説明

クランプ

【課題】 異なる板厚の車体パネルに形成される長孔状の取付孔に対し、クランプをガタつかせたり回転させたりすることなく安定した取付状態にできる構成とする。
【解決手段】 異なる板厚の車体パネル40に形成される長孔状の取付孔41に取付け対応可能な挿入部位20、及びワイヤーハーネス類を保持する保持部位30、を有する合成樹脂製のクランプ10であって、挿入部位20は、柱形状の挿入部21と、挿入部21の根元側に配設され一側面42に当接して挿入方向とは逆方向に弾発力を作用させるスタビライザ23と、スタビライザ23よりも挿入方向先端側で挿入部21の長尺方向両側面部位21aに配設され長尺方向内側面41aに当接して弾性的に係合するとともに他側面43に座を係合させる位置決め手段24と、挿入部21と短尺方向内側面41bとの間に形成される隙間寸法を補填する肉付形状25と、を有して構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランプに関する。詳しくは、車体パネルに沿って配設されたワイヤーハーネスやパイプ等のものを車体パネルの所定の箇所で保持するためのクランプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のクランプは、車体パネルに沿って配設されたワイヤーハーネスやパイプ等のもの(以下、ワイヤーハーネス類とする)を車体パネルの所定の箇所で保持するために使用されている。ここで、クランプの構成について代表的なものを説明すると、クランプは、ワイヤーハーネス類を結束するなどして保持する保持部位と、車体パネルの所定の箇所に形成された長孔状の取付孔に対して挿入嵌合される構造の挿入部位と、を有して構成されている。ここで、取付孔が長孔状に形成されているものは、取付けられたクランプがその自重や車両の振動等の作用によって回転しないように抑止することができ、取付状態に方向性を持たせることができる。
詳しくは、前者の保持部位は、これにワイヤーハーネス類をテープやベルト等の巻着手段により結束して把持状態とすることにより、ワイヤーハーネス類をクランプに保持した状態にすることができる。
後者の挿入部位は、根元側に皿形状のスタビライザを有した基部と、基部から突出した柱形状の挿入部と、を有して構成されている。より詳しくは、例えば柱形状の挿入部は長孔状の取付孔に対応した断面形状を有して形成されており、その長尺方向両側面部位(スタビライザよりも挿入方向先端側)には幅長方向(長孔状の長尺方向)に弾性的に拡開或いは収縮変形可能とされる翼形状の係止片が配設されている。したがって、車体パネルの取付孔に挿入部位を先端側から挿入すると、挿入部位の係止片が取付孔の大きさ形状によって弾性的に収縮変形して窄められながら挿入される。そしてその後に、係止片が取付孔を通過する位置まで到達すると、車体パネルの表側面がスタビライザによって弾性的に受止められるとともに、取付孔を抜けた係止片が弾性的に拡開されて取付孔まわりの車体パネルに係合する。詳しくは、スタビライザが車体パネルの表側面に当接すると挿入方向とは逆方向に弾発力を作用させる。その一方で、拡開された係止片に形成された座が車体パネルの裏側面(長孔状の長尺方向の両側位置)に係合する。これにより、車体パネルが係止片の座とスタビライザとによって弾性的に挟み込まれた係合状態となり、すなわち挿入部位が車体パネルに取付けられた状態となる。
ところで、上記した長孔状の取付孔は、その形成される車体パネルの板厚によって厚みが異なることがある。したがって、この問題に対応するために、車体パネルの裏側面に係合する係止片の座を挿入方向に多段階(多数)に配置して対応させたものもある。すなわち、異なる板厚の車体パネルに形成される取付孔にクランプの挿入部位を挿入すると、その板厚に対応した位置にある座が車体パネルの裏側面(長孔状の長尺方向の両側位置)に係合するようになっている。
なお、この種の関連技術は、例えば後記特許文献1に開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開平10−26106号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の技術では、長孔状の取付孔が異なる板厚の車体パネルに形成されている場合であっても、その板厚に対応させてクランプを取付けることはできた。すなわち、クランプの係止片に形成された多段階(多数)の座のうち車体パネルの板厚に対応した座を車体パネルの裏側面(長孔状の長尺方向の両側位置)に係合させることによって、クランプを取付状態にすることはできた。また、係止片が弾性的に拡開されて取付孔の長尺方向内側面に係合されるため、クランプの挿入部と取付孔の長尺方向内側面との間に形成される隙間(設計時の両者の嵌め合い寸法によって形成される隙間)を補填することはできた。
