説明

ギヤポンプ

【課題】外歯車と内歯車との摺接箇所と、外歯車とヘッドとの摺接箇所での摩耗が抑えられるギヤポンプを提供する。
【解決手段】外歯車2と内歯車3とを備え、外歯車2の回転軸方向の一方側に流体搬送空間10を覆う蓋部22を有し、蓋部22に駆動軸23が連結される。外歯車2の回転軸方向の他方側に流体搬送空間10を覆うヘッド4が設けられる。内歯車3には中心部に軸受孔30が形成されて軸受孔30にブッシュ6が着脱自在に嵌入される。ヘッド4にピン7が着脱自在に取り付けられる。外歯車2とブッシュ6が樹脂で形成され、内歯車3とヘッド4とピン7が金属で形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外歯車と内歯車とを備えたギヤポンプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、外歯車と内歯車とを備えたギヤポンプが用いられている(例えば特許文献1参照)。このギヤポンプ1は、図8に示すように、外歯車2と、内歯車3と、ヘッド4とを備え、外歯車2と内歯車3とヘッド4とで囲まれるポンプ室において液体の搬送が行われる。
【0003】
外歯車2は、複数の内歯21を有し、内歯車3は、複数の内歯21に囲まれる内部に配置され、内歯21と噛み合う外歯31を有するもので、互いに偏心して一部の外歯31と内歯21とが噛み合う状態で、外歯車2と内歯車3がともに回転する。ヘッド4は、外歯車2および内歯車3の片側を覆ってポンプ室の外殻の一部をなすもので、内歯車3の軸受孔に挿入されるピン7が設けられる。
【0004】
このギヤポンプ1にあっては、駆動手段により外歯車2が回転されるとともにこれと噛み合う内歯車3も回転され、吸入ポートに流入した液体が、外歯車2および内歯車3の回転に伴って吐出ポートへ搬送される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−247045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような従来のギヤポンプ1にあっては、外歯車2と内歯車3とヘッド4は、主に炭素鋼をはじめとする金属で形成されている。このため、これらの摺接が金属同士の摺接となり、特に、外歯車2の内歯車3とヘッド4への圧接部分9、すなわち、外歯車2と内歯車3の摺接箇所と、外歯車2とヘッド4の摺接箇所とで、激しく摩耗が生じるものであった。
【0007】
本発明は上記従来の問題点に鑑みて発明したものであって、その目的とするところは、外歯車と内歯車の摺接箇所と、外歯車とヘッドの摺接箇所での摩耗が抑えられるギヤポンプを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、以下のような構成とする。
【0009】
内歯を有する外歯車と、前記外歯車内に配置され前記内歯と噛み合う外歯を有する内歯車と、を備え、前記外歯車の回転軸方向の一方の外面側に前記外歯車と前記内歯車との間の流体搬送空間を覆う蓋部が設けられ、前記蓋部に前記外歯車を回転駆動させる駆動軸が連結され、前記外歯車の回転軸方向の他方の外側に前記流体搬送空間を覆うヘッドが設けられてなるギヤポンプであって、前記内歯車には中心部に軸受孔が形成されて前記軸受孔にブッシュが着脱自在に嵌入され、前記ヘッドの前記ブッシュに対応する位置にピンが着脱自在に取り付けられ、前記外歯車と前記ブッシュが樹脂で形成されるとともに、前記内歯車と前記ヘッドと前記ピンが金属で形成されることを特徴とする。
【0010】
また、前記外歯車の側端面と前記内歯車の側端面との間に隙間が形成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のギヤポンプは、外歯車と内歯車の摺接箇所と、外歯車とヘッドの摺接箇所での摩耗が抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のギヤポンプの一実施形態の要部断面図である。
【図2】(a)〜(d)はギヤポンプの動作の説明図である。
【図3】同上における外歯車を示し、(a)は全体斜視図であり、(b)は要部斜視図である。
【図4】同上における内歯車の正面図である。
【図5】同上におけるヘッドの斜視図である。
【図6】同上においてヘッドに内歯車を組み合わせた斜視図である。
【図7】他の実施形態の要部断面図である。
【図8】従来例のギヤポンプの要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明する。
【0014】
本発明は内接型のギヤポンプ1であり、図1、2に示すように、外歯車2と、内歯車3と、ヘッド4とを備え、外歯車2と内歯車3とヘッド4とで囲まれる流体搬送空間10(ポンプ室)において流体の搬送が行われる。
