説明

クメストロールの生産方法及びそれにより生産されたクメストロール

本発明は、豆を発芽させる発芽工程;及び、豆を発酵させる発酵工程を含むクメストロールの生産方法と、前記生産方法により生産されたクメストロールを開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クメストロールの生産方法及びそれにより生産されたクメストロールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
豆は、栄養的価値に優れるとともに、多様な生理活性を有する機能性物質を多量に含有している。特に、豆に含まれているフィトエストロゲン(phytoestrogen)は、人間をはじめとする哺乳動物のエストロゲン(estrogen)とその構造が類似するため、ホルモン疾患を例として挙げられる慢性疾患を予防する効果がある。一般的に、こうしたフィトエストロゲンの種類としては、イソフラボン(isoflavone)、クメスタン(coumestan)又はリグナン(lignan)等を挙げることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、クメストロールの生産方法及びそれにより生産されたクメストロールを提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一側面は、豆を発芽させる発芽工程;及び、豆を発酵させる発酵工程を含むクメストロールの生産方法を提供する。
本発明の他の一側面は、前記方法により生産されたクメストロールを提供する。
【発明の効果】
【0005】
本発明に係るクメストロールの生産方法は、豆内のクメストロールの含量を高めるので、それから多量のクメストロールを高い収率で得ることができるようにする。前記方法を通じて、高価なクメストロールを多量に生産することができる。このように生産したクメストロールは、薬学、食品や化粧品を例として挙げられる多様な分野に活用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】30℃の自動注水装置で発芽させた豆から抽出したクメストロール含量(mg/kg、乾燥重量)を示したグラフである。
【図2】アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)を接触させ、発芽させた豆から抽出されたクメストロール含量(mg/kg、乾燥重量)を示したグラフである。
【図3】アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)を接触させ、30℃の液体培地(potato dextrose broth)で発芽させた豆から抽出されたクメストロール含量(mg/kg、乾燥重量)を示したグラフである。
【図4】アスペルギルス・ソーヤ(Aspergillus sojae)を接種させ、30℃の液体培地(potato dextrose broth)で発芽させた豆から抽出されたクメストロール含量(mg/kg、乾燥重量)を示したグラフである。
【図5】ビフィドバクテリウム・インファンティス(Bifidobacterium infantis)を接種させ、30℃の液体培地(potato dextrose broth)で発芽させた豆から抽出されたクメストロール含量(mg/kg、乾燥重量)を示したグラフである。
【図6】豆の種類によるクメストロール含量を示したグラフである。
【図7】培地添加物によるクメストロール含量を示したグラフである。
【図8】菌株処理濃度によるクメストロール含量を示したグラフである。
【図9】最適な条件を組み合わせて工程を進行した後のクメストロール含量を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
クメストロール(CMS, 3,9−dihydroxy−6H−benzofuro(3,2−c)(1)benzopyran−6−one C15, MW:268.2)は、天然エストロゲンであるエストラジオール(estradiol)又はスチルベストロール(stilbestrol)と構造的に類似なクマリン(coumarin)類似化合物であり、下記化学式1のような構造を持つ。
【0008】
【化1】