しかしながら、このとき、クランプの挿入部と取付孔の短尺方向内側面との間にも同様にして隙間が形成される。したがって、クランプは、車体パネルに取付けられた状態ではあるものの、この隙間寸法の間でガタついたり回転したりし得る状態となるため、ワイヤーハーネス類の保持状態を安定させることができなかった。
【0005】
本発明は、上記した問題を解決するものとして創案されたものであって、本発明が解決しようとする課題は、異なる板厚の車体パネルに形成される長孔状の取付孔に対し、クランプをガタつかせたり回転させたりすることなく安定した取付状態にできる構成とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のクランプは次の手段をとる。
先ず、本発明の第1の発明は、異なる板厚の車体パネルに形成される長孔状の取付孔に対して取付け対応可能な構造を有した挿入部位、及び挿入部位の挿入方向後端側に一体的に配設され車体パネルに沿って配設されるワイヤーハーネス類を把持した把持部材を直接的または間接的に保持する保持部位、を有する合成樹脂製のクランプであって、挿入部位は、長孔状の取付孔に対応した大きさ形状に形成された柱形状の挿入部と、柱形状の挿入部の根元側に配設され挿入部が先端側から長孔状の取付孔に挿入されたときに取付孔まわりの車体パネルの一側面に当接して挿入方向とは逆方向に弾発力を作用させるスタビライザと、スタビライザよりも挿入方向先端側で挿入部の長尺方向両側面部位に配設され挿入部が長孔状の取付孔の車体パネルの板厚に対応した所定の挿入位置まで挿入されると取付孔の長尺方向内側面に当接して弾性的に係合するとともに取付孔まわりの車体パネルの他側面に座を係合させてスタビライザの弾発力に抗した係合力を作用させる位置決め手段と、を有し、更に、挿入部が長孔状の取付孔における所定の挿入位置まで挿入されたときに挿入部と取付孔の短尺方向内側面との間に形成される隙間寸法を補填する補填手段を有して構成されているものである。
この第1の発明によれば、異なる板厚の車体パネルに形成される長孔状の取付孔に対して挿入部位を挿入すると、スタビライザが取付孔まわりの車体パネルの一側面に当接して挿入方向とは逆方向に弾発力を作用させる。また、挿入部位が車体パネルの板厚に対応した所定の挿入位置まで挿入されると、位置決め手段が取付孔の長尺方向内側面に当接して弾性的に係合するとともに、取付孔まわりの車体パネルの他側面に座を係合させてスタビライザの弾発力に抗した係合力を作用させる。これにより、挿入部と取付孔の長尺方向内側面との間に形成される隙間寸法(両者の嵌め合いによって形成される隙間寸法)は、位置決め手段の弾発力によって補填される。また、スタビライザと位置決め手段とによって車体パネルを一側面と他側面との両側から弾性的に挟み込んだ状態とするため、挿入部位は、車体パネルに取付けられた状態となる。
更に、この所定の挿入位置において、挿入部と取付孔の短尺方向内側面との間に形成される隙間寸法は、補填手段によって補填される。
【0007】
次に、本発明の第2の発明は、上述した第1の発明において、補填手段は挿入部の短尺方向両側面部位が肉付けされた肉付け形状であるものである。
この第2の発明によれば、挿入部を車体パネルの板厚に対応した所定の挿入位置まで挿入すると、挿入部の短尺方向両側面部位に形成された肉付形状によって、挿入部と長孔状の取付孔の短尺方向内側面との間の隙間寸法が補填される。
【0008】
次に、本発明の第3の発明は、上述した第2の発明において、挿入部の肉付形状は、挿入部の挿入方向とは逆方向に行くに従って厚肉となる傾斜面状に形成されているものである。
ここで、挿入部の挿入方向とは逆方向に行くに従って厚肉となる傾斜面状としては、テーパ状に厚肉となる形状や曲面状に厚肉となる形状などが挙げられる。
