説明

クラゲ検出装置

【課題】 従来のクラゲ検出装置では、クラゲによる超音波の反射波が弱いために、1つの超音波振動子から超音波を照射しても、その反射波は弱く、クラゲが検出されないことがあるので、海水と一緒にクラゲを吸い込んで、冷却装置がクラゲで目詰まりを生じるという問題があった。
【解決手段】 超音波プローブ1の複数の超音波振動子2は円弧状に形成され、切替回路3に接続され、切替回路3の入力端子に発振回路4が接続され、又、切替回路3の出力端子に受信回路5が接続され、受信回路5に遅延回路6が接続され、遅延回路5に比較回路7が接続され、比較回路7に閾値信号出力回路8が接続され、さらに、比較回路7の出力端子に記憶回路9が接続され、記憶回路9の出力端子に画像合成回路10が接続され、画像合成回路10に表示装置11が接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中を移動する物体、特にクラゲのように反射波の弱い生物を公的に検出するくらげ検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、発電所においては、海水を大量に取水して冷却水として利用している。そのため、海水を取水するために海岸に面して取水口をもうけているが、その取水口に大量のクラゲが流入すると、取水口を塞いでしまう場合があり、大きな問題となっている。そのため、クラゲ流入防止対策として、エアーバフリング装置や除塵機やクラゲ帰還水路が設置されているが、そのような防止策を効率的に行うために、来襲するクラゲの早期接近検出技術が必要であった。そのため、クラゲの大量流入を監視するため、従来においては、肉眼やビデオカメラや魚群探知機によるクラゲの監視が行われてきた。
【0003】
しかしながら、ビデオカメラによる監視では、監視可能なクラゲは海水面付近に浮上しているものだけであり、水中に存在するクラゲの群れについては検出できなかった。又、波やゴミによる影響によるご認識によりクラゲの量的な把握や移動速度などに関する情報をえるのは不可能に近かった。さらに、魚群探知機ののような超音波検出装置を取水口付近の適宜の位置に配置しても、超音波検出装置は1つの超音波振動子から超音波を水中に照射し、その反射波を照射された超音波振動子で受信し、その反射波信号を表示装置で表示して異物が取水場に流れてきていないかを検知しているため、ゼリー状の物体では、1つの超音波振動子から超音波を照射しても、その反射波は弱くクラゲが検出されないことがあるので、海水と一緒にクラゲを吸い込んで、冷却装置がクラゲで目詰まりを生じるという問題があった。
【特許文献1】特開平11−191191
【特許文献2】特願2006−284286
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
解決しようとする問題点は、従来のクラゲ検出装置では、クラゲは超音波の反射波が弱いために、1つの超音波振動子から超音波を照射しても、その反射波は弱く、クラゲが検出されないことがあるので、海水と一緒にクラゲを吸い込んで、冷却装置がクラゲで目詰まりを生じるという問題があった。このような従来のクラゲ検出装置では不可能であったクラゲのような超音波の反射波が弱い特定の物体の3次元的な分布量と移動速度を他の物体と区別して確実に検出でき、かつ安価な検出装置て提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明では、円弧状に形成した複数の超音波振動子からなる超音波プローブと、前記複数の超音波振動子に接続された切替回路と、該切替回路に接続された前記超音波プローブの前記超音波振動子にそれぞれ発振出力を印可する発振回路と、該発振回路からの出力で超音波振動子から水中に照射され、水中からの反射波が順次入力され、該反射波を順次増幅して出力する受信回路と、該受信回路からの出力を順次遅延する遅延回路と、該遅延回路からの出力を順次記憶する記憶回路と、該記憶回路から読み出された反射波信号を閾値信号出力回路から出力される予め決められた閾値信号と比較する比較回路と、該比較回路からの出力信号を画像信号に変換する画像信号変換回路と、画像信号変換回路からの画像信号を2次元的に表示する表示装置とからなり、前記比較回路は閾値信号出力回路からの閾値より低い信号を検出することにより、クラゲのような反射波の弱い生物からの信号を表示するものであり、前記超音波プローブを駆動装置によって上下に駆動し、前記超音波振動子から照射される超音波を上下に照射し、反射波信号により3次元画像を表示するとともに、移動速度も把握できるものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明のクラゲ検出装置では、超音波プローブの超音波振動子を円弧状に形成することにより、複数の超音波振動子から超音波を放射状に広く照射し、その反射波を遅延回路を介して順次遅延させるとともに、これらの遅延された信号を比較回路に順次通過させることにより、予め決められた閾値信号と比較され、この閾値信号より低い信号を記憶して、順次表示することにより、超音波の反射が弱いゼリー状のクラゲを確実に検出して表することができるという利点がある。又、円弧状にプローブを形成させることにより、魚群探知機よりも広範囲のクラゲを検知することができるという利点がある。さらに、プローブを上下又は左右に駆動させることにより、さらに、広範囲のクラゲを検知できるとともに、移動速度も明らかにできるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明では、円弧状に形成した超音波振動子で広く水中に超音波を照射するとともに、比較回路で閾値と比較して、閾値より低い信号を検出することにより、クラゲのようなゼリー状の物体を検出することができるものである。
【実施例】
【0008】
図1は本発明の実施例のクラゲ検出装置のブロック図で、超音波プローブ1の複数の超音波振動子2は円弧状に形成され、切替回路3に接続され、切替回路3の入力端子に発振回路4が接続され、又、切替回路3の出力端子に受信回路5が接続され、受信回路5に遅延回路6が接続され、遅延回路5に比較回路7が接続され、比較回路7に閾値信号出力回路8が接続され、さらに、比較回路7の出力端子に記憶回路9が接続され、記憶回路9の出力端子に画像合成回路10が接続され、画像合成回路10に表示装置11が接続されている。
