説明

クリーニング機能付き搬送部材および基板処理装置のクリーニング方法

【課題】 基板処理装置内に搬送して装置内の異物をクリーニング除去したのち、再利用のために、異物が付着したクリーニング層を容易に取り除くことができるクリーニング部材を提供することを課題とする。

【解決手段】 搬送部材1の少なくとも片面にクリーニング層2が設けられているクリーニング機能付き搬送部材において、搬送部材1上に上記のクリーニング層2を剥離させるための剥離層3が少なくとも一層形成されていることを特徴とするクリーニング機能付き搬送部材、とくに、上記剥離層3が、エネルギーを受けて剥離機能を発現する樹脂層、中でも、エネルギーを受けて重合硬化する樹脂層や、エネルギーを受けて発泡する粒子を含んだ樹脂層からなる上記構成のクリーニング機能付き搬送部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体やフラットパネルディスプレイの製造装置や検査装置など、異物を嫌う各種の基板処理装置をクリーニングするためのクリーニング機能付き搬送部材に関し、またこのクリーニング機能付き搬送部材を用いた基板処理装置のクリーニング方法およびこのクリーニング方法によりクリーニングされた基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の基板処理装置では、各搬送系と基板とを物理的に接触させながら搬送する。その際、基板や搬送系に異物が付着していると、後続の基板をつぎつぎに汚染することになるため、装置を定期的に停止して洗浄処理する必要があった。このため、稼動率の低下や多大な労力が必要という問題があった。
【0003】
この問題を克服するため、基板処理装置内に、クリーニング部材として、粘着性物質を固着した基板を搬送して、装置内に付着した異物をクリーニング除去する方法(特許文献1参照)や、クリーニング部材として、板状部材を搬送して、基板裏面に付着した異物を除去する方法(特許文献2参照)が提案されている。
【特許文献1】特開平10−154686号公報(第2〜4頁)
【特許文献2】特開平11−87458号公報(第2〜3頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の両提案方法は、基板処理装置を停止して洗浄処理する必要がなく、稼働率の低下や多大な労力を回避する有効な方法である。とくに、クリーニング層として粘着性物質を固着した基板を搬送する方法は、板状部材だけを搬送する方法に比べて、異物の除去性にすぐれており、より実用的な方法である。
【0005】
しかし、この方法では、粘着性物質からなるクリーニング層に異物が付着するに伴い、クリーニング効果がしだいに失われてくる。このため、異物が付着したクリーニング層を基板から取り除き、この基板に新たな粘着性物質を固着して再利用することが望まれる。ところが、異物が付着したクリーニング層は基板上に強く固着しているため、容易には取り除けず、上記基板の再利用が難しいという問題があった。

本発明は、上記の事情に鑑み、基板処理装置内に搬送して装置内の異物をクリーニング除去したのち、再利用のために、異物が付着したクリーニング層を容易に取り除くことができるクリーニング部材を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の課題に対して、鋭意検討した結果、クリーニング部材として、シリコンウエハなどの基板からなる搬送部材上にクリーニング層を設けて、クリーニング機能付き搬送部材とするにあたり、クリーニング層の下地として剥離層を形成しておくと、基板処理装置内に搬送して装置内の異物をクリーニング除去し、そのクリーニング機能が失われたクリーニング層を上記の剥離層と一体に容易に剥離除去することができ、これにより上記搬送部材の再利用が可能となることを知り、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、搬送部材の少なくとも片面にクリーニング層が設けられているクリーニング機能付き搬送部材において、搬送部材上に上記のクリーニング層を剥離させるための剥離層が少なくとも一層形成されていることを特徴とするクリーニング機能付き搬送部材に係るものである。

とくに、上記剥離層が、エネルギーを受けて剥離機能を発現する樹脂層、具体的には、エネルギーを受けて重合硬化する樹脂層や、エネルギーを受けて発泡する粒子を含んだ樹脂層からなる上記構成のクリーニング機能付き搬送部材を提供できるものである。また、上記のクリーニング層が、引っ張り弾性率(JIS K7127に準ずる)が2,000MPa以下である、また実質的に粘着力を有しない、さらには耐熱性を有する高分子樹脂である上記構成のクリーニング機能付き搬送部材を提供できるものである。