【0015】
外歯車2は、図3に示すように、複数の内歯21を有する樹脂で形成されるものである。本実施形態では、外歯車2の回転軸方向の一方の外面側に流体搬送空間10を覆う蓋部22が設けられ、この蓋部22に内歯21が形成されている。蓋部22には、外歯車2を回転駆動させる駆動軸23が連結されるもので、本実施形態では複数の内歯21の中心部に対応する箇所から駆動軸23が連設されている。駆動軸23はモータ等の駆動手段(不図示)により駆動されて回転する。外歯車2は、本実施形態では、内歯21と蓋部22と駆動軸23とがポリエーテルエーテルケトン樹脂(所謂PEEK樹脂)で一体に形成されているが、PEEK樹脂に限定されないのは勿論である。
【0016】
内歯車3は、外歯車2の複数の内歯21に囲まれる内部に配置され、図4に示すように、内歯21と噛み合う外歯31を有する金属で形成されるものである。本実施形態ではSUSにて形成されている。内歯車3の中心部には軸受孔30が形成されており、この軸受孔30に樹脂で形成されるブッシュ6が着脱自在に嵌入される。内歯車3の回転中心が外歯車2の回転中心から偏心した位置関係で、偏心している側の一部の外歯31が内歯21に噛み合いながら両者ともに回転する。外歯車2と内歯車3は、ヘッド4およびケーシング5からなる外殻の内部に収容される。
【0017】
ヘッド4は、図1、5に示すように、外歯車2および内歯車3の回転軸方向の他方の外側に設けられ、この側から流体搬送空間10を覆う金属で形成されるものである。ヘッド4は、図5に示すように、内歯車3の外歯31の側端面と対向する部分の一部が開口または切欠されて、流体搬送空間10に連通する吸入ポート12と吐出ポート13とがそれぞれ形成される。
【0018】
またヘッド4には、図1に示すように、内歯車3の回転中心(ブッシュ6)に対応する位置に、金属で形成されるピン7が着脱自在に取り付けられるものである。本実施形態では、ヘッド4にピン7が挿通されるピン孔40が貫通するように形成される。また、ピン孔40の液体搬送空間10側の端部から離れた部分(本実施形態では液体搬送空間10と反対側の端部)に雌ねじ41が形成されている。またピン7には、軸部のうち雌ねじ41に対応する部分(本実施形態では頭部側の端部の近傍)に雄ねじ71が形成されている。ピン7は、ヘッド4の所定の位置に正確に取り付けられる必要があるため、まず、ヘッド4の所定の位置にピン孔40が正確に貫通され、その後、ピン7の雄ねじ71に対応する部分に雌ねじ41が形成される。これにより、ピン7、ピン孔40に雄ねじ71、雌ねじ41が形成されるものでありながら、ピン7、ピン孔40の雄ねじ71、雌ねじ41が形成されていない部分が嵌め合いとなり、ピン7が所定の位置に正確に取り付けられる。なお、ピン7とピン孔40の嵌め合いは、締まり嵌め、すき間嵌め、中間嵌めのいずれでもよい。
【0019】
ケーシング5は、図1に示すように、外歯車2および内歯車3の回転軸方向の一方の外側に設けられ、この側から流体搬送空間10を覆う金属で形成されるものである。ケーシング5とヘッド4の周縁にはそれぞれフランジ42、51が形成され、フランジ42、51にはボルト挿通孔43、52が形成されており、両フランジ42、51のボルト挿通孔43、52に挿通されるボルト81にナット82が締結され、ヘッド4とケーシング5とが固定される。またケーシング5には、駆動軸23が挿通される駆動軸挿通孔50が形成されている。
【0020】
また本実施形態では、図1、2に示すように、外歯車2の複数の内歯21に囲まれる内部にあって、外歯車2と内歯車3との間に三日月形の仕切部11が設けられるもので、仕切部11はヘッド4と一体に形成されている。なお、仕切部11が設けられなくても、ギヤポンプ1はポンプとして機能するものである。
【0021】
また、図示しないが、外歯車2の内歯21の側端面をヘッド4に当接させるように付勢するばね等からなる付勢手段が設けられる。なお、付勢手段はケーシング5内に設けられてもよいし、ケーシング5外に設けられてもよい。
【0022】
図6に示すように、内歯車3は、その軸受孔30に嵌入されたブッシュ6が、ヘッド4の所定の位置に取り付けられたピン7に被嵌されて、ヘッド4の所定の位置に回転自在に取り付けられる。そして、外歯車2が、複数の内歯21に囲まれる内部に内歯車3と仕切部11とを収容する状態で、その内歯21が内歯車3の外歯31と噛み合わせられ、ヘッド4およびケーシング5が固定される。
【0023】
また本実施形態では、内歯車3の外歯31の幅が、外歯車2の内歯21の幅よりも短く(例えば0.2mm短く)形成されている。そして、図1に示すように、内歯車3のピン7への被嵌位置が調節されることで、内歯車3の外歯31の側端面と外歯車2の内歯21の側端面との間に隙間14が形成されている。
