説明

クリーナーホース

【課題】高重合度の軟質塩化ビニル樹脂からなるホース壁の内周面に対して、低重合度の硬質若しくは半硬質塩化ビニル樹脂からなる補強線の被覆材を強固に安定して取り付けることができるクリーナーホースを提供する。
【解決手段】このクリーナーホースHでは、ホース壁20の内周面の凹溝27・・に、ホース壁20の軟質塩化ビニル樹脂よりも平均重合度が低い塩化ビニル樹脂からなる接着層30・・を熱融着によって一体的に設けて、この接着層30・・に接着剤42を介して補強線21・・の被覆材41・・を接着している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、主として電機掃除機に設けられるクリーナーホースに関する。
【背景技術】
【0002】
電気掃除機用のクリーナーホースとして、図7に示すように、可撓性を有するホース壁1の内周面に沿って螺旋状の凹溝2・・を形成し、これら凹溝2・・内に導電線を兼ねた補強線3・・を収容して、ホース壁1に対して補強線3・・の被覆材を接着剤によって接着してこれらを一体化することで、適度な保形性と可撓性を与えた構造のものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2001−25451号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような構造のクリーナーホースには、可撓性が要求されるホース壁1を高重合度の軟質塩化ビニル樹脂によって形成し、耐久性や加工性が要求される補強線3・・の被覆材を低重合度の半硬質塩化ビニル樹脂によって形成したものが見受けられるが、これらを接着剤によって接着した場合、十分な接着力を得ることができず、ホース壁1から補強線3・・が剥離し易くなるといった不具合があった。
【0005】
この理由としては、ホース壁の軟質塩化ビニル樹脂が高重合度となっていて、ホース壁に対して接着剤の接着効果を良好に発揮させることができず、このため両者を接着剤によって直接接着した場合、接着力が弱くなるものと考えられる。
【0006】
この発明は、上記不具合を解消するためになされたものであって、高重合度の軟質塩化ビニル樹脂からなるホース壁に対して、低重合度の硬質若しくは半硬質塩化ビニル樹脂からなる補強線の被覆材を強固に安定して取り付けることができるクリーナーホースの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、この発明のクリーナーホースHは、高重合度の軟質塩化ビニル樹脂からなるホース壁20の内周面に沿って、低重合度の硬質若しくは半硬質塩化ビニル樹脂からなる被覆材41によって芯材40を被覆してなる補強線21・・を取り付けたものであって、前記ホース壁20の内周面の補強線取付部位27・・に、前記ホース壁20の軟質塩化ビニル樹脂よりも平均重合度が低い塩化ビニル樹脂からなる接着層30・・を熱融着によって一体的に設けて、この接着層30・・に接着剤42を介して前記補強線21・・の被覆材41・・を接着したことを特徴とする。
【0008】
また、前記接着層30・・の塩化ビニル樹脂の平均重合度を、前記被覆材41・・の硬質若しくは半硬質塩化ビニル樹脂の平均重合度よりも高くしている。具体的には、前記ホース壁20の軟質塩化ビニル樹脂の平均重合度を2000〜4000、前記被覆材41・・の硬質若しくは半硬質塩化ビニル樹脂の平均重合度を800〜1700、前記接着層30・・の塩化ビニル樹脂の平均重合度を1000〜2500の範囲にそれぞれ設定している。
【0009】
さらに、前記ホース壁20の内周面の補強線取付部位27・・に、前記接着層30・・を共押出しにより形成している。さらにまた、前記ホース壁20の内周面に沿って凹溝27・・を螺旋状に形成して、この凹溝27・・の底部付近に前記接着層30・・を設けて、この接着層30・・に接着剤42を介して前記補強線21・・の被覆材41・・を接着することで、前記補強線21・・を前記凹溝27・・内に収容した状態で取り付けている。
【発明の効果】
【0010】
この発明のクリーナーホースにおいては、高重合度の軟質塩化ビニル樹脂からなるホース壁の内周面に、ホース壁の軟質塩化ビニル樹脂よりも平均重合度が低い塩化ビニル樹脂からなる接着層を一体的に設けて、この接着層に対して補強線における低重合度の硬質若しくは半硬質塩化ビニル樹脂からなる被覆材を接着剤によって接着しているので、ホース壁に対して補強線の被覆材を接着剤によって直接接着した従来のものと比べて、接着力を高めることができる。これにより、ホース壁に対して補強線を強固に安定して取り付けることができる。
【0011】
また、ホース壁における凹溝の底部付近に接着層を設けて、この接着層に補強線の被覆材を接着することで、凹溝に対して補強線を強固に安定して取り付けながらも、凹溝と補強線との間に隙間を確保することができる。このため、ホース壁の伸びが補強線によって制限され難くなり、曲げ易くて柔軟性に富んだクリーナーホースとすることができる。しかも、凹溝内に補強線を収容することで、クリーナーホースの内周面を略平滑して風損の少ない構造とすることができ、これによって補強線にかかる負荷を少なくして、ホース壁に対する補強線の取付強度を長期に亘って良好に維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、この発明の実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。この発明の一実施形態に係るクリーナーホースHは、図2に示すように、電気掃除機10において、吸引ノズル11を備えた操作筒12と掃除機本体13との間に連結接続されている。