また、本発明は、基板処理装置内に、上記各構成のクリーニング機能付き搬送部材を搬送することを特徴とする基板処理装置のクリーニング方法と、さらには、このクリーニング方法によりクリーニングされた基板処理装置とを提供することができる。
【発明の効果】
【0008】
このように、本発明では、基板処理装置内に搬送して装置内の異物をクリーニング除去するクリーニング機能付き搬送部材において、搬送部材上にクリーニング層を剥離させるための剥離層を少なくとも一層形成したことにより、基板処理装置内の異物をクリーニング除去したのち、そのクリーニング層を搬送部材から容易に取り除くことができる、搬送部材の再利用が可能なクリーニング部材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明の実施の形態について、説明する。
図1は、本発明のクリーニング機能付き搬送部材の一例を示したものである。
すなわち、このクリーニング機能付き搬送部材は、搬送部材1の片面にのみクリーニング層2が設けられてなり、このクリーニング層2と搬送部材1との間に、クリーニング層2を剥離させるための剥離層3が形成されている。

図2は、本発明のクリーニング機能付き搬送部材の他の例を示したものである。
すなわち、このクリーニング機能付き搬送部材は、搬送部材1の両面にクリーニング層2,2が設けられてなり、このクリーニング層2,2と搬送部材1との間に、それぞれ、クリーニング層2,2を剥離させるための剥離層3,3が形成されている。
【0010】
剥離層3は、クリーニング層2が搬送部材1から剥離できる機能を有していればよく、材質などはとくに限定されないが、エネルギーを受けて剥離機能を発現する樹脂層が好適に用いられる。エネルギーにより剥離機能を発現させることで、通常の使用においては搬送部材とクリーニング層が剥がれることなく十分に接着し、搬送部材を再生する場合にだけ粘着力を落とし剥離機能を付加させることができる。

エネルギーにより剥離機能を発現させる樹脂層としては、とくに限定はないが、重合硬化する樹脂層や、エネルギーを受けて発泡する粒子を含んだ樹脂層が好適に用いられる。エネルギーは、とくに限定されない。たとえば、紫外線、熱、超音波、放射線などが挙げられ、必要によりこれらを2種以上用いることもできる。
【0011】
剥離層3として、エネルギーを受けて重合硬化する樹脂層を用いると、使用後のクリーニング部材の再生を行う場合に、たとえば、紫外線を照射することにより、樹脂層の分子構造が三次元網状化して、樹脂層の粘着性が実質的になくなり、クリーニング層2をこの樹脂層と一体に搬送部材1上から確実に剥離除去できる。

上記の重合硬化する樹脂層には、たとえば、感圧接着性ポリマーに分子内に不飽和二重結合を1個以上有する化合物(以下、重合性不飽和化合物という)および重合開始剤と、必要により架橋剤などを含ませた硬化型の樹脂組成物などが用いられる。
【0012】
感圧接着性ポリマーとしては、たとえば、(メタ)アクリル酸および/または(メタ)アクリル酸エステルを主モノマーとしたアクリルポリマーが挙げられる。このアクリル系ポリマーの合成にあたり、共重合モノマーとして分子内に不飽和二重結合を2個以上有する化合物を用いるか、あるいは合成後のアクリル系ポリマーに分子内に不飽和二重結合を有する化合物を官能基間の反応で化合結合させるなどして、アクリル系ポリマーの分子内に不飽和二重結合を導入しておくことにより、このポリマー自体も活性エネルギーにより重合硬化反応に関与させるようにすることもできる。
【0013】
重合性不飽和化合物としては、不揮発性でかつ重量平均分子量が10,000以下であるのがよく、とくに硬化時の三次元網状化が効率良くなされるように、5,000以下の分子量を有しているのが好ましい。このような重合性不飽和化合物としては、たとえば、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、オリゴエステル(メタ)アクリレートなどが挙げられ、これらの中から、1種または2種以上が用いられる。
【0014】
重合開始剤としては、とくに限定されず、公知のものを使用できる。たとえば、活性エネルギーに熱を用いる場合は、ベンゾイルパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリルなどの熱重合開始剤が、また光を用いる場合は、ベンゾイル、ベンゾインエチルエーテル、シベンジル、イソプロピルベンゾインエーテル、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、クロロチオキサントン、ドデシルチオキサントン、シメチルチオキサントン、アセトフェノンジエチルケタール、ベンジルジメチルケタール、α−ヒドロキシシクロヒキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシメチルフェニルプロパン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノンなどの光重合開始剤が挙げられる。
【0015】
また、剥離層3として、エネルギーを受けて発泡する粒子を含んだ樹脂層を用いると、使用後のクリーニング部材の再生を行う場合に、たとえば、熱をかけることにより、樹脂層中の発泡粒子が発泡して体積膨張することで、樹脂層の粘着性が実質的になくなり、クリーニング層2をこの樹脂層と一体に搬送部材1から確実に剥離除去できる。

