡略化するために、鍵は有利には解錠ないし施錠の機能に関して、それぞれ1つの固有のスイッチまたはボタンを有する。鍵は連続的な光を、少なくとも3つの異なる波長から成る混色光である白色光として送出する。
【0012】
鍵は光信号を受信するために感光性の受信器を有することができる。これは、盗聴に対する安全性を高めるために、鍵と錠との間での双方向の信号符号化方法に使用することができる。有利には、鍵における受信器自体が光源である。耐用期間を延ばすために、鍵は蓄電池を有していることが望ましい。操作性をさらに改善するために、鍵は光学的な構成要素を有することができ、それらの構成要素によって、光源から放射された光を前方に少なくとも2段階で集束させることができる。
【0013】
本発明による鍵のさらに有利な発展形態および構成は別の従属請求項および以下の説明より明らかになる。
【0014】
本発明による鍵はガイド光を放射するための照明を含んでいるので、下記においてはキーライトとも記す。
【0015】
以下では、実施例に基づき本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1a】キーライトの機能ユニットのブロック回路図を示す。
【図1b】キーライトによって施錠および解錠することができる錠の機能ユニットのブロック回路図を示す。
【図2a】本発明によるキーライトの一実施例の斜視図を示す。
【図2b】本発明によるキーライトの一実施例の平面図を示す。
【0017】
発明の有利な実施形態
図1には、本発明によるキーライトの有利な実施形態のブロック回路図が示されている。本発明は、光によってデータを自由空間に伝送できるということを基礎としている。有利な実施形態においては、光源として異なる色の光を放射する複数の発光ダイオードが使用される。殊に有利には、赤色、緑色ならびに青色の光を放射することができる3つの発光ダイオードチップが1つの発光ダイオードに統合されているRGB発光ダイオードが使用される。3つ全ての発光ダイオードチップがスイッチオンされると、発光ダイオードは加色混合によって白色光を形成する。それらの発光ダイオードチップを局部において非常に近接させて配置することができるので、人間の眼の解像度では光源を判別することはできず、したがって白色光が認識される。したがって基本的には、光の全てのスペクトル領域を利用することができる。すなわち、白色光も有色光もデータ伝送のための伝送媒体として使用することができる。
【0018】
有利な実施形態においては、あらゆる種類の錠の可視光による解錠および施錠を遠隔制御するためにデータ伝送のこのような可能性が使用される。このためにキーライトはキーライトにエネルギを供給する1つのバッテリまたは1つの蓄電池2を有する。エネルギは中央のドライバ回路10に供給される。ドライバ回路10は発光ダイオード5における異なる色の光を放射する3つの発光ダイオードチップ51,52,53を駆動させるよう構成されている。この実施形態においては発光ダイオードチップを個別に制御することができる。発光ダイオードの可視光によってデータを伝送できるようにするために、本発明によるキーライトは、データを2進の形態の種々のコード列を記憶する記憶回路20も有する。記憶回路はドライバ回路と接続されており、要求されたコード列を要求に応じてドライバ回路に供給する。要求は例えばボタン装置のアクションボタン31,32のうちの一方が押されることによって行われる。一方のボタン31は解錠に使用され、他方のボタン32は施錠に使用される。ボタン31または32が押されると、コード列がドライバ回路に伝送され、ドライバ回路はそのコード列を駆動電流として発光ダイオード5に送出する。コード列は発光ダイオード5の光束を時間的に変化させることによって送信される。しかしながらコード列を、光の色を時間的に変化させることによって送信することもできる。コード列は解錠もしくは施錠されるべき錠に関する組み合わせを含む。
【0019】
有利な実施形態においては、種々の錠に関して複数の異なるコード列を選択して送信することができる。このためにボタンフィールド30が設けられており、このボタンフィールド30は上述した解錠ないし施錠のためのアクションボタン31,32の他にも、複数の選択ボタン33,34,36を有することができる。これらの選択ボタンによって所望の機能が事前に選択され、続いてアクションボタンを介して選択された機能が実施される。暗闇においても容易に判別できるように突起部が設けられているボタン34により機能「ガイド光」が選択され、この機能においては発光ダイオードが持続的に白色光を放射する。光の一部が内側に向かって放射され、それにより透明なボタンが照明されるようにキーライトの内部を構成することができるので、容易に判別できるガイド光を介して選択ボタンが照明される。これら3つのボタン33,35,36は、解錠もしくは施錠されるべき種々の錠に対して異なるコード列を選択する。ボタン31ないし32が押されることによってコード列が送信される。このために、送出される光出力が時間的に変更され、また光束の変化は錠に対するコード列を含む。しかしながらまた、光束を実質的に一定に維持し、その代わりに光の色位置を変化させることも考えられる。