ギア装置および印刷装置
【課題】クラッチ歯の先端間隔のばらつきを吸収してふたつのクラッチ歯を噛合させる。
【解決手段】複数の第1の嵌合歯を有する固定ギアと、それぞれの前記第1の嵌合歯と嵌合する複数の第2の嵌合歯を有する移動ギアとを有し、前記固定ギアおよび前記移動ギアが同軸上に設けられたギア装置において、それぞれの前記第1の嵌合歯およびそれぞれの前記第2の嵌合歯のうち、ひとつの嵌合歯を、他の嵌合歯より長く形成した。
【解決手段】複数の第1の嵌合歯を有する固定ギアと、それぞれの前記第1の嵌合歯と嵌合する複数の第2の嵌合歯を有する移動ギアとを有し、前記固定ギアおよび前記移動ギアが同軸上に設けられたギア装置において、それぞれの前記第1の嵌合歯およびそれぞれの前記第2の嵌合歯のうち、ひとつの嵌合歯を、他の嵌合歯より長く形成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力の伝達ならびにその伝達を遮断するクラッチを有するギア装置およびそのギア装置を備えた印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のギア装置には、同軸上に取り付けられた二つの側面歯を噛合させるようにしているものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このように二つの側面歯を噛合させて動力を伝達する従来のギア装置を備えた印刷装置を図10の従来例における印刷装置の構成を示す説明図および図11の従来例における印刷装置の用紙モード切替機構およびギア装置の構成を示す説明図に基づいて説明する。
【0004】
図10および図11において、印刷装置としてのインパクトプリンタは、用紙搬送の動力源となるLF(Line Feed)モータ101の回転軸にドライブプーリ102が固定さており、単票103または帳票104を搬送するふたつのフィードローラ105とそれぞれのフィードローラ105の回転軸と同軸上に固定されたフィードプーリ106、107との間を単票ベルト108で連結し、LFモータ101の動力をフィードローラ105に伝達している。
【0005】
また、フィードプーリ106と、帳票104を搬送するトラクタ109を駆動させるための回転軸であるトラクタシャフト110と同軸上に取り付けられたクラッチプーリ111との間を、単票ベルト108と並列して帳票ベルト112で連結し、LFモータ101の動力をクラッチプーリ111に伝達している。
【0006】
トラクタシャフト110は、非円形の断面であり、一方クラッチプーリ111が取り付けられている部分は円形の断面であり、クラッチプーリ111が回転しても直接その動力が伝達されることはない。トラクタシャフト110は、端部に取り付けられたクラッチ113のクラッチ歯120とクラッチプーリ111に取り付けられたクラッチ歯120が噛合することによりLFモータ101の動力が伝達され、クラッチプーリ111と一体となって回転する。
【0007】
クラッチプーリ111は回転軸方向に移動を規制されているが、トラクタシャフト110のクラッチ113は回転軸方向に摺動可能に構成され、通常はスプリング114によりクラッチプーリ111とクラッチ113との間に一定の距離が保持されている。
【0008】
このようにクラッチプーリ111とクラッチ113との間に一定の距離が保持されている状態ではトラクタ109へ動力を伝達しないため、帳票104を搬送せず単票103を搬送する単票モードとなる。
【0009】
一方、単票モードから帳票104を搬送する帳票モードへ移行する場合、図示しない制御部からの指示によりモードモータ115が駆動され、モードモータ115の回転軸に固定されたギア116と連結されたモードラック117がトラクタシャフト110の方向へスライドし、さらにモードラック117に取り付けられた傾斜部118により、クラッチ113が軸方向にスライドさせられてクラッチプーリ111と接続される。その後、モードラック117は、センサ119で検知されると制御部により停止される。
【0010】
動力伝達部としてのクラッチプーリ111およびクラッチ113は、同数、同一ピッチで先端に丸みがなく鋭角で高さが揃った側面歯としてのクラッチ歯120をそれぞれ有しており、それぞれのクラッチ歯120の凹凸部が噛み合って動力の伝達が可能になり、LFモータ101の動力がトラクタ109まで伝達されて帳票104を搬送する帳票モードになる。
【0011】
このように従来のギア装置は、クラッチプーリ111のクラッチ歯120およびクラッチ113のクラッチ歯120で構成され、それぞれのクラッチ歯120が噛合してLFモータ101の動力をトラクタ109に伝達するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開昭63−92866号公報(2頁、図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上述した従来の技術においては、製造上の誤差等によるそれぞれのクラッチ歯の先端間のピッチのばらつきにより、クラッチプーリのクラッチ歯とクラッチのクラッチ歯とが噛み合わず、単票モードから帳票モードへの切替ができなくなることがあるという問題がある。
【0014】
例えば、図12(a)に示すように製造上の誤差等により、クラッチプーリ111のクラッチ歯120およびクラッチ113のクラッチ歯120の先端がクラッチ歯120の中心からずれていても、先端間のピッチPが一定である場合(クラッチ歯120のEE断面図、FF断面図参照)、凸部120aと凹部120bは噛み合い、動力を伝達することができる。
【0015】
一方、図12(b)に示すように製造上の誤差等により、クラッチプーリ111のクラッチ歯120およびクラッチ113のクラッチ歯120の先端がクラッチ歯120の中心からずれ、クラッチプーリ111のクラッチ歯120のピッチ誤差Gにより隣接する先端間のピッチP1となり、クラッチ113のクラッチ歯120のピッチ誤差Gにより隣接する先端間のピッチP2となり、そのピッチP1がピッチP2より大きくなった場合(クラッチ歯120のEE断面図、FF断面図参照)、ピッチP1のクラッチ歯120にピッチP2のクラッチ歯120が嵌まり込む関係になると凸部120aと凹部120bは噛み合うことなく、動力を伝達することができなくなる。
【0016】
このようにクラッチプーリ111のクラッチ歯120とクラッチ113のクラッチ歯120とが噛み合わず、単票モードから帳票モードへの切替動作においてモードモータが脱調等することによりモードモータの制御が不能になってしまう。
【0017】
本発明は、このような問題を解決することを課題とし、クラッチ歯の先端間隔のばらつきを吸収してふたつのクラッチ歯を噛合させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
そのため、本発明は、複数の第1の嵌合歯を有する固定ギアと、それぞれの前記第1の嵌合歯と嵌合する複数の第2の嵌合歯を有する移動ギアとを有し、前記固定ギアおよび前記移動ギアが同軸上に設けられたギア装置において、それぞれの前記第1の嵌合歯およびそれぞれの前記第2の嵌合歯のうち、ひとつの嵌合歯を、他の嵌合歯より長く形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
このようにした本発明は、クラッチ歯の先端間隔のばらつきを吸収してふたつのクラッチ歯を噛合させることができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1の実施例におけるクラッチの構成を示す説明図
【図2】第1の実施例における印刷装置の構成を示す説明図
【図3】第1の実施例における印刷装置の用紙モード切替機構およびギア装置の構成を示す説明図
【図4】第1の実施例におけるクラッチ歯を示す説明図
【図5】第1の実施例におけるギア装置の動作を示す説明図
【図6】第2の実施例における印刷装置の用紙モード切替機構およびギア装置の構成を示す説明図
【図7】第2の実施例における印刷装置のモード切替部の構成を示す説明図
【図8】第2の実施例におけるリトライ制御処理を示すフローチャート
【図9】従来例におけるリトライ制御処理を示すフローチャート
【図10】従来例における印刷装置の構成を示す説明図
【図11】従来例における印刷装置の用紙モード切替機構およびギア装置の構成を示す説明図