クメストロールのエストロゲン活性(estrogen activity)は、既存のエストロゲン活性効果があると知られているイソフラボン(isoflavone)と比較して30〜100倍以上高く、子宮癌、骨髄癌、乳癌や脳癌、更年期症状等を緩和させる上で非常に有用である。こうしたエストロゲン活性と関連した機能は、クメストロールの前記のような構造のためであると考えられている。
【0009】
クメストロールは、豆又はマメ科植物の原物にごく微量又はほとんど存在しないものと知られている。このように活用価値が非常に高いものの、豆に極微量しか含まれていないためにその活用が制限されていたクメストロールを効率的に生産する必要がある。
【0010】
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明の一側面は、豆を発芽させる発芽工程;及び、豆を発酵させる発酵工程を含むクメストロールの生産方法を提供する。
【0011】
本発明の一側面において、前記豆は、クメストロールを合成するマメ科植物であれば、特別な制限なく使用可能である。たとえば、本発明において使用されてもよい豆の種類は、醤類及び豆腐用、ナムル(青菜)用、雑穀飯用又は枝豆用品種であってよい。醤類及び豆腐用品種としては、大豊、湖醤、壯元、大▲黄▼(daehwang)、ソダム、松鶴、大元、眞品、蛋白、豆油、新八達、太光、萬里、長壽、無限、白雲、セアル、黄金及び長葉等がある。ナムル用品種としては、シンファ、ソウォン、安平、西南、多彩、小緑、小湖、疏明、多元、豊産ナムル、益山ナムル、小白ナムル、光安、短葉及び銀河等がある。雑穀飯用品種としては、青磁、黒青、褐味、鮮黒、黒大豆及び一品黒大豆等がある。また、枝豆用品種では、ダオル、新緑、セウル、コムジョンウル、夕涼プッコン、華厳プッコンとクンウル等がある。
【0012】
本発明の他の一側面において、豆は、発芽が可能であり、病虫害に強い品種であることが好ましい。そのような豆としては、たとえば、シンファ、ソウォン、安平、西南、多彩、小緑、小湖、疏明、多元、豊産ナムル、益山ナムル、小白ナムル、光安、短葉及び銀河等がある。
【0013】
本発明の一側面に係るクメストロールの生産方法は、豆を発芽させる発芽工程を含む。前記発芽工程は、豆の少なくとも一部を酸素又は空気と接触させて進められてよい。
本発明の一側面に係るクメストロールの生産方法は、豆を発酵させる発酵工程を含む。クメストロールは、マメ科植物がカビや病原性細菌等といった微生物から攻撃を受けた際に、自らを保護するために合成するフィトアレキシン(phytoalexin)の一種として知られている。すなわち、豆に、真菌、酵母又は乳酸菌を例として挙げられる微生物を接触させると、これらがクメストロール合成誘導因子(elicitor)として作用して、豆内のクメストロール含量を増進させることができる。本発明の一側面において、豆の少なくとも一部を微生物と接触させて進行される発酵工程を通じて、豆のクメストロール含量を高めることができる。本発明の他の一側面において、前記発酵工程は、豆に、微生物を1〜10回、具体的には1〜5回、さらに具体的には1〜3回接種させて進められてよい。こうした過程を通じて、より微生物が豆に接触することができる。
【0014】
本発明の一側面に係るクメストロールの生産方法において、前記発芽工程と発酵工程が、同時に又は順次的に進行されてよい。本発明の他の一側面において、発芽工程と発酵工程が同時に進行される場合、豆を微生物と接触させた状態で、酸素又は空気と接触させる方法で進行されてよい。具体的に、前記豆を、前記微生物を含む培地に浸漬させた状態で、前記酸素又は空気と接触させて進行されてよい。
【0015】
本発明の一側面において、前記微生物は、クメストロール生産誘導因子(elicitor)として作用することができるならば、制限なく適用可能である。本発明の他の一側面において、前記微生物は、真菌、酵母又は乳酸菌であってよく、具体的に、前記真菌は、アスペルギルス(Aspergillus)、ペニシリウム(Penicillium)又はモナスカス(Monascus)属の微生物であってよい。より具体的に、前記微生物は、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・ソーヤ(Aspergillus sojae)、アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)及びビフィドバクテリウム・インファンティス(Bifidobacterium infantis)からなる群より選択された一つ以上であってよい。前記列挙された微生物は、豆のクメストロールの生産量を高めるのに適する。