【0024】
このギヤポンプ1は、図2(a)に示すように、吸入ポート12に流入した搬送対象となる液体(図2中の網掛け部)は、外歯車2および内歯車3の回転に伴って図2(b)〜(d)に示すように移動し、吐出ポート13から吐出される。
【0025】
このギヤポンプ1にあっては、外歯車2が樹脂で形成されるとともに、内歯車3とヘッド4が金属で形成されている。このため、摩耗が激しい外歯車2と内歯車3との摺接箇所と、外歯車2とヘッド4との摺接箇所で、金属と樹脂の摺接となって、その摩耗(量)は金属同士の摺接による摩耗よりも小さく抑えられる。特に、搬送対象となる液体が、無機系顔料等の硬い粒子を含有する場合、特に摩耗の抑制効果が顕著となる。摩耗が抑えられることで、摩耗により搬送される液体が漏れることによる流量のばらつきが生じるのが抑えられる。
【0026】
この結果、外歯車2の高頻度での交換が不要となる。特に、外歯車2がPEEK樹脂で形成されることで、滑り性が向上し、摩耗がより一層抑えられる。なお、内歯車3は本実施形態ではSUSにて形成されているため、外歯車2を破壊したりするのが抑えられる。すなわち、内歯車3が炭素鋼で形成されたり、さらにその表面に焼入れが施されると、表面硬度が高くなり、外歯車2を破壊する惧れが生じるが、内歯車3がSUSで形成されることで、外歯車2の破壊の惧れが抑えられる。さらに、炭素鋼と比べて錆が生じ難くなる。
【0027】
また、ブッシュ6とピン7の摺接箇所においても、金属と樹脂の摺接となって、摩耗は金属同士の摺接による摩耗よりも小さく抑えられ、特に、ブッシュ6により軸受部の潤滑油が不要となってオイルレス化が図られ、メンテナンスが容易で安価となる。このブッシュ6とピン7の交換は、外歯車2の交換よりも高頻度で行われるように設計されているが、従来の外歯車2と内歯車3とヘッド4の交換頻度よりは低くて済む。また、従来、一度の交換で外歯車2と内歯車3とヘッド4とを交換しており、費用がかさんでいたところ、ブッシュ6とピン7の交換のみでよく費用が著しく低減される。また、外歯車2を交換する場合も、従来よりも外歯車2が安価であり費用が低減される。
【0028】
また、外歯31の側端面と内歯21の側端面との間に隙間14が形成されることで、外歯車2と内歯車3との摺接機会が減少して、より一層外歯31の摩耗が抑えられる。隙間14は、例えば0.2mmとすることで、摩耗の抑制の効果がみられるが、特に0.2mmに限定されない。また、隙間14が0.2mmを超えると、搬送される液体の漏れが大きくなるため、好ましくない
また、内歯車3とヘッド4とは、摺接面同士が特に圧接されるわけではないため、摩耗が問題となる程生じないものの、図7に示すように、内歯車3の外歯31の側端面とヘッド4との間に隙間15が形成されることで、より一層の摩耗の抑制が図られる。
【符号の説明】
【0029】
1 ギヤポンプ
10 流体搬送空間
11 仕切部
12 吸入ポート
13 吐出ポート
14 隙間
2 外歯車
21 内歯
22 蓋部
23 駆動軸
3 内歯車
30 軸受孔
31 外歯
4 ヘッド
40 ピン孔
41 雌ねじ
42 フランジ
5 ケーシング
50 駆動軸挿通孔
51 フランジ
6 ブッシュ
7 ピン
71 雄ねじ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内歯を有する外歯車と、前記外歯車内に配置され前記内歯と噛み合う外歯を有する内歯車と、を備え、前記外歯車の回転軸方向の一方の外面側に前記外歯車と前記内歯車との間の流体搬送空間を覆う蓋部が設けられ、前記蓋部に前記外歯車を回転駆動させる駆動軸が連結され、前記外歯車の回転軸方向の他方の外側に前記流体搬送空間を覆うヘッドが設けられてなるギヤポンプであって、前記内歯車には中心部に軸受孔が形成されて前記軸受孔にブッシュが着脱自在に嵌入され、前記ヘッドの前記ブッシュに対応する位置にピンが着脱自在に取り付けられ、前記外歯車と前記ブッシュが樹脂で形成されるとともに、前記内歯車と前記ヘッドと前記ピンが金属で形成されることを特徴とするギヤポンプ。
【請求項2】
前記外歯車の側端面と前記内歯車の側端面との間に隙間が形成されることを特徴とする請求項1記載のギヤポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−108443(P2013−108443A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254534(P2011−254534)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】