【図12】従来例におけるギア装置の構成を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明によるギア装置およびそのギア装置を備えた印刷装置の実施例を説明する。
【実施例1】
【0022】
図2は第1の実施例における印刷装置の構成を示す説明図である。
【0023】
図2において、印刷装置としてのインパクトプリンタは、用紙搬送の動力源となるLFモータ1の回転軸にドライブプーリ2が固定さており、単票3または連続紙としての帳票4を搬送するふたつのフィードローラ5とそれぞれのフィードローラ5の回転軸と同軸上に固定されたフィードプーリ6、7との間を単票ベルト8で連結し、LFモータ1の動力をフィードローラ5に伝達している。フィードローラ5で搬送された単票3または帳票4は印字ヘッド40により印字される。
【0024】
また、フィードプーリ6と、帳票4を搬送するトラクタ9を駆動させるための回転軸であるトラクタシャフト10と同軸上に取り付けられたクラッチプーリ22との間を、単票ベルト8と並列して帳票ベルト12で連結し、LFモータ1の動力をクラッチプーリ22に伝達している。
【0025】
なお、印刷装置は、図示しないメモリ等の記憶手段に記憶された制御プログラム(ソフトウェア)に基づいて図示しない中央処理演算処理装置等の制御部により、その全体の動作が制御される。
【0026】
図3は第1の実施例における印刷装置の用紙モード切替機構およびギア装置の構成を示す説明図である。なお、図3(a)は用紙モード切替機構を示し、図3(b)はギア装置を示している。
【0027】
図3において、トラクタシャフト10は、非円形の断面であり、一方クラッチプーリ22が取り付けられている部分は円形の断面であり、クラッチプーリ22が回転しても直接その動力が伝達されることはない。
【0028】
このトラクタシャフト10の回転軸上の端部には、クラッチ23が取り付けられ、またトラクタシャフト10の回転軸と同軸となるようにクラッチプーリ22が取り付けられており、クラッチ23のクラッチ歯25(第2の嵌合歯)とクラッチプーリ22に取り付けられたクラッチ歯28(第1の嵌合歯)が嵌合して噛合することによりLFモータ1の動力が伝達され、トラクタシャフト10はクラッチプーリ22と一体となって回転する。
【0029】
固定ギアとしてのクラッチプーリ22は回転軸方向に移動を規制されているが、トラクタシャフト10の移動ギアとしてのクラッチ23は回転軸方向に摺動可能に構成され、通常はスプリング14によりクラッチプーリ22とクラッチ23との間に一定の距離が保持されている。
【0030】
このようにクラッチプーリ22とクラッチ23との間に一定の距離が保持されている状態ではトラクタ9へ動力を伝達しないため、帳票4を搬送せず単票3を搬送する単票モードとなる。
【0031】
一方、単票モードから帳票4を搬送する帳票モードへ移行する場合、図示しない制御部からの指示により、図2に示すモードモータ15が駆動され、モードモータ15の回転軸に固定された図2に示すギア16と連結されたモードラック17がトラクタシャフト10の方向へスライドし、さらにモードラック17に取り付けられた傾斜部18により、クラッチ23が軸方向にスライドさせられてクラッチプーリ22と接続される。その後、モードラック17は、図2に示すセンサ19で検知されると制御部により停止される。
【0032】
このように軸方向にスライド可能なクラッチ23がクラッチプーリ22と接続・切断することにより、トラクタ9への動力の伝達・遮断を可能にしている。
【0033】
動力伝達部としてのクラッチプーリ22およびクラッチ23は、その軸方向の側面に同数、同一ピッチで先端に丸みがなく所定の角(例えば、鋭角)をなすように形成された複数のクラッチ歯をそれぞれ有しており、それぞれのクラッチ歯の凹部(クラッチ歯とクラッチ歯との間隙)と凸部(クラッチ歯)とが嵌合して噛み合い、動力の伝達が可能になり、LFモータ1の動力がトラクタ9まで伝達されて帳票4を搬送する帳票モードになる。
【0034】
クラッチ23のクラッチ歯25は、複数のクラッチ歯のうち、一のクラッチ歯25aの軸方向の高さ(長さ)が、他のクラッチ歯25bの軸方向の高さ(長さ)より、高く(長く)なるように形成されている。また、クラッチプーリ22のそれぞれのクラッチ歯28は、その高さ(長さ)が揃えられ、所定の高さ(長さ)となるように形成されている。
【0035】
ここで、クラッチプーリ22のクラッチ歯28およびクラッチ23のクラッチ歯25を図1の第1の実施例におけるクラッチの構成を示す説明図に基づいて説明する。なお、図1(a)はクラッチプーリ22のクラッチ歯28の平面図、図1(b)はクラッチプーリ22のクラッチ歯28のAA断面図、図1(c)はクラッチ23のクラッチ歯25のBB断面図、図1(d)はクラッチ23のクラッチ歯25の平面図、図1(e)はクラッチ歯28のCC断面図およびクラッチ歯25のDD断面図である。
【0036】
図1において、クラッチ23のクラッチ歯25のうち、一のクラッチ歯25aの高さ(長さ)が他のクラッチ歯25bの高さ(長さ)より、所定の高さ(長さ)Lだけ高く(長く)なるように形成されている。
【0037】
また、クラッチ23のそれぞれのクラッチ歯25およびクラッチプーリ22のそれぞれのクラッチ歯28の先端部には、それぞれのクラッチ歯25とそれぞれのクラッチ歯28とが嵌合し易くなるように、略同形状の傾斜が形成されている。
【0038】
クラッチプーリ22の隣接するクラッチ歯28の先端間の各ピッチ(間隔)Paで最大となる箇所をピッチPa1、最小となる箇所をピッチPa2とし、またクラッチ23の隣接するクラッチ歯25の先端間の各ピッチPbで最大となる箇所をピッチPb1、最小となる箇所をピッチPb2とすると、双方のクラッチ歯が最も噛み合わなくなるのは、ピッチPa1とピッチPb2とが向かい合った位置、またはピッチPa2とピッチPb1とが向かい合った位置であり、双方の差である(ピッチPa1−ピッチPb2)または(ピッチPa2−ピッチPb1)のいずれか大きい方の位置関係において双方のクラッチ歯が最も噛み合わなくなる。
【0039】
この大きい方の差をXとし、高いクラッチ歯25aの先端の半角、すなわち回転軸と先端の傾斜が成す角をθとすると、高さL>差X/tanθの関係を満たすようにクラッチ歯25aを形成する。
【0040】
例えば、図4(a)に示すように、クラッチプーリ22の隣接するクラッチ歯28の先端間の各ピッチPaで最大となる箇所をピッチPa1、クラッチ23の隣接するクラッチ歯25の先端間の各ピッチPbで最小となる箇所をピッチPb2としたとき、その差はXであり、高いクラッチ歯25aと他のクラッチ歯25bとの高さの差である高さLを(差X/tanθ)より大きくなるように形成する。
【0041】
このように形成されたクラッチ歯25は、図4(b)における矢印Nが示す方向へ移動し、さらにクラッチ歯25aの先端がクラッチ歯28の先端に接触してクラッチ歯25全体が、図中矢印Mが示す方向にずれるとそれぞれのクラッチ歯25はそれぞれのクラッチ歯28の間隙27に嵌合し、またそれぞれのクラッチ歯28はそれぞれのクラッチ歯25の間隙26に嵌合し、クラッチ歯25とクラッチ歯28は噛合する。
【0042】
また、図1(e)に示すように、クラッチプーリ22の回転軸の中心から外周に向かう直線で切断されたクラッチ歯28の断面は、外周側の高さが回転軸側の高さより高くなるように形成され、クラッチ23の回転軸の中心から外周に向かう直線で切断されたクラッチ歯25の断面は、外周側の高さが回転軸側の高さより低くなるように形成されている。
【0043】
さらに、クラッチ歯28の先端の断面の角度とクラッチ歯25bの先端の断面の角度は、略同じ角度αとなるように形成され、クラッチ歯25aの先端の断面の角度は角度αより鋭角となる角度βとなるように形成されている。また、クラッチ23の回転軸の中心から外周に向かう方向のクラッチ歯25の幅は、クラッチプーリ22の回転軸の中心から外周に向かう方向のクラッチ歯28の幅より小さくなるように形成されている。
【0044】
このようにギア装置は、クラッチプーリ22のクラッチ歯28およびクラッチ23のクラッチ歯25で構成され、そのクラッチ歯25は高さが高いひとつのクラッチ歯25aおよびそのクラッチ歯25aより高さが低い複数のクラッチ歯25bで構成されている。
【0045】