【0016】
本発明の一側面において、微生物胞子のサスペンション溶液を豆の双葉の表面に塗布することにより、豆に微生物を接触させてよい。本発明の他の一側面において、微生物パウダーを豆が含まれた培地に加えることにより、微生物を豆に接触させてよい。本発明の他の一側面において、培地重量を基準に、0.05〜2重量%、具体的には0.75〜2重量%、より具体的には1.0〜2.0重量%の微生物を接触させてよい。
【0017】
本発明の一側面において、発芽工程及び発酵工程のうち一つの工程の条件は、発芽及び発酵が持続的に行われ得る条件であれば特に制限されない。発芽又は発酵工程の条件の例示は、次のとおりである。
【0018】
本発明の一側面において、発芽工程及び発酵工程のうち一つ以上の工程は、反応器内で進行されてよい。本発明の他の一側面において、前記工程は、反応器の体積比で20〜80体積%、具体的に40〜60体積%、より具体的には45〜55体積%の培地を含む反応器内で進行されてよい。
【0019】
本発明の一側面において、前記培地は、発芽及び発酵が円滑に行われ得る培地であれば特に制限されず、具体的に、液体栄養培地、より具体的にPDB培地(potato dextrose broth)を例に挙げることができる。本発明の他の一側面において、培地は、培地全体重量比で0.001〜10重量%、具体的には0.1〜5重量%、より具体的には0.5〜2重量%の糖類を含んでいてよい。このとき、糖類は、一般的な単糖類、二糖類又は多糖類をすべて含み、スクロース(sucrose)、グルコース(glucose)又はSRTを例として挙げることができる。
【0020】
本発明の一側面において、前記工程は、反応器の体積比で1〜50体積%、具体的に5〜20体積%、より具体的に6〜12体積%の豆を反応器に接種して進行されてよい。このとき、工程を経る豆全体のうち少なくとも一部の豆は、培地に浸漬されるようにし、一部は培地に浸漬されないようにしてもよい。豆が完全に外部に露出した状態では、給水過程において、豆を発酵させるために接触させた微生物が洗い出されていくおそれが大きく、逆に完全に浸水した状態では、発芽させた豆が腐敗し得るためである。
【0021】
本発明の一側面において、前記工程は、酸素又は空気を最大に供給しつつ進行されてよい。たとえば、5000ml反応器において工程が進行される場合、2,500vvm/m、3L反応器で工程が進行される場合、15,000vvm/mで酸素又は空気を供給してよい。このように、十分な酸素や空気を供給することにより、発芽が円滑に行われ得る。
【0022】
本発明の一側面において、前記工程は、20〜35℃、具体的には、20〜30℃の温度で進行されてよい。本発明の他の一側面において、前記工程は、遮光条件下で行われてよい。本発明の他の一側面において、前記工程は、2〜10日間進行されてよい。たとえば、発芽工程が2日間進行された後、発芽工程及び発酵工程が同時に6〜8日間進行されてよい。
【0023】
前記のような条件の発芽工程及び発酵工程を通じて、豆内のクメストロールの含量が効果的に増進され得る。
本発明の一側面に係るクメストロールの生産方法は、発芽工程以前に、豆を、滅菌水、エタノール及び次亜塩素酸ナトリウム(sodium hypochlorite)のうち一つ以上、好ましくは滅菌水で洗浄する殺菌工程を含んでいてよい。
【0024】
本発明の一側面に係るクメストロールの生産方法は、発芽工程及び発酵工程以後に、発芽及び発酵させた豆からクメストロールを抽出する抽出ステップをさらに含んでいてよい。前記において、抽出は、当業界に通常的な方法により行われてよく、具体的にアルコール、より具体的にエタノール抽出法で行われてよい。
【0025】
本発明の一側面は、前記クメストロールの生産方法により生産されたクメストロールを提供する。前記クメストロールは、薬学、食品又は化粧品の分野において多様に活用されてよい。本発明の他の一側面は、前記クメストロールを有効成分として含む薬学、食品又は化粧品組成物を提供する。
【0026】
以下、実験例を挙げつつ、本発明の構成及び効果をより具体的に説明する。しかし、以下の実験例は、本発明に対する理解を助けるために例示の目的でのみ記載されたものであるに過ぎず、本発明のカテゴリ及び範囲がそれにより制限されるものではない。
【0027】
[実施例1〜6]豆の発芽及び発酵実験