この第3の発明によれば、挿入部が傾斜面状に厚肉となる肉付形状とされているため、挿入部位を長孔状の取付孔に挿入する際に、この肉付形状が支障となることなくスムーズに挿入される。そして、挿入部と取付孔の短尺方向内側面との間の隙間寸法がこの肉付形状によって補填される。
【発明の効果】
【0009】
本発明は上述した手段をとることにより、次の効果を得ることができる。
先ず、本発明の第1の発明によれば、板厚の異なる車体パネルに形成された長孔状の取付孔に対し、クランプをガタつかせたり回転させたりすることなく安定した取付状態にすることができる。すなわち、所定の挿入位置まで挿入されたクランプは、位置決め手段及び補填手段によって、取付孔の長尺方向内側面及び短尺方向内側面との間に形成される隙間寸法がそれぞれ補填された取付状態にすることができる。したがって、ワイヤーハーネス類の保持状態を安定させることができる。
更に、本発明の第2の発明によれば、挿入部に肉付形状を形成するという簡単な構成によって、クランプの取付状態を安定化させることができる。
更に、本発明の第3の発明によれば、挿入部に肉付形状を形成するという簡単な構成であって、長孔状の取付孔に対してクランプをスムーズに挿入嵌合させて取付状態にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明を実施するための最良の形態の実施例について、図面を用いて説明する。
始めに、本実施例のクランプ10の構成について図1〜図6を用いて説明する。図1はクランプ10の外観を示す斜視図、図2はクランプ10を正面視した断面形状を示す図、図3は厚板状の車体パネル40aに形成された取付孔41にクランプ10を取付けた状態を正面視した断面図、図4は厚板状の車体パネル40aに形成された取付孔41にクランプ10を取付けた状態を側面視した断面図、図5は薄板状の車体パネル40bに形成された取付孔41にクランプ10を取付けた状態を正面視した断面図、図6は薄板状の車体パネル40bに形成された取付孔41にクランプ10を取付けた状態を側面視した断面図である。
【0011】
本実施例のクランプ10は、図1に良く示されるように、車体パネル40に沿って配設されるワイヤーハーネスやパイプ等(図示しない)のもの(以下、ワイヤーハーネス類とする)を車体パネル40の所定の箇所で保持するために使用される。詳しくは、車体パネル40の所定の箇所には、クランプ10を取付けるための長孔状の取付孔41が形成されている。ここで、取付孔41が長孔状に形成されていることにより、取付けられたクランプ10がその自重や車両の振動等の作用によって回転しないように抑止することができ、取付状態に方向性を持たせることができる。また、車体パネル40は、配設される車体構造に合わせて、その使用強度等に適した板厚に設定されている。したがって、上記した長孔状の取付孔41は、その形成される車体パネル40の板厚により厚みが異なることがある。
【0012】
次に、クランプ10の具体的な構成について説明する。本実施例のクランプ10は、全体が合成樹脂製とされており、図1に良く示されるように、異なる板厚の車体パネル40に形成される長孔状の取付孔41に対して取付け対応可能な構造を有した挿入部位20と、この挿入部位20の挿入方向後端側に一体的に配設されワイヤーハーネス類を結束するなどして保持する保持部位30と、を有して構成されている。
詳しくは、保持部位30は、ワイヤーハーネス類をテープやベルト等の巻着手段により直接的または間接的に結束して把持状態とすることができるものであり、これにより、ワイヤーハーネス類をクランプ10に保持した状態にすることができる。
【0013】
また、挿入部位20は、図1及び図2に良く示されるように、取付孔41よりも大きな外径に形成された皿形状のスタビライザ23を有した基部22と、基部22の中央部位から突出した柱形状の挿入部21と、を有して構成されている。
すなわち、スタビライザ23は、柱形状の挿入部21の根元側に配設されており、図3及び図5に良く示されるように、挿入部21を先端側から取付孔41内に挿入する挿入力を作用させると、その皿形状の周縁部位23aが車体パネル40の表側面42(厚板状の車体パネル40aの表側面42a、或いは薄板状の車体パネル40bの表側面42b)に当接し、挿入方向とは逆方向に弾発力を作用させてこの挿入力を弾性的に受止める。
また、柱形状の挿入部21は、長孔状の取付孔41に対応した大きさ形状(断面形状)に形成されている。詳しくは、挿入部21の長尺方向及び短尺方向の寸法は、長孔状の取付孔41に対する嵌め合いにそれぞれ一定の隙間が形成されるすきまばめとなるように設定されている。