なお、本実施例では、クラッチ23のクラッチ歯25のうち、一のクラッチ歯25aの高さが他のクラッチ歯25bの高さより、所定の高さLだけ高くなるように形成したが、クラッチプーリ22のクラッチ歯28のうち、一のクラッチ歯28の高さが他のクラッチ歯28の高さより、所定の高さLだけ高くなるように形成するようにしてもよい。
【0046】
上述した構成の作用について図5の第1の実施例におけるギア装置の動作を示す説明図に基づいて説明する。
【0047】
まず、図5(a)に示すように、クラッチ歯25aおよびクラッチ歯28の先端が略一致した状態において、単票モードから帳票モードへモード切替され、クラッチ23をクラッチプーリ22と接続する方向(矢印Jが示す方向)へスライドさせる。
【0048】
クラッチ23がスライドすると図5(b)に示すように、クラッチ歯25aの先端がクラッチ歯28の先端と衝突するが、双方のクラッチ歯25a、28の先端は丸みがなく、鋭角になっており、クラッチプーリ22は連結されたLFモータの保持力で回転しないが、クラッチ23は保持力がいないため、クラッチ歯25aが図中上方向または下方向へずれて回転を始める。本実施例では、クラッチ歯25aは、図中矢印Kが示す下方向へずれて、回転を始めるものとする。
【0049】
そして、図5(c)に示すように、クラッチ歯25aに形成された傾斜とクラッチ歯28に形成された傾斜が接触し、クラッチ23は矢印Kが示す方向に回転しながら、矢印Jが示す方向へスライドしていく。
【0050】
クラッチ23がスライドしていくと図5(d)に示すように、高さが低いクラッチ歯25bの先端とクラッチ歯28の先端が、クラッチプーリ22およびクラッチ23の回転軸方向で一致する位置、すなわち高さが高いクラッチ歯25aの先端とクラッチ歯28の先端が距離Lまで噛み合うと双方のクラッチ歯の先端は交互にずれて嵌まり込んでいく。
【0051】
クラッチ23は、距離Lをスライドする間に、図5(e)に示すように高いクラッチ歯25aの先端部の傾斜により双方のクラッチ歯25、28の先端のピッチ差以上に矢印Kが示す方向へ回転する。
【0052】
クラッチ23がさらにスライドしていくと図5(f)に示すように、それぞれのクラッチ歯25はそれぞれのクラッチ歯28の間隙に嵌合し、またそれぞれのクラッチ歯28はそれぞれのクラッチ歯25の間隙に嵌合し、クラッチ歯25とクラッチ歯28は完全に噛合する。
【0053】
クラッチ歯25とクラッチ歯28とが完全に噛合するとLFモータからの動力がトラクタへ伝達され、帳票モードでの用紙送り動作が可能になる。
【0054】
このようにクラッチ23の複数のクラッチ歯25のうち、一のクラッチ歯25aの高さを、他のクラッチ歯25bの高さより、高くなるように形成するとともにクラッチプーリ22のそれぞれのクラッチ歯28を、所定の高さとなるように揃えて形成することにより、クラッチ歯25およびクラッチ歯28のピッチに製造上の誤差が生じた場合であっても、クラッチ23が所定の距離Lスライドする間に双方のクラッチ歯(25、28)の先端のピッチ誤差を吸収してそれぞれのクラッチ歯25はそれぞれのクラッチ歯28の間隙に嵌合し、またそれぞれのクラッチ歯28はそれぞれのクラッチ歯25の間隙に嵌合し、クラッチ歯25とクラッチ歯28は完全に噛合する。
【0055】
したがって、単票モードから帳票モードへの切替動作においてモードモータが脱調等することによりモードモータの制御が不能になってしまうことを防止することができる。
【0056】
以上説明したように、第1の実施例では、クラッチの複数のクラッチ歯のうち、一のクラッチ歯の高さを、他のクラッチ歯の高さより、高くなるように形成するとともにクラッチプーリのそれぞれのクラッチ歯を、所定の高さとなるように揃えて形成することにより、双方のクラッチ歯のピッチに製造上の誤差が生じた場合であっても、クラッチが所定の距離Lスライドする間に双方のクラッチ歯の先端のピッチ誤差を吸収して双方のクラッチ歯を完全に噛合させることができるという効果が得られる。
【0057】
また、クラッチ歯を完全に噛合するため、単票モードから帳票モードへの切替動作においてモードモータが脱調等することによりモードモータの制御が不能になってしまうことを防止することができるという効果が得られる。
【実施例2】
【0058】
図6は第2の実施例における印刷装置の用紙モード切替機構およびギア装置の構成を示す説明図、図7は第2の実施例における印刷装置のモード切替部の構成を示す説明図である。なお、上述した第1の実施例と同様の部分は、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0059】
図6および図7において、トラクタシャフト10は、非円形の断面であり、一方クラッチプーリ22が取り付けられている部分は円形の断面であり、クラッチプーリ22が回転しても直接その動力が伝達されることはない。
【0060】
このトラクタシャフト10の回転軸上の端部には、クラッチ23が取り付けられ、またトラクタシャフト10の回転軸と同軸となるようにクラッチプーリ22が取り付けられており、クラッチ23のクラッチ歯25(第2の嵌合歯)とクラッチプーリ22に取り付けられたクラッチ歯28(第1の嵌合歯)が嵌合して噛合することによりLFモータ1の動力が伝達され、トラクタシャフト10はクラッチプーリ22と一体となって回転する。
【0061】
クラッチプーリ22は回転軸方向に移動を規制されているが、トラクタシャフト10のクラッチ23は回転軸方向に摺動可能に構成され、通常は図示しないスプリングによりクラッチプーリ22とクラッチ23との間に一定の距離が保持されている。
【0062】
このようにクラッチプーリ22とクラッチ23との間に一定の距離が保持されている状態ではトラクタ9へ動力を伝達しないため、帳票を搬送せず単票を搬送する単票モードとなる。
【0063】
一方、単票モードから帳票を搬送する帳票モードへ移行する場合、図示しない制御部からの指示により、図7に示すモードモータ34が駆動され、モードモータ34の回転軸に固定されたギアと連結されたモードラック31がトラクタシャフト10の方向へスライドし、さらにモードラック31に取り付けられた傾斜部32により、クラッチ23が軸方向にスライドさせられてクラッチプーリ22と接続される。その後、モードラック31は、図7に示すセンサ33で検知されると制御部により停止される。
【0064】
ここで、モードラック31の位置制御について説明する。
【0065】
モードラック31の単票モードまたは帳票モードの位置制御は、センサ33による監視およびモードモータ34の回転量を制御して行っている。モードラック31には、光学式センサ等で構成されたセンサ33の光軸を遮る遮蔽部35が形成され、センサ33によりその遮蔽部35のエッジ36またはエッジ37を検知してから所定の移動量を移動させてモードラック31の単票モード位置または帳票モード位置としている。
【0066】
例えば、図7に示すようにステッピングモータ等のモードモータ34を回転させてモードラック31を図中矢印Rが示す方向へ移動させ、センサ33により遮蔽部35のエッジ36を検知してから所定のパルスをモードモータ34に供給して所定量移動させた位置を帳票モード位置とし、一方モードラック31を図中矢印Sが示す方向へ移動させ、センサ33により遮蔽部35のエッジ37を検知してから所定のパルスをモードモータ34に供給して所定量移動させた位置を単票モード位置とする。
【0067】
このようにモードラック31を帳票モード位置または単票モード位置に移動させ、軸方向にスライド可能なクラッチ23がクラッチプーリ22と接続・切断することにより、トラクタ9への動力の伝達・遮断を可能にしている。
【0068】
動力伝達部としてのクラッチプーリ22およびクラッチ23は、その軸方向の側面に同数、同一ピッチで先端に丸みがなく所定の角(例えば、鋭角)をなすように形成された複数のクラッチ歯をそれぞれ有しており、それぞれのクラッチ歯の凹部(クラッチ歯とクラッチ歯との間隙)と凸部(クラッチ歯)とが嵌合して噛み合い、動力の伝達が可能になり、LFモータ1の動力がトラクタ9まで伝達されて帳票を搬送する帳票モードになる。
【0069】
なお、クラッチ23のクラッチ歯25は、複数のクラッチ歯のうち、一のクラッチ歯の軸方向の高さが、他のクラッチ歯の軸方向の高さより、高くなるように形成され、またクラッチプーリ22のそれぞれのクラッチ歯28は、その高さが揃えられ、所定の高さとなるように形成されているのは第1の実施例と同様である。