本実験に使用された豆は、ナムル豆に該当するグリシンマックス(Glycine max(L.)Merrill)品種の2種(Glycine max(L.)Merrill variety 1(以下 「品種1」という)及びvariety 2(以下「品種2」という))であった。前記豆を発芽させた後に微生物を接触させ、クメストロールの生産増大が誘導されるかを評価した。実験に使用された微生物菌株は、真菌類に属するアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger KCCM、韓国微生物保存センターから入手、分類番号:11240)、アスペルギルス・ソーヤ(Aspergillus sojae KCCM、韓国微生物保存センターから入手、分類番号:60354)(non−toxic, food grade)、及び乳酸菌に属するビフィドバクテリウム・インファンティス(Bifidobacterium infantis KCCM、韓国微生物保存センターから入手、分類番号:11207)であった。具体的な実験条件は以下のとおりである。
【0028】
<発芽条件>
温度は30℃、湿度は55%に固定して恒温恒湿器で培養し、3つの群で2回繰り返し実験を実施し、光量は暗室条件に設定した。注水は、タイマーを使用して、4時間間隔で3分間、自動的に進行された。発芽容器は、底が網からなり、水が下に抜けるようにデザインされた自動注水装置を利用した。
【0029】
<微生物菌株の準備>
1.真菌(Aspergillus niger, Aspergillus sojae)の準備
平板培地(Potato dextrose agar,DifcoTM,BD Diagnostics,Sparks,マリーランド,アメリカ)に菌株を接種させた後、2週間、37℃で培養して胞子を十分に形成するようにした。滅菌されたスパチュラ(spatular)を利用して胞子を取り出し、水に均一に分散させた。その次に、ヘモサイトメーター(hemocytometer)を利用して濃度を確認した後、10個/mlとなるように希釈して胞子サスペンション(suspension)を準備した。
【0030】
2.乳酸菌(Bifidobacterium infantis)の準備
滅菌された液体培地(Reinforced clostridial medium,Oxoid LTD.,ハンプシャ,イギリス)に菌を接種し、窒素充填及び密封した後、37℃で1週間培養させて菌株培養液を準備した。
【0031】
<発芽及び微生物処理>
各実施例ごとの発芽及び微生物の処理条件は、下表のとおりである。
【0032】
【表1】

<クメストロール含量の分析>
発芽した豆と培養液に、最終濃度が80%となるようにエタノールを添加して均質化した後、クメストロールを抽出して分析した。
・カラム:NOVA−PAK RP18 5μm(3.9×150mm)
・カラム温度:27℃
・検出器:UVD(260nm)
・溶媒:1%酢酸水溶液(アセトニトリル勾配)
<実験結果>
[実施例1]
実施例1は、発芽のみ進行された場合であり、図1に示されているところのように、クメストロールがごく少量分析された。
【0033】
[実施例2]
実施例2は、発芽及び微生物接種がいずれも遂行された場合であり、図2に示されたところのように、発芽のみ進行された実施例1に比べてクメストロールの生産量が相対的に増加したことを知ることができる。
【0034】
ただ、菌株を芽の表面に接種しており、接種された菌株が誘導因子(elicitor)として効果的に作用していなかった。これは、4時間間隔の注水により接種された微生物がきちんと生長できず、大部分が洗われて除去されたためであるものと判断される。実際に、8日間育った発芽豆の周辺において菌株の生長は観察されなかった。
【0035】
これを通じ、微生物が豆に効率的なクメストロールの生産誘導因子(elicitor)としての役割を遂行し得ることを確認した。また、豆の生育に必要な水分が適切に供給されるようにすることが重要であるという点を確認した。
【0036】
[実施例3]