上記の重合発泡する粒子を含んだ樹脂層には、たとえば、感圧接着性ポリマーと、エネルギーにより発泡して体積膨張する粒子とからなり、必要により、架橋剤などを含ませた樹脂組成物などが用いられる。

ここで、エネルギー源としては、とくに熱が好適に用いられる。感圧接着性ポリマーとしては、たとえば、(メタ)アクリル酸および/または(メタ)アクリル酸エステルを主モノマーとしたアクリル系ポリマーが挙げられる。
【0016】
剥離層3の形成方法としては、とくに限定されず、公知の方法を広く利用できる。たとえば、スピンコート法、スプレー法などを用いて、シリコンウエハなどの搬送部材上に、直接塗布して、形成することができる。また、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)やポリイミドフィルム上に、コンマコート法、ファウンテン法、グラビア法などにより塗布して、剥離層を形成し、これをシリコンウエハなどの搬送部材上に、転写したり、ラミネートするようにしてもよい。
【0017】
剥離層3の厚さとしては、限定されないが、通常1〜50μmとするのがよく、とくに好ましくは5〜20μmとするのがよい。

また、剥離層3は、剥離時に、シリコンウエハ(ミラー面)に対する180度引き剥がし粘着力が0.01〜10N/10mm幅、好ましくは0.05〜5N/10mm幅であるのがよい。粘着力が高すぎると、クリーニング層2を搬送部材1から剥離除去する際、剥離層3が搬送部材1と固着して完全に剥離できないおそれがある。
【0018】
図3は、本発明のクリーニング機能付き搬送部材のさらに別の例を示している。
このクリーニング機能付き搬送部材は、搬送部材1上にクリーニング層2を設ける場合に、このクリーニング層をクリーニング層2Aと2Bとの2段構成とし、搬送部材1と内側のクリーニング層2Aとの間に剥離層3Aを、内側のクリーニング層2Aと外側のクリーニング層2Bとの間に剥離層3Bを、それぞれ形成している。

なお、この例では、搬送部材の片面にのみクリーニング層を形成しているが、搬送部材の両面にクリーニング層を形成する場合でも、両面ともに、クリーニング層を上記同様の2段構成として、上記同様に各層間に剥離層を形成することもできる。
【0019】
このように搬送部材1上に剥離層3とクリーニング層2を交互に積層した構造とすることにより、外側のクリーニング層2Bを利用して、基板処理装置内の異物をクリーニング除去し、このクリーニング層2Bの異物除去能力が喪失したときに、つまり、使用済みとなったときに、このクリーニング層2Bを剥離層3Bと一体に剥離する。つぎに、上記の剥離によって露出する内側のクリーニング層2Aの異物除去機能を利用して、再度、基板処理装置内の異物をクリーニング除去することができる。

この場合、剥離層3A、3Bとして、互いに異なるエネルギー源により剥離性を発現できるものを用いると、外側のクリーニング層2Bの異物除去能力が失われたときに、この外側のクリーニング層2Bだけを確実に剥離除去できる。