【0070】
上述した構成の作用について説明する。
【0071】
上述したモードモータ34を回転させてモードラック31を帳票モード位置へ移動させる動作において、クラッチ23のクラッチ歯25とクラッチプーリ22のクラッチ歯28とが衝突してモードモータ34が脱調した場合、制御部はモードラック31の位置制御が不能になることを回避するためにリトライ動作を行うようにしている。
【0072】
このリトライ動作を図8の第2の実施例におけるリトライ制御処理を示すフローチャートの図中Sで表すステップにしたがって図7を参照しながら説明する。
【0073】
S1a:印刷装置の制御部は、図示しない上位装置等からの指示にしたがって単票モードから帳票モードへ切替えるものとする。
【0074】
S2a、S3a:制御部は、モードモータ34を正回転させてモードラック31を図7に示す矢印Rが示す方向(クラッチ23がクラッチプーリ22と接続する方向)へ移動させる。
【0075】
S4a、S5a、S6a:モードラック31を移動させた制御部は、センサ33により遮蔽部35のエッジ36を検知するまで待機し、所定の時間が経過してもエッジ36を検知できない場合は、クラッチ23のクラッチ歯25とクラッチプーリ22のクラッチ歯28とが衝突してモードモータ34が脱調したものと判定し、処理をS7aへ移行する。一方、所定の時間内にセンサ33によりエッジ36を検知できた場合は処理をS10aへ移行する。
【0076】
S7a:所定の時間が経過してもエッジ36を検知できなかった制御部は、モードモータ34を停止させる。
【0077】
S8a:モードモータ34を停止させた制御部は、LFモータを所定量回転させてクラッチプーリ22の回転量が、クラッチ歯28のピッチPaの2分の1(ピッチPa/2)となるように移動させる。これにより、クラッチプーリ22のクラッチ歯28は、クラッチ23のクラッチ歯25と噛合する位置へ移動する。
【0078】
S9a:LFモータを所定量回転させた制御部は、モードモータ34を正回転させてモードラック31を図7に示す矢印Rが示す方向(クラッチ23がクラッチプーリ22と接続する方向)へ再び移動させる。
【0079】
S10a、S11a:制御部は、センサ33により遮蔽部35のエッジ36を検知し、クラッチ23のクラッチ歯25とクラッチプーリ22のクラッチ歯28が噛合して接続されたことを確認する。
【0080】
S12a:制御部は、モードモータ34を停止させ、モードラック31を帳票モード位置へ移動させる動作を終了する。
【0081】
ここで、従来のリトライ動作を図9の従来例におけるリトライ制御処理を示すフローチャートの図中Sで表すステップにしたがって図10を参照しながら説明する。
【0082】
S1b〜S6b:図8のS1a〜S6aと同様の処理なのでその説明を省略する。
【0083】
S7b:所定の時間が経過してもモードラック117のエッジを検知できなかった制御部は、モードモータ115を停止させる。
【0084】
S8b:制御部は、モードモータ115を逆回転させ、モードラック117を単票モード位置の方向へ移動させる。
【0085】
S9b:制御部は、センサ119によりモードラック117のエッジを検知する。
【0086】
S10b:制御部は、センサ119によりモードラック117のエッジを検知した制御部は、所定量モードモータ115を回転させた後、モードモータ115を停止し、モードラック117を単票モード位置で停止させる。
【0087】
S11b:モードモータ115を停止させた制御部は、LFモータ101を所定量回転させてクラッチプーリ111の回転量が、所定の移動量となるように移動させる。
【0088】
S12b、S13b:LFモータ101を所定量回転させた制御部は、モードモータ115を正回転させてモードラック117をクラッチがクラッチプーリ111と接続する方向へ再び移動させる。
【0089】
S14b〜S16b:図8におけるS10a〜S12aと同様の処理なのでその説明を省略する。
【0090】
このように従来のリトライ動作は、双方のクラッチ歯の先端が衝突して停止している状態のクラッチプーリおよびクラッチに対して、双方のクラッチ歯が完全に離間する単票モード位置までモードモータを逆回転させてモードラックを移動させて停止し、双方のクラッチ歯が噛み合う位置関係になるようにLFモータで所定量回転させて、再度モードモータを正回転させてモードラックを単票モード位置から帳票モード位置まで移動させるようにしている。
【0091】
一方、本実施例では、クラッチ23のクラッチ歯25は、複数のクラッチ歯のうち、一のクラッチ歯の軸方向の高さが、他のクラッチ歯の軸方向の高さより、高くなるように形成され、またクラッチプーリ22のそれぞれのクラッチ歯28は、その高さが揃えられ、所定の高さとなるように形成されているため、仮にクラッチ23の高いクラッチ歯の先端とクラッチプーリ22の任意の一クラッチ歯の先端とが完全に一致して衝突し、モードモータ34が脱調したとしても、強制的にLFモータを所定量回転させてクラッチプーリ22を所定量回転させ、僅かにクラッチ歯の先端をずらすことにより、引き続きモードラック31の移動動作に移行することができる。
【0092】
したがって、第2の実施例では、モードラックを単票モード位置まで移動させて停止し、双方のクラッチ歯が噛み合う位置関係になるようにLFモータで所定量回転させることなく、強制的にLFモータを所定量回転させてクラッチプーリ22を所定量回転させ、僅かにクラッチ歯の先端をずらすことにより、モードラックを帳票モード位置まで移動させることができるようになる。
【0093】
なお、本実施例では、クラッチプーリ22を所定量回転させてクラッチ歯28を移動させるものとして説明したが、クラッチ23に駆動手段が接続されている場合はクラッチ23を所定量回転させてクラッチ歯25を移動させるようにしてもよい。
【0094】
以上説明したように、第2の実施例では、第1の実施例の効果に加え、仮にクラッチの高いクラッチ歯の先端とクラッチプーリの任意の一クラッチ歯の先端とが完全に一致して衝突し、モードモータが脱調したとしても、強制的にLFモータを所定量回転させ、僅かにクラッチ歯の先端をずらすことにより、モードラックを帳票モード位置まで移動させることができるようになるという効果が得られる。
【0095】
なお、第1の実施例および第2の実施例では、印刷装置を用紙モード切替えのための動力の接続・遮断を行うギア装置を有するインパクトプリンタとして説明したが、それに限られることなく、複数の用紙モードを切替えるプリンタや複写機、複合機等としてもよい。また、ギア装置は、動力の接続・遮断を行うすべての動力機器に適用することができる。
【符号の説明】
【0096】
1 LFモータ
5 フィードローラ
9 トラクタ
10 トラクタシャフト
12 帳票ベルト
17、31 モードラック
22 クラッチプーリ
23 クラッチ
25、28 クラッチ歯
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力の伝達ならびにその伝達を遮断するクラッチを有するギア装置およびそのギア装置を備えた印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のギア装置には、同軸上に取り付けられた二つの側面歯を噛合させるようにしているものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このように二つの側面歯を噛合させて動力を伝達する従来のギア装置を備えた印刷装置を図10の従来例における印刷装置の構成を示す説明図および図11の従来例における印刷装置の用紙モード切替機構およびギア装置の構成を示す説明図に基づいて説明する。
【0004】
図10および図11において、印刷装置としてのインパクトプリンタは、用紙搬送の動力源となるLF(Line Feed)モータ101の回転軸にドライブプーリ102が固定さており、単票103または帳票104を搬送するふたつのフィードローラ105とそれぞれのフィードローラ105の回転軸と同軸上に固定されたフィードプーリ106、107との間を単票ベルト108で連結し、LFモータ101の動力をフィードローラ105に伝達している。
【0005】