2日間発芽させた豆をアスペルギルス・ニガー(A.niger)とともに培養したとき、図3に示されたところのように、品種1は6日目に約170mg/kg乾燥重量(dry weight)まで、品種2は8日目に82.4mg/kg乾燥重量(dry weight)まで、格段にクメストロールが増加することを確認した。これは、微生物を接種させずに自動注水装置で育てた実施例1の結果である12.80mg/kg乾燥重量(品種1)、5.85mg/kg乾燥重量(品種2)と比較した場合、約13倍増加した数値である。前記結果を通じ、アスペルギルス・ニガー(A.niger)の接種が豆のクメストロールの生産を誘導することを確認することができた。
【0037】
[実施例4]
2日間発芽させた豆をアスペルギルス・ソーヤ(A.sojae)とともに培養したとき、図4に示されたところのように、品種1は72.04mg/kg乾燥重量、品種2は81.63mg/kg乾燥重量のクメストロールを生産した。これもまた、実施例1に比べてはるかにクメストロールの生産を増加させたが、アスペルギルス・ニガー(A.niger)に比べるとその効果が多少低いものと示された。これを通じ、菌株の種類に応じて、豆のクメストロールの生産に差があることを知ることができた。
【0038】
[実施例5]
乳酸菌の一種であるビフィドバクテリウム・インファンティス(B.infantis)と豆とを、4日間、ともに培養したとき、図5に示されたところのように、品種1のクメストロールの含量は82.85mg/kg乾燥重量、品種2のクメストロールの含量は45.1mg/kg乾燥重量であるものと示された。この場合にも、クメストロールの生産が増加することを確認することができた。
【0039】
[実施例6]
本実験条件では、豆が培地に完全に浸漬されて円滑な発芽が起こらなかった。さらに、処理した微生物によって腐敗が進み、クメストロールは全く検出されなかった。
【0040】
[実施例7]適切な大量生産条件
1.方法
大容量バイオ反応器(bioreactor)を利用して、様々な条件を変えてクメストロールを大量生産した。まず、すべての器具を微生物接種前に121℃の高圧滅菌器で滅菌して準備した。豆は、豊産ナムル豆又はソウォン豆を利用した。豆の種子を、滅菌水、エタノール及び次亜塩素酸ナトリウム(sodium hypochlirite)のうち一つ以上で2回洗浄殺菌した。それぞれ1%スクロース(sucrose)、1%グルコース(glucose)及び1%SRTのうち一つ以上を含む培地を、反応器の体積比で20〜80体積%の量で準備した。豆の種子は、反応器の体積比で3〜12体積%の密度で接種した。培地と豆の種子を含む反応器で、温度20〜30℃、光又は遮光、空気供給15000vvm/mの条件の下、それぞれ豆の種子を発芽させた。
【0041】
発芽2日目に、豆に芽が出始めると、培地全体の重量比で0〜1.25重量%の菌株(アスペルギルス・オリザエ、Aspergillus oryzae)((株)メディオジェンから入手、1×10CFU/g アスペルギルス・オリザエ)を培地に入れ、8日目まで培養した。
【0042】
その後、培養した豆と培地のクメストロールを抽出して含量分析した。その分析方法は、前記実施例1〜6と同様である。
2.結果
(1)豆の種類による結果
豆の種類によるクメストロール含量を図6に示した。図6から確認できるように、本発明の一実施例に適用される豊産ナムル豆は、発芽条件の下で約33.8μg/gの含量でクメストロールが観察され、また、ソウォン豆は発芽条件の下で約196μg/gの含量でクメストロールが観察された。自然に発生する豆中のクメストロール量が5μg/g以下であることを勘案すれば、本発明の一実施例に適用される豆の場合、相対的に大量のクメストロールを生産できることを知ることができる。
【0043】
(2)培地添加物による結果
それぞれ1%スクロース(sucrose)、1%グルコース(glucose)及び1%SRTのうち一つ以上を添加した培地によるクメストロール含量を図7に示した。図7から確認できるように、添加物を添加した場合、いずれも無処理群に比べて多くのクメストロールを生産することができ、特に、1%スクロースを添加する場合、最も多いクメストロールを生産することができた。これは、前記添加物が菌の成長を均一化して、誘導因子として一定に作用できるようにするためと考えられる。
【0044】
(3)菌株の処理濃度による結果
誘導因子(elicitor)として作用する微生物菌株の処理濃度によるクメストロール含量を図8に示した。図8から確認できるように、微生物菌株の処理濃度が一定以上である場合、その処理濃度が高くなるほど、より多くのクメストロールの生産が可能である。特に、微生物菌株の処理濃度が1.25重量%である場合、無処理群に比べて11倍ほど高いクメストロールの生産を示した。一方、微生物菌株を2重量%以上処理する場合、発芽は進行されず、発酵のみが進行され、2重量%以下の濃度で微生物菌株を処理することが適切であることを確認することができた。