【0009】
このように構成された本実施例のクラゲ検出装置では、発振回路4からの発振出力を順次切替回路3で切り換えて複数の超音波振動子2から順次照射されると、その反射波は順次複数の超音波振動子2で受信され、受信回路5で受信されるが、遅延ゲート回路6は予め決められた時間後から受信信号を通過させることにより、図2に示すように、ライン1a、2a、・・・、na毎に受信され、それらの受信信号は比較回路7に入力されて、閾値信号出力回路8からの閾値信号と比較され、閾値信号より低い信号が比較回路7から出力されて記憶回路9で記憶され、記憶回路9から順次読み出されて画像形成回路10に入力され、ここで画像信号に変換されて表示装置11で平面画像H1が表示される。
【0010】
このように構成された本実施例のクラゲ検出装置では、比較回路7で比較信号出力回路8からの閾値信号と比較されて、閾値信号より低い信号が通過して記憶回路で記憶されるので、表示装置11で表示された図2に示す平面画像H1には、魚類や固形物は表示されず、図2のK1,K2で示すように、クラゲが表示される。
【0011】
本発明は、このように、円弧状に形成した複数の超音波振動子2によって広く超音波を照射し、受信された超音波の反射信号を順次遅延して受信することにより、円弧状のライン毎に反射波信号が受信され、さらに、閾値信号出力回路8からの閾値信号より低い信号を比較回路7で比較して通過させることにより、魚類や他の生物のように、超音波を強く反射する反射波信号は除去され、図2の平面画像H1に、クラゲK1,K2のみが表示されるという利点がある。
【0012】
図3は本発明の他の実施例のクラゲ検出装置のブロック図で、1は超音波プローブ、2は円弧状の複数の超音波振動子、3は切替回路、4は発振回路、5は受信回路、6は遅延回路、7は比較回路、8は閾値信号出力回路、9は記憶回路、10は画像合成回路、11は表示装置で、これらの構成は上記実施例と同じで説明は省略するが、本実施例では、発振回路4からの発振出力と同期して超音波プローブ1を駆動装置12で上下に駆動する。
【0013】
このように構成された本実施例のクラゲ探知装置では、順次下降している間に、超音波プローブ1の円弧状の超音波振動子2から超音波を送受信することにより、図4に示すように、ライン1a、2a、・・・、naで形成された画像の下にライン1b、2b、・・・、nbからなる次の画像が表示され、さらに、次の画像が順次表示されて、最下部にライン1n、2n、・・・、nnからなる画像が表示されることにより、立体画像R1が形成され、反射波信号は比較回路7で閾値信号発生回路8からの閾値信号と比較されて、閾値信号より低い信号が比較回路7を通過するので、立体画像R1にクラゲK1,K2が表示される。
【0014】
本発明は、このように超音波プローブ1を駆動装置12で発振回路4からの出力と同期して駆動することにより、表示装置11で表示される画像は立体画像R1となるので、表示された画像R1で容易にクラゲK1,K2を検出することができる。又、上下に駆動させることにより、次回に観測されたK1,K2の位置との比較により、クラゲの移動速度を得ることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0015】
なお、上記実施例において、図2及び図4の超音波振動子2は8個で示したが多数の超音波振動子を使用することができ、又、このクラゲ検出装置は船の側部に海面にほぼ水平方向に装着することにより、海中のクラゲを検出することができ、さらに、警報処理や除塵機・エアーカーテン装置への信号発振による自動化も行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例のクラゲ検出装置のブロック図である。
【図2】図1のクラゲ検出装置の表示装置で表示した平面図である。
【図3】本発明の他の実施例のクラゲ検出装置のブロック図である。
【図4】図3のクラゲ検出装置の表示装置で表示した立体図図である。
【符号の説明】
【0017】
1 超音波プローブ
2 超音波振動子
3 切替回路
4 発振回路
5 受信回路
6 遅延回路
7 比較回路
8 閾値信号出力回路
9 記憶回路
10 画像合成回路
11 表示装置
12 駆動装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円弧状に形成した複数の超音波振動子からなる超音波プローブと、前記複数の超音波振動子に接続された切替回路と、該切替回路に接続された前記超音波プローブの前記超音波振動子にそれぞれ発振出力を印可する発振回路と、該発振回路からの出力で超音波振動子から水中に照射され、水中からの反射波が順次入力され、該反射波を順次増幅して出力する受信回路と、該受信回路からの出力を順次遅延する遅延回路と、該遅延回路からの出力を順次記憶する記憶回路と、該記憶回路から読み出された反射波信号を閾値信号出力回路から出力される予め決められた閾値信号と比較する比較回路と、該比較回路からの出力信号を画像信号に変換する画像信号変換回路と、画像信号変換回路からの画像信号を2次元的に表示する表示装置とからなり、前記比較回路は閾値信号出力回路からの閾値より低い信号を検出することにより、クラゲのような反射波の弱い生物からの信号を表示することを特徴とするクラゲ検出装置。
【請求項2】
前記超音波プローブを駆動装置によって上下に駆動し、前記超音波振動子から照射される超音波を上下に照射し、反射波信号により3次元画像を表示することを特徴とする請求項1記載のクラゲ検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−244002(P2009−244002A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−89211(P2008−89211)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000243364)本多電子株式会社 (255)
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)
【Fターム(参考)】