また、フィードプーリ106と、帳票104を搬送するトラクタ109を駆動させるための回転軸であるトラクタシャフト110と同軸上に取り付けられたクラッチプーリ111との間を、単票ベルト108と並列して帳票ベルト112で連結し、LFモータ101の動力をクラッチプーリ111に伝達している。
【0006】
トラクタシャフト110は、非円形の断面であり、一方クラッチプーリ111が取り付けられている部分は円形の断面であり、クラッチプーリ111が回転しても直接その動力が伝達されることはない。トラクタシャフト110は、端部に取り付けられたクラッチ113のクラッチ歯120とクラッチプーリ111に取り付けられたクラッチ歯120が噛合することによりLFモータ101の動力が伝達され、クラッチプーリ111と一体となって回転する。
【0007】
クラッチプーリ111は回転軸方向に移動を規制されているが、トラクタシャフト110のクラッチ113は回転軸方向に摺動可能に構成され、通常はスプリング114によりクラッチプーリ111とクラッチ113との間に一定の距離が保持されている。
【0008】
このようにクラッチプーリ111とクラッチ113との間に一定の距離が保持されている状態ではトラクタ109へ動力を伝達しないため、帳票104を搬送せず単票103を搬送する単票モードとなる。
【0009】
一方、単票モードから帳票104を搬送する帳票モードへ移行する場合、図示しない制御部からの指示によりモードモータ115が駆動され、モードモータ115の回転軸に固定されたギア116と連結されたモードラック117がトラクタシャフト110の方向へスライドし、さらにモードラック117に取り付けられた傾斜部118により、クラッチ113が軸方向にスライドさせられてクラッチプーリ111と接続される。その後、モードラック117は、センサ119で検知されると制御部により停止される。
【0010】
動力伝達部としてのクラッチプーリ111およびクラッチ113は、同数、同一ピッチで先端に丸みがなく鋭角で高さが揃った側面歯としてのクラッチ歯120をそれぞれ有しており、それぞれのクラッチ歯120の凹凸部が噛み合って動力の伝達が可能になり、LFモータ101の動力がトラクタ109まで伝達されて帳票104を搬送する帳票モードになる。
【0011】
このように従来のギア装置は、クラッチプーリ111のクラッチ歯120およびクラッチ113のクラッチ歯120で構成され、それぞれのクラッチ歯120が噛合してLFモータ101の動力をトラクタ109に伝達するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開昭63−92866号公報(2頁、図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上述した従来の技術においては、製造上の誤差等によるそれぞれのクラッチ歯の先端間のピッチのばらつきにより、クラッチプーリのクラッチ歯とクラッチのクラッチ歯とが噛み合わず、単票モードから帳票モードへの切替ができなくなることがあるという問題がある。
【0014】
例えば、図12(a)に示すように製造上の誤差等により、クラッチプーリ111のクラッチ歯120およびクラッチ113のクラッチ歯120の先端がクラッチ歯120の中心からずれていても、先端間のピッチPが一定である場合(クラッチ歯120のEE断面図、FF断面図参照)、凸部120aと凹部120bは噛み合い、動力を伝達することができる。
【0015】
一方、図12(b)に示すように製造上の誤差等により、クラッチプーリ111のクラッチ歯120およびクラッチ113のクラッチ歯120の先端がクラッチ歯120の中心からずれ、クラッチプーリ111のクラッチ歯120のピッチ誤差Gにより隣接する先端間のピッチP1となり、クラッチ113のクラッチ歯120のピッチ誤差Gにより隣接する先端間のピッチP2となり、そのピッチP1がピッチP2より大きくなった場合(クラッチ歯120のEE断面図、FF断面図参照)、ピッチP1のクラッチ歯120にピッチP2のクラッチ歯120が嵌まり込む関係になると凸部120aと凹部120bは噛み合うことなく、動力を伝達することができなくなる。
【0016】
このようにクラッチプーリ111のクラッチ歯120とクラッチ113のクラッチ歯120とが噛み合わず、単票モードから帳票モードへの切替動作においてモードモータが脱調等することによりモードモータの制御が不能になってしまう。
【0017】
本発明は、このような問題を解決することを課題とし、クラッチ歯の先端間隔のばらつきを吸収してふたつのクラッチ歯を噛合させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
そのため、本発明は、複数の第1の嵌合歯を有する固定ギアと、それぞれの前記第1の嵌合歯と嵌合する複数の第2の嵌合歯を有する移動ギアとを有し、前記固定ギアおよび前記移動ギアが同軸上に設けられたギア装置において、それぞれの前記第1の嵌合歯およびそれぞれの前記第2の嵌合歯のうち、ひとつの嵌合歯を、他の嵌合歯より長く形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
このようにした本発明は、クラッチ歯の先端間隔のばらつきを吸収してふたつのクラッチ歯を噛合させることができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1の実施例におけるクラッチの構成を示す説明図
【図2】第1の実施例における印刷装置の構成を示す説明図
【図3】第1の実施例における印刷装置の用紙モード切替機構およびギア装置の構成を示す説明図
【図4】第1の実施例におけるクラッチ歯を示す説明図
【図5】第1の実施例におけるギア装置の動作を示す説明図
【図6】第2の実施例における印刷装置の用紙モード切替機構およびギア装置の構成を示す説明図
【図7】第2の実施例における印刷装置のモード切替部の構成を示す説明図
【図8】第2の実施例におけるリトライ制御処理を示すフローチャート
【図9】従来例におけるリトライ制御処理を示すフローチャート
【図10】従来例における印刷装置の構成を示す説明図
【図11】従来例における印刷装置の用紙モード切替機構およびギア装置の構成を示す説明図
【図12】従来例におけるギア装置の構成を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明によるギア装置およびそのギア装置を備えた印刷装置の実施例を説明する。
【実施例1】
【0022】
図2は第1の実施例における印刷装置の構成を示す説明図である。
【0023】
図2において、印刷装置としてのインパクトプリンタは、用紙搬送の動力源となるLFモータ1の回転軸にドライブプーリ2が固定さており、単票3または連続紙としての帳票4を搬送するふたつのフィードローラ5とそれぞれのフィードローラ5の回転軸と同軸上に固定されたフィードプーリ6、7との間を単票ベルト8で連結し、LFモータ1の動力をフィードローラ5に伝達している。フィードローラ5で搬送された単票3または帳票4は印字ヘッド40により印字される。
【0024】
また、フィードプーリ6と、帳票4を搬送するトラクタ9を駆動させるための回転軸であるトラクタシャフト10と同軸上に取り付けられたクラッチプーリ22との間を、単票ベルト8と並列して帳票ベルト12で連結し、LFモータ1の動力をクラッチプーリ22に伝達している。
【0025】
なお、印刷装置は、図示しないメモリ等の記憶手段に記憶された制御プログラム(ソフトウェア)に基づいて図示しない中央処理演算処理装置等の制御部により、その全体の動作が制御される。
【0026】
図3は第1の実施例における印刷装置の用紙モード切替機構およびギア装置の構成を示す説明図である。なお、図3(a)は用紙モード切替機構を示し、図3(b)はギア装置を示している。
【0027】
図3において、トラクタシャフト10は、非円形の断面であり、一方クラッチプーリ22が取り付けられている部分は円形の断面であり、クラッチプーリ22が回転しても直接その動力が伝達されることはない。
【0028】
このトラクタシャフト10の回転軸上の端部には、クラッチ23が取り付けられ、またトラクタシャフト10の回転軸と同軸となるようにクラッチプーリ22が取り付けられており、クラッチ23のクラッチ歯25(第2の嵌合歯)とクラッチプーリ22に取り付けられたクラッチ歯28(第1の嵌合歯)が嵌合して噛合することによりLFモータ1の動力が伝達され、トラクタシャフト10はクラッチプーリ22と一体となって回転する。