【0045】
(4)最適条件の組合せ結果
前記様々な条件のうち、最適な条件を組み合わせてクメストロールの生産程度を確認した。その最適条件は、下表のとおりである。
【0046】
【表2】

最適条件を組み合わせた場合のクメストロール含量を図9に示した。図9から確認できるように、前記最適条件の下では、そうでない場合に比べて8倍以上多いクメストロールを生産することができる。
【0047】
以上の結果から、豆を発芽及び微生物を利用して発酵させることにより、それに含まれるクメストロール含量を高め得ることを確認することができる。また、商業的に有用な大量生産に適した発芽及び発酵工程条件があることを確認することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
豆を発芽させる発芽工程;及び
豆を発酵させる発酵工程を含むクメストロールの生産方法。
【請求項2】
発芽工程は、豆の少なくとも一部を酸素又は空気と接触させて進行され、
発酵工程は、豆の少なくとも一部を微生物と接触させて進行される、請求項1記載のクメストロールの生産方法。
【請求項3】
発芽工程と発酵工程が同時に又は順次的に進行される、請求項1記載のクメストロールの生産方法。
【請求項4】
発芽工程と発酵工程が同時に進行される方法は、豆を微生物と接触させた状態で、酸素又は空気と接触させて進行される、請求項3記載のクメストロールの生産方法。
【請求項5】
前記豆を、前記微生物を含む培地に浸漬させた状態で、前記酸素又は空気と接触させて進行される、請求項4記載のクメストロールの生産方法。
【請求項6】
微生物は、真菌、酵母又は乳酸菌を含む、請求項2記載のクメストロールの生産方法。
【請求項7】
真菌は、アスペルギルス(Aspergillus)、ペニシリウム(Penicillium)又はモナスカス(Monascus)属を含む、請求項6記載のクメストロールの生産方法。
【請求項8】
微生物は、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・ソーヤ(Aspergillus sojae)、アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)及びビフィドバクテリウム・インファンティス(Bifidobacterium infantis)からなる群より選択された一つ以上である、請求項2記載のクメストロールの生産方法。
【請求項9】
発芽工程及び発酵工程のうち一つ以上の工程は、反応器全体の体積比で20〜80体積%の培地を含む反応器内において、反応器全体の体積比で1〜50体積%の豆で進行される、請求項1記載のクメストロールの生産方法。
【請求項10】
培地は、培地全体の重量比で0.001〜10重量%の糖類を含む、請求項9記載のクメストロールの生産方法。
【請求項11】
発芽工程及び発酵工程のうち一つ以上の工程は、20〜35℃の温度及び暗条件において2〜10日間進行される、請求項1記載のクメストロールの生産方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法により生産されたクメストロール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2013−517793(P2013−517793A)
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−551099(P2012−551099)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【国際出願番号】PCT/KR2011/000673
【国際公開番号】WO2011/093686
【国際公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(506213681)株式会社アモーレパシフィック (24)
【氏名又は名称原語表記】AMOREPACIFIC CORPORATION
【住所又は居所原語表記】181,2−ga,Hangang−ro,Yongsan−gu,Seoul,Republic of Korea
【Fターム(参考)】