更に、図2に良く示されるように、スタビライザ23よりも挿入方向先端側における挿入部21の長尺方向両側面部位21aには、挿入部21の長尺方向に弾性的に拡開或いは収縮変形可能な翼形状の係止片24が配設されている。また、図1、図4、及び図6に良く示されるように、挿入部21の短尺方向両側面部位21bには、挿入部21の挿入方向とは逆方向に行くに従って次第に厚肉となるテーパ状の肉付形状25が形成されている。ここで、係止片24が本発明の位置決め手段に相当し、肉付形状25が本発明の補填手段に相当する。また、車体パネル40の表側面42が本発明の一側面に相当し、裏側面43が本発明の他側面に相当する。
【0014】
したがって、挿入部位20を車体パネル40の取付孔41に挿入すると、係止片24が取付孔41の径によって弾性的に収縮変形して窄められながら挿入される。そして、図3及び図5に良く示されるように、後述する係止片24の第1の座24a、或いは第2の座24bが取付孔41を通過して、車体パネル40の表側面42(厚板状の車体パネル40aの表側面42a、或いは薄板状の車体パネル40bの表側面40b)がスタビライザ23によって弾性的に受止められる位置まで到達すると、係止片24が弾性的に拡開されて取付孔41まわりの車体パネル40に係合する。詳しくは、車体パネル40が厚板状に形成されている(厚板状の車体パネル40a)場合には、図3に良く示されるように、係止片24の挿入方向上流側に配置された第1の座24aがスタビライザ23の弾発力によって車体パネルの40aの裏側面43aに係合する。また、車体パネル40が薄板状に形成されている(薄板状の車体パネル40b)場合には、図5に良く示されるように、挿入方向下流側に配置された第2の座24bが車体パネル40bの裏側面43bに係合する。
すなわち、車体パネル40がスタビライザ23と係止片24の第1の座24a、或いは第2の座24bとによって表側面42と裏側面43との両側から弾性的に挟み込まれた状態となり、挿入部位20が車体パネル40に取付けられた状態となる。
【0015】
また、係止片24が弾性的に拡開されることにより、挿入部21と取付孔41の長尺方向内側面41aとの間の隙間寸法(両者の嵌め合いによって形成される隙間寸法)は補填される。すなわち、車体パネル40が厚板状に形成されている(厚板状の車体パネル40a)場合には、図3に良く示されるように、係止片24の第1の座24aから立ち上がる面(挿入方向とは逆方向に立ち上がる面)が取付孔41の長尺方向内側面41aに係合する。また、車体パネル40が薄板状に形成されている(薄板状の車体パネル40b)場合には、図5に良く示されるように、第2の座24bから立ち上がる面(挿入方向とは逆方向に立ち上がる面)が取付孔41の長尺方向内側面41aに係合する。これにより、挿入部位20が取付孔41の長尺方向に移動することが抑止される。
【0016】
更に、車体パネル40の板厚に対応した挿入位置(係止片24の第1の座24a、或いは第2の座24bが車体パネル40の裏側面43に係合する位置)において、挿入部21と取付孔41の短尺方向内側面41bとの間に形成される隙間寸法は、挿入部21の短尺方向両側面部位21bに形成されたテーパ状の肉付形状25によって補填される。すなわち、車体パネル40が厚板状に形成されている(厚板状の車体パネル40a)場合には、図4に良く示されるように、係止片24の第1の座24a(図3参照)が車体パネル40aの裏側面43aに係止する位置で、肉付形状25が挿入部21と取付孔41の短尺方向内側面41bとの間に形成される隙間寸法を補填する。また、車体パネル40が薄板状に形成されている(薄板状の車体パネル40b)場合には、図6に良く示されるように、係止片24の第2の座24b(図5参照)が車体パネル40bの裏側面43bに係合する位置で、肉付形状25が挿入部21と取付孔41の短尺方向内側面41bとの間に形成される隙間寸法を補填する。すなわち、挿入部位20が取付孔41の短尺方向に移動することが抑止される。
すなわち、車体パネル40の板厚に対応した挿入位置まで挿入された挿入部21は、係止片24及び肉付形状25によって、取付孔41の長尺方向内側面41a及び短尺方向内側面41bとの間に形成される隙間寸法がそれぞれ補填された状態となる。したがって、クランプ10が車体パネル40の取付孔41に取付けられた状態では、長尺方向及び短尺方向の移動が抑止されるとともに、回転方向の移動も抑止される。