【0029】
固定ギアとしてのクラッチプーリ22は回転軸方向に移動を規制されているが、トラクタシャフト10の移動ギアとしてのクラッチ23は回転軸方向に摺動可能に構成され、通常はスプリング14によりクラッチプーリ22とクラッチ23との間に一定の距離が保持されている。
【0030】
このようにクラッチプーリ22とクラッチ23との間に一定の距離が保持されている状態ではトラクタ9へ動力を伝達しないため、帳票4を搬送せず単票3を搬送する単票モードとなる。
【0031】
一方、単票モードから帳票4を搬送する帳票モードへ移行する場合、図示しない制御部からの指示により、図2に示すモードモータ15が駆動され、モードモータ15の回転軸に固定された図2に示すギア16と連結されたモードラック17がトラクタシャフト10の方向へスライドし、さらにモードラック17に取り付けられた傾斜部18により、クラッチ23が軸方向にスライドさせられてクラッチプーリ22と接続される。その後、モードラック17は、図2に示すセンサ19で検知されると制御部により停止される。
【0032】
このように軸方向にスライド可能なクラッチ23がクラッチプーリ22と接続・切断することにより、トラクタ9への動力の伝達・遮断を可能にしている。
【0033】
動力伝達部としてのクラッチプーリ22およびクラッチ23は、その軸方向の側面に同数、同一ピッチで先端に丸みがなく所定の角(例えば、鋭角)をなすように形成された複数のクラッチ歯をそれぞれ有しており、それぞれのクラッチ歯の凹部(クラッチ歯とクラッチ歯との間隙)と凸部(クラッチ歯)とが嵌合して噛み合い、動力の伝達が可能になり、LFモータ1の動力がトラクタ9まで伝達されて帳票4を搬送する帳票モードになる。
【0034】
クラッチ23のクラッチ歯25は、複数のクラッチ歯のうち、一のクラッチ歯25aの軸方向の高さ(長さ)が、他のクラッチ歯25bの軸方向の高さ(長さ)より、高く(長く)なるように形成されている。また、クラッチプーリ22のそれぞれのクラッチ歯28は、その高さ(長さ)が揃えられ、所定の高さ(長さ)となるように形成されている。
【0035】
ここで、クラッチプーリ22のクラッチ歯28およびクラッチ23のクラッチ歯25を図1の第1の実施例におけるクラッチの構成を示す説明図に基づいて説明する。なお、図1(a)はクラッチプーリ22のクラッチ歯28の平面図、図1(b)はクラッチプーリ22のクラッチ歯28のAA断面図、図1(c)はクラッチ23のクラッチ歯25のBB断面図、図1(d)はクラッチ23のクラッチ歯25の平面図、図1(e)はクラッチ歯28のCC断面図およびクラッチ歯25のDD断面図である。
【0036】
図1において、クラッチ23のクラッチ歯25のうち、一のクラッチ歯25aの高さ(長さ)が他のクラッチ歯25bの高さ(長さ)より、所定の高さ(長さ)Lだけ高く(長く)なるように形成されている。
【0037】
また、クラッチ23のそれぞれのクラッチ歯25およびクラッチプーリ22のそれぞれのクラッチ歯28の先端部には、それぞれのクラッチ歯25とそれぞれのクラッチ歯28とが嵌合し易くなるように、略同形状の傾斜が形成されている。
【0038】
クラッチプーリ22の隣接するクラッチ歯28の先端間の各ピッチ(間隔)Paで最大となる箇所をピッチPa1、最小となる箇所をピッチPa2とし、またクラッチ23の隣接するクラッチ歯25の先端間の各ピッチPbで最大となる箇所をピッチPb1、最小となる箇所をピッチPb2とすると、双方のクラッチ歯が最も噛み合わなくなるのは、ピッチPa1とピッチPb2とが向かい合った位置、またはピッチPa2とピッチPb1とが向かい合った位置であり、双方の差である(ピッチPa1−ピッチPb2)または(ピッチPa2−ピッチPb1)のいずれか大きい方の位置関係において双方のクラッチ歯が最も噛み合わなくなる。
【0039】
この大きい方の差をXとし、高いクラッチ歯25aの先端の半角、すなわち回転軸と先端の傾斜が成す角をθとすると、高さL>差X/tanθの関係を満たすようにクラッチ歯25aを形成する。
【0040】
例えば、図4(a)に示すように、クラッチプーリ22の隣接するクラッチ歯28の先端間の各ピッチPaで最大となる箇所をピッチPa1、クラッチ23の隣接するクラッチ歯25の先端間の各ピッチPbで最小となる箇所をピッチPb2としたとき、その差はXであり、高いクラッチ歯25aと他のクラッチ歯25bとの高さの差である高さLを(差X/tanθ)より大きくなるように形成する。
【0041】
このように形成されたクラッチ歯25は、図4(b)における矢印Nが示す方向へ移動し、さらにクラッチ歯25aの先端がクラッチ歯28の先端に接触してクラッチ歯25全体が、図中矢印Mが示す方向にずれるとそれぞれのクラッチ歯25はそれぞれのクラッチ歯28の間隙27に嵌合し、またそれぞれのクラッチ歯28はそれぞれのクラッチ歯25の間隙26に嵌合し、クラッチ歯25とクラッチ歯28は噛合する。
【0042】
また、図1(e)に示すように、クラッチプーリ22の回転軸の中心から外周に向かう直線で切断されたクラッチ歯28の断面は、外周側の高さが回転軸側の高さより高くなるように形成され、クラッチ23の回転軸の中心から外周に向かう直線で切断されたクラッチ歯25の断面は、外周側の高さが回転軸側の高さより低くなるように形成されている。
【0043】
さらに、クラッチ歯28の先端の断面の角度とクラッチ歯25bの先端の断面の角度は、略同じ角度αとなるように形成され、クラッチ歯25aの先端の断面の角度は角度αより鋭角となる角度βとなるように形成されている。また、クラッチ23の回転軸の中心から外周に向かう方向のクラッチ歯25の幅は、クラッチプーリ22の回転軸の中心から外周に向かう方向のクラッチ歯28の幅より小さくなるように形成されている。
【0044】
このようにギア装置は、クラッチプーリ22のクラッチ歯28およびクラッチ23のクラッチ歯25で構成され、そのクラッチ歯25は高さが高いひとつのクラッチ歯25aおよびそのクラッチ歯25aより高さが低い複数のクラッチ歯25bで構成されている。
【0045】
なお、本実施例では、クラッチ23のクラッチ歯25のうち、一のクラッチ歯25aの高さが他のクラッチ歯25bの高さより、所定の高さLだけ高くなるように形成したが、クラッチプーリ22のクラッチ歯28のうち、一のクラッチ歯28の高さが他のクラッチ歯28の高さより、所定の高さLだけ高くなるように形成するようにしてもよい。
【0046】
上述した構成の作用について図5の第1の実施例におけるギア装置の動作を示す説明図に基づいて説明する。
【0047】
まず、図5(a)に示すように、クラッチ歯25aおよびクラッチ歯28の先端が略一致した状態において、単票モードから帳票モードへモード切替され、クラッチ23をクラッチプーリ22と接続する方向(矢印Jが示す方向)へスライドさせる。
【0048】
クラッチ23がスライドすると図5(b)に示すように、クラッチ歯25aの先端がクラッチ歯28の先端と衝突するが、双方のクラッチ歯25a、28の先端は丸みがなく、鋭角になっており、クラッチプーリ22は連結されたLFモータの保持力で回転しないが、クラッチ23は保持力がいないため、クラッチ歯25aが図中上方向または下方向へずれて回転を始める。本実施例では、クラッチ歯25aは、図中矢印Kが示す下方向へずれて、回転を始めるものとする。
【0049】
そして、図5(c)に示すように、クラッチ歯25aに形成された傾斜とクラッチ歯28に形成された傾斜が接触し、クラッチ23は矢印Kが示す方向に回転しながら、矢印Jが示す方向へスライドしていく。
【0050】
クラッチ23がスライドしていくと図5(d)に示すように、高さが低いクラッチ歯25bの先端とクラッチ歯28の先端が、クラッチプーリ22およびクラッチ23の回転軸方向で一致する位置、すなわち高さが高いクラッチ歯25aの先端とクラッチ歯28の先端が距離Lまで噛み合うと双方のクラッチ歯の先端は交互にずれて嵌まり込んでいく。
【0051】
クラッチ23は、距離Lをスライドする間に、図5(e)に示すように高いクラッチ歯25aの先端部の傾斜により双方のクラッチ歯25、28の先端のピッチ差以上に矢印Kが示す方向へ回転する。
【0052】