このようにクリーニング部材を繰り返し使用し、最終的に内側のクリーニング層2Aも異物除去能力が喪失すると、これを剥離層3Aと一体に剥離除去する。その後は、搬送部材1上に新たなクリーニング層を形成することで、再利用できる。また、この新たなクリーニング層を剥離しやすくするため、前記同様に剥離層を形成してもよい。
【0020】
図1〜図3に示すクリーニング機能付き搬送部材において、搬送部材1としては、異物除去の対象となる基板処理装置の種類に応じて、各種の基板が用いられる。具体的には、半導体ウエハ、LCD,PDPなどのフラットパネルディスプレイ用基板、その他コンパクトディスク,MRヘッドなどの基板などが挙げられる。
【0021】
また、搬送部材1上に設けられるクリーニング層2としては、その厚さはとくに限定されないが、通常は1〜50μmであるのがよい。

このクリーニング層2は、引っ張り弾性率(JIS K7127に準ずる)が2,000MPa以下、好ましくは1〜2,000MPaであるものがよい。クリーニング層2の弾性率を上記範囲とすることで、基板処理装置内の非クリーニング部位との接着による搬送トラブルがなくなり、異物を確実に除去できる。

さらに、クリーニング層2としては、実質的に粘着力を有しないことが望ましい。ここで、実質的に粘着性を有しないとは、粘着の本質をすべりに対する抵抗である摩擦としたときに、粘着性の機能を代表する感圧性タックがないことを意味する。この感圧性タックは、たとえば、Dahlquistの基準にしたがうと、粘着性物質の弾性率が1MPa間での範囲で発現するものである。
【0022】
このようなクリーニング層2は、その材質などに限定はないが、代表的なものとして、活性エネルギーを受けて重合硬化した樹脂層から構成されているのが望ましい。これは、上記の重合硬化により分子構造が三次元網状化してクリーニング層が実質的に粘着性がなくなり、クリーニング部材を搬送する際に装置接触部と強く接着することがなく、確実に搬送できるからである。上記の活性エネルギー源としては、たとえば、紫外線、熱などが挙げられるが、とくに紫外線が好ましい。

上記の重合硬化した樹脂層としては、たとえば、感圧接着性ポリマーに分子内に不飽和二重結合を1個以上有する化合物(以下、重合性化合物という)および重合開始剤と、必要により架橋剤などを含ませた硬化型の樹脂組成物を、活性エネルギー源とくに紫外線により硬化したものが挙げられる。
【0023】
上記の感圧接着性ポリマーとしては、たとえば、(メタ)アクリル酸および/または(メタ)アクリル酸エステルを主モノマーとしたアクリル系ポリマーが挙げられる。このアクリル系ポリマーの合成にあたり、共重合モノマーとして分子内に不飽和二重結合を2個以上有する化合物を用いるか、あるいは合成後のアクリル系ポリマーに分子内に不飽和二重結合を有する化合物を官能基間の反応で化合結合させるなどして、アクリル系ポリマーの分子内に不飽和二重結合を導入しておくことにより、このポリマー自体も活性エネルギーにより重合硬化反応に関与させるようにすることもできる。
【0024】
重合性化合物としては、不揮発性でかつ重量平均分子量が10,000以下の低分子量体であるのがよく、とくに硬化時の三次元網状化が効率良くなされるように、5,000以下の分子量を有しているのが好ましい。このような重合性化合物としては、たとえば、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、オリゴエステル(メタ)アクリレートなどが挙げられ、これらの中から、1種または2種以上が用いられる。
【0025】
重合開始剤としては、とくに限定されず、公知のものを使用できる。たとえば、活性エネルギーに熱を用いる場合は、ベンゾイルパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリルなどの熱重合開始剤、また光を用いる場合は、ベンゾイル、ベンゾインエチルエーテル、シベンジル、イソプロピルベンゾインエーテル、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、クロロチオキサントン、ドデシルチオキサントン、シメチルチオキサントン、アセトフェノンジエチルケタール、ベンジルジメチルケタール、α−ヒドロキシシクロヒキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシメチルフェニルプロパン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノンなどの光重合開始剤が挙げられる。
【0026】
上記の重合硬化した樹脂層からなるクリーニング層の形成方法は、とくに限定されないが、たとえば、スピンコート法、スプレー法などを用い、搬送部材1の剥離層3上に上記した硬化型の樹脂組成物を直接塗布し、乾燥したのち、重合硬化させて、形成することができる。また、PETフィルムやポリイミドフィルム上に上記した硬化型の樹脂組成物を、コンマコート法、ファウンテン法、グラビア法などを用いて塗布し、乾燥したのち、重合硬化させて、クリーニンク層を形成し、これを搬送部材1の剥離層3上に転写したり、ラミネートすることにより、形成することもできる。
【0027】
また、本発明においては、クリーニング層2として、耐熱性を有する高分子樹脂を用いることもできる。耐熱性を有する高分子樹脂は、耐熱性があればとくに限定されない。たとえば、つぎの式(1)で表わされる構造単位(式中、n,mは0以上の整数、ただし、nまたはmのいずれかは1以上の整数である)を主鎖中に有するポリアミック酸樹脂を加熱イミド化して得たポリイミド樹脂などが用いられる。
【0028】
【化1】