【0013】
このクリーナーホースHは、図3及び図4に示すように、可撓性を有するホース壁20と、このホース壁20の内周面に沿って螺旋状に巻回された複数の補強線21・・とを備え、これら補強線21・・によってホース壁20の保形性が良好に維持されている。
【0014】
このホース壁20には、ホース軸方向に所定の間隔を保ちながら、例えば3本の螺旋状の凸部25・・がホース径外方向へ膨出して形成され、これら凸部25・・間が平坦部26・・とされている。そして、各凸部25のホース内周面側が、断面略U字状の凹溝27となっていて、補強線21を取り付ける補強線取付部位とされている。なお、凹溝27・・は、3本に限らず、凸部25・・の本数を増減させることで、1本又は2本或いは4本以上としても良い。また、凹溝27・・の形状は、断面略U字状に限らず、例えば断面略コ字形や断面略V字形としても良い。
【0015】
このホース壁20の各凹溝27内には、図1に示すように、補強線21を接着するための接着層30が、凹溝27の底部付近において凹溝27に沿って螺旋状に連続して形成されている。なお、各接着層30は、凹溝27に沿って螺旋状に連続するだけに限らず、例えば凹溝27に沿ってその螺旋方向に適宜間隔をあけて形成しても良い。
【0016】
そして、凹溝27・・内には、補強線21・・がそれぞれ収容されている。なお、補強線21・・は、3本に限らず、凹溝27・・の本数に合わせて、1本又は2本或いは4本以上としても良い。
【0017】
各補強線21は、例えば鋼線やピアノ線、これらの線に防錆メッキを施した硬質の線材等からなる硬鋼線製の芯材40を被覆材41によって被覆してなるもので、例えば断面略円形に形成されている。そして、各補強線21の被覆材41を、凹溝27内の接着層30に接着剤42によって接着することで、各補強線21が凹溝27に強固に安定して取り付けられている。このようにしてホース壁20の凹溝27・・に取り付けられた補強線21・・は、操作筒12側と掃除機本体13側とを電気的に接続する導電線としても使用されている。
【0018】
以下、ホース壁20の各凹溝27に対して、補強線21が強固に安定して取り付けられている理由について説明する。すなわち、ホース壁20は、可撓性を考慮して、高重合度の軟質塩化ビニル樹脂(PVC)を用いて形成されている。この軟質塩化ビニル樹脂の平均重合度は、例えば2000〜4000の範囲(具体的には、2500程度)に設定されている。各補強線21の被覆材41は、耐久性や加工性を考慮して、低重合度の半硬質塩化ビニル樹脂(PVC)を用いて形成されている。この半硬質塩化ビニル樹脂の平均重合度は、例えば800〜1700の範囲(具体的には、1000程度)に設定されている。そして、各接着層30は、ホース壁20の軟質塩化ビニル樹脂よりも平均重合度が低く、且つ、各補強線21の被覆材41の半硬質塩化ビニル樹脂よりも平均重合度が高い塩化ビニル樹脂(PVC)を用いて形成されている。この塩化ビニル樹脂の平均重合度は、例えば1000〜2500の範囲(具体的には、1300程度)に設定されている。なお、ホース壁20、各被覆材41及び各接着層30の塩化ビニル樹脂には、可塑剤等の各種添加剤が混入されている。
【0019】
そして、ホース壁20の各凹溝27に、接着層30を熱融着によって一体的に設けている。具体的には、ホース壁20の成形時において、共押出しによってホース壁20の成形と同時に各凹溝27内に接着層30を一体的に形成している。このように、各凹溝27に対して接着層30を一体成形しているので、これらの間での接着力は高くて安定している。
【0020】
一方、各接着層30と補強線21の被覆材41とは、例えばウレタン系の接着剤42を介して接着しているが、各接着層30の塩化ビニル樹脂の平均重合度は、ホース壁20の軟質塩化ビニル樹脂の平均重合度よりも低くなっているので、ホース壁20に対して補強線21の被覆材41を接着剤42によって直接接着する従来のものに比べて、接着剤42の接着効果を良好に発揮させて、各接着層30と補強線21の被覆材41との接着力を高めることができる。これにより、ホース壁20の各凹溝27に対して補強線21を強固に安定して取り付けることができるようになっている。
【0021】
また、この取付状態において、各補強線21は凹溝27の底部付近に設けた接着層30にのみ接着されているので、補強線21と凹溝27との間には微小隙間43が確保されている。従って、ホース壁20の伸びが補強線21・・によって制限され難くなり、曲がりの良いクリーナーホースHとすることができる。
【0022】
次に、上記クリーナーホースHの製造方法について説明すると、まず、図5に示すように、3本の補強線21・・を一組Sとして、所定の間隔Wを保たせ、先行巻回線と後続巻回線との間隔も同様に所定の間隔Wを保たせた状態で螺旋状に巻回する。
【0023】