【0017】
続いて、本実施例のクランプ10の使用方法について、図3〜図6を参照して説明する。
先ず、図3に良く示されるように、車体パネル40が厚板状に形成されている(厚板状の車体パネル40a)場合には、取付孔41に挿入部位20を挿入すると、挿入部21の長尺方向両側面部位21aに配設された係止片24が、取付孔41の径によって弾性的に収縮変形して窄められながら挿入され、その後に拡開される。これにより、係止片24の第1の座24aから立ち上がる面が取付孔41の長尺方向内側面41aに当接し弾性的に係合した状態となる。また、車体パネル40aの表側面42aがスタビライザ23によって弾性的に受止められるとともに、係止片24の第1の座24aがスタビライザ23の弾発力によって取付孔41まわりの車体パネル40aの裏側面43aに掛着(係合)する。したがって、クランプ10は、挿入部位20のスタビライザ23と係止片24の第1の座24aとによって、車体パネル40aを弾性的に挟み込んだ取付状態となる。また、クランプ10は、係止片24の弾発力によって挿入部位20の長尺方向への移動が抑止された状態(図3参照)とされるとともに、テーパ状の肉付形状25によって挿入部位20の短尺方向への移動も抑止された状態(図4参照)となる。更に、これにより、挿入部位20は回転方向への移動も抑止された状態となる。
次に、図5に良く示されるように、車体パネル40が薄板状に形成されている(薄板状の車体パネル40b)場合には、取付孔41に挿入部位20を挿入すると、挿入部21の係止片24が取付孔41の径によって弾性的に収縮変形して窄められながら挿入され、その後に拡開される。これにより、係止片24の第1の座24aから立ち上がる面が取付孔41の長尺方向内側面41aに係合した状態となるが、この状態においては、車体パネル40bの表側面42bがスタビライザ23によって受止められる位置に到達していないため、挿入部位20を更に挿入する。これにより、図5に良く示されるように、車体パネル40bの表側面42bがスタビライザ23によって受止められ、係止片24の第2の座24bから立ち上がる面が取付孔41の長尺方向内側面41aに当接して弾性的に係合する。また、係止片24の第2の座24bがスタビライザ23の弾発力によって取付孔41まわりの車体パネル40bの裏側面43bに掛着(係合)する。したがって、クランプ10は、挿入部位20のスタビライザ23と係止片24の第2の座24bとによって、車体パネル40bを弾性的に挟み込んだ取付状態となる。また、クランプ10は、係止片24の弾発力によって挿入部位20の長尺方向への移動が抑止された状態(図5参照)とされるとともに、テーパ状の肉付形状25によって挿入部位20の短尺方向への移動も抑止された状態(図6参照)となる。更に、これにより、挿入部位20は回転方向への移動も抑止された状態となる。
【0018】
このように、本実施例のクランプ10は、板厚の異なる車体パネル40に形成された長孔状の取付孔41に対し、クランプ10をガタつかせたり回転させたりすることなく安定した取付状態にすることができる。すなわち、車体パネル40の板厚に対応した挿入位置まで挿入されたクランプ10は、本発明の位置決め手段に相当する係止片24及び本発明の補填手段に相当する肉付形状25によって、取付孔41の長尺方向内側面41a及び短尺方向内側面41bとの間に形成される隙間寸法がそれぞれ補填された取付状態とされる。したがって、挿入部21に肉付形状25を形成するという簡単な構成によって、ワイヤーハーネス類の保持状態を安定させることができる。また、肉付形状25が傾斜面状(テーパ状)に形成されているため、長孔状の取付孔41に対してクランプ10をスムーズに挿入嵌合させて取付状態にすることができる。
【0019】
以上、本発明の実施形態を1つの実施例について説明したが、本発明は上記実施例のほか各種の形態で実施できるものである。