【0029】
上記のポリアミック酸樹脂は、テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分とを実質的に等モル比にて適宜の有機溶剤中で反応させて得ることができる。

上記のテトラカルボン酸二無水物成分としては、たとえば、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2′,3,3′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2′,3,3′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4′−オキシジフタル酸二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)へキサフルオロプロパンニ無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)へキサフルオロプロパンニ無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタンニ無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタンニ無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)スルホンニ無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ピロメリット酸二無水物、エチレングリコールビストリメリット酸二無水物などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0030】
また、上記のジアミン成分としては、前記式(1)で示される構造を有するジアミンとして、たとえば、下記の式(2)または式(3)で表わされる脂肪族ジアミン〔ただし、n,mは前記式(1)の場合と同じである〕を用いのが望ましい。また、これらの脂肪族ジアミンは、単独で使用してよいし、他のジアミンと併用してもよい。
【0031】
<式(2)で表わされる脂肪族ジアミン>
【化2】

【0032】
<式(3)で表わされる脂肪族ジアミン>
【化3】

【0033】
上記の脂肪族ジアミンと併用できる他のジアミンとしては、たとえば、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、3,4′−ジアミノジフェニルエーテル、3,3′−ジアミノジフェニルエーテル、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4′−ジアミノジフェニルプロパン、3,3′−ジアミノジフェニルプロパン、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、3,3′−ジアミノジフェニルメタン、4,4′−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3′−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4′−ジアミノジフェニルスルホン、3,3′−ジアミノジフェニルスルホン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)−2,2−ジメチルプロパン、へキサメチレンジアミン、1,8−ジアミノオクタン、1,12−ジアミノドデカン、4,4′−ジアミノベンゾフェノン、1,3−ビス(3−アミノプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンなどが挙げられる。
【0034】
上記のテトラカルボン酸二無水物とジアミン成分とは、実質的に等モル比にて有機溶媒中で反応させることができる。式(1)で示される構造を有するジアミンを用いる場合、100℃以上の温度で反応させることで、ゲル化を防止できる。

上記よりも低い温度で重合させると、上記ジアミンの使用量によっては、ゲル分が系中に残存して目詰まりし、ろ過による異物の除去が困難となる場合がある。また、反応が不均一となり、樹脂の特性にばらつきを生じる場合がある。

また、上記のテトラカルボン酸二無水物とジアミン成分とを反応させる有機溶媒には、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミドなどの極性溶剤が用いられる。原材料や樹脂の溶解性を調整するため、トルエン、キシレンなどの非極性溶剤を適宜、混合して用いることもできる。
【0035】
ポリイミド樹脂は、上記方法で得られるポリアミック酸樹脂を加熱イミド化して得ることができる。加熱イミド化する方法は、ポリアミック酸樹脂の溶液に、トルエン、キシレンなど、水との共沸溶剤を混合し、共沸脱水法にて溶剤中イミド化させてもよく、さらに基板上に塗布し、溶剤を乾燥後、熱処理してイミド化させてもよい。
【0036】
耐熱性を有する高分子樹脂には、ポリイミド樹脂のほか、たとえば、フェニル−T、ポリキノキサリン、ポリベンゾイレンベンズイミダゾールなどのラダーポリマーや、ポリフェニレン、ポリアミド、ポリエステルイミド、ポリベンズイミダゾール、ポリカルボジイミド、アラミドなどの芳香族ポリマーも用いることができる。