錠が例えば101101の組み合わせを有し、いわゆるオン・オフキーイング(「1」もしくは「0」に関する光のオン・オフ)がコーディングプロトコルとして使用され、この組合せを高速な変調によって錠に伝送することができる(オン・オフ・オン・オン・オフ・オン)。変調周波数は可視光における不快なちらつきが生じないように大きく選定されている。すなわち、送信されるシンボル長はそのようなちらつきが生じないように短く選定されている。伝送に関する安全性および盗聴に対する安全性を高めるため、またユーザが覚えやすくするために、異なる錠に対するコード列は有利には異なる色で送出される。このことは各錠に対して1つの色を覚えればよいことを意味している。すなわち赤色の錠、青色の錠などを覚えればよい。送出される色は使用されるRGB発光ダイオードの原色であってもよいが、RGB発光ダイオードによって表すことができる任意の混色光であってもよい。錠自体がカラーフィルタを有することができるので、適切な波長の信号しか受信部には到達しない。これによってシステムの安全性が著しく高められる。何故ならば、錠に関して表すことができるコード列の数の他に別の符号化判定基準が表されるからである。
【0020】
このために錠には感光性の受信部62が設けられている。この受信部62にはカラーフィルタ624を設けることができ、これにより上述のように「適切な色」のコード列だけを受信することができる。フォトダイオード622によって受信された信号は復号化器60に伝送される。復号化器60は信号から2進のコード列を再び生成する。このコード列が比較記憶回路70において比較される。一致する場合には、錠80における電気的な駆動部82が起動され、この駆動部82は解錠機能または施錠機能に関して錠機構84に作用する。
【0021】
図2には、本発明によるキーライトの有利な実施形態が斜視図および平面図で示されている。キーライトは無線式車両キーと同じ大きさであるか、それより小さくすることもできる。キーライトをキーリング4によってユーザの一般的な鍵束に含ませることができる。前面には多色発光ダイオード5が取り付けられており、この多色発光ダイオード5によって種々の色の集束された複数の光束56,57,58を送出することができる。光束56は例えば赤色であり、光束57は例えば緑色であり、光束58は例えば青色である。これら3つの機能を3つの選択ボタン33,35および36によって選択することができ、このために有利には、それらの選択ボタンには対応する色がそれぞれ印刷されている。ボタン34はガイド光を選択するためのものである。このボタン34を非常に簡単に選択できるようにするためにボタン34には突起部が設けられているので、暗闇においても容易に発見することができる。
【0022】
本発明によるキーライトは従来技術から公知の機械的な鍵に比べて以下の利点を提供する。
【0023】
鍵をもはや機械的な錠に差し込む必要はないので、解錠ないし施錠がより楽でより容易になる。
【0024】
機械的な消耗が生じない。
【0025】
開閉機構を隠すことができるので、錠の位置を特定して錠をこじ開けることが困難になる。
【0026】
コード列を簡単に変更することができる。それどころか鍵が受信器を有している場合には、錠は新たなコード列を鍵に設定することができ、これによりコード列の解読が困難になる。
【0027】
本発明によるキーライトは、従来技術から公知である無線技術を基礎とする鍵に比べて以下の利点を提供する。
【0028】
光を非常に簡単に集束させることができる。これによって、一般的にあらゆる方向に放射を放出する無線技術に比べて、盗聴に対する内在的な安全性が得られる。
【0029】
鍵組み合わせの無線伝送のために、ライセンスの必要のない周波数帯域が使用される。
【0030】
放射は非透過性の対象によって簡単に遮蔽することができ、また局所的なものにすることができる。このことは、盗聴に対する付加的な安全性を表す。
【0031】
達成可能な雑音電力比、したがって送信されるシンボルの検出可能性は、無線技術の場合に比べて、距離が大きくなるに連れ大幅に低下する。これによって、盗聴に対する付加的な安全性が保証される。
【0032】
本発明によるキーライトは、赤外線技術を基礎とする公知の鍵に比べてさらに利点を提供する。他の無線鍵技術とは決定的に異なる特徴のうちの1つとして光の可視性が挙げられる。この光の可視性によって以下の有利な特性が得られる。
【0033】
不可視の赤外線放射とは異なり、光が可視であることから光を容易に配向させることができる。
【0034】
配向が赤外線鍵の場合よりも遙かに容易でシステマチックであることによって、光の放射角度を一般的な赤外線鍵の放射角度に比べて著しく小さくすることができる。これによって、例えば伝送に必要とされる光量を非常に簡単に制限することができる(放射角度よりも小さくなる)。さらには、例えばレンズを用いて放射角度を動的に適合させることによって、鍵の機能が損なわれることなく、鍵の到達距離を動的に制御することもできる。
【0035】
この動的な適合はバッテリの寿命を延ばすためにも使用することができる(大きい放射角度でもって錠検出器が探索され、続いて放射が集束され、コード列が伝送され、また光束が十分大きくなるまで、鍵シーケンスが誤りなく錠に伝送されるよう追従制御が行われる。この構成によって鍵シーケンスの伝送を盗聴することはほぼ不可能になる)。
【0036】