クラッチ23がさらにスライドしていくと図5(f)に示すように、それぞれのクラッチ歯25はそれぞれのクラッチ歯28の間隙に嵌合し、またそれぞれのクラッチ歯28はそれぞれのクラッチ歯25の間隙に嵌合し、クラッチ歯25とクラッチ歯28は完全に噛合する。
【0053】
クラッチ歯25とクラッチ歯28とが完全に噛合するとLFモータからの動力がトラクタへ伝達され、帳票モードでの用紙送り動作が可能になる。
【0054】
このようにクラッチ23の複数のクラッチ歯25のうち、一のクラッチ歯25aの高さを、他のクラッチ歯25bの高さより、高くなるように形成するとともにクラッチプーリ22のそれぞれのクラッチ歯28を、所定の高さとなるように揃えて形成することにより、クラッチ歯25およびクラッチ歯28のピッチに製造上の誤差が生じた場合であっても、クラッチ23が所定の距離Lスライドする間に双方のクラッチ歯(25、28)の先端のピッチ誤差を吸収してそれぞれのクラッチ歯25はそれぞれのクラッチ歯28の間隙に嵌合し、またそれぞれのクラッチ歯28はそれぞれのクラッチ歯25の間隙に嵌合し、クラッチ歯25とクラッチ歯28は完全に噛合する。
【0055】
したがって、単票モードから帳票モードへの切替動作においてモードモータが脱調等することによりモードモータの制御が不能になってしまうことを防止することができる。
【0056】
以上説明したように、第1の実施例では、クラッチの複数のクラッチ歯のうち、一のクラッチ歯の高さを、他のクラッチ歯の高さより、高くなるように形成するとともにクラッチプーリのそれぞれのクラッチ歯を、所定の高さとなるように揃えて形成することにより、双方のクラッチ歯のピッチに製造上の誤差が生じた場合であっても、クラッチが所定の距離Lスライドする間に双方のクラッチ歯の先端のピッチ誤差を吸収して双方のクラッチ歯を完全に噛合させることができるという効果が得られる。
【0057】
また、クラッチ歯を完全に噛合するため、単票モードから帳票モードへの切替動作においてモードモータが脱調等することによりモードモータの制御が不能になってしまうことを防止することができるという効果が得られる。
【実施例2】
【0058】
図6は第2の実施例における印刷装置の用紙モード切替機構およびギア装置の構成を示す説明図、図7は第2の実施例における印刷装置のモード切替部の構成を示す説明図である。なお、上述した第1の実施例と同様の部分は、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0059】
図6および図7において、トラクタシャフト10は、非円形の断面であり、一方クラッチプーリ22が取り付けられている部分は円形の断面であり、クラッチプーリ22が回転しても直接その動力が伝達されることはない。
【0060】
このトラクタシャフト10の回転軸上の端部には、クラッチ23が取り付けられ、またトラクタシャフト10の回転軸と同軸となるようにクラッチプーリ22が取り付けられており、クラッチ23のクラッチ歯25(第2の嵌合歯)とクラッチプーリ22に取り付けられたクラッチ歯28(第1の嵌合歯)が嵌合して噛合することによりLFモータ1の動力が伝達され、トラクタシャフト10はクラッチプーリ22と一体となって回転する。
【0061】
クラッチプーリ22は回転軸方向に移動を規制されているが、トラクタシャフト10のクラッチ23は回転軸方向に摺動可能に構成され、通常は図示しないスプリングによりクラッチプーリ22とクラッチ23との間に一定の距離が保持されている。
【0062】
このようにクラッチプーリ22とクラッチ23との間に一定の距離が保持されている状態ではトラクタ9へ動力を伝達しないため、帳票を搬送せず単票を搬送する単票モードとなる。
【0063】
一方、単票モードから帳票を搬送する帳票モードへ移行する場合、図示しない制御部からの指示により、図7に示すモードモータ34が駆動され、モードモータ34の回転軸に固定されたギアと連結されたモードラック31がトラクタシャフト10の方向へスライドし、さらにモードラック31に取り付けられた傾斜部32により、クラッチ23が軸方向にスライドさせられてクラッチプーリ22と接続される。その後、モードラック31は、図7に示すセンサ33で検知されると制御部により停止される。
【0064】
ここで、モードラック31の位置制御について説明する。
【0065】
モードラック31の単票モードまたは帳票モードの位置制御は、センサ33による監視およびモードモータ34の回転量を制御して行っている。モードラック31には、光学式センサ等で構成されたセンサ33の光軸を遮る遮蔽部35が形成され、センサ33によりその遮蔽部35のエッジ36またはエッジ37を検知してから所定の移動量を移動させてモードラック31の単票モード位置または帳票モード位置としている。
【0066】
例えば、図7に示すようにステッピングモータ等のモードモータ34を回転させてモードラック31を図中矢印Rが示す方向へ移動させ、センサ33により遮蔽部35のエッジ36を検知してから所定のパルスをモードモータ34に供給して所定量移動させた位置を帳票モード位置とし、一方モードラック31を図中矢印Sが示す方向へ移動させ、センサ33により遮蔽部35のエッジ37を検知してから所定のパルスをモードモータ34に供給して所定量移動させた位置を単票モード位置とする。
【0067】
このようにモードラック31を帳票モード位置または単票モード位置に移動させ、軸方向にスライド可能なクラッチ23がクラッチプーリ22と接続・切断することにより、トラクタ9への動力の伝達・遮断を可能にしている。
【0068】
動力伝達部としてのクラッチプーリ22およびクラッチ23は、その軸方向の側面に同数、同一ピッチで先端に丸みがなく所定の角(例えば、鋭角)をなすように形成された複数のクラッチ歯をそれぞれ有しており、それぞれのクラッチ歯の凹部(クラッチ歯とクラッチ歯との間隙)と凸部(クラッチ歯)とが嵌合して噛み合い、動力の伝達が可能になり、LFモータ1の動力がトラクタ9まで伝達されて帳票を搬送する帳票モードになる。
【0069】
なお、クラッチ23のクラッチ歯25は、複数のクラッチ歯のうち、一のクラッチ歯の軸方向の高さが、他のクラッチ歯の軸方向の高さより、高くなるように形成され、またクラッチプーリ22のそれぞれのクラッチ歯28は、その高さが揃えられ、所定の高さとなるように形成されているのは第1の実施例と同様である。
【0070】
上述した構成の作用について説明する。
【0071】
上述したモードモータ34を回転させてモードラック31を帳票モード位置へ移動させる動作において、クラッチ23のクラッチ歯25とクラッチプーリ22のクラッチ歯28とが衝突してモードモータ34が脱調した場合、制御部はモードラック31の位置制御が不能になることを回避するためにリトライ動作を行うようにしている。
【0072】
このリトライ動作を図8の第2の実施例におけるリトライ制御処理を示すフローチャートの図中Sで表すステップにしたがって図7を参照しながら説明する。
【0073】
S1a:印刷装置の制御部は、図示しない上位装置等からの指示にしたがって単票モードから帳票モードへ切替えるものとする。
【0074】
S2a、S3a:制御部は、モードモータ34を正回転させてモードラック31を図7に示す矢印Rが示す方向(クラッチ23がクラッチプーリ22と接続する方向)へ移動させる。
【0075】
S4a、S5a、S6a:モードラック31を移動させた制御部は、センサ33により遮蔽部35のエッジ36を検知するまで待機し、所定の時間が経過してもエッジ36を検知できない場合は、クラッチ23のクラッチ歯25とクラッチプーリ22のクラッチ歯28とが衝突してモードモータ34が脱調したものと判定し、処理をS7aへ移行する。一方、所定の時間内にセンサ33によりエッジ36を検知できた場合は処理をS10aへ移行する。
【0076】
S7a:所定の時間が経過してもエッジ36を検知できなかった制御部は、モードモータ34を停止させる。
【0077】
S8a:モードモータ34を停止させた制御部は、LFモータを所定量回転させてクラッチプーリ22の回転量が、クラッチ歯28のピッチPaの2分の1(ピッチPa/2)となるように移動させる。これにより、クラッチプーリ22のクラッチ歯28は、クラッチ23のクラッチ歯25と噛合する位置へ移動する。
【0078】
S9a:LFモータを所定量回転させた制御部は、モードモータ34を正回転させてモードラック31を図7に示す矢印Rが示す方向(クラッチ23がクラッチプーリ22と接続する方向)へ再び移動させる。