これらの高分子樹脂の中でも、ポリイミド樹脂や、ポリアミド、ポリカルボジイミドなどは、400℃以上の高温にさらしても揮発性ガスや分解モノマーを生成しないため、クリーニング層2の材料として、とくに好ましい。
【0037】
クリーニング層2として、上記したような耐熱性を有する高分子樹脂を用いると、このクリーニング層2を設けたクリーニング部材は、これを、たとえば、オゾンアッシャー、レジストコーター、酸化拡散炉、常圧CVD装置、減圧CVD装置、プラズマCVD装置などの高温下で使用される基板処理装置内に搬送しても、その搬送時に処理装置内での搬送不良や汚染を発生させることなく使用できる利点がある。
【0038】
耐熱性を有する高分子樹脂からなるクリーニング層の形成方法は、とくに限定されず、たとえば、スピンコート法、スプレー法などを用いて、搬送部材1の剥離層3上に直接塗布し、乾燥したのち、高温で加熱処理して、形成できる。また、PETフィルムやポリイミドフィルム上にコンマコート法、ファウンテン法、グラビア法などにより塗布し、乾燥したのち、高温で加熱処理して、クリーニング層を形成し、これを搬送部材1の剥離層3上に転写したり、ラミネートするようにしてもよい。

高温で加熱処理する温度としては、200℃以上がよく、樹脂の酸化劣化を防ぐため、窒素雰囲気下や真空中など、不活性な雰囲気下で処理するのが望ましい。これによって、樹脂中に残った揮発成分を完全に除去することができる。
【0039】
本発明において、上記したようなクリーニング層2は、シリコンウエハ(ミラー面)に対する180度引き剥がし粘着力(JIS Z0237に準じて測定)が、通常0.20N/10mm幅以下、好ましくは0.01〜0.1N/10mm幅であるのがよい。このような低粘着ないし非粘着とすることにより、搬送時に装置内の被接触部と強く接着することがなく、搬送トラブルを引き起こすことがない。
【0040】
本発明のクリーニング機能付き搬送部材においては、上記のクリーニング層2を保護するために、その上に保護フィルムを貼り合わせてもよい。このような保護フィルムの厚さは、通常10〜100μm程度であるのがよい。

この保護フィルムの材質は、とくに限定されず、たとえば、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、脂肪酸アミド系、シリカ系の剥離剤などで剥離処理した、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリウレタン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリスチレン、ポリカーボネートなどからなるプラスチックフィルムが挙げられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン樹脂系のフィルムについては、離型処理剤を用いなくとも離型性を有するので、それ単体を保護フィルムとして使用することもできる。
【0041】
本発明のクリーニング機能付き搬送部材は、以上の構成からなり、その使用に際して、基板処理装置内に、常法に準じて搬送することにより、装置内の異物を簡単かつ確実にクリーニング除去することができる。また、このクリーニング除去後、異物が付着したクリーニング層は、既述のとおり、剥離層と一体に容易に剥離除去できる。このようにクリーニング層を剥離除去した搬送部材は、これに新たなクリーニング層を形成するなどして、クリーニング部材として再利用することができる。
【0042】
本発明において、クリーニングが行われる基板処理装置としては、とくに限定されず、たとえば、露光装置、レジスト塗布装置、現像装置、アッシング装置、ドライエッチング装置、イオン注入装置、PVD装置、CVD装置、外観検査装置、ウェハプローバなどが挙げられる。本発明では、前記の方法により装置内の異物がクリーニング除去された上記の各基板処理装置を提供できるものである。
【0043】
つぎに、本発明の実施例を記載して、さらに具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例にのみ限定されるものではない。なお、以下において、部とあるのは重量部を意味するものとする。
【実施例1】
【0044】
アクリル酸2−エチルへキシル75部、アクリル酸メチル20部およびアクリル酸5部からなるモノマー混合物から得たアクリル系ポリマー(重量平均分子量70万)100部に対し、ウレタンアクリレート(新中村化学社製の商品名「U−N−01」)100部、ポリイソシアネート化合物(日本ポリウレタン工業社製の商品名「コロネートL」)3部、光重合開始剤としてベンジルジメチルケタール(チバ・スペシャリティケミカルズ社製の商品名「イルガキュアー651」)3部を、均一に混合して、剥離層形成用の紫外線硬化型粘着剤溶液Aを調製した。
【0045】
また、下記の化学構造式で表わされるエチレン−1,2−ビストリメリテート,テトラカルボン酸二無水物(以下、TMEGという)30.0gを、窒素気流下、110gのN−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPという)中で、前記の式(2)で表わされる脂肪族ジアミン(アミン当量900、アクリロニトリル含有量18重量%)65.8g、および下記の化学構造式で表わされる2,2′−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン(以下、BAPPという)15.0gと、120℃で混合して、反応させたのち、冷却し、クリーニング層形成用のポリアミック酸溶液Aを調製した。
【0046】
【化4】