殊に無線技術に比べて、しかしながらまた赤外線技術に比べても、盗聴に対する安全性は高まっている。何故ならば、ユーザは光円錐の範囲内に他の光検出器が存在するか否かを判断できるからである。
【0037】
さらには、周囲が暗いときには、鍵を付加的にガイド光としても使用することができる。したがって2つの機能ユニット、すなわちポケットライトおよび鍵が組み合わされて単一のユニットに統合される。
【0038】
無線技術および赤外線技術を使用する場合に比べて心理的に受け入れやすい(ユーザは放射を見ることができ、また経験上(弱い)光は有害ではないことを知っている)。
【0039】
いわゆるRGB発光ダイオードが使用されることによって、色変化を介して鍵が何時伝送されるかをシグナリングすることができる。したがって、ユーザは鍵シーケンスがそもそも送信されたか否か、またどの時点に鍵シーケンスが送信されたかを管理することができる(ロバストネスが高まり、また盗聴に対する安全性が高まる)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの光源(5)と、少なくとも1つのコード列を記憶するための記憶回路(20)と、記憶されているコード列を前記光源(5)のための駆動出力に変換するドライバユニット(10)とを有するキーライト機能を備えた鍵において、
前記コード列を光源から人間の目に見える波長で光束の時間的または色的な変化を介して放射し、かつ、
前記光源(5)をガイド光としても使用することを特徴とする、鍵。
【請求項2】
前記光源(5)は半導体光源である、請求項1記載の鍵。
【請求項3】
前記コード列を連続的に放射し、生じる光をガイド光として使用する、請求項1または2記載の鍵。
【請求項4】
前記光源(5)は、可視光によってコード列を放射し、または、可視光を連続的に放射する、請求項1または2記載の鍵。
【請求項5】
前記光源(5)を起動させるための第1のスイッチ(32)を有する、請求項1から4までのいずれか1項記載の鍵。
【請求項6】
第2のスイッチを有し、前記第1のスイッチ(32)によって前記光源(5)を連続的に放射させ、前記第2のスイッチによって前記コード列の放射が作動される、請求項5記載の鍵。
【請求項7】
前記光源(5)は複数の色の光を放射する、請求項1から6までのいずれか1項記載の鍵。
【請求項8】
連続的に放射される光の色とは異なる色の光で前記コード列を放射する、請求項7記載の鍵。
【請求項9】
複数のコード列を記憶する、請求項8記載の鍵。
【請求項10】
種々の符号列を異なる色の光もしくは異なる波長で放射する、請求項9記載の鍵。
【請求項11】
種々の符号列ならびに連続的な光を選択するための複数のスイッチまたはボタン(33,34,35,36)と、予め選択された機能を起動させるための少なくとも1つのスイッチまたはボタン(31,32)とを有する、請求項10記載の鍵。
【請求項12】
解錠ないし施錠の機能に関して、それぞれ1つの固有のスイッチまたはボタン(31,32)を有する、請求項11記載の鍵。
【請求項13】
連続的な光を少なくとも3つの異なる波長を有する白色光として放射する、請求項8から11までのいずれか1項記載の鍵。
【請求項14】
光信号を受信する感光性の受信器を有する、請求項1から13までのいずれか1項記載の鍵。
【請求項15】
前記受信器は前記光源(5)自体である、請求項14記載の鍵。
【請求項16】
蓄電池(2)を有する、請求項1から15までのいずれか1項記載の鍵。
【請求項17】
光学的な構成要素を有し、該構成要素によって、前記光源(5)から放射された光が前方に少なくとも2段階で集束される、請求項1から16までのいずれか1項記載の鍵。

【図1a】
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【図1b】
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【図2a】
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【図2b】
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【公表番号】特表2011−525220(P2011−525220A)
【公表日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−513975(P2011−513975)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【国際出願番号】PCT/EP2009/056626
【国際公開番号】WO2009/153158
【国際公開日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【出願人】(504458493)オスラム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (168)
【氏名又は名称原語表記】Osram Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Hellabrunner Strasse 1, D−81543 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】