【0079】
S10a、S11a:制御部は、センサ33により遮蔽部35のエッジ36を検知し、クラッチ23のクラッチ歯25とクラッチプーリ22のクラッチ歯28が噛合して接続されたことを確認する。
【0080】
S12a:制御部は、モードモータ34を停止させ、モードラック31を帳票モード位置へ移動させる動作を終了する。
【0081】
ここで、従来のリトライ動作を図9の従来例におけるリトライ制御処理を示すフローチャートの図中Sで表すステップにしたがって図10を参照しながら説明する。
【0082】
S1b〜S6b:図8のS1a〜S6aと同様の処理なのでその説明を省略する。
【0083】
S7b:所定の時間が経過してもモードラック117のエッジを検知できなかった制御部は、モードモータ115を停止させる。
【0084】
S8b:制御部は、モードモータ115を逆回転させ、モードラック117を単票モード位置の方向へ移動させる。
【0085】
S9b:制御部は、センサ119によりモードラック117のエッジを検知する。
【0086】
S10b:制御部は、センサ119によりモードラック117のエッジを検知した制御部は、所定量モードモータ115を回転させた後、モードモータ115を停止し、モードラック117を単票モード位置で停止させる。
【0087】
S11b:モードモータ115を停止させた制御部は、LFモータ101を所定量回転させてクラッチプーリ111の回転量が、所定の移動量となるように移動させる。
【0088】
S12b、S13b:LFモータ101を所定量回転させた制御部は、モードモータ115を正回転させてモードラック117をクラッチがクラッチプーリ111と接続する方向へ再び移動させる。
【0089】
S14b〜S16b:図8におけるS10a〜S12aと同様の処理なのでその説明を省略する。
【0090】
このように従来のリトライ動作は、双方のクラッチ歯の先端が衝突して停止している状態のクラッチプーリおよびクラッチに対して、双方のクラッチ歯が完全に離間する単票モード位置までモードモータを逆回転させてモードラックを移動させて停止し、双方のクラッチ歯が噛み合う位置関係になるようにLFモータで所定量回転させて、再度モードモータを正回転させてモードラックを単票モード位置から帳票モード位置まで移動させるようにしている。
【0091】
一方、本実施例では、クラッチ23のクラッチ歯25は、複数のクラッチ歯のうち、一のクラッチ歯の軸方向の高さが、他のクラッチ歯の軸方向の高さより、高くなるように形成され、またクラッチプーリ22のそれぞれのクラッチ歯28は、その高さが揃えられ、所定の高さとなるように形成されているため、仮にクラッチ23の高いクラッチ歯の先端とクラッチプーリ22の任意の一クラッチ歯の先端とが完全に一致して衝突し、モードモータ34が脱調したとしても、強制的にLFモータを所定量回転させてクラッチプーリ22を所定量回転させ、僅かにクラッチ歯の先端をずらすことにより、引き続きモードラック31の移動動作に移行することができる。
【0092】
したがって、第2の実施例では、モードラックを単票モード位置まで移動させて停止し、双方のクラッチ歯が噛み合う位置関係になるようにLFモータで所定量回転させることなく、強制的にLFモータを所定量回転させてクラッチプーリ22を所定量回転させ、僅かにクラッチ歯の先端をずらすことにより、モードラックを帳票モード位置まで移動させることができるようになる。
【0093】
なお、本実施例では、クラッチプーリ22を所定量回転させてクラッチ歯28を移動させるものとして説明したが、クラッチ23に駆動手段が接続されている場合はクラッチ23を所定量回転させてクラッチ歯25を移動させるようにしてもよい。
【0094】
以上説明したように、第2の実施例では、第1の実施例の効果に加え、仮にクラッチの高いクラッチ歯の先端とクラッチプーリの任意の一クラッチ歯の先端とが完全に一致して衝突し、モードモータが脱調したとしても、強制的にLFモータを所定量回転させ、僅かにクラッチ歯の先端をずらすことにより、モードラックを帳票モード位置まで移動させることができるようになるという効果が得られる。
【0095】
なお、第1の実施例および第2の実施例では、印刷装置を用紙モード切替えのための動力の接続・遮断を行うギア装置を有するインパクトプリンタとして説明したが、それに限られることなく、複数の用紙モードを切替えるプリンタや複写機、複合機等としてもよい。また、ギア装置は、動力の接続・遮断を行うすべての動力機器に適用することができる。
【符号の説明】
【0096】
1 LFモータ
5 フィードローラ
9 トラクタ
10 トラクタシャフト
12 帳票ベルト
17、31 モードラック
22 クラッチプーリ
23 クラッチ
25、28 クラッチ歯
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1の嵌合歯を有する固定ギアと、それぞれの前記第1の嵌合歯と嵌合する複数の第2の嵌合歯を有する移動ギアとを有し、前記固定ギアおよび前記移動ギアが同軸上に設けられたギア装置において、
それぞれの前記第1の嵌合歯およびそれぞれの前記第2の嵌合歯のうち、ひとつの嵌合歯を、他の嵌合歯より長く形成したことを特徴とするギア装置。
【請求項2】
請求項1のギア装置において、
それぞれの前記第1の嵌合歯および第2の嵌合歯は、先端部に略同形状の傾斜が形成され、
前記軸方向と前記傾斜がなす角度をθ、隣接する前記第1の嵌合歯の先端の間隔と隣接する前記第2の嵌合歯の先端の間隔との差の最大値をXとしたとき、
前記嵌合歯の長さの差が、(X/tanθ)より大きくなるように前記第1の嵌合歯または第2の嵌合歯を形成したことを特徴とするギア装置。
【請求項3】
請求項2のギア装置において、
前記第1の嵌合歯の先端と前記第2の嵌合歯の先端とが衝突したとき、前記第1の嵌合歯または前記第2の嵌合歯のいずれか一方を移動させて前記第1の嵌合歯と前記第2の嵌合歯とを嵌合させることを特徴とするギア装置。
【請求項4】
請求項1、請求項2または請求項3のギア装置を有する印刷装置。
【請求項1】
複数の第1の嵌合歯を有する固定ギアと、それぞれの前記第1の嵌合歯と嵌合する複数の第2の嵌合歯を有する移動ギアとを有し、前記固定ギアおよび前記移動ギアが同軸上に設けられたギア装置において、
それぞれの前記第1の嵌合歯およびそれぞれの前記第2の嵌合歯のうち、ひとつの嵌合歯を、他の嵌合歯より長く形成したことを特徴とするギア装置。
【請求項2】
請求項1のギア装置において、
それぞれの前記第1の嵌合歯および第2の嵌合歯は、先端部に略同形状の傾斜が形成され、
前記軸方向と前記傾斜がなす角度をθ、隣接する前記第1の嵌合歯の先端の間隔と隣接する前記第2の嵌合歯の先端の間隔との差の最大値をXとしたとき、
前記嵌合歯の長さの差が、(X/tanθ)より大きくなるように前記第1の嵌合歯または第2の嵌合歯を形成したことを特徴とするギア装置。
【請求項3】
請求項2のギア装置において、
前記第1の嵌合歯の先端と前記第2の嵌合歯の先端とが衝突したとき、前記第1の嵌合歯または前記第2の嵌合歯のいずれか一方を移動させて前記第1の嵌合歯と前記第2の嵌合歯とを嵌合させることを特徴とするギア装置。
【請求項4】
請求項1、請求項2または請求項3のギア装置を有する印刷装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−58560(P2011−58560A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−208699(P2009−208699)
【出願日】平成21年9月9日(2009.9.9)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【出願人】(594202361)株式会社沖データシステムズ (259)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月9日(2009.9.9)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【出願人】(594202361)株式会社沖データシステムズ (259)
【Fターム(参考)】
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