続いて、共押出機を使用して、凹溝27・・の底部に接着層30・・を一体的に形成したホース壁成形用の帯状材50を押し出す。この帯状材50は、補強線21・・の略3ピッチ分に相当する横幅を有している。そして、この帯状材50の接着層30・・に接着剤42を塗布した状態で、帯状材50を補強線21・・上において螺旋状に巻回し、さらに先行する帯状材50と後続する帯状材50の側縁部51、51同士を補強線21を覆う部分で重合接着又は重合融着することで、ホース壁20の凹溝27・・内に補強線21・・を収容したクリーナーホースHが製造される。このようにして製造されたクリーナーホースHは、内周面が略平滑になっていて、風損の少ない構造となっている。
【0024】
クリーナーホースHの使用に際しては、図6に示すように、クリーナーホースHの両端に接続筒体60、61を接続して、その一端側の接続筒体60を掃除機本体13側に差し込み連結し、同時に電気コネクター60aを差し込み接続し、他端側の接続筒体61を操作筒12側に差し込み連結し、同時に電気コネクター61aを差し込み接続させる。
【0025】
このようにして、掃除機本体13と操作筒12とをクリーナーホースHを介して連結することで、掃除機本体13と吸引ノズル11との間に一連の空気経路を形成している。また、導電線として機能する補強線21・・によって、掃除機本体13のON−OFF用電源回路と、掃除機本体13の電源と吸引ノズル11に装備してあるモータとの間の通電路とを形成している。
【0026】
なお、この発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で、上記実施形態に多くの修正変更を加え得ることは勿論である。例えば、上記実施形態においては、ホース壁の軟質塩化ビニル樹脂よりも平均重合度が低く、且つ、各補強線の被覆材の半硬質塩化ビニル樹脂よりも平均重合度が高い塩化ビニル樹脂を用いて各接着層を形成していたが、各接着層の塩化ビニル樹脂の平均重合度は、少なくともホース壁の軟質塩化ビニル樹脂の平均重合度よりも低くなっていれば良く、各補強線の被覆材の半硬質塩化ビニル樹脂の平均重合度と同等若しくはこれよりも低くても良い。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】この発明の一実施形態に係るクリーナーホースの要部拡大断面図である。
【図2】電気掃除機を示す側面図である。
【図3】クリーナーホースの一部破断側面図である。
【図4】同じくそのホース壁部分の拡大断面図である。
【図5】同じくその製造過程を模式的に示す図である。
【図6】同じくその接続筒体を接続した状態を示す側面図である。
【図7】従来のクリーナーホースの一部破断側面図である。
【符号の説明】
【0028】
H・・クリーナーホース、20・・ホース壁、21・・補強線、27・・凹溝(補強線取付部位)、30・・接着層、40・・芯材、41・・被覆材、42・・接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高重合度の軟質塩化ビニル樹脂からなるホース壁(20)の内周面に沿って、低重合度の硬質若しくは半硬質塩化ビニル樹脂からなる被覆材(41)によって芯材(40)を被覆してなる補強線(21)・・を取り付けたクリーナーホース(H)であって、前記ホース壁(20)の内周面の補強線取付部位(27)・・に、前記ホース壁(20)の軟質塩化ビニル樹脂よりも平均重合度が低い塩化ビニル樹脂からなる接着層(30)・・を熱融着によって一体的に設けて、この接着層(30)・・に接着剤(42)を介して前記補強線(21)・・の被覆材(41)・・を接着したことを特徴とするクリーナーホース。
【請求項2】
前記接着層(30)・・の塩化ビニル樹脂の平均重合度を、前記被覆材(41)・・の硬質若しくは半硬質塩化ビニル樹脂の平均重合度よりも高くした請求項1記載のクリーナーホース。
【請求項3】
前記ホース壁(20)の軟質塩化ビニル樹脂の平均重合度を2000〜4000、前記被覆材(41)・・の硬質若しくは半硬質塩化ビニル樹脂の平均重合度を800〜1700、前記接着層(30)・・の塩化ビニル樹脂の平均重合度を1000〜2500の範囲にそれぞれ設定した請求項1又は2記載のクリーナーホース。
【請求項4】
前記ホース壁(20)の内周面の補強線取付部位(27)・・に、前記接着層(30)・・を共押出しにより形成した請求項1乃至3のいずれかに記載のクリーナーホース。
【請求項5】
前記ホース壁(20)の内周面に沿って凹溝(27)・・を螺旋状に形成して、この凹溝(27)・・の底部付近に前記接着層(30)・・を設けて、この接着層(30)・・に接着剤(42)を介して前記補強線(21)・・の被覆材(41)・・を接着することで、前記補強線(21)・・を前記凹溝(27)・・内に収容した状態で取り付けた請求項1乃至4のいずれかに記載のクリーナーホース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−22334(P2009−22334A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−185473(P2007−185473)
【出願日】平成19年7月17日(2007.7.17)
【出願人】(000221502)東拓工業株式会社 (61)
【Fターム(参考)】