【0047】
搬送部材としての8インチシリコンウエハに対し、スピンコート法により、まず、前記の紫外線硬化型粘着剤溶液Aを、乾燥後の厚さが10μmとなるように塗布し、120℃で5分間乾燥させて、紫外線硬化型粘着剤による剥離層を形成した。

つぎに、上記のポリアミック酸溶液Aを、ポリイミドフィルム上に、ファウンテン法を用いて、乾燥後の厚さが20μmとなるように塗布し、90℃で20分間乾燥したのち、窒素雰囲気下、300℃で2時間熱処理して、ポリイミド樹脂からなるクリーニング層を形成した。このクリーニング層を、前記の搬送部材の剥離層上に転写して、クリーニング機能付き搬送部材からなるクリーニング部材Aを作製した。

このクリーニング部材Aは、クリーニング層側のシリコンウエハ(ミラー面)に対する180°引き剥がし粘着力(JIS Z0237に準じて測定)が0.02N/10mm幅であった。また、クリーニング層の引っ張り弾性率(JIS K7127に準ずる)は、200MPaであった。
【0048】
レーザー表面検査装置で、新品の8インチシリコンウエハ3枚のミラー面の0.2μm以上の異物を測定したところ、それぞれ、10個、14個、5個であった。

これらのウエハを、別々の静電吸着機構を有するドライエッチング装置(東京エレクトロン社製)に、ミラー面を下側に向けて搬送したのち、レーザー表面検査装置でミラー面を測定したところ、8インチウエハサイズのエリア内で、それぞれ、35,231個、37,965個、31,067個であった。
【0049】
ついで、前記で作製したクリーニング部材Aを、上記の35,231個の異物が付着していたウエハステージを持つドライエッチング装置に搬送したところ、支障なく搬送できた。この操作を5回繰り返し、その後に新品の8インチシリコンウエハをミラー面を下側に向けて搬送し、レーザー異物検査装置で0.2μm以上の異物を測定した。その結果、初期に対して90%の異物を除去できており、クリーニングが可能であった。

このクリーニング終了後、搬送部材である8インチシリコンウエハを再利用するため、使用済みのクリーニング部材Aに1,000mJ/cm2 の紫外線を照射した。その結果、剥離層の粘着力が低下し、上記搬送部材からクリーニング層を剥離層と一体に簡単に剥離除去することができた。このように剥離したのちの搬送部材には、樹脂残りが見られず、搬送部材の再利用が可能であることを確認できた。
【0050】
比較例1
搬送部材としての8インチシリコンウエハに対し、剥離層を形成せずに、ポリアミック酸溶液Aを直接スピンコート法により塗布し、乾燥したのち、熱処理して、ポリイミド樹脂からなるクリーニング層を形成した以外は、実施例1と同様にして、クリーニング機能付き搬送部材からなるクリーニング部材Bを作製した。