先ず、本実施例においては、クランプ10の挿入部21と取付孔41の短尺方向内側面41bとの間に形成される隙間寸法を補填するものとして、挿入部21の短尺方向両側面部位21bの形状を肉付形状25としたものを示したが、これに代替して、長尺方向両側面部位21aに配設された係止片24のように幅長方向に弾性的に拡開或いは収縮変形可能な係止片を短尺方向両側面部位にも配設したものであってもよい。しかしながら、この場合には、クランプ全体の構成が煩雑化するとともに、挿入部位を取付孔に挿入するための挿入力が余計に必要となることに留意する必要がある。なお、この場合には、短尺方向両側面部位に配設される係止片には車体パネルの裏側面に係合する座が設けられていない構成としても構わない。すなわち、長尺方向両側面部位に配設された係止片とスタビライザとによって車体パネルを挟み込んだ取付状態とすることができるからである。
また、挿入部21に形成される傾斜面状の肉付形状25として、挿入部21の挿入方向とは逆方向に行くに従ってテーパ状に厚肉となるものを示したが、挿入部の挿入方向とは逆方向に行くに従って曲面状に厚肉となるものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施例のクランプの外観を示す斜視図である。
【図2】クランプを正面視した断面形状を示す図である。
【図3】厚板状の車体パネルに形成された取付孔にクランプを取付けた状態を正面視した断面図である。
【図4】厚板状の車体パネルに形成された取付孔にクランプを取付けた状態を側面視した断面図である。
【図5】薄板状の車体パネルに形成された取付孔にクランプを取付けた状態を正面視した断面図である。
【図6】薄板状の車体パネルに形成された取付孔にクランプを取付けた状態を側面視した断面図である。
【符号の説明】
【0021】
10 クランプ
20 挿入部位
21 挿入部
21a 長尺方向側面部位
21b 短尺方向側面部位
22 基部
23 スタビライザ
23a 周縁部位
24 係止片(位置決め手段)
24a 第1の座
24b 第2の座
25 肉付形状(補填手段)
30 保持部位
40 車体パネル
40a 厚板状の車体パネル
40b 薄板状の車体パネル
41 取付孔
41a 長尺方向内側面
41b 短尺方向内側面
42,42a,42b 表側面(一側面)
43,43a,43b 裏側面(他側面)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる板厚の車体パネルに形成される長孔状の取付孔に対して取付け対応可能な構造を有した挿入部位、及び該挿入部位の挿入方向後端側に一体的に配設され該車体パネルに沿って配設されるワイヤーハーネス類を把持した把持部材を直接的または間接的に保持する保持部位、を有する合成樹脂製のクランプであって、
前記挿入部位は、前記長孔状の取付孔に対応した大きさ形状に形成された柱形状の挿入部と、該柱形状の挿入部の根元側に配設され該挿入部が先端側から前記長孔状の取付孔に挿入されたときに該取付孔まわりの車体パネルの一側面に当接して前記挿入方向とは逆方向に弾発力を作用させるスタビライザと、該スタビライザよりも挿入方向先端側で前記挿入部の長尺方向両側面部位に配設され該挿入部が前記長孔状の取付孔の前記車体パネルの板厚に対応した所定の挿入位置まで挿入されると該取付孔の長尺方向内側面に当接して弾性的に係合するとともに該取付孔まわりの車体パネルの他側面に座を係合させて前記スタビライザの弾発力に抗した係合力を作用させる位置決め手段と、を有し、
更に、前記挿入部が前記長孔状の取付孔における所定の挿入位置まで挿入されたときに該挿入部と該取付孔の短尺方向内側面との間に形成される隙間寸法を補填する補填手段を有して構成されていることを特徴とするクランプ。
【請求項2】
請求項1に記載のクランプであって、
前記補填手段は前記挿入部の短尺方向両側面部位が肉付けされた肉付け形状であることを特徴とするクランプ。
【請求項3】
請求項2に記載のクランプであって、
前記挿入部の肉付形状は、該挿入部の挿入方向とは逆方向に行くに従って厚肉となる傾斜面状に形成されていることを特徴とするクランプ。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−153049(P2006−153049A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−340680(P2004−340680)
【出願日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(000208293)大和化成工業株式会社 (174)
【Fターム(参考)】