このクリーニング部材Bを、前記の37,965個の異物が付着していたウエハステージを持つドライエッチング装置に搬送したところ、支障なく搬送できた。この操作を5回繰り返し、その後に新品の8インチシリコンウエハをミラー面を下側に向けて搬送し、レーザー異物検査装置で0.2μm以上の異物を測定した。その結果、初期に対して88%の異物を除去できており、クリーニングが可能であった。

しかしながら、このクリーニング終了後、搬送部材である8インチシリコンウエハを再利用するため、搬送部材からクリーニング層を剥離除去しようとしたが、クリーニング層の最外周部がシリコンウエハと強固に固着しており、クリーニング層を樹脂残りなく完全に除去することはできなかった。したがって、上記の搬送部材を、その後のクリーニング部材の作製に再利用することができなかった。
【0051】
比較例2
紫外線硬化型粘着剤溶液Aの調製において、光重合開始剤(イルガキュアー651)を使用しなかった以外は、実施例1と同様にして、通常の粘着剤溶液Cを調製した。この粘着剤溶液Cを剥離層形成用の材料として使用した以外は、実施例1と同様にして、クリーニング機能付き搬送部材からなるクリーニング部材Cを作製した。

このクリーニング部材Cを、前記の31,067個の異物が付着していたウエハステージを持つドライエッチング装置に搬送したところ、支障なく搬送できた。この操作を5回線り返し、その後に新品の8インチシリコンウエハをミラー面を下側に向けて搬送し、レーザー異物検査装置で0.2μm以上の異物を測定した。その結果、初期に対して91%の異物を除去できており、クリーニングが可能であった。

しかしながら、このクリーニング終了後、搬送部材である8インチシリコンウエハを再利用するため、搬送部材からクリーニング層を剥離除去しようとしたが、剥離層がシリコンウエハと強固に粘着しており、クリーニング層を強引に剥離した際に、剥離層の粘着剤残りが発生した。したがって、上記の搬送部材を、その後のクリーニング部材の作製に再利用することができなかった。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明のクリーニング機能付き搬送部材の一例を示す断面図である。
【図2】本発明のクリーニング機能付き搬送部材の他の例を示す断面図である。
【図3】本発明のクリーニング機能付き搬送部材の別の例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0053】
1 搬送部材
2(2A,2B) クリーニング層
3(3A,3B) 剥離層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送部材の少なくとも片面にクリーニング層が設けられているクリーニング機能付き搬送部材において、搬送部材上に上記のクリーニング層を剥離させるための剥離層が少なくとも一層形成されていることを特徴とするクリーニング機能付き搬送部材。
【請求項2】
剥離層は、エネルギーを受けて剥離機能を発現する樹脂層である請求項1に記載のクリーニング機能付き搬送部材。
【請求項3】
剥離層は、エネルギーを受けて重合硬化する樹脂層からなる請求項2に記載のクリーニング機能付き搬送部材。
【請求項4】
剥離層は、エネルギーを受けて発泡する粒子を含んだ樹脂層からなる請求項2に記載のクリーニング機能付き搬送部材。
【請求項5】
クリーニング層は、引っ張り弾性率(JIS K7127に準ずる)が2,000MPa以下である請求項1〜4のいずれかに記載のクリーニング機能付き搬送部材。
【請求項6】
クリーニング層は、実質的に粘着力を有しない請求項1〜5のいずれかに記載のクリーニング機能付き搬送部材。
【請求項7】
クリーニング層は、耐熱性を有する高分子樹脂である請求項1〜6のいずれかに記載のクリーニング機能付き搬送部材。
【請求項8】
基板処理装置内に、請求項1〜7のいずれかに記載のクリーニング機能付き搬送部材を搬送することを特徴とする基板処理装置のクリーニング方法。
【請求項9】
請求項8に記載のクリーニング方法によりクリーニングされた基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−19616(P2006−19616A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−197846(P2004−197846)
【出願日】平成16年7月5日(2004.7.5)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】